説明

ブロー成形方法

【課題】 歩留まりやサイクルタイムなど生産効率が向上するブロー成形方法を提供する。
【解決手段】 1台の成形機2の左右の金型取付板11a,11bに左金型3aと右金型3bからなる第1金型3と左金型4aと右金型4bからなる第2金型4を上下方向に取り付け、これらの金型3,4にパリソン5を供給して製品を2個同時に成形する。第1金型3と第2金型4は、それらの製品面が互いに同じ向きで、互いの金型分割面のずれ幅が最小になるように金型取付板11a,11bに取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1台の成形機で製品を2個同時に成形することができるブロー成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形機に1式の金型を取り付け、クロスヘッドより押し出されたパリソンをピンチにて閉じ、パリソンをブローにて膨らませた後、金型で挟み込んで1ショットで製品1個を成形する方法が知られている。
【0003】
また、ブロー成形方法としては、特許文献1に記載のように、1台の型締機構と、複数の金型(第1・第2の金型)と、型締機構とは別に金型自体を型締め状態に保つ型開防止機構と、複数個の金型を選択的に型締機構に臨ませる金型移動機構と、型締機構にセットした金型へパリソンを供給し、吹込み加圧するパリソン供給・吹込み機構とから構成して、1台の型締機構を複数の金型で共用し、成形品の多数個取りをする方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−11214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、1ショットで製品1個を成形する方法においては、成形機に合ったサイズの製品については歩留まりがよいが、そのサイズ以下の製品については歩留まりが悪くなってしまう。
また、特許文献1に記載の方法においては、1台の型締機構を複数の金型で共用しているものの、型締機構に合ったサイズ以下の製品については歩留まりが悪くなり、生産性(サイクルタイム)も向上しない。
【0006】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、歩留まりやサイクルタイムなど生産効率が向上するブロー成形方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、1台の成形機の金型取付板に2式の金型を上下方向に取り付け、これらの金型にパリソンを供給して製品を2個同時に成形するものである。
【0008】
前記2式の金型は、それらの製品面が互いに同じ向きで、互いの金型分割面のずれ幅が最小になるように前記金型取付板に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、成形機にとって適正な成形範囲のサイズから外れる製品を1ショットで2個同時に成形するので、生産効率(歩留まり、サイクルタイム)の向上が図れる。また、既存の成形機にとって成形できる製品サイズの適用範囲の拡大が図れる。
【0010】
2式の金型を、それらの製品面が互いに同じ向きで、互いの金型分割面のずれ幅が最小になるように金型取付板に取り付ければ、成形された2つの製品間での品質のばらつきを小さくすることができ、且つ離型性もよくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るブロー成形方法を実施する成形装置の断面図
【図2】金型のレイアウトの説明図で、(a)は製品のA面を形成する左金型が上下方向で同じ向きの場合、(b)は製品のA面を形成する左金型が上下方向で互いに180度向きを変えた場合、(c)は製品のA面を形成する左金型とB面を形成する左金型が左右方向で互いに180度向きを変えた場合、(d)は製品のB面を形成する左金型が左右方向で互いに180度向きを変えた場合
【図3】本発明に係るブロー成形方法の作用説明図で、(a)は金型の取り付け、(b)はパリソンの押し出し、(c)はパリソン内へのエアの吹き込み、(d)は型締めによる製品の2個同時成形
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。本発明に係るブロー成形方法を実施する成形装置1は、図1に示すように、成形機2と、成形機2に取り付けられる第1金型3及び第2金型4と、これらの金型3,4に供給するパリソン5を押し出すクロスヘッド6と、パリソン5の上端5aを閉じる上チャック7と、パリソン5の下端5bを閉じる下ピッチ8などを備えて構成される。
【0013】
成形機2は、型締め機構9や吹き込み機構10などからなる。第1金型3及び第2金型4は、夫々左金型3a,4aと右金型3b,4bから構成され、左右の金型取付板11a,11bを介して成形機2に取り付けられる。そして、第1金型3及び第2金型4により、同じ製品が成形される。
【0014】
製品は、その外面形状がA面とB面からなり、A面を左金型3a,4aで成形し、B面を右金型3b,4bで成形する。また、A面を右金型3b,4bで成形し、B面を左金型3a,4aで成形することもできる。
【0015】
更に、同時に成形される2つの製品のうち、一方のA面を第1金型3の左金型3aで、他方のA面を第2金型4の右金型4bで成形することもできるし、その逆も可能で、組み合わせの仕方は、任意である。
【0016】
また、第1金型3を構成する左右の金型3a,3bと第2金型4を構成する左右の金型4a,4bは、製品面が互いに同じ向きで、互いの金型分割面のずれ幅が最小になるように、左右の金型取付板11a,11bに取り付けられる。
【0017】
第1金型3を構成する左右の金型3a,3bと第2金型4を構成する左右の金型4a,4bを、金型取付板11a,11bに取り付ける際の金型レイアウトは、図2に示すように、金型取付板11a,11bに金型3a,3b,4a,4bの取付穴(不図示)を設けることにより、上下・左右に配置することが可能である。
【0018】
図2(a)は、左の金型取付板11aに、共に製品のA面を形成する左金型3a,4aを上下方向で同じ向きに取り付け、右の金型取付板11bにはB面を形成する右金型3b,4bを上下方向で同じ向きに取り付けた場合である。
【0019】
図2(b)は、左の金型取付板11aに、共に製品のA面を形成する左金型3a,4aを上下方向で互いに180度向きを変えて取り付け、右の金型取付板11bにはB面を形成する右金型3b,4bを上下方向で互いに180度向きを変えて取り付けた場合である。
【0020】
図2(c)は、左の金型取付板11aに、製品のA面を形成する左金型3aとB面を形成する左金型4aを左右方向で互いに180度向きを変えて取り付け、右の金型取付板11bにはB面を形成する右金型3bとA面を形成する右金型4bを左右方向で互いに180度向きを変えて取り付けた場合である。
【0021】
図2(d)は、左の金型取付板11aに、共に製品のB面を形成する左金型3a,4aを左右方向で互いに180度向きを変えて取り付け、右の金型取付板11bにはA面を形成する右金型3b,4bを左右方向で互いに180度向きを変えて取り付けた場合である。
【0022】
このように、第1金型3及び第2金型4を上下・左右に配置することが可能ではあるが、成形された2つの製品間での品質のばらつきを小さくすることができ、且つ離型性もよくすることができることなどから、図2(b)に示す金型レイアウトが他の金型レイアウトと比べて望ましい。
【0023】
以上のように構成された成形装置1により実施される本発明に係るブロー成形方法について説明する。先ず、図3(a)に示すように、左右の金型取付板11a,11bに第1金型3を構成する左右の金型3a,3bと第2金型4を構成する左右の金型4a,4bを取り付ける。金型レイアウトとしては、図2(b)に示す金型レイアウトとする。
【0024】
また、第1金型3を構成する左右の金型3a,3bと第2金型4を構成する左右の金型4a,4bは、製品面が互いに同じ向きで、互いの金型分割面のずれ幅が最小になるように、左右の金型取付板11a,11bに取り付けられる。
【0025】
次いで、図3(b)に示すように、パリソン5がクロスヘッド6により押し出され、型開き状態にある左金型3a,4aと右金型3b,4bの間に供給される。
【0026】
次いで、図3(c)に示すように、パリソン5の下端5bを下ピッチ8で閉じ、パリソン5内に吹き込み機構10によりエアを吹き込んで膨らませ、第1金型3を構成する左右の金型3a,3bと第2金型4を構成する左右の金型4a,4bへの転写性を付与する。
【0027】
次いで、図3(d)に示すように、パリソン5の上端5aを上チャック7で閉じ、第1金型3と第2金型4を型締め機構9により型締めして膨らんだパリソン5を挟み込み、第1金型3を構成する左右の金型3a,3bと第2金型4を構成する左右の金型4a,4bに樹脂を転写させる。すると、第1金型3と第2金型4により2個の製品Wが同時に成形される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、成形機にとって適正な成形範囲のサイズから外れる製品を1ショットで2個同時に成形するので、生産効率(歩留まり、サイクルタイム)の向上が図れるブロー成形方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0029】
1…成形装置、2…成形機、3…第1金型、3a,4a…左金型、3b,4b…右金型、4…第2金型、5…パリソン、6…クロスヘッド、9…型締め機構、10…吹き込み機構、11a,11b…金型取付板、W…製品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台の成形機の金型取付板に2式の金型を上下方向に取り付け、これらの金型にパリソンを供給して製品を2個同時に成形することを特徴とするブロー成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載のブロー成形方法において、前記2式の金型は、それらの製品面が互いに同じ向きで、互いの金型分割面のずれ幅が最小になるように前記金型取付板に取り付けられることを特徴とするブロー成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−6339(P2012−6339A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146395(P2010−146395)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】