説明

フロートガラスの製造方法および製造装置

【課題】徐冷炉においてガラスリボンの下面に疵防止用の保護被膜を形成するために吹き付けられた亜硫酸ガスを処理管理する。
【解決手段】フロートバスで成形されリフトアウト部で前記フロートバスから引き上げられたガラスリボンをガラスの歪点温度以下に徐冷する徐冷炉に搬送し、該徐冷炉の上流部に設けられるノズルから前記徐冷炉内を搬送中の前記ガラスリボンの下面に硫酸塩からなる疵防止用保護層を形成するための亜硫酸ガスを供給し、さらに前記ノズルが設けられている位置より下流の領域に排気チャンバーを設けて前記徐冷炉内の雰囲気を吸引することによって、前記ガラスリボンの周囲に前記亜硫酸ガスの気流を前記ガラスリボンの搬送方向に形成しながら前記排気チャンバーに誘引し、余剰の前記亜硫酸ガスを外部に排出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロートガラスの製造方法および製造装置に関し、特に徐冷炉において疵防止のための保護膜を形成するフロートガラスの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フロートガラスは、図4に示す如く溶融ガラスがフロートバス42の溶融スズ43上に供給されて所望の厚さと幅を有するリボン状ガラス44に成形される。成形されたリボン状ガラス44は、フロートバス42の出口からフロートバス42に隣接して設置されているリフトアウト部45のリフトアウトロール48によって引き上げられた後、徐冷炉46で徐冷および冷却されてガラスリボン(フロートガラス)41となる。そして、このガラスリボン41は、さらに冷却レア47で切断可能な室温まで冷却されて切断装置53によって所定のサイズに切断される。この間、ガラスリボン41を搬送ロール51でけん引および搬送することによって連続的に製造される。
【0003】
上記のフロートガラス製造工程において、上記搬送ロール51による疵の発生やその後の搬送時もしくは輸送時における疵の発生を防止するために、成形されたガラスリボン41の板面に亜硫酸ガス(SO)を吹き付けて硫酸塩の保護被膜を形成することが知られている。例えば、特許文献1には、図4に示すように徐冷炉46の上流領域に亜硫酸ガスを吹き付けるためのノズル54を設け、該ノズル54から徐冷炉46内を搬送ロール51で搬送中のガラスリボン41に亜硫酸ガスを吹き付けて保護被膜を形成することが記載されている。高温の徐冷炉46内でガラスリボン41に吹き付けられた亜硫酸ガスがガラスの構成成分等と反応して、硫酸ナトリウム等の硫酸塩の保護被膜がガラスリボン41の表面に形成される。この硫酸塩の保護被膜は、最終的に洗浄で除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第02/051767号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フロートガラス製造装置の徐冷炉内において硫酸塩の保護被膜を形成する場合、温度が高い徐冷炉の上流において亜硫酸ガスの吹き付けが行われる。特許文献1では徐冷炉の上流の仕切り壁で区画された領域内にノズルを設けて亜硫酸ガスを吹き付けることにより、該領域内の亜硫酸ガスの濃度を高めてガラスとの反応効率をよくし、保護被膜をガラスリボンの表面に効率的に形成している。しかし、亜硫酸ガスを仕切り壁で区画された領域内で吹き付けても余剰の亜硫酸ガスが徐冷炉内に広く流出し、この亜硫酸ガスは徐冷炉内に滞留したり、徐冷炉からさらに外部に漏洩する。
【0006】
このような徐冷炉内の余剰の亜硫酸ガスは、徐冷炉の構造物を腐食したり、搬送ロールの隙間から徐冷炉に隣接するリフトアウト部に流入してリフトアウト部の構造物を同様に腐食し大きな被害を与えるばかりでなく、腐食された構造物の錆や腐食物がガラスリボンの表面に落下したり、ロール表面に付着もしくは固着することによってガラスリボン面に異物付着や疵等の欠点を生じ、得られるフロートガラスの品質低下と歩留の低下を招いている。
【0007】
そのため、特許文献1では亜硫酸ガスをシールドレア(リフトアウト部)において吹き付け保護被膜を形成する場合に、亜硫酸ガスがシールドレアからフロートバスに流入しフロートバスの溶融スズを汚染するのを防ぐために、ノズルに隣接して吸引ノズルを設け、吹き付けられた亜硫酸ガスのうち、ガラスリボンの保護被膜形成に使用されない余剰の亜硫酸ガスを吸引して系外に排出することが記載されている。しかし、このような方法では徐冷炉内における上記問題を解消することは困難である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、ガラスリボンの板面に十分な厚さの保護被膜を確実に形成でき、かつ亜硫酸ガスの徐冷炉内から外部への漏洩および徐冷炉の構造物の腐食を軽減もしくは防止できるフロートガラスの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果により得られたもので、フロートバスで成形されリフトアウト部で前記フロートバスから引き上げられたガラスリボンをガラスの歪点温度以下に徐冷する徐冷炉に搬送し、該徐冷炉の上流部に設けられるノズルから前記徐冷炉内を搬送中の前記ガラスリボンの下面に硫酸塩からなる疵防止用保護層を形成するための亜硫酸ガスを供給し、さらに前記ノズルが設けられている位置より下流の領域に排気チャンバーを設けて前記徐冷炉内の雰囲気を吸引することによって、前記ガラスリボンの周囲に前記亜硫酸ガスの気流を前記ガラスリボンの搬送方向に形成しながら前記排気チャンバーに誘引し、余剰の前記亜硫酸ガスを外部に排出することを特徴とするフロートガラスの製造方法を提供する。
【0010】
また本発明は、フロートバスで成形されリフトアウト部で前記フロートバスから引き上げられたガラスリボンをガラスの歪点温度以下に徐冷する徐冷炉を有し、該徐冷炉の上流部に該徐冷炉内を搬送ロールで搬送中の前記ガラスリボンの下面に硫酸塩の保護膜を形成するための亜硫酸ガスを吹き付けるノズルが設けられており、前記ノズルが設けられている位置より下流の領域に、前記徐冷炉内の雰囲気を吸引する排気チャンバーが前記ガラスリボンの上方に設けられていることを特徴とするフロートガラス製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガラスリボンの周囲に亜硫酸ガスを含む雰囲気の気流がガラスリボンの搬送方向に形成されるので、この気流に担持された亜硫酸ガスによってもさらに保護被膜を形成できる。その結果、特にガラスリボンの下面に効率よく保護被膜が形成されるため、搬送ロールによる疵の発生を防止できる。さらに、亜硫酸ガスの徐冷炉内から外部への漏洩および徐冷炉の構造物の腐食などを軽減もしくは防止できる
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好ましい実施形態に係るフロートガラス製造装置の縦断面説明図。
【図2】図1のA−A部における平面図(半分のみ図示)。
【図3】本発明の他の好ましい実施形態に係るフロートガラス製造装置の徐冷炉の終端部の断面説明図。
【図4】従来のフロートガラス製造装置の断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態に係るフロートガラス製造装置の縦断面説明図、図2はそのA−A部における平面図である。図2には徐冷炉の半分だけを図示しているが、図示しない半分もこれと対称をなしており同じである。図示するようにフロートバス2の溶融スズ3上でリボン状ガラス4に成形されたガラスリボン1は、フロートバス2の出口のリフトアウト部5に設置されているリフトアウトロール8によって溶融スズ3から引き上げられ、リフトアウト部5に連続して設置されている徐冷炉6に移送される。リフトアウト部5内にはリフトアウトロール8がフロートバス2の溶融スズ面より高いレベルに配置されており、フロートバス2でリボン状ガラス4に成形されたガラスリボン1は、リフトアウトロール8によって引き上げられた後、囲い構造9を有するリフトアウト部5において安定した状態になるまで冷却され徐冷炉6に搬送される。
【0014】
徐冷炉6は、多くのガラス製品の製造において一般に使用されている徐冷炉と同様に囲い構造10を持つ温度調整可能な設備で、内部には複数本の搬送ロール11が並列して設置されている。これらの搬送ロール11は、駆動モーター(図示せず)によって一定速度で駆動され、リボン状のガラスリボン1を決められた一定速度で牽引もしくは搬送する。この場合、一部の搬送ロールは駆動モーターに駆動連結しないで回転自由にさせてもよい。この徐冷炉6は数十mの長さを有しており、囲い構造10を持つ徐冷炉6内は温度が上流部の高温(例えば、約600〜750℃)から下流部の終端温度(例えば、約200〜400℃)まで逓減する温度分布が得られるように温度管理されている。これにより、ガラスリボン1は徐冷炉6内を搬送ロール11で搬送される間に、ガラス内に望ましくない熱応力が残らないようにガラスの歪点温度以下の温度まで徐冷される。そして、通常は徐冷炉6の出口に達するときまでに、ガラスリボン1はガラスの歪点温度よりさらに低い温度になるまで冷却される。徐冷炉6の徐冷工程で冷却されたガラスリボン1は、前記したように徐冷炉6の出口においてまだ約200〜400℃の高温を有しているため、冷却レア7でさらに切断可能な温度まで冷却された後、切断装置13によって所定の大きさに切断される。冷却レア7は、徐冷されたガラスリボンを室温近くまで冷却できれば徐冷炉6のように囲い構造10を持つ温度調整可能な設備でなくてもよい。
【0015】
本発明は、図1に示すように徐冷炉6の上流部にガラスリボン1の下面に亜硫酸ガスを吹き付けるためのノズル14を設け、さらにノズル14が設けられている位置(亜硫酸ガス吹き付け位置)より下流の領域に排気チャンバー12を設けて徐冷炉6内の雰囲気を吸引することによって、上流部の亜硫酸ガスをガラスリボン1の周囲に亜硫酸ガスを含む雰囲気の気流としてガラスリボン1の搬送方向に形成して排気チャンバー12に誘引し、排気チャンバー12から外部に排出する。これにより、徐冷炉6の徐冷工程において上流部の高温状態にあるガラスリボン1の下面に亜硫酸ガスをノズル14で吹き付けて硫酸塩からなる疵防止用保護層(保護被膜)を形成し、搬送ロールによる疵の発生やその後の搬送時もしくは輸送時における疵の発生を防ぐ。
【0016】
本発明は、上記ノズル14を徐冷炉6の上流部に設けることにより、高温のガラスリボン1の下面に亜硫酸ガスを吹き付けし保護被膜を好ましく形成することができる。高温ほど亜硫酸ガスの硫酸塩からなる保護被膜がガラスリボン1の下面に形成されやすい。本発明において徐冷炉6の上流部は、このように高温に管理されている領域である。保護被膜形成に適するガラスリボン1の温度としては、ガラスの種類などにより若干異なることもあるが、500〜750℃が好ましく、600〜750℃がより好ましい。
【0017】
保護被膜の形成に使用されるガスとしては、亜硫酸ガスが好ましい。亜硫酸ガスはガラス中の化学成分と反応してガラスリボン1の板面に硫酸ナトリウム等の硫酸塩の被膜を形成し、該被膜は水洗浄によって容易に除去できる。亜硫酸ガスは通常は単独で使用されるが、必要に応じその他のガスを含有していてもよい。亜硫酸ガスを徐冷炉6の上流部においてガラスリボン1に吹き付ける場合、歪点以上の温度のガラスリボンを急激に冷却し徐冷処理が損なわれないようにするため、亜硫酸ガスは例えば400〜600℃程度に予熱されていることが好ましい。
【0018】
本発明は、ノズル14が設けられた位置より下流の領域に排気チャンバー12を設ける。図1は、排気チャンバー12を徐冷炉6の下流部に設けた例である。徐冷炉6の上流部においてノズル14からガラスリボン1に吹き付けられた亜硫酸ガスの多くは、ガラスリボン1のガラス成分と反応して硫酸塩の被膜をガラスリボン1の下面に形成するが、その残りの亜硫酸ガスは徐冷炉6の上流部の炉内の雰囲気に含有される。排気チャンバー12は、この上流部の炉内の亜硫酸ガスを含む雰囲気を下流方向に吸引することによって、ガラスリボン1の周囲に亜硫酸ガスを含む雰囲気の気流をガラスリボン1の搬送方向に形成し、徐冷炉6内に亜硫酸ガスの停滞状態が生じないようにするとともに、ガラスリボン1の周囲に形成される亜硫酸ガスを含む雰囲気の気流によっても保護被膜の形成を行い、さらに余剰の亜硫酸ガスを外部に排出する機能を有している。排気チャンバー12が徐冷炉6の終端(下流端)に設けられていると、亜硫酸ガスを含む雰囲気の気流が徐冷炉6の終端まで誘引され排気チャンバー12によって排出されるため、気流の一部が排気チャンバー12の背後(下流側)へ流動するのを回避できる。しかし、排気チャンバー12の設置位置は、ガス吹き付け位置より下流の領域であればよく、徐冷炉6の中流部または下流部でもよい。但し、保護皮膜形成に適するガラスリボン温度よりも低いガラス温度領域(500℃未満)に設置されることが好ましい。
【0019】
上記排気チャンバー12は、徐冷炉6内の亜硫酸ガスを含む雰囲気を効率よく吸引するために筒状構造27を有しており、該筒状構造27の上部に吸気した雰囲気を外部に排出するための排気ダクト15が設けられている。排気ダクト15は、排気チャンバー12に連通している。筒状構造27の形状は特定されないが、徐冷炉6内の雰囲気をできるだけ徐冷炉6の幅方向全体において均一に吸引するために、図2に示すように横断面形状が矩形状でその両サイドが、好ましくはガラスリボン幅以上、より好ましくは搬送ロール11の端部から外側に突出する大きさを有している。筒状構造27の幅aは徐冷炉6の主に炉内容量によって決められるが、その大きさとしては0.5〜4mが好ましい。aがこのような大きさを持っていれば、徐冷炉6内の雰囲気を徐冷操作に支障を与えることなく緩やかに吸引できる。aが小さすぎると圧力損失が生じ好ましくない。そして、徐冷炉6内の雰囲気をガラスリボン1に比較的近い位置において吸引し、亜硫酸ガスを含む雰囲気の気流をできるだけガラスリボン1の近傍に形成するために、筒状構造27の下端がガラスリボン1から所定の高さ(好ましくは10〜100mm、より好ましくは10〜50mm)になるように設定されることが好ましい。その際、筒状構造27の上流側の下端は下流側の下端より高いことが好ましく、特に20〜70mm高いことが好ましい。
【0020】
上記排気チャンバー12の排気は、排気ダクト15内に設けた排気ファン17を駆動モーター18で駆動させて行われる。排気ダクト15内にはダンパー16を設けて排気チャンバー12の排気量を調整することもできる。このように排気ダクト15内にダンパー16を設けた場合には、排気ファン17の回転数および/またはダンパー16の開度の制御によって、排気チャンバー12の排気量を調整することができる。排気チャンバー12の排気量をノズル14による亜硫酸ガスの吹き付け量などを勘案しながら調整する。
【0021】
図1に示す徐冷炉6では、上記したように排気チャンバー12を徐冷炉6の終端に設ける例として、排気チャンバー12を徐冷炉6の内部に設ける場合について説明したが、本発明において、排気チャンバー12は徐冷炉6の炉外に設置することができる。この方法は、図示はしないが徐冷炉6の終端である出口に隣接する冷却レア7に排気チャンバー12を設けるもので、具体的には囲い構造を有しない冷却レア7との間を区画している、徐冷炉6の終端部の囲い構造10の全部または下部を除いて排気チャンバー12を設置する。その結果、排気チャンバー12は、徐冷炉6の終端を形成して徐冷炉6の囲い構造10の一部を形成することになる。本発明において徐冷炉6の終端に排気チャンバー12を設けるとは、このように排気チャンバー12を徐冷炉6の出口部に隣接して冷却レアに設置する場合を含む。
【0022】
この方法によれば、徐冷炉6内の雰囲気全体が排気チャンバー12に誘引されて徐冷炉6の上流部から終端までの全域を流動し、ガラスリボン1の周囲に亜硫酸ガスを含有する気流を形成し、余剰の亜硫酸ガスは徐冷炉6の終端から排気される。したがって、排気チャンバー12を徐冷炉6内の中流部や下流部に設置する場合のように、亜硫酸ガスの一部が排気チャンバー12の背後に回って徐冷炉6内に残るおそれが実質的にない。また、この方法は囲い構造を有しない冷却レアを利用して排気チャンバー12を設置できるため、徐冷炉6の大きな改造を行わないで済む点でも優れている。
【0023】
図3は本発明の他の好ましい実施形態を示す。本例は、図示するように徐冷炉6の下流部に設けた排気チャンバー12より下流側に給気チャンバー19を設け、該給気チャンバー19から外気を排気チャンバー12の背後のガラスリボン1に向かって供給し、排気チャンバー12の背後に外部に対し正圧の雰囲気を形成する。ここで、排気チャンバー12の背後とは、ガラスリボン1の搬送方向における排気チャンバー12の後側を意味し、具体的には徐冷炉6に設置する排気チャンバー12の下流側(フロートバス2と反対の側)近傍の部位を指す。徐冷炉6に排気チャンバー12を設置した場合、排気チャンバー12の背後には一般に排気チャンバー12の吸引作用によって負圧状態が生じやすい。そのため、前記したように排気チャンバー12を徐冷炉6の終端に設けた場合には、徐冷炉6の出口部から外気と一緒に粉塵等が徐冷炉6内に流入し、ガラスリボン1の表面に付着するおそれがある。本例は、このような粉塵等の流入を給気チャンバー19によって防止するものである。
【0024】
すなわち、図3に示すように排気チャンバー12より下流側に給気チャンバー19を並設し、該給気チャンバー19から外気を排気チャンバー12の背後のガラスリボン1に向かって供給し、排気チャンバー12の背後を外部に対し正圧にする。この給気チャンバー19は、前記した排気チャンバー12と同様な筒状構造28を有しており、該筒状構造28の形状および設置の仕方も排気チャンバー12と基本的に同様で(但し筒状構造28の下流側の下端は上流側の下端より高いことが好ましく、特に20〜70mm高いことが好ましい)、筒状構造28の上部には給気用の給気ダクト20が設けられている。給気ダクト20は、給気チャンバー19に連通している。給気ダクト20内には、給気ファン21とダンパー22が設けられている。給気チャンバー19の給気は、給気ファン21を駆動モーター23で駆動させて行い、給気チャンバー19の給気量は、給気ファン21の回転数を制御することにより、および/またはダンパー22の開度を変えることにより調整できる。
【0025】
さらに、排気チャンバー12より下流側に(給気チャンバー19がある場合は排気チャンバー12と給気チャンバー19との間に)、徐冷炉6内を搬送中のガラスリボン1の上方および/または下方に、仕切り板26を設けると好ましい(図3ではガラスリボン上方の仕切り板は不図示)。排気効率または給気効率が上がるためである。
【0026】
仕切り板26をガラスリボン1の上方に設ける場合は、仕切り板26とガラスリボン1との間隔は10〜100mmさらには10〜50mmが好ましく、仕切り板26をガラスリボン1の下方に設ける場合は、仕切り板26とガラスリボン1との間隔または仕切り板先端と搬送ロール外周との間隔が10〜100mmさらには10〜50mmが好ましい。仕切り板26の幅は、排気チャンバー12の幅より広いことが好ましい。
【0027】
本例のように排気チャンバー12に給気チャンバー19を並設することにより、排気チャンバー12の背後(下流側)が給気チャンバー19の給気によって外部に対し1〜10Pa程度の正圧に保持されるため、排気チャンバー12に誘引された亜硫酸ガスの一部が排気チャンバー12の背後に流動するのを防止できる。特に、排気チャンバー12と給気チャンバー19が本例のように徐冷炉6の終端に設けられている場合には、亜硫酸ガスの一部が排気チャンバー12の背後に流動した後さらに徐冷炉6の終端部から冷却レア側に流出するのを防止できる。また、徐冷炉6の終端部または給気チャンバー19の背後部が外部に対し正圧になるため、外部から徐冷炉6内に粉塵等が流入するのを防止できる。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、徐冷炉6の少なくともガラスリボン1より上方の雰囲気に露呈する、排気チャンバー12および給気チャンバー19などの構造物は、耐酸性の不燃材で形成されていることが好ましい。耐酸性の弱い材料で形成されていると、亜硫酸ガスによって腐食され、その腐食物がガラスリボン上に落下したり、ロール表面に付着もしくは固着することによってガラスリボン面に異物付着や疵等の欠点を生じ、得られるフロートガラスの品質低下と歩留の低下を招くからである。この耐酸性の不燃材としては、ステンレス鋼、あるいはキャスター打設、セラミックライニング、テフロン(登録商標)加工などが挙げられる。
【0029】
また、徐冷炉6内、排気チャンバー12内、排気ダクト15内、および給気ダクト20内等が亜硫酸ガスの酸露点温度(100〜200℃)以下になっていると、徐冷炉6内においてガラスリボン1の下面に吹き付けられた亜硫酸ガスが、これらに触れたとき結露しさらに結露がガラスリボン上に落下しガラスリボンを汚染するため、徐冷炉6内、排気チャンバー12内、給気チャンバー19内、排気ダクト15内、および給気ダクト20は、亜硫酸ガスの酸露点より高い温度に保持することが好ましい。
【0030】
なお、排気チャンバー12に連通する排気ダクト15の先に、該排気ダクト15に連通して、亜硫酸ガスを排ガス処理するためのスクラバーが設けられていると好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、フロートガラス製造装置の徐冷炉の高温域において亜硫酸ガスをフロートガラスに吹き付けその硫酸塩で疵防止用の保護被膜を形成するフロート法に好適する。
【符号の説明】
【0032】
1:ガラスリボン
2:フロートバス
3:溶融スズ
4:リボン状ガラス
5:リフトアウト部
6:徐冷炉
7:冷却レア
8:リフトアウトロール
9:囲い構造
10:囲い構造
11:搬送ロール
12:排気チャンバー
13:切断装置
14:ノズル
15:排気ダクト
16:ダンパー
17:排気ファン
18:駆動モーター
19:給気チャンバー
20:給気ダクト
21:給気ファン
22:ダンパー
23:駆動モーター
26:仕切り板
27:筒状構造
28:筒状構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロートバスで成形されリフトアウト部で前記フロートバスから引き上げられたガラスリボンをガラスの歪点温度以下に徐冷する徐冷炉に搬送し、該徐冷炉の上流部に設けられるノズルから前記徐冷炉内を搬送中の前記ガラスリボンの下面に硫酸塩からなる疵防止用保護層を形成するための亜硫酸ガスを供給し、さらに前記ノズルが設けられている位置より下流の領域に排気チャンバーを設けて前記徐冷炉内の雰囲気を吸引することによって、前記ガラスリボンの周囲に前記亜硫酸ガスの気流を前記ガラスリボンの搬送方向に形成しながら前記排気チャンバーに誘引し、余剰の前記亜硫酸ガスを外部に排出することを特徴とするフロートガラスの製造方法。
【請求項2】
前記排気チャンバーより下流側に給気チャンバーを設け、該給気チャンバーから前記ガラスリボンに向かって外気を供給することによって、前記排気チャンバーの背後に外部に対し正圧の雰囲気を形成する請求項1に記載のフロートガラスの製造方法。
【請求項3】
前記排気チャンバーに連通する排気ダクト内に設けた排気ファンの回転数および/または前記排気ダクト内に設けたダンパーの開度を制御して排気量を調節する請求項1または2に記載のフロートガラスの製造方法。
【請求項4】
前記給気チャンバーに連通する給気ダクト内に設けた給気ファンの回転数および/または前記給気ダクト内に設けたダンパーの開度を制御して給気量を調節する請求項2に記載のフロートガラスの製造方法。
【請求項5】
前記徐冷炉内、前記排気チャンバー内を、前記亜硫酸ガスの酸露点以上の温度に保持する請求項1〜4のいずれかに記載のフロートガラスの製造方法。
【請求項6】
フロートバスで成形されリフトアウト部で前記フロートバスから引き上げられたガラスリボンをガラスの歪点温度以下に徐冷する徐冷炉を有し、該徐冷炉の上流部に該徐冷炉内を搬送ロールで搬送中の前記ガラスリボンの下面に硫酸塩の保護膜を形成するための亜硫酸ガスを吹き付けるノズルが設けられており、前記ノズルが設けられている位置より下流の領域に、前記徐冷炉内の雰囲気を吸引する排気チャンバーが前記ガラスリボンの上方に設けられていることを特徴とするフロートガラス製造装置。
【請求項7】
前記排気チャンバーより下流側に、前記ガラスリボンに向かって外気を供給し前記排気チャンバーの背後に外部に対し正圧の雰囲気を形成するための給気チャンバーが設けられている請求項6に記載のフロートガラス製造装置。
【請求項8】
前記排気チャンバーより下流側に、前記徐冷炉内を搬送中の前記ガラスリボンの上方および/または下方に、仕切り板が設けられる請求項6または7に記載のフロートガラス製造装置。
【請求項9】
前記徐冷炉内を搬送中の前記ガラスリボンより上方の雰囲気に露呈する構造物が耐酸性の不燃材で形成されている請求項6〜8のいずれかに記載のフロートガラス製造装置。
【請求項10】
前記排気チャンバーに連通する排気ダクトの先に、該排気ダクトに連通して、前記亜硫酸ガスを排ガス処理するためのスクラバーが設けられる請求項6〜9のいずれかに記載のフロートガラス製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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