説明

ブレーキ装置

【課題】 装置全体の小型化を図ることが可能なフィルタ部材を備えたブレーキ装置を提供すること。
【解決手段】 内部に油路が形成されたハウジングと、前記油路に配置された弁体と、前記弁体が当接するシート部を備えたシート部材と、前記シート部材に固定され本体部とメッシュ部を備えた円筒状のフィルタ部材と、前記フィルタ部材の本体部は両端に形成された基部と、前記基部間を接続し前記メッシュ部の開口縁のうち軸方向に沿った開口縁を形成する柱部と、前記柱部の変形を抑制する変形抑制手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ液を貯留可能なリザーバ機能を備えたブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の技術では、アンチロックブレーキ装置等に使用されるブレーキ装置内のリザーバ用ピストンと、ピストンの上方に設置される調圧弁とを備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3937554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、調圧弁にはブレーキ液内に混入したコンタミ等がポンプ内に侵入することを回避するためにフィルタ部材を設けることが一般的である。そして、フィルタ通過面積を確保するために、フィルタ部材の径を大きく設定する場合、装置全体の小型化に寄与できないという問題があった。すなわち、フィルタ部材はリザーバ上方に配置されており、両リザーバの間にはポンプ等が配置されることから、フィルタ部材の径が大きいと、リザーバの配置間隔を広く取る必要があり、装置全体が大型化してしまう。そこで、フィルタ部材の径を小さくし、軸方向長さを長くすることでフィルタ通過面積を確保することが考えられる。この場合、フィルタにブレーキ液の流入により液圧が作用すると、フィルタを支持する部材が変形し、調圧弁の適切な作動を妨げるおそれがあった。
本発明の目的は、装置全体の小型化を図ることが可能なフィルタ部材を備えたブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、内部に油路が形成されたハウジングと、前記油路に配置された弁体と、前記弁体が当接するシート部を備えたシート部材と、前記シート部材に固定され本体部とメッシュ部を備えた円筒状のフィルタ部材と、前記フィルタ部材の本体部は両端に形成された基部と、前記基部間を接続し前記メッシュ部の開口縁のうち軸方向に沿った開口縁を形成する柱部と、前記柱部の変形を抑制する変形抑制手段と、を備えた。
【発明の効果】
【0006】
よって、フィルタ部材の強度を確保することができ、フィルタ部材を軸方向に長く設定することで装置全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1のブレーキ液圧制御装置の液圧回路図である。
【図2】実施例1の液圧制御ユニットのハウジングを表すスケルトン図である。
【図3】実施例1のリザーバの構成を表す拡大部分断面図である。
【図4】実施例1の調圧弁の構成を表す拡大断面図である。
【図5】実施例1のフィルタ部材の斜視図である。
【図6】実施例1のフィルタ部材の詳細を表す図である。
【図7】実施例1のハウジングのA−A断面図である。
【図8】実施例2のフィルタ部材の斜視図である。
【図9】実施例3のフィルタ部材の斜視図である。
【図10】実施例4のフィルタ部材の斜視図である。
【図11】実施例5のフィルタ部材の斜視図である。
【図12】実施例6のフィルタ部材の斜視図である。
【図13】実施例6の調圧弁の構成を表す拡大断面図である。
【図14】実施例7のフィルタ部材の斜視図である。
【図15】実施例8の調圧弁の構成を表す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施例1〕
[ブレーキ液圧回路の構成]
図1は、実施例1のブレーキ液圧制御装置32の液圧回路図である。液圧回路は、マスタシリンダM/CとホイルシリンダW/Cとの間に設けられた液圧制御ユニット30内に形成されている。液圧制御ユニット30はアルミブロックから削りだされた略直方体のハウジング31を有し、このハウジング31内に複数の油路等が穿設され、後述する各バルブやポンプユニット及びモータを備えている。
このブレーキ液圧制御装置32は、コントローラからのVehicle Dynamics Control(VDC:車両挙動制御)、Anti-lock Brake System(ABS:アンチロックブレーキ制御)の要求液圧に応じて液圧制御を行う。ブレーキ液圧制御装置32においては、P系統のブレーキ液圧回路21PとS系統のブレーキ液圧回路21Sの2系統からなる、X配管構造となっている。P系統には、左前輪のホイルシリンダW/C(FL)、右後輪のホイルシリンダW/C(RR)が接続されており、S系統には、右前輪のホイルシリンダW/C(FR)、左後輪のホイルシリンダW/C(RL)が接続されている。ブレーキ液圧制御装置32と各ホイルシリンダW/Cとは、ハウジング31の上面に穿設されたホイルシリンダポート19RL,19FR,19FL,19RRに接続されている。また、ポンプユニットPはP系統、S系統それぞれに設けた外接ギヤ対からなる回転ギヤ式のギヤポンプPP及びギヤポンプPSをひとつのモータMによって駆動するタンデムギヤポンプである。
【0009】
マスタシリンダM/Cと液圧制御ユニット30とは、ハウジング31のポート接続面に穿設されたマスタシリンダポート20P,20Sを介して液路18P,18Sにおいて接続されている。この液路18とポンプユニットPの吸入側とは、液路10P,10Sによって接続されている。液路18P上であって、マスタシリンダポート20Pと、液路10Pとの接続部との間にはマスタシリンダ圧センサ22が設けられている。
ポンプユニットPの吐出側と各ホイルシリンダW/Cとは、液路11P,11Sによって接続されている。この各液路11上には、各ホイルシリンダW/Cに対応する常開型のソレノイドバルブである増圧バルブ3FL,3RR,3FR,3RLが設けられている。また各液路11上であって、各増圧バルブ3とポンプユニットPとの間にはチェックバルブ6P,6Sが設けられている。各チェックバルブ6は、ポンプユニットPから増圧バルブ3へ向かう方向へのブレーキ液圧の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。また各液路11上であって、各増圧バルブ3とポンプユニットPとの間には吐出圧センサ23P,23Sが設けられている。
【0010】
更に各液路11には、各増圧バルブ3を迂回する液路16FL,16RR,16FR,16RLが設けられており、液路16には、チェックバルブ9FL,9RR,9FR,9RLが設けられている。この各チェックバルブ9は、ホイルシリンダW/CからポンプユニットPへ向かう方向へのブレーキ液圧の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
マスタシリンダM/Cと液路11とは液路12P,12Sによって接続されており、液路11と液路12とはポンプユニットPと増圧バルブ3との間において合流している。この各液路12上には、常開型のソレノイドバルブであるゲートアウトバルブ2P,2Sが設けられている。また各液路12には、各ゲートアウトバルブ2を迂回する液路17P,17Sが設けられており、この液路17には、チェックバルブ8P,8Sが設けられている。この各チェックバルブ8は、マスタシリンダM/C側からホイルシリンダW/Cへ向かう方向へのブレーキ液圧の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。マスタシリンダM/Cとリザーバ15P,15Sとは液路10aP,10aSによって接続されており、リザーバ15とマスタシリンダM/Cとの間にはチェックバルブ機能付きの調圧弁7P,7Sが設けられている。
ポンプユニットPの吸入側にはリザーバ15P,15Sが設けられており、このリザーバ15とポンプユニットPとは液路10bP,10bSによって接続されている。
ホイルシリンダW/Cと液路10とは液路13P,13Sによって接続されており、液路13と液路10とは調圧弁7とリザーバ15との間において合流している。この各液路13にそれぞれ、常閉型のソレノイドバルブである減圧バルブ4FL,4RR,4FR,4RLが設けられている。
【0011】
ここで、リザーバ15に隣接して設けられた調圧弁7の作用について説明する。通常制動時、すなわち、各バルブやポンプ等が非作動時には、マスタシリンダM/Cにおいてブレーキ液圧が発生すると、調圧弁7を閉塞し、マスタシリンダM/Cとリザーバ15との間を遮断する。そして、液路18を介して各ホイルシリンダW/Cにブレーキ液を供給する。次に、ABS作動時は、初期作動として増圧バルブ3を閉じ、減圧バルブ4が開くと、ホイルシリンダW/C内のブレーキ液が液路13を介してリザーバ15に流入する。このとき、ポンプユニットPの作動によりリザーバ15に流入したブレーキ液は液路11を介して汲み上げられ、マスタシリンダM/Cに還流される。VDC作動時には、ゲートアウトバルブ2を閉じ、所望の輪に対応する増圧バルブ3を開き、ポンプユニットPを作動させる。このとき、調圧弁7が閉じていたとしても、ポンプユニットPの汲み上げによってリザーバ15内が減圧され、調圧弁7を押し開く。これにより、マスタシリンダM/Cからブレーキ液を汲み上げ、必要なホイルシリンダW/Cに増圧されたブレーキ液を供給する。
【0012】
[ハウジングの構成]
図2は実施例1の液圧制御ユニットのハウジングを表すスケルトン図、図3は実施例1のリザーバの構成を表す拡大部分断面図である。図2では図を分かりやすくするために、各バルブやコントロールユニット、モータMを取り外した状態の図を示す。以下の説明では、図2においてマスタシリンダポート20が開口している面を前面311、前面311の背面を後面312、ホイルシリンダポート19が開口している面を上面313、上面313の背面を下面314、前面311に対して左側の側面を左側面315、前面311に対して右側の側面を右側面316と記載する。図2(a)はハウジング31を背面312から見た図、図2(b)はハウジング31を左側面315から見た図である。
ハウジング31は略直方体であり、前面311側にモータMが取り付けられ、後面312側にゲートアウトバルブ2、増圧バルブ3、減圧バルブ4の各ソレノイドバルブ群、及びこれらソレノイドバルブ群を駆動する電気ユニットが取り付けられる。電気ユニットとは、車両に取り付けられた車輪速センサ等の入力信号に応じて所定の演算を行う基板を備えたものであり、ソレノイドバルブに取り付けられたソレノイドや、モータMに所定の電気信号を出力する。この電気ユニットはユニットケース内に収容されている。ハウジング31には、前面311と後面312とを貫通する電源孔24が形成されており、この電源孔24にモータMの電極を差し込むことで、電気ユニットとモータMとを接続している。
【0013】
ハウジング31には、各ソレノイドバルブ群が圧入もしくはカシメにより取り付けられるバルブ取り付け用の孔と、各ポートや各ソレノイドバルブ群との間を接続する複数の液路と、各シリンダ(ホイルシリンダW/C、マスタシリンダM/C)と接続するポート(ホイルシリンダポート19、マスタシリンダポート20)とリザーバ15を配置する空孔等が形成されている。これら各孔、液路孔等はハウジング31の外側から各面に対してドリル等により穿設される。
前面311の上面313側には、マスタシリンダポート20が形成されている。ポンプユニットPは、ハウジング31の前面311から後面312にかけて貫通する、略円柱状の収容部41に収容されている。この収容部41は後面312側の開口部をエンドプレートによって封鎖されている。またハウジング31の左側面315から右側面316にかけて収容部41と略直交するように吐出部収容孔47P,47Sが形成されている。この吐出部収容孔47P,47SにポンプユニットPの吐出液路に接続するチェックバルブ6P,6Sが挿入されている。
【0014】
図3は実施例1のリザーバの構成を表す拡大部分断面図である。尚、この拡大部分断面図はP系統側のリザーバ15を示すが、S系統においてもポンプユニットPの回転中心軸を含みハウジング側面に平行な上下方向の面を中心に対象に配置されているものであり、符号については特にS、Pを付さずに説明する。ハウジング31の下方には、下面314から上方に向かって円筒状の有底孔31aが穿設されている。有底孔31aのハウジング下方開口にはリテーナ保持面31a2が形成され、このリテーナ保持面31a2はリテーナ部材151をカシメ固定31a3によって保持している。リテーナ部材151は、外周縁がカシメ固定31a3によって狭持されるフランジ部151aと、フランジ部151aから下方に屈曲形成された円筒部151bと、コイルスプリング152の一端を保持する保持面151cが形成された閉塞部を有し、この閉塞部の略中央には空気孔151dが形成されている。これにより、ピストン本体153の下方は常に大気圧が作用するように構成されている。
有底孔31aは、ピストン本体153のピストン面153hと当接するピストン当接面31a1と、ピストン当接面31a1よりも小径であって有底孔31aの中央に形成された小径筒部31bとを有する。小径筒部31bには、減圧バルブ4と連通する液路13及びポンプユニットPの吸入側と連通する液路10bが接続されている。小径筒部31bよりも更に上方には、有底孔31aの中心軸すなわちピストン本体153の中心軸OPから図中左側にオフセットした位置に中心軸ORを有する円筒状であって細長形状の調圧弁収装孔31cが形成されている。調圧弁収装孔31cの上方には、調圧弁収装孔31cより小径であって調圧弁収装孔31cの底部である縮径部31c1を介して直列に形成された小径油路である液路10aが接続されている。この液路10aはマスタシリンダM/Cと連通する。
【0015】
調圧弁収装孔31c内には、液路10aから流入したブレーキ液内の不純物を取り除くフィルタ部材75と、フィルタ部材75と嵌め合いつつ調圧弁7を構成するシート部材71とが収装されている。図4は実施例1の調圧弁の構成を表す拡大断面図、図5は実施例1のフィルタ部材の斜視図、図6は実施例1のフィルタ部材の詳細を表す図である。図4に示す調圧弁7はロッド74が最上端に位置した状態を示す。フィルタ部材75はメッシュ状であって円筒状のフィルタ75aと、ボール部材72のストッパとして機能するストッパ部75bと、フィルタ部材75の骨格部材であってフィルタ75aが内側もしくは一体成形により取り付けられる柱部75cと、柱部75cの下方において円環状に形成され、柱部75cと接続された筒状部75d(基部に相当)と、柱部75cの上方において円盤状に形成され、柱部75cと接続された底面75b2(基部に相当)と、フィルタ部材75の液路10a側に面する冠面に形成され液路10aとフィルタ75aとの間の流路を確保するための突起75eとを有する。また、柱部75cは円周方向に略均等に偶数箇所形成されている。突起75eは必要に応じて調圧弁収装孔31cの底部である縮径部31c1に当接し流路を確保する。尚、フィルタ部材75の外径は、調圧弁収装孔31cよりも小径とされており、フィルタ部材75外周と調圧弁収装孔31cとの間の流路を確保している。
【0016】
ストッパ部75bは、フィルタ部材75の底面75b2まで延在する先端テーパ形状であって円柱状の中央ストッパ部75baを有する。ストッパ部75bは、中央ストッパ部75baからテーパ形状に形成されたテーパ部75bbと、円筒状に形成された円柱部75bcとを有する。この円柱部75bcの径は後述する調圧弁用リターンスプリング73の内周径より若干小さく形成されており、この調圧弁用リターンスプリング73を安定的に保持するリテーニング部材としても機能する。円柱部75bcの底面75b2側には、十字方向に底上げされた調圧弁用リターンスプリング73を保持するスプリング保持面75b1を備えた変形抑制部750を有する。この変形抑制部750は、柱部75cと径方向において重なる位置に設けられており、柱部75cがフィルタ部材75内径側に撓むことを抑制する変形抑制手段として機能する。言い換えると、底面75b2(基部の一方)には、柱部75cのうち直径方向に対向する位置にある柱部75cを接続する変形抑制部750(補強部に相当)を有する。尚、フィルタ75aは、この変形抑制部750の部分まで覆っており、言い換えると、柱部75cの軸方向長さは、フィルタ75aの軸方向長さより短く形成されている。これにより、フィルタ75aに作用する液圧による押圧力を変形抑制部750により受けることができる。また、筒状部75dの内周側下端であって周方向4箇所には、内周側に隆起した係合凸部75d1が形成されている。このフィルタ部材75は樹脂により形成されている。
【0017】
シート部材71の上端とフィルタ部材75とで囲まれた領域内には、ボール部材72(弁体)と、このボール部材72をシート部材71側に付勢する調圧弁用リターンスプリング73が取り付けられている。尚、調圧弁用リターンスプリング73の弾性力は、コイルスプリング152の弾性力よりも弱く設定され、ブレーキ液圧が作用していない状態では、コイルスプリング152の弾性力によりボール部材72がロッド74を介して押し上げられる構成とされている。
シート部材71は、複数の段部を有する円筒状部材であり、フィルタ部材75と嵌め合いを形成する上部円筒部71gと、上部円筒部71gよりも拡径され、調圧弁収装孔31cと略同一径を有する中部円筒部71hと、中部円筒部71hよりも僅かに拡径された下部円筒部71jとを有する。上部円筒部71gと中部円筒部71hとの間には係合溝71eが形成され、また、中部円筒部71hと下部円筒部71jとの間には調圧弁7を調圧弁収装孔31c内に圧入時、ハウジング材料が嵌入する嵌入溝71fが形成されている。フィルタ部材75とシート部材71とは、フィルタ部材75内部に調圧弁用リターンスプリング73及びボール部材72を入れた状態で、ロッド74が収容されたシート部材71の上部円筒部71gをフィルタ部材75の筒状部75d内に挿入する。すると、フィルタ部材75の係合凸部75d1とシート部材71の係合溝71eとが嵌め合うことで一体構造となり、調圧弁7を構成する。
【0018】
シート部材71は、軸方向中央においてボール部材72と当接するロッド74を収容しつつロッド74外周との間でブレーキ液通路を形成する貫通孔71bと、貫通孔71bよりも小径であってロッド74を径方向に保持する保持孔71dと、シート部材71の下方から保持孔71dを取り囲む位置に複数穿設され、貫通孔71bの下端部分と部分的に連通する流通孔71cとを有する。言い換えると、貫通孔71bと流通孔71cとは半径方向にオーバーラップされて形成され、このオーバーラップ領域において連通することで、通路構成の容易化を図っている。貫通孔71bのボール部材72側には、すり鉢状のシート部71aが形成されている。ボール部材72がシート部71aに着座しているときには、液路10aと小径筒部31bとの間でブレーキ液が流通することはない。一方、ロッド74によってボール部材72が調圧弁用リターンスプリング73の力に抗して押し上げられると、液路10aから供給されるブレーキ液は、フィルタ部材75のフィルタ75aを通って貫通孔71bとロッド74外周との間の隙間を通り、流通孔71cから小径筒部31bへと流出する。このように、ロッド74の外周全周を流路として利用することで、流体通路の有効断面積を確保し、管路抵抗を小さくしている。また、ハウジング31とは別部材としてシート部材71を設け、このシート部材71にロッド外周通路部に相当する貫通孔71bや流通孔71cを形成することで、成形性を確保している。
【0019】
また、調圧弁用リターンスプリング73の自由長は、ボール部材72を常にシート部材71側に付勢可能な長さに設定されている。上述したように、フィルタ部材75とシート部材71とは係合凸部75d1と係合溝71eとが嵌め合うことで一体構造とされており、また、組み付け誤差を吸収するために、フィルタ部材75の上端(突起75eの上端)と調圧弁収装孔31cの底部との間には僅かに隙間が設定されている。このとき、仮に、フィルタ部材75とシート部材71との嵌め合いが外れてフィルタ部材75が脱落し、フィルタ部材75が調圧弁収装孔31cの底部と当接した場合であっても、突起75eにより液路10aとフィルタ75aとの間の流路を確保し、更に、ボール部材72が調圧弁用リターンスプリング73によってシート部71aに押し付けることが可能とされている。
【0020】
ロッド74は棒状の金属製部材であり、保持孔71dよりも大径であってボール部材72と当接するロッド先端部74aと、保持孔71dと略同一径であってロッド先端部74aよりも長く形成されたロッド中間部74bと、ロッド中間部74aから徐々に縮径されたテーパ形状であって後述するプレート部材155の上面155bと当接するロッド下端部74cとを有する。尚、ロッド74はピストン本体153と別部材として構成されており、ピストン本体153がロッド中間部74bの長さ以上にストロークした場合には、ロッド下端部74cがプレート部材上面155bと離間する。言い換えると、ロッド先端部74aは保持孔71d上端と当接することでストッパとして機能している。また、ロッド中間部74bは、ボール部材72がシート部71aに着座しているときのボール部材72のフィルタ部材側端部とストッパ部75bまでの間の距離であるボール部材75のストローク量最大値よりも長く設定され、ピストン本体153のストローク量最大値よりも短く設定されている。このように、ロッド74が摺動することで、ロッド74と保持孔71dとの間の摺動箇所がストローク毎にずれるため、ロッド74やシート部材71の耐久性を向上している。尚、ロッド74の中心軸ORはピストン本体153の中心軸OP(回転中心)からオフセットして配置されることは、前述の通りである。
【0021】
ピストン本体153は、樹脂成形された部材であって、底部153a1を有する有底筒状に形成されている。ピストン本体153の円筒外周には、有底孔31aの内周径よりも若干小径に形成された上部外周部153fと、上部外周部153fの下方に形成され、環状シール部材154を収装する環状溝153eと、有底孔31aの内周径と略同一径で形成され環状シール部材154を保持するシール部材保持部153dと、シール部材保持部153dの下方に形成され有底孔31aの内周径よりも小径であって上部外周部153fと略同一径の縮径部153cと、縮径部153の下方に形成され有底孔31aの内周径と略同一径を有するウェルドライン形成部153bとを有する。環状シール部材154は、その上方を液圧室とし、下方を空気室として区画する。
【0022】
ピストン本体153の円筒部内周153aはコイルスプリング152よりも僅かに大径となるように形成され、底部153a1においてコイルスプリング152の他端を保持している。ピストン本体153の上面に形成されたピストン面153hの中央領域(すなわち、冠面153j)には、ピストン本体153の樹脂よりも硬質な硬質体として金属製のプレート部材155がインサート成形により組みつけられている。プレート部材155は円盤形状のステンレス製部材であり、その外径DPは、コイルスプリング152の外径DSよりも大径となる大きさとされている。
すなわち、樹脂製のピストン本体153の底部153a1によりコイルスプリング152を保持すると、その箇所には常時、コイルスプリング152による弾性力が作用する。仮に、金属製のプレート部材155の外径をコイルスプリング152の外径よりも小径とすると、軸方向から見たとき、コイルスプリング152の当接位置とプレート部材155とが径方向において離間するため、冠面153jとピストン底部153aとの間にせん断力が作用してしまい、ピストン本体153の耐久性を低下させるおそれがある。一方、実施例1のように、コイルスプリング152の外径DSよりもプレート部材155の外径DPが大きければ、軸方向から見たとき、コイルスプリング152の当接位置とプレート部材155とが径方向において離間することなく軸方向から見て重なることとなる。よって、冠面153jには圧縮力しか作用せず、耐久性の低下が抑制されるのである。
【0023】
図7は実施例1のハウジングのA−A断面図である。P系統のリザーバ15Pが収装される有底孔31aPは図7中の左側に配置され、S系統のリザーバ15Sが収装される有底孔31aSは図7中の右側に配置されている。そして、有底孔31aPと連通する調圧弁収装孔31cPの中心軸ORは、有底孔31aPの中心軸OPよりも図7中左側にオフセットして配置されている。同様に、有底孔31aSと連通する調圧弁収装孔31cSの中心軸ORは、有底孔31aSの中心軸OPよりも図7中右側にオフセットして配置されている。言い換えると、調圧弁収装孔31aと連通する両液路10aは、ピストン本体153の中心軸OPから互いに離れた方向に形成している。このように、調圧弁収装孔31cが互いに離れるようにオフセットして配置されることで、調圧弁収装孔31cに挟まれた領域を広く取ることができる。リザーバ15のすぐ上には、回転ギヤ式ポンプを収装するための収容部41が形成されており、このスペースは要求されるポンプ吐出能力等によって概ね決定されてしまう。そこで、調圧弁収装孔31cの形状を軸方向に長い細長形状とし、更に、調圧弁収装孔31cが互いに離れた方向となるようにオフセットすることで、回転ギヤ式ポンプのレイアウト性の向上を図りつつ、ハウジング全体の大型化を抑制している。
【0024】
このように調圧弁収装孔31cを細長形状とした場合、フィルタにブレーキ液の流入により液圧が作用すると、フィルタを支持する部材が変形し、調圧弁の適切な作動を妨げるおそれがあった。そこで、実施例1では、円柱部75bcの底面75b2側に、十字方向に底上げされた変形抑制部750を形成することとした。これにより、柱部75cの実質的な長さを短くすることができ、フィルタ75aに液圧が作用することで柱部75cに押圧力が作用したとしても、柱部75cの変形を抑制することができ、フィルタ部材75内に収装されたボール部材72の作動を妨げることがない。言い換えると、変形抑制部750を形成することで、フィルタ部材75を細長形状にすることができ、ハウジング全体の小型化を図ることができる。また、変形抑制部750によって、柱部75cの軸方向長さをフィルタ75aの軸方向長さより短く形成する。これにより、フィルタ75aに作用するブレーキ液による押圧力を変形抑制部750で受けることができると共に、柱部75cの実質的な軸方向長さを短くすることで、柱部75cの変形量を抑制することができる。
【0025】
以上説明したように、実施例1にあっては下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)内部に油路が形成されたハウジング31と、油路に配置されたボール部材72(弁体)と、ボール部材72が当接するシート部71aを備えたシート部材71と、シート部材71に固定され柱部75c,筒状部75d及び底面75b2(本体部)とフィルタ75a(メッシュ部)を備えた円筒状のフィルタ部材75と、フィルタ部材75の本体部は両端に形成された筒状部75d及び底面75b2(基部)と、筒状部75d及び底面75b2間を接続しフィルタ75aの開口縁のうち軸方向に沿った開口縁を形成する柱部75cと、柱部75cの変形を抑制する変形抑制部750(変形抑制手段)と、を備えた。
よって、フィルタ部材75の強度を確保することができ、フィルタ部材75を軸方向に長く設定することで装置全体の小型化を図ることができる。
【0026】
(2)変形抑制部750は、柱部75cの軸方向長さをフィルタ75aの軸方向長さより短く形成してなる。これにより、フィルタ75aに作用するブレーキ液による押圧力を変形抑制部750で受けることができると共に、柱部75cの実質的な軸方向長さを短くすることで、柱部75cの変形量を抑制することができる。
【0027】
(3)柱部75cは円周方向に略均等に偶数箇所形成されているとともに、底面75b2(基部の一方)には柱部75cのうち直径方向に対向する位置にある柱部75cを接続する変形抑制部750(補強部に相当)を備えた。すなわち、実施例1にあっては柱部75cが円周方向に略均等に4箇所形成されており、この柱部75cが互いに対向するように変形抑制部750を十字方向に形成している。よって、変形抑制部750にはせん断力が作用せず、圧縮変形によって対応するため、強度及び耐久性の向上を図ることができる。
【0028】
[実施例2]
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図8は実施例2のフィルタ部材の斜視図である。実施例1では円柱部75bcの径は調圧弁用リターンスプリング73の内周径より若干小さく形成し、変形抑制部750が交差する領域よりも大きく形成されていた。これに対し、実施例2では、円柱部75bc1の径を、変形抑制部750が交差する領域内に形成している点が異なる。このように、円柱部75bc1を比較的小径とし、柱部75cとの間隔を確保することで型を用いた樹脂成形をする際の成形性を向上することができる。
【0029】
[実施例3]
次に、実施例3について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図9は実施例3のフィルタ部材の斜視図である。実施例1では、ストッパ部75bを形成していた。これに対し、実施例3ではストッパ部75bを形成していない点で異なる。これにより、フィルタ部材75の構成を簡略化することができ、成形性を向上することができる。
【0030】
[実施例4]
次に、実施例4について説明する。基本的な構成は実施例2と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図10は実施例4のフィルタ部材の斜視図である。実施例2では、変形抑制部750として十字形状に形成された部材を設けた。これに対し、実施例4では、円柱部75bc1よりも大径であって、柱部75cの内径側と同一径の円柱型変形抑制部7501を有する。実施例1,2に比べて変形抑制部における剛性が高いため、より耐久性の向上を図ることができる。
【0031】
[実施例5]
次に、実施例5について説明する。基本的な構成は実施例4と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図11は実施例5のフィルタ部材の斜視図である。実施例4では、円柱型変形抑制部7501の上部にストッパ部75bを有していた。これに対し、実施例5ではストッパ部を備えていない点で異なる。これにより、フィルタ部材75の構成を簡略化することができ、成形性を向上することができる。
【0032】
[実施例6]
次に、実施例6について説明する。基本的な構成は実施例3と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図12は実施例6のフィルタ部材の斜視図、図13は実施例6の調圧弁の構成を表す拡大断面図である。実施例3では、変形抑制手段として変形抑制部750のみを有していた。これに対し、実施例6では、柱部75cをそれぞれ連結する金属製のリング部材800を有する。このリング部材800は、柱部75cのフィルタ75aが取り付けられている径方向位置よりも外径側に配置されている。言い換えると、フィルタ75aとリング部材800との間には半径方向の空隙が形成されている。これにより、フィルタ75aのブレーキ液流通面を阻害することなく、柱部75cの強度を確保することができる。尚、リング部材800の軸方向位置は、柱部75cの略中央でもよいし、変形抑制部750のスプリング保持面75b1から柱部75cと筒状部75dとの接合部までの略中央でもよい。
【0033】
(4)変形抑制手段は、隣り合う柱部75c同士を接続するリング部材800であって、リング部材800とフィルタ75aとの間には半径方向の空隙を備えた。よって、フィルタ75aや柱部75cに径方向外側からブレーキ液により押圧されたとしても、作用する力はリング部材800によって変形が抑制されるため、十分な強度を確保することができる。また、フィルタ75aとリング部材800との間に空隙を備えているため、ブレーキ液の流通を阻害することなく、安定したブレーキ液の流れを確保することができる。
【0034】
[実施例7]
次に、実施例7について説明する。基本的な構成は実施例6と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図14は実施例7のフィルタ部材の斜視図である。実施例6では、リング部材800と共に変形抑制部750が形成されていた。これに対し、実施例7では変形抑制部750を備えていない点で異なる。すなわち、柱部75cの変形をリング部材800のみで抑制できれば、特に変形抑制部750を備えていなくても問題は無い。これにより、ブレーキ液の流路抵抗を小さくすることができる。
【0035】
[実施例8]
次に、実施例8について説明する。基本的な構成は実施例7と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図15は実施例8の調圧弁の構成を表す拡大断面図である。実施例7では、変形抑制手段としてリング部材800を設けた。これに対し、実施例8では柱部75c内に変形抑制手段として金属製の補強部材900を備えた点が異なる。フィルタ部材75を樹脂成形する際に、フィルタ75aと補強部材900を一体成形することによって柱部75cの強度を確保することができる。尚、実施例8の場合、フィルタ75aのブレーキ液流通面には何ら障害物となるものが存在せず、また、フィルタ部材75内部においても変形抑制部等の突起物がないことから、更にブレーキ液の流路抵抗を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0036】
7 調圧弁
10 液路
10a 液路
10b 液路
11 液路
13 液路
15 リザーバ
31 ハウジング
31a 有底孔
31c 調圧弁収装孔
32 ブレーキ液圧制御装置
71 シート部材
71a シート部
71b 貫通孔
71c 流通孔
72 ボール部材
73 調圧弁用リターンスプリング
74 ロッド
74a ロッド先端部
74b ロッド中間部
75 フィルタ部材
75a フィルタ(メッシュ部)
750 変形抑制部(変形抑制手段)
800 リング部材(変形抑制手段)
900 補強部材(変形抑制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に油路が形成されたハウジングと、
前記油路に配置された弁体と、
前記弁体が当接するシート部を備えたシート部材と、
前記シート部材に固定され本体部とメッシュ部を備えた円筒状のフィルタ部材と、
前記フィルタ部材の本体部は両端に形成された基部と、前記基部間を接続し前記メッシュ部の開口縁のうち軸方向に沿った開口縁を形成する柱部と、
前記柱部の変形を抑制する変形抑制手段と、
を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ装置において、
前記変形抑制手段は、前記柱部の軸方向長さを前記メッシュ部の軸方向長さより短く形成してなることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブレーキ装置において、
前記柱部は円周方向に略均等に偶数箇所形成されているとともに、前記基部の一方には前記柱部のうち直径方向に対向する位置にある柱部を接続する補強部を備えたことを特徴とするブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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