説明

フレグランス組成物

【課題】 香気の持続性に優れ、しかも安定したコロイド状物質からなる美麗な色彩を有するフレグランス組成物に関する。
【解決手段】 平均粒子径40〜140nmのシリカ微粒子、香料、アルコールおよび水の成分を含む、イオン交換樹脂で処理されたコロイド状物質からなる組成物であって、該組成物が単色の構造色を有し、さらに該組成物中に光輝性のクリスタリットを有するフレグランス組成物。この組成物は、その構造色が、青色、緑色、赤色またはその中間色であり、また光輝性クリスタリットが青色、緑色、赤色および/またはその中間色である美麗な発色を呈する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香気の持続性に優れ、しかも安定したコロイド状物質からなる美麗な色彩を有するフレグランス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フレグランス製品に代表される香水は、香料をエチルアルコールに溶かしたものが始まりとされ、その後、商品価値を高めるためにさまざまな改良が加えられてきた。
特許文献1には、外観の美しさを演出することを目的として、光輝性粉体を配合する方法が開示されている。この方法によれば、使用時に光輝性粉体が浮遊して見た目の美麗さを演出することはできるものの、これらパール顔料に代表される光輝性粉体は、粒子径がミクロンサイズ(μm)であることから、時間が経つにつれて容器の底に沈降してしまうため、静置状態では目的とする美麗さを呈さないものであった。
【0003】
一方、本出願人が以前に出願した特許文献2には、電気伝導度が560μS/cm以下であって、シリカ微粒子が配合されたオパール様の遊色を呈する化粧料が開示されている。このオパール様の遊色とは、シリカゾルの構造が微結晶の集合体に似た構造をとり、これに白色光が入射すると微結晶類似構造面により光が分光されることにより種々の色の光彩が観察され、オパールに似た虹色の光学現象が得られることである。しかし、この方法から得られる組成物は、これに本発明で使用される香料を添加すると、該香料が前記組成物中に均一に分散されないばかりか、前記の光学現象(オパール様の遊色)も見られず、さらには透明性が低く、濁った印象を与えることから、フレグランス組成物としての利用価値はなかった。
【特許文献1】特開2003−286148号公報
【特許文献2】特開平5−320022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の粒子径を有するシリカ微粒子と水、さらには香料とアルコールを特定の範囲で含む安定したコロイド状物質からなる組成物においては、高い透明性と単色の構造色を呈することができ、しかも光輝性のクリスタリットも発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るフレグランス組成物は、下記(a)〜(d)の成分を含む、イオン交換樹脂で処理されたコロイド状物質からなる組成物であって、該組成物が単色の構造色を有し、さらに該組成物中に光輝性のクリスタリットを有することを特徴としている。
(a)平均粒子径40〜140nmのシリカ微粒子:1〜10重量%
(b)香料:0.1〜30重量%
(c)水:1〜40重量%
(d)アルコール:50〜95重量%
【0006】
前記構造色は、青色、緑色、赤色またはその中間色であることが好ましい。
また、前記クリスタリットは、青色、緑色、赤色および/またはその中間色を呈することが好ましい。
さらに、波長400〜800nmの可視光範囲で観測される前記クリスタリットの反射ピークにおける反射率が、該クリスタリットが発現していない段階の反射率より0.5%以上高いことが好ましい。
【0007】
前記シリカ微粒子は、平均粒子径40〜140nmのシリカ微粒子を含むシリカゾルを陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂で処理して十分に脱イオンされたシリカゾルを配合して得られたものであることが好ましい。
また、前記香料は、前記コロイド状物質中に均一に分散され、実質的に油層を形成しないものであることが好ましい。
さらに、前記アルコールは、エチルアルコールであることが好ましい。また、前記フレグランス組成物は、50μS/cm以下の電気伝導度を有することが好ましい。
さらに、前記フレグランス組成物は、800nmの波長における透過率が20%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るフレグランス組成物は、高い透明性を有すると共に青色、緑色、赤色等の単色からなる構造色を呈することができ、しかも該組成物中に青色、緑色、赤色等の光輝性のクリスタリットを発現させることができる。
さらに、前記フレグランス組成物を蓋付きのプラスチック容器などに収納しておくと、該フレグランス組成物中に配合された香料から立ち上る香気を長い間、持続させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係るフレグランス組成物について具体的に説明する。
フレグランス組成物
本発明によるフレグランス組成物は、下記(a)〜(d)の成分を含む、イオン交換樹脂で処理されたコロイド状物質からなる組成物であって、該組成物が単色の構造色を有し、さらに該組成物中に光輝性のクリスタリットを有するものである。
(a)平均粒子径40〜140nmのシリカ微粒子:1〜10重量%
(b)香料:0.1〜30重量%
(c)水:1〜40重量%
(d)アルコール:50〜95重量%
【0010】
前記フレグランス組成物は、青色、緑色、赤色またその中間色からなる単色の構造色(組成物全体の色)を呈する。この構造色は、前記組成物中に含まれる他の成分の種類や含有量等によっても影響を受けるが、前記シリカ微粒子の粒子径とその含有量に依存して変化する。例えば、前記シリカ微粒子の平均粒子径が80μmである場合、該シリカ微粒子が約5.0〜7.0重量%含まれると青色を呈し、また約4.3〜5.0重量%含まれると緑色を呈し、さらに約4.0〜4.3重量%含まれると赤色を呈するようになる。この中でも、フレグランス組成物としては、青色や緑色等の単色の構造色を呈するものが美麗に見えるため、これを使用することが望ましい。しかし、光輝性のクリスタリットを際だたせて見せるためには、白味がかった赤色の構造色を呈するものを使用することが望ましい。
【0011】
前記フレグランス組成物中に発現する光輝性のクリスタリットは、青色、緑色、赤色および/またはその中間色を呈する。ここで、前記クリスタリットの色は、前記構造色とは異なり、単色ではなく複数色となることもある。
また、このクリスタリットの大きさは、約7mm以下、さらに詳しくは0.1〜6mm程度であるが、必ずしも一定の大きさではない。
【0012】
さらに、前記クリスタリットの光の強さ(L)は、該クリスタリットの反射ピークにおける反射率(R1)と該クリスタリットが発現していない段階の反射率(R2)の差で表わされる。すなわち、“L= R1− R2”の式で表すことができる。
本発明に係るフレグランス組成物においては、波長400〜800nmの可視光範囲で観測される前記クリスタリットの反射ピークにおける反射率が、該クリスタリットが発現していない段階の反射率より0.5%以上、好ましくは1%以上、さらに好ましくは2.5%以上高い光の強さを有することが好ましい。
また、前記クリスタリットは、前記フレグランス組成物を収納した容器(例えば、プラスチック製の透明容器)に振動を加えると、消滅して見えなくなるが、これを静置状態に置くと、短時間で再び現れて見えるようになるという特性を有している。
【0013】
前記フレグランス組成物を構成する前記成分(a)としてのシリカ微粒子は、平均粒子径が40〜140nm、好ましくは60〜110nmの範囲にある。ここで、前記平均粒子径が140nmを超えると、透明性が悪化し、さらに時間の経過と共にシリカ微粒子が沈降する傾向にあるため、安定したコロイド状態のフレグランス組成物を得ることができなくなる。一方、前記平均粒子径が40nm未満であると、前記構造色が得られない(すなわち、無色透明に近い色になる)ばかりでなく、明瞭なクリスタリットが発現せず、これらのシリカ微粒子を用いたフレグランス組成物を皮膚に吹きかけた場合、皮膚のかさつきの原因となったり、その使用感が悪くなったりすることがある。すなわち、本発明のフレグランス組成物においては、シリカ微粒子の平均粒子径が上記の範囲にあることが重要である。
【0014】
また、前記シリカ微粒子は、前記フレグランス組成物中に1〜10重量%、好ましくは2〜6重量%の範囲で含まれる。ここで、前記シリカ微粒子の含有量が10重量%を超えると、シリカ微粒子の粒子間距離が短くなるため、目視で検出可能な構造色を呈さず、見た目の美しいフレグランス化合物を得ることができなくなる。この場合、クリスタリットの明瞭な反射ピークも検出できない。さらに、これらのシリカ微粒子を用いたフレグランス組成物を皮膚に吹きかけた場合、肌に対する感触が悪くなり、乾燥した時につっぱり感が生じたり、肌荒れの原因ともなる。一方、前記シリカ微粒子の含有量が1重量%未満であると、シリカ微粒子の粒子間距離が長くなって相互反発力が作用しなくなり、規則性のある粒子配列がなされないため、結果として前記構造色も発現しない他、通常のコロイド粒子のようにブラウン運動を起こすため透明性が悪くなる。すなわち、本発明のフレグランス組成物においては、前記構造色と前記クリスタリットの双方を発現させるための観点から、シリカ微粒子の含有量が上記の範囲にあることが重要である。
【0015】
また、前記シリカ微粒子の粒子径は、均一であることが望ましく、次式(1)で示される変動係数(CV値)が15%以下であることが好ましい。
CV=(σ/D)×100[%] ・・・(1)
(式(1)中、σは標準偏差を表し、Dは平均粒子径を表す。)
さらに、個々のシリカ微粒子は、フレグランス組成物中に単分散したコロイド状態にあり、しかも凝集粒子の割合が全粒子数の10%以下であることが好ましい。
【0016】
前記成分(b)としての香料は、天然香料、合成香料、調合香料を問わず化粧品や芳香剤などに一般的に用いられるものであれば特に制限されるものではないが、コロイド状物質である前記フレグランス化合物中に均一に分散され、実質的に油層を形成しないものであることが好ましい。
具体的には、天然香料としては、バラ油、ジャスミン油等の植物性香料、ムスク油、シベット油等の動物性香料が挙げられる。合成香料としては、リモネン、β−カリオフィレン等の炭化水素系、シス−3−ヘキセノール、ファルネソール等のアルコール系、2,6−ノナジエナール、シラトール等のアルデヒド系、β−イオノン、シクロペンタデカノン等のケトン系、リナリルアセテート、ベンジルベンゾエート等のエステル系、γ−ウンデカラクトン、ジェスミンラクトン等のラクトン系、オイゲノール等のフェノール系、ローズオキサイド、ガラクソリッド等のオキサイド系、インドール等の含窒素化合物系、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール等のアセタール系、オーランチオール等のシッフ塩基系等が挙げられる。さらに、2種以上の天然香料または2種以上の合成香料、あるいはこれら天然香料と合成香料を組み合わせた調合香料等を使用することもできる。
【0017】
また、前記香料は、その種類や用途などによっても異なるが、前記フレグランス組成物中に0.1〜30重量%、好ましくは2〜25重量%の範囲で含まれる。ここで、前記香料の含有量が30重量%を超えると、香りが強すぎて嗜好性が低くなり、また0.1重量%未満であると、フレグランス製品としての有効性が低くなることから好ましくない。
【0018】
前記成分(c)としての水は、その他成分(例えば、香料)の種類や混合量などによっても異なるが、前記フレグランス組成物中に1〜40重量%、好ましくは8〜35重量%の範囲で含まれる。ここで、前記水の含有量が40重量%を超えると、使用される香料の溶解性が劣ってくるため、香料の種類やその含有量によっても異なるが、これを前記フレグランス組成物中に均一に分散させることが難しくなり、場合によっては前記香料に基づく油層が形成されてしまうことがあるので、好ましくない。また、1重量%未満であると、前記クリスタリッドが発現しなくなるので好ましくない。すなわち、本発明のフレグランス組成物においては、比較例6(水含有量が1重量%未満の事例)および比較例7(水含有量が40重量%を超える事例)にも示すように、水の含有量が上記の範囲にあることが極めて重要である。
【0019】
さらに、前記フレグランス組成物中に水分を適量含ませると、該フレグランス組成物の熟成工程で熟成が進みやすく、ツンとするアルコールの刺激臭がなくなり、丸みとまろやかさのある芳醇な香りになりやすいので、前記フレグランス組成物中には水を少なくとも1重量%以上含ませることが必要である。
【0020】
前記成分(d)としてのアルコールは、前記フレグランス組成物中に含まれるバランス成分(前記成分(a)〜(c)の合計量に対する残余成分)であるが、人体に無害で前記香料と相性が良いものであれば、無水、含水、あるいは各種変性アルコールから適宜、選択して使用することができる。
具体的には、無水エタノール(例えば、C25OH含有量99.5重量%)、含水エタノール(例えば、C25OH含有量95重量%)、8アセチル化ショ糖変性エタノール、プロピルアルコール変性エタノール、プロピルアルコール、等が挙げられ、この中でも無水エタノール、または含水エタノールを使用することが好ましい。
【0021】
また、前記アルコールは、その種類や用途などによっても異なるが、前記フレグランス組成物中に50〜95重量%、好ましくは60〜90重量%の範囲で含まれることが望ましい。ここで、前記アルコールの含有量が95重量%を超えると、アルコールの刺激臭が強くなる他、シリカ微粒子の相互反発力が低くなり、クリスタリットの発現が遅くなり、また50重量%未満であると、使用される香料の種類によっては溶解力が劣って、得られるフレグランス組成物中に濁りや油層などが生じることもあるので好ましくない。
【0022】
前記成分(a)〜(d)を含むフレグランス組成物は、その電気伝導度が50μS/cm以下、好ましくは20μS/cm以下となるように調製したコロイド状物質から構成されていることが好ましい。ここで、前記電気伝導度が50μS/cmを超えると、シリカ微粒子の粒子間距離が長くなって相互反発力が作用しなくなり、規則性のある粒子配列がなされないため、結果として前記の構造色もクリスタリットも発現しない他、通常のコロイド粒子のようにブラウン運動を起こすため透明性が悪くなる。
【0023】
また、前記フレグランス組成物は、使用される香料の種類やその組成比などによっても異なるが、800nmの波長における透過率が20%以上、好ましくは40%以上である透明性を有することが好ましい。ここで、前記透過率が20%未満であると、前記の光輝性クリスタリットが見えづらくなる他、得られるフレグランス組成物に対する嗜好性が低下するので好ましくない。
【0024】
次に、前記フレグランス組成物の製造方法を述べれば、以下の通りである。
(1)先ず始めに、前記シリカ微粒子を水および/またはアルコールに分散させたクリスタリットを呈するシリカゾル(コロイド状溶液)を調製する。このようなクリスタリットを呈するシリカゾルについては、特に制限されるものではないが、本願出願人が先に出願した特開平5−85716号に記載された方法を用いて調製することができる。
【0025】
その調製方法は、前記平均粒子径を有するシリカ微粒子を1〜50重量%の濃度で分散させたシリカゾルを調製し、次いでこのシリカゾル中に含まれる夾雑イオン(即ち、陽イオンおよび陰イオン)を取り除いて、十分に脱イオン化する。このように脱イオン化することにより、前記シリカ微粒子の表面に存在する電気二重層が膨張して、粒子間に相互反発力が生じるため、コロイド状のシリカ微粒子は、面心立方格子や体心立方格子状等の結晶構造に類似した規則的な配列をする。
【0026】
この脱イオン化は、前記シリカゾルを陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂でイオン交換処理することにより行うことができる。具体的な処理方法としては、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を充填したカラムに前記シリカゾルを通す方法や、前記シリカゾル中に前記イオン交換樹脂を混合して撹拌した後、該樹脂を分離する方法等から適宜、選択することができる。また、脱イオン化の程度は電気伝導度を測定することによって確認することができる。
しかし、本発明においてこの脱イオン化処理は、前記シリカゾルの配合量や電気伝導度等によっても異なるが、これを香料、アルコールおよび水と混合した後に、一括して行うことも可能である。
【0027】
本発明で使用される前記シリカゾルの電気伝導度は、このシリカゾルを混合して調製される前記フレグランス組成物の電気伝導度が50μS/cm以下となるように調整することが望ましい。前記フレグランス組成物の電気伝導度を50μS/cm以下とするためには、該フレグランス組成物を構成する他の成分の種類や含有量等によっても異なるが、前記シリカゾルの電気伝導度を、200μS/cm以下、好ましくは100μS/cm、さらに好ましくは50μS/cm以下に調整しておくことが望ましい。
【0028】
上記の脱イオン化処理を行うと、シリカゾル中に含まれるシリカ微粒子が微結晶の集合体に似た構造(以下、微結晶集合体類似構造という)をとり、このために、前記シリカゾル中にクリスタリットが発現する。
このように脱イオン化されたシリカゾルに白色光が入射すると、前記の微結晶集合体類似構造の面により光が分光され、特定方向に特定波長の光が回折されて単色光が観察される。このシリカゾルは微結晶間の粒界と同様な不連続面が存在するので、個々の微結晶類似構造面での回折光が異なり、種々の色の光彩が観察され、オパールの輝きに似た光学現象が現れる。また、この微結晶類似構造の大きさ、即ち、クリスタリットの大きさはシリカ微粒子の粒子径、濃度、夾雑イオン濃度などによって変化するが、約7mm以下である。
【0029】
上記したように、前記フレグランス組成物を調製する際に使用されるシリカゾルは、市販の陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂で適宜、処理して十分に脱イオン化されたものであることが好ましい。
【0030】
(2)次いで、上記の方法で調製したシリカゾルに香料、アルコールおよび水を適量、混合して前記フレグランス組成物を製造する。この場合、前記の香料、アルコールおよび水は、前記シリカゾルの場合と同様に、予め脱イオン処理しておくことが好ましく、また前記香料は、その種類によっても異なるが、アルコールや水の中に分散させたものを使用することが望ましい。しかし、前記シリカゾル(場合によっては、香料)は、アルコール、水またはその混合溶液中に分散されたものであるため、アルコールや水は、上記の含有量の範囲で適宜、調整して添加する必要がある。即ち、これらの物質が適量含まれている場合には、新たに系外から添加する必要はない。
【0031】
なお、前記成分(a)〜(d)は、均一に混合してコロイド状態にあるフレグランス組成物を製造する必要があるので、上記の配合率の範囲でその配合比を適宜、調整することが望ましい。
このようにして、本発明に係るフレグランス組成物は製造されるが、前記組成物中に前記の構造色やクリスタリットを安定的に発現させるためには、さらに該組成物を両イオン交換樹脂等で処理して脱イオン化することが望ましい。
【0032】
本発明に係る前記フレグランス組成物においては、上記成分以外に本発明の効果を損なわない範囲において化粧品や芳香剤等で一般的に用いられている成分、例えば、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、着色剤、保湿剤、美容成分等を配合することができる。
また、このようにして得られる前記フレグランス組成物は、液状の形態をとるものであれば、香水、パヒューム、パルファム、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン等の化粧品や芳香剤に好適に使用することができる。
【0033】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
平均粒子径80nmのシリカ微粒子の水分散ゾル2.0kg(触媒化成工業(株)製Cataloid SI−60PN、SiO2 含有量40重量%、CV値8.9%、凝集率1.5%)に陽イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオンSK−1BH)を加えて撹拌し、pHが3以下になったところで該陽イオン交換樹脂を分離した。次いで、オートクレーブに入れて150℃の温度で16時間熟成した後、室温まで冷却し、再び陽イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオンSK−1BH)を加えて撹拌し、pHが3以下になったところで該陽イオン交換樹脂を分離した。次に、陰イオン交換樹脂40g(三菱化学(株)製、ダイヤイオンSA−20A)を加えて撹拌し、pHが4になったところで該陰イオン交換樹脂を分離し、濃度調整用の純水を加えて平均粒子径80nmのシリカ微粒子をSiO2基準で約35重量%含む水分散コロイド溶液2.2kgを得た。
【0035】
このコロイド溶液12.9gに、蒸留水21g、無水エタノール54.2g、香料4.6g(永廣堂本店製、調合香料 P.H Type)と両イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオン SMNUP8)を加えて混合し、2日間静置した後、前記両イオン交換樹脂を分離してフレグランス組成物A約90gを調製した。
【0036】
次いで、前記フレグランス組成物Aを透明な蓋付きプラスチック容器に収納して該組成物の構造色を観察したところ、青緑色を呈していることがわかった。(なお、本発明で云う構造色は、当然のことながら“反射色”を意味するものであるが、“透過色”はオレンジ色であった。)
さらに、これを静置すると、前記組成物中に緑色のクリスタリットが発現した。(なお、この色は、前記構造色の色と殆ど同じであるがきらきら輝いているので、容易に判別できる。)また、このプラスチック容器に振動を与えると、前記構造色(青緑色)は変化しないが、前記クリスタリットは消滅して見えなくなった。しかし、これを再び静置すると、直ちに同様なクリスタリットが発現した。
【0037】
このようにして得られたフレグランス組成物Aは、その電気伝導度が7.4μS/cmであり、また800nmの波長における透過率が70%であった。
また、前記クリスタリットの反射率を測定したところ、反射ピークは510nmの波長のところにあった。さらに、前記クリスタリッドが発現していない段階の反射率と前記クリスタリットの反射率(反射ピークの位置)を測定して、その差を求めたところ、約2.7%であることがわかった。その結果を、図1に示す。
【0038】
なお、上記の各測定方法について概要を示せば、以下の通りである。
平均粒子径
シリカゾル中に含まれるシリカ微粒子の10万倍拡大画像を透過電子顕微鏡(TEM)(日立ハイテック社製H−800)にて撮影した。次に、それをルーゼックス自動画像処理解析装置(ニコレ社製LUZEX−AP)で解折し、さらに付属の解析ソフトを使用して前記シリカ微粒子の平均粒子径を算出した。
【0039】
電気伝導度
調製したシリカゾルまたはフレグランス組成物を30ccのガラス製試験管に取り、導電率計(HORIBA社製D−24)を使用して前記シリカゾルまたはフレグランス組成物の電気伝導度を測定した。
【0040】
透過率
調製したフレグランス組成物を石英セル(長さ10mm、幅10mm、高さ45mmのサイズ)に入れた後、クリスタリットの発現を安定化させるために5分間静置した。次に、この石英セルを分光光度計(HITACHI社製U−2000)にセットし、800nmの波長における透過率を測定した。
【0041】
反射率および反射ピークの強度
調製したフレグランス組成物を石英セル(長さ10mm、幅10mm、高さ45mmのサイズ)に入れた後、クリスタリットの発現を安定化させるために5分間静置した。次に、この石英セルをよく振って反射率測定器(OTSUKA ELECTRONICS社製MCPD−2000瞬間マルチ測光システム)にセットし、その直後の400〜800nmの波長における反射率(すなわち、クリスタリットが発現していない段階の反射率)を測定した。さらに、5分間静置してクリスタリットを発現させた後、400〜800nmの波長域で観測された反射ピークの発生位置での反射率(すなわち、クリスタリットの反射率)を測定し、該反射ピークの強度を前記クリスタリットの反射率から前記のクリスタリットが発現していない段階の反射率を差し引いた値として求めた。
【実施例2】
【0042】
平均粒子径80nmのシリカ微粒子の水分散ゾル2.0kg(触媒化成工業(株)製Cataloid SI−60PN、SiO2 含有量40重量%、CV値8.9%、凝集率1.5%)に対して、実施例1と同様な条件下でイオン交換樹脂にて処理した後、濃度調整を行ない、前記シリカ微粒子をSiO2基準で約35重量%含む水分散コロイド溶液2.2kgを得た。
このコロイド溶液14.3gに、蒸留水6.8g、無水エタノール64.5g、香料4.5g(永廣堂本店製、調合香料 P.H Type)と両イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオン SMNUP8)を加えて混合し、2日間静置した後、前記両イオン交換樹脂を分離してフレグランス組成物B約85gを調製した。
【0043】
次いで、実施例1の場合と同様に、前記フレグランス組成物Bを透明な蓋付きプラスチック容器に収納して該組成物の構造色を観察したところ、青緑色を呈していることがわかった。
さらに、これを静置すると、前記組成物中に緑色のクリスタリットが発現した。また、このプラスチック容器に振動を与えると、前記の構造色は変化しないが、前記クリスタリットは消滅して見えなくなった。しかし、これを再び静置すると、直ちに同様なクリスタリットが発現した。
【0044】
このようにして得られたフレグランス組成物Bは、その電気伝導度が6.2μS/cmであり、また800nmの波長における透過率が73%であった。
また、前記クリスタリッドの反射率を測定したところ、反射ピークは505nmの波長のところにあった。さらに、前記のクリスタリットが発現していない段階の反射率と前記クリスタリットの反射率(反射ピークの位置)を測定して、その差を求めたところ、約2.6%であることがわかった。その結果を、図1に示す。
【実施例3】
【0045】
平均粒子径80nmのシリカ微粒子の水分散ゾル2.0kg(触媒化成工業(株)製Cataloid SI−60PN、SiO2 含有量40重量%、CV値8.9%、凝集率1.5%)に対して、実施例1と同様な条件下でイオン交換樹脂にて処理した後、濃度調整を行ない、前記シリカ微粒子をSiO2基準で約35重量%含む水分散コロイド溶液2.2kgを得た。
このコロイド溶液15.7gに、蒸留水19.0g、無水エタノール53.9g、香料4.7g(永廣堂本店製、調合香料 P.H Type)と両イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオン SMNUP8)を加えて混合し、2日間静置した後、前記両イオン交換樹脂を分離してフレグランス組成物C約90gを調製した。
【0046】
次いで、実施例1の場合と同様に、前記フレグランス組成物Cを透明な蓋付きプラスチック容器に収納して該組成物の構造色を観察したところ、青色を呈していることがわかった。
さらに、これを静置すると、前記組成物中に青色のクリスタリットが発現した。また、このプラスチック容器に振動を与えると、前記の構造色は変化しないが、前記クリスタリットは消滅して見えなくなった。しかし、これを再び静置すると、直ちに同様なクリスタリットが発現した。
【0047】
このようにして得られたフレグランス組成物Cは、その電気伝導度が7.5μS/cmであり、また800nmの波長における透過率が50%であった。
また、前記クリスタリットの反射率を測定したところ、反射ピークは495nmの波長のところにあった。さらに、前記のクリスタリットが発現していない段階の反射率と前記クリスタリットの反射率(反射ピークの位置)を測定して、その差を求めたところ、約5.9%であることがわかった。その結果を、図1に示す。
【実施例4】
【0048】
平均粒子径80nmのシリカ微粒子の水分散ゾル2.0kg(触媒化成工業(株)製Cataloid SI−60PN、SiO2 含有量40重量%、CV値8.9%、凝集率1.5%)に対して、実施例1と同様な条件下でイオン交換樹脂にて処理した後、濃度調整を行ない、前記シリカ微粒子をSiO2基準で約35重量%含む水分散コロイド溶液2.2kgを得た。
このコロイド溶液17.1gに、蒸留水8.3g、無水エタノール61.5g、香料4.5g(永廣堂本店製、調合香料 P.H Type)と両イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオン SMNUP8)を加えて混合し、2日間静置した後、前記両イオン交換樹脂を分離してフレグランス組成物D約90gを調製した。
【0049】
次いで、実施例1の場合と同様に、前記フレグランス組成物Dを透明な蓋付きプラスチック容器に収納して該組成物の構造色を観察したところ、青色を呈していることがわかった。
さらに、これを静置すると、前記組成物中に青色のクリスタリットが発現した。また、このプラスチック容器に振動を与えると、前記の構造色は変化しないが、前記クリスタリットは消滅して見えなくなった。しかし、これを再び静置すると、直ちに同様なクリスタリットが発現した。
【0050】
このようにして得られたフレグランス組成物Dは、その電気伝導度が7.0μS/cmであり、また800nmの波長における透過率が81%であった。
また、前記クリスタリットの反射率を測定したところ、反射ピークは475nmの波長のところにあった。さらに、前記のクリスタリットが発現していない段階の反射率と前記クリスタリットの反射率(反射ピークの位置)を測定して、その差を求めたところ、約5.8%であることがわかった。その結果を、図1に示す。
【実施例5】
【0051】
平均粒子径80nmのシリカ微粒子の水分散ゾル2.0kg(触媒化成工業(株)製Cataloid SI−60PN、SiO2 含有量40重量%、CV値8.9%、凝集率1.5%)に対して、実施例1と同様な条件下でイオン交換樹脂にて処理した後、濃度調整を行ない、前記シリカ微粒子をSiO2基準で約35重量%含む水分散コロイド溶液2.2kgを得た。
このコロイド溶液12.9gに、蒸留水21.0g、無水エタノール54.2g、香料7.7g(永廣堂本店製、調合香料 P.H Type)と両イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオン SMNUP8)を加えて混合し、2日間静置した後、前記両イオン交換樹脂を分離してフレグランス組成物E約90gを調製した。
【0052】
次いで、実施例1の場合と同様に、前記フレグランス組成物Eを透明な蓋付きプラスチック容器に収納して該組成物の構造色を観察したところ、緑色を呈していることがわかった。
さらに、これを静置すると、前記組成物中に緑色のクリスタリットが発現した。また、このプラスチック容器に振動を与えると、前記の構造色は変化しないが、前記クリスタリットは消滅して見えなくなった。しかし、これを再び静置すると、直ちに同様なクリスタリットが発現した。
【0053】
このようにして得られたフレグランス組成物Eは、その電気伝導度が6.6μS/cmであり、また800nmの波長における透過率が46%であった。
また、前記クリスタリットの反射率を測定したところ、反射ピークは530nmの波長のところにあった。さらに、前記のクリスタリットが発現していない段階の反射率と前記クリスタリットの反射率(反射ピークの位置)を測定して、その差を求めたところ、約0.7%であることがわかった。その結果を、図1に示す。
【実施例6】
【0054】
平均粒子径70nmのシリカ微粒子の水分散ゾル2.0kg(触媒化成工業(株)製Cataloid SI−50PN、SiO2 含有量40重量%、CV値8.5%、凝集率1.2%)に対して、実施例1と同様な条件下でイオン交換樹脂にて処理した後、濃度調整を行ない、前記シリカ微粒子をSiO2基準で約35重量%含む水分散コロイド溶液2.2kgを得た。
このコロイド溶液10.0gに、蒸留水23.0g、無水エタノール54.4g、香料4.6g(永廣堂本店製、調合香料 P.H Type)と両イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオン SMNUP8)を加えて混合し、2日間静置した後、前記両イオン交換樹脂を分離してフレグランス組成物F約90gを調製した。
【0055】
次いで、実施例1の場合と同様に、前記フレグランス組成物Fを透明な蓋付きプラスチック容器に収納して該組成物の構造色を観察したところ、青色を呈していることがわかった。
さらに、これを静置すると、前記組成物中に青色のクリスタリットが発現した。また、このプラスチック容器に振動を与えると、前記の構造色は変化しないが、前記クリスタリットは消滅して見えなくなった。しかし、これを再び静置すると、直ちに同様なクリスタリットが発現した。
【0056】
このようにして得られたフレグランス組成物Fは、その電気伝導度が10.4μS/cmであり、また800nmの波長における透過率が68%であった。
また、前記クリスタリットの反射率を測定したところ、反射ピークは485nmの波長のところにあった。さらに、前記のクリスタリットが発現していない段階の反射率と前記クリスタリットの反射率(反射ピークの位置)を測定して、その差を求めたところ、約0.7%であることがわかった。その結果を、図1に示す。
【実施例7】
【0057】
平均粒子径100nmのシリカ微粒子の水分散ゾル2.0kg(触媒化成工業(株)製Cataloid SI−70PN、SiO2 含有量40重量%、CV値12.8%、凝集率0.4%)に対して、実施例1と同様な条件下でイオン交換樹脂にて処理した後、濃度調整を行ない、前記シリカ微粒子をSiO2基準で約35重量%含む水分散コロイド溶液2.2kgを得た。
このコロイド溶液11.4gに、蒸留水30.0g、無水エタノール55.6g、香料3.0g(永廣堂本店製、調合香料 P.H Type)と両イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオン SMNUP8)を加えて混合し、2日間静置した後、前記両イオン交換樹脂を分離してフレグランス組成物G約95gを調製した。
【0058】
次いで、実施例1の場合と同様に、前記フレグランス組成物Gを透明な蓋付きプラスチック容器に収納して該組成物の構造色を観察したところ、白味がかった赤色(表1では「白赤」と記載する)を呈していることがわかった。
さらに、これを静置すると、前記組成物中に赤色、青色および緑色からなる3色のクリスタリットが発現した。また、このプラスチック容器に振動を与えると、前記の構造色は変化しないが、前記クリスタリットは消滅して見えなくなった。しかし、これを再び静置すると、直ちに同様なクリスタリットが発現した。このフレグランス組成物Gを写真撮影した結果を、図2に示す。
【0059】
このようにして得られたフレグランス組成物Gは、その電気伝導度が5.2μS/cmであり、また800nmの波長における透過率が82%であった。
また、前記クリスタリットの反射率を測定したところ、反射ピークは685nmの波長のところにあった。さらに、前記のクリスタリットが発現していない段階の反射率と前記クリスタリットの反射率(反射ピークの位置)を測定して、その差を求めたところ、約3%であることがわかった。その結果を、図1に示す。
【比較例1】
【0060】
平均粒子径が25nmのシリカ微粒子の水分散ゾル2.0kg(触媒化成工業(株)製、Cataloid SI−50、SiO2 含有量45重量%、CV値8.3%、凝集率1.2%)を使用した以外は、実施例1と同様な方法で、前記シリカ微粒子をSiO2基準で約35重量%含む水分散コロイド溶液2.5kgを得た。
このコロイド溶液7.1gに、蒸留水23.1g、無水エタノール64.8g、香料5.0g(永廣堂本店製、調合香料 P.H Type)と両イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオン SMNUP8)を加えて混合し、2日間静置した後、前記両イオン交換樹脂を分離してフレグランス組成物H約95gを調製した。
【0061】
次いで、実施例1の場合と同様に、前記フレグランス組成物Hを透明な蓋付きプラスチック容器に収納して該組成物の構造色を観察したところ、無色透明に近い色を呈しており、本発明でいう構造色は得られなかった。また、クリスタリットの発現も確認できなかった。
さらに、前記フレグランス組成物Hは、その電気伝導度が3.4μS/cmであり、また800nmの波長における透過率が99%であった。
【比較例2】
【0062】
平均粒子径が150nmのシリカ微粒子の水分散ゾル2.0kg(触媒化成工業(株)製、SiO2 含有量40重量%、CV値12.99%、凝集率1.85%)を使用した以外は、実施例1と同様な方法で、前記シリカ微粒子をSiO2基準で約35重量%含む水分散コロイド溶液2.2kgを得た。
このコロイド溶液22.9gに、蒸留水7.4g、無水エタノール64.7g、香料5.0g(永廣堂本店製、調合香料 P.H Type)と両イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオン SMNUP8)を加えて混合し、2日間静置した後、前記両イオン交換樹脂を分離してフレグランス組成物I約95gを調製した。
【0063】
次いで、実施例1の場合と同様に、前記フレグランス組成物Iを透明な蓋付きプラスチック容器に収納して該組成物の構造色を観察したところ、緑色を呈しているものの、透明性はかなり低く、白濁した状態にあった。また、クリスタリットの発現は確認できなかった。
さらに、前記フレグランス組成物Iは、その電気伝導度が4.0μS/cmであり、また800nmの波長における透過率が0.5%であった。
【比較例3】
【0064】
実施例1で調製したコロイド溶液1.43gに、蒸留水27.5g、無水エタノール66.1g、香料5.0g(永廣堂本店製、調合香料 P.H Type)と両イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオン SMNUP8)を加えて混合し、2日間静置した後、前記両イオン交換樹脂を分離してフレグランス組成物J約95gを調製した。
【0065】
次いで、実施例1の場合と同様に、前記フレグランス組成物Jを透明な蓋付きプラスチック容器に収納して該組成物の構造色を観察したところ、無色透明に近い色を呈しており、本発明でいう構造色は得られなかった。また、クリスタリットの発現も確認できなかった。
さらに、前記フレグランス組成物Jは、その電気伝導度が1.8μS/cmであり、また800nmの波長における透過率が95%であった。
【比較例4】
【0066】
実施例1で調製したコロイド溶液17.1gに、蒸留水1.9g、無水エタノール41.0g、香料5.0g(永廣堂本店製、調合香料 P.H Type)と両イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオン SMNUP8)を加えて混合し、2日間静置した後、前記両イオン交換樹脂を分離してフレグランス組成物K約95gを調製した。
【0067】
次いで、実施例1の場合と同様に、前記フレグランス組成物Kを透明な蓋付きプラスチック容器に収納して該組成物の構造色を観察したところ、青色を呈していたが、クリスタリットの発現は確認できなかった。
さらに、前記フレグランス組成物Kは、その電気伝導度が13.0μS/cmであり、また800nmの波長における透過率が76%であった。
【比較例5】
【0068】
実施例1で調製したコロイド溶液17.1gに、蒸留水1.9g、無水エタノール41.0g、香料40g(永廣堂本店製、調合香料 P.H Type)と両イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオン SMNUP8)を加えて混合し、2日間静置した後、前記両イオン交換樹脂を分離してフレグランス組成物L約95gを調製した。
【0069】
次いで、実施例1の場合と同様に、前記フレグランス組成物Lを透明な蓋付きプラスチック容器に収納して該組成物の構造色を観察したところ、青色を呈していたが、クリスタリットの発現は確認できなかった。
さらに、前記フレグランス組成物Lは、その電気伝導度が2.7μS/cmであり、また800nmの波長における透過率が92%であった。
【比較例6】
【0070】
実施例1で調製したコロイド溶液0.4kgに、無水エタノール1kgを加え、UFフィルター(旭化成ケミカルズ(株)製、microza SIP−1013)にて限外濾過しながら、徐々に無水エタノールを加えて溶媒置換を行なった。そして、水分約0.3%を含む平均粒子径80nmのシリカ微粒子をSiO2基準で約10重量%含むエタノール分散コロイド溶液1.2kgを得た。
このコロイド溶液90gに香料5.0g(永廣堂本店製、調合香料 P.H Type)と両イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオン SMNUP8)を加えて混合し、2日間静置した後、前記両イオン交換樹脂を分離してフレグランス組成物M約95gを調製した。
【0071】
次いで、実施例1の場合と同様に、前記フレグランス組成物Mを透明な蓋付きプラスチック容器に収納して該組成物の構造色を観察したところ、青色を呈していたが、クリスタリットの発現は確認できなかった。
さらに、前記フレグランス組成物Mは、その電気伝導度が4.0μS/cmであり、また800nmの波長における透過率が89.4%であった。
【比較例7】
【0072】
実施例1で調製したコロイド溶液17.1gに、蒸留水1.9g、無水エタノール41.0g、香料5.0g(永廣堂本店製、調合香料 P.H Type)と両イオン交換樹脂50g(三菱化学(株)製、ダイヤイオン SMNUP8)を加えて混合し、2日間静置した後、前記両イオン交換樹脂を分離してフレグランス組成物N約95gを調製した。
【0073】
次いで、実施例1の場合と同様に、前記フレグランス組成物Nを透明な蓋付きプラスチック容器に収納して該組成物の構造色を観察したところ、青色を呈していたが、クリスタリッドの発現は確認できなかった。さらに、加えた香料の油層が分離して、前記組成物中に均一に分散されていないことがわかった。
さらに、前記フレグランス組成物Nは、その電気伝導度が17.8μS/cmであり、また800nmの波長における透過率が35%であった。
【比較例8】
【0074】
実施例1で調製したコロイド溶液12.9gに、蒸留水21.0g、無水エタノール54.2gおよび香料4.6g(永廣堂本店製、調合香料 P.H Type)を加えて混合し、両イオン交換樹脂による処理を行わずに、2日間静置してフレグランス組成物O約100gを調製した。
【0075】
次いで、実施例1の場合と同様に、前記フレグランス組成物Oを透明な蓋付きプラスチック容器に収納して該組成物の構造色を観察したところ、無色透明に近い色を呈しており、本発明でいう構造色は得られなかった。また、クリスタリットの発現も確認できなかった。
さらに、前記フレグランス組成物Oは、その電気伝導度が7.4μS/cmであり、また800nmの波長における透過率が87%であった。
【0076】
上記の実施例1〜7および比較例1〜8で調製されたフレグランス組成物の比較を容易にするため、これらの主要データを整理すれば、以下の表1に示す通りであった。
【0077】
【表1】

【実施例8】
【0078】
実施例1〜7で調製されたフレグランス組成物A〜Gを収納した透明な香水用ガラス容器に栓をして、静置状態で1ケ月間放置した後、各組成物の状態を目視で観察した。その結果、各組成物の構造色やクリスタリットの発現状況は、放置前の状態と殆ど同じであった。
さらに、前記容器の栓を抜いて香料の匂いを嗅いだところ、放置前の状態と殆ど同じであった。すなわち、本発明に係るフレグランス組成物A〜Gは、密閉できるガラス容器やプラスチック容器等に収納して保管する限りにおいては、長期間にわたりその性能が持続されることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例1〜7で調製されたフレグランス組成物A〜Gの反射率を、波長400〜800nmの可視光範囲で測定した結果を示す。この図からは、前記クリスタリットの反射ピークにおける反射率が、該クリスタリットが発現していない段階の反射率より0.5%以上高いことが観測される。
【図2】実施例7で調製されたフレグランス組成物Gを写真撮影した結果(倍率:3倍)を示す。尚、この図(白黒写真)からは判別できないが、前記組成物中に赤色、青色および緑色のクリスタリットの発色が見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(d)の成分を含む、イオン交換樹脂で処理されたコロイド状物質からなる組成物であって、該組成物が単色の構造色を有し、さらに該組成物中に光輝性のクリスタリットを有するフレグランス組成物。
(a)平均粒子径40〜140nmのシリカ微粒子:1〜10重量%
(b)香料:0.1〜30重量%
(c)水:1〜40重量%
(d)アルコール:50〜95重量%
【請求項2】
前記構造色が、青色、緑色、赤色またはその中間色であることを特徴とする請求項1に記載のフレグランス組成物。
【請求項3】
前記クリスタリットが、青色、緑色、赤色および/またはその中間色を呈することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のフレグランス組成物。
【請求項4】
波長400〜800nmの可視光範囲で観測される前記クリスタリットの反射ピークにおける反射率が、該クリスタリットが発現していない段階の反射率より0.5%以上高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフレグランス組成物。
【請求項5】
前記シリカ微粒子が、平均粒子径40〜140nmのシリカ微粒子を含むシリカゾルを陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂で処理して十分に脱イオンされたシリカゾルを配合して得られたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフレグランス組成物。
【請求項6】
前記香料が、前記コロイド状物質中に均一に分散され、実質的に油層を形成しないものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフレグランス組成物。
【請求項7】
前記アルコールが、エチルアルコールであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフレグランス組成物。
【請求項8】
前記フレグランス組成物が、50μS/cm以下の電気伝導度を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のフレグランス組成物。
【請求項9】
前記フレグランス組成物が、800nmの波長における透過率が20%以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のフレグランス組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−81465(P2008−81465A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265749(P2006−265749)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】