説明

ブラインシュリンプの孵化・給餌装置

【課題】 簡単な構造で塩水と淡水とが混ざるのを防止することができ、大型化を招来することがなく、小型の鑑賞魚用水槽に容易に設置することができるようにしたブラインシュリンプの孵化・給餌装置を提供する。
【解決手段】 上面開口が蓋(11A)によって密閉可能に構成され、全体が遮光され、内部に塩水が充満され、塩水中でブラインシュリンプを孵化させ有底筒状の孵化槽(11)と、孵化槽の蓋に孵化槽内に連通して取付けられ、先端が開口され、孵化されたブラインシュリンプが泳ぎ出し得る内径を有する小径筒状をなし、ブラインシュリンプがその走光性によって孵化槽から泳ぎ出して水生動物(31)の水槽(30)中に脱出する透光性の脱出筒(12)と、孵化槽の塩水中に投入され、酸素を徐放することによって塩水をブラインシュリンプが孵化し得る酸素濃度に維持する酸素徐放剤(13)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はブラインシュリンプの孵化・給餌装置に関し、特に簡単な構造で塩水と淡水とが混ざるのを防止することができ、大型化を招来することがなく小型の鑑賞魚用水槽にも容易に設置することができるようにした装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、金魚や熱帯魚などの鑑賞魚を飼育する場合、高栄養価のブラインシュリンプ(brine shrinp/学名: Artemia saline) を生餌として給餌することがよく行われる。ブラインシュリンプは塩水湖に生息するえびの一種であり、鑑賞魚用餌としては乾燥した卵の状態で市販されており、2%前後の塩水中で孵化させて培養することが行われる。
【0003】
従来のブラインシュリンプ培養装置では槽内に塩水とブラインシュリンプの卵を投入し、塩水を適切な温度に保温しながら、エアーポンプでエアーを送って塩水を攪拌し、ほぼ24時間でブラインシュリンプを孵化させ培養するという方式が採用されていた(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
また、ブラインシュリンプの走光性を利用し、孵化したブラインシュリンプを孵化槽から培養槽に泳ぎださせて卵殻や未孵化卵から分離した後、ブラインシュリンプを培養槽で培養し、培養槽から鑑賞魚の水槽中に泳ぎ出させて鑑賞魚に給餌するようにしたブラインシュリンプの培養・給餌装置が提案されている(特許文献3、特許文献4)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−287576号公報
【特許文献2】特開平10−42740号公報
【特許文献3】特許第3504849号公報
【特許文献4】特許第3739960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献3、4記載のブラインシュリンプの培養・給餌装置は鑑賞魚に給餌できるという点で優れているものの、塩水と淡水とが混ざるのを防止する構造が複雑で、大型になってしまい、小型の鑑賞魚用水槽には設置しにくいという問題があった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み、簡単な構造で塩水と淡水とが混ざるのを防止することができ、大型化を招来することがなく小型の鑑賞魚用水槽にも容易に設置することができるようにしたブラインシュリンプの孵化・給餌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明に係るブラインシュリンプの孵化・給餌装置は、鑑賞魚などの水生動物水槽中に浸漬され、ブラインシュリンプを孵化させた後、上記水中動物に対して給餌するブラインシュリンプの孵化・給餌装置において、有底筒状をなし、上面開口が蓋によって密閉可能に構成され、全体が遮光され、内部に塩水が充満され、該塩水中でブラインシュリンプが孵化される孵化槽と、該孵化槽の蓋に孵化槽内に連通して取付けられ、先端が開口され、孵化されたブラインシュリンプが泳ぎ出し得る内径を有する小径筒状をなし、ブラインシュリンプがその走光性によって上記孵化槽から泳ぎ出して上記飼育対象物の水槽中に脱出し得る透光性の脱出筒と、上記孵化槽の塩水中に投入され、酸素を徐放する酸素徐放剤と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の特徴の1つは筒状の孵化槽に塩水を充満させ、その上面の蓋に小径筒状の脱出筒を取付け、孵化槽内の塩水に酸素を徐放させてブラインシュリンプを孵化させ、孵化したブラインシュリンプを脱出筒から脱出させるようにした点にある。
【0010】
これにより、水性動物の水槽内の例えば淡水中に孵化・給餌装置を浸漬しても、塩水が淡水よりも比重が大きいので、淡水が孵化槽内に侵入することがほとんどなく、孵化槽内の塩水の濃度を保ってブラインシュリンプを継続して孵化させることができる。
【0011】
ここで、孵化したブラインシュリンプを培養することなく鑑賞魚等に給餌するようにしたのは、例えば鑑賞魚が稚魚の段階では孵化したブラインシュリンプを例えば5〜8mm程度に培養してから給餌すると、稚魚が食することができないからである。他方、孵化した1mm程度のブラインシュリンプを給餌すると、稚魚ばかりでなく、成魚もこれを食することができる。
【0012】
本発明の他の特徴は酸素徐放剤から酸素を徐放させて塩水の酸素濃度を所定濃度以上に保つようにした点にある。これにより、エアーポンプなどによってエアーを供給することなく、ブラインシュリンプの孵化を継続することができる。
【0013】
本発明のさらに他の特徴は孵化・給餌装置を鑑賞魚などの水生動物の水槽中に浸漬させるようにした点にある。
【0014】
これにより、水生動物の水槽に設置されるヒータの熱を利用して孵化槽内の塩水を適切な温度に保温できるので、ヒータを用いることなくブラインシュリンプを孵化させることができる。
【0015】
以上のように、孵化・給餌装置が孵化槽及び脱出筒からなるシンプルな構造であるとともに、エアーポンプやヒータを用いる必要がなくなる結果、孵化・給餌装置を小型化することができ、小型の水生動物の水槽にも容易に設置することができる。
【0016】
孵化槽はブラインシュリンプを孵化できる大きさであれば、可能な限り小型の角筒状や円筒状を採用するのが好ましい。例えば、孵化槽は外径50mm〜100mm、高さ100mm〜130mmの円筒状に製作することができる。
【0017】
孵化槽は全体が遮光性に構成するのが重要である。例えば、孵化槽の表面を遮光性の塗料で塗装してもよく、又遮光性の材料で孵化槽を製作するようにしてもよい。
【0018】
また、脱出筒は孵化したブラインシュリンプが泳ぎ出すことのできる大きさの角筒状又は円筒状であればよく、例えば内径5mm〜25mm、高さ5mm〜25mmの円筒状に製作することができる。
【0019】
また、脱出筒は透光性に製作するのが重要である。これによってブラインシュリンプが光を求めて孵化槽から脱出筒に泳ぎ出し、水性動物の水槽中に脱出し、水性動物に給餌することができるからである。また、ブラインシュリンプが脱出筒から泳ぎ出る様子を観察できるので、実際の給餌の様子を確認することができる。脱出筒は透光性であればよく、透明又は半透明の材料を用いて製作することができる。
【0020】
脱出筒は水槽の淡水が孵化槽内に侵入するのを阻止できる機能を付与するのがよい。そこで、脱出筒の上端開口の周縁をブラインシュリンプが通過し得る内径に縮径すると、淡水が孵化槽内に侵入するのをより一層少なくできる。
【0021】
酸素徐放剤は、例えば市販の過酸化カルシウム又は過酸化カリウムの錠剤を用いることができる。ブラインシュリンプが孵化し得る塩水の酸素濃度は3ppm以上、好ましくは4〜5ppm以上あればブラインシュリンプが継続して孵化することが確認された。また、ブラインシュリンプを孵化させる上で、塩水の攪拌は必ずしも必要でないことが確認された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1及び図2は本発明に係るブラインシュリンプの孵化・給餌装置の好ましい実施形態を示す。ブラインシュリンプの孵化・給餌装置10は孵化槽11、脱出筒12及び酸素徐放剤13とから構成されている。
【0023】
この孵化槽11は外径Dが70mm、高さHが110mmの有底円筒状に製作され、その上面開口は蓋11Aによって着脱可能に密閉されるようになっている。また、孵化槽11及び蓋11Aはプラスチック材料を用いて製作され、内外の表面には遮光性の塗料が塗布されて、全体が遮光性に構成され、又孵化槽11の底面には重錘(図示せず)が固定されている。
【0024】
また、孵化槽11の蓋11Aの中央には脱出筒12が立てられかつ孵化槽11内と連通して取付けられている。この脱出筒12は透明なプラスチック材料を用いて内径dが10mm、高さhが10mmの円筒状に製作され、脱出筒12の先端開口の周縁は内側に向けて傾斜されて1mmだけ縮径されている。
【0025】
ブラインシュリンプ21を孵化させて熱帯魚31に給餌する場合、本例の孵化・給餌装置10の孵化槽11内に2重量%の塩水を充満させ、この塩水中のブラインシュリンプ21の乾燥卵20と過酸化カルシウムの錠剤(酸素徐放剤)13とを投入した後、蓋11Aで孵化槽11の上面開口を密封し、この孵化・給餌装置10を図2に示されるように熱帯魚31の水槽30の淡水中に浸漬する。
【0026】
すると、水槽30の淡水は熱帯魚用のヒータ(図示せず)によって温められているので、孵化槽11内の塩水は水槽30内の淡水によって適切な温度に保温される。同時に、過酸化カルシウムの錠剤13からは酸素が徐放され、孵化槽11内の塩水は所定の酸素濃度、例えば4〜5ppm以上の酸素濃度に保たれる。
【0027】
孵化・給餌装置10を水槽30内に浸漬してから24時間が経過すると、卵20からブラインシュリンプ21が孵化し始め、孵化したブラインシュリンプ21は孵化するとすぐに、あるいは孵化槽11内の塩水に適当な時間停まった後、その走光性によって脱出筒12に向けて泳ぎ、脱出筒12内に泳ぎ出し、脱出筒12から水槽30内の淡水中に泳ぎ出し、これによって熱帯魚31に生餌を給餌できることとなる。
【0028】
このとき、ブラインシュリンプ21の乾燥卵20が孵化するタイミングにはバラツキがあるので、ブラインシュリンプ21を徐々に孵化させて熱帯魚31に継続して給餌することができる。
【0029】
例えば、昼間に家庭にいない人が熱帯魚31を生餌を与えて飼育し繁殖させる場合、一日に何度も生餌を給餌する必要があるが、例えばブラインシュリンプを孵化させて一日に何度も給餌するのは非常に煩わしく、これが熱帯魚31の飼育繁殖を断念する原因になっていた。
【0030】
本例の孵化・給餌装置10ではブラインシュリンプ21を徐々に孵化させて継続的に熱帯魚31に給餌できるので、昼間に家庭にいない人にも熱帯魚31を飼育し繁殖させることができる。
【0031】
また、脱出筒12が透明になっているので、ブラインシュリンプ21が孵化槽11から脱出筒12に泳ぎ出した後、水槽30内に脱出する様子を見て楽しむことができ、特に夜間の照明を採用すると、幻想的な雰囲気を楽しむことができる。
【0032】
上記の例では重錘によって孵化・給餌装置を水中に沈めるようにしたが、吸盤によって水中に沈めて水槽の内面に吸着させるようにしてもよく、又孵化槽の側面に磁石を固定し、水槽の外側の磁石と磁着させて沈めた状態に保持するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るブラインシュリンプの孵化・給餌装置の好ましい実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】上記実施形態の使用方法を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10 ブラインシュリンプの孵化・給餌装置
11 孵化槽
11A 蓋
12 脱出筒
13 過酸化カルシウム錠剤(酸素徐放剤)
20 ブラインシュリンプの卵
21 ブラインシュリンプ
30 水槽
31 熱帯魚


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鑑賞魚などの水生動物の水槽中に浸漬され、ブラインシュリンプを孵化させた後、上記水生動物に対して給餌するブラインシュリンプの孵化・給餌装置において、
有底筒状をなし、上面開口が蓋によって密閉可能に構成され、全体が遮光され、内部に塩水が充満され、該塩水中でブラインシュリンプを孵化させる孵化槽と、
該孵化槽の蓋に孵化槽内に連通して取付けられ、先端が開口され、孵化されたブラインシュリンプが泳ぎ出し得る内径を有する小径筒状をなし、ブラインシュリンプがその走光性によって上記孵化槽から泳ぎ出して上記水生動物の水槽中に脱出し得る透光性の脱出筒と、
上記孵化槽の塩水中に投入され、酸素を徐放することによって上記塩水をブラインシュリンプが孵化し得る酸素濃度に維持する酸素徐放剤と、
を備えたことを特徴とするブラインシュリンプの孵化・給餌装置。
【請求項2】
上記孵化槽は、外径50mm〜100mm、高さ100mm〜130mmの円筒状をなしている請求項1記載のブラインシュリンプの孵化・給餌装置。
【請求項3】
上記脱出筒は、内径5mm〜25mm、高さ5mm〜25mmの円筒状をなしている請求項1記載のブラインシュリンプの孵化・給餌装置。
【請求項4】
上記脱出筒は、その上端開口の周縁がブラインシュリンプが通過し得る内径に縮径されている請求項3記載のブラインシュリンプの孵化・給餌装置。
【請求項5】
上記酸素徐放剤は、過酸化カルシウム又は過酸化カリウムの錠剤である請求項1記載のブラインシュリンプの孵化・給餌装置。
【請求項6】
上記ブラインシュリンプが孵化し得る塩水の酸素濃度が3ppm以上である請求項1記載のブラインシュリンプの孵化・給餌装置。


【図1】
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【図2】
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