説明

フロン系洗浄剤中のアルコール濃度測定装置

【課題】フロンとアルコール類(主にエタノール、イソプロパノール)と微量の水の組成物からなる洗浄溶剤において、水切り工程での斑点生成防止の観点から洗浄溶剤中のアルコールと水の濃度管理をしていく必要がある。しかし、現状では比重計ほかで充分精度のある測定装置がなく、要望されていた。
【解決手段】シリコンチューブの内または外に洗浄用溶剤を流し、その外または内に抽出溶媒として高濃度塩電解質溶液を流し、シリコン膜を介して抽出して得られるアルコール、水の量を抽出前の高濃度塩電解質溶液とのインピーダンス比較をしてアルコール、水の量を特定する測定装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロン系洗浄剤(水アルコール混入フロン)中のアルコール濃度測定装置に関するもので、フロン系洗浄剤を使って洗浄対象品を洗浄後の水切り工程で含有アルコール濃度を一定の範囲に保っておく必要があり、そのためにその濃度測定が必要になってくる。
【背景技術】
【0002】
従来よりフロン規制の代替措置として多くの提案がなされてきたが、中でも洗浄溶剤の分野でフロンよりオゾン層の破壊のすくない洗浄溶剤としてジクロロフルオロエタンを有効成分とする洗浄溶剤組成物で、他に炭化水素やアルコール類を添加したもの(特許第2128135号)、ジクロロペンタフルオロプロパンを有効成分とする洗浄溶剤組成物で、他に炭化水素類なども添加可能としたもの(特許第2067332号)、ジクロロペンタフルオロプロパンにメタノールを混入させた共沸組成物で熱安定化剤としてニトロ化合物、フェノール類、アミン類などを添加したもの(特許第2734116号)、HCFC−141bとメタノールの共沸組成物に熱安定化剤としてジメトキシメタンを添加した洗浄剤組成物(特許2510951号)が提案されてきた。
フロンとアルコール類に近い組成物からなる洗浄溶剤として以下に示す先行技術文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2128135号
【特許文献1】特許第2067332号
【特許文献1】特許第2734116号
【特許文献1】特許2510951号
【特許文献1】特許第2923362号
【特許文献1】特許第2585982号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図2に示すフロンとアルコール類(主にエタノール、イソプロパノール)と微量の水の組成物からなる洗浄溶剤としては消防法上の制限から可燃性のアルコール類の混入割合をできるだけ減らしたいが下限界以下では洗浄後の水切り工程で洗浄対象品の表面にいわゆる斑点があらわれ、不都合が生ずる。他方、水を混入割合の上限界を超えていれると水が上層に分離してきて、その水を越流して除くとアルコールも共に排出されてしまう。すなわち、フロンに混入するアルコール類の下限界があり、そのアルコールに対して水の混入上限界があることになるから、洗浄溶剤中のアルコールと水の濃度管理をしていく必要がある。これを従来は屈折率計とか比重計とかで測定していたが充分な精度ある値が得られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<測定方法>
有機溶剤に含まれる溶質成分の抽出に用いる溶媒であって、当該有機溶剤とは非相溶であり、架橋成分からなる膜を介して当該有機溶剤溶液と接触して架橋膜の膨潤で移動しやすくなった溶質成分を膜外の溶媒側に抽出させる方法である。
この方法は高感度測定用に必要な少量サンプルの分離方法に適した方法である。
この方法を使って、クロロフルオロカーボンとアルコール類、水の組成物からなる洗浄用溶剤中に含まれるアルコール類、水の含有濃度を測定することができる。
クロロフルオロカーボンとアルコール類の組成物に微量の水が含まれる洗浄用溶剤中のアルコール類と水の濃度を測定手段として、シリコンチューブの内または外に洗浄用溶剤を流し、その外または内に抽出溶媒として高濃度塩電解質溶液を流し、シリコン膜を介して抽出して得られるアルコール、水の量を抽出前の高濃度塩電解質溶液とのインピーダンス比較をしてアルコール、水の量を特定する連続測定方法である。
この測定方法は、シリコンチューブが有機溶剤であるクロロフルオロカーボンで膨潤し、アルコール、水が膜外の抽出溶媒に移動しやすくなるのを利用した測定方法である。
ただし、アルコール中に溶解している水の量は微量で実質はアルコールの濃度を測定しているのに等しい。
【0006】
<測定装置>
(A)抽出溶媒貯槽にある高濃度塩電解質溶液を一定量で送液する定量ポンプおよび吐出電磁弁と
(B)内側にシリコンチューブで外側にガラス管を設けた二重管からなる抽出装置

(C)試料ラインから測定対象の試料を一定量で送液する定量ポンプと
(D)前記(A)の電磁弁を介して前記(B)の抽出装置のシリコンチューブ内側に連結する配管および前記(C)の定量ポンプを介して前記(B)の抽出装置のシリコンチューブ外側に連結する入口配管と出口配管を設け、
(E)前記(B)の抽出装置のシリコンチューブ内を通る配管に連結した非接触型インピーダンス検出器と
を備えた抽出成分量測定装置である。
【0007】
本装置は図1に示す抽出装置内で微量の溶質成分が抽出されたときに生ずるキャリアーのインピーダンス変化(図3を参照)を検出器でとらえる装置である。キャリアー、試料の流量速度も一定なので所定時間内観測されたインピーダンス変化量の時間積分値から抽出された溶質量が算出される。抽出効率にあらかじめ別に求めた値を使って、もとの試料中に含まれる溶質濃度が正確にもとまる。
本装置を適用してクロロフルオロカーボンとアルコール類の組成物に微量の水が含まれる洗浄用溶剤中のアルコール類と水の濃度を測定することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、有機溶媒中の溶質成分濃度を、例えばクロロフルオロカーボンとアルコール類の組成物に微量の水が含まれる洗浄用溶剤中のアルコール類と水の濃度を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】溶媒中の溶質分離抽出による溶質成分の濃度測定装置
【図2】フロンとアルコール類と水の各成分間の溶解関係図
【図3】非接触式インピーダンス検出器で検出されるキャリヤー溶媒中の抽出サンプルによるインピーダンス変化信号図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤に含まれる溶質成分の抽出に用いる溶媒であって、当該有機溶剤とは非相溶であり、架橋した膜を介して当該有機溶剤溶液と接触して架橋した膜の膨潤で移動しやすくなった溶質成分を膜外の溶媒側に抽出させる検査用溶質分を連続して微量分離する方法。
【請求項2】
クロロフルオロカーボンとアルコール類の組成物に微量の水が含まれる洗浄用溶剤中のアルコール類と水の濃度を測定手段として、シリコンチューブの内または外に洗浄用溶剤を流し、その外または内に抽出溶媒として高濃度塩電解質溶液を流し、シリコン膜を介して抽出して得られるアルコール、水の量を抽出前の高濃度塩電解質溶液とのインピーダンス比較をしてアルコール、水の量を特定する連続測定方法。
【請求項3】
(A)抽出溶媒貯槽にある高濃度塩電解質溶液を一定量で送液する定量ポンプおよび吐出電磁弁と
(B)内側にシリコンチューブで外側にガラス管を設けた二重管からなる抽出装置

(C)試料ラインから測定対象の試料を一定量で送液する定量ポンプと
(D)前記(A)の電磁弁を介して前記(B)の抽出装置のシリコンチューブ内側に連結する配管および前記(C)の定量ポンプを介して前記(B)の抽出装置のシリコンチューブ外側に連結する入口配管と出口配管を設け、
(E)前記(B)の抽出装置のシリコンチューブ内を通る配管に連結した非接触型インピーダンス検出器と
を備えた抽出成分量測定装置。
【請求項4】
請求項2に記載のアルコール、水の量を特定する測定方法を使用する請求項3記載の抽出成分量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−83203(P2012−83203A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229612(P2010−229612)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(592157722)日理工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】