説明

フロント−リア統合型HVACシステムのためのシール及び排出構造

【課題】ハウジングと、前側送風機を有する前側HVAC部と、後側送風機を有する後側HVAC部を備え、前側HVAC部と後側HVAC部は、前記ハウジングに収納される構成の自動車両用二機統合型HVACシステムを提供する。
【解決手段】前側送風機は、前側空気流通路を通る空気流を生成し、後側送風機36は、後側空気流通路を通る空気流を生成する。隔壁24は、前側空気流通路と後側空気流通路を分離する。HVACシステム10は、前側空気流通路内の第一部と、後側空気流通路内の第二部と、前記第一部と前記第二部の間に配置されたシールを有するエバポレータ20をさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用HVACシステムに関するものであり、より詳しくは、前半部と後半部を有するデュアルHVACシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、従来のデュアルHVACシステム100は、前側HVAC部102と後側HVAC部104の、2つの分離されたHVAC部を必要とする。前側HVAC部102と後側HVAC部104はそれぞれ別々のハウジングに収容され、別々のエバポレータ106F、106R、ヒーターコア108F,108Rを必要とする。そのため、従来のデュアルHVACシステム100は、ハウジング、エバポレータ、ヒーターコアをそれぞれ2つずつ設けなければならないという大きな欠点があり、それにより、組み立て製造コストが高くならざるを得ない。
【0003】
従来のデュアルHVACシステム100のもう一つの欠点は、後側HVAC部104が、長い冷媒配管110と、長い温水/エンジン冷却液配管112を必要とすることである。図1に示すように、後側送風機114を備える後側HVAC部104は、センターコンソール116内でアームレスト下側に配置される。したがって、後側HVAC部104は、前側HVAC部102よりもさらにエンジンルームから離れて配置されており、そのため、より長い冷媒配管110、温水/エンジン冷却液配管112が必要となっている。長い配管により、材料コスト、組み立てコストが増大してしまう。さらに、冷媒配管110と温水もしくはエンジン冷却液配管112を、エンジンルームから後側HVAC部104に延設するためには、より多くの結合部が必要となるため、各配管における結合部からの液体漏出の危険性が増してしまうことになる。
【0004】
さらに、従来のデュアルHVACシステム100には、後側HVAC部114が、それが無ければ収納スペースとして使えるはずのセンターコンソール116内のスペースを占有してしまうという欠点もある。上述したように、後側HVAC部104は、センターコンソール116内でアームレスト下側に配置される。収納室120は、アームレスト118の下側に配置されている。図1に明示されているように、後側HVAC部104は収納室120の下側に配置されており、それにより、センターコンソール116内の収納スペースの量が制限されてしまっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上記の問題点を解決するデュアルHVACシステムが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面によると、本発明は、ハウジングと前側HVAC部と後側HVAC部とを備える自動車両用HVACシステムを提供する。前側HVAC部は、前側送風機と前側空気流通路を備える。同様に、後側HVAC部は、後側送風機と後側空気流通路を備える。隔壁が、前記前側空気流通路からの空気流が前記後側空気流通路に漏れるのを防ぐと共に、前記後側空気流通路からの空気流が前記前側空気流通路に漏れるのを防いでいる。HVACシステムは、第一部を前側空気流通路内に有し、第二部を後側空気流通路内に有するエバポレータをさらに備えている。シールが、前記第一部から前記第二部に空気流が漏れることを防ぐとともに前記第二部から前記第一部に空気流が漏れることを防ぐために、前記第一部と前記第二部の間に配置される。ヒーターコアが提供され、ヒーターコアは、前記前側空気流通路に第一部を有し、前記後側空気流通路に第二部を有する。
【0007】
他の側面によると、本発明は、第一後側排出口と第二後側排出口をさらに備える。エバポレータの第二部によって生成された結露水は、第一後側排出口と第二後側排出口の両方に流れ出る。
【0008】
他の側面によると、本発明は、前側空気流通路に隣接して、ハウジングに取り付けられた上側排出室と、前側空気流通路の底部の位置で、ハウジングに取り付けられた下側排出室を備える。上側排出室と下側排出室は後側排出配管を形成し、上側排出室は、第一後側排出口から排出された結露水を後側排出配管に導き、下側排出室は、第二後側排出口から排出された結露水を後側排出配管に導く。
【0009】
さらに他の側面においては、本発明は、エバポレータの第二部によって生成された結露水の全てを第一後側排出口に導く排水フィルタを備える。
【0010】
下記の詳細な実施形態の説明を読んで理解することにより、本発明の付加的な利益や効果が、本願が属する技術分野の当業者にとって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、ある部品と部品の配置において物理的形状をとる場合があり、その部品と部品の配置の好ましい形態を本明細書において詳述し、本明細書の一部である添付の図面によって例示する。
【0012】
【図1】従来のデュアルHVACシステムの概略側面図である。
【図2】本発明に係る二機統合型HVACシステムの概略側面図である。
【図3】前側送風機の位置を例示した、二機統合型HVACシステムの平面図である。
【図4】(a)と(b)はそれぞれ、空気の流れのパターンを例示した、二機統合型HVACシステムの概略図である。
【図5】エバポレータの拡大図である。
【図6】シールを備えたエバポレータの拡大図である。
【図7】(a)は、結露水排出パターンを例示した、二機統合型HVACシステムの概略図であり、(b)は、排出室の配置を例示した、シールを備えたエバポレータの拡大図である。
【図8】図7(a)の実施形態に代わる実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面に関して、図2および図3は、それぞれ、本実施形態による車両用二機統合型HVACシステム10(以降は、HVACシステムと称する)の概略側面図と俯瞰図である。本実施形態のHVACシステムは、車両の前側と後ろ側の両方に暖気や冷気を供給する点において、デュアルHVACシステムである。さらに、本実施形態のHVACシステムは、同じハウジングに収納される前側HVAC部と後側HVAC部を備え、前側HVAC部と後側HVAC部の両方に対して、一つのエバポレータと一つのヒーターコアしか必要としない点において、統合HVACシステムである。ただし、本発明のエバポレータとヒーターコアは、上述した従来のHVACシステムに使われる標準的なエバポレータとヒーターコアよりも大きなサイズである。したがって、二機統合型HVACシステムの加熱/冷却効率と性能が損なわれることはない。
【0014】
図2、3、4Aおよび4Bに図示するように、HVACシステム10は、センターコンソール12の前側の(図示しない)ダッシュボードエリア内に配置され、ハウジング14、前側HVACシステム16、後側HVACシステム18、エバポレータ20、ヒーターコア22を備える。ハウジング14内に配置された隔壁24は、前側HVAC部16と後側HVAC部18を隔ている。したがって、前側HVAC部16内を流れる空気流は、後側HVAC部18内を流れる空気流に影響を受けることは無く、また、後側HVAC部18内を流れる空気流が、前側HVAC部16内を流れる空気流に影響を受けることもない。
【0015】
前側HVAC部16は、前側送風機26、前側(第一)空気流通路28、前側排出口29、混合ドア30、その一つ一つが空気流出口ドア34を有する複数の空気流出口32を有する。前側送風機26は、ダッシュボードエリア内で、HVACシステム10の隣に、図示しないグローブボックスの背後に配置される(図3参照)。前側排出口29は、エバポレータ20の下部で、前側空気流通路28内に画定される。エバポレータ20によって生成された結露水は、前側排出口29を通して車両の底部から排出される。
【0016】
エバポレータ20とヒーターコア22の間に配置される混合ドア30は、前側空気流通路28を流れる空気の温度を調節している。より具体的には、混合ドア30は、様々な位置に回転して、エバポレータ20から直接前側空気流通路28に流れる冷気と、エバポレータ20からヒーターコア22を通じて流れる冷気の割合を変えることが可能である。エバポレータ20からヒーターコア22を通じて流れる空気流は、前側空気流通路28に再度流れ込んで、エバポレータ20からの冷気と混合される。それにより、複数の空気流出口32から流れ出る空気流を適切な温度にしている。上述したように、前側空気流通路28を通り、最終的に複数の空気流出口32から流れ出る空気の温度は、混合ドア30の回転によって調節される。
【0017】
後側HVAC部18は、後側送風機36、後側空気流通路38、第一ダンパドア40、第二ダンパドア42、後側ヒーター出口44、通気配管出口48に通じる通気配管46を備える。後側送風機36は、センターコンソール12の前半部50に延出している(図2参照)。したがって、図2に明示されているように、後側HVAC部18は、センターコンソール12内の空間の大きな部分を占めてしまうということが無く、乗員のためにより広い収納室51を残すことが出来る。
【0018】
図4Aと図4Bに図示されているように、エバポレータ20とヒーターコア22の間に配置される第一ダンパドア40は、混合ドア30が前側空気流通路28を通る空気の温度を調節するのと同じように、後側空気流通路38を通る空気の温度を調節している。具体的には、第一ダンパドア40は、様々な位置に回転して、エバポレータ20から直接後側空気流通路38に流れる冷気と、エバポレータ20から直接ヒーターコア22に流れる冷気の割合を変えることが可能である。エバポレータ20からヒーターコア22に流れる空気は、再度後側空気流通路38に流れ込み、エバポレータ20からの冷気と混合される。それにより、後側ヒーター出口44もしくは通気配管出口48を通じて流れ出る空気を適切な温度にしている。上記のように、第一ダンパドア40の回転により、後側空気流通路38を通じて後側ヒーター出口44もしくは通気配管出口48から流れ出る空気の温度が適切に調節される。
【0019】
第二ダンパドア42は、後側HVAC部18の後側動作モードを変更する。図4Aに示すように第二ダンパドア42が左側に位置している場合、後側HVAC部18は、通気モードである。後側HVAC部18が通気モードの場合、空気流は、図4Aの矢印50が示すように通気配管46に導かれ、通気配管46を通って、通気配管出口48から流れ出る(図2参照)。一方、図4Bに示すように、第二ダンパドア42が右側に位置している場合、後側HVAC部は、ヒートモードである。後側HVAC部18がヒートモードの場合、図4Bの矢印52に示すように、空気流は後側ヒーター出口44に導かれる。
【0020】
図4A、4Bに示すように、前側空気流通路28の空気流は、エバポレータ20の第一部54を通って流れ、後側空気流通路38の空気流は、エバポレータ20の第二部56を通って流れる。同様に、前側空気流通路28を流れる空気流は、ヒーターコア22の第一部58を通って流れ、後側空気流通路38を流れる空気流は、ヒーターコア22の第二部60を通って流れる。したがって、エバポレータ20の第一部54と、ヒーターコア22の第一部58は、前側空気流通路28の中にある。同様に、エバポレータ20の第二部56とヒーターコア22の第二部60は後側空気流通路38の中にある。そのため、前側HVAC部16と後側HVAC部18の両方に対して、一つのエバポレータ20と一つのヒーターコア22しか必要としない。前に述べたように、本発明のエバポレータ20とヒーターコア22は、前述した従来のHVACシステム100用の標準的なエバポレータとヒーターコアよりも大きい。したがって、HVACシステム10の加熱/冷却効率と性能が損なわれることがない。
【0021】
本発明のHVACシステム10は、本発明以外では生じる可能性のあるエバポレータ20における前側空気流通路28と後側空気流通路38の空気漏れを防止する。具体的には、図5に示すように、空気流がエバポレータ20の第一部54を通って流れるとき、矢印Fによって表されるその空気流の一部が、エバポレータ20の第二部56に向かって漏れる場合がある。同様に、空気流がエバポレータ20の第二部56を通って流れるとき、矢印Rで表されるその空気流の一部がエバポレータ20の第一部54に向かって漏れる場合がある。
【0022】
エバポレータ20のそのような空気漏れを防ぐために、シール62がエバポレータ20の第一部54とエバポレータ20の第二部56との間に配置されている(図6参照)。シール62は、前側空気流通路28の空気流が後側空気流通路38に漏れるのを防ぐとともに、後側空気流通路38の空気流が前側空気流通路28に漏れるのを防ぐ。また、シール62は、エバポレータ20の第二部56によって生成される結露水を後側空気流通路38に向かって、下側に導く。
【0023】
後側送風機36付近の後側空気流通路38における結露水の生成を防ぐため、後側HVAC部18は、上側排出室64と下側排出室66を有する排出室を備える。上側排出室64と下側排出室66は両方とも、後側空気流通路38に隣接して、ハウジング14の外側に取り付けられる(図7A及び図7B参照)。第一後側排出口68は、後側空気流通路38に隣接して、上側排出室64とハウジング14の間に画定されている。第二後側排出口70は、下側排出室66に隣接して、後側空気流通路38の底部72の位置に、ハウジング14内に画定される。第一後側排出口68と第二後側排出口70は、エバポレータ20の第二部56によって生成された結露水をハウジング14から、上側排出室64と下側排出室66によって形成された排出配管74に排出することを可能にしている。したがって、上側排出室64は、第一後側排出口68を通って排出される結露水を排出配管74に導き、下側排出室66は、第二後側排出口70を通って排出される結露水を排出配管74に導く。結露水は、排出配管74を介して、自動車の底部から排出される。
【0024】
さらに、図7Aに図示しているように、車両が傾いたときも適切な排出経路を確保するために、後側送風機36は、後側送風機36に結露水が入り込むことがないように、ハウジング14の底部72に接する水平面に対して角度 θ分上側に設置されている。結露水が後側送風機36に入り込むことを防ぐための最小角度は、約17度である。
【0025】
図8に示された第二の実施形態においては、エバポレータ20の第二部56の直下の位置において、後側空気流通路38に排水フィルタ76を挿入してもよい。排水フィルタ76は、エバポレータ20の第二部56によって生成された結露水を第一後側排出口68に導く。それにより、第二後側排出口70を設ける必要が無くなる。上側排出室64は、ハウジング14の底部72に取り付けられた代わりの下側排出室66Aとともに、第一後側排出口68から排出された結露水を排出配管74に導く。
【0026】
本発明のHVACシステムは、いくつか例を挙げるだけでも、材料費及び組立費の削減、収納容量の増加など、従来のHVACシステムに比べて、様々な利点を有する。加えて、上述したように、エバポレータとヒーターコアのサイズが大きくなったことによって、快適性、利便性、効率性が損なわれることがない。
【0027】
本発明の具体的な実施形態を記述、説明してきたが、これらの実施形態は、ただの一例であり、本発明は、限定的に解釈されるべきものではなく、請求の範囲に記載された適切な範囲によってのみ限定されるものであることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに収納され、前側送風機と前側空気流通路を有する前側HVAC部と、
前記ハウジングに収納され、後側送風機と後側空気流通路を有する後側HVAC部と、
前記前側空気流通路と前記後側空気流通路とを隔てる隔壁と、
第一部を前記前側空気流通路内に有し、第二部を前記後側空気流通路内に有し、前記第一部から前記第二部に空気流が漏れないように、前記第一部と前記第二部の間に配置されたシールを有するエバポレータと、
第一部を前記前側空気流通路の中に有し、第二部を前記後側空気流通路の中に有するヒーターコアとを備える自動車両用二機統合型HVACシステム。
【請求項2】
前記隔壁と前記シールの両方が、前記前側空気流通路からの空気流が前記後側空気流通路へ漏れることを防ぐとともに、前記後側空気流通路からの空気流が前記前側空気流通路に漏れることを防ぐことを特徴とする請求項1に記載の二機統合型HVACシステム。
【請求項3】
ハウジングと、
前記ハウジングに収納され、前側送風機と前側空気流通路を有する前側HVAC部と、
前記ハウジングに収納され、後側送風機と後側空気流通路を有する後側HVAC部と、
前記前側空気流通路と前記後側空気流通路とを隔てる隔壁と、
第一部を前記前側空気流通路内に有し、第二部を後側空気流通路内に有し、前記第二部によって生成された結露水を前記後側空気流通路に導くために、前記第一部と前記第二部の間に配置されたシールを有するエバポレータと、
第一部を前側空気流通路の中に有し、第二部を前記後側空気流通路の中に有するヒーターコアと、
前記後側空気流通路に隣接して前記ハウジングに固定された排出室と、
前記排出室と前記ハウジングの間に画定された第一後側排出口とを備え、
前記エバポレータの前記第二部によって生成された結露水は、前記第一後側排出口から流れ出ることを特徴とする自動車両用二機統合型HVACシステム。
【請求項4】
前記後側空気流通路の底部の位置で、前記ハウジング内に画定される第二後側排出口をさらに備え、
前記エバポレータの前記第二部によって生成された結露水は前記第二後側排出口に流れ出ることを特徴とする請求項3に記載の二機統合型HVACシステム。
【請求項5】
前記排出室は、前記後側空気流通路に隣接して前記ハウジングに取り付けられた上側排出室と、前記後側空気流通路の底部において前記ハウジングに取り付けられた下側排出室とを備え、
前記上側排出室と前記下側排出室は、後側排出配管を形成し、
前記上側排出室は、前記第一後側排出口から排出される前記結露水を前記後側排出配管に導き、前記下側排出室は、前記第二後側排出口から排出された結露水を前記後側排出配管に導くことを特徴とする請求項4に記載の二機統合型HVACシステム。
【請求項6】
前記シールは、前記前側空気流通路からの空気流が前記後側空気流通路に漏れることを防ぐとともに、前記後側空気流通路からの空気流が前記前側空気流通路に漏れることを防ぐことを特徴とする請求項5に記載の二機統合型HVACシステム。
【請求項7】
前記エバポレータの前記第二部の下側において、前記後側空気流通路内に挿入される排水フィルタをさらに備え、前記排水フィルタは、前記エバポレータの前記第二部によって形成された結露水を第一後側排出口に導くことを特徴とする請求項3に記載の二機統合型HVACシステム。
【請求項8】
前記ハウジングの前記底部に取り付けられた下側排出室をさらに備え、
前記上側排出室と前記下側排出室は、後側排出配管を形成し、
前記上側排出室と前記下側排出室は、前記第一後側排出口から排出された結露水を前記後側排出配管に導くことを特徴とする請求項7に記載の二機統合型HVACシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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