説明

フローリングの施工方法

【課題】両面粘着テープの持つ利点を生かしながら、低コストでかつ少ない作業量で床材を床下地に位置決めしながら直貼りする。
【解決手段】矩形の床材1を床下地20に直貼りしてフローリングとするときの施工方法であって、床材1の短辺に平行に両面粘着テープ10を貼り合わせた床材を施工現場に搬入する。施工現場において、両面粘着テープ10の粘着剤層11に貼られている離型紙12を剥がすとともに、床材1の裏面に接着剤13を塗布する。それを床下地20の上に置いて滑らせながら所定位置への位置決めを行い、位置決め後に床材1を上から床下地20に押し付けて両面粘着テープ10の粘着剤11が持つ粘着力により床材1を床下地20に仮固定する。その後、裏面に塗布した接着剤13の硬化により、床材1の本固定がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフローリングの施工方法に関し、特に、矩形の床材を床下地に直貼りしてフローリングとするときの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
300mm×1800mmのような矩形床材の多数枚を、床下地に接着剤を用いて順次直貼りしてフローリングとすることは知られている。通常、接着剤にはエポキシ系樹脂や架橋型酢酸ビニル系樹脂等の接着剤が用いられ、床下地面あるいは床材裏面に接着剤を塗布した後、床下地の上に床材が置かれる。接着剤が硬化する前、すなわち、十分な接着力が出る前に、床材を床下地の上で滑らせながら所定位置への位置決めを行い、床材4周に形成した実部分を利用して釘打ちを行いその位置に仮固定し、接着剤が硬化するのを待つ。釘打ちによる仮固定を省略すると、接着剤が硬化する前に、位置ずれを起こすので好ましくない。
【0003】
接着力が強くかつ早期に硬化する溶剤型接着剤を用いる場合には、釘打ち等の仮止め作業を省略できる場合があるが、有害物質が揮発する恐れがあるとともに、精緻に位置決めすることが困難となる。
【0004】
接着剤を用いずに、両面粘着テープを用いて床材を床下地に固定していくフローリングの施工方法が提案されている(特許文献1,2等参照)。両面粘着テープには、発泡ポリエチレン等のテープ基材の両面にアクリル系粘着剤からなる粘着剤層を設けたもの等が好適に用いられる。
【0005】
【特許文献1】特開平11−141108号公報
【特許文献2】特開2000−129893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
両面粘着テープを用いて床材を床下地に固定していくフローリングの施工方法では、離型紙を剥がした状態の床材を床下地面の上で滑らせることができるので、床材の位置決めが容易であり、位置決め後に上から押し付けることで、両面粘着テープの粘着力により所要位置に床材を固定することができる利点がある。しかし、両面粘着テープの持つ粘着力のみで、床材を床下地面に本固定するのに必要な接着力を得るには、床材裏面の相当多くの面積に両面粘着テープを貼り付けておく必要があり、コストの高騰を招くとともに、施工現場で離型紙を剥がす作業、剥がした離型紙を廃棄処理する作業等に多くの労力を必要とする。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、両面粘着テープの持つ利点を生かしながら、低コストでかつ少ない作業量で床材を床下地に直貼りして行くことのできる、改良されたフローリングの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、矩形の床材を床下地に直貼りしてフローリングとするときの施工方法であって、裏面の一部に両面粘着テープを貼り合わせた床材を施工現場に搬入し、施工現場において、両面粘着テープの粘着剤層に貼られている離型紙を剥がすとともに、床材の裏面に接着剤を塗布し、それを床下地の上に置いて滑らせながら所定位置への位置決めを行い、位置決め後に床材を上から床下地に押し付けて両面粘着テープの粘着剤が持つ粘着力により床材を床下地に仮固定することを、複数の床材について順次行っていくことを特徴とする。
【0009】
上記の施工方法では、床材の床下地への仮固定は両面粘着テープの持つ粘着力で行い、本固定は床材裏面に塗布した接着剤で行うようにしている。そのために、裏面の一部に貼り付ける両面粘着テープの面積は仮固定に必要な面積であればよく、その使用量はごく僅かで済む。そのために両面粘着テープに係るコストが低減するとともに、離型紙を剥がす作業や剥がした離型紙を廃棄処分する作業も少なくなり、作業の効率化が図られる。
【0010】
両面粘着テープから離型紙を剥がした状態では、床材は床下地上を滑ることができるので、床材の位置決めは確実に行うことができる。位置決め後、上から押し付けることで、両面粘着テープの持つ粘着力が有効に発揮し、床材は床下地に仮固定された状態となる。その状態で、同様にして、次の床材の床下地への配置、位置決め、および仮固定を、順次行っていく。床材は順次仮固定されていくので、施工の途中で位置ずれが生じることはない。すべての床材を仮固定状態として、床材の裏面に塗布した接着剤の硬化を待つ。それにより、所望のフローリング施工が終了する。
【0011】
前記したように、裏面に貼り付ける両面粘着テープの面積は仮固定に必要な粘着力が得られる面積であればよく、その貼り付け位置や面積に特に制限はないが、より少ない粘着力で効果的な仮固定力が得られることから、矩形床材の短辺方向に平行に貼り付けることは有効であり、長辺方向の両端近傍の2箇所において、短辺方向に平行に貼り付けることは特に有効である。
【0012】
使用する両面粘着テープは従来知られたものでよく、例えば、発泡ポリエチレンのテープ基材の両面にアクリル系粘着剤である粘着剤層を持つものが挙げられる。テープ基材としては、他に、発泡ポリウレタン系テープ基材、発泡ポリプロピレン系テープ基材等が挙げられる。
【0013】
使用する矩形の床材も、従来知られたものをそのまま用いることができる。例えば、基材としての合板や木質繊維板の表面側に突き板のような適宜の表面化粧材を積層したものが挙げられる。基材の裏面側に床下地の不陸に対応するための多数の凹溝を形成したものであってもよい。基材の裏面に緩衝材を積層して遮音性能を向上させた床材であってもよい。この形態の床材では、積層した緩衝材の裏面の適所に両面粘着テープが貼り合わされる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、両面粘着テープの持つ利点を生かしながら、低コストでかつ少ない作業量で床材を床下地に位置決めしながら直貼りして行くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は本発明によるフローリングの施工方法で用いる矩形床材の一例の裏面図、図2はその側面図であり、図3は床材から離型紙を除去する状態を示している。図4a,bは、床材を床下地に貼り付けるときの作業手順を示している。
【0016】
図示の例において、床材1は矩形状であり、全長は約1800mm程度、幅は約300mm程度、厚さは約12mm程度である。床材1は木質部分2と緩衝材3とで構成され、この例で、木質部分2は厚さ約9mm程度の合板であるが、MDF等の木質繊維板であってもよい。木質部分2の表面側には突き板のような表面化粧材4が積層され、裏面側に厚さ約3mm程度の緩衝材3が積層されている。緩衝材3には軟質発泡オレフィン系シートや合成樹脂系不織布シートのような材料が用いられる。木質部分2の周囲には実加工5が施されている。
【0017】
床材1の長手方向両端部近傍には、短辺6,6に平行に両面粘着テープ10が貼り合わされている。両面粘着テープ10は、幅が10〜30mm程度のものであり、例えばテープ基材である発泡ポリウレタンシートの両面にアリクル系粘着剤による粘着剤層11が形成されている。一方の粘着剤層は床材1(木質部分2)の裏面に積層された緩衝材3の裏面に粘着しており、他方の粘着剤層11には離型紙12が貼り付けられている。
【0018】
この状態の床材1が施工現場に搬入される。フローリング施工を行う作業者は、図3に示すように、床材1から、両面粘着テープ10の粘着剤層11に貼り付けられている離型紙12を除去するとともに、床材1の裏面(この場合には、緩衝材3の裏面)にエポキシ系樹脂接着剤やゴムラテックス系樹脂接着剤のような接着剤13を塗布する。接着剤13の塗布は、両面粘着テープ10の場所を除いた床材裏面の全部に行ってもよく、必要な接着力が得られる場合には、裏面の一部にのみ行ってもよい。
【0019】
離型紙12を除去し、裏面に接着剤13を塗布した床材1を作業者は床下地20の上の適所に置く。床材1を単に置いた状態では両面粘着テープ10の粘着剤層11は粘着力を発揮せず、また、置いた時点では接着剤13は未硬化であり、床材1は床下地20の上で滑りながら移動することができる。それで、作業者は、図4aに示すように床材1を床下地20の上で滑らせながら移動させ、図4bに示すように既に固定してある床材1aとの間で正確に実接合した位置に、床材1を位置決めする。
【0020】
位置決め後に、作業者は上から床材1を床下地20に向けて押し付ける。その押し付けにより、両面粘着テープ10の粘着剤層11は床下地20に対して粘着力を発揮するようになり、床材1はその位置に仮固定される。以下、他の床材1に対しても、同じように作業を行う。前に配置した床材1は、両面粘着テープ10の粘着剤層11の粘着力により仮固定されているので、後からの床材を仮固定していく過程で、前に配置した床材1,1aに位置ずれが生じることはない。すべての床材1を仮固定した後、所要時間放置することにより、床材1の裏面に塗布した接着剤13の硬化が進行し、床材1は床下地に本固定される。
【0021】
上記のように、本発明によるフローリングの施工方法では、床材1の裏面に貼り合わせる両面粘着テープ10は床材の仮固定のみの目的で使用されるものであり、その使用量はごく僅かで済む。そのために両面粘着テープ10に係るコストが低減するとともに、離型紙12を剥がす作業や剥がした離型紙12を廃棄処分する作業も少なくなり、作業の効率化が図られる。床材1の床下地20への本固定は、床材1の裏面に塗布した接着剤13の接着力によっており、強固な本固定が得られる。また、塗布した接着剤13が硬化するまでにある程度の時間があるので、床材1の床下地上での位置決めも容易かつ確実に行うことができる。
【0022】
なお、本発明において、対象となる床下地の仕様は任意であり、コンクリートスラブの上に12mm厚程度の合板を貼り付けたもの、根太組みの上にパーチクルボードを配置したもの、モルタル下地で仕上げたもの、等を例として挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるフローリングの施工方法で用いる矩形床材の一例の裏面図。
【図2】図1に示す床材の側面図。
【図3】床材から離型紙を除去する状態を示す図。
【図4】図4a,bは、床材を床下地に貼り付けるときの作業手順を示す図。
【符号の説明】
【0024】
1…床材、2…木質部分、3…緩衝材、4…表面化粧材、5…実加工部、6…床材の短辺、10…両面粘着テープ、11…粘着剤層、12…離型紙、13…接着剤、20…床下地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の床材を床下地に直貼りしてフローリングとするときの施工方法であって、裏面の一部に両面粘着テープを貼り合わせた床材を施工現場に搬入し、施工現場において、両面粘着テープの粘着剤層に貼られている離型紙を剥がすとともに、床材の裏面に接着剤を塗布し、それを床下地の上に置いて滑らせながら所定位置への位置決めを行い、位置決め後に床材を上から床下地に押し付けて両面粘着テープの粘着剤が持つ粘着力により床材を床下地に仮固定することを、複数の床材について順次行っていくことを特徴とするフローリングの施工方法。
【請求項2】
両面粘着テープとしてアクリル系粘着剤である粘着剤層を持つ両面粘着テープを用いることを特徴とする請求項1に記載のフローリングの施工方法。
【請求項3】
床材として裏面に緩衝材を有する床材を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のフローリングの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−81947(P2008−81947A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260414(P2006−260414)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】