説明

ブドウ膜炎の治療のためのA3ARアゴニスト

本願は、被検体におけるブドウ膜炎の治療または予防のためのIB−MECAなどのAARアゴニストの使用、ならびにそのような治療のための方法、およびIB−MECAを有効な量含むブドウ膜炎を治療するための医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブドウ膜炎の治療のための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ブドウ膜炎とは、特に、網膜への血液供給の大部分を担う、眼球の中間層(「ブドウ膜」)の炎症を指すが、一般的な用法では、特に虹彩毛様体炎と呼ばれるブドウ膜の炎症を伴う、眼球内部に波及するあらゆる炎症プロセスを指すことがある。
【0003】
ブドウ膜炎は、一般的には自己免疫不全、感染症、または毒素への暴露に起因する。ブドウ膜炎の症状は、目の発赤、視朦、光過敏(羞明)、視覚中の暗い浮動スポット、および目の痛みからなる。
【0004】
ブドウ膜炎は、アメリカ合衆国で失明のおよそ10%の原因となると推定される。ブドウ膜炎では、眼科医が、炎症を抑制するための緊急の治療とともに、緊急の照会と徹底的な検査を行う必要がある。迅速な診断と治療を受けた場合には、予後は通常は良好であるが、無処置のままにされた場合には、深刻な合併症(白内障、緑内障、網膜内流動、網膜剥離および視覚損失、帯状角膜変性、網膜水腫および永久視覚損失など)が起こる場合がある。ブドウ膜炎の種類、ならびにその重症度、継続期間、治療に対する応答性、またはあらゆる関連疾患、全ての因子を考慮に入れている。
【0005】
点眼剤、特に糖質コルチコイドステロイド(例えば酢酸ブレドノゾロン)および瞳孔拡張薬の点眼剤、またはプレドニソロン錠剤での経口療法は、炎症およびブドウ膜炎の痛みを低減するのに用いられる薬物である。加えて、局所毛様体筋麻痺薬(例えばアトロピンまたはホマトロピン)を使用することができる。より深い炎症の場合には、ステロイドまたは免疫抑制薬の経口投薬または眼周囲の注射が使用される。また、ブドウ膜炎の扱いにくい症例またはより劇症の症例のために、代謝拮抗薬薬物(例えばメトトレキセート)がよく使用される。[Nussenblatt RB,Whitcup SM.(2004)Uveitis:Fundamentals and Clinical Practice(3rd edn),Mosby/Elsevier;2004;Gery I,Nussenblatt RB,Chan CC,Caspi RR.Autoimmune diseases of the eye.The molecular pathology of autoimmune diseases.2nd ed.New York,NY:Taylor and Francis;2002:978−98]。
【0006】
許容できる実験的な自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)モデルは、神経網膜および関連する組織を標的とする臓器特異的なT細胞媒介自己免疫疾患であり、ヒトの自己免疫性ブドウ膜炎のモデルと考えられる。これは網膜抗原でのネズミまたはマウスの免疫化によって誘発される。患者が免疫応答を網膜抗原に対して示すような推定上の自己免疫性の性質をもつヒトのブドウ膜炎の疾患に、EAUの病理は非常に類似している。[Caspi RR,Silver PB,Luger D,Tang J,Cortes LM,Pennesi G,Mattapallil MJ,Chan CC.Mouse models of experimental autoimmune uveitis.Ophthalmic Res.2008;40:169−74;Smith JR,Hart PH,Williams KA.Basic pathogenic mechanisms operating in experimental models of acute anterior uveitis.Immunol.Cell Biol.1998;76,497−512;Caspi RR.in Cohen,I.R.and Miller,A.(eds.),Animal Models for Autoimmune Diseases:A Guidebook,Academic Press p.57−81.1994]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、N−(3−ヨードベンジル)−2−メチルアミノ−9−[5−(メチルアミド)−β−D−リボフラノシル]−アデニン(本明細書中ではIB−MECAと略称する)が以下の点で効果的であるという発見に基づくものである:
−当該物質は、動物モデルで実験的な自己免疫性ブドウ膜炎の発症を阻害した;
−当該物質は、実験的な自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)の組織病理学的スコアを低減させた;
−当該物質は、抗原特異性T細胞応答を向上させた。
【0008】
これらの知見に基づき、典型的なAARアゴニストとして作用するAアデノシン受容体(AAR)アゴニスト(IB−MECA)を、ブドウ膜炎の治療または予防のために使用し得ることが認識された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、その第1の態様によれば、ブドウ膜炎の治療のためのAARアゴニストの使用を提供する。
【0010】
本発明は、その第2の態様によれば、ブドウ膜炎の治療のための方法であって、被検体に対し、AARアゴニストを、ブドウ膜炎の治療または予防に有効な量投与するステップを含む、方法を提供する。
【0011】
本発明は、その第3の態様によれば、ブドウ膜炎の治療のための医薬組成物であって、有効成分としての、前記ブドウ膜炎の治療に有効な量のAARアゴニストと、生理学的に許容できる担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0012】
本発明を理解し、それがどのように実施され得るかを確認するために、非限定的な実施例として提示される以下の実施形態の説明を、添付の図面とともに参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】IB−MECA(コード名CF101で特定される)がEAUの発症を阻害したことを示す棒グラフである。
【図2】IB−MECA(コード名CF101で特定される)がEAUの組織病理学的スコアを低減させたことを示す棒グラフである。
【図3】IB−MECA(コード名CF101で特定される)が抗原特異的T細応答を向上させたことを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
理解されたように、以下の詳細な説明においてはAARアゴニストを利用するブドウ膜炎の治療方法を参照して本発明について説明するが、本発明は、ブドウ膜炎の治療のためAARの使用ならびに前記治療のためのAARを含むあらゆる医薬組成物を包含することを理解されたい。
【0015】
本発明の文脈においては、用語「ブドウ膜炎」は、眼球の内部の部分の炎症、特に中間層(ブドウ膜)の炎症を指し、より具体的には、ブドウ膜炎とは、眼球血管膜の前部の炎症である前部ブドウ膜炎(虹彩の炎症(虹彩炎)および虹彩ならびに毛様体の炎症(虹彩毛様体炎)を含む);ガラス体液の炎症である中間部ブドウ膜炎(末梢ブドウ膜炎または慢性毛様体炎);および眼球レンズ後部の眼球血管膜の部分の炎症である後部ブドウ膜炎;脈絡膜の炎症(脈絡膜炎)および脈絡膜ならびに網膜の炎症(脈絡網膜炎);ならびに全ての眼球血管膜に影響を及ぼすブドウ膜炎である全葡萄膜炎または広汎性ブドウ膜炎である。
【0016】
用語「処置」または「治療」、などは、望ましい薬理学的および生理学的影響を得ることを指すものとして本明細書中で使用される。その影響とは、眼球の内部部分での炎症反応を改善または低減する観点では治療的であり、および/または(例えば、眼球内部に達する外傷、眼性または全身性の感染症(ウイルス、細菌、寄生生物によるブドウ膜炎、および全身性自己免疫不全のなかの1以上に起因する)眼球の内部部分での炎症を発症する素因があり得るあらゆる被検体における眼球の内部部分での炎症を予防または部分的に予防する観点では予防的であり得る。治療は、哺乳動物(特にヒト)におけるあらゆる病気の治療も包含するものと理解されたい。
【0017】
本発明の文脈においては、用語「Aアデノシン受容体アゴニスト」(AARアゴニスト)は、Aアデノシン受容体(「AAR」)に特異的に結合でき、もって前記受容体を全体的にまたは部分的に活性化する任意の化合物を指す。AARアゴニストは、このようにAARの結合および活性化を通してその主要な効果を発揮する分子である。このことは、それは、投与される用量において、基本的にAARのみに結合し活性化することを意味する。好ましい実施形態において、AARアゴニストはヒトAARに対して、100nM未満、通常は50nM、好ましくは20nM、より好ましくは10nM、および理想的には5nM未満の範囲の結合親和性(Ki)を有する。ヒトARに対して、2nM未満、望ましくは1nM未満のKiを持つAARアゴニストは特に好ましい。
【0018】
しかし、一部のAARアゴニストは他の受容体とも、より低い親和性(すなわちより高いKi)をもってではあるが、相互作用し、活性化し得ることも理解するべきである。分子は、そのAARに対する親和性が他のアデノシン受容体(即ちA、A2a、およびA2b)に対する親和性と比較して、少なくとも3倍(即ちAARに対するそのKiが少なくとも3分の1以下)、好ましくは10倍、望ましくは20倍、最も好ましくは少なくとも50倍大きい場合、本発明の文脈においてはAARアゴニスト(すなわち、AARに対する結合と活性化を通してその主要な効果を発揮する分子)であると考えられる。
【0019】
ヒトAARへのAARアゴニストの親和性ならびに他のヒトアデノシン受容体へのその相対親和性は、結合アッセイのような多種のアッセイで測定することができる。結合アッセイの例では、受容体を含む膜を提供し、AARアゴニストが結合された放射標識されたアゴニストを置換する能力を測定し、それぞれのヒトアデノシン受容体をディスプレイする細胞を利用し、かつ、そのAARアゴニストが、ダウンストリームでのシグナリングイベント(cAMP値の増減などによって測定されるアデニル酸シクラーゼに対する影響など)を活性化(場合によっては不活化)する能力を機能アッセイにおいて測定する。明らかなこととして、AARアゴニストの投与レベルが上昇して、その血中濃度がA、A2a、A2bアデノシン受容体のKiのそれに近い値に近づくようになっている場合、AARの活性化に加えて、これらの受容体の活性化がそのような投与の後に生じていることがある。したがって、AARアゴニストは、基本的にAARのみが活性化されるような血中濃度であるような用量で投与されるのが望ましい。
【0020】
いくつかのアデノシンAARアゴニストの特徴およびそれらの調製方法は、特に、米国特許第5,688,774号、同第5,773,423号、同第5,573,772号、同第5,443,836号、同第6,048,865号、国際特許公開第WO95/02604号、同第WO99/20284号、同第WO99/06053号、同第WO97/27173号、および同第WO01/19360号に記載されており、これらの文献はすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0021】
本発明の実施形態によれば、AARアゴニストは、アデノシンAARに対する結合と活性化を通してその主要な効果を及ぼす化合物であり、一般式(I)の範囲に含まれるプリン誘導体である:
【化1】


式中、
−R11は、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、またはシアノアルキル、或いは以下の一般式(II)の一群を表し:
【化2】


ここで、
−Yは、酸素、硫黄またはCHを表し;
−X11は、H、アルキル、RNC(=O)−、またはHOR−を表し、
−ここでRおよびRは、同一のものでも異なるものでもよく、水素、アルキル、アミノ、ハロアルキル、アミノアルキル、BOC−アミノアルキル、およびシクロアルキルからなる群から選択されたものであるか、あるいは相互に結合されて2〜5個の炭素原子を含む複素環を形成するものであり、
−Rは、アミノ、ハロアルキル、アミノアルキル、BOC−アミノアルキル、およびシクロアルキルからなる群から選択されたものであり、
−X12は、H、ヒドロキシル、アルキルアミノ、アルキルアミド、またはヒドロキシアルキルであり;
−X13およびX14は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、アミノ、アミド、アジド、ハロ、アルキル、アルコキシ、カルボキシ、ニトリル、ニトロ、トリフルオロ、アリール、アルカリル、チオ、チオエステル、チオエーテル、−OCOPh、−OC(=S)OPhであるか、またはX13およびX14の両方が酸素であって、>C=Sに結合して5員環を形成するか、またはX12およびX13が、式(III)の環:
【化3】


を形成し、ここでR’およびR’’はそれぞれが独立してアルキル基を表し;
−R12は、水素、ハロ、アルキルエーテル、アミノ、ヒドラジド、アルキルアミノ、アルコキシ、チオアルコキシ、ピリジルチオ、アルケニル、アルキニル、チオ、およびアルキルチオからなる群から選択されたものであり;かつ
−R13は、式NR1516の群であり、ここで
−R15は、水素原子またはアルキル、置換されたアルキル、またはアリール−NH−C(Z)から選択されたものであり、ここでZはO、S、またはNRaであり、Rは、上記の意味を有し、
−R15が水素であるとき、R16は、R−およびS−1−フェニルエチル、ベンジル、フェニルエチル、非置換アニリド基、または1以上の位置においてアルキル、アミノ、ハロ、ハロアルキル、ニトロ、ヒドロキシル、アセトアミド、アルコキシ、スルホン酸またはその塩からなる群から選択された置換基で置換されたアニリド基;ベンゾジオキサンメチル、フルリル、L−プロピルアラニル−アミノベンジル、β−アラニルアミノベンジル、T−BOC−β−アラニルアミノベンジル、フェニルアミノ、カルバモイル、フェノキシ、またはシクロアルキルから選択されたものであるか;またはR16は、以下の式:
【化4】


の群であり、
−R15がアルキルまたはアリール−NH−C(Z)であるとき、R16は、ヘテロアリール−NRa−C(Z)、−ヘテロアリール−C(Z)−、アルカリル−NRa−C(Z)−、アルカリル−C(Z)−、アリール−NR−C(Z)−、およびアリール−C(Z)−からなる群から選択されたものであり;ここでZは、酸素、硫黄、またはアミンを表している。
【0022】
代表的なAARアゴニスト(米国特許第5,688,774号の、第4欄67行から第6欄16行;第5欄40から45行目;第6欄21から42行;第7欄1から11行;第7欄34から36行;および第7欄60から61行に開示される):
−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−9−ヒドロキシエチルアデニン;
R−N−(3−ヨードベンジル)−9−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アデニン;
S−N−(3−ヨードベンジル)−9−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アデニン;
−(3−ヨードベンジルアデニン−9−イル)酢酸;
−(3−ヨードベンジル)−9−(3−シアノプロピル)アデニン;
2−クロロ−N−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
2−アミノ−N−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
2−ヒドラジド−N−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−2−メチルアミノ−9−メチルアデニン;
2−ジメチルアミノ−N−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−9−メチル−2−プロピルアミノアデニン;
2−ヘキシルアミノ−N−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−2−メトキシ−9−メチルアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−9−メチル−2−メチルチオアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−9−メチル−2−(4−ピリジルチオ)アデニン;
(1S,2R,3S,4R)−4−(6−アミノ−2−フェニルエチルアミノ−9H−プリン−9−イル)シクロペンタン−1,2,3−トリオール;
(1S,2R,3S,4R)−4−(6−アミノ−2−クロロ−9H−プリン−9−イル)シクロペンタン−1,2,3−トリオール;
(±)−9−[2α,3α−ジヒドロキシ−4β−(N−メチルカルバモイル)シクロペント−1β−イル)]−N−(3−ヨードベンジル)−アデニン;
2−クロロ−9−(2’−アミノ−2’,3’−ジデオキシ−β−D−5’−メチル−アラビノ−フロンアミド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−9−(2’,3’−ジデオキシ−2’−フルオロ−β−D−5’−メチル−アラビノ フロンアミド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
9−(2−アセチル−3−デオキシ−β−D−5−メチル−リボフロンアミド)−2−クロロ−N(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−9−(3−デオキシ−2−メタンスルホニル−β−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−9−(3−デオキシ−β−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−9−(3,5−1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキシル−β−D−5−リボフラノシル)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−9−(2’,3’−O−チオカルボニル−β−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
9−(2−フェノキシチオカルボニル−3−デオキシ−β−D−5−メチル−リボフロンアミド)−2−クロロ−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
1−(6−ベンジルアミノ−9H−プリン−9−イル)−1−デオキシ−N,4−ジメチル−β−D−リボフラノシドウロンアミド;
2−クロロ−9−(2,3−ジデオキシ−β−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N−ベンジルアデニン;
2−クロロ−9−(2’−アジド−2’,3’−ジデオキシ−β−D−5’−メチル−アラビノ−フロンアミド)−N−ベンジルアデニン;
2−クロロ−9−(β−D−エリスロフラノシド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
−(ベンゾジオキサンメチル)アデノシン;
1−(6−フルフリルアミノ−9H−プリン−9−イル)−1−デオキシ−N−メチル−β−D−リボフラノシドウロンアミド;
−[3−(L−プロリルアミノ)ベンジル]アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド;
−[3−(β−アラニルアミノ)ベンジル]アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド;
−[3−(N−T−Boc−β−アラニルアミノ)ベンジル]アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド
6−(N’−フェニルヒドラジニル)プリン−9−β−リボフラノシド−5’−N−メチルウロンアミド;
6−(O−フェニルヒドロキシルアミノ)プリン−9−β−リボフラノシド−5’−N−メチルウロンアミド;
9−(β−D−2’,3’−ジデオキシエリスロフラノシル)−N−[(3−β−アラニルアミノ)ベンジル]アデノシン;
9−(β−D−エリスロフラノシド)−2−メチルアミノ−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−N−(3−ヨードベンジル)−9−(2−テトラヒドロフリル)−9H−プリン−6−アミン;
2−クロロ−(2’−デオキシ−6’−チオ−L−アラビノシル)アデニン;および
2−クロロ−(6’−チオ−L−アラビノシル)アデニン。
【0023】
他の典型的なAARアゴニスト(米国特許第5,773,423号に開示されている)は、下記の式の化合物である:
【化5】

式中、
は、RNC(=O)であり、RおよびRは同一のものでも異なるものでもよく、水素、C〜C10のアルキル、アミノ、C〜C10のハロアルキル、C〜C10のアミノアルキルおよびC〜C10のシクロアルキルからなる群から選択され、
は、水素、ハロ、C〜C10のアルキルオキシアミノ、C〜C10のアルケニルおよびC〜C10のアルキニルからなる群から選択され、および
は、R−およびS−1−フェニルエチル、非置換ベンジル基、およびC〜C10のアルキル、アミノ、ハロ、C〜C10のハロアルキル、ニトロ、ヒドロキシ、アセトアミド、C〜C10のアルコキシおよびスルホからなる群から選択される置換基により、1以上の位置が置換されたベンジル基からなる群から選択される。
【0024】
より具体的な化合物としては、特にRが水素またはハロであるとき、とりわけ水素である場合、上記の式において、RおよびRは同一のものでも異なるものでもよく、水素、C〜C10のアルキルからなる群から選択される化合物を含む。
【0025】
さらなる具体的な化合物としては、特にRが非置換のベンジルである場合Rが水素であり、Rが水素である化合物がある。
【0026】
より具体的な化合物としては、RがC〜C10のアルキルまたはC〜C10のシクロアルキル、特にC〜C10のアルキル、よりとりわけメチルであるような化合物である。
【0027】
とくに具体的な化合物としては、Rが水素であり、RがC〜C10のアルキルまたはC〜C10のシクロアルキルであり、Rが、R−およびS−1−フェニルエチルあるいはハロ、アミノ、アセトアミド、C〜C10のハロアルキルおよびスルホからなる群から選択される置換基により、1以上の位置が置換されたベンジルであり、ここでスルホ誘導体はトリエチルアルミニウム塩などの塩であるような化合物である。
【0028】
特に好ましい化合物の例は、IB−MECAである(米国特許第5,773,423号)。加えて、Rが式R−C=C−のC〜C10のアルケニレンであり、RがC〜Cのアルキルである化合物が、米国特許第5,773,423号において特に注目されている。
【0029】
さらに具体的には、Rは水素でない化合物であり、特にRがハロ、C〜C10のアルキルアミノまたはC〜C10のアルキルチオであり、より好ましくはさらにRが水素である場合、RがC〜C10のアルキルであり、および/またはRが置換されたベンジルである化合物である。
【0030】
さらに米国特許第5,773,423号に開示される典型的なAARアゴニストは、次の式を有する修飾されたキサンチン−7−リボシドである:
【化6】

式中、
XはOであり、
がRNC(=O)であり、RおよびRは同一のものでも異なるものでもよく、水素、C〜C10のアルキル、アミノ、C〜C10のハロアルキル、C〜C10のアミノアルキルおよびC〜C10のシクロアルキルからなる群から選択され、
およびRは同一のものでも異なるものでもよく、C〜C10のアルキル、R−およびS−1−フェニルエチル、非置換ベンジル基ならびにC〜C10のアルキル、アミノ、ハロ、C〜C10のハロアルキル、ニトロ、ヒドロキシ、アセトアミド、C〜C10のアルコキシおよびスルホからなる群から選択される置換基により、1以上の位置が置換されたベンジル基からなる群から選択され、
はハロ、ベンジル、フェニルおよびC〜C10のシクロアルキルからなる群から選択される。
【0031】
WO99/06053は、実施例19〜33において、
−(4−ビフェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(2,4−ジクロロベンジル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(4−メトキシフェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(4−クロロフェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(フェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(ベンジルカルバモイルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(4−スルホンアミド−フェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(4−アセチル−フェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−((R)−α−フェニルエチルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−((S)−α−フェニルエチルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(5−メチル−イソオキサゾール−3−イル−カルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(1,3,4−チアジアゾール−2−イル−カルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(4−n−プロポキシ−フェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−ビス−(4−ニトロフェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;および
−ビス−(5−クロロ−ピリジン−2−イル−カルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミドから選択される化合物を開示する。
【0032】
より具体的な開示された化合物としては、以下のもの:
2−クロロ−N−(3−ヨードベンジル)−9−[5−(メチルアミド)−β−D−リボフラノシル]−アデニン、別名2−クロロ−N−(3−ヨードベンジル)−アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド、または略称Cl−IB−MECA;
−(3−ヨードベンジル)−2−メチルアミノ−9−[5−(メチルアミド)−β−D−リボフラノシル]−アデニン、別名N−(3−ヨードベンジル)−アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド、または1−デオキシである−1−[6−[[(3−ヨードフェニル)メチル]アミノ]−9H−プリン−9−イル]−Nメチル−D−リボフランウロンアミド、または略称IB−MECA;
−2−(4−アミノフェニル)エチルアデノシン(APNEA);
−(4−アミノ−3−ヨードベンジル)アデノシン−5’−(N−メチルウロンアミド)(AB−MECA)
が挙げられる。IB−MECAは、発明による最も好ましい化合物である。
【0033】
上記で定義された化合物の任意の生理学的に許容できる塩も、発明にも包含されている。本発明で使用される化合物の「生理学的に許容できる塩」に言及するとき、当該塩は、製薬産業で一般的に用いられる、当分野で既知の方法で調製されるナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アンモニウム、およびプロタミン亜鉛の塩を含む、あらゆる無毒性アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびアンモニウム塩を意味する。当該用語は、通常適当な有機酸または無機酸と本発明の化合物とを反応させることによって調製される無毒性酸性付加塩類をも含む。酸性付加塩類は、遊離塩基の質的な特性と生物学的効果を保持しており、有毒でないものであって、そうでなければ好ましくなくないようなものである。当該物質の例としては、とりわけ、鉱酸に由来する酸、塩化水素、臭化水素、硫黄、窒素、リン、メタリンなどの塩が挙げられる。有機酸としては、とりわけ、酒石酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、グリコール酸、グルコン酸、ピルビン酸、コハク酸、サリチル酸、およびアリールスルホン酸(例えばp−トルエンスルホン酸)が挙げられる。
【0034】
本発明の文脈において用語「有効量」または「〜のために有効な量」とは、ブドウ膜炎の発症する素因がある、またはブドウ膜炎を既に発症している被検体においてブドウ膜炎を予防または治療するAARアゴニストの量を指す。その「有効量」は、本発明に従って、複数の試験対象の被検体に種々の量のAARアゴニストを投与し、次に量の関数として生理学的反応(例えば治療的に有益な影響のいくつかを組み合わせた複合「SS指数」)をプロットすることによって、容易に決定することができる。あるいは、その有効量は、場合によっては、適切な動物モデルで行われる実験とそこから複数の変換方法の1つを用いてヒトに外挿することを通して、または、血漿中濃度または経時的な血漿中濃度の曲線下面積(AUC)を測定し、比較可能な血漿中濃度またはAUCが得られる有効量の計算を行うことによって、決定することもできる。周知のように、有効量は、各種の要因、例えば投与の方式(例えば経口投与では、所定の血漿中濃度またはAUCを達成するために、静脈内投与より高い用量を必要とし得る);被検体の年齢、体重、体表面積、性別、健康状態、遺伝因子;他の投薬された薬剤などによって変化し得る。
【0035】
以下、特に明記しない限り、用量は、重量/kgで表示する。これは処置される被検体の体重1kg当たりの、投与1回分の投与されるAARアゴニスト(例えばIB−MECA)の重量を意味する。例えば、mg/kgおよびμg/kgはそれぞれ、被検体の体重1kg当たりの投与されら薬剤のmg単位およびμg単位の重さを示す。
【0036】
有効量は、およそ1mg/kg(体重)未満、特に約500μg/kg未満、若しくはさらには約200μg/kg(体重)未満、場合によっては約100μg/kg(体重)未満、さらには約50μg/kg(体重)未満が好ましい。IB−MECAに関しては、有効量は、1日単回投与の場合、各投与につき5mg未満(すなわち、体重が約70kgの平均的な被検者を想定すると約70μg/kg(体重)未満の用量)、および1日2回投与の場合、約4mg未満(すなわち、57μg/kg(体重)未満)が好ましい。より好ましくは、IB−MECAの用量は、1日単回投与または1日2回投与のいずれかの場合、各投与につきおよそ2mg未満、典型的には0.1−1mgの間(体重1kg当たりの投薬量では約29μg/kg(体重)および1.5−15μg/kg(体重)に対応)であるのが好ましい。
【0037】
個体に対するAARアゴニストの投与を、特定の投与方式に適する剤形を形成するべく薬学的に許容される担体とともに行うことができる。このように、その剤形は、投与が必要な被検体に対して投与される組成物において使用されるAARアゴニストの物理的形態である。
【0038】
投与が経口投与の場合には、担体は、経口投与に適した剤形の製剤において許容されるものである。投与が局所投与の場合には、担体は、局所投与に適した剤形、例えば点眼の場合の点眼剤を製するために許容されるものである。
【0039】
用語「薬学的に許容される担体」によって、AARアゴニストと反応せず、かつ希釈剤または担体として製剤に添加して製剤に形態または硬さを与えることができる、任意の不活性で無毒性の材料を意味する。
【0040】
経口投与剤は、丸剤、カプセル、シロップ、エマルジョン、芳香パウダー、その他の各種の剤形であり得る。担体は、製剤の望ましい形態に基づいて選択されることもある。担体は、薬物の安定性を向上させるため、クリアランス速度を遅くするため、徐放特性を付与するため、不要な副作用を低減させるため等の目的で、標的組織への主成分の送達または侵入を向上させる効果を有するものとすることもある。担体は、製剤に食用の風味を与えるための製剤を安定化させる物質(例えば防腐剤)であってもよい。担体は、従来から使用されてきた任意のものであり得、化学的−物理的見地(例えば溶解性、AARアゴニストとの反応性がないこと、および投与経路など)のみによって規制される。担体は、添加剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存剤、着香剤、および薬理学的に適合性の担体料薬剤を含み得る。加えて、担体は、予想できる形で主成分の作用に影響を及ぼす物質であると定義される、アジュバントである場合がある。
【0041】
経口投与に適した担体の典型例としては、(a)適切な液体(例えばCremophor RH40またはメチルセルロース(例えばMethocel A4M Premium))に含められた懸濁液またはエマルジョン);(b)カプセル(例えば、たとえば、界面活性剤、潤滑油、および不活性充填剤を含んでいる通常のハードシェルまたはソフトシェルのゼラチンタイプカプセル)、錠剤、舐剤(活性物質がショ糖、アラビアゴムまたはトラガカンタ等で風味付けされるか、或いはその活性物質がゼラチンやグリセリンなどの不活性の基剤に含められる)、およびトローチ剤(それぞれ固体または下流のトラガカンタを所定量含む);(c)粉末剤;(d)液剤(一般的には可溶化促進剤と混合されたもの);(e)リポソーム製剤;その他が挙げられる。
【0042】
ARアゴニスト、IB−MECAの経口投与のための剤形の非限定的な一例では、以下の成分と量で錠剤に製剤される:
【表1】

【0043】
局所投与用製剤は、以下に限定されないが、眼科用エマルジョンまたは溶液(例えば、点眼剤)、眼科用ゲル、眼科用軟膏、または油性ローションを含む、局所投与用の剤形であり得る。AARアゴニストの局所投与では、適切な薬剤含有層にAARアゴニストを含み、まぶたの上に置かれる眼科用パッチが使用、ならびに、AARアゴニストを含み、結膜嚢の下または上に配置されるデバイスである眼科用インサートの使用が含まれる(例えばWO0059420参照)。
【0044】
点眼剤は、無菌の水溶液(例えば食塩水、緩衝液など)にAARアゴニストを懸濁することによって、または、使用前に溶解される粉末組成物と組み合わせることによって調製し得る。IB−MECAは水溶性でないことから、IB−MECAを含有する液剤を調製する場合、IB−MECAを溶液中に保持するためには、乳化剤、界面活性剤、可溶化促進剤その他の利用が必要となる場合があることに注意されたい。
【0045】
他の添加剤も点眼剤には含められる場合があり、そのような添加剤には、例えば、等張化剤(例えば、塩化ナトリウムなど)、緩衝剤(例えば、ホウ酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなど)、保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノールなど)、増粘剤(たとえば、ラクトース、マンニトール、マルトースなどの糖類);例えば、ヒアルロン酸またはその塩(例えばヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、その他);例えば、ムコ多糖類(例えばコンドロイチン硫酸、その他);例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、架橋ポリアクリレート、その他)がある。
【0046】
眼軟膏は、AARアゴニストを基剤に混入することによって調合することができる。眼軟膏のための基剤の例としては、ワセリン、Selen 50、Plastibase、マクロゴールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
現状製剤において使用できるいくつかの典型的な眼剤用粘性増強剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム;メチルセルロース;ヒドロキシプロピル・セルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース;ポリエチレングリコール300;ポリエチレングリコール400;ポリビニルアルコール;およびプロビドンが挙げられる。
【0048】
いくつかの天然材料、例えばVEEGUM、アルギン酸、キサンタンガム、ゼラチン、アラビアゴム、およびトラガカンタも、点眼剤の粘性を増加させるのにも用いられ得る。
【0049】
低張性点眼が角膜の水腫を引き起こし、高張性点眼は角膜の変形を引き起こすことから、張性は重要である。理想的な張性は、およそ300mOsMである。そのような張性は、当業者に周知のRemington:The Science and Practice of Pharmacyに記載の方法によって達成することができる。
【0050】
さらに別の投与経路として、以下に限定されないが、非経口投与(皮下、筋肉内、動脈内、静脈内、腹膜内、および鼻腔内投与を含む)、その他を含み得る。
【0051】
本明細書において使用される、「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」という記載は、文脈上単数に限定することが明確でない限り、単数のみならず、複数のものも指すものとする。例えば、用語「あるAARアゴニスト」には、AARに特異的に結合し、もって該受容体全体的または部分的に活性化できる1以上の化合物が包含される。
【0052】
さらに本明細書で使用される「含む(comprising)」という語は、当該組成物が、記載された活性薬剤すなわちAARを含有するが、他の要素、例えば生理学的に許容できる担体および賦形剤ならびに他の活性薬剤も除外はしないことを意味する。用語「基本的に〜からなる」は、記載された要素を含有するが、かつ他の要素はそれがブドウ膜炎の治療について基本的に意義をもち得る要素であっても除外される組成物を定義するために用いられる。したがって「からなる」は、他の要素のうち微量要素をも除外することを意味する。これらの各表現によって定義される実施形態は、本発明の範囲内にある。
【0053】
さらに、例えば、主成分としてAARを含む組成物を構成する要素の量または範囲を記載するとき、すべての数値の記載は、表示の数値から最大20%、場合によっては最大10%、(+)または(−)にずれることがある概算値である。この点は、全数値の記載の前に必ずしも用語「約、およそ」が記載されていない場合でも考慮されたい。
【0054】
本発明は、本発明によって実施された以下の実験の説明で例示される。これらの実施例は、限定を意図するものではなく、例示を意図したものであることを理解されたい。上記の記載に基づき、これらの実施例に対して多くの修正や変更が可能であることは明白である。従って、本発明は、特許請求の範囲から逸脱しない範囲で、以下の具体的に記載された実施例とは異なる無数の形態で実施し得る。
【0055】
[非限定的実施例の説明]
[IB−MECAのブドウ膜炎の発症に対する効果]
[材料および方法]
使用されたAARアゴニストは、一般的には1−デオキシ−1−[6−[[(3−ヨードフェニル)メチル]アミノ]−9H−プリン−9−イル]−Nメチル−D−リボフランウロンアミドとして、または、N−(3−ヨードベンジル)−アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド(IB−MECA)として知られている臨床用グレードの化合物であって、Albany Molecular Research Inc,Albany,NY,USAにより、医薬品の臨床試験の実施の基準(GMP)の下で本出願人のために合成されたものであった。10μMのIB−MECAの原液をジメチルスルホキシド(DMSO)中に調製し、さらなる希釈液をRPMI培養液中で作製した。
【0056】
2.5mg/mlまでのヒト結核菌H37RAを補填された不完全フロイントアジュバント中の網膜抗原光受容体間網膜様の結合性タンパク質(IRPB、1匹のマウスにつき200μg)のエマルジョンをマウスの腿と尾の基部において皮下に入れてC57BL/6jマウスを免疫化することによって、実験的急性ブドウ膜炎(EAU)を誘発した。加えて、百日咳毒素(300ng/マウス)を腹膜内に注射した。
【0057】
IB−MECA(1oz(特許庁)につき10μg/kg、1日2回)の経口投与治療を、免疫化後7日目に開始した。病気の重症度を、免疫化後16日目および20日目に、瞳孔拡張に眼底検査によって記録した。スコアを、次のように割り当てた:0−変化なし、0.5−微細な変化。少数(1−2)非常に小さい変化。末梢巣状病変、最小の脈管炎/虹彩炎;1−軽度脈管炎、<5小さな巣状病変、≦1線状病変;2−多数(>5)脈絡網膜性病変および/または浸潤;重症脈管炎(大きいサイズ、厚い壁部、浸潤); 線状病変ほとんどなし(<5)。
【0058】
研究終了時に、新たに摘出された眼球を、リン酸緩衝グルタールアルデヒドに固定し、ヘマトキシリン‐エオジンで染色して、病理分析を施した。組織学的重症度は、眼球での網膜と脈絡膜と網膜剥離における細胞浸潤、脈管炎、肉芽腫構造、光受容細胞障害の程度に基づいて、0−4のスケールで等級分けした。
【0059】
IB−MECAのT細胞の抗原特異性反応に対する免疫増強効果を調べるために、試験管内の抗原による増殖反応アッセイを実行した。流入領域リンパ節(鼠径部および腸骨)を、ビヒクル群およびIB−MECA処置群の両方のIRBP免疫化されたマウスから収集した。段階的な用量でのIRBP(0.2−20μg/ml)の存在下で、細胞を48時間培養し、増殖を[H]−チミジン組み入れアッセイによって評価した。
【0060】
[結果]
図1は、IB−MECA(図中コード名CF101で特定される)による治療が、眼底検査スコアを免疫化後16日目で91%、免疫化後20日目で49.4%阻害したことを明らかにしている。
【0061】
さらに図2は、IB−MECA(図中コード名CF101で特定される)による治療が、ビヒクル投与をうけている群と比較して53%病理学的スコアを阻害したことを示しており、このことは眼底検査の観察結果を支持している。
【0062】
図3に示すように、ビヒクル処置された動物に由来する細胞では、IRBPに対する高いT細胞応答が観察されたが、IB−MECA処置された動物に由来する細胞は、特定のアゴニストに対する中等度の応答を示した(IB−MECAは図中コード名CF101で特定される)。
【0063】
以上のように、IB−MECAは、EAUの臨床的および病理的スコアの発生を減らし、かつ関連する抗原特異性増殖反応を阻害した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体におけるブドウ膜炎の治療のためのAARアゴニストの使用。
【請求項2】
前記AARアゴニストの前記被検体への経口投与に適する剤形での、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記AARアゴニストの1日あたり2回の経口投与に適した剤形での、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記AARアゴニストの前記被検体への局所投与に適する剤形での、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記AARアゴニストの前記被検体の眼球への局所投与に適する剤形での、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記AARアゴニストが、点眼剤に製剤される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記AARアゴニストが、N−2−(4−アミノフェニル)エチルアデノシン(APNEA)、N−(4−アミノである−3−ヨードベンジル)アデノシン−5’−(N−メチルウロンアミド)(AB−MECA)、N−(3−ヨードベンジル)−アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド(IB−MECA)、および2−クロロ−N−(3−ヨード・ベンジル)−アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド(Cl−IB−MECA)から選択される、請求項1乃至6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記AARアゴニストが、IB−MECAである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
ブドウ膜炎の治療のための方法であって、被検体に対し、Aアデノシン受容体(AAR)アゴニストを、ブドウ膜炎の治療または予防に有効な量投与するステップを含む、方法。
【請求項10】
前記AARアゴニストが前記被検体に経口投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記AARアゴニストが1日あたり2回の経口投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記AARアゴニストが前記被検体に局所投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記AARアゴニストが前記被検体の眼球に局所投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記AARアゴニストが、点眼剤の形で前記被検体の眼球に局所投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記AARアゴニストが、N−2−(4−アミノフェニル)エチルアデノシン(APNEA)、N−(4−アミノである−3−ヨードベンジル)アデノシン−5’−(N−メチルウロンアミド)(AB−MECA)、N−(3−ヨードベンジル)−アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド(IB−MECA)、および2−クロロ−N−(3−ヨード・ベンジル)−アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド(Cl−IB−MECA)から選択される、請求項9乃至14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記AARアゴニストが、IB−MECAである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ブドウ膜炎の治療のための医薬組成物であって、
有効成分としての、ブドウ膜炎の治療に有効な量のAARアゴニストと、
生理学的に許容できる担体とを含む、医薬組成物。
【請求項18】
前記生理学的に許容できる担体が、前記AARアゴニストの経口投与に適する、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記AARアゴニストが、1日あたり2回の経口投与に適した量である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記生理学的に許容できる担体が、前記AARアゴニストの局所投与に適する、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記AARアゴニストの眼球への局所投与に適する、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
点眼剤である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記AARアゴニストが、N−2−(4−アミノフェニル)エチルアデノシン(APNEA)、N−(4−アミノである−3−ヨードベンジル)アデノシン−5’−(N−メチルウロンアミド)(AB−MECA)、N−(3−ヨードベンジル)−アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド(IB−MECA)、および2−クロロ−N−(3−ヨード・ベンジル)−アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド(Cl−IB−MECA)から選択される、請求項17乃至22のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記AARアゴニストが、IB−MECAである、請求項23に記載の医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2013−521274(P2013−521274A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555540(P2012−555540)
【出願日】平成23年2月27日(2011.2.27)
【国際出願番号】PCT/IL2011/000193
【国際公開番号】WO2011/107981
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(506200382)ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ・アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー・デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ (4)
【出願人】(507028608)キャン−ファイト・バイオファーマ・リミテッド (12)
【Fターム(参考)】