説明

ブライユ点字印刷、凸印刷および通常印刷用途のための紫外線硬化性ゲル化剤インク

【課題】ブライユ点字印刷、凸印刷、通常印刷、またはそれらの組合せにおける基材へのインクジェット印刷のための印刷装置を提供する。
【解決手段】インクジェット印字ヘッドと、インクが前記インクジェット印字ヘッドから噴出される方向の印刷領域面と、を含むインクジェット印刷装置であって、前記インクジェット印字ヘッドと印刷領域面の間の高さ間隔が調節可能であり、前記インクジェット印字ヘッドが、任意の着色剤と放射線硬化性モノマーまたはプレポリマー、光開始剤、反応性ワックス、およびゲル化剤を含む相変化インクビヒクルとを含む紫外線硬化性相変化インク組成物を噴出し、かつ前記印刷領域面に堆積した印刷物が、ブライユ点字印刷、凸印刷、または通常印刷とブライユ点字印刷および凸印刷の1つまたは両方との組合せである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示されているのは、ブライユ点字印刷、凸印刷、通常印刷、またはそれらの組合せにおける基材へのインクジェット印刷のための紫外線硬化性ゲル化剤インクである。また、前記の紫外線硬化性ゲル化剤インクによりブライユ点字印刷、凸印刷、通常印刷、またはそれらの組合せを含む画像を形成するための方法も記載されている。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、選択された領域に光硬化性のフォトポリマーを堆積させるようなインクジェット技術を用いた特別なプリント効果を発現させる方法が開示されている。また、特許文献2には、印刷記録媒体上にスプレーしたウエットインク堆積物を用いて、盛り上がった文字やグラフィックを印刷する方法と装置が提案されている。一方、特許文献3には、室温では固体で、加温すると液体になるインクを用いたインクジェットプリント方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6644763号
【特許文献2】米国特許第5627578号
【特許文献3】米国特許第4490731号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の組成物およびプロセスが、それらの意図した目的に対しては適切であるものの、ロバストな凸印刷、ブライユ点字、および通常印刷画像の1つまたは要望通りの組合せを生ずる方法に対する必要性が存続している。さらにまた、凸印刷と通常画像との組合せを生ずることができる印刷装置に適合するロバスト(robust、堅牢な)なマーキング材料に対する必要性が存続している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
インクジェット印刷装置は、インクジェット印字ヘッドと、インクが前記インクジェット印字ヘッドから噴出される方向の印刷領域面とを含むインクジェット印刷装置であって、前記インクジェット印字ヘッドと印刷領域面の間の高さ間隔が調節可能であり、 前記インクジェット印字ヘッドが、任意の着色剤と放射線硬化性モノマーまたはプレポリマー、光開始剤、反応性ワックス、およびゲル化剤を含む相変化インクビヒクルとを含む紫外線硬化性相変化インク組成物を噴出し、かつ、前記印刷領域面に堆積した印刷物が、ブライユ点字印刷、凸印刷、または通常印刷とブライユ点字印刷および凸印刷の1つまたは両方との組合せであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本明細書における実施形態との関連で使用するための一例の装置の側面図である。
【図2】図1に示されているものと同様の装置の透視図である。
【図3】本マーキング材料を直接基材に堆積させることを含む本明細書における実施形態の概略描写である。
【図4】デジタル的に発生された紫外線硬化性ゲル化剤インクドットの描写である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における利点としては、通常の高さの印刷画像も生ずることができる同じ装置を使用して凸印刷物を形成することができることが挙げられる。その二元的なインクジェット印刷装置は、したがって、ユーザーが専用の凸字の高さの印刷装置と通常の印刷装置の両方を持たなければならないことを避けられるために費用効率が高い。本発明における紫外線硬化性相変化ゲル化剤インクは著しくロバストである。室温におけるその材料のゲルの性質は、印刷された液滴の拡散または移動を防ぎ、多種多様な基材上のロバストなブライユ印刷、凸印刷、または通常印刷マーキングの容易な形成を可能にする。本発明で生ずる印刷ドットは、市販のエンボス加工印刷を用いて調製されたエンボス加工ドットと比較して接触による損傷に対して著しく耐性がある。有利な点としては、さらに、ロバストな凸印刷、ブライユ点字および通常印刷の1つまたは組合せを含む任意の文書の要求に応じた印刷が挙げられ、ここで、その高さは、ソフトウェアおよびプリンターシステムにより制御することができる。文書は、必要に応じて単純にリプリントすることができ、従来の方法を用いて凸印刷の文書をコピーする、特にその文書がグラフまたは図面を含むときはそのグラフまたは図面が手製であるための困難を、排除する。さらなる利点としては、例えばインクに粒子を添加することなどによる異なるテクスチャ効果を創出する能力が挙げられる。該ドットは、例えば盲目ではない個人などに付加情報を伝達するために選択した色で着色することができる。現在のところ一般的な識別を可能にする印刷されたページ上のブライユ点字の文章に注釈をつける単純な方法がない。本開示は、例えば、金融書類を表すために選択された緑色のブライユ点字、法律関係書類を表すために選択された赤色のブライユ点字などを可能にする。
【0008】
本発明では任意の適当な印刷装置、例えば、少なくともインクジェット印字ヘッドと、インクがそのインクジェット印字ヘッドから噴出される方向の印刷領域面とを含み、該インクジェット印字ヘッドと印刷領域面の間の高さ間隔が調節可能である米国特許出願第11/683011号に記載されている装置などを使用することができる。
【0009】
本発明における一連の装置および方法は、中間転写部材に、または、直接画像受容基材に画像パターン状態のマーキング材料を適用するのに適する任意の望ましい印刷システムおよびマーキング材料、例えば、加熱式インクジェット印刷、圧電式インクジェット印刷、音響インクジェット印刷、熱転写印刷、グラビア印刷、静電複写印刷方法などの中に採用することができる。
【0010】
図1および2は、中間転写部材上に画像を形成し、続いてその画像をその中間転写部材から最終的な画像受容基材に転写するための画像形成装置10を説明している。装置10は、中間転写部材14を含む。インクジェットヘッド11は、画像パターン26状態のマーキング材料を中間転写部材の表面12に適用する。表面12は、印刷領域面であり、それに向けてインクジェットヘッド11は画像を形成するマーキング材料を噴出する。ここでは、その印刷領域面は、中間転写部材の表面である。
【0011】
マーキング材料が画像受容基材に直接噴出されるときは、その印刷領域面は、図3に示されている画像受容基材の表面である。
【0012】
中間転写部材14は、ロール、ドラム、ベルト、ウェブ、またはプラテンであり得る。
【0013】
転写装置61は、中間転写部材表面からのマーキング材料の画像パターンを画像受容基材18に転写する転写ロール22を含む。任意選択の画像受容基材ガイド20は、供給装置(図示せず)からの画像受容基材をロール22と中間転写部材14とが相対する円弧状の表面により形成されるニップを通過させ、その基材を導くために使用することができる。任意選択のストリッパーフィンガー25は、中間転写部材14の表面から画像受容基材を取り外す助けをするために、画像形成装置10に取り付けることができる。ロール22は、エラストマー被膜を備えた金属核23を有することができる。画像受容基材上の画像の溶融定着もこの転写装置で達成することができる。
【0014】
画像26が一旦ニップに入ると、それは転写されてその最終的な画像形態となり、基材18上の画像26に対してロール22単独によって与えられる圧力によるか、またはその圧力と任意選択のヒーター21,19によって供給される熱との組合せによって、画像受容基材に接着するかまたは固定される。ヒーター24は、また、この時点での進行を促すための熱を供給するためにも使用することができる。画像受容基材に一旦接着および/または溶融定着したら、その画像は周囲温度まで冷却する。
【0015】
印字ヘッド11は、適切なハウジングおよび支持要素(図示せず)によって支えることができる。通常の画像形成装置においては、インクジェット印字ヘッドは、固定されるように取り付けられる。
【0016】
本発明では、そのインクジェット印字ヘッドは、そのインクジェット印字ヘッドと印刷領域面との間の間隔(本明細書ではインクジェット印字ヘッドと印刷領域面との間の高さ間隔とも称する)に関して間隔の調節が可能なように取り付ける。
【0017】
その印字ヘッドは、画像受容基材上に通常の高さの画像を形成するための標準的な位置に位置付ける。通常の高さの画像は、一般的には単一色については5μm〜15μm、重ねた多色については20〜45μmの印刷高さを有する。そのインクジェット印字ヘッドは、そのヘッドがマーキング材料を噴出する方向の印刷領域表面から80μm〜200μm、または100μmまでに位置付けることができる。
【0018】
このインクジェット印字ヘッドの「通常の高さの位置」は、インクジェット印字ヘッドと印刷領域面の間の最小高さ間隔であり得る第1の高さ間隔を表し、ここで、その印字ヘッドは印刷領域面に対してその最も接近した位置にある。
【0019】
このインクジェット印字ヘッドの第1の位置は、通常の高さの単一色または多色の画像を印刷するには許容できるものの凸字の高さの画像を形成しようとするときは問題が発生する。ブライユ点字の用途に対しては、画像の高さは、画像が触覚によって容易に見つけられ、適切に判読されるためには少なくとも200μmであるべきである。
【0020】
本発明においては、該インクジェット印字ヘッドは、該インクジェット印字ヘッドが上記の通常の高さの印刷のための第1の位置からその第1の高さ間隔より大きい第2の高さ間隔に移動することを可能にするように印刷領域面に関して間隔取りの調節が可能である。その第2の高さ間隔は、固定されてはおらず、所定の印刷に対して必要に応じて変更し、印刷中に必要に応じて変えることができる。画像の積み上げを完成させるためには、第1の位置から第2の位置になどと、必要に応じて高さ間隔を調節することが望ましいかもしれない。
【0021】
画像積み上げにおいて、その画像の各層は、4μm〜12μmの印刷高さを有することができる。適切な回数の通過またはインク噴出を、凸画像を、例えば少なくとも80μm〜500μmの所望の合計印刷高さまで積み上げることができるように、選択することができる。このようにして、視覚および身体障害者材料開発センターのための国会図書館(the National Library For The Blind And Physically Handicapped Materials Development Center)により設定された基準を達成することができる。
【0022】
該インクジェットのヘッドは、単一色またはフルカラーの印刷を支援することができる。図2は、4つの異なるチャネルのセット、例えば、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのそれぞれに対するものを含むインクジェットのヘッドを示している。その印字ヘッドは、そのインクジェットのヘッドが印刷領域面から最小の間隔で設定されているときはフルカラーの通常の高さの印刷物を、またはそのインクジェットのヘッドが印刷領域面からの最小間隔より大きい間隔のところにあるときは任意の色の組合せの凸の高さの印刷物を印刷することができる。
【0023】
任意の適当な高さ調節機構をインクジェット印字ヘッドまたは印刷領域面に対して使用することができる。
【0024】
その高さ調節機構は、インクジェット印字ヘッドのインクの噴出を制御するのと同じ制御装置であってもよい制御装置によって制御することができる。
【0025】
図3は、移動可能な印字ヘッド11が、画像パターン状態のインク液滴を直接基材30に噴出しているところを説明しており、印字ヘッド11の動きは縦の矢印によって画かれている。基材30は、そのとき、印刷された画像が硬化される紫外線硬化ステーション34に向かう単一の矢印によって示されている方向のベルト32に沿って移動することができる。実施形態は、単一の印刷および硬化ステーション、または順次連続して配置されているいくつかの印刷および硬化ステーションを通過する複数回の通過を含む。
【0026】
凸の印刷マークは、凸の高さを必要とする部分上でインクジェット印字ヘッドを適切に複数回通過させることによって形成することができる。凸の高さの画像を形成するためには、単一の通過の間の、その画像の同じ場所に向かうインクジェットのヘッドの複数の異なるインクジェットからのインクの噴出も使用することができる。インクの各層は、その画像の高さに、4μm〜12μmまでの高さを追加することができる。所望される合計の印刷高さを知ることによって、通過または噴出の適切な回数を容易に決定することができる。
【0027】
本明細書に記載されているような二元的印刷装置を用いる画像形成において、第1のステップは、その画像を、通常の印刷高さ、凸の印刷高さ、またはその両方の組合せを有するように印刷すべきかどうかを決定することであり得る。制御装置は、そのとき、その画像の場所におけるインクの適切な量および/または層を堆積させるインクジェット印字ヘッドを、その場所における所望の印刷高さを有する画像を得るために制御することができる。
【0028】
通常の高さまたは凸の高さの印刷画像を形成することができる任意のマーキング材料を使用することができる。紙基材に対しては固体または相変化インクマーキング材料が適している。液体インクマーキング材料を紙基材に使用するのは、それだと、その上に高さを築くよりもむしろ紙基材中に吸収される傾向があるためにより困難であり得る。液体インクマーキング材料を特定の用途では使用することができ、かつ/または、例えば、紙基材中への実質的な拡散を防止する、ゲル化剤、紫外線硬化または青色光硬化を使用するなどの高さ構築手段をとるときは使用することができる。
【0029】
インクおよびトナー、例えば、平版およびフレキソインキ、インクジェット印刷プロセスでの使用に適するものを含めた水性インク、静電写真プロセスでの使用に適する液体および乾燥トナー材料、インクジェット印刷プロセスでの使用に適するものを含めた固体のホットメルトインクなどを含めた任意の従来のマーキング材料を使用することができる。固体のインクは、特に望ましい制御および結果を提供する。
【0030】
かかるマーキング材料は、一般的には、着色剤、例えば、顔料、染料、顔料の混合物、染料の混合物、または顔料と染料の混合物をその中に含む少なくとも1つのビヒクルを含む。
【0031】
複数の実施形態において、そのマーキング材料は、任意選択の着色剤および少なくとも1つの放射線硬化性モノマーまたはプレポリマー、光開始剤、反応性ワックス、およびゲル化剤を含むビヒクル中の相変化を含む紫外線硬化性相変化インク組成物を含む。
【0032】
その着色剤は、着色したマーキング材料中に、例えば、そのマーキング材料の0.5〜25重量%の任意の望ましい量で存在させることができる。
【0033】
着色剤としては、ビヒクル中に分散または溶解することができる任意の染料または顔料を挙げることができる。
【0034】
本発明における放射線硬化性相変化ゲル化剤インクは、凸の高さの画像状態の各層の堆積後、または凸の高さの画像のすべての層の堆積の完了と同時に硬化させることができる。
【0035】
本明細書に開示されているインクビヒクルは、ラジカル的に硬化可能なモノマー化合物、例えば、アクリレートおよびメタクリレートモノマー類などを含めた任意の適当な硬化性モノマーまたはプレポリマーを含むことができる。比較的無極性のアクリレートおよびメタクリレートモノマー類としては、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、カプロラクトンアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ブチルアクリレートなどが挙げられる。多官能性アクリレートおよび多官能性メタクリレートモノマー類ならびにオリゴマー類を、反応性希釈剤としておよび硬化した画像の架橋密度を増し、それによって硬化した画像の強靭性を高めることができる材料として含むことができる。多官能性アクリレートおよび多官能性メタクリレートモノマー類ならびにオリゴマー類の例としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、1,2−エチレングリコールジアクリレート、1,2−エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,12−ドデカノールジアクリレート、1,12−ドデカノールジメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アミン変性ポリエーテルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどが挙げられる。反応性希釈剤は、担体の1〜70重量パーセントで添加される。
【0036】
本発明におけるインクビヒクルは、紫外線のような放射線にさらされたとき硬化性モノマーとして挙動するような化合物などの液体に溶解されたとき比較的狭い温度範囲の中で比較的急激な粘度上昇を受けるゲル様の挙動を示すことができる少なくとも1つの化合物、例えばプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートなどを含有する。
【0037】
本発明におけるいくつかの化合物は、少なくとも30℃、少なくとも10℃、または少なくとも5℃の温度範囲の中で、少なくとも10、少なくとも10、または少なくとも10センチポワズの粘度の変化を受ける。
【0038】
本発明におけるいくつかの化合物は、最初の温度で半固体のゲルを形成することができる。化合物が相変化インク中に組み込まれるとき、その温度はそのインクが噴出されるときの特定温度より低い。その半固体のゲル相は、1つ以上の固体ゲル化剤分子および液体の溶媒を含む動的平衡として存在する物理ゲルである。その半固体のゲル相は、物理的力、例えば温度、機械的攪拌、または化学的力、例えばpH、イオン強度などによる刺激を受けると、巨視的レベルで液体から半固体状態に可逆的に変化し得る非共有の相互作用、例えば水素結合、ファンデルワールス相互作用、芳香族非結合相互作用、イオンまたは配位結合、ロンドン分散力によってまとまっている分子成分の動的ネットワークの集合である。ゲル化剤分子を含有する溶液は、温度がその溶液のゲル点の上または下に変化するとき、半固体のゲル状態と液体状態の間の熱可逆的転移を示す。半固体のゲル相と液体相の間の転移のこの可逆サイクルは、溶液配合物の中で何度も繰り返すことができる。
【0039】
本明細書に開示されているインクビヒクルは、Irgacure(登録商標)127、Irgacure(登録商標)379、Irgacure(登録商標)819、ベンゾフェノン類、ベンゾフェノン誘導体類、イソプロピルチオキサンテノン類、アリールスルホニウム塩類、アリールヨードニウム塩類、ベンジルケトン類、単量体ヒドロキシルケトン類、重合体ヒドロキシルケトン類、α−アミノケトン類、アシルホスフィンオキシド類、メタロセン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、α−アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキシド類、アシルホスフィン光開始剤類を含むことができる。具体例としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンジル−ジメチルケタール、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシドおよびその他のアシルホスフィン類、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノンおよび1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル2−ジメチルアミノ1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル)−フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イルフェニル)−ブタノン、チタノセン類、イソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ベンジル−ジメチルケタールなどが挙げられる。
【0040】
該相変化インクは、また、アミン相乗剤、例えば、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエートおよび2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエートなども含有することができる。
【0041】
開始剤は、任意の望ましいまたは有効な波長、例えば少なくとも200、または560ナノメートル以下の放射線を吸収することができる。
【0042】
適宜、光開始剤は、インク組成物の0.5〜10重量パーセントの量で存在する。
【0043】
任意の適当な反応性ワックスを、本明細書に開示されているビヒクル中の相変化に対して使用することができる。その反応性ワックスは、その他の成分と混和性であり、硬化性モノマーと重合してポリマーを形成する硬化性ワックス成分を含むことができる。そのワックスを含有することによってインクが噴出温度から冷めるとき、その粘度の上昇が促進される。
【0044】
複数の実施形態において、その反応性ワックスは、重合性基、例えばアクリレート、メタクリレート、アルケン、アリルエーレル、エポキシドおよびオキセタンなどにより官能化されたヒドロキシル末端ポリエチレンワックスである。
【0045】
硬化性の基により官能化することができるヒドロキシル末端ポリエチレンワックスの例としては、鎖長nの混合物が存在し、平均鎖長が16〜50である構造CH−(CH−CHOHを有する炭素鎖の混合物、および同様の平均鎖長の線状低分子量ポリエチレンが挙げられる。2,2−ジアルキル−1−エタノールと見なされるゲルベアルコール類(Guerbet alcohols)も適当な化合物である。複数の実施形態において、式、
【化1】

のPRIPOL(登録商標)2033が選択される。これらのアルコールは、反応性エステルを形成する紫外線硬化性部分を備えたカルボン酸と反応させることができる。例としては、アクリル酸およびメタクリル酸が挙げられる。具体的な硬化性モノマーとしては、UNILIN(登録商標)350、UNILIN(登録商標)425、UNILIN(登録商標)550およびUNILIN(登録商標)700のアクリル酸エステルが挙げられる。
【0046】
硬化性の基により官能化することができるカルボン酸末端ポリエチレンワックスの例としては、鎖長nの混合物が存在し、平均鎖長が16〜50である構造CH−(CH−COOHを有する炭素鎖の混合物、および同様の平均鎖長の線状低分子量ポリエチレンが挙げられる。かようなワックス類の例としては、UNICID(登録商標)350、UNICID(登録商標)425、UNICID(登録商標)550およびUNICID(登録商標)700が挙げられる。その他の適当なワックス類は、構造CH−(CH−COOHを有しており、n=14、n=15、n=16、n=18、n=20、n=22、n=24、n=25、n=26、n=28、n=30、n=31、n=32、またはn=33である。2,2−ジアルキルエタノール酸と見なされるゲルベ酸類(Guerbet acids)も適当な化合物である。式、
【化2】

のPRIPOL(登録商標)1009も使用することができる。これらのカルボン酸類は、紫外線硬化性部分を備えたアルコール類と反応して反応性エステル類を形成することができる。
【0047】
これらのアルコール類の例としては、2−アリルオキシエタノール、
【化3】

SR495B(登録商標)、
【化4】

CD572(登録商標)(R=H、n=10)およびSR604(R=メチル、n=4)が挙げられる。
【0048】
任意選択の硬化性ワックスは、インク中にそのインクの1〜25重量%の量で含まれる。
【0049】
硬化性モノマーまたはプレポリマーおよび硬化性ワックスは、全体として、インクの50重量%超〜少なくとも80重量%を形成することができる。
【0050】
任意の適当なゲル化剤は、例えば、米国特許出願第11/290202号に記載されており、そのゲル化剤が式、
【化5】

の化合物であるものを本明細書に開示されているインクビヒクルに対して使用することができる。
【0051】
上式中、Rは、
(i)1〜12個の炭素原子を有するアルキレン基(ただし、アルキレン基は、本明細書では、直鎖および分枝、飽和および不飽和、環式および非環式、置換および非置換のアルキレン基を含み、前記アルキレン基中にヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などが適宜存在してもよい二価の脂肪族基またはアルキル基として定義される)、
(ii)5〜6個の炭素原子を有するアリーレン基(ただし、アリーレン基は、本明細書では、置換および非置換のアリーレン基を含み、前記アリーレン基中にヘテロ原子、例えば、(i)中のものなどが存在してもよい二価の芳香族基またはアリール基として定義される)、
(iii)6〜7個の炭素原子を有するアリールアルキレン基(ただし、アリールアルキレン基は、本明細書では、置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、前記アリールアルキレン基のアルキル部分が、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、前記アリールアルキレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子、例えば、(i)中のものなどが存在してもよい二価のアリールアルキル基として定義される)、または、
(iv)6〜7個の炭素原子を有するアルキルアリーレン基(ただし、本明細書においてアルキルアリーレン基は、置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、前記アルキルアリーレン基のアルキル部分が、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、前記アルキルアリーレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子、例えば、(i)中のものなどが存在してもよい二価のアルキルアリール基として定義される)であり、ここで、その置換されているアルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、およびアルキルアリーレン基上の置換基は、ハロゲン原子、または基、例えば、シアノ、ピリジン、ピリジニウム、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、カルボニル、チオカルボニル、スルフィド、ニトロ、ニトロソ、アシル、アゾ、ウレタン、尿素、それらの混合物などであり得、2つ以上の置換基が共に結合して環を形成してもよい。
【0052】
およびR’は、それぞれ他方とは独立に、
(i)1〜36個の炭素原子を有するアルキレン基、
(ii)5〜7個の炭素原子を有するアリーレン基
(iii)6〜8個の炭素原子を有するアリールアルキレン基、または
(iv)6〜7個の炭素原子を有するアルキルアリーレン基であり、ここで、置換されている、アルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、およびアルキルアリーレン基は、Rの(iv)におけるものと同じであり得る。
【0053】
およびR’は、それぞれ他方とは独立に、
(a)光開始基、例えば、
【化6】

から誘導された基、
【化7】

から誘導された基、
【化8】

から誘導された基、
【化9】

から誘導された基である。
【0054】
または、(b)基であって、
(i)2〜30個の炭素原子を有するアルキル基(ここでは直鎖および分枝、飽和および不飽和、環式および非環式、置換および非置換のアルキル基を含み、前記アルキル基中にヘテロ原子、例えば、Rの(i)におけるものなどが存在してもよい)、
(ii)5〜30個の炭素原子を有するアリール基(ここでは置換および非置換のアリール基を含み、前記アリール基中にヘテロ原子、例えばRの(i)におけるものなどが存在してもよい)、例えばフェニルなど、
(iii)6〜30個の炭素原子を有するアリールアルキル基(ここでは置換および非置換のアリールアルキル基を含み、そのアリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、該アリールアルキル基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにRの(i)におけるものと同様のヘテロ原子が存在してもよい)、例えば、ベンジルなど、または、
(iv)6〜30個の炭素原子を有するアルキルアリール基(ここでは置換および非置換のアルキルアリール基を含み、そのアルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、該アルキルアリール基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにRの(i)におけるものと同様のヘテロ原子が適宜存在してもよい)、例えばトリルなどであり、ここで、その置換されている、アルキル、アリールアルキル、およびアルキルアリール基上の置換基は上記の(iv)におけるものと同じであり得る。
【0055】
ただし、RおよびR’の少なくとも1つは光開始基であることを条件とし、XおよびX’は、それぞれ他方とは独立に、酸素原子または式−NR−の基である。
【0056】
式中、Rは、
(i)水素原子、
(ii)1〜30個の炭素原子を有するアルキル基、
(iii)5〜30個の炭素原子を有するアリール基、
(iv)6〜30個の炭素原子を有するアリールアルキル基、または、
(v)6〜30個の炭素原子を有するアルキルアリール基であり、ここで、その置換されている、アルキル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリール基上の置換基は上記の(iv)におけるものと同じであり得る。
【0057】
一実施形態において、RおよびR’は、それぞれ式−C3456+a−(aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12である)の基であり、不飽和および環状の基を含むことができる分枝アルキレン基であり、式、
【化10】

の異性体を含む。一実施形態において、Rは、エチレン(−CHCH−)基である。
【0058】
別の実施形態において、RおよびR’は、両方とも、
【化11】

である。
【0059】
一実施形態において、該化合物は式、
【化12】

のものであり、上式中、−C3456+a−は、不飽和および環状の基を含むことができる分枝アルキレン基を表し、式中、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり、式、
【化13】

の異性体を含む。
【0060】
この式の化合物のさらなる例としては、式、
【化14】

であって、上式中、−C3456+a−は、不飽和および環状の基を含むことができる分枝アルキレン基を表し、ここで、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり、上式中、mは、2であり、式、
【化15】

の異性体を含む。
【0061】
この式の化合物のさらなる例としては、式、
【化16】

であって、上式中、−C3456+a−は、不飽和および環状の基を含むことができる分枝アルキレン基を表し、ここで、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり、上式中、nは、2または5であり、式、
【化17】

の異性体を含む。
【0062】
この式の化合物のさらなる例としては、式、
【化18】

であって、上式中、−C3456+a−は、不飽和および環状の基を含むことができる分枝アルキレン基を表し、式中、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり、上式中、pは、2または3であり、式、
【化19】

の異性体を含む。
【0063】
この式の化合物のさらなる例としては、式、
【化20】

であって、上式中、−C3456+a−は、不飽和および環状の基を含むことができる分枝アルキレン基を表し、式中、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり、上式中、qは、2または3であり、式、
【化21】

の異性体を含む。
【0064】
この式の化合物のさらなる例としては、式、
【化22】

であって、上式中、−C3456+a−は、不飽和および環状の基を含むことができる分枝アルキレン基を表し、式中、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり、上式中、rは、2または3であり、式、
【化23】

の異性体を含むものが挙げられる。
【0065】
複数の実施形態において、該ゲル化剤は、
【化24】

【化25】

および、
【化26】

の混合物であり、上式中、−C3456+a−は、適宜不飽和および環状の基を含むことができる分枝アルキレン基、置換および非置換のアルキレン基を表し、ヘテロ原子がそのアルキレン基中に適宜存在してもよく、式中、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12である。
【0066】
本発明におけるゲル化剤は、米国特許出願第11/290121号に開示されている材料を含むことができ、式、
【化27】

であって、式中、RおよびR’は、それぞれ他方とは独立に、少なくとも1つのエチレン性不飽和を有するアルキル基、少なくとも1つのエチレン性不飽和を有するアリールアルキル基、または少なくとも1つのエチレン性不飽和を有するアルキルアリール基であり、R、R’、およびRは、それぞれ他方とは独立に、アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基、またはアルキルアリーレン基であり、nは、繰り返しのアミド単位の数を表す整数で少なくとも1である化合物を含む。
【0067】
本明細書に開示されているゲル化剤化合物は、任意の望ましい、または有効な、例えば、米国特許第7,259,275号に記載されているような方法によって調製することができ、それは、式、
【化28】

の化合物を調製するプロセスを説明しており、(a)式:HOOC−R−COOHの二塩基酸を、式、
【化29】

のジアミンと反応混合物から水を除去する間溶媒なしで反応させて酸末端のオリゴアミド中間体を形成するステップ、および(b)該酸末端のオリゴアミド中間体を、式:R−OHのモノアルコールと、カップリング剤および触媒の存在下で反応させて生成物を形成するステップを含む。
【0068】
本発明における放射線硬化性相変化インクは、また、インク担体の0.01〜3重量パーセントの酸化防止剤を含有することができる。
【0069】
適宜、該放射線硬化性相変化インクは、添加剤、例えば、消泡剤、スリップおよびレベリング剤、顔料分散剤、ならびにさらなる単量体または重合体材料を含有する。
【0070】
インクの硬化は、そのインク画像を任意の望ましいまたは有効な波長、例えば200〜480ナノメートルなどの化学線に、任意の望ましいまたは有効な時間、例えば0.2〜30秒間露光することによって達成することができる。硬化とは、インク中の硬化性化合物が化学線に露光されると分子量の増加、例えば架橋または鎖延長などを受けることを意味する。
【0071】
該インク組成物は、噴出温度(例えば50℃、60℃、または70℃より低くはなく、あるいは120℃または110℃より高くはない)において、一実施形態においては、30、20、または15センチポワズを超えないか、または2、5、または7センチポワズ以上の溶融粘度を一般に有する。
【0072】
該インクは、低温、特に110℃未満、または40℃〜110℃で噴出される。かような低い噴出温度で噴出されるインクとインクがその上に噴出される基材との間の温度差を通常通り使用しても、インク中の急速な相変化を達成するには有効であり得ない。それ故、ゲル化剤を使用して基材に噴出されたインクの急速な粘度上昇を達成することができる。噴出したインク液滴は、そのインクのインク噴出温度より冷たい温度に維持されている受容基材、例えば紙または透明材料などの最終記録基材など、または中間転写部材、例えば油液ドラムまたはベルトなどの所定の位置に、そのインクが液体状態からゲル状態への著しい粘度変化を経る相変化転移の作用により固定することができる。
【0073】
インクがゲル状態を形成する温度は、そのインクの噴出温度未満の任意の温度、一実施形態においては、そのインクの噴出温度より5℃以上低い任意の温度である。そのゲル状態は、少なくとも25℃、または少なくとも30℃、または100℃を超えない、または70℃を超えない、または50℃を超えない温度で形成させることができる。インク粘度の急速で大きな増加は、インクが液体状態にある噴出温度からインクがゲル状態にあるゲル温度に冷却すると同時に起こる。その粘度の増大は、1つの具体的な実施形態において、粘度における少なくとも102.5倍の増大である。
【0074】
インク用の適当なゲル化剤は、インクビヒクル中のモノマー類/オリゴマー類を、急速にかつ可逆的にゲル化し、例えば30℃〜100℃、または30℃〜70℃の温度範囲内での狭い相変化転移を示す。1つの具体的な実施形態におけるインクのゲル状態は、噴出温度における粘度と比較して、例えば30℃〜70℃の転移温度において最低102.5または10センチポワズの粘度の増大を示す。一実施形態は、噴出温度より5℃〜10℃低い範囲内で粘度が急速に上昇し、最終的にジェット粘度の10倍またはジェット粘度の10倍に到達するゲル化剤含有インクを対象としている。
【0075】
該インクがゲル状態のとき、そのインクの粘度は、1,000、少なくとも10,000、または少なくとも100,000センチポワズである。ゲル状態の粘度の値は、少なくとも10、少なくとも104.5センチポワズ、10センチポワズ以下、または106.5センチポワズ以下である。好ましいゲル相は、印刷プロセスによって異なり得る。最高の粘度は、多孔性の紙に直接噴出するとき、またはインクのブリードおよびけば立ちの影響を最小限にするために中間転写を採用するときに好ましい。浸透性のより低い基材例えばプラスチックなどは、個々のインクピクセルのドットゲインおよび凝集を制御する低めのインク粘度の使用につながり得る。そのゲル粘度は、インクの配合および基材温度によって制御することができる。放射線硬化性インクに関するゲル状態のさらなる利点は、10〜10センチポワズのより高い粘度がインク中の酸素の拡散を減少することができ、言い換えるとフリーラジカル開始反応におけるより高速の硬化をもたらすことができることである。
【0076】
インクが最終基材に直接印刷される印刷アプリケーションに関して、そのインクの粘度は、インクが最終基材中ににじむのを防ぐためおよび/または放射線への露光によって硬化するまでの最終基材への接着を促進するために、その最終基材の温度において10センチポワズ以上まで上昇する。一実施形態において、インクが印刷され、その時点でそのインクの粘度が10センチポワズ以上まで上昇する最終基材または中間転写部材の温度は、50℃以下である。
【0077】
インクの原料は、一緒に混合し、続いて少なくとも80℃、120℃以下の温度に加熱し、均一なインク組成物が得られるまで攪拌し、続いてそのインクを周囲温度まで冷ますことができる。そのインクは、周囲温度で固体である。
【0078】
インクは、直接印刷インクジェットプロセス用の装置および間接印刷インクジェット用途において使用することができる。本発明におけるプロセスは、開示されているインクをインクジェット印刷装置に組み込むステップ、そのインクを溶融するステップ、およびその溶融したインクの液滴を記録用基材上に画像パターンでイジェクトさせるステップを含む。一実施形態において、該印刷装置は、インクの液滴を圧電式振動素子の振動によって画像パターンでイジェクトさせる圧電式印刷プロセスを採用する。本明細書に開示されているインクは、また、その他のホットメルト印刷プロセス、例えば、ホットメルト音響インクジェット印刷、ホットメルトサーマルインクジェット印刷、ホットメルト連続流または偏向インクジェット印刷などで使用することもできる。
【0079】
本発明における紫外線硬化性相変化ゲル化剤インクは、インクジェット印字ヘッドと、インクが前記インクジェット印字ヘッドから噴出される方向の印刷領域面とを用い、前記インクジェット印字ヘッドと印刷領域面の間の高さ間隔が調節可能であり、前記インクジェット印字ヘッドが、本明細書に記載の紫外線硬化性相変化インク組成物を噴出するインクジェット印刷装置で使用される。
【0080】
任意の適当な基材または記録シートを使用することができ、例えば、普通紙、罫線入りのノートブック紙、ボンド紙、シリカコート紙、光沢コート紙、透明材料、織物、繊維製品、プラスチック、ポリマーフィルム、金属等の無機基材および木材が挙げられる。
【0081】
本発明における基材の1つには通貨基材、例えば印刷された紙幣などが含まれる。
【0082】
当該紫外線硬化性ゲル化剤インクは、特に通貨への応用に適する触知性の凸印刷マーキングのための材料を提供する。利点開示としては、多くの場合厳しい状況の通貨利用に耐えることができるロバストなマーキングを可能にするデジタルマーキング技術が挙げられる。デジタルの特徴により、マーキングパターンの容易なカスタマイズ化および短期間の印刷作業が可能となり、同一であることを確認するための受け入れ可能な方法が提供される。本発明におけるマーキング材料は、多種多様の基材に適合し、接着することができる。当該紫外線硬化性ゲル化剤インク、インクジェット印刷装置、および方法は、容易に実行され、現行の通貨印刷プロセスに容易に一体化される。当該凸の印刷マーキングは、デジタル処理で利用することができ、識別マーク、セキュリティー機能、およびブライユ点字の単独または組合せでの同時にかつカスタマイズできる印刷を可能にする。該インクは、高温でのロバストな噴出および周囲の基材温度における力学的安定性を提供する。
【0083】
当該基材は、銀行券を含むことができ、ここでのインクはロバストな点字の点またはその他のマークをそこに提供することができる。
【実施例】
【0084】
実施例1.
米国特許第7,279,587号の実施例VIIIに記載されている硬化性アミドゲル化剤の7.5重量パーセント、米国特許出願公開第2007/120925号に記載されているようにして調製されたUnilin350(商標)アクリレートワックスの5重量パーセント、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR399LV(登録商標))の5重量パーセント、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(SR9003(登録商標))の72.8重量パーセント、IRGACURE(登録商標)379光開始剤の3重量パーセント、IRGACURE(登録商標)819光開始剤の1重量パーセント、IRGACURE(登録商標)127光開始剤の3.5重量パーセント、およびDAROCUR(登録商標)ITX光開始剤の2重量パーセント、ならびに紫外線安定剤(IRGASTAB(登録商標)UV10)の0.2重量パーセントを含む紫外線硬化性相変化ゲル化剤インクを調製した。その成分のすべてを一緒に90℃で1時間攪拌した。
【0085】
ドットを3回の噴出に1回の割合で発射するXerox Phaser(登録商標)860を用いてデジタル的に発生させた。印刷後、そのマークを、「D」管球を採用しているUVフュージョンライトハンマー6紫外線ランプシステム(UV Fusion Light Hammer 6 Ultraviolet Lamp System)を装着しているUVフュージョンLC−6Bベンチトップコンベヤー(UV Fusion LC−6B Benchtop Conveyor)による紫外線に、最低限1秒間さらすことによって硬化し、ロバスト構造を提供した。図4に示すように、Phaser(登録商標)860および当該紫外線硬化性相変化ゲル化剤インクマシーンにより生じたデジタル的に発生したUVゲルのドットは、視覚および身体障害者材料開発センターのための国会図書館(the National Library For The Blind And Physically Handicapped Materials Development Center)により設定された最低限の要件に適合し、さらにそれを超える高さのドットを提供した。図4における各ドット間の間隔は、約5.5ミリメートルである。
【符号の説明】
【0086】
10 画像形成装置、11 インクジェットヘッド、12 中間転写部材の表面、14 中間転写部材、19,21,24 ヒーター、20 画像受容基材ガイド、22 転写ロール、23 金属核、25 ストリッパーフィンガー、26 画像パターン、30 基材、32 ベルト、34 紫外線硬化ステーション。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印字ヘッドと、インクが前記インクジェット印字ヘッドから噴出される方向の印刷領域面と、を含むインクジェット印刷装置であって、
前記インクジェット印字ヘッドと印刷領域面の間の高さ間隔が調節可能であり、
前記インクジェット印字ヘッドが、任意の着色剤と放射線硬化性モノマーまたはプレポリマー、光開始剤、反応性ワックス、およびゲル化剤を含む相変化インクビヒクルとを含む紫外線硬化性相変化インク組成物を噴出し、かつ
前記印刷領域面に堆積した印刷物が、ブライユ点字印刷、凸印刷、または通常印刷とブライユ点字印刷および凸印刷の1つまたは両方との組合せである
ことを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置であって、少なくとも1つの硬化性モノマーまたはプレポリマーが、多官能性アクリレートまたは多官能性メタクリレート化合物であることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置であって、ゲル化剤が、式、
【化1】

[式中、Rは、(i)直鎖および分枝、飽和および不飽和、環式および非環式、置換および非置換のアルキレン基を含み、前記アルキレン基中にヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアルキレン基、(ii)置換および非置換のアリーレン基を含み、前記アリーレン基中にヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアリーレン基、(iii)置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、前記アリールアルキレン基のアルキル部分が、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、前記アリールアルキレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアリールアルキレン基、または(iv)置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、前記アルキルアリーレン基のアルキル部分が、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、前記アルキルアリーレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアルキルアリーレン基であり、RおよびR’は、それぞれ他方とは独立に、(i)直鎖および分枝、飽和および不飽和、環式および非環式、置換および非置換のアルキレン基を含み、前記アルキレン基中にヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアルキレン基、(ii)置換および非置換のアリーレン基を含み、前記アリーレン基中にヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアリーレン基、(iii)置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、前記アリールアルキレン基のアルキル部分が、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、前記アリールアルキレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアリールアルキレン基、または(iv)置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、前記アルキルアリーレン基のアルキル部分が、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、前記アルキルアリーレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアルキルアリーレン基であり、RおよびR’は、それぞれ他方とは独立に、(a)光開始基、あるいは(b)(i)直鎖および分枝、飽和および不飽和、環式および非環式、置換および非置換のアルキル基を含み、前記アルキル基中にヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアルキル基、(ii)置換および非置換のアリール基を含み、前記アリール基中にヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアリール基、(iii)置換および非置換のアリールアルキル基を含み、前記アリールアルキル基のアルキル部分が、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、前記アリールアルキル基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアリールアルキル基、または(iv)置換および非置換のアルキルアリール基を含み、前記アルキルアリール基のアルキル部分が、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、前記アルキルアリール基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアルキルアリール基である基のいずれかであり、XおよびX’は、それぞれ他方とは独立に、酸素原子または式−NR−[式中、Rは、(i)水素原子、(ii)直鎖および分枝、飽和および不飽和、環式および非環式、置換および非置換のアルキル基を含み、前記アルキル基中にヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアルキル基、(iii)置換および非置換のアリール基を含み、前記アリール基中にヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアリール基、(iv)置換および非置換のアリールアルキル基を含み、前記アリールアルキル基のアルキル部分が、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、前記アリールアルキル基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアリールアルキル基、または(v)置換および非置換のアルキルアリール基を含み、前記アルキルアリール基のアルキル部分が、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式であることができ、前記アルキルアリール基のアリールまたはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在しても存在しなくてもよいアルキルアリール基である]の基である]の化合物であることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項4】
インクジェット印字ヘッドと、インクが前記インクジェット印字ヘッドから噴出される方向の印刷領域面と、を含むインクジェット印刷装置であって、前記インクジェット印字ヘッドと印刷領域面の間の高さ間隔が調節可能であり、前記インクジェット印字ヘッドが、任意の着色剤と放射線硬化性モノマーまたはプレポリマー、光開始剤、反応性ワックス、およびゲル化剤を含む相変化インクビヒクルとを含む紫外線硬化性相変化インク組成物を噴出する印刷装置により基材に画像を形成する方法であって、
前記画像を、通常印刷高さ、凸印刷高さ、またはその両方を有するように印刷すべきかどうかを決定するステップと、
前記1つまたはそれ以上の印刷高さを有する画像をインクジェット印字ヘッドからインクを噴出させることによって印刷するステップと、
を含み、
ここで、画像またはそれらの一部が凸印刷高さを有するように、インクの複数の層を画像の位置またはそれらの一部に凸印刷高さを有するように堆積させることによって凸印刷高さを形成し、前記凸印刷位置が形成中にインクジェット印字ヘッドに接触することを防ぐために必要なインクジェット印字ヘッドと印刷領域面の間の高さ間隔を増すように調節し、
前記印刷領域面に堆積した印刷物が、ブライユ点字印刷、または通常印刷とブライユ点字印刷および凸印刷の1つまたは両方との組合せである
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−58509(P2010−58509A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203465(P2009−203465)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】