説明

フローセンサ、流量計、および流量制御装置

【課題】容易に製造することができるとともに、検出結果の安定性が高いフローセンサ、流量計、および流量制御装置を提供する。
【解決手段】フローセンサ1は、流体が流通する流路11が内部に設けられた流路保持体10と、流体の速度を検出するための検出部20と、を備え、流路保持体10は、それぞれが接合された複数の部材12,13,14を含み、検出部20は、前記複数の部材12,13,14のうちの一の部材と他の部材との間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係るいくつかの態様は、流体の速度を検出するための検出部を備えるフローセンサ、流量計、および流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフローセンサとして、流体が流通する毛細管(キャピラリー)の外周面に抵抗線を巻き回して検出部を形成するものがあった。しかし、このようなフローセンサでは、毛細管に巻き回される抵抗線の張力(テンション)が適切でない場合に、抵抗線の抵抗値が所望の値からずれたり、経年劣化により所望の値から変化したりすることがあった。
【0003】
この問題を解決するために、流体を内部に流すセンサ管と、このセンサ管に挿入固定されたセラミックチューブと、このセラミックチューブに形成された白金パターンとを備える流量センサにおいて、セラミックチューブの外周面に蒸着された白金を、レーザトリミングにより除去してらせん状の白金パターンを形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−366727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のフローセンサでは、筒状のセラミックチューブの外周面に白金を蒸着しているが、曲面上に均一の厚さで白金を付着させるのは困難であり、付着した白金の厚さが異なると所望の抵抗値を得られないという問題があった。また、レーザトリミングにより外周面に形成された白金を除去して抵抗値を設定する工程は、複雑であるためスループット(単位時間あたりの処理量)が低く、さらに、設定される抵抗値の精度が高くないという問題があった。
【0006】
本発明のいくつかの態様は前述の問題に鑑みてなされたものであり、容易に製造することができるとともに、検出結果の安定性が高いフローセンサ、流量計、および流量制御装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフローセンサは、流体が流通する流路が内部に設けられた流路保持体と、流体の速度を検出するための検出部と、を備え、流路保持体は、それぞれが接合された複数の部材を含み、検出部は、複数の部材のうちの一の部材と他の部材との間に配置される。
【0008】
かかる構成によれば、流路保持体が、それぞれが接合された複数の部材を含み、当該複数の部材のうちの一の部材と他の部材との間に検出部が配置される。ここで、一の部材と他の部材との間に検出部を配置する工程は、例えば、他の部材に検出部を設け、当該他の部材と一の部材とを接合することで実現可能であることから、従来のフローセンサのように、毛細管に抵抗線を巻き回したり、蒸着により付着した白金をレーザによりトリミングしたりする場合と比較して、検出部を容易に設けることができる。また、検出部は、一の部材と他の部材とによって覆われるので、外部に対して露出する(さらされる)ことがない。
【0009】
好ましくは、検出部は、前述の一の部材および前述の他の部材のうちの一方に、パターニングにより形成される。
【0010】
かかる構成によれば、検出部が、前述の一の部材および前述の他の部材のうちの一方に、パターニングにより形成される。ここで、パターニングは、例えば、フォトリソグラフィとエッチングなどの工程により行うことができ、従来のフローセンサのように、毛細管に抵抗線を巻き回したり、蒸着により付着した白金をレーザによりトリミングしたりする場合と比較して、微細なパターンを形成することができ、製造精度(工作精度)が高い。よって、パターニングにより検出部を形成することにより、検出精度の高い検出部を容易に実現することができる。
【0011】
好ましくは、検出部は、流体を加熱して流体に温度差を生じさせるように構成された加熱ユニットを含む。
【0012】
かかる構成によれば、検出部が、流体を加熱して流体に温度差を生じさせるように構成された加熱ユニットを含む。これにより、流体の温度差から当該流体の速度(流速)を検出する熱式のフローセンサを容易に実現(構成)することができる。
【0013】
好ましくは、流路保持体は、第1ないし第3の前述の部材を含み、加熱ユニットは、第1および第2のヒータを有し、第1のヒータは第1の部材と第2の部材との間に配置され、第2のヒータは第2の部材と第3の部材との間に配置される。
【0014】
かかる構成によれば、第1のヒータが第1の部材と第2の部材との間に配置され、第2のヒータが第2の部材と第3の部材との間に配置される。これにより、第1のヒータは第2の部材の一方側に配置され、第2のヒータは第2の部材の他方側に配置されるので、第1のヒータおよび第2のヒータのそれぞれを、流路の上流側と下流側とに配置することが可能となる。これにより、流路における上流側の流体と下流側の流体とをそれぞれ加熱することができ、流路を流通する流体に容易に温度差を生じさせることができる。
【0015】
好ましくは、第1のヒータおよび第2のヒータのそれぞれは、前述の流路の外周を囲むように形成された抵抗体である。
【0016】
かかる構成によれば、
第1のヒータおよび第2のヒータのそれぞれが、前述の流路の外周を囲むように形成された抵抗体である。これにより、流路を流通する流体をむらなく(均一に)加熱することができ、流路を流通する流体に温度差を生じさせる加熱ユニットを、容易に実現(構成)することができる。
【0017】
好ましくは、前述の複数の部材のそれぞれは、所定の腐食性物質に対して耐食性を有する。
【0018】
かかる構成によれば、前述の複数の部材のそれぞれが、所定の腐食性物質に対して耐食性を有する。これにより、流体に対して露出している部分が耐食性を有するので、流体が、例えば、SOx、NOx、Cl2、BCl3などを含有するガス(気体)や、硫酸や硝酸を含む薬液(液体)などの所定の腐食性物質を含む場合に好適に用いることができる。
【0019】
本発明に係る流量計は、前述のフローセンサを備える。
【0020】
かかる構成によれば、流体の流量を測定する流量計が前述のフローセンサを備える。これにより、従来の流量計と比較して、測定される流体の流量の安定性が高い流量計を容易に実現することができる。
【0021】
本発明に係る流量制御装置は、前述のフローセンサを備える。
【0022】
かかる構成によれば、流体の流量を制御する流量制御装置が前述のフローセンサを備える。これにより、従来の流量制御装置と比較して、制御される流体の流量の安定性が高い流量制御装置を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るフローセンサによれば、一の部材と他の部材との間に検出部を配置する工程は、例えば、他の部材に検出部を設け、当該他の部材と一の部材とを接合することで実現可能であることから、従来のフローセンサのように、毛細管に抵抗線を巻き回したり、蒸着により付着した白金をレーザによりトリミングしたりする場合と比較して、検出部を容易に設けることができる。また、検出部は、一の部材と他の部材とによって覆われるので、外部に対して露出する(さらされる)ことがない。これにより、従来のフローセンサと比較して、容易に製造することができるともに、検出部が外部から受ける影響を低減することができ、検出部の経年劣化が少なくなり、検出される流体の速度(流速)の安定性を高めることができる。
【0024】
また、本発明に係る流量計によれば、従来の流量計と比較して、測定される流体の流量の安定性が高い流量計を容易に実現することができる。
【0025】
また、本発明に係る流量制御装置によれば、従来の流量制御装置と比較して、制御される流体の流量の安定性が高い流量制御装置を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るフローセンサの一例を説明する斜視図である。
【図2】図1に示した第1部材の上面図である。
【図3】図1に示した第2部材の上面図である。
【図4】図1に示した第3部材の上面図である。
【図5】本発明に係る流量計および流量制御装置の一例を説明する断面図である。
【図6】図1に示した分流路の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
【0028】
<フローセンサ>
図1ないし図4は、本発明に係るフローセンサの一実施形態を示すためのものである。図1は、本発明に係るフローセンサの一例を説明する斜視図である。図1に示すように、フローセンサ1は、内部に流路11が設けられた流路保持体10を備える。略六面体の流路保持体10において、対向する二面(図1において上面と下面)のそれぞれに開口が形成されている。流路11は、一方の開口から他方の開口まで貫通しており、被測定対象である流体はこの流路11を流通する。
【0029】
流路保持体10は、複数の部材、例えば、第1部材12と、第2部材13と、第3部材14と、を含んで構成される。第1部材12の下面と第2部材13の上面とは接合されており、また、第2部材13の下面と第3部材14の上面とは接合されている。
【0030】
フローセンサ1は、流体の速度を検出するための検出部20をさらに備える。検出部20は、流路保持体10の内部に設けられ、流路11を流通する流体を加熱する第1ヒータ21および第2ヒータ22を含んで構成される。第1ヒータ21および第2ヒータ22のそれぞれは、例えば、抵抗素子である。第1ヒータ21および第2ヒータ22は、流路11を流通する流体に温度差を生じさせるように構成されている。これにより、流体の温度差から当該流体の速度(流速)を検出する熱式のフローセンサ1を容易に実現(構成)することができる。なお、本実施形態の第1ヒータ21および第2ヒータ22は、本発明のフローセンサにおける「加熱ユニット」の一例に相当する。
【0031】
図2は、図1に示した第1部材12の上面図である。図2に示すように、平面視において、第2部材13は、正方形の対角部分(図2において破線で示す右上部分および左下部分)を切除したような六角形の形状を有しており、中央部には流路11が形成されている。
【0032】
図3は、図1に示した第2部材13の上面図である。図3に示すように、平面視において、第2部材13は、正方形の1つの角部分(図3において破線で示す右上部分)を切除したような五角形の形状を有しており、中央部には流路11が形成されている。また、第2部材13の上面には、前述した第1ヒータ21と2つの電極パッド23とが設けられ、第1ヒータ21と各電極パッド23とは、配線により接続される。2つの電極パッド23は、第2部材13の上面において左下部分に設けられ、図1に示すように、第1部材12と第2部材13とが接合されたときに、第1部材12において除去された左下の角に対応する位置に配置される。これにより、各電極パッド23は、フローセンサ1の外部に露出され、ボンディングワイヤなどの信号線を介して、外部の機器と接続することが可能となる。
【0033】
図4は図1に示した第3部材14の上面図である。図4に示すように、平面視において、第3部材14は、正方形の形状を有しており、中央部に流路11が形成されている。また、第3部材14の上面には、前述した第2ヒータ22と2つの電極パッド24とが設けられ、第2ヒータ22と各電極パッド24とは、配線により接続される。2つの電極パッド24は、第3部材14の上面において右上部分に設けられ、図1に示すように、第2部材13と第3部材14とが接合されたときに、第2部材13において除去された右上の角に対応する位置に配置される。これにより、各電極パッド24は、フローセンサ1の外部に露出され、ボンディングワイヤなどの信号線を介して、外部の機器と接続することが可能となる。
【0034】
このような構成を備えるフローセンサ1は、図1に示すように、第1ヒータ21が第1部材12と第2部材13との間に配置され、第2ヒータ22が第2部材13と第3部材14との間に配置される。これにより、第1ヒータ21は第2部材の一方側(図1において上側)に配置され、第2ヒータ22は第2部材13の他方側(図1において下側)に配置されるので、流体が、例えば、図1中にブロック矢印で示す方向に流通する場合に、第1ヒータ21を流路11の上流側に、第2ヒータ22を流路11の下流側に配置することが可能となる。
【0035】
ここで、流路11内の流体が停止している(流れていない)場合、第1ヒータ21および第2ヒータ22によって流路11内の流体に加えられた熱は、上流方向および下流方向へ対称的に分布し、第1ヒータ21の温度と第2ヒータ22の温度とが等しくなる(温度バランスが保たれる)。
【0036】
これに対し、流路11内の流体が上流から下流に流れている場合、第1ヒータ21は流体によって熱が奪われ、第2ヒータ22は流体から熱が与えられる。従って、第1ヒータ21と第2ヒータ22との間に温度差が生じる(温度バランスが崩れる)。
【0037】
このような温度差は、第1ヒータ21の抵抗値と第2ヒータ22の抵抗値との間に差を生じさせる。第1ヒータ21の抵抗値と第2ヒータ22の抵抗値との差は、流路11を流れる流体の速度や流量と相関関係がある。そのため、第1ヒータ21の抵抗値と第2ヒータ22の抵抗値との差を基に、流路11を流通する流体の速度(流速)や流量を算出することができる。第1ヒータ21および第2ヒータ22の抵抗値の情報は、図1に示す電極パッド23および電極パッド24を通じて電気信号として取り出すことができる。
【0038】
図3および図4に示すように、第1ヒータ21および第2ヒータ22のそれぞれは、流路11の外周を囲むように、流路11の同軸(同心)状に2回取り巻いて形成される。これにより、流路11を流通する流体をむらなく(均一に)加熱することができ、流路11を流通する流体に温度差を生じさせる加熱ユニットを、容易に実現(構成)することができる。
【0039】
本実施形態では、第1ヒータ21および第2ヒータ22のそれぞれが流路11の外周を2回取り巻く例を示したが、これに限定されない。第1ヒータ21および第2ヒータ22の巻数は、要求される抵抗値などの仕様に基づくものであり、仕様によっては1回でも3回以上であってもよい。
【0040】
また、本実施形態では、流路11の平面形状が円形の例を示したが、これに限定されず、例えば、矩形や楕円形であってもよい。この場合、流路11の外周を囲むように形成される第1ヒータ21および第2ヒータ22も、同じ形状であることが好ましいが、これに限定されず、異なる形状であってもよい。
【0041】
第1ヒータ21、各電極パッド23、およびこれらを接続する配線は、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法などの方法を用いて、第2部材13の上面に、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)などの金属を付着させ、パターニングすることにより、形成される。同様に、第2ヒータ22、各電極パッド24、およびこれらを接続する配線は、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法などの方法を用いて、第3部材14の上面に、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)などの金属を付着させ、パターニングすることにより、形成される。ここで、パターニングは、例えば、フォトリソグラフィとエッチングなどの工程により行うことができ、従来のフローセンサのように、毛細管に抵抗線を巻き回したり、蒸着により付着した白金をレーザによりトリミングしたりする場合と比較して、微細なパターンを形成することができ、製造精度(工作精度)が高い。よって、パターニングにより検出部20を構成する第1ヒータ21および第2ヒータ22を形成することにより、検出精度の高い検出部20を容易に実現することができる。
【0042】
第1部材12と第2部材13との接合前に、第1部材12の下面において、第2部材13の上面に形成される第1ヒータ21および配線に対応する位置に、それぞれ座ぐりのような所定の深さの凹みを形成する。これにより、第1部材12と第2部材13とを接合したときに、第2部材13に設けられた第1ヒータ21および配線によって段差が生じて接合不良となるのを防止することができる。
【0043】
同様に、第1部材12と第2部材13との接合前に、第2部材13の下面において、第3部材14の上面に形成される第2ヒータ22および配線に対応する位置に、それぞれ座ぐりのような所定の深さの凹みを形成する。これにより、第2部材13と第3部材14とを接合したときに、第3部材14に設けられた第2ヒータ22および配線によって段差が生じて接合不良となるのを防止することができる。
【0044】
そして、図3に示す第2部材13の上面に、第1部材12の下面を載置して、第2部材13の上面と第1部材12の下面とを接合する。これにより、第2部材13の上面に設けられた第1ヒータ21は、第1部材12と第2部材13との間に配置される。ここで、第1部材12と第2部材13との間に第1ヒータ21を配置する工程とは、前述したように、第2部材13に第1ヒータ21を設け、第1ヒータ21が設けられた第2部材13と第1部材12とを接合することで実現可能であることから、従来のフローセンサのように、毛細管に抵抗線を巻き回したり、蒸着により付着した白金をレーザによりトリミングしたりする場合と比較して、検出部20を構成する第1ヒータ21を容易に設けることができる。また、第1ヒータ21は、第1部材12と第2部材13とによって覆われるので、外部に対して露出する(さらされる)ことがない。
【0045】
同様に、図4に示す第3部材14の上面に、第2部材13の下面を載置して、第3部材14の上面と第2部材13の下面とを接合する。これにより、第3部材14の上面に設けられた第2ヒータ22は、第2部材13と第3部材14との間に配置される。ここで、第2部材13と第3部材14との間に第2ヒータ22を配置する工程は、前述したように、第3部材14に第2ヒータ22を設け、第2ヒータ22が設けられた第3部材14と第2部材13とを接合することで実現可能であることから、従来のフローセンサのように、毛細管に抵抗線を巻き回したり、蒸着により付着した白金をレーザによりトリミングしたりする場合と比較して、検出部20を構成する第2ヒータ22を容易に設けることができる。また、第2ヒータ22は、第2部材13と第3部材14とによって覆われるので、外部に対して露出する(さらされる)ことがない。
【0046】
接合方法としては、例えば、拡散接合、アルゴン(Ar)などの不活性ガスを用いたイオンビームを接合する両面に照射して活性化してから接合する表面活性化接合(常温接合)、金や銀などのろう材を接合する両面に付けてから接合するろう付け、陽極接合などが挙げられる。また、接着剤を用いて接合してもよい。
【0047】
なお、本明細書における「接合」という用語は、物と物とをつなぎ合わせる広義の接合を意味し、ろう付けなどを含む概念である。
【0048】
流路11は、互いに接合された第1部材12、第2部材13、および第3部材14において、ドリルなどを用いた機械加工により、第1部材12の上面から第3部材14の下面まで貫通した孔を空けることで、形成される。なお、第1部材12、第2部材13、および第3部材14を接合した後に限定されず、接合前に、第1部材12、第2部材13、および第3部材14のそれぞれに、ドリルなどを用いた機械加工により孔を空けて形成してもよい。
【0049】
なお、流路11を形成した後に、流路11の内面に各種のフッ素樹脂をコーティングするようにしてもよい。
【0050】
第1部材12、第2部材13、および第3部材14の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、ステンレス鋼(SUS)、シリコン(Si)、シリコン(Si)に二酸化ケイ素(SiO2)をコーティングしたもの、アルミナセラミックス、サファイア、インコネル、アルミナ、アルミニウム合金、銅などが挙げられる。
【0051】
また、第1部材12、第2部材13、および第3部材14の材料は、所定の腐食性物質、例えば、SOx、NOx、Cl2、BCl3などを含有するガス(気体)や、硫酸や硝酸を含む薬液(液体)などに対して耐食性を有するものが好ましい。具体的には、腐食性物質がCl2、BCl3などの塩素(Cl)を含む場合、シリコン(Si)は、この腐食性物質に対して耐食性を有さない(耐食性が低い)ため、第1基板20および第2基板30の材料として用いるのは適切ではない。一方、腐食性物質が塩素(Cl)を含まないSOx、NOxなどである場合、シリコン(Si)はこの腐食性物質に対して耐食性を有する(耐食性が高い)ので、第1基板20および第2基板30の材料として好適に用いることができる。これにより、これにより、例えば、SOx、NOx、Cl2、BCl3などを含有するガス(気体)や、硫酸や硝酸を含む薬液(液体)などの所定の腐食性物質に対するフローセンサ1の耐食性を高めることができる。また、流体に対して露出している部分が耐食性を有するので、流体が所定の腐食性物質を含む場合に好適に用いることができる。
【0052】
特に、第1部材12、第2部材13、および第3部材14の材料としては、それぞれガラスまたはセラミックスが好ましい。なお、第1部材12、第2部材13、および第3部材14のそれぞれは、同一材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0053】
本実施形態では、検出部20が第1ヒータ21および第2ヒータ22を含み、流路保持体10が第1部材12、第2部材13、および第3部材14を含む例を示したが、これに限定されない。例えば、検出部20として、抵抗素子である1つのヒータを含むようにしてもよい。この場合、流路保持体10は2つの部材を含み、ヒータは一の部材と他の部材の間に配置される。また、検出部20として、それぞれが抵抗素子である1つのヒータおよび2つの温度センサを含み、ヒータによって生じた流体の温度差を2つの温度センサが検出するようにしてもよい。この場合、流路保持体10は4つの部材を含み、2つの温度センサがヒータの上流側(一方側)と下流側(他方側)とに配置されるように、例えば、第1部材と第2部材との間に上流側の温度センサが、第2部材と第3部材との間にヒータが、第3部材と第4部材との間に下流側の温度センサが、それぞれ配置される。
【0054】
このように、本実施形態におけるフローセンサ1によれば、流路保持体10が、それぞれが接合された第1部材12、第2部材13、および第3部材14を含み、当該第1部材12、第2部材13、および第3部材14のうち、第1部材12と第2部材13との間に検出部20を構成する第1ヒータ21が配置され、第2部材13と第3部材14との間に検出部20を構成する第2ヒータ22が配置される。ここで、第1部材12と第2部材13との間に第1ヒータ21を配置する工程とは、前述したように、第2部材13に第1ヒータ21を設け、第1ヒータ21が設けられた第2部材13と第1部材12とを接合することで実現可能であることから、従来のフローセンサのように、毛細管に抵抗線を巻き回したり、蒸着により付着した白金をレーザによりトリミングしたりする場合と比較して、検出部20を構成する第1ヒータ21を容易に設けることができる。また、第1ヒータ21は、第1部材12と第2部材13とによって覆われるので、外部に対して露出する(さらされる)ことがない。
【0055】
さらに、第2部材13と第3部材14との間に第2ヒータ22を配置する工程は、前述したように、第3部材14に第2ヒータ22を設け、第2ヒータ22が設けられた第3部材14と第2部材13とを接合することで実現可能であることから、従来のフローセンサのように、毛細管に抵抗線を巻き回したり、蒸着により付着した白金をレーザによりトリミングしたりする場合と比較して、検出部20を構成する第2ヒータ22を容易に設けることができる。また、第2ヒータ22は、第2部材13と第3部材14とによって覆われるので、外部に対して露出する(さらされる)ことがない。これにより、従来のフローセンサと比較して、容易に製造することができるともに、検出部20が外部から受ける影響を低減することができ、検出部20の経年劣化が少なくなり、検出される流体の速度(流速)の安定性を高めることができる。
【0056】
また、本実施形態におけるフローセンサ1によれば、検出部20を構成する第1ヒータ21が、第1部材12と第2部材13とのうちの一方にパターニングにより形成され、検出部20を構成する第2ヒータ22が、第2部材13と第3部材14とのうちの一方にパターニングにより形成される。ここで、パターニングは、例えば、フォトリソグラフィとエッチングなどの工程により行うことができ、従来のフローセンサのように、毛細管に抵抗線を巻き回したり、蒸着により付着した白金をレーザによりトリミングしたりする場合と比較して、微細なパターンを形成することができ、製造精度(工作精度)が高い。よって、パターニングにより検出部20を構成する第1ヒータ21および第2ヒータ22を形成することにより、検出精度の高い検出部20を容易に実現することができる。
【0057】
また、本実施形態におけるフローセンサ1によれば、検出部20が、流体を加熱して流体に温度差を生じさせるように構成された加熱ユニットを含む。これにより、流体の温度差から当該流体の速度(流速)を検出する熱式のフローセンサ1を容易に実現(構成)することができる。
【0058】
また、本実施形態におけるフローセンサ1によれば、第1ヒータ21が第1部材12と第2部材13との間に配置され、第2ヒータ22が第2部材13と第3部材14との間に配置される。これにより、第1ヒータ21は第2部材の一方側(図1において上側)に配置され、第2ヒータ22は第2部材13の他方側(図1において下側)に配置されるので、流体が、例えば、図1中にブロック矢印で示す方向に流通する場合に、第1ヒータ21を流路11の上流側に、第2ヒータ22を流路11の下流側に配置することが可能となる。これにより、流路11における上流側の流体と下流側の流体とをそれぞれ加熱することができ、流路11を流通する流体に容易に温度差を生じさせることができる。
【0059】
また、本実施形態におけるフローセンサ1によれば、第1ヒータ21および第2ヒータ22のそれぞれが、流路11の外周を囲むように形成された抵抗素子である。これにより、流路11を流通する流体をむらなく(均一に)加熱することができ、流路11を流通する流体に温度差を生じさせる加熱ユニットを、容易に実現(構成)することができる。
【0060】
また、本実施形態におけるフローセンサ1によれば、第1部材12、第2部材13、および第3部材14のそれぞれが、所定の腐食性物質に対して耐食性を有する。これにより、流体に対して露出している部分が耐食性を有するので、流体が、例えば、SOx、NOx、Cl2、BCl3などを含有するガス(気体)や、硫酸や硝酸を含む薬液(液体)などの所定の腐食性物質を含む場合に好適に用いることができる。
【0061】
<流量計および流量制御装置>
図5および図6は、本発明に係る流量計および流量制御装置の一実施形態を示すためのものである。図5は、本発明に係る流量計および流量制御装置の一例を説明する断面図である。図5に示すように、流量制御装置100は、分流式の流量計50と、流量計50の排出口64に接続された流路91と、流路91に接続され、流体の流量を調整する制御弁41を備える。
【0062】
流量計50は、主流路61と一対の分流孔65a,65bとが設けられた主流路保持体60と、一対の分流孔65a,65bを介して主流路61から分岐する分流路71が設けられた分流管70と、分流管70を覆うように主流路保持体60に設けられた流量計本体部80と、を備える。
【0063】
主流路保持体60の両端部(図5において左端部と右端部)には、注入口63および排出口64が設けられている。注入口63および排出口64のそれぞれには、ガスや液体などの流体を通す配管が挿入される。主流路保持体60の内部に設けられた主流路61は、注入口63から排出口64に貫通している。また、主流路61内には、フローエレメント62が設置されており、一対の分流孔65a,65bの間に配置される。フローエレメント62は、主流路61と分流路71との分流比を設定するためのものであり、例えば、微細な流路を有する薄板が積層されたものや、金属製の細管が束ねられたものである。
【0064】
流量計本体部80は、前述したフローセンサ1に電気的に接続される中央演算処理装置(以下、CPUという)81と、CPU81に電気的に接続される表示装置82および入力装置83と、を備える。
【0065】
CPU81は、主流路61を流れる流体の流量を算出する算出回路81aと、制御弁41を制御するコントローラ81bと、を備える。CPU81は、流量計本体部80の外部に設けられた制御弁41に電気的に接続されている。なお、図1に示すCPU81は模式的に描かれており、実際には、マイクロプロセッサ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、I/O回路(入出力インタフェース)などにより構成される。
【0066】
図6は、図1に示した分流管70の要部拡大断面図である。図6に示すように、分流管70の一部には、前述したフローセンサ1が挿入されており、フローセンサ1の流路11は、分流路71の一部をなしている。フローセンサ1は、第1ヒータ21が上流側(図6において左側)、第2ヒータ22が下流側(図6において右側)、になるように設置されている。フローセンサ1は、例えば、O(オー)リング72により分流路71に組み付けられ、固定される。このように配置されたフローセンサ1は、分流路71を流れる流体の速度(流速)を検出し、流速に応じた検出信号をCPU81に出力する。
【0067】
図1に示すCPU81の算出回路81aは、フローセンサ1から入力された検出信号と、メモリ(図示省略)などに記憶された分流比に関する情報および主流路61の断面積に関する情報と、に基づいて、主流路61を流れる流体の流量を算出する。
【0068】
表示装置82は、例えば、液晶ディスプレイなどであり、流量計本体部80の上部に設置される。表示装置82には、算出回路81aにより算出された流体の流量がCPU81から入力され、表示装置82は主流路71を流れる流体の流量を表示する。
【0069】
入力装置83には、主流路71に流すべき(流れるべき)流体の流量を示す設定流量に関する情報が、ユーザ(利用者)などの操作により入力される。入力装置83は、入力された設定流量に関する情報をCPU81に出力する。
【0070】
CPU81のコントローラ81bは、入力装置83から入力された設定流量に関する情報と、算出回路81aにより算出された流体の流量と、に基づいて、制御弁41の制御量を算出(演算)する。コントローラ81bは、算出された制御弁41の制御量に基づいて、制御弁41を駆動する制御信号を制御弁41に出力する。
【0071】
制御弁41は、例えば、ソレノイド弁である。制御弁41は、流路43および流路44と、流路43および流路44を連通する弁室45が設けられた弁座42と、弁室45に収納され、流路44を開閉する弁体46と、弁体46に連結された磁性体のプランジャ47と、通電されてプランジャ47を上下させるソレノイドコイル48と、を備える。
【0072】
制御弁41は、コントローラ81bから入力された制御信号に基づいて、ソレノイドコイル48を通電し、主流路61を流れる流体の流量を減少させ、または、増加させる。
【0073】
本実施形態では、コントローラ81bを流量計本体部80の内部にCPU81として設ける例を示したが、これに限定されない。例えば、制御弁41を制御するコントローラは、流量計本体部80および制御弁41と別の装置(別体)として設けるようにしてもよいし、制御弁41と一体化して設けるようにしてよい。
【0074】
また、本実施形態では、流量制御装置100として、流量計50と制御弁41とを別々に設ける例を示したが、これに限定されず、流量計50および制御弁41を一体化して設けるようにしてもよい。
【0075】
このように、本実施形態における流量計50によれば、流体の流量を測定する流量計50が前述したフローセンサ1を備える。これにより、従来の流量計と比較して、測定される流体の流量の安定性が高い流量計50を容易に実現することができる。
【0076】
また、本実施形態における流量制御装置100によれば、流体の流量を制御する流量制御装置100が前述したフローセンサ1を備える。これにより、従来の流量制御装置と比較して、制御される流体の流量の安定性が高い流量制御装置100を容易に実現することができる。
【0077】
なお、前述の実施形態の構成は、組み合わせたり或いは一部の構成部分を入れ替えたりしたりしてもよい。また、本発明の構成は前述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…フローセンサ
10…流路保持体
11…流路
12…第1部材
13…第2部材
14…第3部材
20…検出部
21…第1ヒータ(抵抗素子)
22…第2ヒータ(抵抗素子)
50…流量計
100…流量制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する流路が内部に設けられた流路保持体と、
前記流体の速度を検出するための検出部と、を備え、
前記保持体は、それぞれが接合された複数の部材を含み、
前記検出部は、前記複数の部材のうちの一の部材と他の部材との間に配置される
ことを特徴とするフローセンサ。
【請求項2】
前記検出部は、前記一の部材および前記他の部材のうちの一方の接合面に、パターニングにより形成される
ことを特徴とする請求項1に記載のフローセンサ。
【請求項3】
前記検出部は、前記流体を加熱して前記流体に温度差を生じさせるように構成された加熱ユニットを含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載のフローセンサ。
【請求項4】
前記流路保持体は、第1ないし第3の前記部材を含み、
前記加熱ユニットは、第1および第2のヒータを有し、
前記第1のヒータは前記第1の部材と前記第2の部材との間に配置され、前記第2のヒータは前記第2の部材と前記第3の部材との間に配置される
ことを特徴とする請求項3に記載のフローセンサ。
【請求項5】
前記第1のヒータおよび前記第2のヒータのそれぞれは、前記流路の外周を囲むように形成された抵抗体である
ことを特徴とする請求項4に記載のフローセンサ。
【請求項6】
前記複数の部材のそれぞれは、所定の腐食性物質に対して耐食性を有する
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のフローセンサ。
【請求項7】
流体の流量を測定する流量計であって、
請求項1ないし6のいずれかに記載のフローセンサを備える
ことを特徴とする流量計。
【請求項8】
流体の流量を制御する流量制御装置であって、
請求項1ないし6のいずれかに記載のフローセンサを備える
ことを特徴とする流量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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