フローセルデバイス
マイクロアレイシステムが開示される。マイクロアレイシステムは、平板基板上に形成されるマイクロアレイおよびマイクロアレイの周囲に形成されるインキュベーションチャンバーを含む。インキュベーションチャンバーは、その上にマイクロアレイが形成される底面および底面と対面しかつ通常は底面と平行である上面を含む複数の内面を有する。複数の内面のうち少なくとも1つは親水性面である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本明細書は、いずれもその全文が本明細書に参照文献として援用されている2008年5月9日に出願された米国特許出願第12/149,865の一部継続出願であり、かつ2009年7月24日出願の米国仮特許出願第61/213,887号の優先権を主張する。
【0002】
技術分野は、生体分子の検出、および、具体的には、標的捕捉面を含む反応チャンバー、廃液チャンバー、および反応チャンバーと廃液チャンバーを接続する可変幅導管を有するフローセルデバイスである。
【背景技術】
【0003】
マイクロアレイは、複数の検出反応を同時に遂行することによってサンプルの複雑な分析を実施する大きな可能性をもたらす。典型的には、反応物分子の複数スポットのマイクロアレイを、顕微鏡用スライドグラスなどの平面基板上に、通常は2次元グリッドパターンで形成する。次に、液状サンプルおよび試薬をスライドに塗布して複数のスポットと同時に接触させる。マイクロアレイ中の結合分子により、結合した反応物分子の液状サンプルおよび試薬への曝露および洗浄のステップを含めて、多様な反応段階を実施してもよい。スライド上に固定された材料または液状サンプル中の材料をキャラクタライゼーションするため、反応の進捗または結果をマイクロアレイの各スポットにおいてモニタリングしてもよい。
【0004】
マイクロアレイ分析は、通常数分から数時間のインキュベーション時間を要する。インキュベーション時間の長さは測定に依存し、かつ反応物の種類、混合度、サンプルの体積、標的コピー数、およびアレイの密度などの多様な因子によって決定される。インキュベーション時間中、液状サンプル中の標的分子はマイクロアレイプローブと密に接触しなければならない。通常、インキュベーションはインキュベーションチャンバーで実施される。インキュベーションチャンバーは、典型的にはマイクロアレイの周囲にガスケットを形成することによって形成される。ガスケットをカバースリップで被覆して密封チャンバーを形成する。カバースリップは、インキュベーション後のマイクロアレイの光学的照合を可能とするために、ガラスなどの透明な材料で製造することができる。
【0005】
カバースリップが入口ポートおよびベントを有していない場合、カバースリップをガスケットの上部に載置する前に、液状サンプルおよび他の試薬をインキュベーションチャンバーに加える必要がある。反応混合物をガスケットの縁まで満たす場合、反応混合物がガスケットの側面より漏れ出し、ガスケット/カバーの密封を崩壊させて環境を汚染するリスクを高めることもある。充填およびベント用の穴を有するカバースリップはこれら2つの問題を回避する。しかし、カバースリップの穴からのインキュベーションチャンバーの充填には、しばしばインキュベーションチャンバーへの気泡またはエアポケットの導入というリスクがある。さらに、液状サンプルまたは反応混合物の表面張力が、液状サンプルまたは反応混合物による反応チャンバーの完全な充填を妨害することもある。部分的に充填されたチャンバーは、エアポケットがアレイスポットを覆いかつアレイスポットと液状サンプルまたは反応混合物との接触を妨害した場合に偽陰性となることもある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
標的分子を検出することを目的としたフローセルデバイスが開示される。フローセルデバイスは反応チャンバー、廃液チャンバー、入口ポート、反応チャンバーを入口ポートと接続する第1の導管、および反応チャンバーを廃液チャンバーと接続する第2の導管を含む。反応チャンバーは入口、出口、マイクロアレイ、およびチャンバーの上面および下面のうちいずれか一方にある親水性領域を有する。廃液チャンバーは、液状物が毛細管作用によって反応チャンバー内を洗浄のために移動することを可能とする吸収剤を有する。
【0007】
標的分子を検出することを目的としたデバイスも開示される。デバイスは、入口、出口、標的分子と特異的に結合する標的捕捉面、および反応チャンバーの上面および底面のうち少なくとも一方にある親水性領域を有する反応チャンバー;液状物を毛細管作用によって反応チャンバー内を洗浄のために移動させることができる吸収剤を有する廃液チャンバー;および反応チャンバーを廃液チャンバーと接続する可変幅導管を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
発明を実施するための形態は、同様の番号が同様の要素を指す以下の図面を参照するであろう。
【0009】
【図1】マイクロアレイシステムのインキュベーションチャンバーの実施形態の模式図である。
【図2】貫通するピペットチップを有するサポートハウジング内のドームバルブの模式図である。
【図3】廃液チャンバーを有するマイクロアレイシステムの実施形態の模式図である。
【図4】廃液チャンバーを有するマイクロアレイシステムの他の実施形態の模式図である。
【図5】一体型マイクロアレイシステムの実施形態の模式図である。
【図6】一体型マイクロアレイシステムの他の実施形態の模式図である。
【図7】一体型マイクロアレイアセンブリの構成要素を示す模式図である。
【図8】図7のアセンブリ用のスペーサーテープを示す模式図である。
【図9】図8のスペーサーテープの接着剤と結合する図7のアセンブリの上面フィルムを示す模式図である。
【図10】厚みのある吸着材を考慮したスペーサーテープを示す模式図である。
【図11】図9および10におけるスペーサーのポケットに嵌合する吸収剤の模式図である。
【図12】ベント孔を有する廃液チャンバー用のカバーを示す模式図である。
【図13】PCRマイクロアレイシステムにおいてサンプル分析を実施するための方法を示すフローチャートである。
【図14】プロテインマイクロアレイシステムにおいてサンプル分析を実施するための方法を示すフローチャートである。
【図15】15Aおよび15B「ストリッププロテインアレイ」および「ストリッププロテインアレイ」を含むよう適合させたプロテインマイクロアレイシステムの実施形態を示す。
【図16A】廃液チャンバーへの液状物の吸い上げを評価するために用いられる4つのマイクロアレイインキュベーションチャンバーアセンブリを示すピクトゥである。
【図16B】図16Aのマイクロアレイインキュベーションチャンバーアセンブリを用いたハイブリダイゼーションの結果を示すピクトゥである。
【図17A】一体型マイクロアレイシステムの実施形態を示す図である。
【図17B】図17Aのマイクロアレイシステムによるハイブリダイゼーションの結果を示す図である。
【図18A】マイクロアレイシステムの実施形態の模式図である。
【図18B】図18Aのマイクロアレイシステムによるハイブリダイゼーションの結果を示す図である。
【図18C】図18Aのマイクロアレイシステムのアレイマップである。
【図19】チップマップ、プロテインアレイシステム、および実施例6の代表的なアレイの画像を示す図の組合せである。
【図20】ガラス基板を有するマイクロアレイシステム上で増幅、つづいて洗浄および乾燥ステップを行った精製MRSA標的300pgの結果を示す。
【図21A】マイクロアレイシステムの反応チャンバーに含まれ、かつ図20、22および23のためのデータを取得するために用いられたマイクロアレイのMRSAチップマップ。チップマップは、試験の信頼性を高めかつ4分区間の間での非均一性を評価するために4つの反復を有する。
【図21B】チップマップと関連付けたプローブのリスト。同一ターゲット用のプローブは長さおよび配列が異なる。プローブ配列9および29はメチシリン耐性を付与するmecA遺伝子に由来する。プローブ14および42は全てのStaph株に存在するtufA遺伝子に由来する。プローブ18、19、31および43はtufA遺伝子に由来するが、S.aureusにのみ特有である。プローブ35、36および37はS.aureusとmecAカセットの接合領域を標的とする。
【図22】ガラス基板を有するマイクロアレイシステム上で増幅し、その後液状物中で読み取った精製MRSA標的1ngの結果を示す。
【図23】乾燥ステップのないプラスチック基板上の精製300pgMRSA標的の結果を示す。
【図24】以下の条件下でS.pyogenes遺伝子104コピーによって攻撃されたアレイの原像の組合せである:パネル(a)試験管内で増幅、バイオチップ上でハイブリダイゼーション、ピペッターで洗浄、かつオンチップ乾燥の手順;パネル(b)バイオチップ上でPCR増幅、ピペッターで洗浄、かつオンチップ乾燥の手順;パネル(c)試験管内で増幅、フレームシール内のアレイ上でハイブリダイゼーション、フレームシールを除去、バス内で洗浄、かつ風乾の手順。パネル(d)は画像と対応するアレイマップである。パネル(b)のオンチップ増幅はマスターミックス中にハイブリダイゼーションマーカーがないので、ハイブリダイゼーションマーカーはパネル(a)および(c)の画像内でのみ視認できることに留意されたい。
【図25】以下の各条件における信号雑音比を比較する図である:1)バイオチップ上で増幅およびハイブリダイゼーションした後ピペッティング洗浄しさらにオンチップ乾燥するプロトコル、2)バイオチップ増幅した後ピペッティング洗浄するプロトコル、および3)試験管増幅した後フレームシールハイブリダイゼーションし、バス内で洗浄し、風乾。各例ともS.pyogenes遺伝子104コピーを増幅した。2つの標的の積分スポット強度よりローカルバックグラウンドを減算し、dN20ナンセンススポットを用いて表示の比率を算出する。画像は、オーロラポートアレイ5000を用いて、スポットが飽和値寸前となる長さまでの露出時間で画像を撮像した。
【図26】以下の各条件における平均雑音(dN20)信号を比較する図である:1)バイオチップ増幅の後1×SSPE 75μLおよび水25μLでピペッター洗浄;2)バイオチップ増幅の後1×SSPE 175μLおよび水25μLでピペッター洗浄;および3)試験管で増幅し、フレームシール内でハイブリダイゼーションし、マイクロアレイバス内でアレイを洗浄。インプットサンプルは、バイオチップおよびフレームシールのいずれについてもS.pyogenes遺伝子104コピーである。バイオチップはオーロラポートアレイ5000で0.2秒間撮像した。dN20(ナンセンスプローブ)スポットをスポットファインダーで同定し、さらに4つのdN20スポットの各積分蛍光強度よりローカルバックグラウンドを減算して平均し、最大値と最小値を表す誤差棒と共にプロットする。dN20ナンセンスプローブは増幅反応由来の生成物などの標識化標的との非特異的結合により蛍光を発するため、dN20信号は洗浄効果と反比例する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この記載は、本発明の書面による記載全体の一部と見なすべき、添付の図面と関連付けて読まれることを意図している。図面は必ずしも縮尺を定めるものではなく、かつ明確性および簡潔性を目的とし、縮尺においてまたは幾分模式的な形態で、本発明の一定の性質が誇張して示されてもよい。記載においては、「前方」「後方」「上方」「下方」、「上部」および「底部」などの相対的な用語およびそれらの派生語は、その後に記載されるかまたは考察対象の図面に示されるところの方向を指すと解釈すべきである。これらの相対的な用語は、記載の簡便性を目的とし、かつ通常は特定の方向を要求することを意図していない。「連結された」および「接続された」などの接続、連結などに関する用語は、特に説明的に記載されない場合、構造物が介在構造、さらには両者が可動または剛直接続または関係を介して互いに直接的または間接的に固定または接続されることを特徴とする関係を指す。
【0011】
本明細書に記載するところの用語「標的捕捉面」は、標的分子と特異的に結合する面を指す。標的捕捉面は、オリゴヌクレオチドプローブ、抗原、または抗体などの標的捕捉材料によってコーティングされる面であってもよい。標的捕捉面は、ヌクレオチドと特異的に結合する焼結ガラスフリット面などの、標的分子に対する特異的親和性を示す非コーティング面であってもよい。一部の実施形態においては、標的捕捉面はマイクロアレイを含む。
【0012】
本明細書で用いるところの用語「マイクロアレイ」は、目的のリガンドとの結合のために提供された整列したスポットのアレイを指す。マイクロアレイは少なくとも2つのスポットからなる。目的のリガンドは核酸(例:分子ビーコン、アプタマー、ロックされた核酸、ペプチド核酸)、タンパク質、ペプチド、多糖類、抗体、抗原、ウイルスおよび細菌を含むが、これに限定されない。
【0013】
本明細書で用いるところの用語「親水性面」は、そのような面上に静置した純水の水滴と60°またはそれ以下の接触角を形成するような面を指す。本明細書で用いるところの用語「疎水性面」は、そのような面上に静置した純水の水滴と60°よりも大きな接触角を形成するような面を指す。接触角は接触角角度計を用いて測定することができる。
【0014】
本明細書に記載するところの用語「インキュベーションチャンバー」は、標的捕捉面またはマイクロアレイの周囲の密封された空間を指す。インキュベーションチャンバーは、液状サンプルで満たされるとき、液状サンプル中の標的分子が標的捕捉面またはマイクロアレイプローブと密接な接触を維持できるよう、標的捕捉面またはマイクロアレイが液状サンプルによって浸されることを可能とする。
【0015】
本明細書においては、オンチップ増幅は、マイクロアレイを含むインキュベーションチャンバー内の溶液中で標的分子の対称または非対称増幅が発生するプロセスと定義される。
【0016】
マイクロアレイシステムフォーマットにおいては他の増幅スキーム、たとえば同一または異なる濃度比の1つまたはそれ以上のプライマーがマイクロアレイ上に固定され、かつアレイ上で全体的または部分的に増幅が起こるものなどが可能である。追加的なプライマーを、アレイ上に固定されたプライマーと同一または異なる順番でチャンバー内に溶液として加えてもよい。これらの増幅スキームは、DNAまたはRNA酵素を用い、等温でまたは温度サイクルを用いて行うことができる。実施例は:アレイ化プライマー拡張(APEX)、マルチプレックスマイクロアレイ促進PCR(MME−PCR)、ブリッジ増幅、単一ヌクレオチド取り込み、ローリングサイクル増幅(RCA)、ストランド置換増幅(SDA)、ループ媒介増幅(LAMP)、転写媒介増幅(TMA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、ニッキング酵素増幅反応(NEAR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、増幅抵抗性変異系(ARMS)およびインベーダーテクノロジーを含む。
【0017】
マイクロアレイシステムに使用できる他の核酸反応は連結、エキソまたはエンドヌクレアーゼによる制限酵素消化、ニッキング酵素開裂、ハイブリダイゼーション保護測定(HPA)または翻訳を含む。
【0018】
上に指摘したように、液状サンプルまたは反応混合物の表面張力は、液状サンプルまたは反応混合物が、マイクロアレイシステムのインキュベーションチャンバーといった小さな空間を完全に充填することを妨害することが多い。表面張力は、多様な分子間力による液状物の分子間引力の結果である。液状物の本体においては、各分子は隣接する液状物分子によって全方向に同等に引かれ、その結果正味の力はゼロとなる。液状物の表面においては、分子は液状物内部のより深いところにある他の分子によって内向きに引かれ、かつ隣接する媒体内(真空、空気または他の液状物の場合)の分子によっては強く引かれない。したがって、表面にある全ての分子は内向きの分子引力を受け、これは圧縮に対する液状物の抵抗によってのみ均衡することができる。この内向きの引力は表面積を減少させる傾向があり、この点で液状物の表面は伸長した弾性膜と類似している。したがって、液状物は局部的に可能な最も小さな表面積となるまで密に収縮する。最終的な結果は、液状物が小空間内でほぼ球状の形態を維持し、かつ角、特に小空間内の立方体の角を満たさないというものである。マイクロアレイの面より被覆を離隔する典型的な小さな空隙は、しばしば液状物を円柱状の形態に圧縮する。
【0019】
フローセルデバイスの場合、インキュベーションチャンバーを満たす液状物は、ハイブリダイゼーションバッファーまたは洗浄バッファーなどの水ベースの液状物である可能性が最も高い。水ベースの液状物の表面張力は、インキュベーションチャンバーの内面の少なくとも一部を親水性材料によってコーティングすることにより克服しうる。
【0020】
本明細書に記載されるのは、標的捕捉面、および液状物がチャンバー内に入る際にこれと接触する親水性面を含むインキュベーションチャンバーを有するフローセルシステムである。液状物がチャンバーに流入する際にこれと接触する親水性面の使用によって、インキュベーションチャンバーの完全な充填が可能となる。一部の実施形態においては、親水性面はインキュベーションチャンバーの完全な上面を形成する。他の実施形態においては、標的捕捉面はマイクロアレイを含む。
【0021】
図1はインキュベーションチャンバーの1つの実施形態を示す。この実施形態においては、平面基板30の上面32上にプリントまたは形成された複数のアレイスポット22よりなるマイクロアレイ20の周囲にインキュベーションチャンバー10が形成される。面32はインキュベーションチャンバー10の底面も形成する。チャンバー10の上面はカバースリップ40によって被覆される。インキュベーションチャンバー10は、典型的にはガラスまたはプラスチックスライドである平面基板30のサイズと適合するあらゆるサイズまたは形状とすることができる。一部の実施形態においては、平面基板30はリールトゥリール製法用に巻き取ることのできるプラスチックフィルムである。1つの実施形態においては、プラスチックフィルムはポリエステルである。
【0022】
この実施形態においては、インキュベーションチャンバー10は平面基板30の上部にガスケット34を載置し、かつガスケット34をカバースリップ40で被覆することによって形成される。他の実施形態においては、インキュベーションチャンバー10は平面基板30にポケットまたは陥凹領域を作成し(たとえば成形またはエッチングなどによって)、マイクロアレイ20をポケットまたは陥凹領域の底部にプリントし、かつポケットまたは陥凹領域をカバースリップ40によって被覆することによって形成される。さらに他の実施形態においては、ポケットまたは陥凹領域はカバースリップ40上に形成され、その後これを平面基板30の上部に直接載置することによって形成される。
【0023】
インキュベーションチャンバー10は、インキュベーションチャンバー10内でのハイブリダイゼーションまたは他のあらゆる反応に必要な液状物の体積を減少するよう、マイクロアレイ20の周囲に形成される。1つの実施形態においては、インキュベーションチャンバーは約0.1〜10cm2,好ましくは約0.25〜2.5cm2の底面積、および約0.05〜5mm、好ましくは約0.1〜1mmの高さを有する。1つの実施形態においては、インキュベーションチャンバーの総容積は約1〜250μLの範囲内である。
【0024】
インキュベーションチャンバー10は、その形態に応じ、その上にマイクロアレイ20が形成される底面、底面と下方に向き合いかつ通常は底面と平行である上面、および1つまたはそれ以上の側面を含むいくつかの内面を有する。インキュベーションチャンバー10の均一な充填を担保するために、全ての内面を親水性とする必要はない。1つの実施形態においては、インキュベーションチャンバー10の上面のみが親水性である。他の実施形態においては、インキュベーションチャンバー10の底面のみが親水性である。他の実施形態においては、上面および底面が共に親水性である。さらに他の実施形態においては、インキュベーションチャンバー10の全ての内面が親水性である。
【0025】
親水性面は水を誘引する面である。親水性面は、典型的には電荷分極しかつ水素結合することのできる分子を含む。1つの実施形態においては、平面基板30またはカバースリップ40は親水性材料より製造され、かつこれによりそれぞれ親水性底面または親水性上面を提供する。他の実施形態においては、インキュベーションチャンバー10の上面または底面が不溶性親水性材料によってコーティングされる。親水性材料の例はポリエチレングリコール、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、ビオナイト、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリアクリルアミド、セルロース系材料、メチルセルロース、ポリ酸無水物、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、アルキルフェノールエトキシラート、複合ポリオールモノエステル、オレイン酸ポリオキシエチレンエステル、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、および脂肪酸ソルビタンエステルなどの親水性ポリマー;無機酸化物、金、ゼオライトおよびダイヤモンド様炭素などの無機親水性材料;およびTriton X−100、Tween、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム、アルキル硫酸塩、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、アルキルベンゼンスルホン酸、石けん、脂肪酸塩、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)別名臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、アルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム(CPC)、ポリエトキシル化牛脂アミン(POEA)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルベタイン、ココヤシ両性グリシナートアルキルポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)およびポリ(プロピレンオキシド)のコポリマー(市販名はポロキサマーまたはポロキサミン)、アルキルポリグルコシド、脂肪アルコール、コカミドMEA、コカミドDEA、コカミドTEAなどの界面活性剤を含むが、これに限定されない。界面活性剤はポリウレタン類およびエポキシ類などの反応性ポリマーと混合して親水性コーティングの役割を果たすことができる。他の実施形態においては、インキュベーションチャンバー10の上面または底面が雰囲気プラズマ処理によって親水性とされる。
【0026】
代替的に、インキュベーションチャンバーの底面または上面が市販の親水性テープまたはフィルムによって被覆されてもよい。親水性テープの例はアドヒーシブズ・リサーチ(AR)テープ90128、ARテープ90469、ARテープ90368、ARテープ90119、ARテープ92276およびARテープ90741(アドヒーシブズ・リサーチ社、ペンシルバニア州グレンロック)を含むが、これに限定されない。親水性フィルムの例は(フィルムスペシャリティーズ社、ニュージャージー州ヒルズバラ)製のビステックス(登録商標)およびビスガードフィルムおよびレクサンHPFAF(GEプラスチックス、マサチューセッツ州ピッツフィールド)を含むが、これに限定されない。他の親水性面はサーモディクス社(ミネソタ州イーデンプラリー)、バイオコート社(ペンシルバニア州ホーシャム)、アドバンスドサーフェステクノロジー(マサチューセッツ州ビルリカ)、およびハイドロマー社(ニュージャージー州ブランチバーグ)より入手できる。
【0027】
1つの実施形態においては、親水性テープまたはフィルムはインキュベーションチャンバーの上面からのマイクロアレイの光学的照合を可能とするのに十分な透明性を有する。他の実施形態においては、親水性面はインキュベーションチャンバーの上面を親水性コーティングによって被覆することにより作成される。他の実施形態においては、親水性面は単純にカバースリップ40を親水性テープまたは親水性フィルムと置換することによって作成される。
【0028】
さらに他の実施形態においては、親水性面は細胞膜を溶解し、タンパク質を変性させ、かつ核酸を捕捉する化学物質を含浸させた親水性マトリクスである。親水性マトリクスはサンプルの精製およびサンプルのインキュベーションチャンバー内への均一な吸い上げという2つの機能を果たすであろう。1つの実施形態においては、親水性マトリクスはFTA紙(登録商標)(ワットマン社、ニュージャージー州フローハムパーク)である。生体サンプルをFTA紙に塗布すると、サンプルに含まれる細胞が紙の上で溶解する。紙を洗浄して全ての非DNA材料を除去する(DNAは紙に絡め取られて残る)。次に、続いてマイクロアレイ分析を実施するためにDNAを溶離する。代替的に、結合したDNAを原位置で増幅し、溶離ステップを実施せずにマイクロアレイ検出を実施してもよい。
【0029】
FTA紙(登録商標)はアレイの対向面(すなわちインキュベーションチャンバーの上面)として用いることができる。代替的に、マイクロアレイをFTA紙にプリントしてもよく、さらにインキュベーションチャンバーの上面の透明なカバースライドによってマイクロアレイの可視化が可能となるであろう。他の実施形態においては、FTA紙(登録商標)上の核酸サンプルの増幅を目的として、PCR試薬をインキュベーションチャンバー内に導入してもよい。この実施形態においては、増幅はインキュベーションチャンバー10の内部で実施されるであろう。
【0030】
マイクロアレイ20は、オリゴヌクレオチドマイクロアレイおよびプロテインマイクロアレイを含むがこれに限定されないあらゆる種類のマクロアレイとすることができる。1つの実施形態においては、マイクロアレイ20は、たとえばいずれもその全文が本明細書に参照文献として援用される米国特許第5,741,700号、第5,770,721号、第5,981,734号、第6,656,725号および米国特許出願第10/068,474号、第11/425,667号および第60/793,176号に記載されるプリントゲルスポット法を用いて形成される。
【0031】
他の実施形態においては、マイクロアレイシステムは液状物(例:サンプル、標的を含有するPCRバッファー、ハイブリダイゼーションバッファー、または洗浄バッファー)をインキュベーションチャンバー10に導入するための一方向バルブをさらに含む。生物兵器の検出など一定の用途においては、重要な懸念となる環境汚染を予防するために、サンプルは一方向バルブよりインキュベーションチャンバー10に導入される。1方向バルブはチェックバルブであっても、またはインキュベーションチャンバー10の入口ポートに載置するドームバルブであってもよい。多様なサイズのドームバルブが市販されている(例:マルチバルブ・インターナショナル製、オハイオ州イエロースプリングス)。図2に示す実施形態においては、ドームバルブ50は2つのコンポーネント:ドーム型のバルブ本体52およびバックシール54を含む。バックシールは、イントロデューサー56がバックシール54を貫通することを可能とする穴(示さず)を有する。イントロデューサー56は、バックシール54を貫通するためのとがった先端を有するあらゆる液状物送達デバイスであってよい。この実施形態においては、イントロデューサー56はピペットチップである。他の実施形態においては、イントロデューサー56は注射針である。
【0032】
ドームバルブ50はイントロデューサー56による容易なアクセスを可能とし、かつイントロデューサー56の先端がバックシール54よりドームバルブ50内に入る際に先端に適合する。イントロデューサー56の抜去後、バックシール54の開口部は自然に閉鎖してサンプルがドームバルブ50よりインキュベーションチャンバー10外に漏出することを防止する。したがって、ドームバルブ50は刺入可能な隔壁およびチェックバルブの両方の役割を果たす。ドームバルブは、支持構造58を介してマイクロアレイアセンブリに設置してもよい。1つの実施形態においては、ドームバルブは入口ポート11および入口導管14を経てインキュベーションチャンバー10と接続される(図3)。
【0033】
さらに他の実施形態においては、マイクロアレイシステムはさらに廃液チャンバーを含む。オーロラフォトニクスポートアレイ5000(商標)マイクロアレイリーダーなどの多くの光学リーダーは、乾燥した画像を読み取るとき信号雑音比が改善する。したがって、マイクロアレイをマイクロアレイリーダーに載置する前に液状物をインキュベーションチャンバーより除去するために、廃液チャンバーをマイクロアレイシステムに組み込むことが有利である。今度は図3を参照すると、インキュベーションチャンバー10は同一のマイクロアレイスライド上に形成された廃液チャンバー60に接続される。
【0034】
廃液チャンバー60はあらゆる形状とすることが可能であり、かつ典型的にはインキュベーションチャンバー10の容積よりも大きな容積を有している。1つの実施形態においては、廃液チャンバーはガスケットテープに形成された後、その上にマイクロアレイ20がプリントされた基板30(図1参照)と接着される。さらに他の実施形態においては、基板30はその上面に切り欠きを有する。廃液チャンバー60が一旦基板30とガスケット34の間に形成された後にインキュベーションチャンバー10の深さよりも大きな深さを有するよう、切り欠きはガスケット34の廃液チャンバー60のサイズおよび位置と適合するサイズおよび位置を有する。他の実施形態においては、基板30に切り欠きを容易に作成できるよう、基板30はプラスチック材料で製造される。さらに他の実施形態においては、インキュベーションチャンバー10および廃液チャンバー60はいずれもガスケット34を用いることなく基板30上に形成される。しかし、廃液チャンバー60はインキュベーションチャンバー10の深さよりも大きな深さを有してもよい。
【0035】
1つの実施形態においては、廃液チャンバー60は、一旦インキュベーションチャンバー10が液状物と接触すると、インキュベーションチャンバー10より液状物を吸い上げ、それによりマイクロアレイ20が乾いた状態で読み取られること可能とする吸収剤62を含む。
【0036】
吸収剤62は比較的大量の液状物を保持することのできるあらゆる材料とすることができる。1つの実施形態においては、吸収剤62は繊維の凝集物より製造される。他の実施形態においては、吸収剤62はスルーエアーボンディング工程で生成された不織布である。不織布の構成繊維は親水性合成繊維、パルプなどの天然セルロース繊維、または再生セルロース繊維とすることができる。繊維は、液状物吸収を向上させるために界面活性剤または親水性油をコーティングしたり、または浸透させてもよい。本明細書における使用のための不織布は、スルーエアーボンディング工程に限定されず、スパンボンディング工程、エアーレイング工程、スパンレーシング工程などの他のあらゆる工程によって製造してもよい。1つの実施形態においては、吸収剤62はミリポア社(マサチューセッツ州ビルリカ)製のセルロース紙(C048)である。
【0037】
再度、図3を参照すると、廃液チャンバー60は導管12を介してインキュベーションチャンバー10に接続される。導管12は二重の目的を果たす。導管12は、液状物で満たされるときにインキュベーションチャンバー10と廃液チャンバー60の間の液状物経路を提供する。空気で満たされるとき、導管12はインキュベーションチャンバー10を廃液チャンバー60から離隔し、廃液チャンバー60内の吸収剤62による早すぎる吸い上げを防止する。
【0038】
インキュベーションチャンバー10内の液状物は、インキュベーションチャンバー10内部の液状物を導管12に押出し、かつ導管12内の液状物と廃液チャンバー60内の吸収剤62との接触を確率させることによって除去される。接触は、インキュベーションチャンバー10内の液状物に圧力を加えて液状物を導管12から押し出すことによって、あるいは廃液チャンバー60のベント64に吸引を行って導管12内の液状物を引き出すことによって確立してもよい。インキュベーションチャンバー10内の液状物に対する圧力は、ドームバルブ50から(例:ピペットまたはシリンジを用いて)圧力をかけることにより生成してもよい。インキュベーションチャンバー10が親水性テープまたは親水性フィルムによってのみ被覆される場合、インキュベーションチャンバー10内部の液状物に対する圧力はインキュベーションチャンバー10の上面を形成する親水性テープまたはフィルムを単純に押すことによって生成してもよい。代替的に、導管12中の液状物と吸収剤62との接触は、吸収剤62が導管12内の液状物に触れるまで吸収剤62を導管12に向かって移動させることにより確立される。
【0039】
一旦接触が確立されたならば、インキュベーションチャンバー10内の液状物を、導管12を経て廃液チャンバー60内の吸収剤62中に吸い上げる。液状物の流量は導管12のサイズ、液状物の表面張力および粘度、および吸収剤62の吸い上げ速度によって決定される。さらに、吸収剤がより飽和するにつれて流量は減少する。流量は、廃液チャンバー60内への吸収剤62の留置によって制御することもできる。導管12の出口近傍に留置した吸収剤は、より離れて留置した吸収剤よりも高い流量をもたらす。したがって、吸収剤62の隅を切り落とすことによって、導管12の出口と吸収剤62の距離の増加によるより遅い流量がもたらされる。
【0040】
気泡がインキュベーションチャンバー10内に導入される場合、気泡が導管12内に滞留しかつ導管12内の液状物の流動を部分的または完全に遮断することがある。気泡が液状物と吸収剤62のまさに接触面に位置する場合、気泡が吸収剤62の吸い上げ作用も停止させることがある。この問題は図4に示す導管の設計によって克服することができる。この実施形態においては、導管12は3つのセクション:入口セクション15、漏斗型接続セクション16および出口セクション17を含む。出口セクション17は入口部分15の直径よりも小さな直径を有する。より小さな直径は、出口セクション17において、入口部分15への圧よりも高い毛細管圧をもたらす。圧の差は出口セクション17への液状物の移動に至る。操作中、すでに出口セクション17にある液状物は出口セクション17の外に押し出されかつ液状物と吸収剤62の接触部分のエアーポケットの周囲を通過する。漏斗型接続部分16は、導管の毛管現象による早すぎる吸い上げを防止するオーバーフロー領域を提供する。他の実施形態においては、出口セクション17はより直径の大きな第1の部分(図4のセクション17の水平部分に相当)およびより直径の小さな部分(廃液チャンバー60に流入するセクション17の垂直部分に相当)の2つのサブセクションにさらに分割される。
【0041】
インキュベーションチャンバー10におけるハイブリダイゼーションまたは増幅プロセスが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)における熱サイクリングの変性ステップのような加熱ステップを包含する場合、インキュベーションチャンバー10の内部の液状物が導管12より押し出され、かつインキュベーションチャンバー10内の圧力上昇により吸収剤62との早すぎる接触を行うこともある。これらの状況下では、吸収剤62による早すぎる吸い上げを防止するために、(インキュベーションチャンバー10が充填される際に)導管12内に意図的に空気を残してもよい。代替的に、吸収剤62による早すぎる吸い上げを防止するために導管12の内部に疎水性停止装置を配置してもよい。1つの実施形態においては、疎水性停止装置は疎水性内面を有する導管セクションを含む。1つの実施形態においては、疎水性面は未処理の導管面をテフロン(登録商標)、シリコンまたはシランなどの疎水性材料でコーティングまたは処理することにより形成される。他の実施形態においては、導管12の内面は親水性材料によってコーティングされ、かつ疎水性停止装置は未処理の疎水性プラスチック材料を露出する非コーティング面を有する導管12のセクションを含む。
【0042】
他の実施形態においては、吸い上げが適切な間隔で起こることを担保するために、インキュベーションチャンバー10を複数の廃液チャンバー62と接続する。
【0043】
均一に充填するための親水性インキュベーションチャンバー、サンプルの汚染を防止するための1方向バルブ、およびインキュベーションチャンバーから液状物を除去するための廃液チャンバーを有する一体型マイクロアレイシステムも、本明細書に記載される。今度は図5を参照すると、一体型マイクロアレイシステム100の1つの実施形態は、基板30上にプリントまたは形成されたマイクロアレイ20、マイクロアレイ20の周囲に形成された親水性インキュベーションチャンバー10、導管(示さず)を介したインキュベーションチャンバー10との流体連絡路内のドームバルブ50、および導管12を介してインキュベーションチャンバー10と接続される廃液チャンバー60を含む。吸収剤62は、ベント64を介して大気にベントされた廃液チャンバー60に組み入れられる。透明親水性カバー70はインキュベーションチャンバー10および廃液チャンバー60の上面を形成する。1つの実施形態においては、ベント64は単純に廃液チャンバー60のカバーに穴を打ち抜くことによって作成される。
【0044】
親水性テープまたはフィルムによってインキュベーションチャンバー10および廃液チャンバー60を被覆することの長所のひとつは、薄いフィルムまたはテープが圧力下で変形することができることである。したがって、廃液チャンバーにわずかな圧を加えることによりインキュベーションチャンバー10内で液状物を混合することが可能であり、これによりインキュベーションチャンバー10にわずかな変形が、さらにこれによりインキュベーションチャンバー10内における液状物の移動が引き起こされるであろう。
【0045】
図6は、反応チャンバー10、廃液チャンバー60および洗浄バッファーチャンバー80を含むマイクロアレイシステム100の他の実施形態を示す。チャンバーは、チャンバー間の液状物の流動を制御する毛細管停止装置90によって互いに接続される。毛細管停止装置は、流体流動を制御するために1つまたはそれ以上の「階段」セクションおよび/または1つまたはそれ以上の「スイッチバック」セクションを含んでもよい。この実施形態においては、ユーザーは始め入口91より洗浄バッファーチャンバー80を満たし、これを密封する。次に、ユーザーは入口92より反応チャンバー10をサンプルで満たし、これを密封する。最後にユーザーはベント93を密封する。次に、マイクロアレイシステム100を通常のスライドブロックサーモサイクラー(例:クワンタ・バイオテック、サーモフィッシャーなど)内に留置する。熱サイクリング後、マイクロアレイシステム100を取り出し、ベント93に細孔を開ける。ベント93の細孔を開くと、その後洗浄バッファーが反応チャンバーを経て廃液チャンバーに移動するため、反応チャンバーは最終的に撮像のための乾燥状態となる。廃液チャンバー内の吸収剤62は生成物を含み、かつベント93に細孔を開くときのエアロゾル化を防止するであろう。1つの実施形態においては、多孔質膜を用いてエアロゾル化が起こらないことを担保してもよい。
【0046】
他の実施形態においては、標的分子を検出することを目的としたマイクロアレイシステム200が開示される。マイクロアレイシステム200は反応チャンバー、廃液チャンバー、入口ポート、反応チャンバーを入口ポートと接続する第1の導管、および反応チャンバーを廃液チャンバーと接続する第2の導管を含む。反応チャンバーは入口、出口、マイクロアレイおよび液状サンプルがチャンバー内に気泡を伴わずに導入されることを可能とするチャンバーの上面および下面のうちいずれか一方上の親水性領域を有する。廃液チャンバーは、液状物が毛細管作用によって反応チャンバー内を洗浄のために移動することを可能とする吸収剤を有する。
【0047】
図7はマイクロアレイシステム200の1つの実施形態を示す。この実施形態においては、マイクロアレイシステム200はマイクロアレイ211を有するアレイ基板210、反応チャンバースペーサー220、親水性カバー230、および廃液チャンバースペーサー240、吸収剤250およびベント孔261を有する廃液チャンバーカバー260を含む層構造を含む。反応チャンバースペーサー220は、組み立てられたマイクロアレイシステム内にアレイ211を取り囲む反応チャンバー221を形成する開口部、接続導管222および223、入口孔224および廃液チャンバー225を有する。導管222は反応チャンバー221を入口孔224と接続し、かつ導管223は反応チャンバー221を廃液チャンバー225と接続する。
【0048】
親水性カバー230は反応チャンバー221および接続導管222および223の上部を被覆する。親水性カバー230は入口孔224および廃液チャンバー225に適合する入口孔開口部234および廃液チャンバー開口部235も含む。廃液チャンバースペーサー240は、親水性カバー230の廃液チャンバー開口部235およびスペーサー220の廃液チャンバーと適合する廃液チャンバー開口部245を有する。吸収剤250は廃液チャンバー220に嵌合するよう寸法取りされ、かつ廃液チャンバーカバー260によって被覆される。入口孔開口部224および234は、入口ポート270からの反応チャンバー221へのアクセスを提供する。
【0049】
1つの実施形態においては、反応チャンバー221の側壁は反応中の気泡を捕捉するために親水性となっている。
【0050】
他の実施形態においては、親水性カバー230は親水性領域が反応性チャンバー221の出口227の近傍に作成されるよう配置される。関連する実施形態においては、親水性領域は親水性ゲルエレメントによって作成される。
【0051】
他の実施形態においては、反応チャンバー221内の内容物がマイクロアレイシステム200から放出されることなく洗浄することを可能とするために、入口ポート270は刺入可能な膜/テープまたはドームバルブを含む。
【0052】
他の実施形態においては、アレイ基板はガラスまたプラスチックである。さらに他の実施形態においては、反応チャンバースペーサー220は両面テープである。1つの実施形態においては、接続導管223は「階段およびスイッチバック」セクションを有する。図8に示すように、導管223の「階段」セクションは、アレイチャンバー側がより幅広く廃液チャンバー側で段階的に狭くなる複数のサブセクションを有する。この「階段」設計は早すぎる吸い上げを防止する。導管223の「スイッチバック」セクションは、一連の急激な導管の幅の変化および/または鋭い角を有する。これらの導管幅の変化および鋭い角は、ここでも液状物が反応チャンバー221から廃液チャンバー225に移動するためには好ましくない条件を再度作り出す。一部の実施形態においては、「鋭い角」は135°未満の角度で交差する2つの導管によって形成される角を指す。他の実施形態においては、導管223の「階段」セクションの1つまたはそれ以上のサブセクションの壁は、隣接する2つのサブセクションの壁の間で親水性の変化を引き起こすために、親水性または疎水性コーティングによってコーティングされる。1つの実施形態においては、反応チャンバー221の近傍にある導管223の「階段」セクションのサブセクションが親水性コーティングまたはポリマーによってコーティングされる一方で、隣接するサブセクションはコーティングされないか、または疎水性コーティングによってコーティングされる。そのような親水性の変化は、早すぎる吸い上げを防止するためのサブセクション間の流動停止装置として作用するであろう。
【0053】
当業者は、マイクロアレイシステム200が多くの変法を有することを理解するであろう。たとえば、反応チャンバー221、または廃液チャンバー225、またはそのいずれもがプラスチック基板210上に成形されてもよい。
【0054】
マイクロアレイシステム200にサンプル精製機能を組み入れてもよい。1つの実施形態においては、マイクロアレイシステム200の入口ポート270は、サンプルから標的分子を精製または分離するためのサンプル精製マトリクスをさらに含む。代替的に、マイクロアレイシステム200の反応チャンバー221はサンプルから標的分子を精製または分離するためのサンプル精製マトリクスをさらに含んでもよい。1つの実施形態においては、サンプル精製マトリクスはシリカである。
【0055】
マイクロアレイ211は、標的分子に応じてオリゴヌクレオチドアレイまたはプロテインアレイとすることができる。1つの実施形態においては、マイクロアレイ211はオリゴヌクレオチドアレイであり、かつマイクロアレイシステム200は標的ポリヌクレオチドを増幅および検出するために用いられる。
【0056】
図8〜12はマイクロアレイシステム200の様々なコンポーネントの寸法を示す。
【0057】
図13はPCRアレイ試験300の実施形態を示すフローチャートである。簡単に言うと、全核酸(DNAおよびRNA)をサンプルより分離し(ブロック310)、精製した核酸をDNAポリメラーゼ、dNTPおよび少なくとも1対のPCRプライマーを含む増幅混合物と共にマイクロアレイシステム200のアレイチャンバーに装填する(ブロック320)。PCR反応はマイクロアレイシステム内で実施する(ブロック330)。増幅生成物をマイクロアレイシステム200上でハイブリダイゼーションさせ(ブロック340)、さらにハイブリダイゼーションの結果をアレイリーダーで読み取る(350)。
【0058】
サンプルはスワブ、鼻咽頭吸引液または全血サンプルなどのあらゆる生体サンプルとすることができる。全核酸は当業者に周知の方法によって分離してよい。1つの実施形態においては、全核酸はキアゲン試薬などの市販の核酸分離試薬またはキットによって分離される。他の実施形態においては、アコーニバイオシステムズが開発したサンプル調製デバイスによって全核酸を分離する。アコーニのサンプル調整法についての一般化された作業の順番は、溶解バッファーにおけるサンプルの変性;サンプル調製デバイス上への溶解サンプルの持続的な灌流;洗浄およびサンプル調製デバイスからの核酸の溶離を含む。
【0059】
分離した核酸をマイクロアレイシステム200に装填しさらに当業者に周知の方法でオンチップ増幅する。オンチップ増幅後、マイクロアレイシステム200を所望の温度で一定時間インキュベートし(例:50〜65°で10〜60分)、アンプリコンをマイクロアレイとハイブリダイゼーションさせる。インキュベーション後、マイクロアレイシステム200を洗浄し(例:水などで)さらにマイクロアレイリーダー(例:アコーニのポータブルマイクロアレイリーダーなど)で撮像する。1つの実施形態においては、マイクロアレイシステムは撮像前に乾燥させる。他の実施形態においては、乾燥手順はインキュベーションチャンバーへのアセトンの導入および/またはインキュベーションチャンバーの加熱により遂行される。他の実施形態においては、非標識「順」プライマーに対して非常に過剰な量の蛍光標識された「逆」プライマー(例:5〜20倍過剰)を含む非対称PCRマスターミックス中で、分離した核酸の増幅および増幅生成物の標識化を行う。この戦略により、その5’末端に単一の標識を有する一重らせん標的が主として生成される。
【0060】
アレイ試験300は多くの変法によって実施することができる。1つの実施形態においては、増幅された生成物はハイブリダイゼーション後反応チャンバー内に残留し、かつマイクロアレイの撮像前の洗浄もない。他の実施形態においては、増幅生成物は反応チャンバー内に留まり、かつKhodakovら(Khodakov他、2008, BioTechniques, 44:241−248)が報告するところの成長曲線を示すために、ハイブリダイゼーション時にアレイスポットをリアルタイムで撮像する。さらに他の実施形態においては、反応チャンバーはELISAなどのマルチステップ分析のための一連のインキュベーションおよび洗浄ステップを支援する。
【0061】
他の実施形態においては、マイクロアレイ211はプロテインアレイであり、かつマイクロアレイシステム200はタンパク質標的を検出するために用いることができる。図14はプロテインアレイ試験400の実施形態を示すフローチャートである。簡潔に言うと、サンプルよりタンパク質を抽出し(ブロック410)、抽出したタンパク質をアレイチャンバーに装填しかつマイクロアレイシステム200のマイクロアレイと共にインキュベートし(ブロック420)、マイクロアレイを洗浄し(ブロック430)、さらに当業者に周知の方法を用いてマイクロアレイと結合したタンパク質標的を検出する(ブロック440)。
【0062】
1つの実施形態においては、アレイエレメントと標的タンパク質の間の相互作用を改善するために、インキュベーションステップ420は周期的なまたは連続的振動の元で実施する。
【0063】
他の実施形態においては、抽出されたタンパク質をプロテインアレイ上に連続的に灌流する。さらに他の実施形態においては、アレイエレメントと標的タンパク質との相互作用を向上させるために、抽出されたタンパク質がインキュベーションステップにおいて導管内を循環できるよう、プロテインアレイエレメントは細長い導管内で複数の試験紙の形態(プロテインストリップアレイ)に配列される(図15A)。図15Bは、導管を経て廃液チャンバーと接続されるサンプルレザバーを含むマイクロアレイシステムの実施形態を示す。プロテインアレイまたはプロテインストリップアレイは導管の内側にプリントされる。サンプルより抽出されたタンパク質はレザーバー内に装填され、さらにプロテインアレイ中を連続的に流動し、廃液チャンバーに流入する。
【0064】
好ましくは、導管は導管の高さが100〜2000μm、より好ましくは200〜500μmの範囲にある薄型導管である。多孔質ゲルラインを通過して、あるいは横切ってサンプルが連続的に灌流されるよう、流路上に多孔質ゲルラインが形成されるであろう。非常に薄型の導管中を連続的に灌流することによって迅速な拡散動態が1次元的にもたらされ、拡散境界層が崩壊し、かつ対流性移動が増加してアレイエレメントと標的タンパク質の相互作用が促進される。圧力および/または吸収剤によって制御される流量で、感度を高めるために大容積を灌流することができる。ゲルエレメントは流路を貫通するので、その3Dプロファイルは標準的な2D Abアタッチメントよりも好ましい拡散導体も提供する。数秒と非常に速いことが示されている(Rossier他、Langmuir 2000)迅速な拡散動態を促進するために、3D半球状のゲルドロップを有する十分に薄い導管も設計することも可能であろう。1つの実施形態においては、ゲルラインは0.5nm〜0.5μmの範囲の多孔性を有する。
【0065】
薄型導管設計においては、スペーサーテープは薄く、かつ導管内へのオーバーシャインを防止するために低いバックグラウンド蛍光を有する必要がある。導管上のカバーは、導管内に折れ曲がりさらにプロテインアレイのゲルストリップを損傷しないよう、親水性でありかつ十分に剛直であることが必要である。
【実施例1】
【0066】
(親水性テープでインキュベーションチャンバーを被覆したところチャンバーが完全に充填された)
図3に示すようなマイクロアレイを構築した。スライドは長さ2.95インチおよび幅0.75インチを有していた。幅0.5mmの導管14は充填入口ポート11をマイクロアレイインキュベーションチャンバー10に接続し、2.0mm導管12はマイクロアレイインキュベーションチャンバー10を廃液チャンバー60に接続し、さらに廃液チャンバー60から外部までの1.0mm導管64はベントの役割を果たす。マイクロアレイインキュベーションチャンバー10は10mm×10mmのサイズを有する。厚さ0.25mmを有する内部のガスケットテープ(3M社より入手、PartNo.9087)をレーザー切断して上記に記載の形状寸法を有するガスケットを形成した。ガスケットは、ゲルスポットプリント工程に用いたスライドと同様の接触角の疎水性面に載置した。ガスケットの上部は、親水性面を提供するために親水性テープ(AR90128)で密封した。水30μLにより、気泡またはエアーポケットを残すことなく均一にチャンバーを充填した。チャンバーは、ハイブリダイゼーションバッファー30μL(3Mチオシアン酸グアニジン、150mM HEPES pH7.5、および15mM EDTA)によっても均一に満たされた。疎水性テープ(AR8192)を用いた同様の試験では、非均一な充填によりマイクロアレイチャンバー内にエアーポケットが残った。
【0067】
この実験により、チャンバーの親水性面によって液状物の表面張力が克服され、かつ四隅を含めたチャンバーの完全な充填が可能となることが示された。四隅は典型的には液状物がチャンバーを満たす際にエアーポケットを捕捉するので、この結果は驚くべきものである。
【実施例2】
【0068】
(廃液チャンバーの吸い上げ効率の評価)
図16Aは、吸収剤を収容する廃液チャンバーと接続された親水性インキュベーションチャンバーをそれぞれ有する4つの試験マイクロアレイスライドを示す。廃液チャンバーは大気中にベントされた。チャンバーは、マイクロアレイ支持スライド上部にガスケットを載置することによって形成された(グレースバイオラボが提供する両面テープよりレーザーカットする)。インキュベーションチャンバー内の親水性面は、インキュベーションチャンバー空隙を親水性テープ(AR90469)で被覆することにより製造された。吸収剤はミリポア製であった(C048)。Yersinia pestis由来の増幅生成物、ハイブリダイゼーションマーカー、BSAおよびハイブリダイゼーションバッファーを含むサンプル95μLを95℃で5分間変性させ、さらに入口ポートよりインキュベーションチャンバーに導入した。次に入口ポートをテープ(AR90697)で密封した。スライドタワーを接続したMJリサーチPTC−200DNAエンジンサーモサイクラーにおいて反応物を50℃で1時間インキュベートした。マイクロアレイスライドをタワーから取り出し、室温で水150μLにより洗浄した。入口ポートより水がインキュベーションチャンバーに加えられるにつれ、インキュベーションチャンバー内の液状物は、インキュベーションチャンバーを廃液チャンバーと接続する導管を通って廃液チャンバーに押し出された。インキュベーションチャンバー内の液状物と廃液チャンバー内の吸収剤との接触が一旦確立すると、吸収剤はインキュベーションチャンバーより液状物(洗浄容積を含む)を吸い出すことが可能であった。次に、マイクロアレイスライドを95℃で20分間加熱してインキュベーションチャンバーを完全に乾燥させた。オーロラフォトニクスポートアレイ5000(商標)上で、装置に全く手を加えずにマイクロアレイを撮像した。画像は、インキュベーションチャンバーを被覆する親水性テープ越しに撮像した。
【0069】
図16Bは、ハイブリダイゼーション、洗浄および乾燥ステップ後のマイクロアレイの例の画像を示す。生成物スポットは暗い黒色の点として示される。対照スポットはCy3スポットおよびハイブリダイゼーションマーカーを含む。各アレイは4つのサブアレイの反復であるので、4セットのYp生成物スポットである。全ての試験スライド上で均一なハイブリダイゼーションが達成された。
【実施例3】
【0070】
(ドームバルブ、親水性インキュベーションチャンバーおよび廃液チャンバーを含むマイクロアレイシステム)
図17Aは、親水性テープで被覆されたインキュベーションチャンバー、吸収剤が組み込まれた廃液チャンバー、およびインキュベーションチャンバーと接続されたドームバルブを有する一体型マイクロアレイシステムの実施例を示す。ハイブリダイゼーションマスターミックスおよびYersinia pestis生成物からなるサンプル95μLを95℃で5分間変性させ、さらにレイニンP200uLピペッターを用いてドームバルブよりインキュベーションチャンバーに導入した。サンプルは、気泡またはエアーポケットを残すことなくマイクロアレイチャンバーへ均一に流入した。インキュベーションチャンバーを、フローセルデバイスに全く変化を加えず、スライドタワーを接続したMJリサーチPTC−200DNAエンジンサーモサイクラーにおいて50℃で60分間加熱した。マイクロアレイスライドをスライドタワーから取り出し、水150uLで洗浄した。水がインキュベーションチャンバーに導入されるにつれ、インキュベーションチャンバー内部のハイブリダイゼーション混合物は廃液チャンバーに押し出され、さらにミリポアC048吸収剤がインキュベーションチャンバーより液状物の全量を吸い出した。次に、マイクロアレイスライドを95℃で20分間加熱してインキュベーションチャンバーを完全に乾燥させた。オーロラフォトニクスポートアレイ5000(商標)上で、装置に全く手を加えずにマイクロアレイを撮像した。画像は、インキュベーションチャンバーを被覆する親水性テープ越しに撮像した。
【0071】
図17Bは、ハイブリダイゼーション、洗浄および乾燥ステップ後の例示的マイクロアレイの画像を示す。生成物スポットは暗い黒色の点として示される。対照スポットはCy3スポットおよびハイブリダイゼーションマーカーを含む。各アレイは4つのサブアレイの反復であるので、4セットのYp生成物スポットである。図8Bに示すように、全てのサブアレイにおいて均一なハイブリダイゼーションが達成された。
【実施例4】
【0072】
(親水性インキュベーションチャンバーおよび廃液チャンバーを含むマイクロアレイシステム)
図18Aは、親水性チャンバー10および廃液チャンバー60を有するマイクロアレイシステムの他の実施形態を示す。2つのチャンバーは、入口セクション15、漏斗状接続セクション16、大直径出口セクション171および小直径出口セクション172を有する導管12によって接続される。液状サンプルは、入口ポート11および導管14を経てインキュベーションチャンバー10に加えられる。
【0073】
図18Aに示すマイクロアレイシステムは、両面テープ(グレースバイオラド)よりレーザーカットされたガスケットを用いてガラススライド上に構築された。廃液チャンバー60は濾紙吸収剤(CF4、ミリポア)を含み、かつ大気中にベントされた。生成するマイクロアレイアセンブリはレクサンHPFAF(0.007”/175μm)曇り止めテープ(GEプラスチックス)で被覆された。Streptococcus pyogenese由来の増幅生成物、ハイブリダイゼーションマーカー(ポジティブコントロール)、BSAおよびハイブリダイゼーションバッファーを含むサンプル20μLを95℃で5分間変性させ、さらにレイニンP200uLピペッターを用いて入口ポート11よりインキュベーションチャンバー10に導入した。入口ポート11をテープで密封し、スライドタワーを接続したMJリサーチPTC−200DNAエンジンサーモサイクラー内において、スライド全体を55℃で30分間インキュベートさせた。スライドをタワーから取り出し、室温で水150uLにより洗浄した。オーロラフォトニクスポートアレイ5000(商標)マイクロアレイリーダーによりアレイを撮像した(露出時間2秒)。図18Bはハイブリダイゼーションの結果を示す。図18Cはアレイスポットの配置を示すチップマップである。図18Bに示すように、ハイブリダイゼーションコントロールおよびStrestococcus特異性プローブより強い陽性結果が得られた。
【実施例5】
【0074】
(ワンステッププロテインマイクロアレイシステム)
図5および図18Aに示す実施形態のものなどのワンステップ一体型プロテインマイクロアレイシステムは、捕捉抗体を含有するゲルドロップエレメントを用いて構築される。捕捉抗体は、生物兵器(BWA)パネルに対して特異的に結合する抗体である。各ゲルスポットは特定のBWAと結合する抗体を含む。金コロイド標識した二次抗体のセットを入口導管近傍の位置に留置する。二次抗体は同じパネルのBWAを認識する。液状サンプルを入口導管よりインキュベーションチャンバーに装填するとき、金コロイド標識二次抗体はサンプルがインキュベーションチャンバーに入るにつれてサンプルと混合される。インキュベーション中、目的のBWAがアレイゲルスポット内の抗体によって捕捉され、さらに二次抗体が捕捉されたBWAと結合する。インキュベーション時間の後、非結合二次抗体が洗い流される。二次抗体はゲルスポット上に捕捉されたBWAと結合し、マイクロアレイにおいて陽性シグナルを生成する。
【0075】
本明細書で用いるところの用語「抗体」は、考えられる最も広い意味で用いられ、かつ抗体、組換え抗体、遺伝子操作抗体、キメラ抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、二機能性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ヘテロ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ラクダ化抗体、脱免疫抗体、抗イディオタイプ抗体、および/または抗体フラグメントを含んでもよいが、これに限定されない。また用語「抗体」はIgA、IgD、IgE、IgGおよび/またはIgMなどの抗体の種類、および/またはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1および/またはIgA2などのサブタイプを含んでもよいが、これに限定されない。用語「抗体」は、たとえば抗原結合可変領域などの、未修飾抗体の少なくとも一部分といった抗体フラグメントを含んでもよいが、これに限定されない。抗体フラグメントの例はFv、Fab、Fab’、F(ab’)、F(ab’)2、Fvフラグメント、二機能性抗体、線形抗体、短鎖抗体分子、多重特異性抗体、および/またはその他の抗体の抗原結合配列を含む。さらなる情報は、その全文が本明細書に参照文献として援用されている米国特許第5,641,870号、米国特許第4,816,567号、国際公開番号第WO93/11161号、Holliger他、二価抗体:小型二価および二重特異性抗体フラグメント、PNAS,90:6444−6448(1993)、Zapata他、Escherichia coliにおける効率的な生成および抗増殖性活性の亢進を目的とした線形F(ab’)2フラグメントの操作、Protein Eng.8(10):1057−1062(1995)に認められうる。
【実施例6】
【0076】
(マルチステッププロテインマイクロアレイシステム)
抗体を含有するゲルドロップエレメントを用いてマルチステップ一体型プロテインマイクロアレイシステムを構築した。アレイのチップマップを図19に示す(上左の図)。ゲルドロップがプリントされたガラススライドを、1%BSAを含有するPBSにより室温で1時間ブロッキングした。スライドをDI水ですすぎ、粉塵のない環境で風乾させた。次に、ブロッキングしたガラススライド、レーザーカットしたアドケム製256Mテープ、親水性レクサンフィルム、およびドームバルブを用いてマイクロアレイシステムを組み立てた。図19は、実験で用いられたマイクロアレイスライドの図を示す。SEB(0.05%Tween20および1%BSA添加1ug/mL PBS溶液)約20μLをドームバルブよりマイクロアレイシステムにピペッティングし、室温で60分間インキュベートした。DI水20μLをピペッティングして(×2)マイクロアレイシステムをすすぎ、その後ピペッターを用いて風乾した。0.05%Tween20を含有するPBS(PBST)30μLをマイクロアレイシステムにピペッティングした後、ピペッターを用いて風乾させた。1%BSAを含む抗SEBモノクローナル抗体PBST希釈液20μLをマイクロアレイシステムにピペッティングし、室温で30分間インキュベートした。DI水20μL(×2)をマイクロアレイシステムにピペッティングし、その後ピペッターを用いて風乾した。PBST30μLをマイクロアレイシステムにピペッティングし、その後ピペッターを用いて風乾した。1%BSAを含む2μg/mLアレクサ568標識抗マウス抗体PBST溶液20μLをマイクロアレイシステムにピペッティングし、室温で30分間インキュベートした。マイクロアレイシステムは遮光した。DI水20μL(×2)をマイクロアレイシステムにピペッティングした。100%エタノールをマイクロアレイシステムのインキュベーションチャンバーにピペッティングし、さらに残留エタノールを吸収剤で吸い上げた。次にマイクロアレイシステムを55℃で10分間加熱した。オーロラフォトニクスポートアレイ5000において、605nmフィルターによる緑色レーザー(532nm)を用いてマイクロアレイシステムを撮像した。プロテインアレイの代表的な画像を図19に示す(下右の図)。
【0077】
この実施形態においては、インキュベーションチャンバーを廃液チャンバーと接続する導管中に気泡が残り、インキュベーションチャンバー内の液状物を廃液から離隔して早すぎる吸い上げを防止した。
【実施例7】
【0078】
(PCRマイクロアレイシステム)
アコーニサンプル調製デバイスまたは顧客が好むサンプル調製キット(例:キアゲン試薬)において、1mLまでのスワブ、鼻咽頭吸引液または全血サンプルから全核酸(DNAおよびRNA)を分離する。アコーニのサンプル調整法についての一般化された作業の順番は、溶解バッファー中のサンプルの変性;サンプル調製装置上への溶解サンプルの持続的な注入;洗浄;および最終容積約100μLでの核酸の溶離を含む。溶離されたサンプルを、図8〜12に示す寸法を有するマイクロアレイシステム内に装填する。非標識「順」プライマーよりも10倍過量の蛍光標識「逆」プライマーを含む非対称PCRマスターミックス中で、標的の増幅および標識化を行う。この戦略により、その5’末端に単一の標識を有する一重らせん標的が主として生成される。オンチップ増幅後、アンプリコンをマイクロアレイシステムアセンブリ内において50〜65℃で30分間インキュベートする。インキュベーション後、マイクロアレイシステムを水で灌流する(全ての廃液はマイクロアレイシステム内に保持される)。
【0079】
図8はマイクロアレイシステムアセンブリの入口孔の実施形態を示す。スペーサーテープの入口孔の範囲は2.0〜4.0mmであるのに対し、カバーフィルムの穴の直径は0.8〜1.2mmの範囲である。直径の違いは、毛細管作用を介して試薬がチャンバー内に引き込まれることを可能とする。これらの直径が同一であれば、スペーサーテープの疎水性壁が、引き込む毛細管作用にとって好ましくない条件をサンプルにおいて作り出す。さらに、入口導管の導管幅は反応チャンバーに近づくにつれて増加する。この増加は、液状物がチャンバーに流入するために鋭い屈曲をする必要なくチャンバーに流入することを可能とするためのものである。鋭い屈曲は、移動する境界の接触線が、液状物の廃液チャンバーへの流入を遮断するよう働く不連続性を有することを必要とする。液状物が反応チャンバーより流出することを防止するために、導管の接続に直角の角を用いる。
【0080】
反応チャンバーの角を丸めて、粘性流動が表面駆動流の大半を占める高流量における充填を適合させる。この条件の際は角にエアポケットができやすい。さらに、反応が完了しかつ反応チャンバーが洗浄される場合、洗浄バッファーは反応チャンバーに吸い出される。陥凹した境界は、典型的には縁に沿ってチャンバー内に残留液状物を残し、縁は徐々に使い尽くされる。したがって、丸めた角によりチャンバーから液状物が完全に除去される時間が短縮される。
【0081】
接続導管は「階段」オーバーフローセクションおよび「スイッチバック」セクションの2セクションからなる。「階段」セクションは、45〜135°の範囲の角を作成するための、2.0mmから始まって0.6mmまで減少する導管寸法の変化がある。より具体的には、これらの角は90°である。スイッチバック部分はやはり90°の屈曲を伴う導管幅の一連の減少を有する。ここでも、これらの屈曲によって液状物の移動にとって好ましくない条件が作り出される。液状物が廃液チャンバーに近づくにつれて、直径の減少がより高い毛細管圧を作り出す。液状物が廃液チャンバーに接近するにつれて上昇する毛細管張力は、流路内にある気泡の効果を最小化する。接続導管の出口における気泡の曲率半径が、液状物の陥凹接触線と同じであれば、液状物は移動しない。しかし、気泡の曲率半径が液状物の陥凹接触線よりも小さければ、液状物は廃液チャンバーに流入し続けるであろう。したがって、小さな0.3mm導管が廃液チャンバーと接続する。0.2mmまたはそれ以下の導管は、縁の周囲の液状物が蓄積し一体となる条件を作り出す。液状物が導管の両側から一体化する場合、液状物は移動しかつ反応チャンバーを空にし始めるであろう。廃液チャンバーの吸収剤が接続導管と直接流体連通であるよう、吸収剤は接触導管に対して押しつけられる。
【0082】
入口ポートは厚さ0.75mmかつ内径0.9〜1.1mmかつ外径6.35mmである。この直径は、チップがアレイ基板にふれかつ流動を妨げることなくP20およびP100ピペットチップに適合する。シリコン接着剤を有するホイルサークルまたはタブが入口ポートと結合する。シリコンは、マイクロアレイシステムの乾燥に用いられるアセトンなどの溶媒と適合する。ホイルにはピペットチップを刺入することができる。ホイルサークルまたはタブは、反応チャンバーがサンプルおよびPCRマスターミックスで充填された後で貼付される。増幅後、反応チャンバーの洗浄を可能とするためにホイルに穴を開ける。吸収剤は、洗浄ステップ後に液状物がマイクロアレイシステムアセンブリから漏出するのを防ぐ。廃液チャンバーの遠位側にあるベント孔は、液状物がさらなるステップを必要とすることなく導入されることを可能とするために開いたままとする。ベント孔の半分は廃液チャンバーに露出しかつもう半分はガスケットによって被覆される。ホイルサークルは、剥離ライナーから剥がして入口ポートに貼付する半抜きロール上にあることが可能であり、あるいはタブの部分に剥離ライナーを付けたままホイルタブをマイクロアレイシステムアセンブリ上に配置することができる。ホイルタブは、剥離ライナーが取り除かれるときタブが入口ポートを被覆するように、製造時にマイクロアレイシステムアセンブリ上の位置に貼付する。
【実施例8】
【0083】
(ガラス基板を有するPCRマイクロアレイシステム上でのMRSA標的の検出および乾燥インキュベーションチャンバーの撮像)
この実験の目的は、マイクロアレイシステムアセンブリにおいて多重反応を実施することである。エリーサイエンティフィック製の相似被覆を有するガラススライド(25×75×1mm)をアレイ基板として用いる。Rubinaら(Rubina他、2003,BioTechniques 34:1008−1022,およびRubina他、2004.Anal.Biochem.325:92−106、その全文を本明細書に参照文献として援用)が報告するところのシングルステップ、UV誘導共重合反応における固形基板の代わりに、オリゴヌクレオチドプローブをポリマーバックボーンと共有結合的に架橋する。
【0084】
メシチリン耐性S.aureus細菌(MRSA)をATCCより培養として入手し、かつ協力者よりStreptococcus pyogenes(S.pyog)を培養として入手し、アコーニのトゥルーチップ(カタログ番号300−10206)により精製した。トゥルーチッププロトコルは約4分を要し、以下の各ステップ:結合、洗浄、乾燥、および溶離について電子ピペッターによる5回の吸い上げおよび押出しのサイクルからなる。DNAの量はナノドロップ3300蛍光分光光度計(デラウェア州ウィルミントン)で測定する。
【0085】
図20は、図7〜12のマイクロアレイシステムデザインにおけるMRSAチップ(v4.0)上で実施したMRSA核酸の増幅を示す。mecA、tufA−3b、SCCmecおよびM13のプライマーセットを用いて、MRSA DNA 300pgを多重反応で増幅する。画像はオーロラポートアレイ5000により撮像する。アレイは図21Aおよび21Bに示すチップマップを有した。マイクロアレイシステムアセンブリは、廃液チャンバー内にレーザーカット濾紙吸収剤(ワットマン31ET CHRセルロースクロマトグラフィ紙、0.5mm)を収容した。組み立て後に親水カバーフィルムの上面(疎水性面)をIPAで洗浄した。マスターミックスの調製は以下の通りであった:ホルムアルデヒド10%を添加したキアゲンTaq(登録商標)DNAポリメラーゼキット(キアゲン、カタログ番号1205)を用いて、MRSAの4プライマー(mecA、tufA−3b、SCCmecおよびM13)を含むマスターミックス14μLおよびメシチリン耐性S.aureus(MRSA)核酸10μLを各反応について調製した(15μL反応容積中で合計300pgのDNAを増幅)。調製した反応混合物14μLをマイクロアレイシステムに添加した。サンプル入口ポートを、接着性裏材料を有するホイルテーププルタブで被覆し、廃液チャンバーのベントは開いたままとした。全てのスライドを、スライドタワーを接続したMJリサーチPTC−200DNAエンジンサーモサイクラー上に載置し、増幅パラメータ:86.5℃で2分間、および86.5℃で45秒、50℃で1分30秒で35サイクル、および65℃で5分間、85℃で2分間および40℃で45分間の最終ステップにしたがって増幅した。増幅後、スライドタワーよりスライドを取り出し、次にサンプル入口ポートを被覆するホイルテープに細孔を開け、1×SSPE 35μLによりアレイを単回洗浄で洗浄した。次に、スライドを水25μL、その後100%アセトン75μLで洗浄した。次に、サーモフィッシャー2001FSQデジタルコントロールドライバス用に設計されたカスタムヒートブロック上においてスライドを50℃で15分間乾燥させ、さらにポートアレイ5000リーダーにおいて乾燥した状態で読み取る。
【実施例9】
【0086】
(ガラス基板を有するPCRマイクロアレイシステム上でのMRSA標的の検出および液状物内での撮像)
この実験の目的は、マイクロアレイシステムアセンブリ内で単一反応を実施することである。エリーサイエンティフィック製の相似被覆を有するガラススライド(25×75×1mm)をアレイ基板として用いる。Rubinaらが報告するところのシングルステップUV誘導共重合反応における固形基板(前掲)の代わりに、オリゴヌクレオチドプローブをポリマーバックボーンに共有結合的に架橋させる。図22は、図7〜12のマイクロアレイシステム設計におけるMRSAチップ(v4.0)上で実施したメシチリン耐性S.aureus(MRSA)核酸の増幅を示す。mecAプライマーを用いてMRSA DNA 1ngを単一反応で増幅する。画像はジーンピックス4000Bで撮像する。アレイは図21Aおよび21Bに示すチップマップを有した。フローセルは、廃液チャンバー内にレーザーカット濾紙吸収剤(ワットマン31ET CHRセルロースクロマトグラフィ紙、0.5mm)を収容した。組み立て後に親水カバーフィルムの上面(疎水性面)をIPAで洗浄した。マスターミックス調製は以下の通りである:ホルムアルデヒド10%を添加したキアゲンTaq(登録商標)DNAポリメラーゼキット(キアゲン、カタログ番号201205、http://www1.qiagen.com)を用いて、mecAプライマーを含むマスターミックス11.7μLおよびメシチリン耐性S.aureus(MRSA)核酸3.3μLを、各反応について調製した(15μL反応容積中で合計1ngのDNAを増幅)。調製した反応混合物14μLをマイクロアレイシステムに添加した。サンプル入口ポートを、接着性裏材料を有するホイルテーププルタブで被覆し、廃液チャンバーのベントは開いたままとした。全てのスライドを、スライドタワーを接続したMJリサーチPTC−200DNAエンジンサーモサイクラー上に載置し、増幅パラメータ:86.5℃で2分間、および86.5℃で45秒、50℃で1分30秒で35サイクル、および65℃で5分間、85℃で2分間および40℃で45分間の最終ステップにしたがって増幅した。増幅後、スライドをスライドタワーより取り出し、アレイチャンバー内に残留する液状物と共にジーンピックス4000Bにより撮像する。気泡はアレイの中央部ではなくスペーサーテープの疎水性壁に付着することに留意されたい。
【実施例10】
【0087】
(プラスチックスライドを有するPCRマイクロアレイシステム上での乾燥ステップを伴わないMRSA標的の検出)
この実験の目的は、アコーニおよびジーンピックス撮像装置上でのプラスチックスライドの評価である。プラスチックスライドは25.4mm×76.2mm×1mmの型で成形された。ゲルエレメントはプラスチック上に直接プリントされさらに実験前にUV架橋された。図23は、図10および14〜18のマイクロアレイシステム設計におけるMRSAチップ(v4.0)上で実施したメシチリン耐性S.aureus(MRSA)核酸の増幅を示す。mecAおよびtufA−3bプライマーを用いて、MRSA DNA 300pgを多重反応で増幅する。画像はアコーニが開発したプロトタイプリーダーにより撮像する。アレイは図21Aおよび21Bに示すチップマップを有した。マイクロアレイシステムは、廃液チャンバー内にレーザーカット濾紙吸収剤(ワットマン31ET CHRセルロースクロマトグラフィ紙、0.5mm)を収容した。組み立て後、親水カバーフィルムの上面(疎水性面)をIPAで洗浄した。マスターミックス標本は以下の通りである:ホルムアルデヒド10%を添加したキアゲンTaq(登録商標)DNAポリメラーゼキット(キアゲン、カタログ番号201205)を用いて、mecAおよびtufA−3bプライマーを含むマスターミックス14μLおよびメシチリン耐性S.aureus(MRSA)核酸10μLを、各反応について調製した(15μL反応容積中で合計300pgのDNAを増幅)。調製した反応混合物14μLをマイクロアレイシステムに添加する。サンプル入口ポートを、接着性裏材料を有するホイルテーププルタブで被覆し、廃液チャンバーのベントは開いたままとした。全てのスライドを、スライドタワーを接続したMJリサーチPTC−200DNAエンジンサーモサイクラー上に載置し、増幅パラメータ:86.5℃で2分間、および86.5℃で45秒、50℃で1分30秒で35サイクル、および65℃で5分間、85℃で2分間および40℃で45分間の最終ステップにしたがって増幅した。増幅後、スライドタワーよりスライドを取り出し、次にサンプル入口ポートを被覆するホイルテープに細孔を開け、1×SSPE 35μLによりアレイを単回洗浄で洗浄した。次にスライドをアコーニリーダー上で乾燥ステップなしで読み取った。
【実施例11】
【0088】
(異なるハイブリダイゼーション条件下での標的DNAの検出)
(バイオチップアセンブリ)
図7に示すバイオチップアセンブリはマイクロアレイ基板、スペーサーテープ、親水性上面フィルム、吸収剤を有する廃液チャンバー、入口ポートおよびベント孔からなる。マイクロアレイ基板はガラス(エリーサイエンティフィック、ニューハンプシャー州ポーツマス)またはプラスチックである。プラスチックスライドは25.4mm×76.2mm×1mmのサイズで成形される。一旦スペーサーテープが貼付されたならば、バイオチップの反応チャンバーにおいてアレイを位置決めする座標を用いてオリゴヌクレオチドプローブをブランクスライド上にプリントする。プリント方法は、Vasiliskovら(Biotechniques、1999)およびRubinaら(Biotechniques、2003)が報告した方法と同様に、共重合およびスライド上にプリントされUV架橋されたオリゴヌクレオチドプローブ混合物よりなる。ゲルエレメントの直径は150μmであり中心同士の距離は300μmである。バイオチップは入口導管用切り欠きを有するレーザーカット両面テープ、反応チャンバー、接続導管および廃液チャンバーより構築される。上面フィルムはアレイチャンバーおよび廃液チャンバーをそれぞれ被覆する。上面フィルムは、反応チャンバー全体を満たすための毛細管作用を可能とするため親水性である。吸収剤(ワットマンクロマトグラフィペーパー)は廃液チャンバー内に位置する。上面フィルムは、入口用の1mmの穴および廃液チャンバーの遠位側の縁に位置するベント用の1mmの穴を有する。フレームシール(バイオラッド、カリ孔ニア州ハーキュリーズ)は対照反応チャンバーの役割を果たす。バイオチップアセンブリおよびフレームシールは使用より少なくとも1時間前に準備する。
【0089】
(サンプル調製およびハイブリダイゼーション)
実施例8に記載するように、アコーニのトゥルーチップを用いてMRSA DNAを調製した。バイオチップ内ハイブリダイゼーション用:ハイブリダイゼーションマスターミックス10μL(1.5Mチオシアン酸グアニジン、75mM HEPES、pH7.5、7.5mM EDTA、5mg/mL BSAおよび3.7fmol/uLハイブリダイゼーション対照オリゴヌクレオチドを含有)、および増幅生成物5μLからなる反応容積15μLを調製してバイオチップに加える。サンプル入口ポートを、直径6.35mmの円形にレーザーカットしたシリコンテープで被覆し、廃液チャンバーベントは開いたままとした。フレームシール内ハイブリダイゼーション用:ハイブリダイゼーションマスターミックス20μLおよびMRSA増幅生成物10μLからなる反応物30μLをフレームシールに添加するために調製した。この30μLのうち28μLをフレームシールに加え、パラフィルムで被覆した。全てのスライドは、αユニットスライドタワーを接続したMJリサーチPTC−200 DNAエンジンサーモサイクラー上に載置し、55℃で3時間ハイブリダイゼーションした。バイオチップおよびフレームシールマスターミックス溶液は、いずれも以下に記載するハイブリダイゼーションプロトコルの前に試験管内において95℃で5分間変性した。標的はオンチップで変性できるので、このオフライン変性ステップはオンチップ増幅プロトコルの一部ではない。オンチップPCRは実施例8に記載する方法により実施した。
【0090】
(洗浄)
(バイオチップス)
ハイブリダイゼーションまたはオンチップ増幅後、アレイを容積範囲35〜200μLの1×SSPEで洗浄する。バイオチップをオーロラポートアレイ5000に適合するように完全に乾燥させる。材料は、熱乾燥ステップの時間を短縮するアセトンに適合することが確認されている。したがって、一部の例では洗浄ステップ後に水25μLおよびその後アセトン15μLまたは75μLのバイオチップへのピペッティングが続く。アセトンがアレイチャンバーから完全に取り除かれたことを確認するために、バイオチップを3分間倒立させて残留アセトンを廃液チャンバー内に排出した。次に、サーモフィッシャー2001FSQデジタルコントロールヒーター用に設計されたカスタムヒートブロックにおいて、スライドを50℃で15分間乾燥させる。洗浄前にフレームシールガスケットを取り外しかつ露出したアレイを通気して乾燥することを必要とするフレームシールプロトコルとは反対に、チップは取り外されないので、この乾燥手順は「オンチップ乾燥プロトコル」と呼ばれる。
【0091】
(フレームシール)
フレームシールを取り外し、1×SSEPおよび0.01%Triton X−100を含むテレケムアレイイット(商標)ブランドのハイスループットウォッシュステーション内でスライドを3分間洗浄し、水ですすぎ、濾過した圧縮空気で乾燥させる。
【0092】
(検出および分析)
アレイはオーロラポートアレイ5000リーダー、ジーンピックス4000B、または検出のために斜方角レーザー発光法およびCCDカメラを用いるアコーニのインハウスリーダーのいずれかで読み取る。いずれかのリーダーからの非ビニングアウトプット(12ビット、オフセット=0,ゲイン=1)は、TIFF、改訂6.0スタンダードに適応する16ビットグレイスケールタグ画像ファイルフォーマットで保存する。ゲノム化学研究所(Saeed他、Biotechniques,2003)のオープンソースアプリケーション「スポットファインダー」(ウィンドウズ版3.1.1.、「Sportfinder3.1.1.exe」)を用いて.tif画像を分析する。スポットファインダー内でOtsu閾値化アルゴリズム(Liao他、Journal of Information Science and Engineering,2001)による画像のセグメント化を実施し、全スポットについてのバックグラウンド補正積分強度(中央値)を、他の導出統計値、関連品質指標、およびアレイ位置インジケーターと共に、タブ区切りフラットファイル(.mev)フォーマットで保存した。続いて、Microsoft Office Excel 2003 Service Pack3を用いて、各プローブについての反復スポットの平均積分強度を、dN20ナンセンスオリゴヌクレオチド(非特異的ハイブリダイゼーション事象による生物学的ノイズのモデル)を含むスポットの平均強度と比較するデータ分析を実施する。
【0093】
(結果)
図24〜26は:バイオチップにおけるハイブリダイゼーション、溶液相増幅後にバイオチップ内でハイブリダイゼーション、およびフレームシールフォーマットにおけるハイブリダイゼーションに大別される3つの異なる条件にゲルエレメントオリゴアレイを曝露する実験の結果を比較する。プロトコルは増幅後にガスケットを取り外すよう求めているが、これは汚染のリスクを導入し、かつそのために説得力のある均一性を提供しないので、フレームシールフォーマットにおけるオンチップPCRは示さない。プロトコルは、オンチップ増幅およびバイオチップハイブリダイゼーションのいずれについても、1×SSPE 175μL、水25μL、およびアセトン15μLの洗浄バッファー体積で、実験の節に記載された方法により実施する。増幅マスターミックスはハイブリダイゼーションマーカーを含有しないので、図24、パネルBのハイブリダイゼーションスポットは蛍光を発しない。
【0094】
図25は、各条件について3回実施したS.pyogenesおよびS.genusの信号ナンセンス比を、最小および最大値を示す誤差棒と共に示す。各条件についての出発ゲノムコピー数は約104である。このデータより、バイオチップ用のオンチップ増幅が、試験管で増幅してフレームシールに移す場合と同様に、試験管の中で増幅した後バイオチップに移す場合に匹敵する成績を示すことが示唆される。洗浄手順の有効性によって低いシグナルを有するナンセンスプローブで割る手法のため、この試験では誤差棒が大きくなっている。洗浄は標識プライマーまたはナンセンスプローブ由来の生成物を効果的に除去しているので、洗浄手順はナンセンスプローブのシグナル強度を低下させるはずであることに留意されたい。したがって、ナンセンスシグナル(分母)の小さな変化により比率が大きく変化する。図26に示す3種類の異なる洗浄条件についてナンセンスシグナルを比較する追加的な試験は、この強度の変動性をさらに例示する。3つの条件全てについての変動性にもかかわらず、限られたデータセットより、バイオチップ上での小量ピペット洗浄プロトコルは、バス内での洗浄と同じであるかまたはこれよりすぐれていることが示唆される。このデータより、洗浄プロトコルは信号ナンセンス比を劣化させることなく100μLまで低下させることができる。実際に、追加的研究より35μLまでの体積低下が可能であることが示唆される。これらの低い体積により、チップ上で全ての試薬を含有しながら、洗浄ステップをラボオンチップフォーマットで実施し、さらにこれにより汚染リスクはなくならないまでも低下させることが可能となった。
【0095】
本明細書において用いられる用語および記載は例示的な方法によってのみ説明され、制限を意味してはいない。当業者は、以下の請求項に定義されるところの本発明の趣旨および範囲内において、特に指示がない限り全ての用語がその最も広い意味で理解される多くの変法、およびその同等物が可能であることを理解するであろう。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本明細書は、いずれもその全文が本明細書に参照文献として援用されている2008年5月9日に出願された米国特許出願第12/149,865の一部継続出願であり、かつ2009年7月24日出願の米国仮特許出願第61/213,887号の優先権を主張する。
【0002】
技術分野は、生体分子の検出、および、具体的には、標的捕捉面を含む反応チャンバー、廃液チャンバー、および反応チャンバーと廃液チャンバーを接続する可変幅導管を有するフローセルデバイスである。
【背景技術】
【0003】
マイクロアレイは、複数の検出反応を同時に遂行することによってサンプルの複雑な分析を実施する大きな可能性をもたらす。典型的には、反応物分子の複数スポットのマイクロアレイを、顕微鏡用スライドグラスなどの平面基板上に、通常は2次元グリッドパターンで形成する。次に、液状サンプルおよび試薬をスライドに塗布して複数のスポットと同時に接触させる。マイクロアレイ中の結合分子により、結合した反応物分子の液状サンプルおよび試薬への曝露および洗浄のステップを含めて、多様な反応段階を実施してもよい。スライド上に固定された材料または液状サンプル中の材料をキャラクタライゼーションするため、反応の進捗または結果をマイクロアレイの各スポットにおいてモニタリングしてもよい。
【0004】
マイクロアレイ分析は、通常数分から数時間のインキュベーション時間を要する。インキュベーション時間の長さは測定に依存し、かつ反応物の種類、混合度、サンプルの体積、標的コピー数、およびアレイの密度などの多様な因子によって決定される。インキュベーション時間中、液状サンプル中の標的分子はマイクロアレイプローブと密に接触しなければならない。通常、インキュベーションはインキュベーションチャンバーで実施される。インキュベーションチャンバーは、典型的にはマイクロアレイの周囲にガスケットを形成することによって形成される。ガスケットをカバースリップで被覆して密封チャンバーを形成する。カバースリップは、インキュベーション後のマイクロアレイの光学的照合を可能とするために、ガラスなどの透明な材料で製造することができる。
【0005】
カバースリップが入口ポートおよびベントを有していない場合、カバースリップをガスケットの上部に載置する前に、液状サンプルおよび他の試薬をインキュベーションチャンバーに加える必要がある。反応混合物をガスケットの縁まで満たす場合、反応混合物がガスケットの側面より漏れ出し、ガスケット/カバーの密封を崩壊させて環境を汚染するリスクを高めることもある。充填およびベント用の穴を有するカバースリップはこれら2つの問題を回避する。しかし、カバースリップの穴からのインキュベーションチャンバーの充填には、しばしばインキュベーションチャンバーへの気泡またはエアポケットの導入というリスクがある。さらに、液状サンプルまたは反応混合物の表面張力が、液状サンプルまたは反応混合物による反応チャンバーの完全な充填を妨害することもある。部分的に充填されたチャンバーは、エアポケットがアレイスポットを覆いかつアレイスポットと液状サンプルまたは反応混合物との接触を妨害した場合に偽陰性となることもある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
標的分子を検出することを目的としたフローセルデバイスが開示される。フローセルデバイスは反応チャンバー、廃液チャンバー、入口ポート、反応チャンバーを入口ポートと接続する第1の導管、および反応チャンバーを廃液チャンバーと接続する第2の導管を含む。反応チャンバーは入口、出口、マイクロアレイ、およびチャンバーの上面および下面のうちいずれか一方にある親水性領域を有する。廃液チャンバーは、液状物が毛細管作用によって反応チャンバー内を洗浄のために移動することを可能とする吸収剤を有する。
【0007】
標的分子を検出することを目的としたデバイスも開示される。デバイスは、入口、出口、標的分子と特異的に結合する標的捕捉面、および反応チャンバーの上面および底面のうち少なくとも一方にある親水性領域を有する反応チャンバー;液状物を毛細管作用によって反応チャンバー内を洗浄のために移動させることができる吸収剤を有する廃液チャンバー;および反応チャンバーを廃液チャンバーと接続する可変幅導管を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
発明を実施するための形態は、同様の番号が同様の要素を指す以下の図面を参照するであろう。
【0009】
【図1】マイクロアレイシステムのインキュベーションチャンバーの実施形態の模式図である。
【図2】貫通するピペットチップを有するサポートハウジング内のドームバルブの模式図である。
【図3】廃液チャンバーを有するマイクロアレイシステムの実施形態の模式図である。
【図4】廃液チャンバーを有するマイクロアレイシステムの他の実施形態の模式図である。
【図5】一体型マイクロアレイシステムの実施形態の模式図である。
【図6】一体型マイクロアレイシステムの他の実施形態の模式図である。
【図7】一体型マイクロアレイアセンブリの構成要素を示す模式図である。
【図8】図7のアセンブリ用のスペーサーテープを示す模式図である。
【図9】図8のスペーサーテープの接着剤と結合する図7のアセンブリの上面フィルムを示す模式図である。
【図10】厚みのある吸着材を考慮したスペーサーテープを示す模式図である。
【図11】図9および10におけるスペーサーのポケットに嵌合する吸収剤の模式図である。
【図12】ベント孔を有する廃液チャンバー用のカバーを示す模式図である。
【図13】PCRマイクロアレイシステムにおいてサンプル分析を実施するための方法を示すフローチャートである。
【図14】プロテインマイクロアレイシステムにおいてサンプル分析を実施するための方法を示すフローチャートである。
【図15】15Aおよび15B「ストリッププロテインアレイ」および「ストリッププロテインアレイ」を含むよう適合させたプロテインマイクロアレイシステムの実施形態を示す。
【図16A】廃液チャンバーへの液状物の吸い上げを評価するために用いられる4つのマイクロアレイインキュベーションチャンバーアセンブリを示すピクトゥである。
【図16B】図16Aのマイクロアレイインキュベーションチャンバーアセンブリを用いたハイブリダイゼーションの結果を示すピクトゥである。
【図17A】一体型マイクロアレイシステムの実施形態を示す図である。
【図17B】図17Aのマイクロアレイシステムによるハイブリダイゼーションの結果を示す図である。
【図18A】マイクロアレイシステムの実施形態の模式図である。
【図18B】図18Aのマイクロアレイシステムによるハイブリダイゼーションの結果を示す図である。
【図18C】図18Aのマイクロアレイシステムのアレイマップである。
【図19】チップマップ、プロテインアレイシステム、および実施例6の代表的なアレイの画像を示す図の組合せである。
【図20】ガラス基板を有するマイクロアレイシステム上で増幅、つづいて洗浄および乾燥ステップを行った精製MRSA標的300pgの結果を示す。
【図21A】マイクロアレイシステムの反応チャンバーに含まれ、かつ図20、22および23のためのデータを取得するために用いられたマイクロアレイのMRSAチップマップ。チップマップは、試験の信頼性を高めかつ4分区間の間での非均一性を評価するために4つの反復を有する。
【図21B】チップマップと関連付けたプローブのリスト。同一ターゲット用のプローブは長さおよび配列が異なる。プローブ配列9および29はメチシリン耐性を付与するmecA遺伝子に由来する。プローブ14および42は全てのStaph株に存在するtufA遺伝子に由来する。プローブ18、19、31および43はtufA遺伝子に由来するが、S.aureusにのみ特有である。プローブ35、36および37はS.aureusとmecAカセットの接合領域を標的とする。
【図22】ガラス基板を有するマイクロアレイシステム上で増幅し、その後液状物中で読み取った精製MRSA標的1ngの結果を示す。
【図23】乾燥ステップのないプラスチック基板上の精製300pgMRSA標的の結果を示す。
【図24】以下の条件下でS.pyogenes遺伝子104コピーによって攻撃されたアレイの原像の組合せである:パネル(a)試験管内で増幅、バイオチップ上でハイブリダイゼーション、ピペッターで洗浄、かつオンチップ乾燥の手順;パネル(b)バイオチップ上でPCR増幅、ピペッターで洗浄、かつオンチップ乾燥の手順;パネル(c)試験管内で増幅、フレームシール内のアレイ上でハイブリダイゼーション、フレームシールを除去、バス内で洗浄、かつ風乾の手順。パネル(d)は画像と対応するアレイマップである。パネル(b)のオンチップ増幅はマスターミックス中にハイブリダイゼーションマーカーがないので、ハイブリダイゼーションマーカーはパネル(a)および(c)の画像内でのみ視認できることに留意されたい。
【図25】以下の各条件における信号雑音比を比較する図である:1)バイオチップ上で増幅およびハイブリダイゼーションした後ピペッティング洗浄しさらにオンチップ乾燥するプロトコル、2)バイオチップ増幅した後ピペッティング洗浄するプロトコル、および3)試験管増幅した後フレームシールハイブリダイゼーションし、バス内で洗浄し、風乾。各例ともS.pyogenes遺伝子104コピーを増幅した。2つの標的の積分スポット強度よりローカルバックグラウンドを減算し、dN20ナンセンススポットを用いて表示の比率を算出する。画像は、オーロラポートアレイ5000を用いて、スポットが飽和値寸前となる長さまでの露出時間で画像を撮像した。
【図26】以下の各条件における平均雑音(dN20)信号を比較する図である:1)バイオチップ増幅の後1×SSPE 75μLおよび水25μLでピペッター洗浄;2)バイオチップ増幅の後1×SSPE 175μLおよび水25μLでピペッター洗浄;および3)試験管で増幅し、フレームシール内でハイブリダイゼーションし、マイクロアレイバス内でアレイを洗浄。インプットサンプルは、バイオチップおよびフレームシールのいずれについてもS.pyogenes遺伝子104コピーである。バイオチップはオーロラポートアレイ5000で0.2秒間撮像した。dN20(ナンセンスプローブ)スポットをスポットファインダーで同定し、さらに4つのdN20スポットの各積分蛍光強度よりローカルバックグラウンドを減算して平均し、最大値と最小値を表す誤差棒と共にプロットする。dN20ナンセンスプローブは増幅反応由来の生成物などの標識化標的との非特異的結合により蛍光を発するため、dN20信号は洗浄効果と反比例する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この記載は、本発明の書面による記載全体の一部と見なすべき、添付の図面と関連付けて読まれることを意図している。図面は必ずしも縮尺を定めるものではなく、かつ明確性および簡潔性を目的とし、縮尺においてまたは幾分模式的な形態で、本発明の一定の性質が誇張して示されてもよい。記載においては、「前方」「後方」「上方」「下方」、「上部」および「底部」などの相対的な用語およびそれらの派生語は、その後に記載されるかまたは考察対象の図面に示されるところの方向を指すと解釈すべきである。これらの相対的な用語は、記載の簡便性を目的とし、かつ通常は特定の方向を要求することを意図していない。「連結された」および「接続された」などの接続、連結などに関する用語は、特に説明的に記載されない場合、構造物が介在構造、さらには両者が可動または剛直接続または関係を介して互いに直接的または間接的に固定または接続されることを特徴とする関係を指す。
【0011】
本明細書に記載するところの用語「標的捕捉面」は、標的分子と特異的に結合する面を指す。標的捕捉面は、オリゴヌクレオチドプローブ、抗原、または抗体などの標的捕捉材料によってコーティングされる面であってもよい。標的捕捉面は、ヌクレオチドと特異的に結合する焼結ガラスフリット面などの、標的分子に対する特異的親和性を示す非コーティング面であってもよい。一部の実施形態においては、標的捕捉面はマイクロアレイを含む。
【0012】
本明細書で用いるところの用語「マイクロアレイ」は、目的のリガンドとの結合のために提供された整列したスポットのアレイを指す。マイクロアレイは少なくとも2つのスポットからなる。目的のリガンドは核酸(例:分子ビーコン、アプタマー、ロックされた核酸、ペプチド核酸)、タンパク質、ペプチド、多糖類、抗体、抗原、ウイルスおよび細菌を含むが、これに限定されない。
【0013】
本明細書で用いるところの用語「親水性面」は、そのような面上に静置した純水の水滴と60°またはそれ以下の接触角を形成するような面を指す。本明細書で用いるところの用語「疎水性面」は、そのような面上に静置した純水の水滴と60°よりも大きな接触角を形成するような面を指す。接触角は接触角角度計を用いて測定することができる。
【0014】
本明細書に記載するところの用語「インキュベーションチャンバー」は、標的捕捉面またはマイクロアレイの周囲の密封された空間を指す。インキュベーションチャンバーは、液状サンプルで満たされるとき、液状サンプル中の標的分子が標的捕捉面またはマイクロアレイプローブと密接な接触を維持できるよう、標的捕捉面またはマイクロアレイが液状サンプルによって浸されることを可能とする。
【0015】
本明細書においては、オンチップ増幅は、マイクロアレイを含むインキュベーションチャンバー内の溶液中で標的分子の対称または非対称増幅が発生するプロセスと定義される。
【0016】
マイクロアレイシステムフォーマットにおいては他の増幅スキーム、たとえば同一または異なる濃度比の1つまたはそれ以上のプライマーがマイクロアレイ上に固定され、かつアレイ上で全体的または部分的に増幅が起こるものなどが可能である。追加的なプライマーを、アレイ上に固定されたプライマーと同一または異なる順番でチャンバー内に溶液として加えてもよい。これらの増幅スキームは、DNAまたはRNA酵素を用い、等温でまたは温度サイクルを用いて行うことができる。実施例は:アレイ化プライマー拡張(APEX)、マルチプレックスマイクロアレイ促進PCR(MME−PCR)、ブリッジ増幅、単一ヌクレオチド取り込み、ローリングサイクル増幅(RCA)、ストランド置換増幅(SDA)、ループ媒介増幅(LAMP)、転写媒介増幅(TMA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、ニッキング酵素増幅反応(NEAR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、増幅抵抗性変異系(ARMS)およびインベーダーテクノロジーを含む。
【0017】
マイクロアレイシステムに使用できる他の核酸反応は連結、エキソまたはエンドヌクレアーゼによる制限酵素消化、ニッキング酵素開裂、ハイブリダイゼーション保護測定(HPA)または翻訳を含む。
【0018】
上に指摘したように、液状サンプルまたは反応混合物の表面張力は、液状サンプルまたは反応混合物が、マイクロアレイシステムのインキュベーションチャンバーといった小さな空間を完全に充填することを妨害することが多い。表面張力は、多様な分子間力による液状物の分子間引力の結果である。液状物の本体においては、各分子は隣接する液状物分子によって全方向に同等に引かれ、その結果正味の力はゼロとなる。液状物の表面においては、分子は液状物内部のより深いところにある他の分子によって内向きに引かれ、かつ隣接する媒体内(真空、空気または他の液状物の場合)の分子によっては強く引かれない。したがって、表面にある全ての分子は内向きの分子引力を受け、これは圧縮に対する液状物の抵抗によってのみ均衡することができる。この内向きの引力は表面積を減少させる傾向があり、この点で液状物の表面は伸長した弾性膜と類似している。したがって、液状物は局部的に可能な最も小さな表面積となるまで密に収縮する。最終的な結果は、液状物が小空間内でほぼ球状の形態を維持し、かつ角、特に小空間内の立方体の角を満たさないというものである。マイクロアレイの面より被覆を離隔する典型的な小さな空隙は、しばしば液状物を円柱状の形態に圧縮する。
【0019】
フローセルデバイスの場合、インキュベーションチャンバーを満たす液状物は、ハイブリダイゼーションバッファーまたは洗浄バッファーなどの水ベースの液状物である可能性が最も高い。水ベースの液状物の表面張力は、インキュベーションチャンバーの内面の少なくとも一部を親水性材料によってコーティングすることにより克服しうる。
【0020】
本明細書に記載されるのは、標的捕捉面、および液状物がチャンバー内に入る際にこれと接触する親水性面を含むインキュベーションチャンバーを有するフローセルシステムである。液状物がチャンバーに流入する際にこれと接触する親水性面の使用によって、インキュベーションチャンバーの完全な充填が可能となる。一部の実施形態においては、親水性面はインキュベーションチャンバーの完全な上面を形成する。他の実施形態においては、標的捕捉面はマイクロアレイを含む。
【0021】
図1はインキュベーションチャンバーの1つの実施形態を示す。この実施形態においては、平面基板30の上面32上にプリントまたは形成された複数のアレイスポット22よりなるマイクロアレイ20の周囲にインキュベーションチャンバー10が形成される。面32はインキュベーションチャンバー10の底面も形成する。チャンバー10の上面はカバースリップ40によって被覆される。インキュベーションチャンバー10は、典型的にはガラスまたはプラスチックスライドである平面基板30のサイズと適合するあらゆるサイズまたは形状とすることができる。一部の実施形態においては、平面基板30はリールトゥリール製法用に巻き取ることのできるプラスチックフィルムである。1つの実施形態においては、プラスチックフィルムはポリエステルである。
【0022】
この実施形態においては、インキュベーションチャンバー10は平面基板30の上部にガスケット34を載置し、かつガスケット34をカバースリップ40で被覆することによって形成される。他の実施形態においては、インキュベーションチャンバー10は平面基板30にポケットまたは陥凹領域を作成し(たとえば成形またはエッチングなどによって)、マイクロアレイ20をポケットまたは陥凹領域の底部にプリントし、かつポケットまたは陥凹領域をカバースリップ40によって被覆することによって形成される。さらに他の実施形態においては、ポケットまたは陥凹領域はカバースリップ40上に形成され、その後これを平面基板30の上部に直接載置することによって形成される。
【0023】
インキュベーションチャンバー10は、インキュベーションチャンバー10内でのハイブリダイゼーションまたは他のあらゆる反応に必要な液状物の体積を減少するよう、マイクロアレイ20の周囲に形成される。1つの実施形態においては、インキュベーションチャンバーは約0.1〜10cm2,好ましくは約0.25〜2.5cm2の底面積、および約0.05〜5mm、好ましくは約0.1〜1mmの高さを有する。1つの実施形態においては、インキュベーションチャンバーの総容積は約1〜250μLの範囲内である。
【0024】
インキュベーションチャンバー10は、その形態に応じ、その上にマイクロアレイ20が形成される底面、底面と下方に向き合いかつ通常は底面と平行である上面、および1つまたはそれ以上の側面を含むいくつかの内面を有する。インキュベーションチャンバー10の均一な充填を担保するために、全ての内面を親水性とする必要はない。1つの実施形態においては、インキュベーションチャンバー10の上面のみが親水性である。他の実施形態においては、インキュベーションチャンバー10の底面のみが親水性である。他の実施形態においては、上面および底面が共に親水性である。さらに他の実施形態においては、インキュベーションチャンバー10の全ての内面が親水性である。
【0025】
親水性面は水を誘引する面である。親水性面は、典型的には電荷分極しかつ水素結合することのできる分子を含む。1つの実施形態においては、平面基板30またはカバースリップ40は親水性材料より製造され、かつこれによりそれぞれ親水性底面または親水性上面を提供する。他の実施形態においては、インキュベーションチャンバー10の上面または底面が不溶性親水性材料によってコーティングされる。親水性材料の例はポリエチレングリコール、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、ビオナイト、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリアクリルアミド、セルロース系材料、メチルセルロース、ポリ酸無水物、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、アルキルフェノールエトキシラート、複合ポリオールモノエステル、オレイン酸ポリオキシエチレンエステル、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、および脂肪酸ソルビタンエステルなどの親水性ポリマー;無機酸化物、金、ゼオライトおよびダイヤモンド様炭素などの無機親水性材料;およびTriton X−100、Tween、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム、アルキル硫酸塩、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、アルキルベンゼンスルホン酸、石けん、脂肪酸塩、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)別名臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、アルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム(CPC)、ポリエトキシル化牛脂アミン(POEA)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルベタイン、ココヤシ両性グリシナートアルキルポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)およびポリ(プロピレンオキシド)のコポリマー(市販名はポロキサマーまたはポロキサミン)、アルキルポリグルコシド、脂肪アルコール、コカミドMEA、コカミドDEA、コカミドTEAなどの界面活性剤を含むが、これに限定されない。界面活性剤はポリウレタン類およびエポキシ類などの反応性ポリマーと混合して親水性コーティングの役割を果たすことができる。他の実施形態においては、インキュベーションチャンバー10の上面または底面が雰囲気プラズマ処理によって親水性とされる。
【0026】
代替的に、インキュベーションチャンバーの底面または上面が市販の親水性テープまたはフィルムによって被覆されてもよい。親水性テープの例はアドヒーシブズ・リサーチ(AR)テープ90128、ARテープ90469、ARテープ90368、ARテープ90119、ARテープ92276およびARテープ90741(アドヒーシブズ・リサーチ社、ペンシルバニア州グレンロック)を含むが、これに限定されない。親水性フィルムの例は(フィルムスペシャリティーズ社、ニュージャージー州ヒルズバラ)製のビステックス(登録商標)およびビスガードフィルムおよびレクサンHPFAF(GEプラスチックス、マサチューセッツ州ピッツフィールド)を含むが、これに限定されない。他の親水性面はサーモディクス社(ミネソタ州イーデンプラリー)、バイオコート社(ペンシルバニア州ホーシャム)、アドバンスドサーフェステクノロジー(マサチューセッツ州ビルリカ)、およびハイドロマー社(ニュージャージー州ブランチバーグ)より入手できる。
【0027】
1つの実施形態においては、親水性テープまたはフィルムはインキュベーションチャンバーの上面からのマイクロアレイの光学的照合を可能とするのに十分な透明性を有する。他の実施形態においては、親水性面はインキュベーションチャンバーの上面を親水性コーティングによって被覆することにより作成される。他の実施形態においては、親水性面は単純にカバースリップ40を親水性テープまたは親水性フィルムと置換することによって作成される。
【0028】
さらに他の実施形態においては、親水性面は細胞膜を溶解し、タンパク質を変性させ、かつ核酸を捕捉する化学物質を含浸させた親水性マトリクスである。親水性マトリクスはサンプルの精製およびサンプルのインキュベーションチャンバー内への均一な吸い上げという2つの機能を果たすであろう。1つの実施形態においては、親水性マトリクスはFTA紙(登録商標)(ワットマン社、ニュージャージー州フローハムパーク)である。生体サンプルをFTA紙に塗布すると、サンプルに含まれる細胞が紙の上で溶解する。紙を洗浄して全ての非DNA材料を除去する(DNAは紙に絡め取られて残る)。次に、続いてマイクロアレイ分析を実施するためにDNAを溶離する。代替的に、結合したDNAを原位置で増幅し、溶離ステップを実施せずにマイクロアレイ検出を実施してもよい。
【0029】
FTA紙(登録商標)はアレイの対向面(すなわちインキュベーションチャンバーの上面)として用いることができる。代替的に、マイクロアレイをFTA紙にプリントしてもよく、さらにインキュベーションチャンバーの上面の透明なカバースライドによってマイクロアレイの可視化が可能となるであろう。他の実施形態においては、FTA紙(登録商標)上の核酸サンプルの増幅を目的として、PCR試薬をインキュベーションチャンバー内に導入してもよい。この実施形態においては、増幅はインキュベーションチャンバー10の内部で実施されるであろう。
【0030】
マイクロアレイ20は、オリゴヌクレオチドマイクロアレイおよびプロテインマイクロアレイを含むがこれに限定されないあらゆる種類のマクロアレイとすることができる。1つの実施形態においては、マイクロアレイ20は、たとえばいずれもその全文が本明細書に参照文献として援用される米国特許第5,741,700号、第5,770,721号、第5,981,734号、第6,656,725号および米国特許出願第10/068,474号、第11/425,667号および第60/793,176号に記載されるプリントゲルスポット法を用いて形成される。
【0031】
他の実施形態においては、マイクロアレイシステムは液状物(例:サンプル、標的を含有するPCRバッファー、ハイブリダイゼーションバッファー、または洗浄バッファー)をインキュベーションチャンバー10に導入するための一方向バルブをさらに含む。生物兵器の検出など一定の用途においては、重要な懸念となる環境汚染を予防するために、サンプルは一方向バルブよりインキュベーションチャンバー10に導入される。1方向バルブはチェックバルブであっても、またはインキュベーションチャンバー10の入口ポートに載置するドームバルブであってもよい。多様なサイズのドームバルブが市販されている(例:マルチバルブ・インターナショナル製、オハイオ州イエロースプリングス)。図2に示す実施形態においては、ドームバルブ50は2つのコンポーネント:ドーム型のバルブ本体52およびバックシール54を含む。バックシールは、イントロデューサー56がバックシール54を貫通することを可能とする穴(示さず)を有する。イントロデューサー56は、バックシール54を貫通するためのとがった先端を有するあらゆる液状物送達デバイスであってよい。この実施形態においては、イントロデューサー56はピペットチップである。他の実施形態においては、イントロデューサー56は注射針である。
【0032】
ドームバルブ50はイントロデューサー56による容易なアクセスを可能とし、かつイントロデューサー56の先端がバックシール54よりドームバルブ50内に入る際に先端に適合する。イントロデューサー56の抜去後、バックシール54の開口部は自然に閉鎖してサンプルがドームバルブ50よりインキュベーションチャンバー10外に漏出することを防止する。したがって、ドームバルブ50は刺入可能な隔壁およびチェックバルブの両方の役割を果たす。ドームバルブは、支持構造58を介してマイクロアレイアセンブリに設置してもよい。1つの実施形態においては、ドームバルブは入口ポート11および入口導管14を経てインキュベーションチャンバー10と接続される(図3)。
【0033】
さらに他の実施形態においては、マイクロアレイシステムはさらに廃液チャンバーを含む。オーロラフォトニクスポートアレイ5000(商標)マイクロアレイリーダーなどの多くの光学リーダーは、乾燥した画像を読み取るとき信号雑音比が改善する。したがって、マイクロアレイをマイクロアレイリーダーに載置する前に液状物をインキュベーションチャンバーより除去するために、廃液チャンバーをマイクロアレイシステムに組み込むことが有利である。今度は図3を参照すると、インキュベーションチャンバー10は同一のマイクロアレイスライド上に形成された廃液チャンバー60に接続される。
【0034】
廃液チャンバー60はあらゆる形状とすることが可能であり、かつ典型的にはインキュベーションチャンバー10の容積よりも大きな容積を有している。1つの実施形態においては、廃液チャンバーはガスケットテープに形成された後、その上にマイクロアレイ20がプリントされた基板30(図1参照)と接着される。さらに他の実施形態においては、基板30はその上面に切り欠きを有する。廃液チャンバー60が一旦基板30とガスケット34の間に形成された後にインキュベーションチャンバー10の深さよりも大きな深さを有するよう、切り欠きはガスケット34の廃液チャンバー60のサイズおよび位置と適合するサイズおよび位置を有する。他の実施形態においては、基板30に切り欠きを容易に作成できるよう、基板30はプラスチック材料で製造される。さらに他の実施形態においては、インキュベーションチャンバー10および廃液チャンバー60はいずれもガスケット34を用いることなく基板30上に形成される。しかし、廃液チャンバー60はインキュベーションチャンバー10の深さよりも大きな深さを有してもよい。
【0035】
1つの実施形態においては、廃液チャンバー60は、一旦インキュベーションチャンバー10が液状物と接触すると、インキュベーションチャンバー10より液状物を吸い上げ、それによりマイクロアレイ20が乾いた状態で読み取られること可能とする吸収剤62を含む。
【0036】
吸収剤62は比較的大量の液状物を保持することのできるあらゆる材料とすることができる。1つの実施形態においては、吸収剤62は繊維の凝集物より製造される。他の実施形態においては、吸収剤62はスルーエアーボンディング工程で生成された不織布である。不織布の構成繊維は親水性合成繊維、パルプなどの天然セルロース繊維、または再生セルロース繊維とすることができる。繊維は、液状物吸収を向上させるために界面活性剤または親水性油をコーティングしたり、または浸透させてもよい。本明細書における使用のための不織布は、スルーエアーボンディング工程に限定されず、スパンボンディング工程、エアーレイング工程、スパンレーシング工程などの他のあらゆる工程によって製造してもよい。1つの実施形態においては、吸収剤62はミリポア社(マサチューセッツ州ビルリカ)製のセルロース紙(C048)である。
【0037】
再度、図3を参照すると、廃液チャンバー60は導管12を介してインキュベーションチャンバー10に接続される。導管12は二重の目的を果たす。導管12は、液状物で満たされるときにインキュベーションチャンバー10と廃液チャンバー60の間の液状物経路を提供する。空気で満たされるとき、導管12はインキュベーションチャンバー10を廃液チャンバー60から離隔し、廃液チャンバー60内の吸収剤62による早すぎる吸い上げを防止する。
【0038】
インキュベーションチャンバー10内の液状物は、インキュベーションチャンバー10内部の液状物を導管12に押出し、かつ導管12内の液状物と廃液チャンバー60内の吸収剤62との接触を確率させることによって除去される。接触は、インキュベーションチャンバー10内の液状物に圧力を加えて液状物を導管12から押し出すことによって、あるいは廃液チャンバー60のベント64に吸引を行って導管12内の液状物を引き出すことによって確立してもよい。インキュベーションチャンバー10内の液状物に対する圧力は、ドームバルブ50から(例:ピペットまたはシリンジを用いて)圧力をかけることにより生成してもよい。インキュベーションチャンバー10が親水性テープまたは親水性フィルムによってのみ被覆される場合、インキュベーションチャンバー10内部の液状物に対する圧力はインキュベーションチャンバー10の上面を形成する親水性テープまたはフィルムを単純に押すことによって生成してもよい。代替的に、導管12中の液状物と吸収剤62との接触は、吸収剤62が導管12内の液状物に触れるまで吸収剤62を導管12に向かって移動させることにより確立される。
【0039】
一旦接触が確立されたならば、インキュベーションチャンバー10内の液状物を、導管12を経て廃液チャンバー60内の吸収剤62中に吸い上げる。液状物の流量は導管12のサイズ、液状物の表面張力および粘度、および吸収剤62の吸い上げ速度によって決定される。さらに、吸収剤がより飽和するにつれて流量は減少する。流量は、廃液チャンバー60内への吸収剤62の留置によって制御することもできる。導管12の出口近傍に留置した吸収剤は、より離れて留置した吸収剤よりも高い流量をもたらす。したがって、吸収剤62の隅を切り落とすことによって、導管12の出口と吸収剤62の距離の増加によるより遅い流量がもたらされる。
【0040】
気泡がインキュベーションチャンバー10内に導入される場合、気泡が導管12内に滞留しかつ導管12内の液状物の流動を部分的または完全に遮断することがある。気泡が液状物と吸収剤62のまさに接触面に位置する場合、気泡が吸収剤62の吸い上げ作用も停止させることがある。この問題は図4に示す導管の設計によって克服することができる。この実施形態においては、導管12は3つのセクション:入口セクション15、漏斗型接続セクション16および出口セクション17を含む。出口セクション17は入口部分15の直径よりも小さな直径を有する。より小さな直径は、出口セクション17において、入口部分15への圧よりも高い毛細管圧をもたらす。圧の差は出口セクション17への液状物の移動に至る。操作中、すでに出口セクション17にある液状物は出口セクション17の外に押し出されかつ液状物と吸収剤62の接触部分のエアーポケットの周囲を通過する。漏斗型接続部分16は、導管の毛管現象による早すぎる吸い上げを防止するオーバーフロー領域を提供する。他の実施形態においては、出口セクション17はより直径の大きな第1の部分(図4のセクション17の水平部分に相当)およびより直径の小さな部分(廃液チャンバー60に流入するセクション17の垂直部分に相当)の2つのサブセクションにさらに分割される。
【0041】
インキュベーションチャンバー10におけるハイブリダイゼーションまたは増幅プロセスが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)における熱サイクリングの変性ステップのような加熱ステップを包含する場合、インキュベーションチャンバー10の内部の液状物が導管12より押し出され、かつインキュベーションチャンバー10内の圧力上昇により吸収剤62との早すぎる接触を行うこともある。これらの状況下では、吸収剤62による早すぎる吸い上げを防止するために、(インキュベーションチャンバー10が充填される際に)導管12内に意図的に空気を残してもよい。代替的に、吸収剤62による早すぎる吸い上げを防止するために導管12の内部に疎水性停止装置を配置してもよい。1つの実施形態においては、疎水性停止装置は疎水性内面を有する導管セクションを含む。1つの実施形態においては、疎水性面は未処理の導管面をテフロン(登録商標)、シリコンまたはシランなどの疎水性材料でコーティングまたは処理することにより形成される。他の実施形態においては、導管12の内面は親水性材料によってコーティングされ、かつ疎水性停止装置は未処理の疎水性プラスチック材料を露出する非コーティング面を有する導管12のセクションを含む。
【0042】
他の実施形態においては、吸い上げが適切な間隔で起こることを担保するために、インキュベーションチャンバー10を複数の廃液チャンバー62と接続する。
【0043】
均一に充填するための親水性インキュベーションチャンバー、サンプルの汚染を防止するための1方向バルブ、およびインキュベーションチャンバーから液状物を除去するための廃液チャンバーを有する一体型マイクロアレイシステムも、本明細書に記載される。今度は図5を参照すると、一体型マイクロアレイシステム100の1つの実施形態は、基板30上にプリントまたは形成されたマイクロアレイ20、マイクロアレイ20の周囲に形成された親水性インキュベーションチャンバー10、導管(示さず)を介したインキュベーションチャンバー10との流体連絡路内のドームバルブ50、および導管12を介してインキュベーションチャンバー10と接続される廃液チャンバー60を含む。吸収剤62は、ベント64を介して大気にベントされた廃液チャンバー60に組み入れられる。透明親水性カバー70はインキュベーションチャンバー10および廃液チャンバー60の上面を形成する。1つの実施形態においては、ベント64は単純に廃液チャンバー60のカバーに穴を打ち抜くことによって作成される。
【0044】
親水性テープまたはフィルムによってインキュベーションチャンバー10および廃液チャンバー60を被覆することの長所のひとつは、薄いフィルムまたはテープが圧力下で変形することができることである。したがって、廃液チャンバーにわずかな圧を加えることによりインキュベーションチャンバー10内で液状物を混合することが可能であり、これによりインキュベーションチャンバー10にわずかな変形が、さらにこれによりインキュベーションチャンバー10内における液状物の移動が引き起こされるであろう。
【0045】
図6は、反応チャンバー10、廃液チャンバー60および洗浄バッファーチャンバー80を含むマイクロアレイシステム100の他の実施形態を示す。チャンバーは、チャンバー間の液状物の流動を制御する毛細管停止装置90によって互いに接続される。毛細管停止装置は、流体流動を制御するために1つまたはそれ以上の「階段」セクションおよび/または1つまたはそれ以上の「スイッチバック」セクションを含んでもよい。この実施形態においては、ユーザーは始め入口91より洗浄バッファーチャンバー80を満たし、これを密封する。次に、ユーザーは入口92より反応チャンバー10をサンプルで満たし、これを密封する。最後にユーザーはベント93を密封する。次に、マイクロアレイシステム100を通常のスライドブロックサーモサイクラー(例:クワンタ・バイオテック、サーモフィッシャーなど)内に留置する。熱サイクリング後、マイクロアレイシステム100を取り出し、ベント93に細孔を開ける。ベント93の細孔を開くと、その後洗浄バッファーが反応チャンバーを経て廃液チャンバーに移動するため、反応チャンバーは最終的に撮像のための乾燥状態となる。廃液チャンバー内の吸収剤62は生成物を含み、かつベント93に細孔を開くときのエアロゾル化を防止するであろう。1つの実施形態においては、多孔質膜を用いてエアロゾル化が起こらないことを担保してもよい。
【0046】
他の実施形態においては、標的分子を検出することを目的としたマイクロアレイシステム200が開示される。マイクロアレイシステム200は反応チャンバー、廃液チャンバー、入口ポート、反応チャンバーを入口ポートと接続する第1の導管、および反応チャンバーを廃液チャンバーと接続する第2の導管を含む。反応チャンバーは入口、出口、マイクロアレイおよび液状サンプルがチャンバー内に気泡を伴わずに導入されることを可能とするチャンバーの上面および下面のうちいずれか一方上の親水性領域を有する。廃液チャンバーは、液状物が毛細管作用によって反応チャンバー内を洗浄のために移動することを可能とする吸収剤を有する。
【0047】
図7はマイクロアレイシステム200の1つの実施形態を示す。この実施形態においては、マイクロアレイシステム200はマイクロアレイ211を有するアレイ基板210、反応チャンバースペーサー220、親水性カバー230、および廃液チャンバースペーサー240、吸収剤250およびベント孔261を有する廃液チャンバーカバー260を含む層構造を含む。反応チャンバースペーサー220は、組み立てられたマイクロアレイシステム内にアレイ211を取り囲む反応チャンバー221を形成する開口部、接続導管222および223、入口孔224および廃液チャンバー225を有する。導管222は反応チャンバー221を入口孔224と接続し、かつ導管223は反応チャンバー221を廃液チャンバー225と接続する。
【0048】
親水性カバー230は反応チャンバー221および接続導管222および223の上部を被覆する。親水性カバー230は入口孔224および廃液チャンバー225に適合する入口孔開口部234および廃液チャンバー開口部235も含む。廃液チャンバースペーサー240は、親水性カバー230の廃液チャンバー開口部235およびスペーサー220の廃液チャンバーと適合する廃液チャンバー開口部245を有する。吸収剤250は廃液チャンバー220に嵌合するよう寸法取りされ、かつ廃液チャンバーカバー260によって被覆される。入口孔開口部224および234は、入口ポート270からの反応チャンバー221へのアクセスを提供する。
【0049】
1つの実施形態においては、反応チャンバー221の側壁は反応中の気泡を捕捉するために親水性となっている。
【0050】
他の実施形態においては、親水性カバー230は親水性領域が反応性チャンバー221の出口227の近傍に作成されるよう配置される。関連する実施形態においては、親水性領域は親水性ゲルエレメントによって作成される。
【0051】
他の実施形態においては、反応チャンバー221内の内容物がマイクロアレイシステム200から放出されることなく洗浄することを可能とするために、入口ポート270は刺入可能な膜/テープまたはドームバルブを含む。
【0052】
他の実施形態においては、アレイ基板はガラスまたプラスチックである。さらに他の実施形態においては、反応チャンバースペーサー220は両面テープである。1つの実施形態においては、接続導管223は「階段およびスイッチバック」セクションを有する。図8に示すように、導管223の「階段」セクションは、アレイチャンバー側がより幅広く廃液チャンバー側で段階的に狭くなる複数のサブセクションを有する。この「階段」設計は早すぎる吸い上げを防止する。導管223の「スイッチバック」セクションは、一連の急激な導管の幅の変化および/または鋭い角を有する。これらの導管幅の変化および鋭い角は、ここでも液状物が反応チャンバー221から廃液チャンバー225に移動するためには好ましくない条件を再度作り出す。一部の実施形態においては、「鋭い角」は135°未満の角度で交差する2つの導管によって形成される角を指す。他の実施形態においては、導管223の「階段」セクションの1つまたはそれ以上のサブセクションの壁は、隣接する2つのサブセクションの壁の間で親水性の変化を引き起こすために、親水性または疎水性コーティングによってコーティングされる。1つの実施形態においては、反応チャンバー221の近傍にある導管223の「階段」セクションのサブセクションが親水性コーティングまたはポリマーによってコーティングされる一方で、隣接するサブセクションはコーティングされないか、または疎水性コーティングによってコーティングされる。そのような親水性の変化は、早すぎる吸い上げを防止するためのサブセクション間の流動停止装置として作用するであろう。
【0053】
当業者は、マイクロアレイシステム200が多くの変法を有することを理解するであろう。たとえば、反応チャンバー221、または廃液チャンバー225、またはそのいずれもがプラスチック基板210上に成形されてもよい。
【0054】
マイクロアレイシステム200にサンプル精製機能を組み入れてもよい。1つの実施形態においては、マイクロアレイシステム200の入口ポート270は、サンプルから標的分子を精製または分離するためのサンプル精製マトリクスをさらに含む。代替的に、マイクロアレイシステム200の反応チャンバー221はサンプルから標的分子を精製または分離するためのサンプル精製マトリクスをさらに含んでもよい。1つの実施形態においては、サンプル精製マトリクスはシリカである。
【0055】
マイクロアレイ211は、標的分子に応じてオリゴヌクレオチドアレイまたはプロテインアレイとすることができる。1つの実施形態においては、マイクロアレイ211はオリゴヌクレオチドアレイであり、かつマイクロアレイシステム200は標的ポリヌクレオチドを増幅および検出するために用いられる。
【0056】
図8〜12はマイクロアレイシステム200の様々なコンポーネントの寸法を示す。
【0057】
図13はPCRアレイ試験300の実施形態を示すフローチャートである。簡単に言うと、全核酸(DNAおよびRNA)をサンプルより分離し(ブロック310)、精製した核酸をDNAポリメラーゼ、dNTPおよび少なくとも1対のPCRプライマーを含む増幅混合物と共にマイクロアレイシステム200のアレイチャンバーに装填する(ブロック320)。PCR反応はマイクロアレイシステム内で実施する(ブロック330)。増幅生成物をマイクロアレイシステム200上でハイブリダイゼーションさせ(ブロック340)、さらにハイブリダイゼーションの結果をアレイリーダーで読み取る(350)。
【0058】
サンプルはスワブ、鼻咽頭吸引液または全血サンプルなどのあらゆる生体サンプルとすることができる。全核酸は当業者に周知の方法によって分離してよい。1つの実施形態においては、全核酸はキアゲン試薬などの市販の核酸分離試薬またはキットによって分離される。他の実施形態においては、アコーニバイオシステムズが開発したサンプル調製デバイスによって全核酸を分離する。アコーニのサンプル調整法についての一般化された作業の順番は、溶解バッファーにおけるサンプルの変性;サンプル調製デバイス上への溶解サンプルの持続的な灌流;洗浄およびサンプル調製デバイスからの核酸の溶離を含む。
【0059】
分離した核酸をマイクロアレイシステム200に装填しさらに当業者に周知の方法でオンチップ増幅する。オンチップ増幅後、マイクロアレイシステム200を所望の温度で一定時間インキュベートし(例:50〜65°で10〜60分)、アンプリコンをマイクロアレイとハイブリダイゼーションさせる。インキュベーション後、マイクロアレイシステム200を洗浄し(例:水などで)さらにマイクロアレイリーダー(例:アコーニのポータブルマイクロアレイリーダーなど)で撮像する。1つの実施形態においては、マイクロアレイシステムは撮像前に乾燥させる。他の実施形態においては、乾燥手順はインキュベーションチャンバーへのアセトンの導入および/またはインキュベーションチャンバーの加熱により遂行される。他の実施形態においては、非標識「順」プライマーに対して非常に過剰な量の蛍光標識された「逆」プライマー(例:5〜20倍過剰)を含む非対称PCRマスターミックス中で、分離した核酸の増幅および増幅生成物の標識化を行う。この戦略により、その5’末端に単一の標識を有する一重らせん標的が主として生成される。
【0060】
アレイ試験300は多くの変法によって実施することができる。1つの実施形態においては、増幅された生成物はハイブリダイゼーション後反応チャンバー内に残留し、かつマイクロアレイの撮像前の洗浄もない。他の実施形態においては、増幅生成物は反応チャンバー内に留まり、かつKhodakovら(Khodakov他、2008, BioTechniques, 44:241−248)が報告するところの成長曲線を示すために、ハイブリダイゼーション時にアレイスポットをリアルタイムで撮像する。さらに他の実施形態においては、反応チャンバーはELISAなどのマルチステップ分析のための一連のインキュベーションおよび洗浄ステップを支援する。
【0061】
他の実施形態においては、マイクロアレイ211はプロテインアレイであり、かつマイクロアレイシステム200はタンパク質標的を検出するために用いることができる。図14はプロテインアレイ試験400の実施形態を示すフローチャートである。簡潔に言うと、サンプルよりタンパク質を抽出し(ブロック410)、抽出したタンパク質をアレイチャンバーに装填しかつマイクロアレイシステム200のマイクロアレイと共にインキュベートし(ブロック420)、マイクロアレイを洗浄し(ブロック430)、さらに当業者に周知の方法を用いてマイクロアレイと結合したタンパク質標的を検出する(ブロック440)。
【0062】
1つの実施形態においては、アレイエレメントと標的タンパク質の間の相互作用を改善するために、インキュベーションステップ420は周期的なまたは連続的振動の元で実施する。
【0063】
他の実施形態においては、抽出されたタンパク質をプロテインアレイ上に連続的に灌流する。さらに他の実施形態においては、アレイエレメントと標的タンパク質との相互作用を向上させるために、抽出されたタンパク質がインキュベーションステップにおいて導管内を循環できるよう、プロテインアレイエレメントは細長い導管内で複数の試験紙の形態(プロテインストリップアレイ)に配列される(図15A)。図15Bは、導管を経て廃液チャンバーと接続されるサンプルレザバーを含むマイクロアレイシステムの実施形態を示す。プロテインアレイまたはプロテインストリップアレイは導管の内側にプリントされる。サンプルより抽出されたタンパク質はレザーバー内に装填され、さらにプロテインアレイ中を連続的に流動し、廃液チャンバーに流入する。
【0064】
好ましくは、導管は導管の高さが100〜2000μm、より好ましくは200〜500μmの範囲にある薄型導管である。多孔質ゲルラインを通過して、あるいは横切ってサンプルが連続的に灌流されるよう、流路上に多孔質ゲルラインが形成されるであろう。非常に薄型の導管中を連続的に灌流することによって迅速な拡散動態が1次元的にもたらされ、拡散境界層が崩壊し、かつ対流性移動が増加してアレイエレメントと標的タンパク質の相互作用が促進される。圧力および/または吸収剤によって制御される流量で、感度を高めるために大容積を灌流することができる。ゲルエレメントは流路を貫通するので、その3Dプロファイルは標準的な2D Abアタッチメントよりも好ましい拡散導体も提供する。数秒と非常に速いことが示されている(Rossier他、Langmuir 2000)迅速な拡散動態を促進するために、3D半球状のゲルドロップを有する十分に薄い導管も設計することも可能であろう。1つの実施形態においては、ゲルラインは0.5nm〜0.5μmの範囲の多孔性を有する。
【0065】
薄型導管設計においては、スペーサーテープは薄く、かつ導管内へのオーバーシャインを防止するために低いバックグラウンド蛍光を有する必要がある。導管上のカバーは、導管内に折れ曲がりさらにプロテインアレイのゲルストリップを損傷しないよう、親水性でありかつ十分に剛直であることが必要である。
【実施例1】
【0066】
(親水性テープでインキュベーションチャンバーを被覆したところチャンバーが完全に充填された)
図3に示すようなマイクロアレイを構築した。スライドは長さ2.95インチおよび幅0.75インチを有していた。幅0.5mmの導管14は充填入口ポート11をマイクロアレイインキュベーションチャンバー10に接続し、2.0mm導管12はマイクロアレイインキュベーションチャンバー10を廃液チャンバー60に接続し、さらに廃液チャンバー60から外部までの1.0mm導管64はベントの役割を果たす。マイクロアレイインキュベーションチャンバー10は10mm×10mmのサイズを有する。厚さ0.25mmを有する内部のガスケットテープ(3M社より入手、PartNo.9087)をレーザー切断して上記に記載の形状寸法を有するガスケットを形成した。ガスケットは、ゲルスポットプリント工程に用いたスライドと同様の接触角の疎水性面に載置した。ガスケットの上部は、親水性面を提供するために親水性テープ(AR90128)で密封した。水30μLにより、気泡またはエアーポケットを残すことなく均一にチャンバーを充填した。チャンバーは、ハイブリダイゼーションバッファー30μL(3Mチオシアン酸グアニジン、150mM HEPES pH7.5、および15mM EDTA)によっても均一に満たされた。疎水性テープ(AR8192)を用いた同様の試験では、非均一な充填によりマイクロアレイチャンバー内にエアーポケットが残った。
【0067】
この実験により、チャンバーの親水性面によって液状物の表面張力が克服され、かつ四隅を含めたチャンバーの完全な充填が可能となることが示された。四隅は典型的には液状物がチャンバーを満たす際にエアーポケットを捕捉するので、この結果は驚くべきものである。
【実施例2】
【0068】
(廃液チャンバーの吸い上げ効率の評価)
図16Aは、吸収剤を収容する廃液チャンバーと接続された親水性インキュベーションチャンバーをそれぞれ有する4つの試験マイクロアレイスライドを示す。廃液チャンバーは大気中にベントされた。チャンバーは、マイクロアレイ支持スライド上部にガスケットを載置することによって形成された(グレースバイオラボが提供する両面テープよりレーザーカットする)。インキュベーションチャンバー内の親水性面は、インキュベーションチャンバー空隙を親水性テープ(AR90469)で被覆することにより製造された。吸収剤はミリポア製であった(C048)。Yersinia pestis由来の増幅生成物、ハイブリダイゼーションマーカー、BSAおよびハイブリダイゼーションバッファーを含むサンプル95μLを95℃で5分間変性させ、さらに入口ポートよりインキュベーションチャンバーに導入した。次に入口ポートをテープ(AR90697)で密封した。スライドタワーを接続したMJリサーチPTC−200DNAエンジンサーモサイクラーにおいて反応物を50℃で1時間インキュベートした。マイクロアレイスライドをタワーから取り出し、室温で水150μLにより洗浄した。入口ポートより水がインキュベーションチャンバーに加えられるにつれ、インキュベーションチャンバー内の液状物は、インキュベーションチャンバーを廃液チャンバーと接続する導管を通って廃液チャンバーに押し出された。インキュベーションチャンバー内の液状物と廃液チャンバー内の吸収剤との接触が一旦確立すると、吸収剤はインキュベーションチャンバーより液状物(洗浄容積を含む)を吸い出すことが可能であった。次に、マイクロアレイスライドを95℃で20分間加熱してインキュベーションチャンバーを完全に乾燥させた。オーロラフォトニクスポートアレイ5000(商標)上で、装置に全く手を加えずにマイクロアレイを撮像した。画像は、インキュベーションチャンバーを被覆する親水性テープ越しに撮像した。
【0069】
図16Bは、ハイブリダイゼーション、洗浄および乾燥ステップ後のマイクロアレイの例の画像を示す。生成物スポットは暗い黒色の点として示される。対照スポットはCy3スポットおよびハイブリダイゼーションマーカーを含む。各アレイは4つのサブアレイの反復であるので、4セットのYp生成物スポットである。全ての試験スライド上で均一なハイブリダイゼーションが達成された。
【実施例3】
【0070】
(ドームバルブ、親水性インキュベーションチャンバーおよび廃液チャンバーを含むマイクロアレイシステム)
図17Aは、親水性テープで被覆されたインキュベーションチャンバー、吸収剤が組み込まれた廃液チャンバー、およびインキュベーションチャンバーと接続されたドームバルブを有する一体型マイクロアレイシステムの実施例を示す。ハイブリダイゼーションマスターミックスおよびYersinia pestis生成物からなるサンプル95μLを95℃で5分間変性させ、さらにレイニンP200uLピペッターを用いてドームバルブよりインキュベーションチャンバーに導入した。サンプルは、気泡またはエアーポケットを残すことなくマイクロアレイチャンバーへ均一に流入した。インキュベーションチャンバーを、フローセルデバイスに全く変化を加えず、スライドタワーを接続したMJリサーチPTC−200DNAエンジンサーモサイクラーにおいて50℃で60分間加熱した。マイクロアレイスライドをスライドタワーから取り出し、水150uLで洗浄した。水がインキュベーションチャンバーに導入されるにつれ、インキュベーションチャンバー内部のハイブリダイゼーション混合物は廃液チャンバーに押し出され、さらにミリポアC048吸収剤がインキュベーションチャンバーより液状物の全量を吸い出した。次に、マイクロアレイスライドを95℃で20分間加熱してインキュベーションチャンバーを完全に乾燥させた。オーロラフォトニクスポートアレイ5000(商標)上で、装置に全く手を加えずにマイクロアレイを撮像した。画像は、インキュベーションチャンバーを被覆する親水性テープ越しに撮像した。
【0071】
図17Bは、ハイブリダイゼーション、洗浄および乾燥ステップ後の例示的マイクロアレイの画像を示す。生成物スポットは暗い黒色の点として示される。対照スポットはCy3スポットおよびハイブリダイゼーションマーカーを含む。各アレイは4つのサブアレイの反復であるので、4セットのYp生成物スポットである。図8Bに示すように、全てのサブアレイにおいて均一なハイブリダイゼーションが達成された。
【実施例4】
【0072】
(親水性インキュベーションチャンバーおよび廃液チャンバーを含むマイクロアレイシステム)
図18Aは、親水性チャンバー10および廃液チャンバー60を有するマイクロアレイシステムの他の実施形態を示す。2つのチャンバーは、入口セクション15、漏斗状接続セクション16、大直径出口セクション171および小直径出口セクション172を有する導管12によって接続される。液状サンプルは、入口ポート11および導管14を経てインキュベーションチャンバー10に加えられる。
【0073】
図18Aに示すマイクロアレイシステムは、両面テープ(グレースバイオラド)よりレーザーカットされたガスケットを用いてガラススライド上に構築された。廃液チャンバー60は濾紙吸収剤(CF4、ミリポア)を含み、かつ大気中にベントされた。生成するマイクロアレイアセンブリはレクサンHPFAF(0.007”/175μm)曇り止めテープ(GEプラスチックス)で被覆された。Streptococcus pyogenese由来の増幅生成物、ハイブリダイゼーションマーカー(ポジティブコントロール)、BSAおよびハイブリダイゼーションバッファーを含むサンプル20μLを95℃で5分間変性させ、さらにレイニンP200uLピペッターを用いて入口ポート11よりインキュベーションチャンバー10に導入した。入口ポート11をテープで密封し、スライドタワーを接続したMJリサーチPTC−200DNAエンジンサーモサイクラー内において、スライド全体を55℃で30分間インキュベートさせた。スライドをタワーから取り出し、室温で水150uLにより洗浄した。オーロラフォトニクスポートアレイ5000(商標)マイクロアレイリーダーによりアレイを撮像した(露出時間2秒)。図18Bはハイブリダイゼーションの結果を示す。図18Cはアレイスポットの配置を示すチップマップである。図18Bに示すように、ハイブリダイゼーションコントロールおよびStrestococcus特異性プローブより強い陽性結果が得られた。
【実施例5】
【0074】
(ワンステッププロテインマイクロアレイシステム)
図5および図18Aに示す実施形態のものなどのワンステップ一体型プロテインマイクロアレイシステムは、捕捉抗体を含有するゲルドロップエレメントを用いて構築される。捕捉抗体は、生物兵器(BWA)パネルに対して特異的に結合する抗体である。各ゲルスポットは特定のBWAと結合する抗体を含む。金コロイド標識した二次抗体のセットを入口導管近傍の位置に留置する。二次抗体は同じパネルのBWAを認識する。液状サンプルを入口導管よりインキュベーションチャンバーに装填するとき、金コロイド標識二次抗体はサンプルがインキュベーションチャンバーに入るにつれてサンプルと混合される。インキュベーション中、目的のBWAがアレイゲルスポット内の抗体によって捕捉され、さらに二次抗体が捕捉されたBWAと結合する。インキュベーション時間の後、非結合二次抗体が洗い流される。二次抗体はゲルスポット上に捕捉されたBWAと結合し、マイクロアレイにおいて陽性シグナルを生成する。
【0075】
本明細書で用いるところの用語「抗体」は、考えられる最も広い意味で用いられ、かつ抗体、組換え抗体、遺伝子操作抗体、キメラ抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、二機能性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ヘテロ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ラクダ化抗体、脱免疫抗体、抗イディオタイプ抗体、および/または抗体フラグメントを含んでもよいが、これに限定されない。また用語「抗体」はIgA、IgD、IgE、IgGおよび/またはIgMなどの抗体の種類、および/またはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1および/またはIgA2などのサブタイプを含んでもよいが、これに限定されない。用語「抗体」は、たとえば抗原結合可変領域などの、未修飾抗体の少なくとも一部分といった抗体フラグメントを含んでもよいが、これに限定されない。抗体フラグメントの例はFv、Fab、Fab’、F(ab’)、F(ab’)2、Fvフラグメント、二機能性抗体、線形抗体、短鎖抗体分子、多重特異性抗体、および/またはその他の抗体の抗原結合配列を含む。さらなる情報は、その全文が本明細書に参照文献として援用されている米国特許第5,641,870号、米国特許第4,816,567号、国際公開番号第WO93/11161号、Holliger他、二価抗体:小型二価および二重特異性抗体フラグメント、PNAS,90:6444−6448(1993)、Zapata他、Escherichia coliにおける効率的な生成および抗増殖性活性の亢進を目的とした線形F(ab’)2フラグメントの操作、Protein Eng.8(10):1057−1062(1995)に認められうる。
【実施例6】
【0076】
(マルチステッププロテインマイクロアレイシステム)
抗体を含有するゲルドロップエレメントを用いてマルチステップ一体型プロテインマイクロアレイシステムを構築した。アレイのチップマップを図19に示す(上左の図)。ゲルドロップがプリントされたガラススライドを、1%BSAを含有するPBSにより室温で1時間ブロッキングした。スライドをDI水ですすぎ、粉塵のない環境で風乾させた。次に、ブロッキングしたガラススライド、レーザーカットしたアドケム製256Mテープ、親水性レクサンフィルム、およびドームバルブを用いてマイクロアレイシステムを組み立てた。図19は、実験で用いられたマイクロアレイスライドの図を示す。SEB(0.05%Tween20および1%BSA添加1ug/mL PBS溶液)約20μLをドームバルブよりマイクロアレイシステムにピペッティングし、室温で60分間インキュベートした。DI水20μLをピペッティングして(×2)マイクロアレイシステムをすすぎ、その後ピペッターを用いて風乾した。0.05%Tween20を含有するPBS(PBST)30μLをマイクロアレイシステムにピペッティングした後、ピペッターを用いて風乾させた。1%BSAを含む抗SEBモノクローナル抗体PBST希釈液20μLをマイクロアレイシステムにピペッティングし、室温で30分間インキュベートした。DI水20μL(×2)をマイクロアレイシステムにピペッティングし、その後ピペッターを用いて風乾した。PBST30μLをマイクロアレイシステムにピペッティングし、その後ピペッターを用いて風乾した。1%BSAを含む2μg/mLアレクサ568標識抗マウス抗体PBST溶液20μLをマイクロアレイシステムにピペッティングし、室温で30分間インキュベートした。マイクロアレイシステムは遮光した。DI水20μL(×2)をマイクロアレイシステムにピペッティングした。100%エタノールをマイクロアレイシステムのインキュベーションチャンバーにピペッティングし、さらに残留エタノールを吸収剤で吸い上げた。次にマイクロアレイシステムを55℃で10分間加熱した。オーロラフォトニクスポートアレイ5000において、605nmフィルターによる緑色レーザー(532nm)を用いてマイクロアレイシステムを撮像した。プロテインアレイの代表的な画像を図19に示す(下右の図)。
【0077】
この実施形態においては、インキュベーションチャンバーを廃液チャンバーと接続する導管中に気泡が残り、インキュベーションチャンバー内の液状物を廃液から離隔して早すぎる吸い上げを防止した。
【実施例7】
【0078】
(PCRマイクロアレイシステム)
アコーニサンプル調製デバイスまたは顧客が好むサンプル調製キット(例:キアゲン試薬)において、1mLまでのスワブ、鼻咽頭吸引液または全血サンプルから全核酸(DNAおよびRNA)を分離する。アコーニのサンプル調整法についての一般化された作業の順番は、溶解バッファー中のサンプルの変性;サンプル調製装置上への溶解サンプルの持続的な注入;洗浄;および最終容積約100μLでの核酸の溶離を含む。溶離されたサンプルを、図8〜12に示す寸法を有するマイクロアレイシステム内に装填する。非標識「順」プライマーよりも10倍過量の蛍光標識「逆」プライマーを含む非対称PCRマスターミックス中で、標的の増幅および標識化を行う。この戦略により、その5’末端に単一の標識を有する一重らせん標的が主として生成される。オンチップ増幅後、アンプリコンをマイクロアレイシステムアセンブリ内において50〜65℃で30分間インキュベートする。インキュベーション後、マイクロアレイシステムを水で灌流する(全ての廃液はマイクロアレイシステム内に保持される)。
【0079】
図8はマイクロアレイシステムアセンブリの入口孔の実施形態を示す。スペーサーテープの入口孔の範囲は2.0〜4.0mmであるのに対し、カバーフィルムの穴の直径は0.8〜1.2mmの範囲である。直径の違いは、毛細管作用を介して試薬がチャンバー内に引き込まれることを可能とする。これらの直径が同一であれば、スペーサーテープの疎水性壁が、引き込む毛細管作用にとって好ましくない条件をサンプルにおいて作り出す。さらに、入口導管の導管幅は反応チャンバーに近づくにつれて増加する。この増加は、液状物がチャンバーに流入するために鋭い屈曲をする必要なくチャンバーに流入することを可能とするためのものである。鋭い屈曲は、移動する境界の接触線が、液状物の廃液チャンバーへの流入を遮断するよう働く不連続性を有することを必要とする。液状物が反応チャンバーより流出することを防止するために、導管の接続に直角の角を用いる。
【0080】
反応チャンバーの角を丸めて、粘性流動が表面駆動流の大半を占める高流量における充填を適合させる。この条件の際は角にエアポケットができやすい。さらに、反応が完了しかつ反応チャンバーが洗浄される場合、洗浄バッファーは反応チャンバーに吸い出される。陥凹した境界は、典型的には縁に沿ってチャンバー内に残留液状物を残し、縁は徐々に使い尽くされる。したがって、丸めた角によりチャンバーから液状物が完全に除去される時間が短縮される。
【0081】
接続導管は「階段」オーバーフローセクションおよび「スイッチバック」セクションの2セクションからなる。「階段」セクションは、45〜135°の範囲の角を作成するための、2.0mmから始まって0.6mmまで減少する導管寸法の変化がある。より具体的には、これらの角は90°である。スイッチバック部分はやはり90°の屈曲を伴う導管幅の一連の減少を有する。ここでも、これらの屈曲によって液状物の移動にとって好ましくない条件が作り出される。液状物が廃液チャンバーに近づくにつれて、直径の減少がより高い毛細管圧を作り出す。液状物が廃液チャンバーに接近するにつれて上昇する毛細管張力は、流路内にある気泡の効果を最小化する。接続導管の出口における気泡の曲率半径が、液状物の陥凹接触線と同じであれば、液状物は移動しない。しかし、気泡の曲率半径が液状物の陥凹接触線よりも小さければ、液状物は廃液チャンバーに流入し続けるであろう。したがって、小さな0.3mm導管が廃液チャンバーと接続する。0.2mmまたはそれ以下の導管は、縁の周囲の液状物が蓄積し一体となる条件を作り出す。液状物が導管の両側から一体化する場合、液状物は移動しかつ反応チャンバーを空にし始めるであろう。廃液チャンバーの吸収剤が接続導管と直接流体連通であるよう、吸収剤は接触導管に対して押しつけられる。
【0082】
入口ポートは厚さ0.75mmかつ内径0.9〜1.1mmかつ外径6.35mmである。この直径は、チップがアレイ基板にふれかつ流動を妨げることなくP20およびP100ピペットチップに適合する。シリコン接着剤を有するホイルサークルまたはタブが入口ポートと結合する。シリコンは、マイクロアレイシステムの乾燥に用いられるアセトンなどの溶媒と適合する。ホイルにはピペットチップを刺入することができる。ホイルサークルまたはタブは、反応チャンバーがサンプルおよびPCRマスターミックスで充填された後で貼付される。増幅後、反応チャンバーの洗浄を可能とするためにホイルに穴を開ける。吸収剤は、洗浄ステップ後に液状物がマイクロアレイシステムアセンブリから漏出するのを防ぐ。廃液チャンバーの遠位側にあるベント孔は、液状物がさらなるステップを必要とすることなく導入されることを可能とするために開いたままとする。ベント孔の半分は廃液チャンバーに露出しかつもう半分はガスケットによって被覆される。ホイルサークルは、剥離ライナーから剥がして入口ポートに貼付する半抜きロール上にあることが可能であり、あるいはタブの部分に剥離ライナーを付けたままホイルタブをマイクロアレイシステムアセンブリ上に配置することができる。ホイルタブは、剥離ライナーが取り除かれるときタブが入口ポートを被覆するように、製造時にマイクロアレイシステムアセンブリ上の位置に貼付する。
【実施例8】
【0083】
(ガラス基板を有するPCRマイクロアレイシステム上でのMRSA標的の検出および乾燥インキュベーションチャンバーの撮像)
この実験の目的は、マイクロアレイシステムアセンブリにおいて多重反応を実施することである。エリーサイエンティフィック製の相似被覆を有するガラススライド(25×75×1mm)をアレイ基板として用いる。Rubinaら(Rubina他、2003,BioTechniques 34:1008−1022,およびRubina他、2004.Anal.Biochem.325:92−106、その全文を本明細書に参照文献として援用)が報告するところのシングルステップ、UV誘導共重合反応における固形基板の代わりに、オリゴヌクレオチドプローブをポリマーバックボーンと共有結合的に架橋する。
【0084】
メシチリン耐性S.aureus細菌(MRSA)をATCCより培養として入手し、かつ協力者よりStreptococcus pyogenes(S.pyog)を培養として入手し、アコーニのトゥルーチップ(カタログ番号300−10206)により精製した。トゥルーチッププロトコルは約4分を要し、以下の各ステップ:結合、洗浄、乾燥、および溶離について電子ピペッターによる5回の吸い上げおよび押出しのサイクルからなる。DNAの量はナノドロップ3300蛍光分光光度計(デラウェア州ウィルミントン)で測定する。
【0085】
図20は、図7〜12のマイクロアレイシステムデザインにおけるMRSAチップ(v4.0)上で実施したMRSA核酸の増幅を示す。mecA、tufA−3b、SCCmecおよびM13のプライマーセットを用いて、MRSA DNA 300pgを多重反応で増幅する。画像はオーロラポートアレイ5000により撮像する。アレイは図21Aおよび21Bに示すチップマップを有した。マイクロアレイシステムアセンブリは、廃液チャンバー内にレーザーカット濾紙吸収剤(ワットマン31ET CHRセルロースクロマトグラフィ紙、0.5mm)を収容した。組み立て後に親水カバーフィルムの上面(疎水性面)をIPAで洗浄した。マスターミックスの調製は以下の通りであった:ホルムアルデヒド10%を添加したキアゲンTaq(登録商標)DNAポリメラーゼキット(キアゲン、カタログ番号1205)を用いて、MRSAの4プライマー(mecA、tufA−3b、SCCmecおよびM13)を含むマスターミックス14μLおよびメシチリン耐性S.aureus(MRSA)核酸10μLを各反応について調製した(15μL反応容積中で合計300pgのDNAを増幅)。調製した反応混合物14μLをマイクロアレイシステムに添加した。サンプル入口ポートを、接着性裏材料を有するホイルテーププルタブで被覆し、廃液チャンバーのベントは開いたままとした。全てのスライドを、スライドタワーを接続したMJリサーチPTC−200DNAエンジンサーモサイクラー上に載置し、増幅パラメータ:86.5℃で2分間、および86.5℃で45秒、50℃で1分30秒で35サイクル、および65℃で5分間、85℃で2分間および40℃で45分間の最終ステップにしたがって増幅した。増幅後、スライドタワーよりスライドを取り出し、次にサンプル入口ポートを被覆するホイルテープに細孔を開け、1×SSPE 35μLによりアレイを単回洗浄で洗浄した。次に、スライドを水25μL、その後100%アセトン75μLで洗浄した。次に、サーモフィッシャー2001FSQデジタルコントロールドライバス用に設計されたカスタムヒートブロック上においてスライドを50℃で15分間乾燥させ、さらにポートアレイ5000リーダーにおいて乾燥した状態で読み取る。
【実施例9】
【0086】
(ガラス基板を有するPCRマイクロアレイシステム上でのMRSA標的の検出および液状物内での撮像)
この実験の目的は、マイクロアレイシステムアセンブリ内で単一反応を実施することである。エリーサイエンティフィック製の相似被覆を有するガラススライド(25×75×1mm)をアレイ基板として用いる。Rubinaらが報告するところのシングルステップUV誘導共重合反応における固形基板(前掲)の代わりに、オリゴヌクレオチドプローブをポリマーバックボーンに共有結合的に架橋させる。図22は、図7〜12のマイクロアレイシステム設計におけるMRSAチップ(v4.0)上で実施したメシチリン耐性S.aureus(MRSA)核酸の増幅を示す。mecAプライマーを用いてMRSA DNA 1ngを単一反応で増幅する。画像はジーンピックス4000Bで撮像する。アレイは図21Aおよび21Bに示すチップマップを有した。フローセルは、廃液チャンバー内にレーザーカット濾紙吸収剤(ワットマン31ET CHRセルロースクロマトグラフィ紙、0.5mm)を収容した。組み立て後に親水カバーフィルムの上面(疎水性面)をIPAで洗浄した。マスターミックス調製は以下の通りである:ホルムアルデヒド10%を添加したキアゲンTaq(登録商標)DNAポリメラーゼキット(キアゲン、カタログ番号201205、http://www1.qiagen.com)を用いて、mecAプライマーを含むマスターミックス11.7μLおよびメシチリン耐性S.aureus(MRSA)核酸3.3μLを、各反応について調製した(15μL反応容積中で合計1ngのDNAを増幅)。調製した反応混合物14μLをマイクロアレイシステムに添加した。サンプル入口ポートを、接着性裏材料を有するホイルテーププルタブで被覆し、廃液チャンバーのベントは開いたままとした。全てのスライドを、スライドタワーを接続したMJリサーチPTC−200DNAエンジンサーモサイクラー上に載置し、増幅パラメータ:86.5℃で2分間、および86.5℃で45秒、50℃で1分30秒で35サイクル、および65℃で5分間、85℃で2分間および40℃で45分間の最終ステップにしたがって増幅した。増幅後、スライドをスライドタワーより取り出し、アレイチャンバー内に残留する液状物と共にジーンピックス4000Bにより撮像する。気泡はアレイの中央部ではなくスペーサーテープの疎水性壁に付着することに留意されたい。
【実施例10】
【0087】
(プラスチックスライドを有するPCRマイクロアレイシステム上での乾燥ステップを伴わないMRSA標的の検出)
この実験の目的は、アコーニおよびジーンピックス撮像装置上でのプラスチックスライドの評価である。プラスチックスライドは25.4mm×76.2mm×1mmの型で成形された。ゲルエレメントはプラスチック上に直接プリントされさらに実験前にUV架橋された。図23は、図10および14〜18のマイクロアレイシステム設計におけるMRSAチップ(v4.0)上で実施したメシチリン耐性S.aureus(MRSA)核酸の増幅を示す。mecAおよびtufA−3bプライマーを用いて、MRSA DNA 300pgを多重反応で増幅する。画像はアコーニが開発したプロトタイプリーダーにより撮像する。アレイは図21Aおよび21Bに示すチップマップを有した。マイクロアレイシステムは、廃液チャンバー内にレーザーカット濾紙吸収剤(ワットマン31ET CHRセルロースクロマトグラフィ紙、0.5mm)を収容した。組み立て後、親水カバーフィルムの上面(疎水性面)をIPAで洗浄した。マスターミックス標本は以下の通りである:ホルムアルデヒド10%を添加したキアゲンTaq(登録商標)DNAポリメラーゼキット(キアゲン、カタログ番号201205)を用いて、mecAおよびtufA−3bプライマーを含むマスターミックス14μLおよびメシチリン耐性S.aureus(MRSA)核酸10μLを、各反応について調製した(15μL反応容積中で合計300pgのDNAを増幅)。調製した反応混合物14μLをマイクロアレイシステムに添加する。サンプル入口ポートを、接着性裏材料を有するホイルテーププルタブで被覆し、廃液チャンバーのベントは開いたままとした。全てのスライドを、スライドタワーを接続したMJリサーチPTC−200DNAエンジンサーモサイクラー上に載置し、増幅パラメータ:86.5℃で2分間、および86.5℃で45秒、50℃で1分30秒で35サイクル、および65℃で5分間、85℃で2分間および40℃で45分間の最終ステップにしたがって増幅した。増幅後、スライドタワーよりスライドを取り出し、次にサンプル入口ポートを被覆するホイルテープに細孔を開け、1×SSPE 35μLによりアレイを単回洗浄で洗浄した。次にスライドをアコーニリーダー上で乾燥ステップなしで読み取った。
【実施例11】
【0088】
(異なるハイブリダイゼーション条件下での標的DNAの検出)
(バイオチップアセンブリ)
図7に示すバイオチップアセンブリはマイクロアレイ基板、スペーサーテープ、親水性上面フィルム、吸収剤を有する廃液チャンバー、入口ポートおよびベント孔からなる。マイクロアレイ基板はガラス(エリーサイエンティフィック、ニューハンプシャー州ポーツマス)またはプラスチックである。プラスチックスライドは25.4mm×76.2mm×1mmのサイズで成形される。一旦スペーサーテープが貼付されたならば、バイオチップの反応チャンバーにおいてアレイを位置決めする座標を用いてオリゴヌクレオチドプローブをブランクスライド上にプリントする。プリント方法は、Vasiliskovら(Biotechniques、1999)およびRubinaら(Biotechniques、2003)が報告した方法と同様に、共重合およびスライド上にプリントされUV架橋されたオリゴヌクレオチドプローブ混合物よりなる。ゲルエレメントの直径は150μmであり中心同士の距離は300μmである。バイオチップは入口導管用切り欠きを有するレーザーカット両面テープ、反応チャンバー、接続導管および廃液チャンバーより構築される。上面フィルムはアレイチャンバーおよび廃液チャンバーをそれぞれ被覆する。上面フィルムは、反応チャンバー全体を満たすための毛細管作用を可能とするため親水性である。吸収剤(ワットマンクロマトグラフィペーパー)は廃液チャンバー内に位置する。上面フィルムは、入口用の1mmの穴および廃液チャンバーの遠位側の縁に位置するベント用の1mmの穴を有する。フレームシール(バイオラッド、カリ孔ニア州ハーキュリーズ)は対照反応チャンバーの役割を果たす。バイオチップアセンブリおよびフレームシールは使用より少なくとも1時間前に準備する。
【0089】
(サンプル調製およびハイブリダイゼーション)
実施例8に記載するように、アコーニのトゥルーチップを用いてMRSA DNAを調製した。バイオチップ内ハイブリダイゼーション用:ハイブリダイゼーションマスターミックス10μL(1.5Mチオシアン酸グアニジン、75mM HEPES、pH7.5、7.5mM EDTA、5mg/mL BSAおよび3.7fmol/uLハイブリダイゼーション対照オリゴヌクレオチドを含有)、および増幅生成物5μLからなる反応容積15μLを調製してバイオチップに加える。サンプル入口ポートを、直径6.35mmの円形にレーザーカットしたシリコンテープで被覆し、廃液チャンバーベントは開いたままとした。フレームシール内ハイブリダイゼーション用:ハイブリダイゼーションマスターミックス20μLおよびMRSA増幅生成物10μLからなる反応物30μLをフレームシールに添加するために調製した。この30μLのうち28μLをフレームシールに加え、パラフィルムで被覆した。全てのスライドは、αユニットスライドタワーを接続したMJリサーチPTC−200 DNAエンジンサーモサイクラー上に載置し、55℃で3時間ハイブリダイゼーションした。バイオチップおよびフレームシールマスターミックス溶液は、いずれも以下に記載するハイブリダイゼーションプロトコルの前に試験管内において95℃で5分間変性した。標的はオンチップで変性できるので、このオフライン変性ステップはオンチップ増幅プロトコルの一部ではない。オンチップPCRは実施例8に記載する方法により実施した。
【0090】
(洗浄)
(バイオチップス)
ハイブリダイゼーションまたはオンチップ増幅後、アレイを容積範囲35〜200μLの1×SSPEで洗浄する。バイオチップをオーロラポートアレイ5000に適合するように完全に乾燥させる。材料は、熱乾燥ステップの時間を短縮するアセトンに適合することが確認されている。したがって、一部の例では洗浄ステップ後に水25μLおよびその後アセトン15μLまたは75μLのバイオチップへのピペッティングが続く。アセトンがアレイチャンバーから完全に取り除かれたことを確認するために、バイオチップを3分間倒立させて残留アセトンを廃液チャンバー内に排出した。次に、サーモフィッシャー2001FSQデジタルコントロールヒーター用に設計されたカスタムヒートブロックにおいて、スライドを50℃で15分間乾燥させる。洗浄前にフレームシールガスケットを取り外しかつ露出したアレイを通気して乾燥することを必要とするフレームシールプロトコルとは反対に、チップは取り外されないので、この乾燥手順は「オンチップ乾燥プロトコル」と呼ばれる。
【0091】
(フレームシール)
フレームシールを取り外し、1×SSEPおよび0.01%Triton X−100を含むテレケムアレイイット(商標)ブランドのハイスループットウォッシュステーション内でスライドを3分間洗浄し、水ですすぎ、濾過した圧縮空気で乾燥させる。
【0092】
(検出および分析)
アレイはオーロラポートアレイ5000リーダー、ジーンピックス4000B、または検出のために斜方角レーザー発光法およびCCDカメラを用いるアコーニのインハウスリーダーのいずれかで読み取る。いずれかのリーダーからの非ビニングアウトプット(12ビット、オフセット=0,ゲイン=1)は、TIFF、改訂6.0スタンダードに適応する16ビットグレイスケールタグ画像ファイルフォーマットで保存する。ゲノム化学研究所(Saeed他、Biotechniques,2003)のオープンソースアプリケーション「スポットファインダー」(ウィンドウズ版3.1.1.、「Sportfinder3.1.1.exe」)を用いて.tif画像を分析する。スポットファインダー内でOtsu閾値化アルゴリズム(Liao他、Journal of Information Science and Engineering,2001)による画像のセグメント化を実施し、全スポットについてのバックグラウンド補正積分強度(中央値)を、他の導出統計値、関連品質指標、およびアレイ位置インジケーターと共に、タブ区切りフラットファイル(.mev)フォーマットで保存した。続いて、Microsoft Office Excel 2003 Service Pack3を用いて、各プローブについての反復スポットの平均積分強度を、dN20ナンセンスオリゴヌクレオチド(非特異的ハイブリダイゼーション事象による生物学的ノイズのモデル)を含むスポットの平均強度と比較するデータ分析を実施する。
【0093】
(結果)
図24〜26は:バイオチップにおけるハイブリダイゼーション、溶液相増幅後にバイオチップ内でハイブリダイゼーション、およびフレームシールフォーマットにおけるハイブリダイゼーションに大別される3つの異なる条件にゲルエレメントオリゴアレイを曝露する実験の結果を比較する。プロトコルは増幅後にガスケットを取り外すよう求めているが、これは汚染のリスクを導入し、かつそのために説得力のある均一性を提供しないので、フレームシールフォーマットにおけるオンチップPCRは示さない。プロトコルは、オンチップ増幅およびバイオチップハイブリダイゼーションのいずれについても、1×SSPE 175μL、水25μL、およびアセトン15μLの洗浄バッファー体積で、実験の節に記載された方法により実施する。増幅マスターミックスはハイブリダイゼーションマーカーを含有しないので、図24、パネルBのハイブリダイゼーションスポットは蛍光を発しない。
【0094】
図25は、各条件について3回実施したS.pyogenesおよびS.genusの信号ナンセンス比を、最小および最大値を示す誤差棒と共に示す。各条件についての出発ゲノムコピー数は約104である。このデータより、バイオチップ用のオンチップ増幅が、試験管で増幅してフレームシールに移す場合と同様に、試験管の中で増幅した後バイオチップに移す場合に匹敵する成績を示すことが示唆される。洗浄手順の有効性によって低いシグナルを有するナンセンスプローブで割る手法のため、この試験では誤差棒が大きくなっている。洗浄は標識プライマーまたはナンセンスプローブ由来の生成物を効果的に除去しているので、洗浄手順はナンセンスプローブのシグナル強度を低下させるはずであることに留意されたい。したがって、ナンセンスシグナル(分母)の小さな変化により比率が大きく変化する。図26に示す3種類の異なる洗浄条件についてナンセンスシグナルを比較する追加的な試験は、この強度の変動性をさらに例示する。3つの条件全てについての変動性にもかかわらず、限られたデータセットより、バイオチップ上での小量ピペット洗浄プロトコルは、バス内での洗浄と同じであるかまたはこれよりすぐれていることが示唆される。このデータより、洗浄プロトコルは信号ナンセンス比を劣化させることなく100μLまで低下させることができる。実際に、追加的研究より35μLまでの体積低下が可能であることが示唆される。これらの低い体積により、チップ上で全ての試薬を含有しながら、洗浄ステップをラボオンチップフォーマットで実施し、さらにこれにより汚染リスクはなくならないまでも低下させることが可能となった。
【0095】
本明細書において用いられる用語および記載は例示的な方法によってのみ説明され、制限を意味してはいない。当業者は、以下の請求項に定義されるところの本発明の趣旨および範囲内において、特に指示がない限り全ての用語がその最も広い意味で理解される多くの変法、およびその同等物が可能であることを理解するであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的分子を検出することを目的としたフローセルデバイスであって:
入口;
出口;
マイクロアレイ;および
反応チャンバーの上面または底面の少なくとも一方にある親水性領域を含む前記反応チャンバー;
液状物が毛細管作用によって反応チャンバー内を洗浄のために移動することを可能とする吸収剤を有する廃液チャンバー;
入口ポート;
前記反応チャンバーを前記入口ポートと接続する第1の導管;および
前記反応チャンバーを前記廃液チャンバーと接続する第2の導管を含む前記フローセルデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記反応チャンバーが反応中に気泡を捕捉するために疎水性側壁を含むことを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記第2の導管が流動停止装置として働く疎水性内面を伴うセクションを含むことを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記親水性領域が前記反応チャンバーの前記出口の近傍に作成されることを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記親水性領域が親水性ゲルエレメントによって作成されることを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記反応チャンバー内の内容物を前記マイクロアレイシステムから放出させることなく洗浄が発生することを可能とするために、前記入口ポートが刺入可能な膜またはテープまたはドームバルブを含むことを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記洗浄ステップの前に液状物が前記廃液チャンバー中に移動するのを防ぐために前記接続導管が一連の導管幅の急激な変化および/または鋭い角を含むことを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記反応チャンバーおよび前記廃液チャンバーが:
その上にマイクロアレイが形成される基板;
反応チャンバースペーサー;および
前記反応チャンバーを被覆する親水性カバーを含む層状構造内に形成されることを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のマイクロアレイシステムであって、前記層状構造が:
反応チャンバースペーサー;および
廃液チャンバーカバーをさらに含むことを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項10】
請求項8に記載のマイクロアレイシステムであって、前記基板がガラスであることを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項11】
請求項8に記載のマイクロアレイシステムであって、前記基板がプラスチックであることを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記反応チャンバーおよび前記廃液チャンバーが成型によってプラスチック基板内に形成されることを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記入口ポートまたは前記反応チャンバーがサンプル精製マトリクスを含むことを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のマイクロアレイシステムであって、前記精製マトリクスがシリカであることを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項15】
標的分子を検出することを目的としたデバイスであって:
入口;
出口;
前記標的分子と特異的に結合する標的捕捉面;および
反応チャンバーの上面または底面の少なくとも一方にある親水性領域を含む前記反応チャンバー;
液状物が毛細管作用によって反応チャンバー内を洗浄のために移動することを可能とする吸収剤を有する廃液チャンバー;および
前記反応チャンバーを前記廃液チャンバーと接続する可変幅導管を含む前記デバイス。
【請求項16】
請求項15に記載のデバイスであって、前記標的捕捉面がマイクロアレイを含むことを特徴とする前記デバイス。
【請求項17】
請求項15に記載のデバイスであって、前記導管が、第1のセクションが第2のセクションの直径または断面積よりも大きな直径または断面積を有することを特徴とする、前記反応チャンバーに近接する末端にある前記第1のセクションおよび前記廃液チャンバーに近接する末端にある前記第2のセクションの2つのセクションを含むことを特徴とする前記デバイス。
【請求項18】
請求項17に記載のデバイスであって、前記第2のセクションが2つのサブセクション:第1のサブセクションが第2のサブセクションとある角度を形成しかつ前記第2のサブセクションの直径よりも大きな直径を有することを特徴とする、前記第1のセクションと隣接する前記第1のサブセクションおよび前記廃液チャンバーと隣接する前記第2のサブセクションをさらに含むことを特徴とする前記デバイス。
【請求項19】
請求項15に記載のデバイスであって、前記廃液チャンバーがベントを含むことを特徴とする前記デバイス。
【請求項20】
請求項15に記載のデバイスであって、前記反応チャンバーの前記底面に標的捕捉面が形成されかつ前記反応性チャンバーの前記上面に前記親水性領域が形成されることを特徴とする前記デバイス。
【請求項21】
標的分子を検出することを目的としたフローセルデバイスであって:
入口;
出口;
マイクロアレイ;および
反応チャンバーの上面または底面の少なくとも一方の上にある親水性領域を含む前記反応チャンバー;および
出口導管を含む前記フローセルデバイスであって、前記出口導管が前記反応チャンバーの前記出口と流体連通である前記フローセルデバイス。
【請求項22】
請求項21に記載のフローセルデバイスであって、前記出口導管が前記反応チャンバー側でより幅広くかつ前記反応チャンバーから離れて段階的に狭くなるサブセクションを含む階段セクションを含むことを特徴とする前記フローセルデバイス。
【請求項23】
請求項22に記載のフローセルデバイスであって、前記反応チャンバーに近接するサブセクションが親水性コーティングによりコーティングされることを特徴とするフローセルデバイス。
【請求項24】
請求項21に記載のフローセルデバイスであって、前記出口導管が1つまたはそれ以上の鋭い角を含むスイッチバックセクションを含むことを特徴とする前記フローセルデバイス。
【請求項25】
請求項21に記載のフローセルデバイスであって、多様な直径の複数のサブセクションを含む入口導管をさらに含むフローセルデバイス。
【請求項26】
請求項25に記載のフローセルデバイスであって、前記入口導管を通じて前記反応チャンバーと流体連通である洗浄バッファーチャンバーをさらに含むフローセルデバイス。
【請求項1】
標的分子を検出することを目的としたフローセルデバイスであって:
入口;
出口;
マイクロアレイ;および
反応チャンバーの上面または底面の少なくとも一方にある親水性領域を含む前記反応チャンバー;
液状物が毛細管作用によって反応チャンバー内を洗浄のために移動することを可能とする吸収剤を有する廃液チャンバー;
入口ポート;
前記反応チャンバーを前記入口ポートと接続する第1の導管;および
前記反応チャンバーを前記廃液チャンバーと接続する第2の導管を含む前記フローセルデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記反応チャンバーが反応中に気泡を捕捉するために疎水性側壁を含むことを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記第2の導管が流動停止装置として働く疎水性内面を伴うセクションを含むことを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記親水性領域が前記反応チャンバーの前記出口の近傍に作成されることを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記親水性領域が親水性ゲルエレメントによって作成されることを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記反応チャンバー内の内容物を前記マイクロアレイシステムから放出させることなく洗浄が発生することを可能とするために、前記入口ポートが刺入可能な膜またはテープまたはドームバルブを含むことを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記洗浄ステップの前に液状物が前記廃液チャンバー中に移動するのを防ぐために前記接続導管が一連の導管幅の急激な変化および/または鋭い角を含むことを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記反応チャンバーおよび前記廃液チャンバーが:
その上にマイクロアレイが形成される基板;
反応チャンバースペーサー;および
前記反応チャンバーを被覆する親水性カバーを含む層状構造内に形成されることを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のマイクロアレイシステムであって、前記層状構造が:
反応チャンバースペーサー;および
廃液チャンバーカバーをさらに含むことを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項10】
請求項8に記載のマイクロアレイシステムであって、前記基板がガラスであることを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項11】
請求項8に記載のマイクロアレイシステムであって、前記基板がプラスチックであることを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記反応チャンバーおよび前記廃液チャンバーが成型によってプラスチック基板内に形成されることを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のマイクロアレイシステムであって、前記入口ポートまたは前記反応チャンバーがサンプル精製マトリクスを含むことを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のマイクロアレイシステムであって、前記精製マトリクスがシリカであることを特徴とする前記マイクロアレイシステム。
【請求項15】
標的分子を検出することを目的としたデバイスであって:
入口;
出口;
前記標的分子と特異的に結合する標的捕捉面;および
反応チャンバーの上面または底面の少なくとも一方にある親水性領域を含む前記反応チャンバー;
液状物が毛細管作用によって反応チャンバー内を洗浄のために移動することを可能とする吸収剤を有する廃液チャンバー;および
前記反応チャンバーを前記廃液チャンバーと接続する可変幅導管を含む前記デバイス。
【請求項16】
請求項15に記載のデバイスであって、前記標的捕捉面がマイクロアレイを含むことを特徴とする前記デバイス。
【請求項17】
請求項15に記載のデバイスであって、前記導管が、第1のセクションが第2のセクションの直径または断面積よりも大きな直径または断面積を有することを特徴とする、前記反応チャンバーに近接する末端にある前記第1のセクションおよび前記廃液チャンバーに近接する末端にある前記第2のセクションの2つのセクションを含むことを特徴とする前記デバイス。
【請求項18】
請求項17に記載のデバイスであって、前記第2のセクションが2つのサブセクション:第1のサブセクションが第2のサブセクションとある角度を形成しかつ前記第2のサブセクションの直径よりも大きな直径を有することを特徴とする、前記第1のセクションと隣接する前記第1のサブセクションおよび前記廃液チャンバーと隣接する前記第2のサブセクションをさらに含むことを特徴とする前記デバイス。
【請求項19】
請求項15に記載のデバイスであって、前記廃液チャンバーがベントを含むことを特徴とする前記デバイス。
【請求項20】
請求項15に記載のデバイスであって、前記反応チャンバーの前記底面に標的捕捉面が形成されかつ前記反応性チャンバーの前記上面に前記親水性領域が形成されることを特徴とする前記デバイス。
【請求項21】
標的分子を検出することを目的としたフローセルデバイスであって:
入口;
出口;
マイクロアレイ;および
反応チャンバーの上面または底面の少なくとも一方の上にある親水性領域を含む前記反応チャンバー;および
出口導管を含む前記フローセルデバイスであって、前記出口導管が前記反応チャンバーの前記出口と流体連通である前記フローセルデバイス。
【請求項22】
請求項21に記載のフローセルデバイスであって、前記出口導管が前記反応チャンバー側でより幅広くかつ前記反応チャンバーから離れて段階的に狭くなるサブセクションを含む階段セクションを含むことを特徴とする前記フローセルデバイス。
【請求項23】
請求項22に記載のフローセルデバイスであって、前記反応チャンバーに近接するサブセクションが親水性コーティングによりコーティングされることを特徴とするフローセルデバイス。
【請求項24】
請求項21に記載のフローセルデバイスであって、前記出口導管が1つまたはそれ以上の鋭い角を含むスイッチバックセクションを含むことを特徴とする前記フローセルデバイス。
【請求項25】
請求項21に記載のフローセルデバイスであって、多様な直径の複数のサブセクションを含む入口導管をさらに含むフローセルデバイス。
【請求項26】
請求項25に記載のフローセルデバイスであって、前記入口導管を通じて前記反応チャンバーと流体連通である洗浄バッファーチャンバーをさらに含むフローセルデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図21A】
【図21B】
【図6】
【図7】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図21A】
【図21B】
【図6】
【図7】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2013−500466(P2013−500466A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521618(P2012−521618)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/002046
【国際公開番号】WO2011/011062
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
【出願人】(510048369)アコーニ バイオシステムズ (8)
【氏名又は名称原語表記】AKONNI BIOSYSTEMS
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/002046
【国際公開番号】WO2011/011062
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
【出願人】(510048369)アコーニ バイオシステムズ (8)
【氏名又は名称原語表記】AKONNI BIOSYSTEMS
【Fターム(参考)】
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