説明

ブッシング及びブッシングの接続部

【課題】ブッシング同士の接続部分において好適な電界緩和を行うこと。
【解決手段】ブッシング100は、内部導体110と、内部導体110の外周を覆う硬質の絶縁体120とを有し、硬質の絶縁体120と機器側ブッシング200の硬質の絶縁体220との接合面に配設された弾性絶縁スペーサ30を貫通して、内部導体110が機器側ブッシング200の内部導体210に接続される。硬質の絶縁体120内には、接合面の近傍に配置され、且つ、内部導体110を囲む環状の電界緩和用金具130が埋設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力機器のブッシング(相手側ブッシング)に弾性絶縁スペーサを介して接続するブッシング及びブッシングの接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、ガス絶縁開閉装置(Gas Insulated Switchgear:GIS)のような密閉型の高電圧機器と、ケーブル線路とを接続する部分には、ケーブル線路を構成する電力ケーブルの端末を受けいれるブッシングが設けられている。
【0003】
GISは、発電所や変電所に設置される遮断器や断路器、及びこれらをつないでいる電路等を収容した密閉金属製容器内に、絶縁性能・消弧性能に優れ無害で不活性な六フッ化硫黄(SF)ガスを充填することにより構成されている。
【0004】
近年、開閉装置として、SFガスに変えてエポキシ等の固体絶縁で構成した固体絶縁開閉装置(Solid Insulated Switchgear:SIS)が知られている。
【0005】
SISは、遮断器や断路器、及び電路等を、外表面に接地層を備えるエポキシモールド等の固体絶縁によって絶縁することにより構成されている。
【0006】
このSISでは、遮断器や断路器及び電路等に接続される内部導体をエポキシ等の硬質の絶縁体で被覆してなる機器側ブッシングを備える。
【0007】
図1は、従来の開閉装置におけるブッシング同士の接続構造を示す部分断面図である。ここでは、機器側ブッシングに、母線を接続するための母線側ブッシングを接続した接続構造を示す。
【0008】
図1に示す接続構造では、機器側ブッシング10は、内部導体11を覆うエポキシ等の硬質の絶縁体12に漏斗状の受容口12aと本体部12bとを有する。一方、母線側ブッシング20は、母線に接続するための内部導体21を覆うエポキシ等の硬質の絶縁体22に、機器側ブッシング10の受容口12aに装着される円錐状の挿入部22aを有する。ブッシング10、20の外周には導電塗料による遮蔽層が設けられている。
【0009】
これら機器側ブッシング10と母線側ブッシング20とは、工場において、受容口12aと挿入部22aとの間に絶縁ゴムなどの弾性を有する絶縁成型品(以下、「弾性絶縁スペーサ」という)30を介在させて、受容口12aに挿入部22aを挿入し、一体に組み合わせる。この弾性絶縁スペーサ30は、機器側ブッシング10の受容口12aとの界面と母線側ブッシング20の挿入部22aとの界面の絶縁特性を維持する(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
この接続構造では、内部導体21の周囲に配置される弾性絶縁スペーサ30の外縁部と、機器側ブッシング10或いは母線側ブッシング20の硬質の絶縁体(ここではエポキシ)と、外部の空気とが接するトリプルジャンクション(三重接合点)Pが形成される。
【0011】
このように機器側ブッシング10と母線側ブッシング20の接続部分においてトリプルジャンクションが形成されると、トリプルジャンクションに電界が入り込むことによって、部分放電を発生させる可能性がある。部分放電の発生は、ブッシング10、20の接続部分自体の絶縁破壊を招く虞がある。このため、従来の母線側ブッシング20では、内部導体21を覆う硬質の絶縁体22において挿入部22aを構成する部位の外径を本体部22bの外径よりも大きくすることによってくびれ部22cが形成されている。
【0012】
図2は、図1に示すブッシング同士の接続部分の等電位線を示す図であり、くびれ部20cを有する母線側ブッシングを用いたブッシング同士の接続部分の等電位線を示している。なお、図2は、ブッシング同士の接続部分の半断面を模式的に示しており、内部導体11、21の軸心を軸心Sで示すとともに、等電位線Eを用いて、ブッシング10と20同士が接続された状態で課電時に発生する電界分布を示している。
【0013】
図2に示すように、くびれ部を有する母線側ブッシングを用いたブッシング同士の接続部分は、ケーブル側ブッシング20にくびれ部22cを設けることによって、範囲aで示すように、電気的な弱点部となるトリプルジャンクションPに電界が入り込むことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−16881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、図1及び図2においては、機器側ブッシング10に母線側ブッシング20を接続する場合について説明したが、機器側ブッシング10にケーブル線路を接続する際にもブッシングを用いて機器側ブッシング10に接続される。
【0016】
この構成では、電力ケーブルに接続するための内部導体をエポキシ等の硬質の絶縁体で被覆してなるブッシング(以下、「ケーブル側ブッシング」と称する)を機器側ブッシング10に接続することによって、電力ケーブルの線路と機器側ブッシング10とが接続される。
【0017】
図1及び図2の母線側ブッシング20の場合、ブッシングの小型化、材料費の削減の観点から、本体部22bの外径は、ブッシング同士の接続部の外径よりもくびれ部22cを介して小さくすることにより、必要最小限の絶縁厚としている。
【0018】
これに対し、ケーブル側ブッシングを機器側ブッシング10に接続する場合には、ストレスコーンおよびストレスコーン押圧装置等による接続方法(インナーコーンタイプ)、あるいは、シリコーンゴム等からなるゴムユニット等をブッシングの外周に取り付けることによる接続方法(アウターコーンタイプ)のいずれかの周知の接続方法によって電力ケーブルの端末をケーブル側ブッシングに接続する必要がある。これにより、ケーブル側ブッシングには、内部にストレスコーンおよびストレスコーン押圧装置が配置されたり、ケーブル導体が配置されたりするため、ケーブル側ブッシング自体の外径は大きくせざるを得ない。
【0019】
すなわち、機器側ブッシング10にケーブル側ブッシングを接続する場合、図2の母線側ブッシング20のように、ケーブル側ブッシングにくびれ部22cを設けることができない。図3は、このように、くびれ部の無い構成のケーブル側ブッシング25を機器側ブッシング10に接続した場合の等電位線を示す図である。なお、図3は、ブッシング同士の接続部分の半断面を模式的に示しており、内部導体11、21の軸心を軸心Sで示している。また、図3では、等電位線Eを用いて、ブッシング10と25同士が接続された状態で課電時に発生する電界分布を示している。
【0020】
図3に示すくびれ部の無いケーブル側ブッシングを用いたブッシング同士の接続部分では、図2に示す構造と異なり、トリプルジャンクションP近傍の範囲bに電界が入り込むことにより、課電時に部分放電が生じ、ひいては接続部の絶縁破壊を招く虞があった。
【0021】
このように電力ケーブルの接続部を構成するためのブッシングで、くびれ部を設けることができないケーブル側ブッシング、あるいは、設けることができたとしてもトリプルジャンクション近傍Pに電界が入り込んでしまう構造のケーブル側ブッシングにおいては、電界の入り込みを防止するため、硬質の絶縁体の絶縁厚を大きくすることが考えられる。
【0022】
しかしながら、ケーブル側ブッシングにおいて硬質の絶縁体の絶縁厚を大きくすることは、近年の機器の小型化、材料費等のコスト削減の観点から、ブッシング自体が大型化するため、現実的な対策ではない。また、電力ケーブルの接続部を構成するブッシング、すなわちケーブル側ブッシングでない場合であっても、くびれ部を設けることができない制約がある場合には、同様の課題が生じる。
【0023】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ブッシング同士の接続部分において好適な電界緩和を行うことができるブッシング及びブッシングの接続部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明のブッシングは、弾性絶縁スペーサを介して相手側ブッシングに接続するブッシングであって、一端が前記弾性絶縁スペーサを貫通して前記相手側ブッシングの内部導体に接続される内部導体と、前記内部導体の外周を覆い一端に前記相手側ブッシングと接合する際の挿入部として前記弾性絶縁スペーサに密着するための端面を備えた硬質の絶縁体と、前記内部導体と同心状に配置され、且つ、前記硬質の絶縁体内において、前記端面の近傍に埋設される電界緩和用の環状金具と、前記硬質の絶縁体の外面に塗布される導電塗料による遮蔽層とを備える構成を採る。
【0025】
本発明のブッシングの接続部は、上記構成のブッシングが弾性絶縁スペーサを介して相手側ブッシングに接続されるブッシングの接続部であって、前記ブッシングの挿入部は、端面で密着する前記弾性絶縁スペーサを介して前記相手側ブッシングに接合され、前記ブッシングの内部導体は、前記弾性絶縁スペーサを貫通して前記相手側ブッシングの内部導体に接続されている構成を採る。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ブッシング同士の接続部分において好適な電界緩和を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の機器側ブッシングと母線側ブッシングとの接続構造を示す部分断面図
【図2】図1に示すブッシング同士の接続部分の等電位線を示す図
【図3】くびれ部の無い構成のケーブル側ブッシングを機器側ブッシングに接続した場合の等電位線を示す図
【図4】本発明の一実施の形態に係るブッシングの要部構成を説明するためのブッシング同士の接続部分を示す部分断面図
【図5】本発明の一実施の形態に係るブッシングが相手側ブッシングに接続される前の状態を示す部分断面図
【図6】本発明の一実施の形態に係るブッシングの挿入部の正面図
【図7】電界緩和用の環状金具を有する固定金具を示す図
【図8】図4に示すブッシング同士の接続部分において課電した際の等電位線を示す図
【図9】本発明の一実施の形態に係るブッシングを用いたブッシング同士の接続構造の変形を示す模式図
【図10】本発明の一実施の形態に係るブッシングを用いたブッシング同士の接続構造の変形を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図4は、本発明の一実施の形態に係るブッシングの要部構成を説明するためのブッシング同士の接続部分を示す部分断面図である。
【0030】
図4に示すように、固体絶縁開閉装置(Solid Insulated Switchgear:SIS)等の電力機器(図示省略)に設けられた機器側ブッシング200に、シリコーンゴム等の弾性絶縁スペーサ30を介して他端に電力ケーブルの端末を接続するための周知の接続部(図示省略)を有するブッシング100が接続されている。
【0031】
周知の接続部とは、前述の通り、絶縁ゴムと半導電ゴムからなるストレスコーンおよびストレスコーン押圧装置等による接続方法(インナーコーンタイプ)、あるいは、シリコーンゴム等からなるゴムユニット等をブッシングの外周に取り付けることによる接続方法(アウターコーンタイプ)のいずれかの周知の接続方法を行うための接続部である。なお、インナーコーンタイプは、例えば、特開2003−304632号公報(ブッシングは絶縁筒に相当)、特開平11−308751号公報(ブッシングはエポキシユニット部に相当、ストレスコーンはゴムモールド部に相当)に開示されている。また、アウターコーンタイプは、例えば、特開2007−174810号公報(ブッシングはエポキシ座に相当)、特開2005−354880号公報(ブッシングは套管部に相当、ゴムユニットは絶縁補強ブロックに相当)に開示されている。
【0032】
図5は、本発明の一実施の形態に係るブッシングが相手側ブッシング(機器側ブッシング)に接続される前の状態を示す部分断面図である。
【0033】
図4及び図5に示すように、相手側ブッシングである機器側ブッシング200は、機器内の電路に接続された内部導体210と、内部導体210を被覆する硬質の絶縁体220とを有する。
【0034】
硬質の絶縁体220は、絶縁性を有し、機械的強度の高い材料、例えば、エポキシで内部導体210の外周にモールド成形することで硬質のものとして形成されている。
【0035】
硬質の絶縁体220は、一端部で開口する漏斗状の受容口221を有し、この受容口221には、環状の弾性絶縁スペーサ30を介してブッシング100の一端部である円錐状の挿入部121が挿入される。
【0036】
硬質の絶縁体220における受容口221の小径部側には、内部導体210の凹部211が配置され、凹部211内に接続子215が配設されている。接続子215は、受容口221にブッシング100の挿入部121が挿入された際に、弾性絶縁スペーサ30を貫通するブッシング100の内部導体110の先端部110aに嵌合して、内部導体210に内部導体110を電気的に接続する(図4参照)。ここでは、接続子215は、内部導体210における凹部211の内周面に嵌め込まれたマルチラムバンド(ばね状導電部材)であり、凹部211に嵌合する内部導体110の先端部110aの外面に弾性的に接触することによって、内部導体110に電気的に接続される。なお、接続子215は、コイルスプリングでもよい。
【0037】
また、接続子215は、ここでは、機器側ブッシング200側に設けた構成としたが、内部導体110側に設けて、内部導体110を内部導体210に電気的に接続する構成としても良い。具体的には、マルチラムバンドを、内部導体110の先端部110aの外周に嵌め込み(図示省略)、受容口221にブッシング100の挿入部121を挿入した際に、内部導体210の凹部211の内周面に接触する構成とする。この場合、内部導体210側に凹部211は設けられていない。なお、硬質の絶縁体220の外面には、銀ペイント等の導電塗料を塗布することによって遮蔽層が形成されている。この遮蔽層は接地電位となる。
【0038】
硬質の絶縁体220の受容口221には、弾性絶縁スペーサ30を介してブッシング100の挿入部121が挿入されている。
【0039】
弾性絶縁スペーサ30は、硬質の絶縁体220よりも弾性率の大きい円錐筒状をなし、ここでは、シリコーンゴム等のゴム状弾性体により形成されている。弾性絶縁スペーサ30は、その表裏面を、受容口221の内周面及び挿入部121の嵌合面(後述する端面121a)の双方に密着させた状態で、ブッシング100、200の間に設けられ、各ブッシング100、200との間の界面の耐電圧特性を向上させている。
【0040】
本発明のブッシング100は、内部導体110と、内部導体110の外周を被覆する硬質の絶縁体120と、電界緩和用の環状金具130と、を有する。
【0041】
内部導体110は、一端に機器側ブッシング200の内部導体210と接続するための先端部110aを有し、他端に電力ケーブルを接続するための接続部(図示省略)を有する。ここでは、先端部110aは硬質の絶縁体120から突出した構造(凸構造)となっており、機器側ブッシング200の内部導体210の凹部に接続するように形成されているが、凹凸を逆に構成してもよい。すなわち、機器側ブッシング200の内部導体210側を凸構造とし、本発明のブッシング100の内部導体110側を凹構造としてもよい。
【0042】
硬質の絶縁体120は、機器側ブッシング200の硬質の絶縁体220と同様に、絶縁性を有し、機械的強度の高い材料、例えば、エポキシで内部導体110の外周にモールド成形することにより形成されている。
【0043】
また、硬質の絶縁体120の外面には、銀ペイント等の導電塗料を塗布することによって遮蔽層が形成されている。この遮蔽層は接地電位となる。硬質の絶縁体120では、内部導体110を突出させた一端部が、機器側ブッシング200の受容口221の形状に対応した形状の端面121aを備える挿入部121として形成されている。なお、挿入部121の端面121aは、受容口221の内面とともに、硬質の絶縁体120と接続相手である機器側ブッシング200の硬質の絶縁体220との接合面を構成している。
【0044】
すなわち、硬質の絶縁体120は、一端には弾性絶縁スペーサ30に密着して機器側ブッシング200と接合するための端面121aを有する挿入部121を備え、他端には電力ケーブルの端末を接続するための周知の接続部(図示省略)を備える。具体的には、絶縁ゴムと半導電ゴムからなるストレスコーンおよびストレスコーン押圧装置等による接続方法(インナーコーンタイプ)による電力ケーブルの接続部の場合には、本発明のブッシング100の他端は、内部導体110には電力ケーブルの導体を接続するための導体挿入孔(図示省略)を有し、硬質の絶縁体120にはケーブル端末の受容口(図示省略)を有する構造となる。また、シリコーンゴム等からなるゴムユニット等をブッシングの外周に取り付けることによる接続方法(アウターコーンタイプ)による電力ケーブルの接続部の場合には、本発明のブッシング100の他端は、硬質の絶縁体120は、それ自身の外周に例えば常温収縮ゴムユニットを装着するための、界面がテーパ形状の突出部(図示省略)を有する。ここで、常温収縮ゴムユニットはシリコーンゴム等からなり、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層、両端部の半導電ゴムからなるストレスコーン部を有する周知の構造であるため、図示を省略する。これらインナーコーンタイプ(プレハブ型接続部ともいう)、アウターコーンタイプいずれも当業者にとって周知の技術であるため、図示を省略する。
【0045】
図4及び図5に示すように、硬質の絶縁体120内には、挿入部121の端面121aの近傍に配置され、且つ、内部導体110を囲む電界緩和用の環状金具130が埋設されている。
【0046】
環状金具130は導電性を有し、ここでは、中実の金属製の部材によりリング状に形成され、ブッシング100と機器側ブッシング200との間に介在する弾性絶縁スペーサ30の外周縁部(詳細には、トリプルジャンクションが形成される外周端31)の電界を緩和する位置に配置されている。ここでは、環状金具130は、硬質の絶縁体120内において挿入部121の端面(接合面)121aの外縁側近傍に配置されている。
【0047】
図6は、ブッシング100の挿入部121の正面図であり、図7は、電界緩和用の環状金具130を有する固定金具140を示す図である。
【0048】
図6及び図7に示すように、弾性絶縁スペーサ30を介して機器側ブッシング200の受容口221(図4参照)に挿入されたブッシング100の挿入部121を機器側ブッシング200の受容口221に固定し、且つ導電性を有する固定金具140が、後述するブッシングフランジ部内に一体的に設けられている。
【0049】
図6及び図7に示すように固定金具140は、環状金具130の外周から所定間隔を開けて放射方向に、且つ、水平に突出する導電性を有する金属製のアーム141と、アーム141の先端に取り付けられた導電性を有する金属製の固定用筒状部142と、を有する。固定金具140は鋳物等で一体的に形成しても良く、少なくとも表面が導通していれば良い。
【0050】
固定用筒状部142は、図6に示すようにブッシング100の挿入部121の下端(図4では下側)において外周方向に小さく張り出し、平面視矩形状をなすブッシングフランジ部124の四隅近傍の内部に配置されている。ここでは、ブッシングフランジ部124は、平面視矩形状をなしているが、平面視円形状(すなわちブッシングフランジ部としては円柱形状)でも良い。
【0051】
固定用筒状部142は、ブッシング100、200同士を接続する図示しないボルトを挿通して、当該ボルトに螺合するナットとともに、ブッシングフランジ部124と、機器側ブッシング200の図示しないフランジ部とを挟むように固定する。
【0052】
ブッシングフランジ部124の外周には、銀ペイント等の導電塗料が塗布されている。具体的に、導電塗料は、硬質の絶縁体120の外面に塗布された遮蔽層からブッシングフランジ部124の下面(図4では下側、すなわちケーブル端末側)全体、ブッシングフランジ部124の外周側面全体、ブッシングフランジ部124の上面(図4では上側で図6に記載の面、すなわち機器側ブッシング200と当接する側の面)の一部に跨って塗布されている。ここで、図6のブッシングフランジ部124の上面においては、固定用筒状部142に接触するように四隅の一部だけが塗布され、導通層126を形成している。すなわち、導通層126はブッシング100の遮蔽層の一部である。
【0053】
なお、導通層126は、ブッシング100、200同士の接続時において、機器側ブッシング200の図示しないフランジ部の外面に形成された遮蔽層に接触する。これにより、ブッシング100の遮蔽層、固定金具140は、機器側ブッシング200の遮蔽層とともに接地電位となる。
【0054】
このように、ブッシング100では、内部導体110の外周を覆う硬質の絶縁体120と、機器側ブッシングの硬質の絶縁体220との接合面(受容口221の内面と挿入部121の端面121aに相当)に配設された弾性絶縁スペーサ30を貫通して、内部導体110、210同士が接続される。環状金具130は、ブッシング100の接合面(挿入部121の端面121a)の近傍において硬質の絶縁体120にて一体的に設けられたブッシングフランジ部124内に配置され、且つ、内部導体110と同心状に埋設されている。
【0055】
本発明のブッシング100は、金型に内部導体110および固定金具140をセットした状態で、エポキシ等の硬質の絶縁体120を注型することで一体的にモールド成形されている。さらに、ブッシング100では、従来のブッシングと異なり、硬質の絶縁体120にくびれ部が設けられておらず、硬質の絶縁体120は、挿入部121近傍においても、ブッシングフランジ部124を除いて本体部分と同じ外径に形成されている。
【0056】
図8は、図4に示すブッシング同士の接続部分において課電した際の等電位線図である。なお、図8は、ブッシング100、200同士の接続部分の半断面を模式的に示した図であり、等電位線Eを用いて電界分布を示し、Sは内部導体110、210の軸心を示す。
【0057】
図8に示すように、環状金具130を備える本発明のブッシング100を用いたブッシング100、200同士の接続構造(図4参照)では、図3に示すくびれ部の無い接続構造と比較して、環状金具130によって電界分布が変化している。
【0058】
すなわち、図8に示すように、環状金具130によって、範囲cで示すように、弾性絶縁スペーサ30の外周縁部(詳細には外周端31、32)と、ブッシング100或いは機器側ブッシング200と、外部の空気との接合点であるトリプルジャンクション(外周端31、32に相当)に電界が入り込むことを防止している。
【0059】
したがって、ブッシング100によれば、弾性絶縁スペーサ30を介して相手側ブッシングである機器側ブッシング200に接続されても、環状金具130によって、接続部分において好適な電界緩和を行うことができる。
【0060】
よって、相手側ブッシング(本実施の形態では機器側ブッシング200)に弾性絶縁スペーサ30を介して接続するブッシング100において、ブッシング100の他端(相手側ブッシングと反対側)に電力ケーブルの端末を接続する接続部が設けられた場合のように、くびれ部を設けることができない制約がある場合でも、ブッシング同士の接続界面において好適な電界緩和を行うことができる。
【0061】
なお、図8に示すように、ブッシング100を接続する機器側ブッシング200では、受容口221が形成された部位の外径を本体部分の外径よりも大きくしてくびれ部217が形成される構成としたが、これに限らない。
【0062】
例えば、図9に示す機器側ブッシング200Aのように、受容口221が形成された部位の外径を本体部分の外径と同径にした硬質の絶縁体220Aを有する構成にして、ブッシング200Aの外径を、ブッシング200Aに接続されるブッシング100の外径と略面一となるようにしてもよい。この構成によれば、上述した本実施の形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0063】
また、図4に示すように機器側ブッシング200に受容口221を形成し、ブッシング100に挿入部を形成して、両ブッシング100、200を嵌合させる構成としたが、ブッシング100に漏斗状の受容口を形成し、機器側ブッシング200に、円錐状の挿入部を形成して、弾性絶縁スペーサ30を介して両ブッシング100、200を接続する構成、すなわちブッシング嵌合部の凹凸を逆にする構成としてもよい。
【0064】
また、ブッシング100に設けた環状金具130を、ブッシング100を接続する相手側ブッシング(ここでは機器側ブッシング200)側に設けた構成としてもよい。
【0065】
図10では、機器側ブッシング200Bに弾性絶縁スペーサ30を介してブッシング100が接続されている。この機器側ブッシング200Bにおいて、内部導体210をエポキシでモールドした硬質の絶縁体220B内に、環状金具130と同様に構成される電界緩和用の環状金具130Bが埋設されている。環状金具130Bは、硬質の絶縁体220Bの接合面である受容口221の内面の近傍に、且つ、内部導体210と同心状に機器側ブッシング200Bの図示しないフランジ部内に配置されている。
【0066】
この構成によれば、環状金具130、130Bによって、弾性絶縁スペーサ30の外周縁部(詳細には外周端31、32)と、ブッシング100或いは機器側ブッシング200Bと、外部の空気との接合点であるトリプルジャンクション近傍に電界が入ることを防止できる。このように本発明のブッシングを接続する相手側ブッシングに電界緩和用の環状金具を設けても良い。
【0067】
なお、本実施の形態の機器側ブッシング200は、SISに設けられたものを想定して説明しているが、ブッシング200を備える電力機器であればどのような機器でもよく、ガス絶縁開閉装置(Gas Insulated Switchgear:GIS)であってもよい。更に、弾性絶縁スペーサはブッシングとは別部品で構成した実施例について説明したが、嵌合する片側のブッシングに嵌合するまでに接着やモールド等により予め一体的に設けていてもよい。
【0068】
本実施の形態の弾性絶縁スペーサ30は接合するブッシングの外径と同一のものについて説明しているが、ブッシング同士の嵌合後に弾性絶縁スペーサ30の外周縁部が環状金具130の内周端よりも外側にあれば、弾性絶縁スペーサ30の外径は、接合するブッシングの外径より小さくても良い。また、弾性絶縁スペーサを介して(密着させて)嵌合するブッシングの接合面の形状は円錐筒状であれば本実施の形態の形状(一定のテーパ形状)に限定されない。更に、本発明のブッシングの遮蔽層は必要に応じて縁切り部(導電塗料を塗布しない部分)を設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係るブッシング及びブッシングの接続部は、ブッシング同士の接続部分において好適な電界緩和を行うことができる効果を有し、電力機器のブッシングに接続されるブッシングとして有用である。
【符号の説明】
【0070】
30 弾性絶縁スペーサ
31、32 外周端
100 ブッシング
110、210 内部導体
120、220、220A、220B 硬質の絶縁体
121 挿入部
124 ブッシングフランジ部
126 導通層
130、130B 環状金具
140 固定金具
142 固定用筒状部
200、200A、200B 機器側ブッシング
211 凹部
215 接続子
221 受容口
110a 先端部
121a 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性絶縁スペーサを介して相手側ブッシングに接続するブッシングであって、
一端が前記弾性絶縁スペーサを貫通して前記相手側ブッシングの内部導体に接続される内部導体と、
前記内部導体の外周を覆い一端に前記相手側ブッシングと接合する際の挿入部として前記弾性絶縁スペーサに密着するための端面を備えた硬質の絶縁体と、
前記内部導体と同心状に配置され、且つ、前記硬質の絶縁体内において、前記端面の近傍に埋設される電界緩和用の環状金具と、
前記硬質の絶縁体の外面に塗布される導電塗料による遮蔽層と、
を備えることを特徴とするブッシング。
【請求項2】
前記挿入部の端面の近傍にはブッシングフランジ部を備えることを特徴とする請求項1記載のブッシング。
【請求項3】
前記環状金具の外周には、前記相手側ブッシングと接合用のボルトを挿通するための固定用筒状部がアームとともに一体に固定金具として形成され、
前記固定金具は前記ブッシングフランジ部内に埋設されることを特徴とする請求項2記載のブッシング。
【請求項4】
前記遮蔽層は、前記硬質の絶縁体の外面から前記ブッシングフランジ部において相手方ブッシングと当接する面で接続される前記固定用筒状部と接触する位置に跨って形成されていることを特徴とする請求項3記載のブッシング。
【請求項5】
前記内部導体の他端には電力ケーブルの導体を接続するための接続部が設けられ、
前記硬質の絶縁体の他端には前記電力ケーブルの端末を接続するための接続部が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のブッシング。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のブッシングが弾性絶縁スペーサを介して相手側ブッシングに接続されるブッシングの接続部であって、
前記ブッシングの挿入部は、端面で密着する前記弾性絶縁スペーサを介して前記相手側ブッシングに接合され、
前記ブッシングの内部導体は、前記弾性絶縁スペーサを貫通して前記相手側ブッシングの内部導体に接続されていることを特徴とするブッシングの接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−124041(P2011−124041A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279678(P2009−279678)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】