ブラシ部材、並びにこれを用いる転写装置及び画像形成装置
【課題】画像のハーフトーン部に発生する縦黒スジと、急激な画像濃度変化とを従来よりも抑えることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】転写ブラシ20として、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が22.0[μA/cm2]以下であるものを用いた。ブラシVI値を単位面積あたりで2.5[μA/cm2]以下にすることで、ハーフトーン部の急激な画像濃度変化の目立たない画像を形成することができた。加えて、スキャン電流の最大値を単位面積あたりで22.0[μA/cm2]にすることで、ハーフトーン部の縦黒スジの目立たない画像を形成することができた。
【解決手段】転写ブラシ20として、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が22.0[μA/cm2]以下であるものを用いた。ブラシVI値を単位面積あたりで2.5[μA/cm2]以下にすることで、ハーフトーン部の急激な画像濃度変化の目立たない画像を形成することができた。加えて、スキャン電流の最大値を単位面積あたりで22.0[μA/cm2]にすることで、ハーフトーン部の縦黒スジの目立たない画像を形成することができた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端移動するベルト部材の裏面に対して転写ブラシによって転写バイアスを供給しながら、潜像担持体の表面の可視像をベルト部材のおもて面又はこれに保持される転写材に転写する転写装置に用いられる転写ブラシに関するものである。また、かかる転写ブラシを用いる転写装置や、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の画像形成装置においては、ブラシ部材たる転写ブラシとして、金属製支持板の表面に立設せしめられた複数の起毛からなる導電性のブラシ部に所定の電気抵抗をもたせたものを用いるのが一般的である。ブラシ部を構成する複数の起毛としては、特許文献1に開示されているように、導電性のレーヨンやナイロンからなるものが用いられる。かかる構成の転写ブラシにおいては、出力画像のハーフトーン部(中間調部)に、図24に示すような縦黒スジを出現させ易かった。この縦黒スジは、ベルト部材の移動方向(図中矢印E方向)に延在するように形成され、あたかもブラシの起毛で引っ掻いたかのような模様になっている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−281768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、本発明者は、上述のような転写ブラシを用いる画像形成装置においては、出力画像のハーフトーン部に急激な画像濃度変化を引き起こし易くなるものがあることを見出した。この急激な画像濃度変化とは、図25に示すように、出力画像のハーフトーン部の画像濃度が、ベルト部材の移動方向(図中矢印E方向)における所定の位置を境にして急激に濃くなってしまう現象である。なお、同図においては、出力画像において急激な画像濃度変化をきたした箇所を拡大して示しているが、この箇所は転写材の搬送方向後端付近となる。例えば、潜像担持体として直径100[mm]のドラム状の感光体を用いた場合、A3サイズの用紙の先端から314[mm]のあたりで急激な画像濃度変化が起こる。
【0005】
一方、本発明者は、上述の縦黒スジを発生させる原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことを見出した。即ち、転写ブラシのブラシ部における複数の起毛は、それぞれ電気抵抗値にある程度のバラツキがある。このバラツキが比較的小さい転写ブラシにおいては、各起毛からベルト部材に向けてほぼ均等に電流を流す。ところが、電気抵抗値のバラツキが比較的大きい転写ブラシにおいては、電気抵抗値の小さな起毛が電気抵抗値の大きな起毛よりも優先して電流を集中的に流すようになる。すると、この電流がベルト部材を介して感光体等の潜像担持体に流れてしまい、潜像担持体の表面をスジ状に逆帯電させる。潜像担持体に発生したこのスジ状の逆帯電箇所は、除電ランプによる除電が不十分になる。このため、除電後に一様帯電せしめられた潜像担持体の表面では、除電前にスジ状に逆帯電していた箇所の電位が他の箇所よりもかなり低くなる。そして、現像工程において、前者の箇所に対して後者の箇所よりも多量の現像物質(例えばトナー)が付着することにより、縦黒スジとなって現れていたのである。
【0006】
また、本発明者は、上述の急激な画像濃度変化が次のような位置で現れることを見出した。即ち、転写ブラシに対する転写バイアスの印加を開始してから、感光体等の潜像担持体の表面をちょうど一周させた時点で、潜像担持体からの可視像の転写が行われた位置である。かかる位置で画像濃度変化が現れるのは、転写ブラシからベルト部材を介して潜像担持体に過剰にリークした電流による電荷が除電工程で十分に除電されないために、2周目以降の潜像担持体表面の一様帯電電位が通常よりも低くなってしまうからである。
【0007】
更に、本発明者は、転写ブラシとして、ブラシ部の電気抵抗値が比較的低いものを用いた場合に、上述の急激な画像濃度変化を引き起こし易くなることを後述する実験によって見出した。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、縦黒スジと、急激な画像濃度変化とを従来よりも抑えることができるブラシ部材、並びにこれを用いる転写装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が22.0[μA/cm2]以下であることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流値のリップルが34[%]未満であることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、複数の上記起毛がそれぞれポリアミド樹脂に導電性の抵抗調整剤を分散せしめた材料からなり、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が4.3[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が56.5[μA/cm2]以下であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、複数の上記起毛がそれぞれポリアミド樹脂に導電性の抵抗調整剤を分散せしめた材料からなり、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が4.3[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流値のリップルが34[%]未満であることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項3又は4のブラシ部材であって上記起毛の単位長さにおける電気抵抗値が3.3×1010[Ω/mm]以上であることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかのブラシ部材において、潜像担持体側スキャン電流の最大値が上記スキャン電流の最大値よりも小さくなることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、無端状のベルト部材を複数の張架部材によって張架しながら無端移動せしめるベルト装置と、導電性支持体の表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部の先端側を該ベルト部材のループ内側面である裏面に接触させるように配設された転写ブラシとを有し、該導電性支持体に印加される転写バイアスを該ブラシ部の先端側から該ベルト部材の裏面に導きながら、該ベルト部材のおもて面に接触している潜像担持体の表面の可視像を該ベルト部材のおもて面又はこれに保持される転写材に転写する転写装置において、上記転写ブラシとして、請求項1乃至6の何れかのブラシ部材を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、無端移動する表面に潜像を担持する潜像担持体と、該表面に潜像を形成する潜像形成手段と、該表面の潜像を現像する現像手段と、現像によって得られた可視像を無端移動するベルト部材のおもて面又はこれに保持される転写材に転写する転写手段とを備える画像形成装置において、上記転写手段として、請求項7の転写装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8の画像形成装置において、上記ブラシ部材として請求項1又は2のものを用いるとともに、上記ベルト部材として、ベルトVI値を該ベルト部材と上記潜像担持体との当接によって形成される転写ニップの単位面積あたりで換算した値が1.8〜3.5[μA/cm2]であるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9の画像形成装置において、上記転写手段として、実効転写電荷密度を6.93×10−8[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項9の画像形成装置において、上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を実効転写電荷密度よりも大きく且つ2.45×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項9の画像形成装置において、上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.45×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項8の画像形成装置において、上記ブラシ部材として請求項3又は4のものを用いるとともに、上記ベルト部材として、ベルトVI値を該ベルト部材と上記潜像担持体との当接によって形成される転写ニップの単位面積あたりで換算した値が0.18〜3.5[μA/cm2]であるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項13の画像形成装置において、上記転写手段として、実効転写電荷密度を1.06×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、請求項13の画像形成装置において、上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を実効転写電荷密度よりも大きく且つ2.67×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、請求項13の画像形成装置において、上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.67×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明者は、転写ブラシとして、様々な電気抵抗を発揮する複数のものを用いて、それぞれにおける電気抵抗特性と、縦黒スジと、急激な画像濃度変化との関係を調べる実験を行った。電気抵抗特性については、ブラシVI値、スキャン電流の最大値、スキャン電流値のリップルなどによって評価した。ブラシVI値とは、転写ブラシのブラシ部を構成する複数の起毛の先端によって形成されるブラシ面に対してその全域に接触させた電極と、バイアス電源との間に20[MΩ]の電気抵抗を介在させた状態で、バイアス電源によって電気抵抗と導電性支持体との間に2[kV]のバイアスを印加した場合に発生する電流の値である。また、スキャン電流値とは、ブラシ面の長手方向(ベルト幅方向に相当)における一端部に接触させた電極と、バイアス電源との間に20[MΩ]の電気抵抗を介在させた状態で、バイアス電源によって電気抵抗と導電性支持体との間に2[kV]のバイアスを印加した場合に発生する電流について、電極をブラシ面の長手方向の他端部に向けて移動させながら順次測定した値である。また、スキャン電流値のリップルとは、スキャン電流の最大値から平均値を減算し、その減算結果を平均値で除算した値を百分率で示したものである。これらの電気抵抗特性と、縦黒スジや急激な画像濃度変化との関係に着目したところ、起毛の材料の種類にかかわらず、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が22.0[μA/cm2]以下という電気抵抗特性を発揮する転写ブラシを用いることで、縦黒スジや急激な画像濃度変化を従来よりも抑え得ることがわかった。また、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流値のリップルが34[%]以下という電気抵抗特性を発揮する転写ブラシでも、縦黒スジや急激な画像濃度変化を従来よりも抑え得ることがわかった。よって、請求項1乃至9の発明のうち、請求項1あるいは請求項2の発明特定事項の全てを備えるものでは、縦黒スジと、急激な画像濃度変化とを従来よりも抑えることができる。
【0011】
また、起毛がナイロン(ポリアミド樹脂)母材中にカーボン等の導電性の抵抗調整剤を分散せしめた材料からなる転写ブラシにおいては、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が4.3[μA/cm2]以下であって、且つ次に説明する条件を具備することで、縦黒スジや急激な画像濃度変化を従来よりも抑え得ることがわかった。即ち、スキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が56.5[μA/cm2]以下になるか、あるいはスキャン電流値のリップルが34[%]以下になるという条件である。よって、請求項1乃至9の発明のうち、請求項3あるいは請求項4の発明特定事項の全てを備えるものにおいても、縦黒スジと、急激な画像濃度変化とを従来よりも抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用した画像形成装置である電子写真方式のプリンタの第1実施形態について説明する。
まず、本第1実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタを示す概略構成図である。同図において、潜像担持体たるドラム状の感光体1の周囲には、帯電ローラ2、光書込ユニット3、現像手段たる現像装置4、転写装置10、ドラムクリーニング装置5、除電ランプ6などが配設されている。
【0013】
感光体1は、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向(図中矢印Aの方向)に回転駆動される。そして、図示しない電源によって帯電バイアスが印加される帯電ローラ3により、暗中にてマイナス極性に一様帯電せしめられる。一様帯電後における感光体1の表面電位は、例えば−800[V]となる。このような電位状態にある感光体1の表面には、潜像形成手段たる光書込ユニット3から照射される光変調されたレーザ光Lによる光走査により、画像信号に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像部分の表面電位は例えば−130[V]となり、他の地肌部分の表面電位は、変わらずに−800[V]である。
【0014】
感光体1に形成された静電潜像には、現像装置4により、マイナス極性に帯電したトナーが付着せしめられる。この付着により、感光体1上の静電潜像が可視像たるトナー像に現像される。このトナー像は、転写装置10により、転写材である転写紙P上に転写される。転写後の感光体1の表面は、転写残トナーがドラムクリーニング装置5によって除去された後、除電ランプ6によって除電される。
【0015】
転写装置10は、無端状のベルト部材である紙搬送ベルト11、駆動ローラ12、従動ローラ13等からなるベルト装置と、転写ローラ19、転写ブラシ20、転写バイアス電源31等からなる転写バイアス装置とを備えている。
【0016】
上記ベルト装置は、紙搬送ベルト11を駆動ローラ12と従動ローラ13とによって張架しながら、図示しない駆動手段によって回転駆動される駆動ローラ12によって図中反時計回り方向(矢印B方向)に無端移動せしめる。そして、ベ駆動ローラ12と従動ローラ13との間のベルト展張箇所のおもて面を感光体1に当接させて転写ニップを形成している。
【0017】
上記転写バイアス装置の転写ローラ19は、ステンレス等の金属からなり、紙搬送ベルト11の裏面に当接しながら回転するように配設されている。この当接箇所は、駆動ローラ12と従動ローラ13との間のベルト展張箇所であって、且つ上記転写ニップよりもベルト移動方向下流側の箇所である。
【0018】
上記転写バイアス装置の転写ブラシ20は、導電性支持体たる金属ホルダー21、導電性接着剤によって金属ホルダー21の表面に固定された複数の起毛からなるブラシ部22などを有している。そして、ブラシ部22の先端側を紙搬送ベルト11の裏面に接触させるように配設されている。この接触箇所は、駆動ローラ12と従動ローラ13との間のベルト展張箇所であって、且つ転写ローラ19よりもベルト移動方向上流側の箇所である。
【0019】
転写ブラシ20において、ステンレス等からなる金属ホルダー21には、第1アンペアメーター30を介して転写バイアス電源31が接続されている。一方、紙搬送ベルト11をその裏面で支えながら張架している従動ローラ13は、そのローラ部がステンレス等の金属からなり、その金属製の軸部材には図示しない摺擦接点を介して電線が接続されている。また、紙搬送ベルト11をその裏面で支えながら張架している駆動ローラ12も、その金属製の軸部材には図示しない摺擦接点を介して電線が接続されている。従動ローラ13の軸部材から延びる電線と、駆動ローラ12の軸部材から延びる電線とは、互いに接続された後、第2アンペアメータ32を介して転写バイアス電源31に接続されている。
【0020】
転写バイアス電源31から、第1アンペアメータ30と、金属ホルダー21と、ブラシ部22とを介して紙搬送ベルト11に流れた電荷の一部は、紙搬送ベルト11の裏面においてベルト周方向に移動して駆動ローラ12や従動ローラ13に至る。そして、駆動ローラ12や従動ローラ13から、第2アンペアメータ30と転写バイアス電源31とを介してアースに流れ込む。また、ブラシ部22から紙搬送ベルト11に流れた電荷の残りは、紙搬送ベルト11を厚み方向に移動して感光体1に流れ込む。この流れ込みによる電流値、即ち転写電流値は、第1アンペアメータ30による電流測定値から、第2アンペアメータ32による電流測定値を差し引いた値とほぼ同じになる。
【0021】
転写バイアス電源31は、内部に図示しない定電流制御回路を有している。そして、この定電流制御回路により、第1アンペアメータ30による電流測定値から、第2アンペアメータ32による電流測定値を差し引いた値、即ち転写電流値が所定の目標値に安定するように、出力電圧値を変化させる。このような制御(以下、定電流制御という)により、画像形成動作中における転写電流値がほぼ一定に保たれる。
【0022】
紙搬送ベルト11は、導電性ゴムからなるベルト基体のおもて面側に導電性樹脂からなる表面層が形成されたものである。その裏面側の表面抵抗率はJISK6911で107〜1010[Ω/□]に調整されている。また、おもて面側の表面抵抗率はJISK6911で108〜1013[Ω/□]に調整されている。また、体積固有抵抗率は、JISK6911で107〜1011[Ω・cm]に調整されている。
【0023】
図示しない領域には給紙部が配設されており、この給紙部は転写材たる転写紙Pを、転写ニップにて感光体1上のトナー像に重ね合わせ得るタイミングで図中矢印C方向に送り出す。送り出された転写紙Pは、転写装置10の紙搬送ベルト11における上部張架面に保持されながら転写ニップに進入する。そして、上述の転写電流やニップ圧の影響により、感光体1上のトナー像が転写せしめられる。
【0024】
このようにしてトナー像が転写せしめられた転写紙Pは、転写装置10よりも図中左側方にある図示しない領域に配設された定着装置に受け渡されて、ここでトナー像の定着処理が施された後、機外へと排出される。
【0025】
図2は、転写装置10の一部を示す分解斜視図である。同図においては、転写装置10は、駆動ローラ12と従動ローラ13とをそれぞれ両端で回転自在に支持するローラ支持体14を有している。転写ブラシ20は、紙搬送ベルト11を装着していない状態のローラ支持体14に対してネジ止め固定されるようになっている。転写ブラシ20がネジ止め固定された後のローラ支持体14には、紙搬送ベルト11が掛け回される。そして、図3に示すように、紙搬送ベルト11が掛け回されたローラ支持体14には、金属製の第1バイアス端子15や第2バイアス端子16の図示しない一端側が固定される。第1バイアス端子15の図示しない固定側端部は、紙搬送ベルト11のループ内側にて、転写ブラシ10の金属ホルダー21に電気的に接続されている。また、第2バイアス端子16の図示しない固定側端部は、紙搬送ベルト11のループ内側にて、従動ローラ13の金属製の軸部材に接続されている。
【0026】
図3に示したように、第1バイアス端子15や第2バイアス端子16の自由端側は、紙搬送ベルト11の下部張架面に所定の間隙を介して対向する姿勢になっている。これらバイアス端子が固定された転写装置10は、図3の矢印で示すようにプリンタ本体に装着されると、第1バイアス端子15が、プリンタ本体側に固定された第1接点端子17に密着せしめられる。また、第2バイアス端子16が、プリンタ本体側に固定された第2接点端子18に密着せしめられる。なお、第1接点端子17は、図1に示した第1アンペアメータ30を介して転写バイアス電源31に接続されている。また、第2接点端子18は、第2アンペアメータ32と、転写バイアス電源31とを介してアースに接続されている。
【0027】
次に、本プリンタを完成させるために本発明者が行った実験について説明する。まず、
[実験前準備1]
本発明者は、転写ブラシ(20)として、様々な電気抵抗特性を発揮する複数のものを準備した。これら転写ブラシ(20)は、ブラシ部(22)を構成する起毛の材料が異なる他は、同様の構成になっており、図4や図5に示すような形態になっている。
【0028】
図4は、転写ブラシ20を示す側面図である。同図において、転写ブラシ20のブラシ部22を構成する各起毛は、導電性両面テープ23を介してステンレス(SUS304)製の金属ホルダー21に固定されている。導電性両面テープ23は金属とほぼ同等の導電性を発揮する材料から構成されている。各起毛の導電性両面テープ23上面からの突出量t1は、5.8[mm]になっている。また、各起毛から構成されるブラシ部22の先端から金属ホルダー21の裏面に至るまでの厚さt2は6.8[mm]になっている。また、ブラシ部22の短手方向(ベルト移動方向に相当する)の寸法であるブラシ幅W1は5[mm]になっている。金属ホルダー21には、絶縁性材料からなる板部材24が片持ち固定されており、この板部材24の自由端はブラシ部22の短手方向の一端側に当接している。この板部材24は、先端を図示しない紙搬送ベルトの裏面に接触させるブラシ部22が紙搬送ベルトの図中矢印方向の移動に伴って各起毛を過剰に撓ませるのを防ぐためのものである。そして、その自由端を、ブラシ部22に対してブラシ先端よりも約2[mm]だけ低い位置に当接させている。
【0029】
図5は、転写ブラシ20を示す斜視図である。同図において、ブラシ部22の長手方向(ベルト幅方向に相当する)の寸法であるブラシ長さL1は297.5[mm]になっている。ブラシ幅W1は、既に述べたように5[mm]である。本発明者は、図4や図5に示した寸法構成であって、且つ互いに電気抵抗特性の異なる複数の転写ブラシ20を用意したのである。これら転写ブラシ20のブラシ部22を構成する各起毛は、レーヨン母材又はナイロン(6ナイロン)母材中に、導電性の電気抵抗であるカーボン粉末が分散せしめられた材料からなっている。なお、以下、各起毛として、レーヨン母材中にカーボン粉末が分散せしめられた材料からなるものを用いた転写ブラシ20を、レーヨン製の転写ブラシ20という。また、各起毛として、ナイロン母材中にカーボン粉末が分散せしめられた材料からなるものを用いた転写ブラシ20を、ナイロン製の転写ブラシ20という。
【0030】
ここで、レーヨンとは、セルロースを溶解してコロイド溶液にし、細孔から凝固液中に引き出して得る再生繊維のことを言う。また、ナイロンとは、任意の長鎖状の合成ポリアミドで、その主鎖がアミド基の繰り返しを持ち、その構造単位が軸方向に配列する繊維のことを言う。
【0031】
予め用意した全ての転写ブラシ20について、それぞれ、ブラシVI値と、スキャン電流値と、スキャン電流値のリップルと、感光体側スキャン電流値(潜像担持体側スキャン電流値)と、起毛の単位長さにおける電気抵抗値とを調べた。
【0032】
ブラシVI値については、次のようにして測定した。即ち、図6に示すように、転写ブラシ20のブラシ面(各起毛の先端によって形成される面)の全域に接触させたステンレス(SUS304)製の電極ブロック103と、バイアス電源102とを電線接続する。ことのき、電極ブロック103とバイアス電源102との間には20[MΩ]の電気抵抗101を介在させる。また、転写ブラシ20のステンレス(SUS304)製の金属ホルダー21を、アンペアメータ100を介してアース接続する。この状態で電気抵抗101と金属ホルダー21(厳密にはアンペアメータ100)との間に2[kV]の直流バイアスを印加する。そして、印加後から1分経過したときにおけるアンペアメータ100の電流値を読み取る。この読み取り値をブラシVI値とする。なお、電極ブロック103は、図示のようにブラシ面の長手方向の全域に接触していることに加えて、図には示されていないがブラシ面の短手方向の全域にも接触している。また、電気抵抗101から電極ブロック103に向けて延びる電線については、ネジ止めによって電極ブロック103に固定した。また、アンペアメータ100から金属ホルダー21に向けて延びる電線についても、ネジ止めによって金属ホルダー21に固定した。
【0033】
スキャン電流値については、次のようにして測定した。即ち、図7に示すように、転写ブラシ20のブラシ面の一端部に接触させた小型電極ブロック104(ブラシとの接触側における平面積=10mm×10mm)と、バイアス電源102とを電線接続する。このとき、小型電極ブロック104とバイアス電源102との間には20[MΩ]の電気抵抗101を介在させる。また、転写ブラシ20の金属ホルダー21を、アンペアメータ100を介してアース接続する。この状態で電気抵抗101と金属ホルダー21(厳密にはアンペアメータ100)との間に2[kV]の直流バイアスを印加する。そして、ブラシ面に接触させた小型電極ブロック104をブラシ長手方向(ベルト幅方向に相当)の一端側から他端側に向けて10[mm/sec]の速度で移動させながら、アンペアメータ100の電流値を順次読み取っていく。このときの各読み取り値をそれぞれスキャン電流値とする。なお、小型電極ブロック104については、ブラシ長手方向において10[mm]の長さでブラシ面に接触させている。また、図8に示すように、ブラシ短手方向(ベルト移動方向に相当する)においてブラシ幅W1の全域、即ち5[mm]の長さでブラシ面に接触させている。また、アンペアメータ100の電流値の読み取り速度については、100[回/sec](測定間隔=小型電極ブロックを0.1mm移動させる毎)とした。
【0034】
スキャン電流値のリップルについては、次のようにして求めた。即ち、各スキャン電流値と、読み取り回数(測定回数)とに基づいて、スキャン電流の平均値を求める。また、各スキャン電流値に基づいて、スキャン電流の最大値を特定する。そして、「(最大値−平均値)/平均値×100%」という公式の解をスキャン電流値のリップルとして求めた。
【0035】
感光体側スキャン電流値については、次のようにして測定した。即ち、転写ブラシ20のブラシ面に接触せしめる小型電極ブロック105として、図9に示すものを用意する。この電極ブロック105は、ブラシ幅方向に二等分した領域のうち、図中左側の領域に絶縁性テープ106を貼り付け、図中右側の領域を無垢のステンレスのまま露出させている。かかる電極ブロック105を図示のようにブラシ面に接触させて、ブラシ面をブラシ幅方向に二等分した領域のうち、図示しない感光体により近い方の領域である図中右側の領域だけにバイアスを供給できるようにする。このような状態で、スキャン電流値と同様にして、小型電極ブロック105を転写ブラシ20の長手方向の一端側から他端側に移動させながら、アンペアメータ(100)の値を順次読み取っていく。このときの各読み取り値をそれぞれ感光体側スキャン電流値とする。
【0036】
起毛の単位長さあたりにおける電気抵抗値(以下、原糸抵抗値という)については、次のようにして測定した。即ち、後述する全ての実験を終えた後に、転写ブラシ20から、起毛を100本ずつ無作為に抜き取る。そして、それら起毛の電気抵抗値を測定して単位長さあたりの抵抗値に換算した後、100本あたりの平均値を求めたものを原糸抵抗値とした。この原糸抵抗値を全ての転写ブラシ20について求めた。なお、起毛の電気抵抗値については、次のようにして測定した。即ち、起毛の両端部にそれぞれ金属製のクリップを装着した後、クリップ間の距離を調整して起毛に100〜200[gf]のテンションをかける。この状態で、両クリップ間に200[V]のバイアスを印加し、1分後の電流値を電流計によって読み取った結果に基づいて電気抵抗値を求めた。
【0037】
[実験前準備2]
先に図1に示したプリンタと同様の構成のプリンタ試験機を用意した。また、このプリンタ試験機に搭載する紙搬送ベルト11として、様々な電気抵抗特性を発揮する複数のものを準備した。そして、これら紙搬送ベルト11の全てについて、ベルトVI値を測定した。
【0038】
このベルトVI値については、次のようにして測定した。即ち、まず、転写ブラシ20を取り外した状態のプリンタ試験機に、紙搬送ベルト11を取り付ける。そして、図10に示すように、紙搬送ベルト11の裏面(ループ内側面)に対し、本来であれば転写ブラシ20を接触させる領域に金属ローラ110を接触させる。そして、この金属ローラ110の軸部材にバイアス電源111を接続する。また、従動ローラ13に接続した電線と、感光体1の金属製の軸部材に接続した電線とを繋ぐ。このとき、両電線の繋ぎ部と、感光体1の軸部材との間には20[MΩ]の電気抵抗112を介在させる。そして、両電線の繋ぎ部を、アンペアメータ113を介してアースに接続して、紙搬送ベルト11と感光体1とをそれぞれ実機と同じ線速で駆動する。このような状態で、バイアス電源111により、金属ローラ110とアンペアメータ113との間に2[kV]の直流バイアスを印加して、印加から1分後におけるアンペアメータ113の電流値を読み取ってベルトVI値とする。なお、実機における紙搬送ベルト11や感光体1の線速は400〜650[mm/sec]に設定している。また、定電流制御の電流の目標値については、85〜150[μA]に設定している。また、後述する縦黒スジのランクを評価する際の実験においては、線速を500[mm/sec]に設定し、転写電流の目標値を110[μA]に設定している。
【0039】
[実験1]
プリンタ試験機に対し、予め準備しておいた複数の転写ブラシ20の1つと、予め準備しておいた複数の紙搬送ベルト11の1つとをそれぞれ取り付ける。そして、転写電流の目標値を85〜150[μA]に設定した状態で定電流制御を行いながら、テスト画像を出力して、そのテスト画像のハーフトーン部における急激な画像濃度変化の有無を調べた。なお、テスト画像については、A3サイズの転写紙に対し、2×2(ツー・バイ・ツー)のベタハーフトーン部が、転写紙全面に形成されるような画像を出力した。
【0040】
プリントアウトされたテスト画像について、ベタハーフトーン部に急激な画像濃度変化が視認されるか否かを評価した。このような評価を、転写ブラシ20や紙搬送ベルト11を適宜取り替えながら繰り返し行った。すると、転写ブラシ20として、ブラシVI値の比較的小さなものを用いた場合には、急激な画像濃度変化を引き起こし難くなることがわかった。また、紙搬送ベルト11として、ベルトVI値が比較的大きくなる中抵抗のものを用いた場合には、急激な画像濃度変化を引き起こし難くなることもわかった。
【0041】
[実験2]
実験1と同様にしてテスト画像を出力して、ハーフトーン部における急激な画像濃度変化の有無を調べるとともに、ハーフトーン部に出現する縦黒スジのランクを1〜5の5段階で評価した。
【0042】
縦黒スジのランク分けについては、試験員の視認によって行った。そして、図11の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)に示されるような状態の縦黒スジを、ランク1、2、3、4、5として評価した。なお、縦黒スジの短手方向の長さである幅は、ランク1(a)=3.0mm程度、ランク2(b)=2.5mm程度、ランク3(c)=2.0mm程度、ランク4(d)=1.5mm程度、ランク5(e)=1.0mm程度である。当然ながら、ランクの数値が大きくなるほど、縦黒スジの目立ち具合が小さくなる。ランク4以上では、テスト画像にかなり目を近づけないとその有無を視認することができないので、ランク4以上が画像品質上の許容範囲となる。つまり、縦黒スジをランク4以上にすれば、有効に抑えることができたと言える。
【0043】
次に示す表1は、ベルトVI値が70〜95[μA]である紙搬送ベルト11と、ナイロン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図26はこの関係を示すグラフである。なお、グラフにおける斜線で示した領域は、縦黒スジを有効に抑えつつ、急激な画像濃度変化を視認できない程度に抑えることができる領域を示している。後述する図13〜図19等についても同様である。また、ベルトVI値が70〜95[μA]であるとは、ベルト周方向の複数箇所に渡ってベルトVI値を測定した場合に、複数の測定値が70〜95[μA]になることを示している。
【表1】
【0044】
次に示す表2は、ベルトVI値が49〜59[μA]である紙搬送ベルト11と、ナイロン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図12はこの関係を示すグラフである。
【表2】
【0045】
次に示す表3は、ベルトVI値が9〜13[μA]である紙搬送ベルト11と、ナイロン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図13はこの関係を示すグラフである。
【表3】
【0046】
次に示す表4は、ベルトVI値が5〜7[μA]である紙搬送ベルト11と、ナイロン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図27はこの関係を示すグラフである。
【表4】
【0047】
次に示す表5は、ベルトVI値が70〜95[μA]である紙搬送ベルト11と、レーヨン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図28はこの関係を示すグラフである。
【表5】
【0048】
次に示す表6は、ベルトVI値が49〜59[μA]である紙搬送ベルト11と、レーヨン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図14はこの関係を示すグラフである。
【表6】
【0049】
次に示す表7は、ベルトVI値が9〜13[μA]である紙搬送ベルト11と、レーヨン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図15はこの関係を示すグラフである。
【表7】
【0050】
次に示す表8は、ベルトVI値が5〜7[μA]である紙搬送ベルト11と、レーヨン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図29はこの関係を示すグラフである。
【表8】
【0051】
これらの結果から、次のようなことが言える。即ち、ベルトVI値が適切な範囲であれば、転写ブラシ20として、ブラシVI値が38.0[μA]以下で、且つスキャン電流の最大値が11.00[μA]以下であるものを用いることで、起毛の母材樹脂(レーヨンあるいはナイロン)にかかわらず、縦黒スジと急激な画像濃度変化とを有効に抑えることができる。
【0052】
ここで、起毛の材料が同じであっても、ブラシ部22のブラシ面の大きさが異なれば、ブラシ全体として電気抵抗が異なってくる。このため、ブラシVI値やスキャン電流については、それぞれブラシ面の単位面積あたりに換算しないと、ブラシ全体としての抵抗特性を正確に表すことができない。本実験2においては電極ブロック(103)をブラシ面の全域に接触させた状態でブラシVI値を測定している。よって、38.0[μA]というブラシVI値は、ブラシ面の単位面積あたりに換算すると、38.0μA÷(0.5cm×29.75cm)=2.55[μA/cm2]となる。ブラシVI値が小さくなるほど縦黒スジが発生し難くなることを考慮すると、小数点以下第2位を切り捨てて、2.5[μA/cm2]以下とするのが妥当である。
【0053】
また、本実験2においては、ブラシとの接触側における平面積が10mm×10mmである小型電極ブロック(104)を、ブラシ幅W1が5mmであるブラシ部22のブラシ面に接触させた状態でスキャン電流値を測定している。よって、11.00[μA]というスキャン電流の最大値は、ブラシ面の単位面積あたりに換算すると、11.00μA÷(0.5cm×1.0cm)=22.00[μA/cm2]となる。スキャン電流の最大値が小さくなるほど縦黒スジが発生し難くなることを考慮すると、小数点以下第2位を切り捨てて、22.0[μm/cm2]以下とするのが妥当である。
【0054】
そこで、本第1実施形態に係るプリンタにおいては、転写ブラシ20として、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値(以下、ブラシVI単位面積換算値という)が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値(以下、最大スキャン単位面積換算値という)が22.0[μA/cm2]以下であるものを用いている。
【0055】
次に示す表9は、ベルトVI値が5〜7[μA]である紙搬送ベルト11と、ナイロン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合における感光体側スキャン電流の最大値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図30はこの関係を示すグラフである。
【表9】
【0056】
次に示す表10は、ベルトVI値が9〜13[μA]である紙搬送ベルト11と、ナイロン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合における感光体側スキャン電流の最大値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図16はこの関係を示すグラフである。
【表10】
【0057】
次に示す表11は、ベルトVI値が70〜95[μA]である紙搬送ベルト11と、ナイロン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合における感光体側スキャン電流の最大値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図31はこの関係を示すグラフである。
【表11】
【0058】
次に示す表12は、ベルトVI値が70〜95[μA]である紙搬送ベルト11と、レーヨン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合における感光体側スキャン電流の最大値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図32はこの関係を示すグラフである。
【表12】
【0059】
次に示す表13は、ベルトVI値が49〜59[μA]である紙搬送ベルト11と、レーヨン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合における感光体側スキャン電流の最大値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図17はこの関係を示すグラフである。
【表13】
【0060】
次に示す表14は、ベルトVI値が9〜13[μA]である紙搬送ベルト11と、レーヨン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合における感光体側スキャン電流の最大値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図18はこの関係を示すグラフである。
【表14】
【0061】
これらの結果から、転写ブラシ20として、ブラシVI値が38.0[μA]以下で、且つスキャン電流の最大値が11.00[μA]以下であることに加えて、次のような条件を具備することで、縦黒スジの評価ランクをより向上させ得ることがわかる。即ち、感光体側スキャン電流の最大値がスキャン電流の最大値よりも小さくなるという条件である。そこで、本第1実施形態のプリンタにおいては、転写ブラシ20として、かかる条件も具備するものを用いている。
【0062】
次に、本発明を適用したプリンタの第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態に係るプリンタの基本的な構成は第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0063】
図19は、上述した実験2における縦黒スジの評価ランクと、スキャン電流値のリップルとの関係を示すグラフである。このグラフには、レーヨン製の転写ブラシ20を用いた場合の結果と、ナイロン製の転写ブラシを用いた場合の結果との両方をプロットしている。このグラフから、転写ブラシ20として、スキャン電流値のリップルが34[%]未満であるものを用いれば、縦黒スジの評価ランクを4又は5という許容範囲に留め得ることがわかる。先に示した図12〜図15の結果と合わせて考察すると、転写ブラシ20として、ブラシVI値が38.0[μA]以下(単位面積あたりで2.5μA以下)であり、且つ、リップルが34[%]であるものを用いれば、起毛の母材樹脂にかかわらず、縦黒スジと急激な画像濃度変化とを有効に抑え得ることになる。そこで、本第2実施形態に係るプリンタにおいては、転写ブラシ20として、かかる条件を具備するものを用いている。なお、安全を考慮すると、リップルは22[%]であることが望ましい。
【0064】
転写ブラシ20としてレーヨン製のものを用いた場合、これまで説明してきた条件を具備させたとしても、縦黒スジと急激な画像濃度変化とを確実に抑えることができるとは限らない。具体的には、先に表7、表8、図15、図29に示したように、レーヨン製の転写ブラシ20を用いた場合、紙搬送ベルト11として、ベルトVI値が49[μA]以上であるもの、より詳しくは49〜95[μA]であるものを用いれば、縦黒スジと急激な画像濃度変化との両方を抑えることができる。しかし、紙搬送ベルト11として、ベルトVI値が13[μA]以下のものを用いると、縦黒スジを抑えることができても、急激な画像濃度変化を抑えることができない。
【0065】
ここで、ベルトの材料が同じであっても、ベルトの大きさが異なれば、ベルト全体としての電気抵抗が異なってくる。このため、ベルトVI値については、それぞれベルト面の単位面積あたりに換算しないと、ベルト全体としての抵抗特性を正確に表すことができない。プリンタ試験機において、転写ニップの面積は、0.8cm×34.2cmになっている。すると、49.0[μA]というベルトVI値は、ベルト面の単位面積あたりに換算すると、49.0μA÷(0.8cm×34.2cm)=1.8[μA/cm2]となる。また、95.0[μA]というベルトVI値は、ベルト面の単位面積あたりに換算すると、95.0μA÷(0.8cm×34.2cm)=3.5[μA/cm2]となる。
【0066】
そこで、第1実施形態や第2実施形態のプリンタにおいて、転写ブラシ20としてレーヨン製のものを用いた場合には、紙搬送ベルト11としてベルトVI値を転写ニップの単位面積あたりで換算した値が1.8〜3.5[μA/cm2]であるものを用いている。
【0067】
これまで説明してきた各種の実験は、既に述べたように、定電流制御される転写電流の目標値を110[μA]に設定した条件下で行われたものである。本発明者らは、次に、この目標値を徐々に増加させながら、レーヨン製の転写ブラシ20にて同様の各種実験を行ったところ、130[μA]までは110[μA]の場合と同様の結果を得ることができた。また、ナイロン製の転写ブラシ20にて同様の各種実験を行ったところ、200[μA]までは110[μA]の場合と同様の結果を得ることができた。よって、転写電流の目標値を130[μA]以下にし、且つ、ブラシVI値、ベルトVI値、スキャン電流の最大値等を適切に設定すれば、起毛の材料の種類にかかわらず、縦黒スジと急激な画像濃度変化との両方を確実に抑えることができる。
【0068】
ベルトから感光体へと実際に流れる転写電流Id[μA]とそのときの転写電荷密度(以下、実効転写電荷密度という)との関係については、「実効転写電荷密度=Id/(V×L1)」という関係式で表すことができる。この関係式におけるIdは、転写電流の目標値と同じと考えて良い。また、Vは、紙搬送ベルト11の移動速度[mm/sec]である。また、L1は、転写ブラシ20のベルト幅方向の長さ[mm]である。かかる関係式に基づいて、転写電流の目標値を130[μA]に設定した場合における実効転写電荷密度を計算すると、「130/(630×297.5)=6.93×10−4[μC/cm2]=6.93×10−8[C/cm2]」となる。よって、実効転写電荷密度を6.93×10−8[C/cm2]以下にし、且つ、ブラシVI値、ベルトVI値、スキャン電流の最大値等を適切に設定すれば、起毛の材料の種類にかかわらず、縦黒スジと急激な画像濃度変化との両方を確実に抑えることができる。
【0069】
そこで、第1実施形態や第2実施形態に係るプリンタにおいては、転写装置10として、実効転写電荷密度を6.93×10−8[C/cm2]以下にするものを用いている。
【0070】
一般に、転写バイアス電源31からの出力電流値は、転写電流値よりも大きくなる。これは、転写バイアス電源31から出力された電流のうち、一部が感光体に流れないで、張架ローラ等からアースに流れ込むためである。よって、転写バイアス電源31からの出力電流に対応する転写電荷密度については、実効転写電荷密度よりも大きくすることになる。
【0071】
次に、本発明者らは、互いにベルトVI値の異なる複数の紙搬送ベルト11と、互いにブラシVI値の異なる複数の転写ブラシ20と、互いに種類の異なる複数の転写材とを用意し、それらを適宜組合せながら、転写バイアスの電圧値と転写バイアス電源31からの出力電流値(以下、電源出力電流という)との関係を調べる実験を行った。
【0072】
次に示す表15は、室温10℃15%RHの環境下において、ブラシVI値が16.1μAであるレーヨン製の転写ブラシ20を用いた場合における、紙種(転写材の種類)と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、電源からの出力電圧値(出力電圧値)と、電源出力電流との関係を示すものである。また、図33は、かかる関係を示すグラフである。
【表15】
【0073】
次に示す表16は、室温32℃80%RHの環境下において、ブラシVI値が38.0μAであるレーヨン製の転写ブラシ20を用いた場合における、紙種と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、電源からの出力電圧値(出力電圧値)と、電源出力電流との関係を示すものである。また、図34は、かかる関係を示すグラフである。
【表16】
【0074】
次に示す表17は、室温10℃15%RHの環境下において、ブラシVI値が20.0μAであるナイロン製の転写ブラシ20を用いた場合における、紙種と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、電源からの出力電圧値(出力電圧値)と、電源出力電流との関係を示すものである。また、図35は、かかる関係を示すグラフである。
【表17】
【0075】
次に示す表18は、室温32℃80%RHの環境下において、ブラシVI値が64.2μAであるナイロン製の転写ブラシ20を用いた場合における、紙種と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、電源からの出力電圧値(出力電圧値)と、電源出力電流との関係を示すものである。また、図36は、かかる関係を示すグラフである。
【表18】
【0076】
既に述べたように、ナイロン製の転写ブラシ20よりもレーヨン製の転写ブラシ20の方が、転写バイアスの許容範囲が狭い。レーヨン製の転写ブラシ20を用いた場合の許容転写電流の条件は上述したように130[μA]であった。各種のブラシVI値及び紙種の組合せにおいて、転写電流目標値を上限の130[μA]にした場合における電源出力電流の最大値は、図33、図34から、460[μA]であることがわかる。なお、これらの図には、表15や表16に示したように、130[μA]に代えて、これよりも大きな値の転写電流値を付与した場合の結果が含まれているが、それでも電源出力電流の最大値は460[μA]以下に留まっている。この電源出力電流の最大値から、転写電荷密度を求めると、「460/(630×297.5)=2.45×10−7[C/cm2]となる。
【0077】
転写電流の目標値を110[μA]よりも小さくした場合、環境によっては転写不良を引き起こすことがあった。よって、転写電流の下限値は110[μA]である。110[μA]の転写電流を得るためには、転写バイアス電源31からはそれよりも多くの電流を出力する必要がある。110[μA]を転写電荷密度に換算すると、「110/(630×297.5)=5.87×10−8[C/cm2]」となる。
【0078】
そこで、第1実施形態や第2実施形態に係るプリンタにおいては、転写装置10として、転写バイアス電源31からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.45×10−7[C/cm2]以下にするものを用いている。
【0079】
次に、本発明を適用したプリンタの第3実施形態について説明する。本第3実施形態に係るプリンタの基本的な構成も第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0080】
先に示した表1〜表8、図12〜図15、図26〜図29の結果から、レーヨン製の転写ブラシ20は、ナイロン製の転写ブラシ20に比べて、縦黒スジを発生させ易くなることがわかる。後者の転写ブラシ20であれば、許容できるブラシVI値の下限を38.0[μA]から64.2[μA]に引き上げ、且つ許容できるスキャン電流の最大値の下限を11.00[μA]から28.25[μA]に引き上げ得ることができる。下限を引き上げることができるということは、許容できるブラシの電気抵抗値の範囲が広まる、即ち、ブラシ部の材料選択の幅が広まることになる。64.2[μA]というブラシVI値は、ブラシ面の単位面積あたりに換算すると、64.2μA÷(0.5cm×29.75cm)=4.32[μA/cm2]となる。ブラシVI値が小さくなるほど縦黒スジが発生し難くなることを考慮すると、小数点以下第2位を切り捨てて、4.3[μA/cm2]以下とするのが妥当である。また、28.25[μA]というスキャン電流の最大値は、ブラシ面の単位面積あたりに換算すると、28.25μA÷(0.5cm×1.0cm)=56.50[μA/cm2]となる。スキャン電流の最大値が小さくなるほど縦黒スジが発生し難くなることを考慮すると、小数点以下第2位を切り捨てて、56.5[μm]以下とするのが妥当である。
【0081】
また、ナイロン製の転写ブラシ20であれば、許容できるブラシVI値の下限を38.0[μA]から64.2[μA]に引き上げ、且つ許容できるスキャン電流の最大値の下限を11.00[μA]から28.25[μA]に引き上げ得ることができる。下限を引き上げることができるということは、許容できるブラシの電気抵抗値の範囲が広まる、即ち、ブラシ部の材料選択の幅が広まることになる。64.2[μA]というブラシVI値は、ブラシ面の単位面積あたりに換算すると、64.2μA÷(0.5cm×29.75cm)=4.32[μA/cm2]となる。ブラシVI値が小さくなるほど縦黒スジが発生し難くなることを考慮すると、小数点以下第2位を切り捨てて、4.3[μA/cm2]以下とするのが妥当である。また、28.25[μA]というスキャン電流の最大値は、ブラシ面の単位面積あたりに換算すると、28.25μA÷(0.5cm×1.0cm)=56.50[μA/cm2]となる。スキャン電流の最大値が小さくなるほど縦黒スジが発生し難くなることを考慮すると、小数点以下第2位を切り捨てて、56.5[μm]以下とするのが妥当である。
【0082】
また、表1〜表8、図12〜図15、図26〜図29の結果から、レーヨン製の転写ブラシ20は、ナイロン製の転写ブラシ20に比べて、ベルトVI値の適正範囲を広くし得ることがわかる。具体的には、レーヨン製の転写ブラシ20の場合、上述したように、ブラシVI値と、スキャン電流の最大値又はリップルとを規定したとしても、ベルトVI値が13[μA]以下である場合には、ハーフトーン部の急激な画像濃度変化をきたしてしまう。つまり、ベルトVI値が比較的高い(電気抵抗値が比較的低い)紙搬送ベルト11を用いる必要がある。これに対し、ナイロン製の転写ブラシ20の場合、ブラシVI値と、スキャン電流の最大値又はリップルとを規定すれば、5〜95[μA]という広範囲のベルトVI値に渡って、縦黒スジと急激な画像濃度変化との両方を抑えることができる。ベルトVI値が低くなるほど急激な画像濃度変化を引き起こし易くなるので、ベルトVI値の適正範囲は少なくとも5〜95[μA]であることが立証されたことになる。これは、紙搬送ベルト11に用いる材料として、より多様なものを適用し得ることを示しており、紙搬送ベルト11の設計の自由度がレーヨン製の転写ブラシ20に比べてより高まったことになる。
【0083】
そこで、本第3実施形態に係るプリンタにおいては、転写ブラシ20として、起毛の母材樹脂がナイロン(ポリアミド樹脂)からなるナイロン製のものであって、且つ次の条件を具備するものを用いている。即ち、ブラシVI単位面積換算値が4.3[μA/cm2]以下で、且つ最大スキャン単位面積換算値が56.5[μA/cm2]以下であるという条件である。
【0084】
5[μA]というベルトVI値をベルト面の単位面積あたりに換算すると、5μA÷(0.8cm×34.2cm)=0.18[μA/cm2]となる。また、95.0[μA]というベルトVI値をベルト面の単位面積あたりに換算すると、95.0μA÷(0.8cm×34.2cm)=3.5[μA/cm2]となる。そこで、第3実施形態のプリンタにおいて、転写ブラシ20としてナイロン製のものを用いる場合には、紙搬送ベルト11としてベルトVI値を転写ニップの単位面積あたりで換算した値が0.18〜3.5[μA/cm2]であるものを用いている。
【0085】
なお、後述する第4実施形態のプリンタにおいても、同様の理由により、紙搬送ベルト11としてベルトVI値を転写ニップの単位面積あたりで換算した値が0.18〜3.5[μA/cm2]であるものを用いている。
【0086】
レーヨン製の転写ブラシ20がナイロン製の転写ブラシ20よりも縦黒スジを発生させ易くなる理由は、次のように考えられる。即ち、図20は、上述した実験2における感光体側スキャン電流値とその測定位置(ブラシ長手方向における位置)との関係を示すグラフである。また、図21は、上述した実験2におけるスキャン電流値とその測定位置との関係を示すグラフである。これらの図において、R1、R2という符号が付された2本の曲線は、何れもレーヨン製の転写ブラシ20による測定結果を示している。また、その他の3本の曲線は、何れもナイロン製の転写ブラシ20による測定結果を示している。これらのグラフから、レーヨン製の転写ブラシ20は、ナイロン製の転写ブラシ20に比べて、長手方向における電気抵抗値のバラツキが大きくなることがわかる。このようなバラツキがあると、長手方向において電気抵抗値が高くなるブラシ箇所で、転写電流が集中的に流れるようになって縦黒スジを発生させ易くなる。
【0087】
転写ブラシ20のブラシ部22に用いる起毛としては、上述したように、母材樹脂にカーボンが分散せしめられた原糸を用いる。かかる原糸として、転写ブラシ20に用いるための専用のものを製造すると、転写ブラシ20の製造コストが非常に高騰してしまう。このため、原糸については、一般市場に出回っている汎用のものを用いることが望ましい。ナイロン製の原糸は、様々な電気抵抗値のものが市販されているが、レーヨン製の原糸の場合、転写ブラシ20の起毛として使用するのに適した電気抵抗値のものが市販されておらず、電気抵抗値が適正値よりも低いものしか手に入らない。このため、レーヨン製の原糸の場合には、特殊な処理によって電気抵抗値を高めて起毛として使用するのであるが、かかる処理によって原糸の長さ方向に均一に電気抵抗値を高めることはできない。どうしても、長さ方向において電気抵抗値をほとんど高めることができない箇所を発生させてしまう。転写ブラシ20において、このような箇所から作られた起毛は、他の箇所から作られた起毛に比べて電気抵抗値が遙かに小さくなるため、転写電流を集中的に流してしまう。このことが、レーヨン製の転写ブラシ20で縦黒スジを発生させ易くなる理由となっている。
【0088】
次に、本発明を適用したプリンタの第4実施形態について説明する。本第4実施形態に係るプリンタの基本的な構成も第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
先に表1〜表4、図12〜図13、図26〜図27を用いて説明したように、転写ブラシ20としてナイロン製のものを用いた場合には、次のようにすることで、急激な画像濃度変化を抑えることができる。即ち、ブラシVI値が64.2[μA](単位面積あたりで4.3μA/cm2)以下であるという条件を具備させるのである。また、先に図19を用いて説明したように、転写ブラシ20として、スキャン電流値のリップルが34[%]未満であるものを用いれば、縦黒スジの評価ランクを4又は5という許容範囲に留め得ることがわかる。そこで、本第4実施形態においては、転写ブラシ20として、ナイロン製のものであって、これらの条件を具備させたものを用いている。
【0089】
次に示す表19は、ブラシVI値と、ナイロン製の転写ブラシ20の起毛の単位長さあたりにおける原糸抵抗値との関係を示している。また、図22は、かかる関係を示すグラフである。
【表19】
【0090】
図22のグラフにおいて、ブラシVI値が64.2[μA]以下である起毛からなる転写ブラシ20は、既に説明したように、急激な画像濃度変化を抑えることができる。かかる起毛は、同グラフから、起毛の単位長さあたりにおける原子抵抗値が3.0×1010[Ω/mm]という条件を具備している。そこで、第3実施形態や第4実施形態のプリンタにおいては、転写ブラシ20として、かかる条件を具備するものを用いている。
【0091】
先に表10〜表14、図17〜図18、図31〜図32に基づいて説明したように、感光体側スキャン電流の最大値がスキャン電流の最大値よりも小さくなるという条件を転写ブラシ20に具備させることで、縦黒スジの評価ランクをより向上させることができる。そこで、これまで説明してきた第1〜4実施形態に係るプリンタにおいては、それぞれ、転写ブラシ20として、かかる条件を具備するものを用いている。
【0092】
参考までに、6ナイロン(商品名)及びレーヨンの性状を次の表20に示す。
【表20】
【0093】
表20から、ナイロン製の転写ブラシ20では、起毛の含水率が20℃95%RHの環境下において90%以下であることがわかる。これに対し、レーヨン製の転写ブラシ20では、20℃95%RHの環境下で12.3〜25%程度である。ナイロンはレーヨンと比較すると含水率の低い素材であることがわかる。
【0094】
6ナイロン及び12ナイロンの各種性状を図23に示す。6ナイロンは、カーボンが断面方向において均一に分散せしめられたものであるのに対し、12ナイロンは、断面方向において周縁部のあたりにだけカーボンが分散せしめられたものである。
【0095】
第1実施形態や第2実施形態で説明したように、ナイロン製の転写ブラシ20を用いた場合には、110〜200[μA]が転写電流の許容範囲であった。この許容範囲の上限値である200[μA]から実効転写電荷密度を求めると、「200/(630×297.5)=1.06×10−7[C/cm2]」となる。よって、ナイロン製の転写ブラシ20を用いる第3実施形態や第4実施形態に係るプリンタにおいては、実効転写電荷密度を1.06×10−7[C/cm2]以下にし、且つ、ブラシVI値、ベルトVI値、スキャン電流の最大値等を適切に設定すれば、縦黒スジと急激な画像濃度変化との両方を確実に抑えることができる。
【0096】
そこで、第3実施形態や第4実施形態に係るプリンタにおいては、転写装置10として、実効転写電荷密度を1.06×10−7[C/cm2]以下にするものを用いている。
【0097】
ナイロン製の転写ブラシ20を採用し且つ転写電流を上限の200[μA]に設定した場合における電源出力電流の最大値を、先に示した表17、表18、図35、図36から特定すると、500[μA]であることがわかる。この電源出力電流の最大値から、転写電荷密度を求めると、「500/630×297.5」=2.67×10−7[C/cm2]」となる。また、転写電流の下限値である110[μA]を得るためには、上述したように、5.87×10−8[C/cm2]以上の転写電荷密度が転写バイアス電源31からの出力で必要になる。
【0098】
そこで、ナイロン製の転写ブラシ20を用いる第3実施形態や第4実施形態のプリンタにおいては、転写装置10として、転写バイアス電源31からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.67×10−7[C/cm2]以下にするものを用いている。
【0099】
これまで、ベルト部材たる紙搬送ベルトのおもて面に保持した転写紙に対して感光体1上のトナー像を転写するプリンタについて説明してきたが、次のようなプリンタにも本発明の適用が可能である。即ち、感光体1上のトナー像をベルト部材たる中間転写ベルトに転写するプリンタである。
【0100】
以上、第3実施形態や第4実施形態に係るプリンタにおいては、転写ブラシ20として、ナイロン製のものを用いることで、レーヨン製のものを用いる場合に比べて、ブラシVI値、スキャン電流の最大値、スキャン電流のリップルの適正範囲をそれぞれ広めて、転写ブラシ20の設計の自由度を向上させることができる。更には、ベルトVI値の適正範囲を広めて、紙搬送ベルト11の材料の選択自由度を向上させることもできる。
【0101】
また、第3実施形態や第4実施形態に係るプリンタにおいては、起毛の単位長さにおける電気抵抗値が3.3×1010[Ω/mm]以上である転写ブラシ20を用いることで、実験で良好な結果が得られた転写ブラシ20と同じものを用いて、縦黒スジや急激な画像濃度変化が目立たない良好な画像を形成することができる。
【0102】
また、各実施形態に係るプリンタにおいては、転写ブラシ20として、感光体側スキャン電流の最大値がスキャン電流の最大値よりも小さくなるものを用いているので、縦黒スジや急激な画像濃度変化を更に確実に抑えることができる。
【0103】
また、第1実施形態や第2実施形態に係るプリンタにおいては、紙搬送ベルト11として、ベルトVI値を転写ニップの単位面積あたりで換算した値が1.8〜2.2[μA/cm2]であるものを用いているので、転写ブラシ20としてレーヨン製のものを用いた場合でも、縦黒スジや急激な画像濃度変化を抑えることができる。
【0104】
また、第1実施形態や第2実施形態に係るプリンタにおいては、紙搬送ベルト11として、ベルトVI値をベルトと感光体との当接によって形成される転写ニップの単位面積あたりで換算した値が1.8〜3.5[μA/cm2]であるものを用いているので、上述した理由により、縦黒スジや急激な画像濃度変化の発生をより確実に抑えることができる。
【0105】
また、第1実施形態や第2実施形態に係るプリンタにおいては、転写装置10として、実効転写電荷密度を6.93×10−8[C/cm2]以下にするものを用いているので、既に説明したように、不適切な転写バイアス条件の設定に起因する縦黒スジや急激な画像濃度変化の発生を回避することができる。
【0106】
また、第1実施形態や第2実施形態に係るプリンタにおいては、転写装置として、紙搬送ベルト11に印加する転写バイアスを出力する転写バイアス電源31からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.45×10−7[C/cm2]以下にするものを用いているので、縦黒スジや急激な画像濃度変化の発生をより確実に抑えつつ、転写電荷密度の不足に起因する転写不良の発生を抑えることができる。
【0107】
また、第3実施形態や第4実施形態に係るプリンタにおいては、紙搬送ベルト11として、ベルトVI値をベルトと感光体との当接によって形成される転写ニップの単位面積あたりで換算した値が0.18〜3.5[μA/cm2]であるものを用いているので、上述した理由により、縦黒スジや急激な画像濃度変化の発生をより確実に抑えることができる。
【0108】
また、第3実施形態や第4実施形態に係るプリンタにおいては、転写装置10として、実効転写電荷密度を1.06×10−7[C/cm2]以下にするものを用いているので、既に説明したように、不適切な転写バイアス条件の設定に起因する縦黒スジや急激な画像濃度変化の発生を回避することができる。
【0109】
また、第3実施形態や第4実施形態に係るプリンタにおいては、転写装置10として、紙搬送ベルト11に印加する転写バイアスを出力する転写バイアス電源31からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.67×10−7[C/cm2]以下にするものを用いているので、縦黒スジや急激な画像濃度変化の発生をより確実に抑えつつ、転写電荷密度の不足に起因する転写不良の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】第1実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】同プリンタの転写装置の一部を示す分解斜視図。
【図3】同転写装置と同プリンタの筐体の一部とを示す斜視図。
【図4】同転写装置の転写ブラシを示す側面図。
【図5】同転写ブラシを示す斜視図。
【図6】ブラシVI値の測定法を説明するための模式図。
【図7】スキャン電流値の測定法を説明するための模式図。
【図8】小型電極ブロックを接触させた状態の転写ブラシを示す側面図。
【図9】感光体側スキャン電流値の測定法を説明するための模式図。
【図10】ベルトVI値の測定法を説明するための構成図。
【図11】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、ランク1、2、3、4、5の縦黒スジを示す模式図。
【図12】ベルトVI値49〜59μAの紙搬送ベルトとナイロン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図13】ベルトVI値9〜13μAの紙搬送ベルトとナイロン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図14】ベルトVI値49〜59μAの紙搬送ベルトとレーヨン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図15】ベルトVI値9〜13μAの紙搬送ベルトとレーヨン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図16】ベルトVI値9〜13μAの紙搬送ベルトとナイロン製の転写ブラシとを用いた場合における感光体側スキャン電流の最大値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図17】ベルトVI値49〜59μAの紙搬送ベルトとレーヨン製の転写ブラシとを用いた場合における感光体側スキャン電流の最大値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図18】ベルトVI値9〜13μAの紙搬送ベルトとレーヨン製の転写ブラシとを用いた場合における感光体側スキャン電流の最大値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図19】ベルトVI値49〜59μAの紙搬送ベルトを用いた場合におけるスキャン電流値のリップルと縦黒スジのランクとの関係を示すグラフ。
【図20】感光体側スキャン電流値と測定位置との関係を示すグラフ。
【図21】スキャン電流値と測定位置との関係を示すグラフ。
【図22】ナイロン製の転写ブラシのブラシVI値と、起毛の単位長さあたりにおける原子抵抗値との関係を示すグラフ。
【図23】6ナイロン及び12ナイロンの各種性状を示す図表。
【図24】縦黒スジを引き起こしたハーフトーン部の一例を示す模式図。
【図25】急激な画像濃度変化を引き起こしたハーフトーン部の一例を示す模式図。
【図26】ベルトVI値70〜90μAの紙搬送ベルトとナイロン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図27】ベルトVI値5〜7μAの紙搬送ベルトとナイロン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図28】ベルトVI値70〜95μAの紙搬送ベルトとレーヨン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図29】ベルトVI値70〜95μAの紙搬送ベルトとレーヨン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図30】ベルトVI値5〜7μAの紙搬送ベルトとナイロン製の転写ブラシとを用いた場合における感光体側スキャン電流の最大値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図31】ベルトVI値70〜95μAの紙搬送ベルトとナイロン製の転写ブラシとを用いた場合における感光体側スキャン電流の最大値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図32】ベルトVI値70〜95μAの紙搬送ベルトとレーヨン製の転写ブラシとを用いた場合における感光体側スキャン電流の最大値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図33】室温10℃15%RHの環境下において、ブラシVI値が16.1μAであるレーヨン製の転写ブラシを用いた場合における、紙種と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、出力電圧値と、電源出力電流との関係を示すグラフ。
【図34】室温32℃80%RHの環境下において、ブラシVI値が38.0μAであるレーヨン製の転写ブラシを用いた場合における、紙種と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、出力電圧値と、電源出力電流との関係を示すグラフ。
【図35】室温10℃15%RHの環境下において、ブラシVI値が20.0μAであるナイロン製の転写ブラシを用いた場合における、紙種と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、出力電圧値と、電源出力電流との関係を示すグラフ。
【図36】室温32℃80%RHの環境下において、ブラシVI値が34.2μAであるナイロン製の転写ブラシを用いた場合における、紙種と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、出力電圧値と、電源出力電流との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0111】
1 感光体(潜像担持体)
3 光書込ユニット(潜像形成手段)
4 現像装置(現像手段)
10 転写装置
11 紙搬送ベルト(ベルト部材)
12 駆動ローラ(張架部材)
13 従動ローラ(張架部材)
20 転写ブラシ(ブラシ部材)
21 金属ホルダー(導電性支持体)
22 ブラシ部
P 転写紙(転写材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端移動するベルト部材の裏面に対して転写ブラシによって転写バイアスを供給しながら、潜像担持体の表面の可視像をベルト部材のおもて面又はこれに保持される転写材に転写する転写装置に用いられる転写ブラシに関するものである。また、かかる転写ブラシを用いる転写装置や、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の画像形成装置においては、ブラシ部材たる転写ブラシとして、金属製支持板の表面に立設せしめられた複数の起毛からなる導電性のブラシ部に所定の電気抵抗をもたせたものを用いるのが一般的である。ブラシ部を構成する複数の起毛としては、特許文献1に開示されているように、導電性のレーヨンやナイロンからなるものが用いられる。かかる構成の転写ブラシにおいては、出力画像のハーフトーン部(中間調部)に、図24に示すような縦黒スジを出現させ易かった。この縦黒スジは、ベルト部材の移動方向(図中矢印E方向)に延在するように形成され、あたかもブラシの起毛で引っ掻いたかのような模様になっている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−281768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、本発明者は、上述のような転写ブラシを用いる画像形成装置においては、出力画像のハーフトーン部に急激な画像濃度変化を引き起こし易くなるものがあることを見出した。この急激な画像濃度変化とは、図25に示すように、出力画像のハーフトーン部の画像濃度が、ベルト部材の移動方向(図中矢印E方向)における所定の位置を境にして急激に濃くなってしまう現象である。なお、同図においては、出力画像において急激な画像濃度変化をきたした箇所を拡大して示しているが、この箇所は転写材の搬送方向後端付近となる。例えば、潜像担持体として直径100[mm]のドラム状の感光体を用いた場合、A3サイズの用紙の先端から314[mm]のあたりで急激な画像濃度変化が起こる。
【0005】
一方、本発明者は、上述の縦黒スジを発生させる原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことを見出した。即ち、転写ブラシのブラシ部における複数の起毛は、それぞれ電気抵抗値にある程度のバラツキがある。このバラツキが比較的小さい転写ブラシにおいては、各起毛からベルト部材に向けてほぼ均等に電流を流す。ところが、電気抵抗値のバラツキが比較的大きい転写ブラシにおいては、電気抵抗値の小さな起毛が電気抵抗値の大きな起毛よりも優先して電流を集中的に流すようになる。すると、この電流がベルト部材を介して感光体等の潜像担持体に流れてしまい、潜像担持体の表面をスジ状に逆帯電させる。潜像担持体に発生したこのスジ状の逆帯電箇所は、除電ランプによる除電が不十分になる。このため、除電後に一様帯電せしめられた潜像担持体の表面では、除電前にスジ状に逆帯電していた箇所の電位が他の箇所よりもかなり低くなる。そして、現像工程において、前者の箇所に対して後者の箇所よりも多量の現像物質(例えばトナー)が付着することにより、縦黒スジとなって現れていたのである。
【0006】
また、本発明者は、上述の急激な画像濃度変化が次のような位置で現れることを見出した。即ち、転写ブラシに対する転写バイアスの印加を開始してから、感光体等の潜像担持体の表面をちょうど一周させた時点で、潜像担持体からの可視像の転写が行われた位置である。かかる位置で画像濃度変化が現れるのは、転写ブラシからベルト部材を介して潜像担持体に過剰にリークした電流による電荷が除電工程で十分に除電されないために、2周目以降の潜像担持体表面の一様帯電電位が通常よりも低くなってしまうからである。
【0007】
更に、本発明者は、転写ブラシとして、ブラシ部の電気抵抗値が比較的低いものを用いた場合に、上述の急激な画像濃度変化を引き起こし易くなることを後述する実験によって見出した。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、縦黒スジと、急激な画像濃度変化とを従来よりも抑えることができるブラシ部材、並びにこれを用いる転写装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が22.0[μA/cm2]以下であることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流値のリップルが34[%]未満であることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、複数の上記起毛がそれぞれポリアミド樹脂に導電性の抵抗調整剤を分散せしめた材料からなり、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が4.3[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が56.5[μA/cm2]以下であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、複数の上記起毛がそれぞれポリアミド樹脂に導電性の抵抗調整剤を分散せしめた材料からなり、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が4.3[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流値のリップルが34[%]未満であることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項3又は4のブラシ部材であって上記起毛の単位長さにおける電気抵抗値が3.3×1010[Ω/mm]以上であることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかのブラシ部材において、潜像担持体側スキャン電流の最大値が上記スキャン電流の最大値よりも小さくなることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、無端状のベルト部材を複数の張架部材によって張架しながら無端移動せしめるベルト装置と、導電性支持体の表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部の先端側を該ベルト部材のループ内側面である裏面に接触させるように配設された転写ブラシとを有し、該導電性支持体に印加される転写バイアスを該ブラシ部の先端側から該ベルト部材の裏面に導きながら、該ベルト部材のおもて面に接触している潜像担持体の表面の可視像を該ベルト部材のおもて面又はこれに保持される転写材に転写する転写装置において、上記転写ブラシとして、請求項1乃至6の何れかのブラシ部材を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、無端移動する表面に潜像を担持する潜像担持体と、該表面に潜像を形成する潜像形成手段と、該表面の潜像を現像する現像手段と、現像によって得られた可視像を無端移動するベルト部材のおもて面又はこれに保持される転写材に転写する転写手段とを備える画像形成装置において、上記転写手段として、請求項7の転写装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8の画像形成装置において、上記ブラシ部材として請求項1又は2のものを用いるとともに、上記ベルト部材として、ベルトVI値を該ベルト部材と上記潜像担持体との当接によって形成される転写ニップの単位面積あたりで換算した値が1.8〜3.5[μA/cm2]であるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9の画像形成装置において、上記転写手段として、実効転写電荷密度を6.93×10−8[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項9の画像形成装置において、上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を実効転写電荷密度よりも大きく且つ2.45×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項9の画像形成装置において、上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.45×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項8の画像形成装置において、上記ブラシ部材として請求項3又は4のものを用いるとともに、上記ベルト部材として、ベルトVI値を該ベルト部材と上記潜像担持体との当接によって形成される転写ニップの単位面積あたりで換算した値が0.18〜3.5[μA/cm2]であるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項13の画像形成装置において、上記転写手段として、実効転写電荷密度を1.06×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、請求項13の画像形成装置において、上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を実効転写電荷密度よりも大きく且つ2.67×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、請求項13の画像形成装置において、上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.67×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明者は、転写ブラシとして、様々な電気抵抗を発揮する複数のものを用いて、それぞれにおける電気抵抗特性と、縦黒スジと、急激な画像濃度変化との関係を調べる実験を行った。電気抵抗特性については、ブラシVI値、スキャン電流の最大値、スキャン電流値のリップルなどによって評価した。ブラシVI値とは、転写ブラシのブラシ部を構成する複数の起毛の先端によって形成されるブラシ面に対してその全域に接触させた電極と、バイアス電源との間に20[MΩ]の電気抵抗を介在させた状態で、バイアス電源によって電気抵抗と導電性支持体との間に2[kV]のバイアスを印加した場合に発生する電流の値である。また、スキャン電流値とは、ブラシ面の長手方向(ベルト幅方向に相当)における一端部に接触させた電極と、バイアス電源との間に20[MΩ]の電気抵抗を介在させた状態で、バイアス電源によって電気抵抗と導電性支持体との間に2[kV]のバイアスを印加した場合に発生する電流について、電極をブラシ面の長手方向の他端部に向けて移動させながら順次測定した値である。また、スキャン電流値のリップルとは、スキャン電流の最大値から平均値を減算し、その減算結果を平均値で除算した値を百分率で示したものである。これらの電気抵抗特性と、縦黒スジや急激な画像濃度変化との関係に着目したところ、起毛の材料の種類にかかわらず、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が22.0[μA/cm2]以下という電気抵抗特性を発揮する転写ブラシを用いることで、縦黒スジや急激な画像濃度変化を従来よりも抑え得ることがわかった。また、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流値のリップルが34[%]以下という電気抵抗特性を発揮する転写ブラシでも、縦黒スジや急激な画像濃度変化を従来よりも抑え得ることがわかった。よって、請求項1乃至9の発明のうち、請求項1あるいは請求項2の発明特定事項の全てを備えるものでは、縦黒スジと、急激な画像濃度変化とを従来よりも抑えることができる。
【0011】
また、起毛がナイロン(ポリアミド樹脂)母材中にカーボン等の導電性の抵抗調整剤を分散せしめた材料からなる転写ブラシにおいては、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が4.3[μA/cm2]以下であって、且つ次に説明する条件を具備することで、縦黒スジや急激な画像濃度変化を従来よりも抑え得ることがわかった。即ち、スキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が56.5[μA/cm2]以下になるか、あるいはスキャン電流値のリップルが34[%]以下になるという条件である。よって、請求項1乃至9の発明のうち、請求項3あるいは請求項4の発明特定事項の全てを備えるものにおいても、縦黒スジと、急激な画像濃度変化とを従来よりも抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用した画像形成装置である電子写真方式のプリンタの第1実施形態について説明する。
まず、本第1実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタを示す概略構成図である。同図において、潜像担持体たるドラム状の感光体1の周囲には、帯電ローラ2、光書込ユニット3、現像手段たる現像装置4、転写装置10、ドラムクリーニング装置5、除電ランプ6などが配設されている。
【0013】
感光体1は、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向(図中矢印Aの方向)に回転駆動される。そして、図示しない電源によって帯電バイアスが印加される帯電ローラ3により、暗中にてマイナス極性に一様帯電せしめられる。一様帯電後における感光体1の表面電位は、例えば−800[V]となる。このような電位状態にある感光体1の表面には、潜像形成手段たる光書込ユニット3から照射される光変調されたレーザ光Lによる光走査により、画像信号に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像部分の表面電位は例えば−130[V]となり、他の地肌部分の表面電位は、変わらずに−800[V]である。
【0014】
感光体1に形成された静電潜像には、現像装置4により、マイナス極性に帯電したトナーが付着せしめられる。この付着により、感光体1上の静電潜像が可視像たるトナー像に現像される。このトナー像は、転写装置10により、転写材である転写紙P上に転写される。転写後の感光体1の表面は、転写残トナーがドラムクリーニング装置5によって除去された後、除電ランプ6によって除電される。
【0015】
転写装置10は、無端状のベルト部材である紙搬送ベルト11、駆動ローラ12、従動ローラ13等からなるベルト装置と、転写ローラ19、転写ブラシ20、転写バイアス電源31等からなる転写バイアス装置とを備えている。
【0016】
上記ベルト装置は、紙搬送ベルト11を駆動ローラ12と従動ローラ13とによって張架しながら、図示しない駆動手段によって回転駆動される駆動ローラ12によって図中反時計回り方向(矢印B方向)に無端移動せしめる。そして、ベ駆動ローラ12と従動ローラ13との間のベルト展張箇所のおもて面を感光体1に当接させて転写ニップを形成している。
【0017】
上記転写バイアス装置の転写ローラ19は、ステンレス等の金属からなり、紙搬送ベルト11の裏面に当接しながら回転するように配設されている。この当接箇所は、駆動ローラ12と従動ローラ13との間のベルト展張箇所であって、且つ上記転写ニップよりもベルト移動方向下流側の箇所である。
【0018】
上記転写バイアス装置の転写ブラシ20は、導電性支持体たる金属ホルダー21、導電性接着剤によって金属ホルダー21の表面に固定された複数の起毛からなるブラシ部22などを有している。そして、ブラシ部22の先端側を紙搬送ベルト11の裏面に接触させるように配設されている。この接触箇所は、駆動ローラ12と従動ローラ13との間のベルト展張箇所であって、且つ転写ローラ19よりもベルト移動方向上流側の箇所である。
【0019】
転写ブラシ20において、ステンレス等からなる金属ホルダー21には、第1アンペアメーター30を介して転写バイアス電源31が接続されている。一方、紙搬送ベルト11をその裏面で支えながら張架している従動ローラ13は、そのローラ部がステンレス等の金属からなり、その金属製の軸部材には図示しない摺擦接点を介して電線が接続されている。また、紙搬送ベルト11をその裏面で支えながら張架している駆動ローラ12も、その金属製の軸部材には図示しない摺擦接点を介して電線が接続されている。従動ローラ13の軸部材から延びる電線と、駆動ローラ12の軸部材から延びる電線とは、互いに接続された後、第2アンペアメータ32を介して転写バイアス電源31に接続されている。
【0020】
転写バイアス電源31から、第1アンペアメータ30と、金属ホルダー21と、ブラシ部22とを介して紙搬送ベルト11に流れた電荷の一部は、紙搬送ベルト11の裏面においてベルト周方向に移動して駆動ローラ12や従動ローラ13に至る。そして、駆動ローラ12や従動ローラ13から、第2アンペアメータ30と転写バイアス電源31とを介してアースに流れ込む。また、ブラシ部22から紙搬送ベルト11に流れた電荷の残りは、紙搬送ベルト11を厚み方向に移動して感光体1に流れ込む。この流れ込みによる電流値、即ち転写電流値は、第1アンペアメータ30による電流測定値から、第2アンペアメータ32による電流測定値を差し引いた値とほぼ同じになる。
【0021】
転写バイアス電源31は、内部に図示しない定電流制御回路を有している。そして、この定電流制御回路により、第1アンペアメータ30による電流測定値から、第2アンペアメータ32による電流測定値を差し引いた値、即ち転写電流値が所定の目標値に安定するように、出力電圧値を変化させる。このような制御(以下、定電流制御という)により、画像形成動作中における転写電流値がほぼ一定に保たれる。
【0022】
紙搬送ベルト11は、導電性ゴムからなるベルト基体のおもて面側に導電性樹脂からなる表面層が形成されたものである。その裏面側の表面抵抗率はJISK6911で107〜1010[Ω/□]に調整されている。また、おもて面側の表面抵抗率はJISK6911で108〜1013[Ω/□]に調整されている。また、体積固有抵抗率は、JISK6911で107〜1011[Ω・cm]に調整されている。
【0023】
図示しない領域には給紙部が配設されており、この給紙部は転写材たる転写紙Pを、転写ニップにて感光体1上のトナー像に重ね合わせ得るタイミングで図中矢印C方向に送り出す。送り出された転写紙Pは、転写装置10の紙搬送ベルト11における上部張架面に保持されながら転写ニップに進入する。そして、上述の転写電流やニップ圧の影響により、感光体1上のトナー像が転写せしめられる。
【0024】
このようにしてトナー像が転写せしめられた転写紙Pは、転写装置10よりも図中左側方にある図示しない領域に配設された定着装置に受け渡されて、ここでトナー像の定着処理が施された後、機外へと排出される。
【0025】
図2は、転写装置10の一部を示す分解斜視図である。同図においては、転写装置10は、駆動ローラ12と従動ローラ13とをそれぞれ両端で回転自在に支持するローラ支持体14を有している。転写ブラシ20は、紙搬送ベルト11を装着していない状態のローラ支持体14に対してネジ止め固定されるようになっている。転写ブラシ20がネジ止め固定された後のローラ支持体14には、紙搬送ベルト11が掛け回される。そして、図3に示すように、紙搬送ベルト11が掛け回されたローラ支持体14には、金属製の第1バイアス端子15や第2バイアス端子16の図示しない一端側が固定される。第1バイアス端子15の図示しない固定側端部は、紙搬送ベルト11のループ内側にて、転写ブラシ10の金属ホルダー21に電気的に接続されている。また、第2バイアス端子16の図示しない固定側端部は、紙搬送ベルト11のループ内側にて、従動ローラ13の金属製の軸部材に接続されている。
【0026】
図3に示したように、第1バイアス端子15や第2バイアス端子16の自由端側は、紙搬送ベルト11の下部張架面に所定の間隙を介して対向する姿勢になっている。これらバイアス端子が固定された転写装置10は、図3の矢印で示すようにプリンタ本体に装着されると、第1バイアス端子15が、プリンタ本体側に固定された第1接点端子17に密着せしめられる。また、第2バイアス端子16が、プリンタ本体側に固定された第2接点端子18に密着せしめられる。なお、第1接点端子17は、図1に示した第1アンペアメータ30を介して転写バイアス電源31に接続されている。また、第2接点端子18は、第2アンペアメータ32と、転写バイアス電源31とを介してアースに接続されている。
【0027】
次に、本プリンタを完成させるために本発明者が行った実験について説明する。まず、
[実験前準備1]
本発明者は、転写ブラシ(20)として、様々な電気抵抗特性を発揮する複数のものを準備した。これら転写ブラシ(20)は、ブラシ部(22)を構成する起毛の材料が異なる他は、同様の構成になっており、図4や図5に示すような形態になっている。
【0028】
図4は、転写ブラシ20を示す側面図である。同図において、転写ブラシ20のブラシ部22を構成する各起毛は、導電性両面テープ23を介してステンレス(SUS304)製の金属ホルダー21に固定されている。導電性両面テープ23は金属とほぼ同等の導電性を発揮する材料から構成されている。各起毛の導電性両面テープ23上面からの突出量t1は、5.8[mm]になっている。また、各起毛から構成されるブラシ部22の先端から金属ホルダー21の裏面に至るまでの厚さt2は6.8[mm]になっている。また、ブラシ部22の短手方向(ベルト移動方向に相当する)の寸法であるブラシ幅W1は5[mm]になっている。金属ホルダー21には、絶縁性材料からなる板部材24が片持ち固定されており、この板部材24の自由端はブラシ部22の短手方向の一端側に当接している。この板部材24は、先端を図示しない紙搬送ベルトの裏面に接触させるブラシ部22が紙搬送ベルトの図中矢印方向の移動に伴って各起毛を過剰に撓ませるのを防ぐためのものである。そして、その自由端を、ブラシ部22に対してブラシ先端よりも約2[mm]だけ低い位置に当接させている。
【0029】
図5は、転写ブラシ20を示す斜視図である。同図において、ブラシ部22の長手方向(ベルト幅方向に相当する)の寸法であるブラシ長さL1は297.5[mm]になっている。ブラシ幅W1は、既に述べたように5[mm]である。本発明者は、図4や図5に示した寸法構成であって、且つ互いに電気抵抗特性の異なる複数の転写ブラシ20を用意したのである。これら転写ブラシ20のブラシ部22を構成する各起毛は、レーヨン母材又はナイロン(6ナイロン)母材中に、導電性の電気抵抗であるカーボン粉末が分散せしめられた材料からなっている。なお、以下、各起毛として、レーヨン母材中にカーボン粉末が分散せしめられた材料からなるものを用いた転写ブラシ20を、レーヨン製の転写ブラシ20という。また、各起毛として、ナイロン母材中にカーボン粉末が分散せしめられた材料からなるものを用いた転写ブラシ20を、ナイロン製の転写ブラシ20という。
【0030】
ここで、レーヨンとは、セルロースを溶解してコロイド溶液にし、細孔から凝固液中に引き出して得る再生繊維のことを言う。また、ナイロンとは、任意の長鎖状の合成ポリアミドで、その主鎖がアミド基の繰り返しを持ち、その構造単位が軸方向に配列する繊維のことを言う。
【0031】
予め用意した全ての転写ブラシ20について、それぞれ、ブラシVI値と、スキャン電流値と、スキャン電流値のリップルと、感光体側スキャン電流値(潜像担持体側スキャン電流値)と、起毛の単位長さにおける電気抵抗値とを調べた。
【0032】
ブラシVI値については、次のようにして測定した。即ち、図6に示すように、転写ブラシ20のブラシ面(各起毛の先端によって形成される面)の全域に接触させたステンレス(SUS304)製の電極ブロック103と、バイアス電源102とを電線接続する。ことのき、電極ブロック103とバイアス電源102との間には20[MΩ]の電気抵抗101を介在させる。また、転写ブラシ20のステンレス(SUS304)製の金属ホルダー21を、アンペアメータ100を介してアース接続する。この状態で電気抵抗101と金属ホルダー21(厳密にはアンペアメータ100)との間に2[kV]の直流バイアスを印加する。そして、印加後から1分経過したときにおけるアンペアメータ100の電流値を読み取る。この読み取り値をブラシVI値とする。なお、電極ブロック103は、図示のようにブラシ面の長手方向の全域に接触していることに加えて、図には示されていないがブラシ面の短手方向の全域にも接触している。また、電気抵抗101から電極ブロック103に向けて延びる電線については、ネジ止めによって電極ブロック103に固定した。また、アンペアメータ100から金属ホルダー21に向けて延びる電線についても、ネジ止めによって金属ホルダー21に固定した。
【0033】
スキャン電流値については、次のようにして測定した。即ち、図7に示すように、転写ブラシ20のブラシ面の一端部に接触させた小型電極ブロック104(ブラシとの接触側における平面積=10mm×10mm)と、バイアス電源102とを電線接続する。このとき、小型電極ブロック104とバイアス電源102との間には20[MΩ]の電気抵抗101を介在させる。また、転写ブラシ20の金属ホルダー21を、アンペアメータ100を介してアース接続する。この状態で電気抵抗101と金属ホルダー21(厳密にはアンペアメータ100)との間に2[kV]の直流バイアスを印加する。そして、ブラシ面に接触させた小型電極ブロック104をブラシ長手方向(ベルト幅方向に相当)の一端側から他端側に向けて10[mm/sec]の速度で移動させながら、アンペアメータ100の電流値を順次読み取っていく。このときの各読み取り値をそれぞれスキャン電流値とする。なお、小型電極ブロック104については、ブラシ長手方向において10[mm]の長さでブラシ面に接触させている。また、図8に示すように、ブラシ短手方向(ベルト移動方向に相当する)においてブラシ幅W1の全域、即ち5[mm]の長さでブラシ面に接触させている。また、アンペアメータ100の電流値の読み取り速度については、100[回/sec](測定間隔=小型電極ブロックを0.1mm移動させる毎)とした。
【0034】
スキャン電流値のリップルについては、次のようにして求めた。即ち、各スキャン電流値と、読み取り回数(測定回数)とに基づいて、スキャン電流の平均値を求める。また、各スキャン電流値に基づいて、スキャン電流の最大値を特定する。そして、「(最大値−平均値)/平均値×100%」という公式の解をスキャン電流値のリップルとして求めた。
【0035】
感光体側スキャン電流値については、次のようにして測定した。即ち、転写ブラシ20のブラシ面に接触せしめる小型電極ブロック105として、図9に示すものを用意する。この電極ブロック105は、ブラシ幅方向に二等分した領域のうち、図中左側の領域に絶縁性テープ106を貼り付け、図中右側の領域を無垢のステンレスのまま露出させている。かかる電極ブロック105を図示のようにブラシ面に接触させて、ブラシ面をブラシ幅方向に二等分した領域のうち、図示しない感光体により近い方の領域である図中右側の領域だけにバイアスを供給できるようにする。このような状態で、スキャン電流値と同様にして、小型電極ブロック105を転写ブラシ20の長手方向の一端側から他端側に移動させながら、アンペアメータ(100)の値を順次読み取っていく。このときの各読み取り値をそれぞれ感光体側スキャン電流値とする。
【0036】
起毛の単位長さあたりにおける電気抵抗値(以下、原糸抵抗値という)については、次のようにして測定した。即ち、後述する全ての実験を終えた後に、転写ブラシ20から、起毛を100本ずつ無作為に抜き取る。そして、それら起毛の電気抵抗値を測定して単位長さあたりの抵抗値に換算した後、100本あたりの平均値を求めたものを原糸抵抗値とした。この原糸抵抗値を全ての転写ブラシ20について求めた。なお、起毛の電気抵抗値については、次のようにして測定した。即ち、起毛の両端部にそれぞれ金属製のクリップを装着した後、クリップ間の距離を調整して起毛に100〜200[gf]のテンションをかける。この状態で、両クリップ間に200[V]のバイアスを印加し、1分後の電流値を電流計によって読み取った結果に基づいて電気抵抗値を求めた。
【0037】
[実験前準備2]
先に図1に示したプリンタと同様の構成のプリンタ試験機を用意した。また、このプリンタ試験機に搭載する紙搬送ベルト11として、様々な電気抵抗特性を発揮する複数のものを準備した。そして、これら紙搬送ベルト11の全てについて、ベルトVI値を測定した。
【0038】
このベルトVI値については、次のようにして測定した。即ち、まず、転写ブラシ20を取り外した状態のプリンタ試験機に、紙搬送ベルト11を取り付ける。そして、図10に示すように、紙搬送ベルト11の裏面(ループ内側面)に対し、本来であれば転写ブラシ20を接触させる領域に金属ローラ110を接触させる。そして、この金属ローラ110の軸部材にバイアス電源111を接続する。また、従動ローラ13に接続した電線と、感光体1の金属製の軸部材に接続した電線とを繋ぐ。このとき、両電線の繋ぎ部と、感光体1の軸部材との間には20[MΩ]の電気抵抗112を介在させる。そして、両電線の繋ぎ部を、アンペアメータ113を介してアースに接続して、紙搬送ベルト11と感光体1とをそれぞれ実機と同じ線速で駆動する。このような状態で、バイアス電源111により、金属ローラ110とアンペアメータ113との間に2[kV]の直流バイアスを印加して、印加から1分後におけるアンペアメータ113の電流値を読み取ってベルトVI値とする。なお、実機における紙搬送ベルト11や感光体1の線速は400〜650[mm/sec]に設定している。また、定電流制御の電流の目標値については、85〜150[μA]に設定している。また、後述する縦黒スジのランクを評価する際の実験においては、線速を500[mm/sec]に設定し、転写電流の目標値を110[μA]に設定している。
【0039】
[実験1]
プリンタ試験機に対し、予め準備しておいた複数の転写ブラシ20の1つと、予め準備しておいた複数の紙搬送ベルト11の1つとをそれぞれ取り付ける。そして、転写電流の目標値を85〜150[μA]に設定した状態で定電流制御を行いながら、テスト画像を出力して、そのテスト画像のハーフトーン部における急激な画像濃度変化の有無を調べた。なお、テスト画像については、A3サイズの転写紙に対し、2×2(ツー・バイ・ツー)のベタハーフトーン部が、転写紙全面に形成されるような画像を出力した。
【0040】
プリントアウトされたテスト画像について、ベタハーフトーン部に急激な画像濃度変化が視認されるか否かを評価した。このような評価を、転写ブラシ20や紙搬送ベルト11を適宜取り替えながら繰り返し行った。すると、転写ブラシ20として、ブラシVI値の比較的小さなものを用いた場合には、急激な画像濃度変化を引き起こし難くなることがわかった。また、紙搬送ベルト11として、ベルトVI値が比較的大きくなる中抵抗のものを用いた場合には、急激な画像濃度変化を引き起こし難くなることもわかった。
【0041】
[実験2]
実験1と同様にしてテスト画像を出力して、ハーフトーン部における急激な画像濃度変化の有無を調べるとともに、ハーフトーン部に出現する縦黒スジのランクを1〜5の5段階で評価した。
【0042】
縦黒スジのランク分けについては、試験員の視認によって行った。そして、図11の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)に示されるような状態の縦黒スジを、ランク1、2、3、4、5として評価した。なお、縦黒スジの短手方向の長さである幅は、ランク1(a)=3.0mm程度、ランク2(b)=2.5mm程度、ランク3(c)=2.0mm程度、ランク4(d)=1.5mm程度、ランク5(e)=1.0mm程度である。当然ながら、ランクの数値が大きくなるほど、縦黒スジの目立ち具合が小さくなる。ランク4以上では、テスト画像にかなり目を近づけないとその有無を視認することができないので、ランク4以上が画像品質上の許容範囲となる。つまり、縦黒スジをランク4以上にすれば、有効に抑えることができたと言える。
【0043】
次に示す表1は、ベルトVI値が70〜95[μA]である紙搬送ベルト11と、ナイロン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図26はこの関係を示すグラフである。なお、グラフにおける斜線で示した領域は、縦黒スジを有効に抑えつつ、急激な画像濃度変化を視認できない程度に抑えることができる領域を示している。後述する図13〜図19等についても同様である。また、ベルトVI値が70〜95[μA]であるとは、ベルト周方向の複数箇所に渡ってベルトVI値を測定した場合に、複数の測定値が70〜95[μA]になることを示している。
【表1】
【0044】
次に示す表2は、ベルトVI値が49〜59[μA]である紙搬送ベルト11と、ナイロン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図12はこの関係を示すグラフである。
【表2】
【0045】
次に示す表3は、ベルトVI値が9〜13[μA]である紙搬送ベルト11と、ナイロン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図13はこの関係を示すグラフである。
【表3】
【0046】
次に示す表4は、ベルトVI値が5〜7[μA]である紙搬送ベルト11と、ナイロン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図27はこの関係を示すグラフである。
【表4】
【0047】
次に示す表5は、ベルトVI値が70〜95[μA]である紙搬送ベルト11と、レーヨン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図28はこの関係を示すグラフである。
【表5】
【0048】
次に示す表6は、ベルトVI値が49〜59[μA]である紙搬送ベルト11と、レーヨン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図14はこの関係を示すグラフである。
【表6】
【0049】
次に示す表7は、ベルトVI値が9〜13[μA]である紙搬送ベルト11と、レーヨン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図15はこの関係を示すグラフである。
【表7】
【0050】
次に示す表8は、ベルトVI値が5〜7[μA]である紙搬送ベルト11と、レーヨン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合におけるブラシ特性値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図29はこの関係を示すグラフである。
【表8】
【0051】
これらの結果から、次のようなことが言える。即ち、ベルトVI値が適切な範囲であれば、転写ブラシ20として、ブラシVI値が38.0[μA]以下で、且つスキャン電流の最大値が11.00[μA]以下であるものを用いることで、起毛の母材樹脂(レーヨンあるいはナイロン)にかかわらず、縦黒スジと急激な画像濃度変化とを有効に抑えることができる。
【0052】
ここで、起毛の材料が同じであっても、ブラシ部22のブラシ面の大きさが異なれば、ブラシ全体として電気抵抗が異なってくる。このため、ブラシVI値やスキャン電流については、それぞれブラシ面の単位面積あたりに換算しないと、ブラシ全体としての抵抗特性を正確に表すことができない。本実験2においては電極ブロック(103)をブラシ面の全域に接触させた状態でブラシVI値を測定している。よって、38.0[μA]というブラシVI値は、ブラシ面の単位面積あたりに換算すると、38.0μA÷(0.5cm×29.75cm)=2.55[μA/cm2]となる。ブラシVI値が小さくなるほど縦黒スジが発生し難くなることを考慮すると、小数点以下第2位を切り捨てて、2.5[μA/cm2]以下とするのが妥当である。
【0053】
また、本実験2においては、ブラシとの接触側における平面積が10mm×10mmである小型電極ブロック(104)を、ブラシ幅W1が5mmであるブラシ部22のブラシ面に接触させた状態でスキャン電流値を測定している。よって、11.00[μA]というスキャン電流の最大値は、ブラシ面の単位面積あたりに換算すると、11.00μA÷(0.5cm×1.0cm)=22.00[μA/cm2]となる。スキャン電流の最大値が小さくなるほど縦黒スジが発生し難くなることを考慮すると、小数点以下第2位を切り捨てて、22.0[μm/cm2]以下とするのが妥当である。
【0054】
そこで、本第1実施形態に係るプリンタにおいては、転写ブラシ20として、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値(以下、ブラシVI単位面積換算値という)が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値(以下、最大スキャン単位面積換算値という)が22.0[μA/cm2]以下であるものを用いている。
【0055】
次に示す表9は、ベルトVI値が5〜7[μA]である紙搬送ベルト11と、ナイロン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合における感光体側スキャン電流の最大値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図30はこの関係を示すグラフである。
【表9】
【0056】
次に示す表10は、ベルトVI値が9〜13[μA]である紙搬送ベルト11と、ナイロン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合における感光体側スキャン電流の最大値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図16はこの関係を示すグラフである。
【表10】
【0057】
次に示す表11は、ベルトVI値が70〜95[μA]である紙搬送ベルト11と、ナイロン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合における感光体側スキャン電流の最大値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図31はこの関係を示すグラフである。
【表11】
【0058】
次に示す表12は、ベルトVI値が70〜95[μA]である紙搬送ベルト11と、レーヨン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合における感光体側スキャン電流の最大値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図32はこの関係を示すグラフである。
【表12】
【0059】
次に示す表13は、ベルトVI値が49〜59[μA]である紙搬送ベルト11と、レーヨン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合における感光体側スキャン電流の最大値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図17はこの関係を示すグラフである。
【表13】
【0060】
次に示す表14は、ベルトVI値が9〜13[μA]である紙搬送ベルト11と、レーヨン製の転写ブラシ20との組合せを採用した場合における感光体側スキャン電流の最大値と、スキャン電流の最大値と、縦黒スジのランク評価と、急激な画像濃度変化の有無との関係を示している。また、図18はこの関係を示すグラフである。
【表14】
【0061】
これらの結果から、転写ブラシ20として、ブラシVI値が38.0[μA]以下で、且つスキャン電流の最大値が11.00[μA]以下であることに加えて、次のような条件を具備することで、縦黒スジの評価ランクをより向上させ得ることがわかる。即ち、感光体側スキャン電流の最大値がスキャン電流の最大値よりも小さくなるという条件である。そこで、本第1実施形態のプリンタにおいては、転写ブラシ20として、かかる条件も具備するものを用いている。
【0062】
次に、本発明を適用したプリンタの第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態に係るプリンタの基本的な構成は第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0063】
図19は、上述した実験2における縦黒スジの評価ランクと、スキャン電流値のリップルとの関係を示すグラフである。このグラフには、レーヨン製の転写ブラシ20を用いた場合の結果と、ナイロン製の転写ブラシを用いた場合の結果との両方をプロットしている。このグラフから、転写ブラシ20として、スキャン電流値のリップルが34[%]未満であるものを用いれば、縦黒スジの評価ランクを4又は5という許容範囲に留め得ることがわかる。先に示した図12〜図15の結果と合わせて考察すると、転写ブラシ20として、ブラシVI値が38.0[μA]以下(単位面積あたりで2.5μA以下)であり、且つ、リップルが34[%]であるものを用いれば、起毛の母材樹脂にかかわらず、縦黒スジと急激な画像濃度変化とを有効に抑え得ることになる。そこで、本第2実施形態に係るプリンタにおいては、転写ブラシ20として、かかる条件を具備するものを用いている。なお、安全を考慮すると、リップルは22[%]であることが望ましい。
【0064】
転写ブラシ20としてレーヨン製のものを用いた場合、これまで説明してきた条件を具備させたとしても、縦黒スジと急激な画像濃度変化とを確実に抑えることができるとは限らない。具体的には、先に表7、表8、図15、図29に示したように、レーヨン製の転写ブラシ20を用いた場合、紙搬送ベルト11として、ベルトVI値が49[μA]以上であるもの、より詳しくは49〜95[μA]であるものを用いれば、縦黒スジと急激な画像濃度変化との両方を抑えることができる。しかし、紙搬送ベルト11として、ベルトVI値が13[μA]以下のものを用いると、縦黒スジを抑えることができても、急激な画像濃度変化を抑えることができない。
【0065】
ここで、ベルトの材料が同じであっても、ベルトの大きさが異なれば、ベルト全体としての電気抵抗が異なってくる。このため、ベルトVI値については、それぞれベルト面の単位面積あたりに換算しないと、ベルト全体としての抵抗特性を正確に表すことができない。プリンタ試験機において、転写ニップの面積は、0.8cm×34.2cmになっている。すると、49.0[μA]というベルトVI値は、ベルト面の単位面積あたりに換算すると、49.0μA÷(0.8cm×34.2cm)=1.8[μA/cm2]となる。また、95.0[μA]というベルトVI値は、ベルト面の単位面積あたりに換算すると、95.0μA÷(0.8cm×34.2cm)=3.5[μA/cm2]となる。
【0066】
そこで、第1実施形態や第2実施形態のプリンタにおいて、転写ブラシ20としてレーヨン製のものを用いた場合には、紙搬送ベルト11としてベルトVI値を転写ニップの単位面積あたりで換算した値が1.8〜3.5[μA/cm2]であるものを用いている。
【0067】
これまで説明してきた各種の実験は、既に述べたように、定電流制御される転写電流の目標値を110[μA]に設定した条件下で行われたものである。本発明者らは、次に、この目標値を徐々に増加させながら、レーヨン製の転写ブラシ20にて同様の各種実験を行ったところ、130[μA]までは110[μA]の場合と同様の結果を得ることができた。また、ナイロン製の転写ブラシ20にて同様の各種実験を行ったところ、200[μA]までは110[μA]の場合と同様の結果を得ることができた。よって、転写電流の目標値を130[μA]以下にし、且つ、ブラシVI値、ベルトVI値、スキャン電流の最大値等を適切に設定すれば、起毛の材料の種類にかかわらず、縦黒スジと急激な画像濃度変化との両方を確実に抑えることができる。
【0068】
ベルトから感光体へと実際に流れる転写電流Id[μA]とそのときの転写電荷密度(以下、実効転写電荷密度という)との関係については、「実効転写電荷密度=Id/(V×L1)」という関係式で表すことができる。この関係式におけるIdは、転写電流の目標値と同じと考えて良い。また、Vは、紙搬送ベルト11の移動速度[mm/sec]である。また、L1は、転写ブラシ20のベルト幅方向の長さ[mm]である。かかる関係式に基づいて、転写電流の目標値を130[μA]に設定した場合における実効転写電荷密度を計算すると、「130/(630×297.5)=6.93×10−4[μC/cm2]=6.93×10−8[C/cm2]」となる。よって、実効転写電荷密度を6.93×10−8[C/cm2]以下にし、且つ、ブラシVI値、ベルトVI値、スキャン電流の最大値等を適切に設定すれば、起毛の材料の種類にかかわらず、縦黒スジと急激な画像濃度変化との両方を確実に抑えることができる。
【0069】
そこで、第1実施形態や第2実施形態に係るプリンタにおいては、転写装置10として、実効転写電荷密度を6.93×10−8[C/cm2]以下にするものを用いている。
【0070】
一般に、転写バイアス電源31からの出力電流値は、転写電流値よりも大きくなる。これは、転写バイアス電源31から出力された電流のうち、一部が感光体に流れないで、張架ローラ等からアースに流れ込むためである。よって、転写バイアス電源31からの出力電流に対応する転写電荷密度については、実効転写電荷密度よりも大きくすることになる。
【0071】
次に、本発明者らは、互いにベルトVI値の異なる複数の紙搬送ベルト11と、互いにブラシVI値の異なる複数の転写ブラシ20と、互いに種類の異なる複数の転写材とを用意し、それらを適宜組合せながら、転写バイアスの電圧値と転写バイアス電源31からの出力電流値(以下、電源出力電流という)との関係を調べる実験を行った。
【0072】
次に示す表15は、室温10℃15%RHの環境下において、ブラシVI値が16.1μAであるレーヨン製の転写ブラシ20を用いた場合における、紙種(転写材の種類)と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、電源からの出力電圧値(出力電圧値)と、電源出力電流との関係を示すものである。また、図33は、かかる関係を示すグラフである。
【表15】
【0073】
次に示す表16は、室温32℃80%RHの環境下において、ブラシVI値が38.0μAであるレーヨン製の転写ブラシ20を用いた場合における、紙種と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、電源からの出力電圧値(出力電圧値)と、電源出力電流との関係を示すものである。また、図34は、かかる関係を示すグラフである。
【表16】
【0074】
次に示す表17は、室温10℃15%RHの環境下において、ブラシVI値が20.0μAであるナイロン製の転写ブラシ20を用いた場合における、紙種と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、電源からの出力電圧値(出力電圧値)と、電源出力電流との関係を示すものである。また、図35は、かかる関係を示すグラフである。
【表17】
【0075】
次に示す表18は、室温32℃80%RHの環境下において、ブラシVI値が64.2μAであるナイロン製の転写ブラシ20を用いた場合における、紙種と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、電源からの出力電圧値(出力電圧値)と、電源出力電流との関係を示すものである。また、図36は、かかる関係を示すグラフである。
【表18】
【0076】
既に述べたように、ナイロン製の転写ブラシ20よりもレーヨン製の転写ブラシ20の方が、転写バイアスの許容範囲が狭い。レーヨン製の転写ブラシ20を用いた場合の許容転写電流の条件は上述したように130[μA]であった。各種のブラシVI値及び紙種の組合せにおいて、転写電流目標値を上限の130[μA]にした場合における電源出力電流の最大値は、図33、図34から、460[μA]であることがわかる。なお、これらの図には、表15や表16に示したように、130[μA]に代えて、これよりも大きな値の転写電流値を付与した場合の結果が含まれているが、それでも電源出力電流の最大値は460[μA]以下に留まっている。この電源出力電流の最大値から、転写電荷密度を求めると、「460/(630×297.5)=2.45×10−7[C/cm2]となる。
【0077】
転写電流の目標値を110[μA]よりも小さくした場合、環境によっては転写不良を引き起こすことがあった。よって、転写電流の下限値は110[μA]である。110[μA]の転写電流を得るためには、転写バイアス電源31からはそれよりも多くの電流を出力する必要がある。110[μA]を転写電荷密度に換算すると、「110/(630×297.5)=5.87×10−8[C/cm2]」となる。
【0078】
そこで、第1実施形態や第2実施形態に係るプリンタにおいては、転写装置10として、転写バイアス電源31からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.45×10−7[C/cm2]以下にするものを用いている。
【0079】
次に、本発明を適用したプリンタの第3実施形態について説明する。本第3実施形態に係るプリンタの基本的な構成も第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0080】
先に示した表1〜表8、図12〜図15、図26〜図29の結果から、レーヨン製の転写ブラシ20は、ナイロン製の転写ブラシ20に比べて、縦黒スジを発生させ易くなることがわかる。後者の転写ブラシ20であれば、許容できるブラシVI値の下限を38.0[μA]から64.2[μA]に引き上げ、且つ許容できるスキャン電流の最大値の下限を11.00[μA]から28.25[μA]に引き上げ得ることができる。下限を引き上げることができるということは、許容できるブラシの電気抵抗値の範囲が広まる、即ち、ブラシ部の材料選択の幅が広まることになる。64.2[μA]というブラシVI値は、ブラシ面の単位面積あたりに換算すると、64.2μA÷(0.5cm×29.75cm)=4.32[μA/cm2]となる。ブラシVI値が小さくなるほど縦黒スジが発生し難くなることを考慮すると、小数点以下第2位を切り捨てて、4.3[μA/cm2]以下とするのが妥当である。また、28.25[μA]というスキャン電流の最大値は、ブラシ面の単位面積あたりに換算すると、28.25μA÷(0.5cm×1.0cm)=56.50[μA/cm2]となる。スキャン電流の最大値が小さくなるほど縦黒スジが発生し難くなることを考慮すると、小数点以下第2位を切り捨てて、56.5[μm]以下とするのが妥当である。
【0081】
また、ナイロン製の転写ブラシ20であれば、許容できるブラシVI値の下限を38.0[μA]から64.2[μA]に引き上げ、且つ許容できるスキャン電流の最大値の下限を11.00[μA]から28.25[μA]に引き上げ得ることができる。下限を引き上げることができるということは、許容できるブラシの電気抵抗値の範囲が広まる、即ち、ブラシ部の材料選択の幅が広まることになる。64.2[μA]というブラシVI値は、ブラシ面の単位面積あたりに換算すると、64.2μA÷(0.5cm×29.75cm)=4.32[μA/cm2]となる。ブラシVI値が小さくなるほど縦黒スジが発生し難くなることを考慮すると、小数点以下第2位を切り捨てて、4.3[μA/cm2]以下とするのが妥当である。また、28.25[μA]というスキャン電流の最大値は、ブラシ面の単位面積あたりに換算すると、28.25μA÷(0.5cm×1.0cm)=56.50[μA/cm2]となる。スキャン電流の最大値が小さくなるほど縦黒スジが発生し難くなることを考慮すると、小数点以下第2位を切り捨てて、56.5[μm]以下とするのが妥当である。
【0082】
また、表1〜表8、図12〜図15、図26〜図29の結果から、レーヨン製の転写ブラシ20は、ナイロン製の転写ブラシ20に比べて、ベルトVI値の適正範囲を広くし得ることがわかる。具体的には、レーヨン製の転写ブラシ20の場合、上述したように、ブラシVI値と、スキャン電流の最大値又はリップルとを規定したとしても、ベルトVI値が13[μA]以下である場合には、ハーフトーン部の急激な画像濃度変化をきたしてしまう。つまり、ベルトVI値が比較的高い(電気抵抗値が比較的低い)紙搬送ベルト11を用いる必要がある。これに対し、ナイロン製の転写ブラシ20の場合、ブラシVI値と、スキャン電流の最大値又はリップルとを規定すれば、5〜95[μA]という広範囲のベルトVI値に渡って、縦黒スジと急激な画像濃度変化との両方を抑えることができる。ベルトVI値が低くなるほど急激な画像濃度変化を引き起こし易くなるので、ベルトVI値の適正範囲は少なくとも5〜95[μA]であることが立証されたことになる。これは、紙搬送ベルト11に用いる材料として、より多様なものを適用し得ることを示しており、紙搬送ベルト11の設計の自由度がレーヨン製の転写ブラシ20に比べてより高まったことになる。
【0083】
そこで、本第3実施形態に係るプリンタにおいては、転写ブラシ20として、起毛の母材樹脂がナイロン(ポリアミド樹脂)からなるナイロン製のものであって、且つ次の条件を具備するものを用いている。即ち、ブラシVI単位面積換算値が4.3[μA/cm2]以下で、且つ最大スキャン単位面積換算値が56.5[μA/cm2]以下であるという条件である。
【0084】
5[μA]というベルトVI値をベルト面の単位面積あたりに換算すると、5μA÷(0.8cm×34.2cm)=0.18[μA/cm2]となる。また、95.0[μA]というベルトVI値をベルト面の単位面積あたりに換算すると、95.0μA÷(0.8cm×34.2cm)=3.5[μA/cm2]となる。そこで、第3実施形態のプリンタにおいて、転写ブラシ20としてナイロン製のものを用いる場合には、紙搬送ベルト11としてベルトVI値を転写ニップの単位面積あたりで換算した値が0.18〜3.5[μA/cm2]であるものを用いている。
【0085】
なお、後述する第4実施形態のプリンタにおいても、同様の理由により、紙搬送ベルト11としてベルトVI値を転写ニップの単位面積あたりで換算した値が0.18〜3.5[μA/cm2]であるものを用いている。
【0086】
レーヨン製の転写ブラシ20がナイロン製の転写ブラシ20よりも縦黒スジを発生させ易くなる理由は、次のように考えられる。即ち、図20は、上述した実験2における感光体側スキャン電流値とその測定位置(ブラシ長手方向における位置)との関係を示すグラフである。また、図21は、上述した実験2におけるスキャン電流値とその測定位置との関係を示すグラフである。これらの図において、R1、R2という符号が付された2本の曲線は、何れもレーヨン製の転写ブラシ20による測定結果を示している。また、その他の3本の曲線は、何れもナイロン製の転写ブラシ20による測定結果を示している。これらのグラフから、レーヨン製の転写ブラシ20は、ナイロン製の転写ブラシ20に比べて、長手方向における電気抵抗値のバラツキが大きくなることがわかる。このようなバラツキがあると、長手方向において電気抵抗値が高くなるブラシ箇所で、転写電流が集中的に流れるようになって縦黒スジを発生させ易くなる。
【0087】
転写ブラシ20のブラシ部22に用いる起毛としては、上述したように、母材樹脂にカーボンが分散せしめられた原糸を用いる。かかる原糸として、転写ブラシ20に用いるための専用のものを製造すると、転写ブラシ20の製造コストが非常に高騰してしまう。このため、原糸については、一般市場に出回っている汎用のものを用いることが望ましい。ナイロン製の原糸は、様々な電気抵抗値のものが市販されているが、レーヨン製の原糸の場合、転写ブラシ20の起毛として使用するのに適した電気抵抗値のものが市販されておらず、電気抵抗値が適正値よりも低いものしか手に入らない。このため、レーヨン製の原糸の場合には、特殊な処理によって電気抵抗値を高めて起毛として使用するのであるが、かかる処理によって原糸の長さ方向に均一に電気抵抗値を高めることはできない。どうしても、長さ方向において電気抵抗値をほとんど高めることができない箇所を発生させてしまう。転写ブラシ20において、このような箇所から作られた起毛は、他の箇所から作られた起毛に比べて電気抵抗値が遙かに小さくなるため、転写電流を集中的に流してしまう。このことが、レーヨン製の転写ブラシ20で縦黒スジを発生させ易くなる理由となっている。
【0088】
次に、本発明を適用したプリンタの第4実施形態について説明する。本第4実施形態に係るプリンタの基本的な構成も第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
先に表1〜表4、図12〜図13、図26〜図27を用いて説明したように、転写ブラシ20としてナイロン製のものを用いた場合には、次のようにすることで、急激な画像濃度変化を抑えることができる。即ち、ブラシVI値が64.2[μA](単位面積あたりで4.3μA/cm2)以下であるという条件を具備させるのである。また、先に図19を用いて説明したように、転写ブラシ20として、スキャン電流値のリップルが34[%]未満であるものを用いれば、縦黒スジの評価ランクを4又は5という許容範囲に留め得ることがわかる。そこで、本第4実施形態においては、転写ブラシ20として、ナイロン製のものであって、これらの条件を具備させたものを用いている。
【0089】
次に示す表19は、ブラシVI値と、ナイロン製の転写ブラシ20の起毛の単位長さあたりにおける原糸抵抗値との関係を示している。また、図22は、かかる関係を示すグラフである。
【表19】
【0090】
図22のグラフにおいて、ブラシVI値が64.2[μA]以下である起毛からなる転写ブラシ20は、既に説明したように、急激な画像濃度変化を抑えることができる。かかる起毛は、同グラフから、起毛の単位長さあたりにおける原子抵抗値が3.0×1010[Ω/mm]という条件を具備している。そこで、第3実施形態や第4実施形態のプリンタにおいては、転写ブラシ20として、かかる条件を具備するものを用いている。
【0091】
先に表10〜表14、図17〜図18、図31〜図32に基づいて説明したように、感光体側スキャン電流の最大値がスキャン電流の最大値よりも小さくなるという条件を転写ブラシ20に具備させることで、縦黒スジの評価ランクをより向上させることができる。そこで、これまで説明してきた第1〜4実施形態に係るプリンタにおいては、それぞれ、転写ブラシ20として、かかる条件を具備するものを用いている。
【0092】
参考までに、6ナイロン(商品名)及びレーヨンの性状を次の表20に示す。
【表20】
【0093】
表20から、ナイロン製の転写ブラシ20では、起毛の含水率が20℃95%RHの環境下において90%以下であることがわかる。これに対し、レーヨン製の転写ブラシ20では、20℃95%RHの環境下で12.3〜25%程度である。ナイロンはレーヨンと比較すると含水率の低い素材であることがわかる。
【0094】
6ナイロン及び12ナイロンの各種性状を図23に示す。6ナイロンは、カーボンが断面方向において均一に分散せしめられたものであるのに対し、12ナイロンは、断面方向において周縁部のあたりにだけカーボンが分散せしめられたものである。
【0095】
第1実施形態や第2実施形態で説明したように、ナイロン製の転写ブラシ20を用いた場合には、110〜200[μA]が転写電流の許容範囲であった。この許容範囲の上限値である200[μA]から実効転写電荷密度を求めると、「200/(630×297.5)=1.06×10−7[C/cm2]」となる。よって、ナイロン製の転写ブラシ20を用いる第3実施形態や第4実施形態に係るプリンタにおいては、実効転写電荷密度を1.06×10−7[C/cm2]以下にし、且つ、ブラシVI値、ベルトVI値、スキャン電流の最大値等を適切に設定すれば、縦黒スジと急激な画像濃度変化との両方を確実に抑えることができる。
【0096】
そこで、第3実施形態や第4実施形態に係るプリンタにおいては、転写装置10として、実効転写電荷密度を1.06×10−7[C/cm2]以下にするものを用いている。
【0097】
ナイロン製の転写ブラシ20を採用し且つ転写電流を上限の200[μA]に設定した場合における電源出力電流の最大値を、先に示した表17、表18、図35、図36から特定すると、500[μA]であることがわかる。この電源出力電流の最大値から、転写電荷密度を求めると、「500/630×297.5」=2.67×10−7[C/cm2]」となる。また、転写電流の下限値である110[μA]を得るためには、上述したように、5.87×10−8[C/cm2]以上の転写電荷密度が転写バイアス電源31からの出力で必要になる。
【0098】
そこで、ナイロン製の転写ブラシ20を用いる第3実施形態や第4実施形態のプリンタにおいては、転写装置10として、転写バイアス電源31からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.67×10−7[C/cm2]以下にするものを用いている。
【0099】
これまで、ベルト部材たる紙搬送ベルトのおもて面に保持した転写紙に対して感光体1上のトナー像を転写するプリンタについて説明してきたが、次のようなプリンタにも本発明の適用が可能である。即ち、感光体1上のトナー像をベルト部材たる中間転写ベルトに転写するプリンタである。
【0100】
以上、第3実施形態や第4実施形態に係るプリンタにおいては、転写ブラシ20として、ナイロン製のものを用いることで、レーヨン製のものを用いる場合に比べて、ブラシVI値、スキャン電流の最大値、スキャン電流のリップルの適正範囲をそれぞれ広めて、転写ブラシ20の設計の自由度を向上させることができる。更には、ベルトVI値の適正範囲を広めて、紙搬送ベルト11の材料の選択自由度を向上させることもできる。
【0101】
また、第3実施形態や第4実施形態に係るプリンタにおいては、起毛の単位長さにおける電気抵抗値が3.3×1010[Ω/mm]以上である転写ブラシ20を用いることで、実験で良好な結果が得られた転写ブラシ20と同じものを用いて、縦黒スジや急激な画像濃度変化が目立たない良好な画像を形成することができる。
【0102】
また、各実施形態に係るプリンタにおいては、転写ブラシ20として、感光体側スキャン電流の最大値がスキャン電流の最大値よりも小さくなるものを用いているので、縦黒スジや急激な画像濃度変化を更に確実に抑えることができる。
【0103】
また、第1実施形態や第2実施形態に係るプリンタにおいては、紙搬送ベルト11として、ベルトVI値を転写ニップの単位面積あたりで換算した値が1.8〜2.2[μA/cm2]であるものを用いているので、転写ブラシ20としてレーヨン製のものを用いた場合でも、縦黒スジや急激な画像濃度変化を抑えることができる。
【0104】
また、第1実施形態や第2実施形態に係るプリンタにおいては、紙搬送ベルト11として、ベルトVI値をベルトと感光体との当接によって形成される転写ニップの単位面積あたりで換算した値が1.8〜3.5[μA/cm2]であるものを用いているので、上述した理由により、縦黒スジや急激な画像濃度変化の発生をより確実に抑えることができる。
【0105】
また、第1実施形態や第2実施形態に係るプリンタにおいては、転写装置10として、実効転写電荷密度を6.93×10−8[C/cm2]以下にするものを用いているので、既に説明したように、不適切な転写バイアス条件の設定に起因する縦黒スジや急激な画像濃度変化の発生を回避することができる。
【0106】
また、第1実施形態や第2実施形態に係るプリンタにおいては、転写装置として、紙搬送ベルト11に印加する転写バイアスを出力する転写バイアス電源31からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.45×10−7[C/cm2]以下にするものを用いているので、縦黒スジや急激な画像濃度変化の発生をより確実に抑えつつ、転写電荷密度の不足に起因する転写不良の発生を抑えることができる。
【0107】
また、第3実施形態や第4実施形態に係るプリンタにおいては、紙搬送ベルト11として、ベルトVI値をベルトと感光体との当接によって形成される転写ニップの単位面積あたりで換算した値が0.18〜3.5[μA/cm2]であるものを用いているので、上述した理由により、縦黒スジや急激な画像濃度変化の発生をより確実に抑えることができる。
【0108】
また、第3実施形態や第4実施形態に係るプリンタにおいては、転写装置10として、実効転写電荷密度を1.06×10−7[C/cm2]以下にするものを用いているので、既に説明したように、不適切な転写バイアス条件の設定に起因する縦黒スジや急激な画像濃度変化の発生を回避することができる。
【0109】
また、第3実施形態や第4実施形態に係るプリンタにおいては、転写装置10として、紙搬送ベルト11に印加する転写バイアスを出力する転写バイアス電源31からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.67×10−7[C/cm2]以下にするものを用いているので、縦黒スジや急激な画像濃度変化の発生をより確実に抑えつつ、転写電荷密度の不足に起因する転写不良の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】第1実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】同プリンタの転写装置の一部を示す分解斜視図。
【図3】同転写装置と同プリンタの筐体の一部とを示す斜視図。
【図4】同転写装置の転写ブラシを示す側面図。
【図5】同転写ブラシを示す斜視図。
【図6】ブラシVI値の測定法を説明するための模式図。
【図7】スキャン電流値の測定法を説明するための模式図。
【図8】小型電極ブロックを接触させた状態の転写ブラシを示す側面図。
【図9】感光体側スキャン電流値の測定法を説明するための模式図。
【図10】ベルトVI値の測定法を説明するための構成図。
【図11】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、ランク1、2、3、4、5の縦黒スジを示す模式図。
【図12】ベルトVI値49〜59μAの紙搬送ベルトとナイロン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図13】ベルトVI値9〜13μAの紙搬送ベルトとナイロン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図14】ベルトVI値49〜59μAの紙搬送ベルトとレーヨン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図15】ベルトVI値9〜13μAの紙搬送ベルトとレーヨン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図16】ベルトVI値9〜13μAの紙搬送ベルトとナイロン製の転写ブラシとを用いた場合における感光体側スキャン電流の最大値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図17】ベルトVI値49〜59μAの紙搬送ベルトとレーヨン製の転写ブラシとを用いた場合における感光体側スキャン電流の最大値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図18】ベルトVI値9〜13μAの紙搬送ベルトとレーヨン製の転写ブラシとを用いた場合における感光体側スキャン電流の最大値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図19】ベルトVI値49〜59μAの紙搬送ベルトを用いた場合におけるスキャン電流値のリップルと縦黒スジのランクとの関係を示すグラフ。
【図20】感光体側スキャン電流値と測定位置との関係を示すグラフ。
【図21】スキャン電流値と測定位置との関係を示すグラフ。
【図22】ナイロン製の転写ブラシのブラシVI値と、起毛の単位長さあたりにおける原子抵抗値との関係を示すグラフ。
【図23】6ナイロン及び12ナイロンの各種性状を示す図表。
【図24】縦黒スジを引き起こしたハーフトーン部の一例を示す模式図。
【図25】急激な画像濃度変化を引き起こしたハーフトーン部の一例を示す模式図。
【図26】ベルトVI値70〜90μAの紙搬送ベルトとナイロン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図27】ベルトVI値5〜7μAの紙搬送ベルトとナイロン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図28】ベルトVI値70〜95μAの紙搬送ベルトとレーヨン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図29】ベルトVI値70〜95μAの紙搬送ベルトとレーヨン製の転写ブラシとを用いた場合におけるブラシVI値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図30】ベルトVI値5〜7μAの紙搬送ベルトとナイロン製の転写ブラシとを用いた場合における感光体側スキャン電流の最大値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図31】ベルトVI値70〜95μAの紙搬送ベルトとナイロン製の転写ブラシとを用いた場合における感光体側スキャン電流の最大値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図32】ベルトVI値70〜95μAの紙搬送ベルトとレーヨン製の転写ブラシとを用いた場合における感光体側スキャン電流の最大値とスキャン電流の最大値との関係を示すグラフ。
【図33】室温10℃15%RHの環境下において、ブラシVI値が16.1μAであるレーヨン製の転写ブラシを用いた場合における、紙種と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、出力電圧値と、電源出力電流との関係を示すグラフ。
【図34】室温32℃80%RHの環境下において、ブラシVI値が38.0μAであるレーヨン製の転写ブラシを用いた場合における、紙種と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、出力電圧値と、電源出力電流との関係を示すグラフ。
【図35】室温10℃15%RHの環境下において、ブラシVI値が20.0μAであるナイロン製の転写ブラシを用いた場合における、紙種と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、出力電圧値と、電源出力電流との関係を示すグラフ。
【図36】室温32℃80%RHの環境下において、ブラシVI値が34.2μAであるナイロン製の転写ブラシを用いた場合における、紙種と、ベルトVI値と、転写電流目標値と、出力電圧値と、電源出力電流との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0111】
1 感光体(潜像担持体)
3 光書込ユニット(潜像形成手段)
4 現像装置(現像手段)
10 転写装置
11 紙搬送ベルト(ベルト部材)
12 駆動ローラ(張架部材)
13 従動ローラ(張架部材)
20 転写ブラシ(ブラシ部材)
21 金属ホルダー(導電性支持体)
22 ブラシ部
P 転写紙(転写材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、
ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が22.0[μA/cm2]以下であることを特徴とするブラシ部材。
【請求項2】
導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、
ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流値のリップルが34[%]未満であることを特徴とするブラシ部材。
【請求項3】
導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、
複数の上記起毛がそれぞれポリアミド樹脂に導電性の抵抗調整剤を分散せしめた材料からなり、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が4.3[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が56.5[μA/cm2]以下であることを特徴とするブラシ部材。
【請求項4】
導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、
複数の上記起毛がそれぞれポリアミド樹脂に導電性の抵抗調整剤を分散せしめた材料からなり、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が4.3[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流値のリップルが34[%]未満であることを特徴とするブラシ部材。
【請求項5】
請求項3又は4のブラシ部材であって
上記起毛の単位長さにおける電気抵抗値が3.3×1010[Ω/mm]以上であることを特徴とするブラシ部材。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかのブラシ部材において、
潜像担持体側スキャン電流の最大値が上記スキャン電流の最大値よりも小さくなることを特徴とする転写装置。
【請求項7】
無端状のベルト部材を複数の張架部材によって張架しながら無端移動せしめるベルト装置と、導電性支持体の表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部の先端側を該ベルト部材のループ内側面である裏面に接触させるように配設された転写ブラシとを有し、該導電性支持体に印加される転写バイアスを該ブラシ部の先端側から該ベルト部材の裏面に導きながら、該ベルト部材のおもて面に接触している潜像担持体の表面の可視像を該ベルト部材のおもて面又はこれに保持される転写材に転写する転写装置において、
上記転写ブラシとして、請求項1乃至6の何れかのブラシ部材を用いたことを特徴とする転写装置。
【請求項8】
無端移動する表面に潜像を担持する潜像担持体と、該表面に潜像を形成する潜像形成手段と、該表面の潜像を現像する現像手段と、現像によって得られた可視像を無端移動するベルト部材のおもて面又はこれに保持される転写材に転写する転写手段とを備える画像形成装置において、
上記転写手段として、請求項7の転写装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項8の画像形成装置において、
上記ブラシ部材として請求項1又は2のものを用いるとともに、
上記ベルト部材として、ベルトVI値を該ベルト部材と上記潜像担持体との当接によって形成される転写ニップの単位面積あたりで換算した値が1.8〜3.5[μA/cm2]であるものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9の画像形成装置において、
上記転写手段として、実効転写電荷密度を6.93×10−8[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項9の画像形成装置において、
上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を実効転写電荷密度よりも大きく且つ2.45×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項9の画像形成装置において、
上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.45×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項8の画像形成装置において、
上記ブラシ部材として請求項3又は4のものを用いるとともに、
上記ベルト部材として、ベルトVI値を該ベルト部材と上記潜像担持体との当接によって形成される転写ニップの単位面積あたりで換算した値が0.18〜3.5[μA/cm2]であるものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項13の画像形成装置において、
上記転写手段として、実効転写電荷密度を1.06×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項13の画像形成装置において、
上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を実効転写電荷密度よりも大きく且つ2.67×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項13の画像形成装置において、
上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.67×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、
ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が22.0[μA/cm2]以下であることを特徴とするブラシ部材。
【請求項2】
導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、
ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が2.5[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流値のリップルが34[%]未満であることを特徴とするブラシ部材。
【請求項3】
導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、
複数の上記起毛がそれぞれポリアミド樹脂に導電性の抵抗調整剤を分散せしめた材料からなり、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が4.3[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流の最大値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が56.5[μA/cm2]以下であることを特徴とするブラシ部材。
【請求項4】
導電性支持体と、これの表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを有するブラシ部材であって、
複数の上記起毛がそれぞれポリアミド樹脂に導電性の抵抗調整剤を分散せしめた材料からなり、ブラシVI値をブラシ面の単位面積あたりで換算した値が4.3[μA/cm2]以下で、且つスキャン電流値のリップルが34[%]未満であることを特徴とするブラシ部材。
【請求項5】
請求項3又は4のブラシ部材であって
上記起毛の単位長さにおける電気抵抗値が3.3×1010[Ω/mm]以上であることを特徴とするブラシ部材。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかのブラシ部材において、
潜像担持体側スキャン電流の最大値が上記スキャン電流の最大値よりも小さくなることを特徴とする転写装置。
【請求項7】
無端状のベルト部材を複数の張架部材によって張架しながら無端移動せしめるベルト装置と、導電性支持体の表面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部の先端側を該ベルト部材のループ内側面である裏面に接触させるように配設された転写ブラシとを有し、該導電性支持体に印加される転写バイアスを該ブラシ部の先端側から該ベルト部材の裏面に導きながら、該ベルト部材のおもて面に接触している潜像担持体の表面の可視像を該ベルト部材のおもて面又はこれに保持される転写材に転写する転写装置において、
上記転写ブラシとして、請求項1乃至6の何れかのブラシ部材を用いたことを特徴とする転写装置。
【請求項8】
無端移動する表面に潜像を担持する潜像担持体と、該表面に潜像を形成する潜像形成手段と、該表面の潜像を現像する現像手段と、現像によって得られた可視像を無端移動するベルト部材のおもて面又はこれに保持される転写材に転写する転写手段とを備える画像形成装置において、
上記転写手段として、請求項7の転写装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項8の画像形成装置において、
上記ブラシ部材として請求項1又は2のものを用いるとともに、
上記ベルト部材として、ベルトVI値を該ベルト部材と上記潜像担持体との当接によって形成される転写ニップの単位面積あたりで換算した値が1.8〜3.5[μA/cm2]であるものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9の画像形成装置において、
上記転写手段として、実効転写電荷密度を6.93×10−8[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項9の画像形成装置において、
上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を実効転写電荷密度よりも大きく且つ2.45×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項9の画像形成装置において、
上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.45×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項8の画像形成装置において、
上記ブラシ部材として請求項3又は4のものを用いるとともに、
上記ベルト部材として、ベルトVI値を該ベルト部材と上記潜像担持体との当接によって形成される転写ニップの単位面積あたりで換算した値が0.18〜3.5[μA/cm2]であるものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項13の画像形成装置において、
上記転写手段として、実効転写電荷密度を1.06×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項13の画像形成装置において、
上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を実効転写電荷密度よりも大きく且つ2.67×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項13の画像形成装置において、
上記転写手段として、上記ベルト部材に印加する転写バイアスを出力する電源からの転写電荷密度を5.87×10−8[C/cm2]よりも大きく且つ2.67×10−7[C/cm2]以下にするものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2007−41543(P2007−41543A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148217(P2006−148217)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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