説明

ブラシ研磨装置

【課題】研磨材吹付加工後のガラスびんに対しブラシ掛け、水洗等を円滑かつ連続的に行う機構を備え、単位時間あたりの研磨処理能力を高めたブラシ研磨装置を提供する。
【解決手段】びん体wを1本ずつ自転可能に吊り下げ保持する複数の吊下保持部510を備えた無端の移送部材と、移送部材を連続的に移動させる駆動部材560と、移送部材の吊下保持部を回転させる回転部材とを有するびん体移送装置501と、搬送コンベア5に接しびん体を保持して吊下保持部に送り込む搬入機610と、吊下保持部のびん体を保持して搬送コンベア上に送り出す搬出機630とを備えた搬入搬出部600と、びん体表面に対してブラシ研磨をする回転ブラシ711a等がびん体の移送方向の両側に複数配設された研磨部700と、びん体を水洗する水洗部800と、びん体を乾燥する乾燥部900とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブラシ研磨装置に関し、特にサンドブラスト法によりガラスびん表面の艶消し加工を施した後のガラスびんの研磨、洗浄に用いるブラシ研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスびん等のガラス製品表面にくもり状の艶消し面を形成することにより、装飾性を高めた美麗に仕上げる加工は一般的である。この加工方法としては、フッ化水素酸等を用いガラス製品表面を腐食するケミカルフロスト法(ケミカルフロスト加工)と、アルミナ等の高硬度の研磨材をガラス製品表面に吹き付けるサンドブラスト法(サンドブラスト処理)の2種類が代表的である。
【0003】
ケミカルフロスト法は高腐食性のフッ化水素酸を使用することから、作業従事者の安全管理や廃液処理等の問題が重視され、個々の対策に負担を要する。そのため、近年ではガラス製品に対するフロスト加工に際し、劇物を使用しないサンドブラスト法が主流である(例えば、特許文献1、2,3,4,5,6等参照)。
【0004】
その後、サンドブラスト法を実施する研磨材吹付加工装置(サンドブラスト装置)の改良が進み、量産規模での生産性が向上している。しかし、サンドブラスト法の問題として、研磨材や研磨時に生じたガラスの粉塵を落とさなければガラス製品表面に粉っぽさが残る。特に、びん等の包装容器として使用する場合、ガラスの粉塵は異物となるため混入を防ぎ、十分に除去する必要がある。通常、サンドブラスト処理後のガラス製品表面はブラシ掛けをすることにより研磨され、併せて水洗により洗浄される。
【0005】
そこで、研磨材吹付加工装置から供給されるサンドブラスト処理を終えたガラス製品に対するブラシ掛け、水洗等を円滑かつ連続的に行うことにより、単位時間あたりの研磨処理能力をこれまで以上に高めることができる装置が望まれるに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−62727号公報
【特許文献2】特開2001−80940号公報
【特許文献3】特開2002−80233号公報
【特許文献4】特開2002−187739号公報
【特許文献5】特開2002−226233号公報
【特許文献6】特開2002−316840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、サンドブラスト法によりガラスびん表面の艶消し加工を施した後のガラスびんの研磨、洗浄に用いる装置において、ガラスびんに対しブラシ掛け、水洗等を円滑かつ連続的に行う機構を備えることにより、単位時間あたりの研磨処理能力をこれまで以上に高めたブラシ研磨装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、研磨材の吹付加工がなされたびん体の表面をブラシ研磨する装置において、びん体を正立状態で移送する搬送コンベアと、前記搬送コンベアに隣接して配置され、びん体を1本ずつ自転可能に吊り下げ保持する複数の吊下保持部を備えた無端の移送部材と、前記移送部材を連続的に移動させる駆動部材と、前記移送部材の吊下保持部を回転させる回転部材とを有するびん体移送装置と、前記移送部材の移動に対応する位置に配置されていて、前記搬送コンベアに接し該搬送コンベア上のびん体を保持して前記移送部材の吊下保持部に送り込む搬入機と、前記搬入機の作動に先立って前記移送部材の吊下保持部のびん体を保持して前記搬送コンベア上に送り出す搬出機とを備えた搬入搬出部と、前記搬入搬出部で保持されたびん体表面に対してブラシ研磨をする回転ブラシがびん体の移送方向の両側に複数配設された研磨部と、前記研磨部で研磨されたびん体を水洗する水洗部と、前記水洗部で水洗されたびん体を乾燥する乾燥部とを有することを特徴とするブラシ研磨装置に係る。
【0009】
請求項2の発明は、前記吊下保持部が、びん体のびん口部に挿入されびん体を内側から保持し又は保持を解除するためにびん口部内面に圧接又は非圧接する弾性ヘッドを有する請求項1に記載のブラシ研磨装置に係る。
【0010】
請求項3の発明は、前記回転部材が、前記移送部材の吊下保持部に設けられたスプロケットと歯合する前記移送部材の移送方向に張設された移送チェーンよりなる請求項1又は2に記載のブラシ研磨装置に係る。
【0011】
請求項4の発明は、前記研磨部における回転ブラシが、前記吊下保持部に保持されたびん体の高さ方向に対して交差状に配置されて回転するように構成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のブラシ研磨装置に係る。
【0012】
請求項5の発明は、前記研磨部における回転ブラシが、びん体の高さ方向に対してそれぞれ異なった位置に配設されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のブラシ研磨装置に係る。
【0013】
請求項6の発明は、前記研磨部における回転ブラシが、びん体との間隔を調節可能に配置されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載のブラシ研磨装置に係る。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明に係るブラシ研磨装置によると、研磨材の吹付加工がなされたびん体の表面をブラシ研磨する装置において、びん体を正立状態で移送する搬送コンベアと、前記搬送コンベアに隣接して配置され、びん体を1本ずつ自転可能に吊り下げ保持する複数の吊下保持部を備えた無端の移送部材と、前記移送部材を連続的に移動させる駆動部材と、前記移送部材の吊下保持部を回転させる回転部材とを有するびん体移送装置と、前記移送部材の移動に対応する位置に配置されていて、前記搬送コンベアに接し該搬送コンベア上のびん体を保持して前記移送部材の吊下保持部に送り込む搬入機と、前記搬入機の作動に先立って前記移送部材の吊下保持部のびん体を保持して前記搬送コンベア上に送り出す搬出機とを備えた搬入搬出部と、前記搬入搬出部で保持されたびん体表面に対してブラシ研磨をする回転ブラシがびん体の移送方向の両側に複数配設された研磨部と、前記研磨部で研磨されたびん体を水洗する水洗部と、前記水洗部で水洗されたびん体を乾燥する乾燥部とを有するため、単位時間あたりの研磨処理能力をこれまで以上に高めることができ、量産規模によるサンドブラスト加工済みのびん体の処理に好適な装置を得ることができた。
【0015】
請求項2の発明に係るブラシ研磨装置によると、請求項1の発明において、前記吊下保持部が、びん体のびん口部に挿入されびん体を内側から保持し又は保持を解除するためにびん口部内面に圧接又は非圧接する弾性ヘッドを有するため、びん体の保持並びに非保持に必要な部材を簡易な構成とすることができ、単純な操作によりびん体の着脱が可能となる。また、びん体を損傷するおそれも低下する。
【0016】
請求項3の発明に係るブラシ研磨装置によると、請求項1又は2の発明において、前記回転部材が、前記移送部材の吊下保持部に設けられたスプロケットと歯合する前記移送部材の移送方向に張設された移送チェーンよりなるため、びん体に対するブラシ研磨処理のむらが軽減される。
【0017】
請求項4の発明に係るブラシ研磨装置によると、請求項1ないし3のいずれか1項の発明において、前記研磨部における回転ブラシが、前記吊下保持部に保持されたびん体の高さ方向に対して交差状に配置されて回転するように構成されているため、回転ブラシはびん体の両側面に接触して、びん体が研磨部を進行する間のブラシ研磨が容易となる。また、装置構成の複雑化を避けることもできる。
【0018】
請求項5の発明に係るブラシ研磨装置によると、請求項1ないし4のいずれか1項の発明において、前記研磨部における回転ブラシが、びん体の高さ方向に対してそれぞれ異なった位置に配設されているため、びん体表面のブラシ掛けが必要となる部分が多く網羅される。同時に、びん体に生じるブラシ掛けや研磨の偏りも低減される。
【0019】
請求項6の発明に係るブラシ研磨装置によると、請求項1ないし5のいずれか1項の発明において、前記研磨部における回転ブラシが、びん体との間隔を調節可能に配置されているため、びん体の大きさ、形状、さらにはサンドブラスト加工の仕上げに柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】フロスト加工装置の上面図である。
【図2】ブラシ研磨装置の上面図である。
【図3】ブラシ研磨装置の側面図である。
【図4】ブラシ研磨装置の搬入搬出部付近の概略側面図である。
【図5】図4の主要部拡大図である。
【図6】吊下保持部及び移送部材の概略斜視図である。
【図7】びん体の着脱時の弾性ヘッドの拡大断面図である。
【図8】びん体の保持時の弾性ヘッドの拡大断面図である。
【図9】回転ブラシ区の概略断面図である。
【図10】びん体と接触する回転ブラシの位置関係を示す概要図である。
【図11】回転ブラシの間隔調整機構を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1の装置概観の上面図に示すフロスト加工装置1は、ガラス製のびん体の表面に対し、Al23(アランダム:Alundum)、SiC(カーボランダム:Carborundum)、または珪砂等の微粉末からなる研磨材を噴射してびん体表面を粗面化する。すなわち、サンドブラスト法によってびん体表面を艶消し調に形成するフロスト加工のための装置である。
【0022】
フロスト加工装置1には、びん体w(ガラスびん)を正立状態(後記図3,4参照)で移送する搬送コンベア5と、びん体wの表面にフロスト加工を施す研磨材吹付加工装置100と、前記研磨材吹付加工装置100においてサンドブラスト法によるフロスト加工を終えたびん体wの表面にブラシ研磨を行うブラシ研磨装置500が備えられる。図1の各装置の配置からわかるように、ブラシ研磨装置500は搬送コンベア5に隣接して配置される。ブラシ研磨装置500はびん体wの搬入及び搬出を容易とするべく、びん体wの搬入搬出部600を搬送コンベア5側に向けた配置である。
【0023】
ブラシ研磨装置500において、びん体wを1本ずつ自転可能に吊り下げ保持する吊下保持部510が複数備えられ、びん体移送装置501は吊下保持部510を当該装置500内の矢印方向に移動させる駆動部材560も含めて構成される。吊下保持部510の詳細は後出の図5以降にて説明する。ブラシ研磨装置500の搬入搬出部600において吊下保持部510に吊り下げ保持されたびん体は、複数の回転ブラシ区(回転ブラシゾーン)を備える研磨部700、研磨部700で研磨されたびん体を水洗する水洗部800、水洗部800で水洗されたびん体を乾燥する乾燥部900の順に移動する。そして、搬入搬出部600に戻ってきた後、吊下保持部510の保持が解除され、搬送コンベア5に搬出される。図示実施例の研磨部700は、符号710,720,730,740,750,760の6の回転ブラシ区を有する。
【0024】
フロスト加工装置1の研磨材吹付加工装置100において、符号10は搬入搬出機構、20は搬入機、30は搬出機であり、同装置100のターンテーブル101へのびん体の搬入及び搬出に用いられる。研磨材吹付加工装置100には搬入搬出部140、研磨材吹付部150、エア吹付部160が備えられ、ターンテーブル101の間欠回転移動により前記各部140,150,160を順に移動する。研磨材吹付部150では研磨材吹付装置(図示せず)から研磨材がびん体に対し吹き付けられてサンドブラスト処理が行われる。その後、エア吹付部160ではエア吹付装置(図示せず)からブローエアがびん体に対し吹き付けられ、研磨材や研磨で生じたガラスの粉塵が吹き飛ばされる。
【0025】
前記のブローエアの吹き付けのみでは、びん体表面のガラス粉塵は完全に除去されない。また、びん体表面のフロスト加工は、研磨材吹付加工装置の研磨材のみによる研磨では粗く仕上がる。このため、フロスト加工の程度に応じてびん体表面のきめを細かく仕上げたい場合もある。そこで、ブラシ研磨装置500では、サンドブラスト処理を終えたびん体(ガラスびん)に対する仕上げの処理としてブラシ掛け、水洗等が行われる。
【0026】
図2はブラシ研磨装置500の概略全体上面図であり、図3は同装置500の研磨部700側からの概略側面図である。主にブラシ研磨装置500内の回転ブラシ区等の配置を示す。図2及び図3を用い、ブラシ研磨及び洗浄対象となるびん体wの順路に従ってブラシ研磨装置500の構成を説明する。図示装置内では吊下保持部を省略している。
【0027】
ブラシ研磨装置500は上面視でおおよそ長方形状に形成され、びん体wを一本ずつ吊り下げ保持している吊下保持部510がブラシ研磨装置内を常時循環可能に構成される。搬送コンベア5上からブラシ研磨装置500へのびん体wの送り込みは搬入機610により行われ、ブラシ研磨装置500から搬送コンベア5へのびん体wの送り出しは搬出機630により行われる。搬入機610と搬出機630を備える搬入搬出部600は搬送コンベア5に隣接した配置である。
【0028】
図中の矢印の順路に従い、後記する吊下保持部に装着(吊り下げ保持)されているびん体wは、研磨部700の第1回転ブラシ区710、第2回転ブラシ区720、第3回転ブラシ区730、第4回転ブラシ区740、第5回転ブラシ区750、第6回転ブラシ区760の6の回転ブラシ区を通過する。びん体の表面は当該区にて回転ブラシにより研磨される。
【0029】
第1回転ブラシ区710では、第1右ブラシユニット710a、第1左ブラシユニット710b、下ブラシユニット710eが備えられる。第1右ブラシユニット710aには、右回転ブラシ711aとその駆動用の右ブラシモータ712aが備えられ、第2左ブラシユニット710bには、左回転ブラシ711bとその駆動用の左ブラシモータ712bが備えられ、下ブラシユニット710eには、下回転ブラシ711eとその駆動用のしたブラシモータ712eが備えられる。第1回転ブラシ区710においては、びん体表面に対してブラシ研磨する回転ブラシがびん体の移送方向の両側と下方に計3箇所配設される。
【0030】
第2回転ブラシ区720では、第2右ブラシユニット720a、第2左ブラシユニット720bが備えられる。第2右ブラシユニット720aには、右回転ブラシ721a,721cとその駆動用のブラシモータ722aが備えられ、第2左ブラシユニット720bには、左回転ブラシ721b,721dとその駆動用のブラシモータ722bが備えられる。第2回転ブラシ区720においては、回転ブラシがびん体の移送方向の両側に計4箇所配設される。
【0031】
第3回転ブラシ区730では、第3右ブラシユニット730a、第3左ブラシユニット730bが備えられる。第3右ブラシユニット730aには、右回転ブラシ731a,731cとその駆動用のブラシモータ732aが備えられ、第3左ブラシユニット730bには、左回転ブラシ731b,731dとその駆動用のブラシモータ732bが備えられる。第3回転ブラシ区730においては、回転ブラシがびん体の移送方向の両側に計4箇所配設される。
【0032】
第4回転ブラシ区740では、第4右ブラシユニット740a、第4左ブラシユニット740bが備えられる。第4右ブラシユニット740aには、右回転ブラシ741aとその駆動用のブラシモータ742aが備えられ、第4左ブラシユニット740bには、左回転ブラシ741bとその駆動用のブラシモータ742bが備えられる。第4回転ブラシ区740においては、回転ブラシがびん体の移送方向の両側に計2箇所配設される。
【0033】
第5回転ブラシ区750では、第5右ブラシユニット750a、第5左ブラシユニット750bが備えられる。第5右ブラシユニット750aには、右回転ブラシ751aとその駆動用の右ブラシモータ752aが備えられ、第5左ブラシユニット750bには、左回転ブラシ751bとその駆動用の左ブラシモータ752bが備えられる。第5回転ブラシ区750においては、びん体表面に対してブラシ研磨する回転ブラシはびん体の移送方向の両側に、びん体の移送方向に対して斜め向き(図3参照)となるように計2箇所配設される。
【0034】
第6回転ブラシ区760では、第6右ブラシユニット760a、第6左ブラシユニット760bが備えられる。第6右ブラシユニット760aには、右回転ブラシ761aとその駆動用の右ブラシモータ762aが備えられ、第6左ブラシユニット760bには、左回転ブラシ761bとその駆動用の左ブラシモータ762bが備えられる。第6回転ブラシ区760においては、前記第4回転ブラシ区740と同様に、びん体表面に対してブラシ研磨する回転ブラシはびん体の移送方向の両側に、びん体の移送方向に対して斜め向きとなるように計2箇所配設される。
【0035】
第1ないし第6回転ブラシ区内のブラシユニットにおける左右とは、ブラシ研磨装置500内を移動するびん体(吊下保持部510)の進行方向に向かっての左右を表す。なお、各回転ブラシ区内の回転ブラシの配設数、位置等は研磨対象となるびん体の形状、大きさに応じて適切に設定される。また、各回転ブラシ区における回転ブラシの配設位置や配設の向き、配設数等を適宜変更、または入れ替えることも可能である。図2の符号591,592は各ブラシ区の回転ブラシに散水する散水配管である。図3においては作図上第6回転ブラシ区と水洗部が重なるため、水洗部を優先して図示した。
【0036】
びん体(吊下保持部510)は移動を続けて研磨部700から水洗部800に達する。水洗部800には噴水部810,820(噴水配管)が設けられ、同噴水部から高圧水がびん体表面に吹き付けられる。水洗部800では、研磨部700の回転ブラシによる研磨により生じた微細な粉末等が水洗洗浄される。
【0037】
さらにびん体(吊下保持部510)は移動を続けて水洗部800から乾燥部900に達する。公知のバーナー、電気炉等の乾燥装置が乾燥部に設置される。実施例では、バーナー901が備えられる。バーナー901において、ガス燃焼により生じた120℃ないし680℃の熱風が送気管902を伝い熱風吹出口903からびん体に吹き付けられる。こうして、乾燥部900を移動する間にびん体の乾燥が行われる。
【0038】
乾燥部900を通過した後、びん体は搬入搬出部600の搬出機630から搬送コンベア5へ送り出される。図2中、符号501はびん体移送装置、540は移送部材、550はガイドレール、560はモータ等の駆動部材、561は歯車、565はチェーン等の張力を調整する調整器、572は移送チェーン(回転チェーン)である。
【0039】
図4の概略側面図は図1の研磨材吹付加工装置100側からブラシ研磨装置500を見た際の搬入搬出部600付近の構造を示す。搬入搬出部600を構成する搬入機610は、押入部材(搬入側プッシャ)611、搬入側昇降保持板612、搬入側昇降支持部613等の部材を備えている。また、搬出機630は、押出部材(出し側プッシャ)631、搬入側昇降保持板632、搬入側昇降支持部633等の部材を備えている。
【0040】
搬送コンベア5上のびん体wは搬入機610の所定位置まで搬送される。びん体は、複数本ずつ(実施例では4本ずつ)、押入部材611により搬送コンベア5から搬入側昇降保持板612上に移される。搬入側昇降保持板612は搬入側昇降支持部613に接続されており、搬入側昇降支持部613が縦スライドレール602に沿って上昇することにより、びん体は搬入側昇降保持板612に載置(保持)された状態で吊下保持部510直下に運ばれる。そして、びん体が吊下保持部510の弾性ヘッド520に装着された後、搬入側昇降保持板612は空の状態で搬送コンベア5に隣接する位置に復帰する。
【0041】
次に研磨、水洗等を終えたびん体に対し、びん体を吊り下げて保持している吊下保持部510が搬出機630の所定位置まで移送される。前記搬入機610の作動に先立って、搬入機の場合と同様にびん体は複数本ずつ(実施例では4本ずつ)、吊下保持部510の弾性ヘッド520の保持が解除されて搬出側昇降保持板632上に載置される(当該板上に保持される)。搬出側昇降保持板632は搬出側昇降支持部633に接続されており、搬出側昇降支持部633が縦スライドレール602に沿って降下することにより、搬出側昇降保持板632は搬送コンベア5と同じ高さ位置に合わされる。そして、びん体は押出部材631により搬出側昇降保持板632から搬送コンベア5側に押し出される。空になった搬出側昇降保持板632は再び吊下保持部のびん体を受け取るため、吊下保持部直下の所定位置に復帰する。
【0042】
搬入機610の作動に先立って搬出機630が作動することにより、ブラシ研磨装置500は既にブラシ研磨を終えたびん体を吊下保持部510から取り外し、新たにびん体を受け入れて吊下保持部510に保持可能となる。特に、搬入搬出部600の限られた部位でびん体の受け渡しをする場合に効率的である。実施例では、搬入側昇降保持板612及び搬出側昇降保持板632の昇降動作を同期とし、吊下保持部510の移送速度に合わせて搬入側昇降保持板612及び搬出側昇降保持板632も吊下保持部の移送方向に移動させ、吊下保持部510からのびん体の取り外し並びに搬出側昇降保持板632への載置後、搬入側昇降保持板612から吊下保持部510へのびん体の装着を連続して動作できるように制御している。搬入搬出部600には、支持板部601、各種ギアを備えたギア部605、横スライドレール等の搬入機及び搬出機の動作上必要な部材が適宜装備される。むろん、図示の搬入搬出部の搬入機及び搬出機は構成の一例であり、これ以外の装置構成、作動形態とすることもできる。
【0043】
図4の概略側面図、図5の部分拡大図、さらに図6の概略斜視図を用い、ブラシ研磨装置500内のびん体を移送する機構について説明する。個々の吊下保持部510は無端の移送部材540に接続される。移送部材540において、個々の吊下保持部510は支柱部546を介してそれぞれ対応する移送支持部541に接続される。移送支持部541の上部に上固定部材547が接続され、上固定部材547に上軸部542,542が備えられる。上軸部542,542のそれぞれには上連結板部544が回動可能に接続され、前後の他の移送支持部の上軸部と接続される。同様に、移送支持部541の下部に下固定部材548が接続され、下固定部材548に下軸部543,543が備えられる。下軸部543,543のそれぞれにも下連結板部545が回動可能に接続され、前後の他の移送支持部の下軸部と接続される。
【0044】
隣り合う移送支持部541同士は上連結板部及び下連結板部を介在にして互いに連続状に組み合わされる。そのため、移送部材540は複数の移送支持部541を含んでなる全体としてチェーンのような無端状に構成され、ブラシ研磨装置の曲がり角も自在に対応でき、装置500内を循環可能となる。実施例では、移送部材は吊下保持部を96基備える。すなわち、本実施例において、びん体移送装置501(図2,3参照)は、複数の吊下保持部510を備えた無端の移送部材540と、駆動部材560と、回転部材570を有して構成される。図5中の符号513は下フランジ、514sは上伝達当接部、514tは下伝達当接部、515は伸長部材、515sは上伸長部材、515tは下伸長部材、516はばねである。
【0045】
移送支持部541(移送支持部に設けられる上軸部及び下軸部)は、前掲図2及び図3の駆動部材560の作動を受けて回転駆動する歯車561等と接触して順送り移動される。そこで、移送部材540は装置500内を連続的に移送される。無端の移送部材540の内、主に上軸部542、上連結板部544、上固定部材547、及び下軸部543、下連結板部545、下固定部材548は、上収容レール551及び下収容レール552を備える収容レール部550内に保持される。移送部材540が収容レール部550に沿って移動することにより、移送部材540の移送支持部541に接続されている吊下保持部510は、搬入搬出部600、研磨部700、水洗部800、乾燥部900、そして搬入搬出部600の順に循環移送される。移送部材における個々の移送支持部等を連続して接続する構造は開示以外の適宜の機構を用いても良い。
【0046】
びん体を吊り下げ保持する個々の吊下保持部510がブラシ研磨装置500内を移送する際、吊下保持部510は回転部材570の作用により回転しながらの移送となる。図6からよくわかるように、回転部材570は、移送部材540の吊下保持部510に設けられたスプロケット571と、当該スプロケット571と歯合し移送部材540(移送支持部541)の移送方向に張設された移送チェーン(回転チェーン)572よりなる。移送チェーン572はブラシ研磨装置500内の研磨部700、水洗部800、乾燥部900に対応する位置に架設される(図2参照)。図6からわかるように、吊下保持部510が移送部材540の循環に伴い移送される場合、移送チェーン572はスプロケット571と歯合するため、スプロケット571に回転が生じる。特に本実施例の移送チェーンでは、研磨部内の移送チェーンを他の部位から独立して駆動できる構成としており、研磨部内での回転は他よりも速められている。
【0047】
吊下保持部510は、上方から上筒部519、胴部512、及び下筒部511の3の部分に区分される。図示の上筒部519は支柱部546により移送支持部541に接続されているため、移送部材540の移動が吊下保持部510に伝えられる。実施例の上筒部519と胴部512は回転自在な構造により組み合わされており、スプロケット571は胴部512に備えられている。そこで、上筒部519と無関係に吊下保持部510の胴部512より下方の部材のみが移送部材540による吊下保持部510の移動に伴い、移送チェーン572と歯合するスプロケット571により回転可能となる。
【0048】
回転部材により吊下保持部に吊り下げ保持されているびん体は回転できるため、比較的簡単な構造としながらもびん体が各回転ブラシ区における研磨のむら、水洗部における水洗のむら、乾燥部における乾燥のむらが極力低減される。つまり、びん体表面の仕上がりが全体的に均質化され、安定した品質のサンドブラスト加工済みびん体の生産に好適である。
【0049】
また、吊下保持部510には、その全長方向(上下方向)に伸長部材515s及び下伸長部材515tからなる伸長部材515が貫通して挿通され、吊下保持部510の下筒部511の下端に弾性ヘッド520が備えられる(次述の図7,8参照)。弾性ヘッド520は先端部521及び袋状本体部522を備えて構成される。図4,5において、符号530は伸長部材を押圧する押圧作動装置、531は押圧軸部、532は当接部である。この実施例の押圧作動装置530は搬入機610側と搬出機630側の2箇所に備えられる。搬入機610の搬入側昇降保持板612の載置本数に対応する4基分の吊下保持部510の伸長部材515(515s,515t)は、押圧作動装置530の当接部532により同時に押し下げられ、同様に、搬出機630の搬出側昇降保持板632の載置本数に対応する4基分の吊下保持部510の伸長部材515は、押圧作動装置530の当接部532により同時に押し下げられる。当接部を板状体とすることにより容易に構成することができる。
【0050】
図7及び図8の断面図を踏まえ、吊下保持部510の詳細構造並びに弾性ヘッド520の変形の様子を説明する。吊下保持部510の胴部512は管体状であり、その下部に下筒部511が備えられる。下筒部511内に下フランジ513が挿入される。下筒部511の下端には緩衝部材としてびん体wのびん口部woと当接するびん体当接板部523が装着される。びん体wと下筒部511との直接の接触を回避してびん口部woの破損を防ぐためである。さらに弾性ヘッド520がびん体当接板部523に接続される。吊下保持部510の内空間部517には伸長部材515(図示では下伸長部材515t)の周囲を囲む配置でばね516が備えられる。ばね516は下フランジ513と下伸長部材515tの上端に接続されている下伝達当接部514tとの間に介装される。
【0051】
弾性ヘッド520は図示のようにびん体wのびん口部woに挿入される。そして、弾性ヘッド520はびん体wを内側から保持しまた保持を解除するために、びん口部内面wiに圧接または非圧接となる。弾性ヘッド520は管状の袋状本体部522の降下方向側の先端に先端部521を備えており、管体の一端側が閉じた構造である。実施例の弾性ヘッド520の先端部521と伸長部材515(下伸長部材515t)の接続先端515eはねじ部材により接続され、伸長部材515の進退動作(上下の動き)は弾性ヘッド520に伝わる。弾性ヘッド520の先端部521及び袋状本体部522は単一の部材から形成することに加え、双方を連結あるいは接着して形成しても良い。弾性ヘッド520の先端部521及び袋状本体部522と、びん体当接板部523はびん体と直接接触するため、びん体を傷付けないように、公知のウレタンゴム等の樹脂材料から形成される。
【0052】
何らの力が作用していないときの弾性ヘッド520では、袋状本体部522の側面は単純な円筒形形状である(図7参照)。逆に弾性ヘッド520に縮む力が作用しているときは、袋状本体部522は側面方向にわずかにふくらんだ紡錘形状である(図8参照)。押圧作動装置530の押圧軸部531は、ソレノイド装置もしくは圧縮空気の挿通等の機構により上下方向に進退動作可能である。押圧軸部531の下端にある当接部532はその直下に吊下保持部510の伸長部材515が位置したとき押下して、伸長部材515の上伸長部材515sは吊下保持部510の内部側に押し込まれる。そして、上伸長部材515sの上伝達当接部514sと下伸長部材515tの下伝達当接部514tとの当接を通じて下伸長部材515tは降下し、弾性ヘッド520は押し伸ばされる。
【0053】
図7の断面図はブラシ研磨装置500の搬入搬出部600において、押圧作動装置530が吊下保持部510の伸長部材515に対して作動し、当接部532が伸長部材515(515s、515t)を押し下げ、これに伴い、ばね516が圧縮されている状態である。元来、弾性ヘッド520の袋状本体部522は円筒形形状である。その上、伸長部材515全体に下方への押し圧力が生じているため、袋状本体部522はいっそう上下方向に伸長するように作用する。結果、袋状本体部522の断面最大直径は、びん口部woの内直径wdよりも小さくなる。そこで、びん体wのびん口部woと弾性ヘッド520との摺動抵抗が低下して弾性ヘッドのびん体内(びん口部内)への取り付け並びに取り外しは容易となる。当該状態が弾性ヘッド520の非圧接の状態である。
【0054】
図8の断面図はブラシ研磨装置500の搬入搬出部600から離れ、当該装置500内を循環中の吊下保持部510の弾性ヘッド520の状態を示す。当接部532から伸長部材515に対する押し下げ力が解除されたことにより、ばね516に加わった押圧も開放され、ばね516は当初長さに戻ろうとする。図示のように、ばね516の下端は下フランジ513と接触しているため、ばね516は下方へ伸長できない。そこで、ばね516の弾性に伴った勢いにより、ばね516は下伝達当接部514tとともに下伸長部材515t自体を持ち上げる。弾性ヘッド520の先端部521は伸長部材515と接続されているため、伸長部材515(図示では下伸長部材515t)の上昇に連動して袋状本体部522は上方に引っ張られる。そのため、円筒体の袋状本体部522は上下に縮み側面方向にふくらんで紡錘形状となる。
【0055】
こうして、弾性ヘッド520の袋状本体部522は当初の形状(図7参照)からふくらみを有する形状に変形し、弾性ヘッドにおける断面最大直径が広がる。結果的に、びん口部woの内直径wdよりも大きくなり、びん体wのびん口部woと弾性ヘッド520との摺動抵抗が増加して弾性ヘッドのびん体内への保持が可能となる。当該状態が弾性ヘッド520における圧接の状態である。
【0056】
吊下保持部が弾性ヘッドを用いることにより、びん体のびん口部の保持並びに非保持に必要な部材を簡易な構成とすることができ、単純な操作により可能となる。また、びん体を損傷するおそれも低下する。
【0057】
図9は第3回転ブラシ区730における概略縦断面図であり、同図を代表として前掲の図2、図3にて開示した研磨部700を構成する回転ブラシ区を説明する。図示のとおり、紙面右側に第3右ブラシユニット730a及び紙面左側に第3左ブラシユニット730bが備えられる。図示は吊下保持部に吊り下げ保持されているびん体wの進行方向に対して左右となる。
【0058】
第3右ブラシユニット730aにおいて、ブラシモータ732aの回転はモータ歯車733aと歯合する受側歯車734aを介して右下回転伝達軸部736aに伝達される。同時に右伝達ベルト735aを通じて右上回転伝達軸部737aにもモータの回転力が伝達される。そして、右下回転伝達軸部736aと接続されている右下回転ブラシ731cとともに右上回転伝達軸部737aと接続されている右上回転ブラシ731aも回転する。同様に、第3左ブラシユニット730bにおいて、ブラシモータ732bの回転はモータ歯車733bと歯合するブラシ側歯車734bを介して左下回転伝達軸部736bに伝達される。同時に左伝達ベルト735bを通じて左上回転伝達軸部737bにもモータの回転力が伝達される。そして、左下回転伝達軸部736bと接続されている左下回転ブラシ731dとともに左上回転伝達軸部737bと接続されている左上回転ブラシ731bも回転する。
【0059】
回転ブラシがびん体に接触してびん体表面にブラシ掛け、研磨されている間、散水配管591,592から水が回転ブラシに向けてまかれる。ブラシ研磨は湿った状態でガラス粉塵が飛散しないように行われる。
【0060】
研磨部700内に配備される回転ブラシは、ナイロン製の樹脂毛が植毛されたナイロンブラシである。研磨力を高めるため、適宜粒径の研磨材がナイロンブラシに混入される。図9にて例示するように、研磨部700を構成する回転ブラシ区に装備される回転ブラシ731a,731b,731c,731dは、吊下保持部510に保持されているびん体wの高さ方向に対して交差状に配置され回転するように構成される。すなわち、びん体wの高さ方向と、回転ブラシの回転軸は直交する配置関係にある。回転ブラシは円筒体であるためびん体の両側からびん体の側面に接触し、びん体が研磨部(回転ブラシ区)を進行する間のブラシ掛けや研磨が容易に可能となる。また、びん体の高さ方向と並行に回転ブラシを配設する場合、回転ブラシの可動に必要な機構の数が増えて装置が複雑化する。
【0061】
図9の第3回転ブラシ区730から把握されるように、4本の回転ブラシ731a,731b,731c,731dは、びん体の高さ方向に対してそれぞれ異なった位置に配設される。回転ブラシがびん体と接触する高さ位置をそれぞれの回転ブラシ毎で異ならせることにより、びん体表面においてブラシ掛けが必要となる部分が多く網羅される。同時に、回転ブラシとびん体との接触量をずらして変化させることができ、びん体に生じるブラシ掛けや研磨の偏りを低減できる。また、実施例の吊下保持部510は回転部材570(移送チェーン572及びこれと歯合するスプロケット571等)の作動を受け、びん体を吊り下げ状態のままで回転しながら研磨部の回転ブラシ区を順に移動している。そこで、さらに回転ブラシによるブラシ掛けや研磨のむらがさらに低減できる。
【0062】
実施例のブラシ研磨装置500にあっては、主に図3の側面図に開示するように、研磨部700のそれぞれの回転ブラシ区内に配設される回転ブラシの取り付け位置も少しずつずらされている。これは、前述のとおり、びん体表面のブラシ掛けが必要となる部分を網羅し、回転ブラシとびん体との接触量をずらすためである。さらに、実施例の第5回転ブラシ区750(図3参照)及び第6回転ブラシ区760では、回転ブラシは、びん体wの高さ方向に対して直交の交差状配置よりも幾分びん体の進行方向下向きに傾斜して配設される。回転ブラシを単に直交となる配置から傾斜状に配設することにより、ブラシの回転方向に沿って生じる研磨の方向付けが複雑になり、研磨溝等のむらが緩和される。また、びん体側面に対して回転ブラシは斜めにその全長が接触するため、一の回転ブラシ区を通過することでびん体の上から下までのブラシ掛けや研磨が可能となる。
【0063】
図10の概要図は、ブラシ研磨装置500の研磨部700を構成する第1回転ブラシ区710ないし第6回転ブラシ区760内の個々の回転ブラシがびん体wと接触する様子の一例である。紙面の左右と研磨部のびん体の進行方向を揃えている。図10(a)は第1回転ブラシ区710の3本の回転ブラシ711a,711b,711eと、第2回転ブラシ区720の4本の回転ブラシ721a,721c,721b,721dの配置である。図10(b)は第3回転ブラシ区730の4本の回転ブラシ731a,731c,731b,731dと、第4回転ブラシ区740の2本の回転ブラシ741a,741bの配置である。図10(c)は第5回転ブラシ区750の傾斜する2本の回転ブラシ751a,751bと、第6回転ブラシ区の傾斜する2本の回転ブラシ761a,761bの配置である。
【0064】
図10のびん体と接触する各回転ブラシ区内の回転ブラシの配置からよくわかるように、極力ブラシ掛け、研磨のむらが生じないように、びん体の側面全体に回転ブラシが接触する配置構成となっている。図3と合わせて図10のとおり、一の回転ブラシ区内においてもそれぞれの回転ブラシの配設位置は異なり、さらに回転ブラシ区毎でも回転ブラシの配設位置は異なる。そこで、個別のびん体の回転も伴うことにより、よりいっそうのブラシ掛け、研磨のむらが低減される。特に、実施例の研磨部の構成にあっては、第1回転ブラシ区710に下ブラシユニット710eと下回転ブラシ711eが備えられ(図3,10参照)、びん体の底面を含む側面全体のブラシ掛け、研磨が可能である。
【0065】
図11は回転ブラシと移送されるびん体との間隔を調節する機構の概略断面図である。図示では、研磨部700における第3回転ブラシ区730内の第3右ブラシユニット730aに配設される右回転ブラシ731cを例にして間隔調節機構770を説明する。
【0066】
右回転ブラシ731cの回転軸部789の一端に歯車軸受部786と他端に軸受部788が設けられ、両軸受部786,788が支持枠部787により支持され回転ブラシは保持される。支持枠部787に台座部775p,775pが取り付けられ、両台座部775p,775pに進退棒部773,773が固定される。進退棒部773,773の末端に固定板部779が接続される。第3右ブラシユニット730a(第3ブラシ区730)の壁面730kに台座部775q,775qが取り付けられ、両台座部775q,775qに支持管部774,774が固定される。
【0067】
ボールねじ772は固定板部779に接続された鞘部776と螺合され、ねじ受部777により壁面730kに回転可能に保持される。ボールねじ772の一端側に操作ホイール771が取り付けられ、同操作ホイールによりボールねじは回転する。ボールねじ772と鞘部776及び固定板部779を介して接続される進退棒部773,773は、鞘部776と螺合するボールねじ772の回転に伴い、支持管部774,774と重なる位置を変えることができる。このため、右回転ブラシ731cと壁面730kとの距離、すなわち、びん体との間隔の調節は可能となる。
【0068】
ブラシモータ732aに接続されたモータ歯車733aに受側歯車734aが組み合わされ右下回転伝達軸部736aへ回転力が伝達される。右下回転伝達軸部736a内に公知のスプライン軸受部780が装備され、右下回転伝達軸部736aの回転力はスプライン軸受部780を通じてスプライン軸受部内に挿通されたスプライン軸781に伝達される。モータ側傘歯車783がスプライン軸781の末端に設けられるとともにブラシ側傘歯車784も右回転ブラシ731cの回転軸部789の末端に設けられる。両傘歯車783及び784は歯合しているため、ブラシモータ732aの駆動が右回転ブラシ731cの回転となる。
【0069】
実施例の構造においては、公知のスプライン軸受部780とスプライン軸781を採用しているため、進退棒部773,773の移動量に順応してスプライン軸受部780とスプライン軸781の位置調節可能である。従って、常時傘歯車同士の歯合を維持でき、回転ブラシの回転を安定させることができる。図中の符号785はスプライン収容部、786は歯車収容部である。
【0070】
開示の間隔調節機構770から把握されるように、回転ブラシとびん体との間隔を調節可能としているため、ブラシ研磨装置に供給されるびん体の大きさ、形状、さらにはサンドブラスト加工の仕上げ(表面の細かさ)等を総合的に勘案して、回転ブラシの位置を設定できる。そこで、生産ロット毎に異なる規格のびん体に柔軟に対応することができる。なお、研磨部における他の回転ブラシとびん体との間隔調節の機構は、開示の間隔調節機構770と同一構成であり、回転ブラシの配設位置のみが異なるため、個別の図示並びに説明を省略する。実施例の間隔調節機構は回転ブラシの間隔調節手段の一例である。回転ブラシの研磨力を維持できる限り、他の機構を採用することもできる。
【0071】
これまでに図示し詳述したブラシ研磨装置を用いることにより、研磨材の吹付加工がなされたびん体は、装置内の順路に従って移動することで回転ブラシによるブラシ掛けと研磨、その後の水洗、並びに乾燥の各工程を完結する。よって、びん体表面のブラシ研磨効率は向上し、量産規模によるサンドブラスト加工済みのびん体の生産に好適である。
【符号の説明】
【0072】
1 フロスト加工装置
5 搬送コンベア
100 研磨材吹付加工装置
140 搬入搬出部
150 研磨材吹付部
160 エア吹付部
500 ブラシ研磨装置
501 びん体移送装置
510 吊下保持部
515 伸長部材
516 ばね
520 弾性ヘッド
522 袋状本体部
530 押圧作動装置
540 移送部材
560 駆動部材
570 回転部材
571 スプロケット
572 移送チェーン(回転チェーン)
600 搬入搬出部
610 搬出機
630 搬入機
700 研磨部
710 第1回転ブラシ区
711a,711b,711e 回転ブラシ
712a,712b,712e ブラシモータ
720 第2回転ブラシ区
721a,721b,721c,721d 回転ブラシ
722a,722b ブラシモータ
730 第3回転ブラシ区
731a,731b,731c,731d 回転ブラシ
732a,732b ブラシモータ
740 第4回転ブラシ区
741a,741b 回転ブラシ
742a,742b ブラシモータ
750 第5回転ブラシ区
751a,751b 回転ブラシ
752a,752b ブラシモータ
760 第6回転ブラシ区
761a,761b 回転ブラシ
762a,762b ブラシモータ
770 間隔調節機構
772 ボールねじ
800 水洗部
810,820 噴水部
900 乾燥部
903 熱風吹出口
w びん体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨材の吹付加工がなされたびん体の表面をブラシ研磨する装置において、
びん体を正立状態で移送する搬送コンベアと、
前記搬送コンベアに隣接して配置され、びん体を1本ずつ自転可能に吊り下げ保持する複数の吊下保持部を備えた無端の移送部材と、前記移送部材を連続的に移動させる駆動部材と、前記移送部材の吊下保持部を回転させる回転部材とを有するびん体移送装置と、
前記移送部材の移動に対応する位置に配置されていて、
前記搬送コンベアに接し該搬送コンベア上のびん体を保持して前記移送部材の吊下保持部に送り込む搬入機と、前記搬入機の作動に先立って前記移送部材の吊下保持部のびん体を保持して前記搬送コンベア上に送り出す搬出機とを備えた搬入搬出部と、
前記搬入搬出部で保持されたびん体表面に対してブラシ研磨をする回転ブラシがびん体の移送方向の両側に複数配設された研磨部と、
前記研磨部で研磨されたびん体を水洗する水洗部と、
前記水洗部で水洗されたびん体を乾燥する乾燥部とを有する
ことを特徴とするブラシ研磨装置。
【請求項2】
前記吊下保持部が、びん体のびん口部に挿入されびん体を内側から保持しまたは保持を解除するためにびん口部内面に圧接又は非圧接する弾性ヘッドを有する請求項1に記載のブラシ研磨装置。
【請求項3】
前記回転部材が、前記移送部材の吊下保持部に設けられたスプロケットと歯合する前記移送部材の移送方向に張設された移送チェーンよりなる請求項1又は2に記載のブラシ研磨装置。
【請求項4】
前記研磨部における回転ブラシが、前記吊下保持部に保持されたびん体の高さ方向に対して交差状に配置されて回転するように構成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のブラシ研磨装置。
【請求項5】
前記研磨部における回転ブラシが、びん体の高さ方向に対してそれぞれ異なった位置に配設されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のブラシ研磨装置。
【請求項6】
前記研磨部における回転ブラシが、びん体との間隔を調節可能に配置されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載のブラシ研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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