説明

フロッグレッグアームロボット

【課題】専用の冶具を用いることなく、フロッグレッグアームロボットの正確な組立てを可能とする。
【解決手段】本体部1に対して接続されると共に基準平面に沿って対称に揺動される一対のアーム部2と、アーム部2を揺動する駆動部5とを備えるフロッグレッグアームロボットであって、上記アーム部2に、フロッグレッグアームロボットの組立て時において上記アーム部2を上記本体部1に対する基準姿勢とするためのマーク100が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部に対して接続されると共に基準平面に沿って対称に揺動される一対のアーム部と、アーム部を揺動する駆動部とを備えるフロッグレッグアームロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、搬送対象物を搬送する搬送装置において、フロッグレッグアームロボットを備えるものが知られている。
このフロッグレッグアームロボットは、本体部に対して接続されると共に対称に揺動される一対のアーム部と、両方のアーム部に接続されるハンド部とを備えている。そして、フロッグレッグアームロボットは、駆動モータにて該アーム部を揺動して、ハンド部を直線移動させることによって、ハンド部に支持された搬送対象物を搬送する。
【0003】
このようなフロッグレッグアームロボットにおいては、アーム部が複数の部材(上腕部や前腕部)から構成されている。そして、フロッグレッグアームロボットを組み立てる場合には、アーム部の構成部材やハンド部を組み立てた後、アーム部を揺動するための駆動モータや該駆動モータの回転動力を伝達するギア等が組み付けられる。
【0004】
ところで、後のフロッグレッグアームロボットの制御を可能とするために、先に組立てられたアーム部やハンド部と駆動モータやギアとの位置関係を明確にしておく必要がある。
このため、駆動モータやギアを組みつける場合には、先に組立てられたアーム部やハンド部を基準姿勢に保ちながら、その状態で駆動モータやギアの組み付けを行う必要がある。
そこで、特許文献1には、アーム部やハンド部の適所に穴を形成し、これらの穴に挿入可能なピンを備える専用の冶具を用いて、アーム部やハンド部の基準姿勢を保つ方法が提案されている。
【特許文献1】特開2005−246576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にて提案された方法では、アーム部やハンド部の基準姿勢を保つために、上述のように専用の冶具が必要となる。
この冶具は、アーム部を最大限伸ばした場合におけるアーム部の一端部から他端部まで亘るような大型のものである。
このため、特にフロッグレッグアームロボットが大型化した場合には、冶具がかなり大型化し、冶具の扱いが困難となる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、専用の冶具を用いることなく、フロッグレッグアームロボットの正確な組立てを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、本体部に対して接続されると共に基準平面に沿って対称に揺動される一対のアーム部と、アーム部を揺動する駆動部とを備えるフロッグレッグアームロボットであって、上記アーム部に、フロッグレッグアームロボットの組立て時において上記アーム部を上記本体部に対する基準姿勢とするためのマークが形成されていることを特徴とする。
【0008】
このような特徴を有する本発明によれば、マークを用いることにより、駆動部を組み付ける場合に、アーム部が基準姿勢とされる。
【0009】
また、本発明においては、上記アーム部が、本体部に対して基準平面に沿って揺動可能に接続される第1の上腕部及び第2の上腕部と、上記第1の上腕部に対して上記基準平面に沿って揺動可能に接続される第1の前腕部と、上記第2の上腕部に対して上記基準平面に沿って揺動可能に接続される第2の前腕部とを備え、上記マークが、上記第1の上腕部に直線状に形成される第1の線マークと、上記第2の上腕部に直線状に形成される第2の線マークとからなり、上記第1の線マークと上記第2の線マークとが一直線上に並ぶ場合に上記アーム部が上記基準姿勢となるという構成を採用する。
【0010】
また、本発明においては、上記マークは、上記アーム部の成形過程において形成されるケガキ線であるという構成を採用する。
【0011】
また、本発明においては、上記基準姿勢は、特異点姿勢であるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明によれば、マークを用いることにより、駆動部を組み付ける場合に、アーム部が基準姿勢される。
このため、本発明によれば、アーム部を基準姿勢として駆動部の組み付けを確実に行うことが可能となる。したがって、専用の冶具を用いることなく、フロッグレッグアームロボットの正確な組立てが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係るフロッグレッグアームロボットの一実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0014】
(第1実施形態)
図1及び図2は、本実施形態におけるフロッグレッグアームロボットRの概略構成図であり、図1が平面図、図2が側面図である。
これらの図に示すように、フロッグレッグアームロボットRは、本体部1とアーム部2とハンド部3とを備えている。
【0015】
本体部1は、不図示の設置台上に旋回可能に設置されるものであり、アーム部2を揺動させることによってハンド部3を水平面(基準平面)に沿って前後に移動させるための駆動モータ5(51,52)が設置されている。
【0016】
アーム部2は、ハンド部3の移動方向に対して左右対称とされる一対のアーム部21,22によって構成されており、ハンド部3を直線方向に移動可能に支持する。なお、以下の説明においては、アーム部21を第1アーム部21と称し、アーム部22を第2アーム部22と称する。
【0017】
第1アーム部21は、上腕部23(第1の上腕部)と、前腕部24(第1の前腕部)とによって構成されている。
上腕部23は、本体部1に対して水平面に沿って揺動可能に接続されている。また、前腕部24は、上腕部23に対して水平面に沿って揺動可能に接続されている。
【0018】
第2アーム部22は、上腕部25(第2の上腕部)と、前腕部26(第2の前腕部)とによって構成されている。
上腕部25は、本体部1に対して水平面に沿って揺動可能に接続されている。また、前腕部26は、上腕部25に対して水平面に沿って揺動可能に接続されている。
【0019】
ハンド部3は、第1アーム部21の前腕部24と、第2アーム部22の前腕部26との各々に対して、水平面に沿って揺動可能に接続されている。
【0020】
そして、本実施形態のフロッグレッグアームロボットRにおいては、図1に示すように、第1アーム部21の上腕部23と、第2アーム部22の上腕部25との各々に、アーム部2を本体部1に対する基準姿勢である特異点姿勢とするためのマーク100が形成されている。
【0021】
なお、特異点姿勢とは、アーム部2が現在の姿勢から、所望の姿勢を含む複数の姿勢に移行可能な姿勢であり、制御上の特異点となる姿勢である。具体的には、平面視において第1アーム部21の上腕部23と前腕部24とが重なり、第2アーム部22の上腕部25と前腕部26とが重なり、第1アーム部21と第2アーム部22とが直線的に位置する姿勢である。
【0022】
マーク100は、上腕部23に直線状に形成される第1の線マーク101と、上腕部25に直線状に形成される第2の線マーク102とからなる。そして、第1の線マーク101と第2の線マーク102とが一直線上に並ぶ場合に、アーム部2は本体部1に対して基準姿勢(特異点姿勢)とされる。
【0023】
なお、第1の線マーク101及び第2の線マーク102は、上腕部23と上腕部25との成形過程において形成されるケガキ線であることを好ましい。
上腕部23と上腕部25を成形する場合には、その成形工程は、当然のことながら、予め設定された基準位置に基づいて行われる。このため、このような成形過程において、第1の線マーク101及び第2の線マーク102をケガキ線として形成することによって、正確な位置に第1の線マーク101及び第2の線マーク102を形成することができる。
【0024】
以上のように構成された本実施形態のフロッグレッグアームロボットRを組み立てる場合には、アーム部2の構成部材(上腕部23、前腕部24、上腕部25、前腕部26)やハンド部3を組み立てた後、アーム部2を揺動するための駆動モータ5や該駆動モータ5の回転動力を伝達するギア等(不図示)が組み付けられる。
【0025】
そして、本実施形態のフロッグレッグアームロボットRにおいては、アーム部2を揺動するための駆動モータ5や該駆動モータ5の回転動力を伝達するギア等(不図示)を組み付ける場合に、マーク100を用いてアーム部2の本体部1に対する姿勢を基準姿勢である特異点姿勢とする。
【0026】
より詳細には、図3に示すように、上腕部23に形成された第1の線マーク101と、上腕部25に形成された第2の線マーク102とが一直線上に並ぶように、上腕部23と上腕部25の姿勢を合わせることによって、アーム部2の本体部1に対する姿勢を基準姿勢である特異点姿勢とする。
【0027】
このような本実施形態のフロッグレッグアームロボットRによれば、アーム部2を基準姿勢として駆動部(駆動モータ5やギア等)の組み付けを確実に行うことが可能となる。したがって、従来のフロッグレッグアームロボットのように専用の冶具を用いることなく、フロッグレッグアームロボットの正確な組立てが可能となる。
【0028】
また、本実施形態のフロッグレッグアームロボットRによれば、第1の線マーク101及び第2の線マーク102が、上腕部23と上腕部25との成形過程において形成されるケガキ線であるという構成を採用した。
このような構成を採用することによって、正確に第1の線マーク101と第2の線マーク102とを形成することが可能となるため、アーム部2を正確に基準姿勢である特異点姿勢とすることが可能となる。
【0029】
そして、このように組み立てられたフロッグレッグアームロボットRは、 駆動モータ5の駆動によって、アーム部21,22が左右対称に同期して揺動することによって、ハンド部3を直線方向(図1の左右方向)に移動する。そして、このようなハンド部3の移動によって、ハンド部3に支持された搬送対象物が搬送される。
【0030】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0031】
図4は、本実施形態のフロッグレッグアームロボットRの概略構成を示す平面図である。この図に示すように、本実施形態のフロッグレッグアームロボットRは、上腕部23及び上腕部25に、マーク100として、直線状に延在する突設部103及び突設部104が形成されている。
【0032】
そして、図5に示すように、第1の突設部103と第2の突設部104とが直線状に並ぶ場合に、アーム部2が本体部1に対して基準姿勢とされる。
なお、これらの突設部103及び突設部104は、上記第1実施形態の第1の線マーク101及び第2の線マーク102と同様に、上腕部23及び上腕部25の成形過程にて形成されることが好ましい。
【0033】
このような本実施形態のフロッグレッグアームロボットRも、上記第1実施形態のフロッグレッグアームロボットRと同様に、アーム部2を基準姿勢として駆動部(駆動モータ5やギア等)の組み付けを確実に行うことが可能となる。したがって、従来のフロッグレッグアームロボットのように専用の冶具を用いることなく、フロッグレッグアームロボットの正確な組立てが可能となる。
【0034】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係るフロッグレッグアームロボットの好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態においては、アーム部2を本体部1に対して基準姿勢とするためのマークとして、線マークあるいは突設部を用いる構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、マークとしては、フロッグレッグアームロボットRを組み立てる作業者あるいは組立て装置が、識別可能なものを用いることが可能である。
【0036】
また、上記実施形態においては、アーム部2の姿勢のうち、制御上の特異点となる特異点姿勢を基準姿勢とした。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他の姿勢をアーム部2の基準姿勢としても良い。
【0037】
また、上記実施形態においては、アーム部2のうち、上腕部23及び上腕部25にマーク100を形成する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、アーム部2の他の部位にマークを形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態におけるフロッグレッグアームロボットの概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるフロッグレッグアームロボットの概略構成を示す側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるフロッグレッグアームロボットを組み立てる場合の説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態におけるフロッグレッグアームロボットの概略構成を示す側面図である。
【図5】本発明の第2実施形態におけるフロッグレッグアームロボットを組み立てる場合の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1……本体部、2……アーム部、23……上腕部(第1の上腕部)、24……前腕部(第1の前腕部)、25……上腕部(第2の上腕部)、26……前腕部(第2の前腕部)、3……ハンド部、100……マーク、101……第1の線マーク、102……第2の線マーク、103……第1の突設部、104……第2の突設部、R……フロッグレッグアームロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部に対して接続されると共に基準平面に沿って対称に揺動される一対のアーム部と、アーム部を揺動する駆動部とを備えるフロッグレッグアームロボットであって、
前記アーム部に、フロッグレッグアームロボットの組立て時において前記アーム部を前記本体部に対する基準姿勢とするためのマークが形成されていることを特徴とするフロッグレッグアームロボット。
【請求項2】
前記アーム部が、本体部に対して基準平面に沿って揺動可能に接続される第1の上腕部及び第2の上腕部と、前記第1の上腕部に対して前記基準平面に沿って揺動可能に接続される第1の前腕部と、前記第2の上腕部に対して前記基準平面に沿って揺動可能に接続される第2の前腕部とを備え、
前記マークが、前記第1の上腕部に直線状に形成される第1の線マークと、前記第2の上腕部に直線状に形成される第2の線マークとからなり、
前記第1の線マークと前記第2の線マークとが一直線上に並ぶ場合に前記アーム部が前記基準姿勢となる
ことを特徴とする請求項1記載のフロッグレッグアームロボット。
【請求項3】
前記マークは、前記アーム部の成形過程において形成されるケガキ線であることを特徴とする請求項1または2記載のフロッグレッグアームロボット。
【請求項4】
前記基準姿勢は、特異点姿勢であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のフロッグレッグアームロボット。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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