説明

ブロックドイソシアネート及びその塗料組成物における使用

本発明は、イソシアヌレート部分を含有する熱解離性ブロックドポリイソシアネート組成物であって、イソシアヌレートはビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサンの反応生成物であり、5ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサンがシス−1,3−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサン、トランス−1,3−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサン、シス−1,4ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサン及びトランス−1,4−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサンの2種以上を含有する混合物であり、但し、前記組成物は1,4−異性体を少なくとも5重量%含有する、前記熱解離性ブロックドポリイソシアネート組成物に関する。このようなブロックドイソシアヌレート型ポリイソシアネートは、ポリヒドロキシル化合物と混合された場合には、粉体塗料及び溶剤型塗料に10特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンから誘導されるイソシアヌレート基を含有するブロックドポリイソシアネート、このようなブロックドポリイソシアネートの製造方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マスクド又はブロックドイソシアネートは、水性塗料組成物及び溶剤型塗料組成物において架橋剤として広く使用されており、特に二成分ポリウレタン塗料に使用される。イソシアヌレート環を含有するブロックドポリイソシアネートは、現在、高性能被膜及び塗膜を製造するための粉体塗装用途及び溶液型用途で使用されている。脂環式イソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を基材とするイソシアヌレートの使用は、そのような製品のTgが低いために、制限される。イソホロンジイソシアネート(IPDI)を基材とする製品も、IPDI基材の製品が良好な硬度を有するが一般に低い耐衝撃性(可撓性)を有することから、同様に制限される。
【0003】
従って、粉体塗装用途に適した良好なTgを有し、溶剤型用途に使用でき且つ硬度と可撓性の良好なバランスを有する塗膜を与える新しいブロックドポリイソシアネートに対する要求が依然としてある。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、イソシアヌレート部分を含有する熱解離性ブロックドポリイソシアネート組成物であって、前記イソシアヌレートはビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサンの反応生成物であり、前記ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサンはシス−1,3−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサン、トランス−1,3−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサン、シス−1,4−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサン及びトランス−1,4−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサンの2種以上を含有する混合物であり、但し、前記組成物は前記1,4−異性体を少なくとも5重量%含有する、熱解離性ブロックドポリイソシアネート組成物を提供する。
【0005】
別の実施形態において、本発明は、(a)前記のブロックドイソシアヌレート組成物と、(b)ポリヒドロキシル化合物とを含有してなる塗料組成物に関する。このような組成物は、慣用の粉体塗料又は溶剤型塗料用途の配合物に使用することができる。
【0006】
本発明はまた、ポリイソシアネートと熱解離性ブロック剤とを、イソシアネート基の40%未満をブロックするためのイソシアネートと前記ブロック剤のイソシアネート反応性基との比率で反応させ、次いで、前記ポリイソシアネートを三量化触媒の存在下で環化させ、所望の環化の度合に達した際に前記三量化触媒を不活性化させることを含むブロックドイソシアヌレート組成物の製造方法であって、前記イソシアヌレートはシス−1,3−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサン、トランス−1,3−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサン、シス−1,4−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサン及びトランス−1,4−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサンの2種以上から誘導され、但し、前記組成物は前記1,4−異性体を少なくとも5重量%含有する、ブロックドポリイソシアヌレート組成物の製造方法を提供する。
【0007】
本発明のイソシアヌレートを含有するブロックドイソシアネート組成物は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンから調製される。好ましくは、前記イソシアネートは、前記異性体混合物が1,4−異性体を少なくとも5重量%含有することを条件として、シス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トランス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及びトランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの2種以上を含む。好ましい実施形態において、前記組成物は1,3−異性体と1,4−異性体との混合物を含有する。好ましい脂環式ジイソシアネートは、次の構造式I〜IVで表される:
【化1】

【0008】
これらの脂環式ジイソシアネートは、例えば、ブタジエンとアクリロニトリルとのディールス−アルダー反応、その後のヒドロホルミル化、次いで還元アミノ化によりアミン、すなわちシス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トランス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及びトランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを形成し、次いでホスゲンとの反応により脂環式ジイソシアネート混合物を形成することにより製造される混合物の形態で使用し得る。ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの調製は、米国特許第6,252,121号明細書に記載されている。
【0009】
一つの実施形態において、前記イソシアヌレート型ブロックドイソシアネート組成物は、前述のブロックド脂環式ジイソシアネートモノマーと混合される。好ましくは、前記ブロックドポリイソシアネート混合物は、少なくとも20重量%のイソシアヌレート型ブロックドイソシアネート組成物、さらに好ましくは少なくとも30重量%のイソシアヌレート型ブロックドイソシアネート組成物を含有する。
【0010】
一つの実施形態において、イソシアヌレート型イソシアネート組成物は、前記1,4−異性体を5〜90重量%含有する混合物から誘導される。好ましくは、異性体混合物は、前記1,4−異性体を10〜80重量%含有する。さらに好ましくは少なくとも20重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%、よりさらに好ましくは少なくとも40重量%。
【0011】
場合によっては、その他の多官能価脂肪族又は脂環式イソシアネートが、三量体を製造するために反応混合物に使用することができる。このようなイソシアネートの例は、2,4−及び2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、メタ−及びパラ−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナト)フマレート、4,4’−ジシクロヘキサンメチルジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフチレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートである。少量のその他の多官能価イソシアネートは、配合物に使用される全多官能価イソシアネートの0.1重量%〜50重量%又はそれ以上、好ましくは0重量%〜40重量%、さらに好ましくは0重量%〜30重量%、よりさらに好ましくは0重量%〜20重量%及び最も好ましくは0重量%〜10重量%の範囲内にあることができる。これらのイソシアネートのブロックドモノマーも前記組成物に加えてもよい。
【0012】
所定の異性体比により、本発明のイソシアヌレート型ポリイソシアネートは、有利な特性、例えば高反応性を有する。また、このようなイソシアヌレート型ポリイソシアネートから調製された塗膜は、慣用の脂肪族イソシアネートと比べて良好な硬度と可撓性のバランスを有する塗膜を与える改良されたビッカース硬度対ガードナー衝撃比を示す。
【0013】
本発明で使用するブロック剤は、一般に、ジイソシアネートと反応する活性水素(酸素、硫黄又は窒素に結合された水素)を含有し、その生成物は可逆性であり、すなわち熱によりブロック解除する。代表的なブロック剤は、オキシム類、ラクタム類、フェノール類、活性メチレン類、ピラゾール類、メルカプタン類、イミダゾール類、アミン類、イミン類、トリアゾール類、ヒドロキシルアミン類及び脂肪族、脂環式又は芳香族アルキルモノアルコール類から選択される誘導体である。
【0014】
適当なオキシム類としては、例えば、メチルエチルケトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、アセトンオキシム、アセトアルドキシム、ホルムアルドキシム及びシクロヘキサノンオキシムが挙げられる。
【0015】
ラクタム類の代表的な例としては、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム及びピロリドンが挙げられる。ブロック剤として使用し得るその他のラクタム類は、米国特許第4,150,211号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載のラクタム類である。
【0016】
フェノール誘導体の例としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、スチレン化フェノール、及びヒドロキシ安息香酸エステルが挙げられる。
【0017】
使用し得る活性メチレン誘導体を含有する代表的なブロック剤としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、及びアセチルアセトンが挙げられる。
【0018】
アミンブロック剤の例は、ジフェニルアミン、アニリン及びカルバゾールが挙げられる。イミンブロック剤の例としては、エチレンイミン及びポリエチレンイミンが挙げられる。
【0019】
本発明で使用し得るピラゾールブロック剤は、米国特許第5,246,557号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、アルキル置換ピラゾールブロック剤、例えば3,5−ジメチルピラゾールが挙げられる。
【0020】
代表的なメルカプタン類としては、ブチルメルカプタン及びドデシルメルカプタンが挙げられる。
【0021】
イミダゾールブロック剤の例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール及び2,5−ジメチルイミダゾールが挙げられる。
【0022】
トリアゾール類の例としては、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1,2,3−トリルトリアゾール、4,5−ジフェニル−1,2,3−トリゾール及びアルキル置換トリアゾール、例えば3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾールなどの化合物が挙げられる。エタノールアミン及びプロパノールアミンは、好適なブロック剤として使用し得るヒドロキシルアミンの例である。ブロック剤として使用される代表的な脂肪族モノアルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、クロロエチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、3,3,5−トリメチルヘキサノール、デシルアルコール及びラウリルアルコールが挙げられる。好適な脂環式アルコールとしては、例えば、シクロペンタノール及びシクロヘキサノールが挙げられる。好適な芳香族アルキルアルコールの例としては、フェニルカルビノール及びメチルフェニルカルビノールが挙げられる。
【0023】
本発明で使用される好ましいブロック剤は、オキシム類、フェノール類、カプロラクタム、イミダゾール類及び活性メチレン化合物である。
【0024】
イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートの調製に関して、前記有機ジイソシアネートが、前記三量化触媒の存在下で、所望ならば溶媒及び/又は助剤、例えば助触媒の存在下で、好適には高温で、所望のイソシアネート(NCO)含有量が達成されるまで環化される。次いで、触媒を不活性化させることによって反応を終わらせる。所望ならば、過剰のモノマージイソシアネートは、好ましくは薄膜エバポレーターを用いて蒸留することによって分離される。使用する触媒の種類及び量並びに使用する反応条件に応じて、種々の含有量のイソシアヌレート基又はオリゴマーイソシアネートを有することができるイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート混合物が得られる。本明細書で使用されるように、三量体という用語は、一般に1個以上のイソシアヌレート環構造を含有する分子を指す。本発明のために、1個のイソシアヌレート環構造を含有するイソシアネートを、本明細書ではIR1という。2個のイソシアヌレート環構造を含有する分子を、本明細書ではIR2という。一般的な分類として、特に明記しない限りは、本発明のポリイソシアネートを基材とする2個以上のイソシアヌレート環を含有する化合物は、オリゴマー三量体という。
【0025】
好適な三量化触媒の例は、第三級アミン類、ホスフィン類、アルコキシド類、金属酸化物、水酸化物、カルボン酸塩及び有機金属化合物である。極めて首尾よいことがわかっている三量化触媒の例は、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、トリス−(N,N−ジアルキルアミノアルキル)−s−ヘキサヒドロトリアジン類及びテトラアルキルアンモニウム基又はヒドロキシアルキルアンモニウム基を含有する弱酸の有機塩、例えばトリス−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−s−ヘキサヒドロトリアジン、トリメチル−N−w−ヒドロキシプロピルアンモニウム2−エチルヘキサノエート及びN,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウムヘキサノエートである。調製及び精製が簡単なために、好ましい三量化触媒は、トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウム塩、例えばN,N,N−トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウムp−tert−ブチルベンゾエート、特にN,N,N−トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム2−エチルヘキサノエートである。三量化触媒(これは、副生成物としてウレトジオン基及びオリゴマーイソシアヌレート基を形成させることもできる)は、通常は、ジイソシアネートの重量を基準として0.001〜0.5重量%、好ましくは0.005〜0.1重量%の量で使用される。前記三量体は、不均一触媒の使用によっても製造し得る。
【0026】
別法として、前記イソシアヌレート三量体は、不均一触媒を用いて三量化によって調製してもよい。例えば、国際公開第93/18014号パンフレット参照。固体支持体及び触媒の活性基の適切なコントロールは、極めて狭い多分散性を有するイソシアヌレート三量体のオリゴマー混合物、すなわち、50%未満のIR1及び25%超のIR2、好ましくは40%未満のIR1及び30%超のIR2を含有する生成物の形成をもたらすことができる。この種の分布は、低粘度を有する高平均分子量生成物を提供する。
【0027】
所望の量のイソシアヌレート基を形成した後、これは反応混合物のNCO含有量の測定によって分析により測定することができる、前記三量化触媒は通常は不活性化される。好適な不活性化剤の例は、無機酸及び有機酸、対応する酸ハロゲン化物及びアルキル化剤である。不活性化剤の具体的な例として、リン酸、モノクロロ酢酸、ドデシルベンゼン/スルホン酸、塩化ベンゾイル、硫酸ジメチル及びジブチルホスフェートが挙げられる。不活性化剤は、三量化触媒の量を基準として1〜200モル%、好ましくは20〜100モル%の量で用いることができる。前記触媒はまた、熱分解によって不活性化させることもできる。典型的な熱不活性化温度は、130℃よりも高く且つイソシアネートの分解温度よりも低い、一般的に200℃未満である。
【0028】
イソシアヌレートの調製に関して、前記有機ジイソシアネートは、30〜120℃で、好ましくは60〜110℃で、前記三量化触媒の存在下で、有利には反応条件下で不活性である気体、例えば窒素の雰囲気下で部分的に環化される。一般に、環化反応は、80%未満のモノマー含有量を残すために行われる。好ましくは、環化反応は、70%未満のモノマー含有量を残すために行われる。一般に、高転化率では、反応混合物中に残るモノマーの量は20〜40%の間にある。さらに好ましくは、反応は65%未満の最終モノマー含有量を得るために行われる。反応混合物(すなわち、三量体及び未反応モノマー)の所望のNCO含有量は、一般的に20〜40重量%である。好ましくは、反応混合物の所望のNCO含有量は、22〜38重量%、さらに好ましくは23〜35重量%である。所望のNCO含有量に達した後に、前記三量化触媒が不活性化され、このようにしてイソシアヌレート形成が終えられる。未反応モノマーの除去後に、前記三量体及び三量体オリゴマー(IR1、IR2、及びそれよりも大きいオリゴマー)のNCO含有量は、イソシアヌレートポリイソシアネートの一般的には12〜30重量%、さらに好ましくは15〜21重量%である。
【0029】
反応生成物は、モノマー種、例えば単環構造もつイソシアヌレート、及びオリゴマー種、例えば2個以上の環構造もつイソシアヌレートを含有する。好ましくは、IR1は、組成物中に組成物の20〜80重量%存在する。さらに好ましくは、IR1含有量は、組成物の25〜70重量%である。最も好ましくは、IR1含有量は、組成物の25〜65重量%である。幾つかの用途では、IR1の含有量は、組成物の30〜60重量%であることが望ましいものであり得る。一般に、前記組成物はIR2を5〜40重量%含有する。IR1及びIR2含有量は、高次オリゴマーも存在し得ることから組成物の100%である必要はない。
【0030】
一般に、3.0よりも大きい平均官能価を有する脂肪族イソシアネート三量体(イソシアヌレート)のオリゴマー混合物を製造することが好ましい。前記三量体の平均官能価は、モノマーの転化の程度及び触媒の選択によって調節される。最終生成物の官能価は、本明細書に記載のブロックドモノマーの追加によって低減させてもよい。
【0031】
本発明に関して、種々のポリイソシアネートは、三量化工程に先立って混合してもよいし、又は個々の異性体の三量体及び高次オリゴマーを形成し、次いで一緒に混合してもよい。例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの1,3−及び1,4−異性体の三量体及び高次オリゴマーを、別々に製造してその生成物を混合してもよいし、前記1,3−及び1,4−異性体を、三量化工程の前に一緒に存在させることもできる。同様に、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン以外の多官能価イソシアネートを含有するイソシアヌレート型ポリイソシアネートは、三量化の前に存在するその他の多官能価イソシアネートを有することによって製造することができるし、あるいは別々に製造して、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン異性体から製造されるイソシアヌレート型ポリイソシアネートと混合することができる。一般に、1,3−及び1,4−異性体の両方の異性体が初期反応混合物に存在する場合には、1,3−及び1,4−異性体からイソシアヌレート型ポリイソシアネートを製造することが好ましい。また、任意のその他の多官能価イソシアネートが三量化反応の開始前に又は三量化反応中に存在することも好ましい。
【0032】
本発明の一つの実施形態において、出発ポリイソシアネートとして1,3−及び1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンモノマーの混合物を、追加の環状又は脂環式イソシアネートと共に使用することが好ましい。一つの実施形態において、1,3−及び1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンモノマーは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)又はこれらの混合物と組み合わせて使用される。HDI及び/又はIPDIが前記ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに加えて追加の多官能価イソシアネートとして使用される場合には、HDI及び/又はIPDIは、多官能価イソシアネート全体の約50重量%までの量で添加される。好ましくは、HDI及び/又はIPDIは、多官能価イソシアネート全体の約40重量%までを含有するまで加えられる。さらに好ましくは、HDI及び/又はIPDIは、多官能価イソシアネート全体の約30重量%までを構成するまで加えられる。
【0033】
本発明のイソシアヌレート型ポリイソシアネートの製造は、好ましくは溶媒の非存在下で行われる。所望ならば、それぞれの出発原料に対して不活性である溶媒を使用してもよい。有機溶媒、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、o−ジクロロルベンゼン、キシレン、酢酸メチオキシエチル、酢酸メトキシプロピル、酢酸メトキシプロピル、エチル−3−エトキシプロピオネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド又はソルベントナフサを使用することが好ましい。
【0034】
イソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートは、化学量論量のブロック剤、すなわちブロック剤のNCO反応性基1モル当たり1モルのNCOと、100〜200℃、好ましくは120〜160℃の温度で反応させる。好ましくは、ブロック剤は若干化学量論過剰で、例えば1.1:1で加えられる。反応は、発熱的に進行する。付加反応の転化率は、適切な触媒を加えることによって増大させ得る。好ましくは、ブロッキング工程に先立って、残留モノマーはイソシアヌレート組成物から除去される。
【0035】
イソシアネートとブロック剤の間の反応は、溶媒の存在下で行うことができる。軽液体有機物質が、イソシアネート基と反応することができる官能性をもたないことを条件として、反応媒体(溶媒)として使用し得る。このような有機反応媒体液の例としては、イソシアヌレート組成物の形成用の可能な溶媒として上記に挙げたものが含まれる。溶媒は、一般にイソシアヌレート組成物の粘度を低下させるために、一般に30重量%未満加えられる。溶媒の添加は、一般にブロッキング工程の反応速度を高める。
【0036】
イソシアヌレート基を含有するブロックドポリイソシアネートを、三量化反応とブロッキング反応とを同時に行うことによって調製することもできる。
【0037】
イソシアヌレート基を含有するブロックドポリイソシアネートを、該モノマーを部分的にブロックし、その後に残存遊離イソシアネート基を三量化することによって調製することもできる。中間体部分ブロックドイソシアネート反応物質が、十分な量のブロック剤を有機ジイソシアネートと反応させてイソシアネート基の50%未満、さらに好ましくはイソシアネート基の40%未満をブロックすることによって形成される。イソシアネートブロッキングの程度は、イソシアネート基の滴定によって決定し得る。ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの1,3−異性体及び1,4−異性体のイソシアネート部分は、同様の反応性を有し、最終生成物は、イソシアネート基全部がブロックされている分子、イソシアネート基がブロックされていない分子及びイソシアネート基の一部がブロックされている分子の分布を含有するであろう。
【0038】
上記の部分的ブロックド有機ジイソシアネート中間体を形成した後に、該中間体は三量化されてイソシアヌレート型ブロックドポリイソシアネートとブロックドモノマーとの混合物を含むポリイソシアネートを形成する。
【0039】
本発明の熱解離性ブロックドポリイソシアネートは、当業者には明らかであろう塗料組成物の架橋又は硬化成分として使用することができる。塗料組成物は、前記ブロックドポリイソシアネートの他に、少なくとも2個の結合されたヒドロキシル基を有する少なくとも1個のポリヒドロキシ化合物をさらに構成する。
【0040】
塗料組成物に使用されるポリヒドロキシ化合物の例としては、脂肪族炭化水素ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、エポキシ樹脂、フルオロポリオール、及びアクリルポリオールが挙げられる。好ましくは、脂肪族ポリエステル及びアシリック(acylic)ポリオールが使用される。
【0041】
脂肪族炭化水素ポリオールの例としては、末端ヒドロキシル基を含有するポリブタジエン及びその水素添加生成物が挙げられる。ポリエーテルポリオールの例としては、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド及びプロピレンオキシドを単独で又はこれらの混合物を、多価アルコール、例えばグリセリン及びプロピレングリコール単独又はこれらの混合物と付加反応させることによって得ることができるポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、アルキレンオキシドを多官能価化合物、例えばエチレンジアミン及びエタノールアミンと反応させることによって得ることができるポリエーテルポリオール、及びアクリルアミドなどをこれらのポリエーテル類を媒体として重合させることによって得ることができるいわゆるポリマーポリオールが挙げられる。
【0042】
ポリエステルポリオールの例としては、カルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸からなる群より選択される二塩基酸を単独又は混合物で、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン及びグリセリンからなる群より選択される多価アルコール単独又は混合物と縮合反応させることによって得ることができるポリエステルポリオール樹脂、及び多価アルコールを使用してε−カプロラクトンを開環重合させることによって得ることができるポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。
【0043】
エポキシ樹脂としては、例えば、ノボラック型、β−メチルエピクロロヒドリン型、環状オキシラン型、グリシジルエーテル型、グリコールエーテル型、エポキシ型の脂肪族不飽和化合物、エポキシ化脂肪酸エステル型、ポリカルボン酸エステル型、アミノグリシジル型、ハロゲン化型及びレゾルシン型のエポキシ樹脂、並びにこれらのエポキシ樹脂とアミノ化合物、ポリアミド化合物などとの変性樹脂が挙げられる。
【0044】
フルオロポリオールとしては、例えば、フルオロオレフィン類とシクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、及びモノカルボン酸のビニルエステルのいずれかとの共重合体が挙げられる。
【0045】
アクリルポリオールとしては、例えば、一つの分子内に1個以上の活性水素を有する重合性アクリルモノマーを、これと共重合可能なその他のモノマーとを共重合させることによって得ることができるアクリルポリオールが挙げられる。一つの分子内に1個以上の活性水素を有する前記アクリルモノマーとしては、活性水素を有するアクリル酸エステル、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート及び2−ヒドロキシブチルアクリレート、活性水素を有するメタクリル酸エステル、例えば2−ヒドロキシジエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート及び2−ヒドロキシブチルメタクリレート、並びに多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル、例えばグリセリンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル及びトリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステルからなる群より選択される単一の又は混合モノマーが挙げられる。前記モノマーと共重合可能なその他のモノマーの例としては、アクリル酸エステル、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシル、並びにメタクリル酸エステル、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、及びメタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。必要ならば、他の重合性モノマー、例えば、不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びイタコン酸、不飽和アミド、例えばアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド及びジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、並びにアクリロニトリルの一つ又は混合物が、共重合にさらに使用し得る。
【0046】
これらのポリオールの中で、特に好ましいのは、100〜5,000、好ましくは250〜3,000、さらに好ましくは500〜2,000の当量と、300〜40,000、好ましくは500〜30,000の数平均分子量を有するアクリルポリオール及びポリエステルポリオールである。該ポリオールは2〜8の官能価を有することができるが、2〜4の官能価を有するポリオールが好ましい。
【0047】
本発明の塗料組成物中の熱解離性ブロックドポリイソシアネートのブロックドイソシアネート基とポリヒドロキシ化合物のヒドロキシル基との当量比は、塗膜の所望の特性に応じて決定され、通常は0.4:1〜2:1の範囲内、好ましくは0.5:1〜1.5:1の範囲内;さらに好ましくは1:1〜1.1:1の範囲内にある。
【0048】
塗料組成物はまた、その他の添加剤、例えば顔料、染料、充填剤、均展材及び溶剤を含有していてもよい。塗料組成物は、塗布される支持体に、溶液で又は溶融物から慣用の方法で、例えば塗布、ロール塗り又は噴霧によって塗布し得る。溶剤系については、溶剤は、用途及び目的に応じて、炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット及びナフサ;ケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン;エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル及び酢酸セロソルブ;並びにアルコール類、例えばブタノール及びイソプロピルアルコールから任意に選択することができる。これらの溶剤は、単独で又はこれらの少なくとも2種の組み合わせで使用してもよい。
【0049】
ある時間貯蔵しておいた場合に塗料物質が一緒に粘着することを防止するために、これら塗料物質は、適切な粉末を用いて処理してもよい。適切な粉末の例としては、タルク又は有機基を含有していてもよい微細ケイ酸類、例えばメチルトリクロロシランの加水分解によって得られるケイ酸類が挙げられる。微細分散リン酸カルシウム及び高級アルミニウムアルコラートの分解により得られる硫酸アルミニウムも適している。
【0050】
均展材及び光沢向上剤の例としては、ポリビニルブチラール、n−ブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとのコポリマー、ケトン−アルデヒド縮合樹脂、固体シリコーン樹脂並びに亜鉛石鹸の混合物、脂肪酸及び芳香族カルボン酸が挙げられる。
【0051】
市販されている立体障害多官能価フェノール類、例えばこの種の高分子量フェノール類は、熱安定剤及び酸化防止剤として使用するのに適していることが分かっている。
【0052】
一般的に、本発明の混合物を調製するために、ブロックドイソシアネート、ポリヒドロキシル化合物及び任意の添加剤が、好ましくは押出機又は加熱可能なニーダーあるいはその他の何らかの強力混合装置、例えば二重Z(double−Z)ニーダーを使用して一緒に激しく混合される。個々の成分は、好ましくは架橋には低すぎる温度での溶融状態で混合される。
【0053】
本発明の混合物は、均質化されている場合には、冷却され、それによって得られる固体物質は市販のミルで微粉砕されて0.01〜0.05mmの最大範囲内の粒子に小さくされ、必要ならば約0.09mmよりも大きい粒子は篩い分け機で除去される。
【0054】
本発明の混合物は、支持体を塗装するのに本発明に従って使用される場合には、ホワール(whirl)焼結法、静電粉体塗装法又は静電流動床法で塗布してもよい。次いで、塗布された支持体は加熱乾燥炉で加熱され、固体ラッカー粉末粒子が溶融し、凝集して均一な被膜を形成し、最後にマスキング剤の除去と共に架橋する温度に暴露される。これは、塗布された支持体が一般に140〜280℃、好ましくは120〜180℃の温度に暴露されることを意味する。これらの条件下で遊離されたイソシアネート基は、ポリヒドロキシル成分のヒドロキシル基と反応して高品質のポリウレタン被膜を形成する。
【0055】
このようにして調製された塗料組成物は、慣用の塗布方法、例えば吹付塗、浸漬塗り、ロール塗布、及び電着塗装によって塗布することができる。
【0056】
上記のブロックド生成物又は硬化剤組成物を用いることによって調製される塗料組成物は、自動車のトップコート又はインターコート、耐衝撃性塗料、自動車部品用塗料、プレコート金属及び金属品、例えば電気製品及び事務機器の防食鋼板用塗料、建材用塗料、プラスチック用塗料、接着性付与剤、シーリング剤、並びに電着塗料として使用することができる。また、ブロックドイソシアネートとポリヒドロキシル化合物を含有する組成物は、接着剤、接着性付与剤、シーリング剤などとして使用することができる。
【0057】
本発明のブロックドイソシアネートを含有する塗料はまた、耐熱性支持体、例えば金属、ガラス、セラミックス及び所望ならば木材の表面に高品質の耐衝撃性、耐候性及び耐溶剤性塗膜を生成させるのに使用してもよい。
【0058】
溶剤型用途で使用される場合には、前記三量体は、溶剤中で適切なアクリルポリオール又は脂肪族ポリエステルポリオール及び任意の添加剤と混合される。ブロック解除後に架橋剤と反応する任意の非プロトン性溶剤を、溶剤型塗料を製造するのに使用することができる。溶剤型塗料に常用される溶剤としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、キシレン、酢酸メチオキシエチル、酢酸メトキシプロピル、エチル−3−エトキシプロピオネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド又はソルベントナフサが挙げられる。溶剤系は、一般にブロックドイソシアネートとポリヒドロキシル化合物を40〜80重量%含有する。これらの配合物は、一般に支持体、例えば金属及びプラスチックに塗布される。徐々に加熱することによって溶剤を除去した後に、ブロックドイソシアネート三量体は、加熱によってブロック解除され、該三量体は直ちにポリオールと反応して高分子量ポリマー塗膜を形成する。プラスチックの塗装については、プラスチックの熱変形を最小限に抑えるために、より低いブロック解除温度、例えば120〜160℃を用いるブロック剤が好ましい。
【0059】
以下の実施例は、本発明を例証するために提供する。実施例は、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、またそのように解釈されるべきではない。%は全て、特に明記しない限りは重量によるものである。
【実施例】
【0060】
実施例で使用した成分及び試験は、次の用語解説に記載する:
架橋剤1 − 310の当量を有するベスタゴン(VESTAGON)(登録商標)EP B 1400としてデグッサ コーポレーション(Degussa Corporation)から市販されているカプロラクタムでブロックされたイソホロンジイソシアネート(IPDI)の付加物。
【0061】
架橋剤2 − 345の当量を有するカプロラクタムでブロックされた1,3−シクロヘキサン−ビス(イソシアナトメチル)と1,4−シクロヘキサンビス(イソシアナトメチル)の約1:1混合物のポリイソシアヌレート。
【0062】
架橋剤3 − 340の当量を有するカプロラクタムでブロックされた1,3−シクロヘキサン−ビス(イソシアナトメチル)のポリイソシアヌレート。
【0063】
三量体1 − 461の当量を有する1,3−シクロヘキサン−ビス(イソシアナトメチル)と1,4−シクロヘキサン−ビス(イソシアナトメチル)の約1:1混合物のポリイソシアヌレートの3,5−ジメチルピラゾール(DMP)付加物。
【0064】
三量体2 − 494の当量を有するイソホロンジイソシアネート(IPDI)のポリイソシアヌレートの3,5−DMP付加物。
【0065】
三量体3 − 399の当量を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のポリイソシアヌレートの3,5−DMP付加物。
【0066】
ポリエステル樹脂 − ウララック(Uralac)P 6504としてDSM レジンズ コーポレーション(DSM Resins Corporation)から市販されている飽和ヒドロキシル化ポリエステル樹脂。
【0067】
ポリマー1 − 500の当量を有するジョンクリル(Joncryl)920としてS.C.ジョンソン(S.C.Johnson)から市販されているアクリルポリオール。
【0068】
ポリマー2 − 1000の当量を有するトーン(Tone)0240としてザ ダウ ケミカルカンパニー(The Dow Chemical Company)から市販されているポリエステルポリオール。
【0069】
顔料 − Ti−Pure(登録商標)R−706としてデュポン コーポレーション(DuPont Corporation)から市販されている二酸化チタン。
【0070】
添加剤1 − アルドリッチ(Aldrich)から入手できる脱ガス剤ベンゾイン(Benzoin)(98%)。
【0071】
添加剤2 − モダフロー パワー(Modaflow Powder)IIIとしてソルティア(Solutia)から市販されている流れ調整剤。
【0072】
添加剤3 − BYK−320としてBYKケミ(BYK Chemie)から市販されている流動性添加剤。
【0073】
触媒1 − ファーストキャット(Fastcat)4100として市販されている金属触媒。
【0074】
触媒2 − ダブコ(Dabco)T−12としてエア プロダクツ カンパニー(Air Products Company)から市販されているジブチル錫ジラウレート。
【0075】
溶剤1 − ザ ダウ ケミカル カンパニー(The Dow Chemical Company)から市販されている酢酸n−ブチル。
【0076】
溶剤2 − ザ ダウ ケミカル カンパニー(The Dow Chemical Company)から市販されているエチル−3−エトキシプロピオネート
【0077】
塗膜の膜厚は、ASTM D1186により測定される。
【0078】
ゲル化時間は、200〜204℃のホットプレート上で、粉体塗料を木製アプリケータースティックの先端で固体ゲルが生じるまで擦ることによって測定される。
【0079】
光沢はASTM D523に従って測定される。
【0080】
被膜の鉛筆硬度はASTM D3363に従って測定される。塗膜の振子硬度は、ケーニッヒ振子硬度試験機を使用することによって測定され、秒で記録される。
【0081】
塗膜のクロスハッチ接着力(Cross Hatch Adhesion)は、クロスハッチカッターキット(Cross Hatch Cutter Kit)を使用し、ASTM D3359に従って測定される。
【0082】
塗膜の耐酸エッチング性は、BYK ケミ(BYK Chemie)勾配温度オーブンを使用して測定され、H2SO4の10%溶液を塗膜上に15分間置いた場合に支持体を切断する最も低い温度(℃)として記録される。その温度が高ければ高いほど、塗膜は酸に対してより耐性である。
【0083】
塗膜の耐溶剤性は、支持体まで塗膜を切断するのに必要なメチルエチルケトン(MEK)往復擦りの回数として記録される。
【0084】
可撓性は、ASTM D522に従って円錐マンドレルを使用して測定される。
【0085】
塗膜の耐衝撃性は、ガードナー衝撃試験機を使用し、ASTM D2794に従って測定された。
【0086】
粉体塗料用のブロックドポリイソシアヌレートの調製
1,3−シクロヘキサン−ビス(イソシアナトメチル)と1,4−シクロヘキサン−ビス(イソシアナトメチル)との1:1混合物のポリイソシアヌレートの調製は、国際公開第2004/078820号パンフレットの教示による。ブロックド物質は、次の方法に従って調製する。ガス吹き込み装置、機械攪拌装置、温度計及び冷却器を備えた1.0Lガラスフラスコに、酢酸ブチル中の固形分70%のポリイソシアヌレート100gを加える。反応器の内容物に、70℃で加熱しながら乾燥窒素を吹き込み、この反応混合物にε−カプロラクタム34gを加える。反応温度を、反応が完結するまで100〜120℃の間に維持する。反応器の内容物を60℃に冷却し、ヘキサン100gを加える。次いで反応器の内容物を室温以下に冷却し、白色沈殿物を濾過し、冷ヘキサンで洗浄する。得られる白色粉末を真空オーブン中で24時間乾燥する。他のポリイソシアネート/ポリイソシアヌレートの付加物、を同様にして行う。
【0087】
溶剤型塗料用のブロックドポリイソシアヌレートの調製
1,3−シクロヘキサン−ビス(イソシアナトメチル)と1,4−シクロヘキサン−ビス(イソシアナトメチル)との1:1混合物のポリイソシアヌレートの調製は、国際公開第2004/078820号パンフレットの教示による。ブロックド物質は、次の方法に従って調製する。ガス吹き込み装置、機械攪拌装置、温度計及び冷却器を備えた1.0Lガラスフラスコに、酢酸ブチル中の固形分70%のポリイソシアヌレート463.3gを加える。反応器の内容物に、70℃で加熱しながら乾燥窒素を吹き込み、この反応混合物にジメチルピラゾール137.46gを加える。反応温度を、反応が完結するまで100〜120℃の間に維持する。反応器の内容物を60℃に冷却し、酢酸ブチル58.8gを加える。他のポリイソシアネート/ポリイソシアヌレートの付加物を、同様にして行う。
【0088】
実施例1〜3(粉体塗料)
実施例1について、次の成分を高速ミキサーに加える:400.3gのポリエステル樹脂、200gの顔料、90.5gの架橋剤1(NCO:OH当量比1:1)、2.02gの添加剤1、6.07gの添加剤2及び4.0gの触媒。全ての成分を、均質混合及び固体の細粒への粉砕を確実にするために2300rpmで43秒間予備混合する。得られる均質混合物を二軸押出機に通して処理して均一な粘稠溶融物を得る。3つの帯域の押出し温度は、400rpmの処理速度で35℃、70℃及び90℃に維持する。次いで、溶融押出し物を、一組の水冷式絞りロールに通して砕けやすい生成物を製造する。次いで、生成物を、粉砕室に徐々に供給し、ハンマーミルを使用して粉砕する。
【0089】
最終粉末を、リン酸鉄処理鋼板(Q Panel S−412−I)表面に静電噴霧する。塗膜を200℃で10分間硬化させる。最終膜厚は2.0〜2.14ミリの範囲にある。オーブン硬化塗膜は4時間放置した後にその物性を測定する。
【0090】
それぞれの系についてNCO:OH当量比を1:1で一定に保つために各成分の量を変化させた以外は、実施例の方法に従って実施例2及び3を行った。これらの実施例について使用した量を、表1に示す。
【表1】

【0091】
塗膜の特性を表2に示す。得られた結果は、本発明の架橋剤(架橋剤2)を基材とする塗膜の耐衝撃性及び硬度は架橋剤1及び3を基材とする塗膜よりも優れていることを示している。
【表2】

【0092】
実施例4〜8(溶剤型塗料)
10.00gのポリマー1をきれいな乾燥広口びんに加え、次いで8.8gの溶剤1と3.0gの溶剤2をポリマー1と混合した。実施例4については、次いで9.67gの三量体1(ヒドロキシル基に対して0.05モル%過剰のイソシアネート基)、0.0157gの添加剤3及び0.05重量%(全固形分+溶剤に関して)の触媒2を該ポリマー溶液に加えた。次いで、該配合物を十分に混合し、5分間放置して気泡を放出させた。次いで、該配合物を、磨き冷延鋼板(これはアセトンで清浄にし、オーブン中で乾燥した)上に#46線巻きロッドを使用して引き下ろして1.5〜2.0ミリの乾燥膜厚を得た。湿潤塗膜を、室温で10分間蒸発させ、次いでオーブン中で150℃で30分間焼付けした。オーブン硬化塗膜を24時間放置し、その後にその物性を測定した。実施例5については、10.37gの三量体2を三量体1に代えて使用した。実施例6については、8.38gの三量体3を三量体1に代えて使用した。実施例7については、9.94gの三量体4を三量体1に代えて使用した。実施例8については、9.84gの三量体5を三量体1に代えて使用した。得られた塗膜の性質を表3に示す。
【表3】

【0093】
得られた結果は、溶剤型塗料に使用した場合の三量体1は、三量体2及び3と比べて硬度と可撓性とのよりよいバランスを与え、三量体3に比べてよりよい耐酸エッチング性を与えることを示している。
【0094】
実施例7及び8:
8.25gのポリマー1と1.65gのポリマー2(重合体1と重合体2との重量比5/1)を、きれいな乾燥広口びんに加え、次いでこのポリマー混合物に7.59gの溶剤1と2.90gの溶媒2を加えた。実施例8については、次いでこのポリマー混合物に、8.77gの三量体1(ヒドロキシル基に対して.05モル%過剰のイソシアネート基)、0.0275gの添加剤3及び0.05重量%(全固形分+溶剤に対して)の触媒2を加えた。次いで、配合物を十分に混合し、5分間放置して気泡を放出させた。次いで、配合物を、磨き冷延鋼板(これはアセトンで清浄にし、オーブン中で乾燥した)上に#46線巻きロッドを使用して引き下ろして1.5〜2.0ミリの乾燥膜厚を得た。湿潤塗膜を、室温で10分間蒸発させ、次いでオーブン中で150℃で30分間焼付けした。オーブン硬化塗膜を24時間放置し、その後にその物性を測定した。実施例9については、10.50gの三量体2を三量体1に代えて使用した。
【0095】
得られた塗膜の性質を表4に示す。
【表4】

【0096】
実施例8及び9から得られた結果は、三量体1が三量体2と比べて硬度と可撓性とのよりよいバランスを与えることを示している。
【0097】
本発明の他の実施形態は、本明細書及びここで開示した発明の実施を考慮することから明らかである。本明細書及び実施例は例示としてのみ考慮されることを意図しており、本発明の真の範囲及び精神は特許請求の範囲によって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアヌレート部分を含有する熱解離性ブロックドポリイソシアネート組成物であって、
前記イソシアヌレートは、ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサンの反応生成物であり、前記ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサンは、シス−1,3−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサン、トランス−1,3−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサン、シス−1,4−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサン及びトランス−1,4−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサンの2種以上を含有する混合物であり、但し、前記組成物は1,4−異性体を少なくとも5重量%含有する、前記熱解離性ブロックドポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
前記組成物はイソシアヌレート部分を含有するポリイソシアネートを少なくとも30重量%含有するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物はイソシアヌレート部分を少なくとも40重量%含有するものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記熱解離性ブロック剤は、オキシム類、ラクタム類、ピラゾール類、トリアゾール類、ヒドロキシルアミン類及び脂肪族、脂環式又は芳香族アルキルモノアルコール類から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記熱解離性ブロック剤は、オキシム類、ラクタム類、フェノール類、活性メチレン類、ピラゾール類、メルカプタン類、イミダゾール類、アミン類、イミン類、トリアゾール類、ヒドロキシルアミン類及び脂肪族、脂環式又は芳香族アルキルモノアルコール類から選択されるものである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記熱解離性ブロック剤は、オキシム類、フェノール類、カプロラクタム、イミダゾール類及び活性メチレン化合物から選択されるものである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記1,4−異性体が、前記組成物の10〜40重量%を構成するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ビス(イソシアントメチル)シクロヘキサンの異性体以外の少なくとも1種のポリイソシアネート0.1〜50重量%が前記混合物中に存在するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
(a)請求項1〜7のいずれか1項に記載のブロックドイソシアヌレート型イソシアネートと、(b)ポリヒドロキシル化合物とを含有してなる塗料組成物。
【請求項10】
前記ポリヒドロキシル化合物は、脂肪族炭化水素ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、エポキシ樹脂、フルオロポリオール及びアクリルポリオールから選択されるものである、請求項9に記載の塗料組成物。
【請求項11】
前記ポリヒドロキシル化合物は、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール又はこれらの組み合わせである、請求項10に記載の塗料組成物。
【請求項12】
ブロックドイソシアネート基と前記ポリヒドロキシル化合物中のヒドロキシル基との当量比が0.4:1〜2:1である、請求項9に記載の塗料組成物。
【請求項13】
前記塗料は溶剤型塗料である、請求項10に記載の塗料組成物。
【請求項14】
前記溶剤は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、o−ジクロロルベンゼン、キシレン、酢酸メトキシエチル、酢酸メトキシプロピル、エチル−3−エトキシプロピオネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ソルベントナフサ又はこれらの組み合わせから選択されるものである、請求項13に記載の塗料組成物。
【請求項15】
前記組成物は、前記ブロックドイソシアネート及び前記ポリヒドロキシル化合物を40〜80重量%含有するものである、請求項13に記載の塗料組成物。
【請求項16】
ポリイソシアネートと熱解離性ブロック剤とを、イソシアネート基の40%未満をブロックするためのイソシアネートと前記ブロック剤のイソシアネート反応性基との比率で反応させ、前記ポリイソシアネートを三量化触媒の存在下で環化させ、所望の環化の度合に達した際に前記三量化触媒を不活性化させることを含むイソシアヌレート部分を含有する熱解離性ブロックドポリイソシアネート組成物の製造方法であって、
前記イソシアヌレートはシス−1,3−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサン、トランス−1,3−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサン、シス−1,4−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサン及びトランス−1,4−ビス(イソシアノトメチル)シクロヘキサンの2種以上から誘導され、但し、前記組成物は前記1,4−異性体を少なくとも5重量%含有する、前記熱解離性ブロックドポリイソシアネート組成物の製造方法。

【公表番号】特表2008−512520(P2008−512520A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530472(P2007−530472)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/031685
【国際公開番号】WO2006/029141
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】