説明

ブラシシール

【課題】回転装置で使用するためのブラシシール、ブラシシールセグメント及びブラシシールバックプレートを提供する。
【解決手段】本ブラシシールは、複数のブラシシールセグメント130を含み、各セグメントは、弓形フェンス140と、弓形フェンス140と円周方向に同延である弓形バックプレート150と、弓形バックプレート150及び弓形フェンス140間に配置された複数のブラシブリストル170と、それに対して複数のブラシシールセグメント130の少なくとも1つが固定された固定部材とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、総括的にブラシシールに関し、より具体的には、各セグメントが圧力バランスを向上させるダムを第1の端部及び第2の端部に沿って備えたセグメント式ブラシシールに関する。
【背景技術】
【0002】
公知のセグメント式ブラシシールは一般的に、該セグメント式ブラシシールがその一部品である回転装置の作動時に生じる圧力をバランスさせるための円周方向に配向された空洞(円周方向配向空洞)をそのバックプレート内に備えている。しかしながら、そのような設計では、円周方向配向空洞の幾つかは、ブラシシールセグメントの端部に沿って開口状態のままになっている。従って、ブラシシールセグメントの端部に沿って、漏洩が観察されて、シールの圧力バランス特性の有効性が低下する。加えて、より低い圧力バランス及び漏洩流によるより大きい外乱に起因して、ブラシブリストリルのより大きい摩耗が、ブラシシールのそのような端部に沿って見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7255352号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転装置で使用するためのブラシシール、ブラシシールセグメント及びブラシシールバックプレートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様では、本発明は、回転装置用のブラシシールを提供し、本ブラシシールは、複数のブラシシールセグメントを含み、各セグメントは、弓形フェンスと、弓形フェンスと円周方向に同延である弓形バックプレートと、弓形バックプレート及び弓形フェンス間に配置された複数のブラシブリストルと、それに対して複数のブラシシールセグメントの少なくとも1つが固定された固定部材とを含み、弓形バックプレートは、複数の円周方向配向空洞と、該弓形バックプレートの第1の端部に沿って配置されかつ複数の円周方向配向空洞の少なくとも1つの端部を実質的に閉鎖した第1のダムと、該弓形バックプレートの第2の端部に沿って配置されかつ複数の円周方向配向空洞の少なくとも1つの端部を実質的に閉鎖した第2のダムとを含む。
【0006】
別の態様では、本発明は、ブラシシールセグメントを提供し、本ブラシシールセグメントは、弓形フェンスと、弓形フェンスと円周方向に同延である弓形バックプレートと、弓形バックプレート及び弓形フェンス間に配置された複数のブラシブリストルとを含み、弓形バックプレートは、複数の円周方向配向空洞と、該弓形バックプレートの第1の端部に沿って配置されかつ複数の円周方向配向空洞の少なくとも1つの端部を実質的に閉鎖した第1のダムと、該弓形バックプレートの第2の端部に沿って配置されかつ複数の円周方向配向空洞の少なくとも1つの端部を実質的に閉鎖した第2のダムとを有する。
【0007】
さらに別の態様では、本発明は、ブラシシールセグメント用の弓形バックプレートを提供し、本弓形バックプレートは、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部及び第2の端部間における内側弓形端縁部と、第1の端部及び第2の端部間における外側弓形端縁部と、内側弓形端縁部及び外側弓形端縁部間に配置された少なくとも1つの円周方向配向空洞と、第1の端部に沿って配置されかつ少なくとも1つの円周方向配向空洞の端部を実質的に閉鎖した第1のダムと、第2の端部に沿って配置されかつ少なくとも1つの円周方向配向空洞の端部を実質的に閉鎖した第2のダムとを含む。
【0008】
本発明のこれらの及びその他の特徴は、本発明の様々な実施形態を示す添付図面と関連させてなした本発明の様々な態様の以下の詳細な説明から一層容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ブラシシール及びロータを有する回転装置の断面図。
【図2】公知のブラシシール及びロータの一部分解断面図。
【図3】図2の公知のブラシシール及びロータの側面断面図。
【図4】本発明の実施形態によるブラシシールのバックプレートの斜視図。
【図5】本発明の実施形態によるブラシシールセグメントの側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の図面は正確な縮尺でないことに留意されたい。図面は、本発明の典型的な態様のみを示すことを意図しており、従って本発明の技術的範囲を限定するものとして考えるべきではない。図面では、同じ参照符号付けが、図面間で同様の要素を表している。
【0011】
次に図面に移ると、図1は、回転装置1(例えば、ガスタービン、蒸気タービン、発電機など)の断面図を示しており、回転装置1は、ほぼ円形の固定部材20によって囲まれたロータ10と、固定部材20及びロータ10間に配置されたブラシシール100とを含む。ブラシシール100は、複数のセグメント30A、30B、30C、30D、30E、30Fを含み、それらのセグメントの1以上は、固定部材20に固定することができる。そのようなブラシシールは、あらゆる数のセグメント、一般的には2〜12個のセグメントを含むことができる。明瞭にするために、これらセグメントは、セグメント30Aに関してのみさらに説明することにする。
【0012】
各セグメント30Aは、弓形フェンス40Aと、弓形バックプレート(後続の図において図示しかつ以下でさらに説明する)と、複数のブラシブリストル70Aとを含む。複数のブラシブリストル70Aは、フェンス40A及びバックプレート間に配置されかつフェンス40Aの内側弓形端縁部46Aを越えて延びて、ブラシブリストル70Aは、ロータ10が径路Aに沿って回転する時に該ロータ10に対するシールを行なうことができる。
【0013】
図1で分かるように、ブラシブリストル70Aは、ロータ10、セグメント30A及び固定部材20の半径方向軸線Rに対して角度αで傾斜している。同様に、フェンス40Aの第1の端部42A及び第2の端部44Aは、半径方向軸線Rに対してそれぞれ角度β及び角度γで傾斜している。本質的に必要なことではないが、角度α、β及びγは一般的に、同一である。そのような角度は、例えば約0°〜約60°(つまり、半径方向軸線Rに沿って)の範囲とすることができる。言うまでもなく当業者には分かるように、ブラシシール100の隣接するセグメントを適切に整列させかつ機能的なシールを構成するためには、第1のフェンス(例えば、40A)の第1の端部(例えば、42A)は、必要に応じて、隣接する第2のフェンス(例えば、40F)の第2の端部(例えば、44F)の角度とほぼ同一の角度を有しなければならない。
【0014】
図2は、公知の回転機械2の一部分の一部分解断面図を示している。明瞭にするために、単一のセグメント31のみについて、図示しかつ説明する。しかしながら、回転機械2は複数のセグメントを含むことになることを、理解されたい。この図から分かるように、ここには弓形バックプレート50を図示しており、弓形バックプレート50は、フェンス40と同延である。
【0015】
バックプレート50は、外側円周方向配向空洞60と、内側円周方向配向空洞64と、それらの間の中間円周方向配向空洞62とを含む。円周方向配向空洞60、62、64は、バックプレート50に沿って圧力バランス作用を行なう。しかしながら、上述したように、公知の装置では、円周方向配向空洞60、62、64の1以上が、バックプレート50の第1の端部52及び/又は第1の端部54において開口していて、セグメント間領域における低い圧力バランスに起因して漏洩の増加(及びそれに伴う回転装置2の効率の低下)並びにブラシブリストル70に対する摩耗及び/又は損傷の増大の両方を引き起こす。
【0016】
図3は、図2のセグメント31及びロータ10の一部分の側面断面図を示している。公知の装置における場合には、外側円周方向配向空洞60、中間円周方向配向空洞62及び内側円周方向配向空洞64は、上述したようにその各々が第2の端部54において開口しているので、該第2の端部54に沿って見ることができる。
【0017】
図4は、本発明の実施形態によるバックプレート150の斜視図を示している。図4で分かるように、バックプレート150は、第1の端部152に沿った第1のダム180と、第2の端部154に沿った第2のダム182とを含む。以下でより詳細に説明しまた本明細書の図に示すように、第1のダム180及び第2のダム182は、第1の端部152及び第2の端部154に沿った漏洩並びにブラシブリストル170に対する摩耗及び/又は損傷を減少させる。
【0018】
この図4に示す実施形態では、バックプレート150はまた、第1の端部152及び隣接する第1のダム180にほぼ平行な第1の溝190と、第2の端部154及び隣接する第2のダム182にほぼ平行な第2の溝192とを含む。図4に示すように、第1の溝190及び第2の溝192は、外側円周方向配向空洞160、中間円周方向配向空洞162及び内側円周方向配向空洞164と連続し、それによって円周方向配向空洞160、162、164間の連通を維持しかつバックプレート150に沿った圧力バランスを向上させる。
【0019】
図5は、図4のバックプレートのようなバックプレート150を含むブラシシールセグメント130の側面断面図を示している。この図から分かるように、円周方向配向空洞160、162、164(仮線で示す)は、第2の端部154において開口していない。もっと正確に言えば、第2のダム182は、第2の端部154に沿って実質的に連続した表面を形成している。円周方向配向空洞160、162、164は、上述したように第2の溝192(これもまた仮線で示す)と交差しているものとして図示している。
【0020】
図4に戻ると、第1の溝190及び第2の溝192は、各円周方向配向空洞160、162、164と連続していることが分かる。しかしながら、第1の溝190及び第2の溝192の各々が必ずしも各円周方向配向空洞160、162、164と連続している必要はないことに注目されたい。例えば、他の実施形態では、第1の溝190は、外側円周方向配向空洞160とのみ連続することができ、また第2の溝192は、中間円周方向配向空洞162及び内側円周方向配向空洞164と連続することができる。言うまでもなく、当業者には分かるように、その他の置換配列も実施可能である。
【0021】
同様に、上記に示した実施形態は3つの円周方向配向空洞160、162、164を有するバックプレート150について記載しているが、本発明の他の実施形態では、より多い又はより少ない数のそのような空洞を使用することができる。加えて、使用する円周方向配向空洞は、必ずしも第1の溝190から第2の溝192まで延びる必要はない。つまり、幾つかの実施形態では、1以上の円周方向配向空洞は、第1の溝190及び/又は第2の溝192に到達する前に終端させることができる。他の実施形態では、第1の溝190及び第2の溝192のいずれか或いは両方は、存在しないものとして、1以上の円周方向配向空洞(例えば、160、162、164)が第1のダム180及び/又は第2のダム182で終端するようにすることができる。
【0022】
さらに図4を参照すると、第1のダム180及び第2のダム182はバックプレート150の内側弓形端縁部156及び外側弓形端縁部158と連続している(つまり、実質的に連続した表面を形成している)ことが分かる。そのような構成により、ブラシシールの使用時におけるバックプレート150及びフェンス140間の漏洩が減少する。
【0023】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであり、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用する場合に、数詞を付していない表現は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数の形態もまた含むことを意図している。さらに、本明細書で使用する場合の「含む」及び/又は「含んでいる」という用語は、記述した特徴、回数、ステップ、操作、要素及び/又は構成部品の存在を特定するが、1以上のその他の特徴、回数、ステップ、操作、要素、構成部品及び/或いはそれらの群の存在又は付加を排除するものではないことを理解されたい。
【0024】
本明細書は最良の形態を含む実例を使用して、本発明を開示し、また当業者が、あらゆる装置又はシステムを製作しかつ使用しまたあらゆる関連又は組込み方法を実行することを含む本発明の実施を行なうことを可能にもする。本発明の特許性がある技術的範囲は、特許請求の範囲によって定まり、また当業者が想到するその他の実例を含むことができる。そのようなその他の実例は、それらが特許請求の範囲の文言と相違しない構造的要素を有するか又はそれらが特許請求の範囲の文言と本質的でない相違を有する均等な構造的要素を含む場合には、特許請求の範囲の技術的範囲内に属することになることを意図している。
【符号の説明】
【0025】
1、2 回転装置
10、110 ロータ
20 固定部材
30A〜F、31、130 ブラシシールセグメント
40、40A〜F フェンス
42A 第1の端部
β 第1の端部角度
44A、44F 第2の端部
γ 第2の端部角度
46A 内側弓形端縁部
50、150 バックプレート
52、152 第1の端部
δ 第1の端部角度
54、154 第2の端部
ε 第2の端部角度
56、156 内側弓形端縁部
58、158 外側弓形端縁部
R 半径方向軸線
60、160 外側円周方向配向空洞
62、162 中間円周方向配向空洞
64、164 内側円周方向配向空洞
70、70A〜F、170 ブラシブリストル
α ブラシブリストル角度
100 ブラシシール
180 第1のダム
182 第2のダム
190 第1の溝
192 第2の溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブラシシールセグメント(130)を備えるブラシシールであって、各セグメントが、
弓形フェンス(140)と、
前記弓形フェンス(140)と円周方向に同延である弓形バックプレート(150)と、
前記弓形バックプレート(150)及び弓形フェンス(140)間に配置された複数のブラシブリストル(170)と、
それに対して前記複数のブラシシールセグメント(130)の少なくとも1つが固定された固定部材(20)と
を含んでおり、前記弓形バックプレートが、
複数の円周方向配向空洞(160、162、164)と、
該弓形バックプレート(150)の第1の端部(152)に沿って配置されかつ前記複数の円周方向配向空洞(160、162、164)の少なくとも1つの端部を実質的に閉鎖した第1のダム(180)と、
該弓形バックプレート(150)の第2の端部(154)に沿って配置されかつ前記複数の円周方向配向空洞(160、162、164)の少なくとも1つの端部を実質的に閉鎖した第2のダム(182)と
を含んでいる、ブラシシール。
【請求項2】
前記弓形バックプレート(150)が、前記第1の端部(152)にほぼ平行にかつ前記第1のダム(180)に隣接して配置された第1の溝(190)と、前記第2の端部(154)にほぼ平行にかつ前記第2のダム(182)に隣接して配置された第2の溝(192)とをさらに含む、請求項1記載のブラシシール。
【請求項3】
前記第1の溝(190)及び第2の溝(192)の少なくとも1つが、前記複数の円周方向配向空洞(160、162、164)の少なくとも1つと連続している、請求項2記載のブラシシール。
【請求項4】
前記第1の溝(190)及び第2の溝(192)の両方が、前記複数の円周方向配向空洞(160、162、164)の少なくとも1つと連続している、請求項3記載のブラシシール。
【請求項5】
第1のブラシシールセグメント(130)の前記第1のダム(180)が、第2のブラシシールセグメント(130)の前記第2のダム(180)に当接する、請求項1記載のブラシシール。
【請求項6】
前記複数のブラシブリストル(170)が、前記弓形バックプレート(150)の半径方向軸線(R)に対してある角度をなしており、前記弓形バックプレート(150)の第1の端部(152)及び第2の端部(154)の各々が、前記複数のブラシブリストル(170)の角度にほぼ平行である、請求項1記載のブラシシール。
【請求項7】
前記第1及び第2のダム(180、182)が、前記弓形バックプレート(150)の内側弓形端縁部(156)及び外側弓形端縁部(158)と連続している、請求項1記載のブラシシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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