説明

フレーム部材

【課題】
連結用又は固定用に形成された隣接する2箇所の孔部の中間部位を簡単に抜落させて容易に長孔を形成しうるとともに、各孔部の中間部位の強度低下を防止して安易に破損することのないフレーム部材を提供する、
【解決手段】
細長状に形成された板状部材における長さ方向の複数箇所に一定間隔で孔部が設けられると共に、上記各孔部の間には幅方向に沿って溝部が設けられると共に長さ方向に沿って一対のスリットが形成されている。上記一対のスリットは、上記孔部の上端部及び下端部において互いに平行に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレーム部材に係り、特に、ロボットコンテストに出場するロボットや、模型等を製作するために使用しうるフレーム部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボコンと称され、ロボットに各種競技を行わせるロボットコンテストが実施されることが多い。
上記ロボコンで使用されるロボットは、出場する学生等が自ら設計して製作するものであり、種々の資材が使用される。
【0003】
上記資材の一種として、従来、特許文献1に記載されたようなアーム部材が存在する。
【特許文献1】実用新案公報 平4−25199号
【0004】
上記アーム部材は、切断容易にして所定の強度性を有する合成樹脂製低発泡材等により細長板状に形成され、同一間隔毎に多数の丸孔が穿設され、上記各丸孔の中間部には幅方向に溝が刻設され、又、各丸孔の周縁部に接して長さ方向に溝が刻設され、上記丸孔と上記長さ方向の溝により囲繞された部位を抜落して所望形状の長孔を形成しうるように構成されている。
【0005】
上記アーム部材は、上記幅方向の溝に沿って折ることにより適宜な長さに分断することができると共に、上記丸孔にボルトやネジ等を挿通して他の部材と連結又は固定しうるように構成されている。
【0006】
また、上記アーム部材と他の部材とを連結又は固定する場合に、上記丸孔の位置が多少ずれた状態でも、そのズレを吸収して支障なく連結又は固定しうるように、上記丸孔と上記長さ方向の溝により囲繞された部位を抜落して所望形状の長孔を形成しうるように構成されている。
【0007】
しかしながら、上記アーム部材にあっては、軸方向中央部に長さ方向に沿って溝部が形成されていることから、特に、アーム部材の長さ方向における強度が低下し、アーム部材を取り付ける対象が限定されてしまい、重量の大きな対象物を固定した場合にはアームそのものが損傷する可能性もあった。
【0008】
また、長孔を形成する場合には、上記丸孔の間の溝部全体をカッター等で切断しなければならず、上記長孔の形成作業が煩雑であるという不具合があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の課題は、連結用又は固定用に形成された隣接する2箇所の孔部の中間部位を簡単に抜落させて容易に長孔を形成しうるとともに、各孔部の中間部位の強度低下を防止して安易に破損することのないフレーム部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1記載の本発明に係るフレーム部材は、細長状に形成された板状部材における長さ方向の複数箇所に一定間隔で孔部が設けられると共に、上記各孔部の間には幅方向に沿って溝部が設けられると共に長さ方向に沿って一対のスリットが形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
即ち、請求項1記載の本発明に係るフレーム部材にあっては、上記板状部材における長さ方向の複数箇所に一定間隔で設けられた上記孔部にボルトやネジ等を挿通させることにより他の部材と連結又は固定することができる。
また、上記各孔部の間に、幅方向に沿って設けられた上記溝部において上記板状部材を折ることにより、上記フレーム部材を適宜な長さに分断して使用することができる。
また、上記各孔部の間に、長さ方向に沿って一対のスリットが形成されていることから、上記孔部と上記スリットとにより囲まれた部位を抜落させることにより長孔を形成することができる。
【0012】
また、請求項2記載の本発明に係るフレーム部材は、上記一対のスリットは、上記孔部の上端部及び下端部において形成されていることを特徴とする。
【0013】
即ち、請求項2記載の本発明に係るフレーム部材にあっては、上記のように、上記孔部と上記スリットとにより囲繞された部位を抜落させることにより長孔を形成する場合に、上記一対のスリットの一方を上記孔部の上端部に連通させると共に、上記スリットの他方を上記孔部の下端部に連通させることにより上記長孔を形成することができる。
【0014】
また、請求項3記載の本発明に係るフレーム部材は、上記孔部は丸孔に形成され、上記一対のスリットは互いに平行に形成されていると共に上記孔部とは離間して形成されていることを特徴とする。
【0015】
即ち、請求項3記載の本発明に係るフレーム部材にあっては、上記孔部にボルトやネジ等の接合具の軸部を挿通しやすいように上記孔部は丸孔に形成されている。また、上記一対のスリットで挟まれた部位を抜落することにより幅が一定の長孔を形成することができるように、上記一対のスリットは互いに平行に形成されている。また、上記スリットと上記孔部とが連通せず、連通させる場合は上記スリットと上記孔部の間をカッター等で切断するように、上記スリットと上記孔部は離間して形成されている。
【0016】
また、請求項4記載の本発明に係るフレーム部材は、上記溝部は断面V字状であって、上記スリットに交差するように形成されていることを特徴とする。
【0017】
即ち、請求項4記載の本発明に係るフレーム部材にあっては、上記板状部材が上記溝部の位置で折って分断しやすくなるように、上記溝部の断面形状がV字状に形成されている。また、上記板状部材を上記スリットが設けられた部位においても折って分断しうるように、上記溝部は上記スリットと交差するように形成されている。
【0018】
また、請求項5記載の本発明に係るフレーム部材は、上記板状部材は合成樹脂製であって、厚み寸法が3mmに、隣接する上記各丸孔部間の距離寸法が10mmに、上記各丸孔部の直径が3.2mmに、上記スリットの長さ寸法が5.4mmにそれぞれ設定されていることを特徴とする。
【0019】
即ち、請求項5記載の本発明に係るフレーム部材にあっては、ロボットや模型等を製作する場合に、取り扱いやすく、使い勝手が良好となるように、上記各部位の寸法がそれぞれ最適な値に設定されている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の本発明に係るフレーム部材は、細長状に形成された板状部材における長さ方向の複数箇所に一定間隔で孔部が設けられると共に、上記各孔部の間には幅方向に沿って溝部が設けられていることから、上記孔部を用いて上記板状部材を他の部材に連結又は固定することができると共に、上記溝部の位置で上記板状部材を折って適宜な長さに容易に分断することができるので、ロボットや模型等を製作する場合に取り扱いやすく、使い勝手が良好である。
また、上記各孔部の間には長さ方向に沿って一対のスリットが形成されていることから、上記スリットに切断用具を挿入して、上記スリットと上記孔部間を切断するのみで簡単に長孔を形成することができる。その場合、上記切断する距離は、上記スリットと上記孔部間で極めて短いので、容易に切断作業を完了させることができ、長孔形成作業の煩雑を解消することができる。
また、上記一対のスリット間には肉厚な部位が残存しているので、上記板状部材における上記各孔部間の強度低下が防止され、安易に破損しなくなる。
【0021】
また、請求項2記載の本発明に係るフレーム部材は、上記一対のスリットは、上記孔部の上端部及び下端部において形成されていることから、上記スリットと上記孔部の間の部位を切断するのみで、上記スリットの一方を上記孔部の上端部に連通させると共に、上記スリットの他方を上記孔部の下端部に連通させて、上記スリットと上記孔部とで囲繞された部位を抜落させ、容易に長孔を形成することができる。
【0022】
また、請求項3記載の本発明に係るフレーム部材は、上記孔部は丸孔に形成され、上記一対のスリットは互いに平行に形成されていると共に上記孔部とは離間して形成されていることから、上記スリットと上記孔部間に位置する部位をカッター等で切断することにより、幅が一定で、周縁部に段差のない長孔を容易に形成することができる。従って、上記長孔にボルトやネジ等を挿通して上記板状部材と他の部材とを連結した状態で、上記板状部材の位置を他の部材に対し変位させることにより位置調整を行う場合に、上記ボルトやネジ等が上記長孔内において引っ掛かったりせずに移動しうるので、上記位置調整をスムースに行うことができる。
【0023】
また、請求項4記載の本発明に係るフレーム部材は、上記溝部は断面V字状であることから、上記溝部の位置で上記板状部材を折って分断しやすい。また、上記溝部は上記スリットに交差するように形成されていることから、上記スリットが形成された部位で上記板状部材を折って分断することになり、抵抗が小さくなるので、分断が容易である。
【0024】
また、請求項5記載の本発明に係るフレーム部材は、上記板状部材は合成樹脂製であって、厚み寸法が3mmに、隣接する上記各丸孔部間の距離寸法が10mmに、上記各丸孔部の直径が3.2mmに、上記スリットの長さ寸法が5.4mmにそれぞれ設定されていることから、上記板状部材を上記溝部の位置で折って適宜な長さに容易に分断することができると共に、上記スリットと上記孔部間をカッター等で切断することにより上記長孔を形成する作業を容易かつスムースに行うことができるので、ロボットや模型等を製作する場合に取り扱いやすく、使い勝手が良い。
また、所要の肉厚等を有して、必要な強度を保持することができるので、安易な破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態に係るフレーム部材11は、図1及び図2に示すように、細長状に形成された板状部材12における長さ方向の複数箇所に一定間隔で孔部13が設けられると共に、図1及び図5に示すように、上記各孔部13の間には幅方向に沿って溝部14が設けられると共に、図1及び図3に示すように、長さ方向に沿って一対のスリット15が形成されている。
また、上記一対のスリット15は、図1に示すように、上記孔部13の上端部及び下端部において形成されている。
また、図1に示すように、上記孔部13は丸孔に形成され、上記一対のスリット15は互いに平行に形成されていると共に上記孔部13とは離間して形成されている。
また、図5に示すように、上記溝部14は断面V字状であって、図1に示すように、上記スリット15に交差するように形成されている。
また、上記板状部材12は合成樹脂製であって、厚み寸法が3mmに、隣接する上記各孔部13間の距離寸法が10mmに、上記各孔部13の直径が3.2mmに、上記スリット15の長さ寸法が5.4mmにそれぞれ設定されている。
【実施例1】
【0026】
図は実施例に係るフレーム部材11を示したものである。
本実施例に係る上記フレーム部材11は、図1に示すように、合成樹脂により細長状に形成された板状部材12により構成されている。
【0027】
上記板状部材12は、長さ寸法が200mmに、幅寸法が10mmに、厚み寸法が3mmにそれぞれ設定されている。
【0028】
上記板状部材12には、図1に示すように、長さ方向の複数箇所に一定間隔で孔部13が設けられている。
【0029】
図1に示すように、上記孔部13は丸孔に形成され、上記各孔部13の直径は3.2mmに設定されている。
また、隣接する上記各孔部13間の距離寸法は10mmに設定されている。
【0030】
また、上記板状部材12には、図1及び図5に示すように、上記各孔部13の間に、幅方向に沿って溝部14が設けられている。
上記溝部14は断面V字状に形成されている。
【0031】
また、上記板状部材12における上記各孔部13の間には、図1及び図3に示すように、長さ方向に沿って一対のスリット15も形成されている。
従って、図1に示すように、上記溝部14と上記スリット15は互いに交差するように形成されている。
【0032】
上記一対のスリット15は、図1に示すように、上記孔部13の上端部及び下端部において、互いに平行に形成されている。
【0033】
また、上記スリット15は、長さ寸法が5.4mmに設定されると共に、幅寸法はカッター等切断具の刃部を挿入しうる値に設定されている。
【0034】
また、上記スリット15は、図1に示すように、上記孔部13とは離間して形成されている。
上記スリット15と上記孔部13とを離間させている部位、即ち、上記スリット15と上記孔部13の間に位置する部位には、図1及び図4に示すように、上記板状部材12の長さ方向に沿って凹溝16が形成されている。
【0035】
上記凹溝16は上記スリット15の延長線上に設けられ、上記一方のスリット15は上記凹溝16を介し上記孔部13の上端部に連続し、上記他方のスリット15は上記凹溝16を介し上記孔部13の下端部に連続している。
【0036】
次に、上記実施例の作用について説明する。
本実施例に係るフレーム部材11は、ロボットや模型等を製作するための資材として使用される。即ち、本実施例では、図8に示すように、車輪20付きの搬送ロボット19においてバケット21を支持するためのアームとして使用されている。
なお、製作するロボットや模型の種類及び構造は自由であり、また、上記フレーム部材11を使用する部位も自由であり、本実施例に限定されるものではない。
【0037】
本実施例に係るフレーム部材11は、細長状に形成された板状部材12における長さ方向の複数箇所に一定間隔で孔部13が設けられていることから、上記孔部13を用いて他の部材に連結又は固定することができる。
即ち、上記孔部13にボルトやネジ等の接合部材を挿通することにより連結又は固定することができる。
【0038】
ロボットや模型等を製作する場合、上記フレーム部材11が長過ぎて、短縮させたい場合がある。その場合は、上記板状部材12において、上記各孔部13の間に幅方向に沿って形成されている上記溝部14の位置で折ることにより所要な長さに分断することができる。
上記板状部材12を上記溝部14の位置で折るには、上記板状部材12を上記溝部14の位置で繰り返し屈曲させればよい。上記板状部材12は合成樹脂製であり、かつ、上記溝部14は断面V字状に形成されていることから、上記溝部14において複数回繰り返し屈曲させれば疲労させて容易に折ることができる。
【0039】
また、上記フレーム部材11を他の部材と連結する場合、寸法上の誤差から連結位置がずれる場合がある。また、上記フレーム部材11が作動する際に上記連結位置が若干移動する場合がある。従って、連結位置を固定せず、若干変位できるように自由度を持たせて置くことが必要な場合もある。即ち、上記孔部13に挿通した接合部材が若干移動しうるようにする必要がある。
その場合は、丸孔に形成された上記孔部13を使用するのではなく、図6に示すように、上記孔部13と孔部13との間を抜落させて長孔17を形成し、その長孔17に、図7に示すように、接合部材18を挿通させればよい。
【0040】
上記長孔17を形成するには、上記板状部材12の長さ方向に沿って形成された一対の上記スリット15を使用する。
即ち、上記スリット15と孔部13との間の溝部16,16に、例えば、マイナスドライバーの刃部を配置してドライバーに力を加えて上記溝部16,16を破断させ、孔部13とスリット15とを連通させる。これにより、上記スリット15と上記孔部13とにより囲繞された部位を抜落させて長孔17を形成することができる。
【0041】
この場合、上記スリット15と上記孔部13とを離間させている部位、即ち、上記スリット15と上記孔部13の間に位置する部位には、上記板状部材12の長さ方向に沿って凹溝16が形成され、肉厚が小さくなっていることから、上記切断作業が容易である。
【0042】
また、上記一対のスリット15は、上記孔部13の上端部及び下端部において形成されると共に、上記一対のスリット15は互いに平行に形成されていることから、上記のように、上記スリット15と上記孔部13で囲繞された部位を抜落させると、幅が一定で、周縁部に段差のない長孔17を形成することができる。
【0043】
従って、上記長孔17に挿通した接合部材18が上記長孔17に沿って長さ方向に移動する場合に、上記接合部材18は上記長孔17の周縁部に引っ掛かることなく、スムースに長孔17内部を移動することができる。
【0044】
また、上記板状部材12は、厚み寸法が3mmに、隣接する上記各孔部13間の距離寸法が10mmに、上記各孔部13の直径が3.2mmに、上記スリット15の長さ寸法が5.4mmにそれぞれ設定されており、これらの寸法値は最適に設定されていることから、ロボットや模型等を製作する場合に取り扱い易く、使い勝手が良好である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のフレーム部材は、ロボットや模型等を製作するために使用する資材に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例に係るフレーム部材の平面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】図1のB−B線における断面図である。
【図4】図1のC−C線における断面図である。
【図5】実施例に係るフレーム部材の側面図である。
【図6】実施例に係るフレーム部材に長孔を形成した状態の平面図である。
【図7】実施例に係るフレーム部材を他のフレーム部材と連結した状態の平面図である。
【図8】実施例に係るフレーム部材を使用して製作した搬送ロボットの斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
11 フレーム部材
12 板状部材
13 孔部
14 溝部
15 スリット
16 凹溝
17 長孔
18 接合部材
19 搬送ロボット
20 車輪
21 バケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長状に形成された板状部材における長さ方向の複数箇所に一定間隔で孔部が設けられると共に、上記各孔部の間には幅方向に沿って溝部が設けられると共に長さ方向に沿って一対のスリットが形成されていることを特徴とするフレーム部材。
【請求項2】
上記一対のスリットは、上記孔部の上端部及び下端部において形成されていることを特徴とする請求項1記載のフレーム部材。
【請求項3】
上記孔部は丸孔に形成され、上記一対のスリットは互いに平行に形成されていると共に上記孔部とは離間して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のフレーム部材。
【請求項4】
上記溝部は断面V字状であって、上記スリットに交差するように形成されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載のフレーム部材。
【請求項5】
上記板状部材は合成樹脂製であって、厚み寸法が3mmに、隣接する上記各孔部間の距離寸法が10mmに、上記各孔部の直径が3.2mmに、上記スリットの長さ寸法が5.4mmにそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項1〜4記載のフレーム部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−29660(P2007−29660A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221405(P2005−221405)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000129264)株式会社キクイチ (10)
【Fターム(参考)】