説明

ブレーキディスク

【課題】制動時における摺動体の熱倒れを極力防止することができるブレーキディスクを提供する。
【解決手段】ブレーキディスクは、車軸に取り付けられる本体部11及びその周囲の外周フランジ部16を具備してなるハブ1と、当該ハブの外周フランジ部16に対して複数の締結ボルト4により固着される環状の摺動体3とを備える。前記外周フランジ部16には、締結ボルト4を装着するための複数の締結孔17が設けられると共に、一群の締結孔17とハブ本体部11との間の環状帯領域には、ディスクの半径方向に対して周方向へ一様に傾斜した複数の連結枝18が設けられている。各連結枝18のディスク半径方向に対する傾斜角度θ1は45°以上90°以下に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキ用のブレーキディスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にブレーキディスクは、車軸への取付部であるハブと、ブレーキキャリパの制輪子(ブレーキシューやブレーキライニング)と摩擦接触させるべく前記ハブの周囲に設けられた環状円盤形の摺動部(制動部)とから構成されている。従来、ハブと摺動部とを一体鋳造したブレーキディスクが知られている。一体型のディスクでは図6に示すように、摺動部の内周側根元部がハブに強固に固定されているために、制動時の摩擦熱で摺動部が熱膨張した際、ディスクの中心軸線Cと平行な方向へのモーメントが生じ、摺動部が車軸方向に傾くように変形する現象(この現象を「熱倒れ」と呼ぶ)が知られている。熱倒れは、それ単独で又はディスクの取付精度の低さに起因した摺動面振れと相俟ってディスクの偏摩耗を生じさせ、ひいては制動時における制動トルクの不安定化や不快なブレーキ振動の原因となる。このため、熱倒れを極力防止するための対策が種々提案されている。
【0003】
特許文献1のディスクブレーキ用ディスクプレートは、「円環状の制動部材の内周部に、制動部材と別体にされた取付部材の端部が重ねられ、前記両部材がそれらを貫通する連結ピンで連結されたものにおいて、連結ピンを挿通する両部材の孔の一方または両方が径方向に長い長孔になっている」ものである。つまり、連結ピン用の孔を径方向に長孔化することで、制動部材の熱膨張時における取付部材(ハブ)による拘束を緩和し、制動部材がディスクの半径方向外向きに熱膨張することを容易にして、制動部材の熱倒れを極力防止せんとするものである。しかしながら、特許文献1のように連結ピン用の孔を長孔化すると、取付部材(ハブ)に対する制動部材の姿勢保持力が低下し、摺動面の振れ精度を高精度に保つことが難しくなる。このため、特許文献1の技術も、総合的な評価としてはディスク偏摩耗の回避につながらない。
【0004】
特許文献2のディスクブレーキ用ベンチレーテッドディスクは、摺動部たる摩擦トラックが支持ディスクハブに対して、その支持ディスクハブの周囲に放射状に配設された複数のピンを介して連結されたものであって、各ピンの外端部が摩擦トラック内に埋設・固定される一方で、各ピンの内端部が支持ディスクハブ内に半径方向に摺動可能なインサートとして収容されているものである。つまり、摩擦トラックの内周側に固定されたピンを、支持ディスクハブに対して半径方向に摺動可能としておくことにより、摩擦トラックの熱膨張時における支持ディスクハブによる拘束を緩和し、摩擦トラックがディスクの半径方向外向きに熱膨張することを容易にして、摩擦トラックの熱倒れを極力防止せんとするものである。この構造によれば、支持ディスクハブによる複数のピンを介した摩擦トラックの姿勢保持性も悪くなく、摺動面の振れ精度を高精度に保つことも可能である。
【0005】
しかしながら、特許文献2のディスクを製造するためには、複数のピンを砂型(中子)内に収めた状態で摩擦トラック及び支持ディスクハブを一体鋳造し、その後に機械加工によって摩擦トラックと支持ディスクハブとを切り離し、両者間に残された一群のピンによって両者を連結した状態に導くという複雑な工程を経る必要がある。この製造方法には、ピンを中子内に仮保持する際の位置決め精度をいかに確保するかという問題や、型内にピンを含んだ状態で鋳造することに起因してピンと他の肉部との界面に生じた酸化物が、ピンの固定強度を低下させたりピンの摺動性を悪化させたりするおそれがあるなど製造上多くの問題がある。このため、特許文献2のディスクは、製造コストが高くつく一方で、そのコストに見合うだけの品質や性能を確保することが難しいという欠点がある。
【0006】
【特許文献1】実開昭61−104842号の全文明細書及び図面
【特許文献2】特表2003−526058号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来の技術とは異なる解決手法により、制動時における摺動部又は摺動体の熱倒れを極力防止することができるブレーキディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、ハブと、その周囲に設けられた環状の摺動部とを備えたブレーキディスクにおいて、前記摺動部の内周部が前記ハブの本体部に対し複数の連結枝を介して連結されるとともに、各連結枝がディスクの半径方向に対して周方向へ傾斜した状態で設けられていることを特徴とするブレーキディスクである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のブレーキディスクにおいて、前記各連結枝のディスク半径方向に対する傾斜角度(θ1)が、45°以上90°以下であることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、車軸に取り付けられる本体部及びその本体部の周囲に設けられた外周フランジ部を具備してなるハブと、当該ハブの外周フランジ部に対して複数の締結具により固着される環状の摺動体とから構成されるブレーキディスクにおいて、前記ハブの外周フランジ部には、前記各締結具を装着するための複数の締結部がハブの中心軸線(C)を中心として等角度間隔で設けられると共に、当該外周フランジ部における前記一群の締結部とハブの本体部との間の領域において、ディスクの半径方向に対して周方向へ一様に傾斜した複数の連結枝が設けられており、各連結枝のディスク半径方向に対する傾斜角度(θ1)が、45°以上90°以下であることを特徴とするブレーキディスクである。
【0011】
[作用]
制動時の摩擦熱でディスクの摺動部又は摺動体の全体が半径方向外向き(拡径方向)に熱膨張すると、摺動部又は摺動体の内周部をハブの本体部に連結している各連結枝が拡径方向に引っ張られる。すると、ディスクの半径方向に対して周方向へ傾斜した状態で設けられた各連結枝は、摺動部又は摺動体の拡径方向への熱膨張に追従して連結枝の傾斜角度が小さくなる方向に変形する。この変形により、摺動部又は摺動体の内周部とハブ本体部との間隔が微増調整され、摺動部又は摺動体の熱膨張に起因する拡径方向への引っ張り力がハブ本体部に及ぶことが緩和される。その後、一旦膨張した摺動部又は摺動体が半径方向内向き(縮径方向)に収縮するときには、各連結枝が元の傾斜角度に復帰する方向に変形することで、摺動部の内周部とハブ本体部との間隔が膨張前の状態に戻される。
【0012】
このように、ディスクの摺動部又は摺動体を一群の傾斜した連結枝を介してハブ本体部に連結するという構成を採用することで、摺動部又は摺動体はハブ本体部に過度に拘束されることなく拡径方向又は縮径方向への変形自由度をある程度確保されている。それ故、制動時の摩擦熱で摺動部又は摺動体が熱膨張する場合でも、ハブ本体部が摺動部又は摺動体の内周部(つまり根元部)を過度に拘束することがないため、摺動部又は摺動体の熱倒れが効果的に防止又は抑制される。
【0013】
本発明では、各連結枝のディスク半径方向に対する傾斜角度(θ1)が、45°以上90°以下であることが好ましい(図3参照)。連結枝の傾斜角度(θ1)が45°未満になると、ディスク半径方向に対する連結枝の傾斜角度が小さいために、熱膨張する摺動部又は摺動体に追従して連結枝が変形する余地があまりない。このため、一群の連結枝が摺動部又は摺動体をハブ本体部に拘束する度合いが依然としてかなり高いままとなり、摺動部又は摺動体の熱倒れを防止又は抑制する効果が得られ難くなる。
【0014】
他方、連結枝の傾斜角度(θ1)が90°を超えると、連結枝の実質的な長さを確保することが難しくなり、摺動部又は摺動体の熱倒れを防止又は抑制する効果が得られ難くなる。つまり、連結枝は摺動部又は摺動体の内周部とハブ本体部とを連結するための枝状部であることから、連結枝の内側端とハブ本体部との結合領域及び連結枝の外側端と摺動部又は摺動体の内周部との結合領域のそれぞれに、例えばR形状に縁取られた補強用肉部を設定するのが通例である(図3の一部拡大図参照)。この点、連結枝の傾斜角度(θ1)が90°を超えるほど大きくなると、連結枝の内外両端における補強用肉部の範囲を広くする必要が生じ、その分、連結枝が枝状部として存在する実質的な長さが目減りしてしまう。連結枝の実質的な長さがあまりに短いと、熱膨張する摺動部又は摺動体に追従して連結枝が変形する余地がなくなってしまい、摺動部又は摺動体の熱倒れを防止又は抑制する効果が得られ難くなる。
【0015】
[付記]本発明の更に好ましい態様や追加的構成要件を以下に列挙する。
イ.請求項3において、前記ハブがアルミニウム又はその合金製であること。
ロ.請求項3において、前記摺動体が鉄系の金属製であること。
ハ.請求項1〜3において、前記連結枝が弾性変形可能であること。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ディスクの摺動部又は摺動体を一群の傾斜した連結枝を介してハブ本体部に連結するという構成を採用することで、摺動部又は摺動体の内周部(根元部)がハブ本体部によって過度に拘束されることがなく、摺動部又は摺動体の熱倒れを効果的に防止又は抑制することができる。
【0017】
また、一群の傾斜した連結枝によってディスクの摺動部又は摺動体がハブ本体部に対し確実に姿勢保持されるので、本発明を採用することで摺動部又は摺動体における摺動面の振れ精度を高精度に保つことが困難になるということはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明をベンチレーテッド型ブレーキディスクに具体化した一実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1〜図4に示すように、ブレーキディスクは、ハブ1と、その周囲に設けられた環状の摺動部としての環状の摺動体3とから構成されている。
【0019】
図2及び図3に示すように、ハブ1は、鋳造によりアルミニウム合金を一体成形したものであり、車軸に取り付けられる本体部11と、その本体部11の周囲に設けられた外周フランジ部16とを具備する。
【0020】
ハブの本体部11は、円板状の車軸取付け用フランジ12を主体とし、そのフランジ12の外周縁部に短円筒状の円筒壁13を設けたものである。車軸取付け用フランジ12はハブの中心軸線Cに対し直交する方向(半径方向)に展開する。円筒壁13は、その長さは短いものの、車軸取付け用フランジ12の外周縁から中心軸線Cと平行に後方向に向けて突設されている。車軸取付け用フランジ12には、その中心位置において車軸を通すための中央大穴14と、その中央大穴14を取り囲む位置において複数のボルト挿通穴15(本例では5個)が等角度間隔(本例では72°間隔)にて配列・形成されている。
【0021】
ハブの外周フランジ部16は、ハブ本体部11の円筒壁13の後端縁からハブの半径方向外向きに当該円筒壁13の全周にわたって突設されている。外周フランジ部16の最外周部16a付近には、締結部としての複数の締結孔17(本例では10個)がハブの中心軸線Cを中心として等角度間隔(本例では36°間隔)にて配列・形成されている。各締結孔17は、単なるボルト通し孔であってその内側にネジ溝は形成されていない。外周フランジ部16には更に、前記一群の締結孔17と、ハブ本体部11の円筒壁13の後端縁につながる外周フランジ部16の最内周部16bとの間の環状帯領域において、複数の連結枝18(本例では30本)が設けられている。これらの連結枝18は、前記一群の締結孔17が配列された外周フランジ部の最外周部16aと、外周フランジ部の最内周部16bとを連結するための枝状又はスポーク状の連結要素である。
【0022】
前記一群の連結枝18は、ディスク又はハブの半径方向(例えば中心軸線Cから各締結孔17に向かう方向)に対してディスク又はハブの特定の周方向へ一様に傾斜した状態で設けられている。そして、ディスク又はハブの半径方向に対する各連結枝18の傾斜角度θ1は45°以上90°以下に設定されている。本実施形態では、傾斜角度θ1=60°である(図3参照)。
【0023】
なお、図3に一部拡大して示すように、各連結枝18の内側端の付け根付近にはR形状に縁取られた補強用肉部19が設けられている。同様に、各連結枝18の外側端の付け根付近にはR形状に縁取られた補強用肉部20が設けられている。前述のように連結枝18の傾斜角度θ1は60°程度に過ぎず、連結枝18が極端に寝ているわけではないから、内側端及び外側端における各補強用肉部19,20をさほど広い範囲又は面積に設定する必要が無い。それ故、各連結枝18の実質的な長さEは、連結枝18が後述するように変形可能な枝要素として機能するに十分な長さとなっている。
【0024】
図2及び図4に示すように、環状の摺動体3は、鋳造により片状黒鉛鋳鉄を一体成形したものである。この摺動体3は、第1の環状円板部31と第2の環状円板部32とを、両環状円板部31,32間にあって放射方向に延びる複数の連結リブ33で相互に連結したものであり、隣り合う連結リブ33間に放射方向に延びる通気路34が確保されたベンチレート構造を有するものである。第1及び第2の環状円板部31,32における各外側面が、ブレーキキャリパの制輪子と摩擦接触する摺動面となる。
【0025】
第1の環状円板部31の内周側には、幅h2の内周フランジ部35が、第1の環状円板部31の全内周にわたって突設されている。この内周フランジ部35には、複数の締結ネジ孔36(本例では10個)が摺動体3の中心軸線Cを中心として等角度間隔(本例では36°間隔)にて配列・形成されている。各締結ネジ孔36の内側には、締結ボルト4の雄ネジに対応する雌ネジが形成されている。なお、摺動体3の中心軸線Cから内周フランジ部35の各締結ネジ孔36までの距離は、前記ハブ1の中心軸線Cから外周フランジ部16の各締結孔17までの距離に一致しており、締結ネジ孔36と締結孔17とを一致させつつ、摺動体3の内周フランジ部35とハブ1の外周フランジ部16とを相互に接合可能となっている(図2参照)。
【0026】
図1及び図2に示すように、締結具としての締結ボルト4を用いて、ハブ1の外周フランジ部16に対して環状の摺動体3を固着することにより、ブレーキディスクが組み立てられる。即ち、ハブの外周フランジ部16における10個の締結孔17と、摺動体の内周フランジ部35における10個の締結ネジ孔36とを一致させながらハブ1の周囲に環状摺動体3を位置合わせすると共に、各締結孔17及び締結ネジ孔36に対し、ハブの車軸取付け用フランジ12側から締結ボルト4をワッシャー5とともに螺合する。すると、合計10本の締結ボルト4の締付力により、ハブ1と摺動体3とが一体結合される。なお、締結ボルト4を取り付ける際に、締結ボルト4の螺子目にボルト緩み防止剤を予め塗布しておくことは好ましい。
【0027】
ブレーキディスクの組み立て完了後に、ハブ1の車軸取付け用フランジ12や摺動体3の各摺動面に対して、精度向上のための追加加工(例えば表面切削や研磨加工)を適宜施してもよい。
【0028】
次に、本実施形態のディスクを車輌に取り付けた場合の作用及び効果を説明する。
制動時の摩擦熱で環状の摺動体3の全体が半径方向外向き(拡径方向)に熱膨張した場合、各締結ボルト4を介して、ハブ1の外周フランジ部16が各締結孔17の位置で拡径方向に引っ張られ、その結果、外周フランジ部16に設けられた各連結枝18も拡径方向に引っ張られる(図5参照)。すると、傾斜した各連結枝18は、摺動体3の拡径方向への熱膨張に追従して、傾斜角度θ1が小さくなる方向、つまり各連結枝18がディスクの半径方向線(例えば中心軸線Cと各締結孔17とを結ぶ線)と平行な状態に近づく方向に変形する。この連結枝18の変形は、好ましくは弾性変形である。これにより、各締結ボルト4又は締結孔17とハブ本体部11の円筒壁13との間隔が微増調整されるため、摺動体3の熱膨張に起因する拡径方向への引っ張り力が、ハブ本体部11の円筒壁13(つまり外周フランジ部16の根元)に及ぶことが緩和される。従って、環状の摺動体3を中心軸線Cの方向に熱倒れさせるようなモーメントもほとんど生じない。
【0029】
その後、ブレーキキャリパの制輪子によるディスクの押圧が解除されて、一旦膨張した摺動体3が放熱することで半径方向内向き(縮径方向)に収縮するときには、各連結枝18が元の傾斜角度θ1に復帰する方向に変形する。そして、各締結ボルト4又は締結孔17とハブ本体部11の円筒壁13との間隔が熱膨張前の状態に戻される。
【0030】
このように本実施形態によれば、環状の摺動体3は、一群の傾斜した連結枝18の角度調節的な変形可能性のために、ハブ本体部11に過度に拘束されることなく拡径方向又は縮径方向への変形自由度をある程度確保されている。つまり、制動時の摩擦熱で摺動体3が熱膨張する場合でも、ハブ本体部11が、実質的に摺動体3の内周側根元に相当する部分(本例では外周フランジ部16と円筒壁13との結合部分)を過度に拘束しない。このため、摺動体3の熱倒れを効果的に防止又は抑制することができる。そして、摺動体3の熱倒れをほとんど生じないことで、ディスクの偏摩耗を極力回避でき、制動時における制動トルクの不安定化や不快なブレーキ振動を低減することができる。
【0031】
本実施形態によれば、一群の傾斜した連結枝18によって摺動体3がハブ本体部11に確実に支持され、連結枝群による摺動体3の姿勢保持力も非常に高い。特に、全ての連結枝18をディスク又はハブの特定の周方向に一様に傾斜させた状態で設けているので、隣り合う連結枝18間の間隔を縮めて連結枝18の配設密度を高めること(ひいては連結枝18の本数を増やすこと)が可能であり、連結枝群による摺動体3の姿勢保持力を比較的自由に調節することができる。それ故、本実施形態のブレーキディスクには、摺動体3における各摺動面の振れ精度を長期間にわたり高精度に保つことを困難にするような事情は存在しない。
【0032】
本実施形態によれば、ハブ1の外周フランジ部16には、連結枝18間において溝状の開口が存在しており、これらの開口の分だけハブ1の減肉による軽量化を図ることができる。それに加えて、外周フランジ部16の最外周部16a付近に配列された締結孔17と締結孔17との間には、それぞれ減肉のための凹部又は肉盗部21が形成されているので(図3参照)、その分だけハブ1の減肉による軽量化を図ることができる。また、ハブ1と摺動体3とを別体としているので、摺動体3が摩耗又は破損した場合でも摺動体3のみを交換することができ、保守管理性に優れている。
【0033】
[変更例]上記実施形態では、ハブ1と摺動体3とを別部材として構成し、締結ボルト4を用いて両者を一体結合するタイプのブレーキディスクを示したが、本発明は、ハブと摺動部とが予め一体形成されたタイプのブレーキディスクにも適用可能であることは言うまでもない(請求項1及び2は、ハブと摺動部とが予め一体形成されたブレーキディスクをも技術的範囲に含む意味である)。
【0034】
[変更例]本発明における締結具は、締結ボルト4に限定されるものではなく、リベット等のピン状の機械要素であってもよい。また、締結具の全部又は一部が、ハブ1又は摺動体3のいずれかに予め一体化されていてもよい。
【0035】
[変更例]本発明における各連結枝18が、弾性変形可能な幅又は太さに設定され、あるいは弾性変形可能な素材で構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ブレーキディスクの一例を示す正面図。
【図2】図1のC−A線での半径方向断面図。
【図3】図1のブレーキディスクの一構成部品であるハブの正面図。
【図4】図1のブレーキディスクの一構成部品である摺動体の正面図。
【図5】本発明の作用を説明するための概念図。
【図6】従来のブレーキディスクの半径方向断面図。
【符号の説明】
【0037】
1…ハブ、3…摺動体(摺動部)、4…締結ボルト(締結具)、11…ハブの本体部、16…ハブの外周フランジ部、17…ハブ外周フランジ部の締結孔(締結部)、18…連結枝、C…中心軸線、θ1…傾斜角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブと、その周囲に設けられた環状の摺動部とを備えたブレーキディスクにおいて、
前記摺動部の内周部が前記ハブの本体部に対し複数の連結枝を介して連結されるとともに、各連結枝がディスクの半径方向に対して周方向へ傾斜した状態で設けられていることを特徴とするブレーキディスク。
【請求項2】
前記各連結枝のディスク半径方向に対する傾斜角度(θ1)が、45°以上90°以下であることを特徴とする請求項1に記載のブレーキディスク。
【請求項3】
車軸に取り付けられる本体部及びその本体部の周囲に設けられた外周フランジ部を具備してなるハブと、当該ハブの外周フランジ部に対して複数の締結具により固着される環状の摺動体とから構成されるブレーキディスクにおいて、
前記ハブの外周フランジ部には、前記各締結具を装着するための複数の締結部がハブの中心軸線(C)を中心として等角度間隔で設けられると共に、当該外周フランジ部における前記一群の締結部とハブの本体部との間の領域において、ディスクの半径方向に対して周方向へ一様に傾斜した複数の連結枝が設けられており、
各連結枝のディスク半径方向に対する傾斜角度(θ1)が、45°以上90°以下であることを特徴とするブレーキディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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