説明

ブロー成形装置

【課題】 PETボトル等をブロー成形する場合に装置を大型化することなく加熱ステーションのポケット数を増やすことができ、高速成形することができるブロー成形装置を提供すること。
【解決手段】 回転式テーブル式の加熱ステーション1とブローステーション2、および各ステーション1、2へプリフォームPを受け渡し、あるいは受け取りするトランスファーテーブル3a、3b、3cを備えたブロー成形装置であって、前記トランスファーテーブル3a、3b、3cに2以上の水平回転運動の複合運動によりプリフォームPを受け取り、あるいは受け渡しするステーションの回転運動に追従するように移送するカム式の追従移送機構と、プリフォームPを上下に反転するカム式の反転機構とを有するプリフォーム反転移送装置4を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PETボトル等をブロー成形する場合に装置を大型化することなく加熱ステーションのポケット数を増やすことができ、高速成形することができるブロー成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PETボトル等をブロー成形する場合、プリフォームを加熱ステーションで熱処理後、ブローステーションへ移送してブロー成形しているが、加熱ステーションではプリフォームを開口部が下向きの状態で加熱するのが有利である。そのため、従来のブロー成形装置では開口部が上向きの状態で供給されたプリフォームを上下反転させ下向き状態として加熱ステーションに供給し、その後、再び上下反転させ上向き状態としてブローステーションへ供給していた。従って、プリフォームの反転装置が加熱ステーションのポケット毎に設けられているのが普通であった。しかしながら、この場合は装置が複雑化するとともにスペース的にも大きくなるという問題点があった。
【0003】
また、最近ではブロー成形ラインの高速化が要求されているが、プリフォームの熱処理時間およびブロー成形時間は所定時間必要であり、その短縮化には限度がある。そこで高速化を図るには加熱ステーションへプリフォームを搬送するトランスファーテーブルや加熱ステーションからブローステーションへプリフォームを搬送するトランスファーテーブルのポケット数を増やす必要がある。しかし、ポケット毎にプリフォームの反転装置が取り付けられているため、ポケットピッチを小さくすることは難しく、ポケット数を増やすにはトランスファーテーブルの直径を大きくせざるを得ず装置の大型化は避けることができなかった。
【0004】
そこで、特許文献1に示されるように、プリフォームの反転搬送装置としてプリフォームを把持するグリッパ装置のグリッパ軸を、揺動運動と回転運動と直進運動の三つの複合運動を行えるものとして装置の小型化を図ったものが提案されている。しかしながら、この装置の場合は三つの運動を行うための各々の機構を必要とし、反転搬送装置が複雑化するとともにコスト的にも高くなるという問題点が残されており、更なる小型化およびコストダウンを図ることができる装置の開発が望まれていた。
【特許文献1】特許第3391238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような問題点を解決して、PETボトル等をブロー成形する場合に装置を大型化することなく加熱ステーションのポケット数を増やすことができ、高速成形することができるブロー成形装置を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明のブロー成形装置は、回転式テーブル式の加熱ステーションとブローステーション、および加熱ステーションへプリフォームを受け渡しするトランスファーテーブルと加熱ステーションからブローステーションへプリフォームを受け取り・受け渡しするトランスファーテーブルとブローステーションからプリフォームを受け取りするトランスファーテーブルを備えたブロー成形装置であって、前記トランスファーテーブルに2以上の水平回転運動の複合運動によりプリフォームを受け取り、あるいは受け渡しするステーションの回転運動に追従するように移送するカム式の追従移送機構と、プリフォームを上下に反転するカム式の反転機構とを有するプリフォーム反転移送装置を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、プリフォーム反転移送装置として、トランスファーテーブルに2以上の水平回転運動の複合運動によりプリフォームを受け取り、あるいは受け渡しするステーションの回転運動に追従するように移送するカム式の追従移送機構と、プリフォームを上下に反転するカム式の反転機構とを有する構造のものとしたので、部品点数の少ない簡単なカム式機構によりプリフォームを上下に反転したうえ移送すべきステーションの回転運動に追従して確実に移送することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい形態を示す。
図1は、本発明に係るブロー成形装置の概略の全体図を示し、図中1は回転式テーブル式の加熱ステーション、2は回転式テーブル式のブローステーション、3aは加熱ステーション1へプリフォームを受け渡しするトランスファーテーブル、3bは加熱ステーション1からブローステーション2へプリフォームを受け取り・受け渡しするトランスファーテーブル、3cはブローステーション2から次工程へプリフォームを受け取りするトランスファーテーブルであり、以上の構成は従来のブロー成形装置と基本的に同じである。
【0009】
本発明では、前記トランスファーテーブル3a、3b、3cに、プリフォームを上下に反転したうえ移送すべき加熱ステーション1とブローステーション2の回転運動に追従して移送するためのプリフォーム反転移送装置が設けられている。
即ち、トランスファーテーブル3a、3b、3cの直径は、加熱ステーション1やブローステーション2の直径よりもかなり小さいため、プリフォームをうまく移送するにはプリフォームを移送すべきステーションの回転運動に追従させる必要がある。そこで、本発明ではプリフォーム反転移送装置を、トランスファーテーブルに2以上の水平回転運動の複合運動によりプリフォームを受け取り、あるいは受け渡しするステーションの回転運動に追従するように移送するカム式の追従移送機構と、プリフォームを上下に反転するカム式の反転機構とを有する構造とした。
【0010】
図示のものでは、トランスファーテーブル3aで開口部が上向きの状態で供給されたプリフォームを上下反転させ下向き状態として加熱ステーション1に供給し、その後、トランスファーテーブル3bで再び上下反転させ上向き状態としブローステーション2へ供給するよう構成されている。
これらトランスファーテーブル3a、3b、3cに設けられるプリフォーム反転移送装置は、プリフォームを受け取り、あるいは受け渡しするステーションの運動に追従するように作動するものであり、いずれのプリフォーム反転移送装置も基本的に同じ構造である。よって、以下にはトランスファーテーブル3aに設けたものについて説明する。
【0011】
図2はトランスファーテーブル部分の正面図、図3はその平面図、図4はプリフォーム反転移送装置の正面図、図5はその側面図、図6はその平面図、図7はその底面図であり、図においてPはプリフォーム、4はプリフォーム反転移送装置である。このプリフォーム反転移送装置4は、図示のものではモータ等の駆動源Mによって等速回転されるトランスファーテーブル3aの外周部に4個設けられている。
【0012】
プリフォーム反転移送装置4は、トランスファーテーブルに2以上の水平回転運動の複合運動によりプリフォームを移送すべきステーションの回転運動に追従移送するためのカム式の追従移送機構を有する。
この追従移送機構は、第1のベース板5aがトランスファーテーブル3aに枢着部6aにより軸支されているとともに、該枢着部6aよりずれた位置にある第1のカムフォロアー7aがトランスファーテーブル3aの下面に形成された第1のカム溝8aに係合されて、トランスファーテーブル3aの回転に伴い独自の回転運動をする第1の揺動機構を有する。また、第2のベース板5bが第1のベース板5aに枢着部6bにより軸支されているとともに、第2のカムフォロアー7bがトランスファーテーブル3aの下面に形成された第2のカム溝8bに係合されて、トランスファーテーブル3aの回転に伴い更に独自の回転運動をする第2の揺動機構を有する。
【0013】
また、第2のベース板5bの先端にはプリフォームPを把持するためのチャック部9が設けられており、このチャック部9は、トランスファーテーブル3aの回転に伴う第1の揺動機構と第2の揺動機構の2つの水平回転運動の複合運動によって、プリフォームPを移送すべきステーション(図示のものでは加熱ステーション1)の回転運動に追従・移送するように構成されている。なお、このチャック部9の追従・移送の動きについては、カム溝8a、8bの軌跡の設計により任意に行うことができる。
この結果、チャック部9はトランスファーテーブル3aの回転に伴い移送すべきステーションの回転運動に追従・移送するように動くこととなる。
【0014】
更にプリフォーム反転移送装置4は、プリフォームPを上下に反転するカム式の反転機構を有する。
この反転機構は、図4に示されるように、第2のベース板5bに垂設した中心軸10と、この回りを自在に回転する回転体11と、これに直交する回転軸12を有し、この回転体11と回転軸12とを傘歯車13a、13bを介して連結し、この水平な回転軸12に設けた回転ブラケット14にチャック部9を取り付けた構造となっている。また、回転体11にはカムフォロアー15が垂設されている。
一方、トランスファーテーブル3aの下面には、プリフォームPの移送位置とほぼ直交する位置に前記カムフォロアー15と係合するカム16a、16bが設けられており、カムフォロアー15がカム16a、16bと係合することにより、回転体11が回動し、傘歯車13a、13bを介して回転軸12が回動し、この結果、回転ブラケット14とともにチャック部9が180度回転して上下反転するよう構成されている。
【0015】
なお、一対のカム16a、16bが設けられているのは、カム16aがチャック部9を180度回転させるためであり、またカム16bが上下反転したチャック部9を再び180度回転させて元の位置に戻すためである。
【0016】
次に、このように構成された装置の作動について説明する。
図1〜図3に示されるように、プリフォームPはシューター等によりトランスファーテーブル3aに順次供給され、チャック部9により首部が把持される。この時、プリフォームPは開口部が上向きの状態で把持される。トランスファーテーブル3aは等速で回転しており、加熱ステーション1の手前約90度の位置へくると、カムフォロアー15がカム16aに係合して反転機構のチャック部9が180度回転し、プリフォームPは開口部を下向きの状態とする。
【0017】
この状態で、トランスファーテーブル3aの受け渡し位置の近くまで進むと、該テーブルと同じ回転をしていた第1のベース板5aは、第1のカムフォロアー7aが第1のカム溝8aに案内されてトランスファーテーブル3aの回転に伴い独自の回転運動をすることとなる。一方、第2のベース板5bも第2のカムフォロアー7bが第2のカム溝8bに案内されて、トランスファーテーブル3aの回転に伴い更に独自の回転運動をすることとなる。
【0018】
この結果、第2のベース板5bの先端に設けられたチャック部9は、トランスファーテーブル3aの回転に伴う第1の揺動機構と第2の揺動機構の2つの水平回転運動の複合運動により、プリフォームPを移送する加熱ステーション1の回転運動に追従・移送するように動くこととなる。
図8は、プリフォーム反転移送装置の作動の軌跡を示す説明図であるが、チャック部9がプリフォームPを移送すべきステーションの回転運動に追従するように動くことが判る。即ち、トランスファーテーブル3aの回転に伴う第1の揺動機構と第2の揺動機構の2つの水平回転運動の複合運動により、チャック部9を移送すべきステーションの外周に沿うように前後動して確実に移送している。なお、図8においてS1は第1の揺動機構の軌跡、S2は第2の揺動機構の軌跡である。
プリフォームPの移送後は、カムフォロアー15がカム16bに係合して反転機構のチャック部9が180度回転し、再び元のポジッションに復帰する。
【0019】
なお、以上はプリフォーム反転移送装置4によりプリフォームPを加熱ステーション1に受け渡しする場合について説明したが、プリフォームPを加熱ステーション1からブローステーション2へ受け取り・受け渡しする場合や、更にプリフォームPをブローステーション2から受け取る場合も基本的な動きは同じである。
【0020】
以上の説明からも明らかなように、本発明は回転式テーブル式の加熱ステーション1とブローステーション2、およびプリフォームPを移送するトランスファーテーブル3a、3b、3cを備えたブロー成形装置であって、前記トランスファーテーブル3a、3b、3cに2以上の水平回転運動の複合運動によりプリフォームPを受け取り、あるいは受け渡しするステーションの回転運動に追従するように移送するカム式の追従移送機構と、プリフォームPを上下に反転するカム式の反転機構とを有するプリフォーム反転移送装置4を設けたものとすることにより、、部品点数の少ない簡単なカム式機構によりプリフォームPを上下に反転しつつ移送すべきステーションの回転運動に追従して確実に移送することができることとなる。しかも、トランスファーテーブル3a、3b、3cは極力小さな直径のテーブルとすることができるためブロー装置全体を小型で低コストなものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態を示す概略の全体図である。
【図2】トランスファーテーブル部分の正面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】プリフォーム反転移送装置の正面図である。
【図5】図4の側面図である。
【図6】図4の平面図である。
【図7】図4の底面図である。
【図8】プリフォーム反転移送装置の作動の軌跡を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 加熱ステーション
2 ブローステーション
3a トランスファーテーブル
3b トランスファーテーブル
3c トランスファーテーブル
4 プリフォーム反転移送装置
5a 第1のベース板
5b 第2のベース板
6a 枢着部
6b 枢着部
7a 第1のカムフォロアー
7b 第2のカムフォロアー
8a 第1のカム溝
8b 第2のカム溝
9 チャック部
10 中心軸
11 回転体
12 回転軸
13a 傘歯車
13b 傘歯車
14 回転ブラケット
15 カムフォロアー
16a カム
16b カム
P プリフォーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式テーブル式の加熱ステーションとブローステーション、および加熱ステーションへプリフォームを受け渡しするトランスファーテーブルと加熱ステーションからブローステーションへプリフォームを受け取り・受け渡しするトランスファーテーブルとブローステーションからプリフォームを受け取りするトランスファーテーブルを備えたブロー成形装置であって、前記トランスファーテーブルに2以上の水平回転運動の複合運動によりプリフォームを受け取り、あるいは受け渡しするステーションの回転運動に追従するように移送するカム式の追従移送機構と、プリフォームを上下に反転するカム式の反転機構とを有するプリフォーム反転移送装置を設けたことを特徴とするブロー成形装置。
【請求項2】
追従移送機構は、第1のベース板がトランスファーテーブルに枢着部により軸支されているとともに、該枢着部よりずれた位置にある第1のカムフォロアーがトランスファーテーブルに形成された第1のカム溝に係合されて、トランスファーテーブルの回転に伴い独自の回転運動をする第1の揺動機構と、第2のベース板が第1のベース板に枢着部により軸支されているとともに、第2のカムフォロアーがトランスファーテーブルに形成された第2のカム溝に係合されて、トランスファーテーブルの回転に伴い更に独自の回転運動をする第2の揺動機構を有するものである請求項1に記載のブロー成形装置。
【請求項3】
反転移送機構は、第2のベース板に垂設した中心軸と、この回りを自在に回転する回転体と、これに直交する回転軸を有し、この回転体と回転軸とを傘歯車を介して連結し、この水平な回転軸に設けた回転ブラケットにチャック部を取り付けたものである請求項1または2に記載のブロー成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−130755(P2006−130755A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321512(P2004−321512)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000198477)石塚硝子株式会社 (77)
【Fターム(参考)】