説明

ブーツバンド

【課題】弾性率が高い材料で構成されているブーツに対しても締め付け量の管理が簡単でしかも安定したシール効果を発揮することが可能なブーツバンドを提供する。
【解決手段】リング体からなり、ブーツ2の装着部5に外嵌した状態で縮径させることによって、ブーツ2の装着部5を締め付けるブーツバンドである。無端リングの金属製バンド本体10と、金属製バンド本体10とブーツ2の装着部5との間に介在される弾性材層11とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーツバンドに関し、特に等速自在継手用ブーツバンドに関する。
【背景技術】
【0002】
等速自在継手にはボールタイプとトリポードタイプとがある。ボールタイプは、外側継手部材を構成する外輪と、内側継手部材を構成する内輪と、外輪と内輪との間に介在されるトルク伝達部材としてのボールと、ボールを保持する保持器等で構成されるボールとを備える。また、トリポードタイプは、外側継手部材を構成する外輪と、内側継手部材を構成するトラニオンと、このトラニオンに付設されるトルク伝達部材としてのローラとを備える。
【0003】
両タイプとも、継手内部にはグリース等の潤滑剤が充填される。このため、潤滑剤の外部への流出及び継手内部への水等の侵入を防止するために、ブーツが装着される。
【0004】
すなわち、ボールタイプは、図6に示すように、内周面に複数のトラック溝112を形成した外側継手部材としての外輪111と、外周面に複数のトラック溝114を形成した内側継手部材としての内輪113と、外輪111のトラック溝112と内輪113のトラック溝114とで協働して形成されるボールトラックに配された複数のボール115と、ボール115を収容するためのポケット116aを有するケージ116とで主要部が構成されている。内輪113の内周には、セレーションやスプライン等のトルク伝達手段を介してシャフト117が連結される。
【0005】
また、このような等速自在継手に装着されるブーツ100は、小径部101と、大径部102と、小径部101と大径部102とを連結する蛇腹部106とを備える。蛇腹部106は、谷部104と山部105とが交互に形成されてなる。そして、ブーツ100の大径部102が、等速自在継手の外輪111の開口部に外嵌された状態でブーツバンド108が締め付けられて、外輪111に固定される。また、ブーツ100の小径部101は、シャフト117の被取付部120に外嵌された状態でブーツバンド108が締め付けられて、シャフト117に固定される。
【0006】
ブーツバンドには、いわゆるΩバンドと呼ばれる突起部を有するバンドがある(特許文献1)。このバンドは、突起部を冶具にて挟み込むように加締めることで円周方向に収縮させ、ブーツをシャフト及び外輪のような固定部品に固定するのに必要な締め付け力を得ている。この際、突起部はバンド円周方向に対して、バネのような役割をしてバンドに柔軟性を与えるため、バンド締め付け力の安定に貢献している。
【0007】
ブーツバンドには、突起無し金属バンド(以下、突起無し収縮バンド)も用いられている。この突起無し収縮バンドの材質は、鉄またはアルミが一般的に使用されており、特許文献2に記載のように継ぎ目のないものと、特許文献3に記載のように板材の先端を鍵状にして接合したものとが存在する。この突起無し金属バンドは一般的に加締め冶具にて全体を縮径させて、ブーツを締め付ける。このとき、突起無し収縮バンドによるブーツの締め付け力は、縮径した際のバンドの弾性変形量に起因する張力と、ブーツ材が収縮させられた分の弾性変形による径方向への膨張する力により決まる。
【0008】
すなわち、突起無し収縮バンドを用いてブーツを取り付ける場合、バンドを縮径冶具にて縮径させる。ここで、バンドの縮径量に応じて、ブーツが塑性変形および弾性変形し、その弾性変形量の分だけ、ブーツからの反発力が得られ、その力によりブーツがバンド 及び ブーツを固定する部品を押すことにより、それぞれが互いに密着し、シール性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平4−65250号公報
【特許文献2】特開2006−105176号公報
【特許文献3】特開2005−96450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載のように突起部を有するものでは、突起部が最大径部となり、コンパクト化を達成するのが困難である。また、突起無し収縮バンドを用いてブーツを取り付ける場合、ブーツが樹脂材料であれば、樹脂は弾性率が高い(硬い)ため、僅かな変形をさせるだけでも大きな荷重が必要となる。このため、弾性率の高いブーツには、径方向の締め付け量の僅かな誤差に対して、締め付け力が大きく変化するので、締め付け量の管理を必要とし、バンド締め付け装置の制御に精度が必要となる。特に、突起無し収縮バンドの場合は、突起有バンドの突起部のようにバネの役割を果たす部分がなく、弾性率の高いバンド部材の径方向の弾性変形量にてバネの役割を担わなければならないため、バンド自体に柔軟性を持たせ難い。そして、結果としてブーツが経年劣化等により弾性変形していた部分に永久変形(へたり)が生じた場合、密着性が低下することから、初期の締め付け力の管理をより精度良くする必要がある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みて、弾性率が高い材料で構成されているブーツに対しても締め付け量の管理が簡単でしかも安定したシール効果を発揮することが可能なブーツバンドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のブーツバンドは、リング体からなり、ブーツの装着部に外嵌した状態で縮径させることによって、ブーツの装着部を締め付けるブーツバンドであって、無端リングの金属製バンド本体と、この金属製バンド本体と前記ブーツの装着部との間に介在される弾性材層とからなるものである。
【0013】
本発明のブーツバンドによれば、金属製バンド本体と前記ブーツの装着部との間に弾性材層が介在されるので、バンドを縮径させた際、この弾性材層は締め付け量に対して締め付け力が緩やかに変化する。この際、弾性材層がブーツと金属製バンド本体の間で縮径方向にバネのような役目を果たす。
【0014】
前記弾性材層は、金属製バンド本体の内周面全体に対応しているものとすることができる。このように、内周面全体に対応するものでは、バネの役割を安定して担うことができる。また、弾性材層は、金属製バンド本体の内周面の周方向に連続する複数の弾性リングを、金属製バンド本体の内周面の軸方向に沿って配設したものであってもよい。この場合であっても、バネの役割を安定して担うことができ、しかも、内周面全体に対応しているものに比べて弾性材層の材料が少なくて済む。
【0015】
金属製バンド本体と弾性材層とを一体化したものでは、金属製バンド本体と弾性材層とが分離せず、取り扱い性に優れる。また、金属製バンド本体と弾性材層との加硫一体成形品にて構成できる。
【0016】
金属製バンド本体と弾性材層とは自由状態で分離しており、締め付け状態で、金属製バンド本体とブーツの装着部との間で挟持されるものであってもよい。このように分離されているものでは、金属製バンド本体と弾性材層とをそれぞれ別個に成形することになる。
【0017】
弾性材層を構成する弾性材の弾性率を、金属製バンド本体よりも小さく、ブーツ材料よりも大きくするのが好ましい。これによって、弾性材層が金属製バンド本体よりも弾性変形しやすくなるとともに、ブーツよりも弾性変形し難くなる。
【0018】
前記ブーツが樹脂製ブーツであっても、ゴム製ブーツであってもよい。ブーツの材料として、熱可塑性エラストマーなどの樹脂材料や、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、アクリルエチレンゴム等のゴム材料が使用されている。
【0019】
継ぎ目を有さないリング体から構成しても、継ぎ目を有するリング体から構成してもよい。すなわち、継ぎ目を有さないものであっても、継ぎ目を有するものであっても、無端リングを構成することができるからである。
【発明の効果】
【0020】
本発明のブーツバンドでは、バンドを縮径させた際、この弾性材層は締め付け量に対して締め付け力が緩やかに変化し、締め付け量の管理=締め付け力の管理が容易となる。この際、弾性材層がブーツとバンドの間で縮径方向にバネのような役目を果たすため、ブーツが経年劣化した場合も、このバネの効果で密着性が確保できるのでシール性の低下を防ぐことができる。
【0021】
すなわち、本発明にかかるブーツバンドを用いれば、Ωバンドと称されるブーツバンドのような突起部を設けることなく、コンパクト化を図ることができ、しかも、締め付け量の管理も容易であって、高精度なシール効果を発揮することができる。
【0022】
前記弾性材層が金属製バンド本体の内周面全体に対応するものでは、密着性の向上を図ることができ、高精度のシール性を発揮することができる。また、複数の弾性リングを金属製バンド本体の内周面の軸方向に沿って配設したものでも、安定したシール性が確保され、しかも弾性材層の材料が少なくて済み、低コストを達成できる。
【0023】
金属製バンド本体と弾性材層とが一体化されていれば、金属製バンド本体と弾性材層とが分離せず、取り扱い性に優れ、作業性の向上を図ることができる。また、金属製バンド本体と弾性材層とが一体化されているものを、加硫一体成形にて容易に製作できる。
【0024】
金属製バンド本体と弾性材層とが分離されているものでは、金属製バンド本体と弾性材層とをそれぞれ別個に成形することができ、成形しやすい利点がある。また、いずれか一方が損傷等した場合に、その損傷した部材のみを交換すればよく、コスト低減に寄与する。
【0025】
弾性材層を構成する弾性材の弾性率を、金属製バンド本体よりも小さく、ブーツ材料よりも大きいものでは、弾性材層がバンドよりも弾性変形し易くなる。このため、安定した密着性が確保でき、高精度のシール機能を発揮する。
【0026】
ブーツが樹脂製ブーツであってもゴム製ブーツであっても、本ブーツバンドを用いれば、安定したシール機能を発揮することができる。また、継ぎ目を有さないものであっても、継ぎ目を有するものであっても、無端リングを構成することができ、このブーツバンドは設計性に優れ、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態のブーツバンドの斜視図である。
【図2】前記図1のブーツバンドの側面図である。
【図3】前記図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】前記図1のブーツバンドを用いてブーツの装着部を締め付けている状態の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す要部拡大図である。
【図6】従来のブーツバンドにてブーツを等速自在継手に装着している状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0029】
図1と図2に本発明に係るブーツバンドを示し、このブーツバンド1は、図4に示すように、等速自在継手に装着されるブーツ2を固定するものである。このブーツ2は、図外の大径部と、小径部2bと、この大径部と小径部2bとを連結する蛇腹部2cとからなる。そして、小径部2bが、図外の等速自在継手の内側継手部材に嵌入固定されるシャフト3に装着される。すなわち、シャフト3には、一対の周方向凸条4,4が設けられたブーツ装着部5が設けられている。このブーツ装着部5にブーツ2の小径部2bが外嵌され、この外嵌された状態で、この小径部2bをブーツバンド1にて締め付けるものである。この場合、小径部2bの外周面には、ブーツバンド嵌合溝6が設けられ、この嵌合溝6にブーツバンド1が嵌合される。なお、大径部は、図外の等速自在継手の外側継手部材の開口部に外嵌されて、本発明のブーツバンド又は既存のブーツバンドを介して締め付けるものである。
【0030】
ブーツバンド1は、図1と図2に示すように、無端リングの金属製バンド本体10と、この金属製バンド本体10とブーツ2の装着部5との間に介在される弾性材層11とからなる。金属製バンド本体10は、その断面が扁平矩形体からなり、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属からなる。そして、弾性材層11も、その断面が扁平矩形体からなり、金属製バンド本体10の内周面に、内周面全体に対応して、一体接合されている。弾性材層11は、例えば、熱可塑性エラストマーや熱硬化性樹脂等、又はシリコーンゴム、ウレタンゴム等のゴムからなる。
【0031】
ブーツ2が樹脂製ブーツであっても、ゴム製ブーツであってもよい。すなわち、ブーツ2の材料として、熱可塑性エラストマーなどの樹脂材料や、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、アクリルエチレンゴム等のゴム材料が使用される。
【0032】
弾性材層11を構成する弾性材の弾性率を、金属製バンド本体10よりも小さく、ブーツ材料よりも大きいものとする。この場合、金属製バンド本体10の肉厚T1(図3参照)及び弾性材層11の肉厚T2(図3参照)は、ブーツバンド1の外径寸法D、軸方向長さW、金属製バンド本体10の材質、及び弾性材層11等によって、種々変更できる。例えば、金属製バンド本体10の材質をアルミニウムとし、弾性材層11の材質を熱硬化性樹脂やシリコーンゴムとすることができる。
【0033】
この実施形態においては、金属製バンド本体10と弾性材層11とが一体化されているものである。このため、金属製バンド本体10と、弾性材層11を構成する樹脂リング体とをそれぞれ成形した後、金属製バンド本体10と樹脂リング体とを接合することによって一体化することができる。この場合、接着剤を用いて接着(接合)することができ、さらにはレーザー溶着接合法で接合することができる。
【0034】
接着剤を用いる場合、例えば、感熱性接着剤等の種々の既存のものを使用することができる。レーザー溶着接合法は、金属とプラスチックとを重ねて、そこにレーザー光を照射するだけで接合できる手法である。原理は、プラスチックのレーザー透過性や金属でも局所的に十分に過熱できるレーザー光の高パワー密度を利用し、プラスチック側、金属側のどちらかからレーザー光を照射し、金属材料と接している境界部のプラスチックを選択的に、溶融させて分解温度以上に急速に加熱し、その分解によって泡を発生させる。泡周辺部の高温の融液と金属表面に対して、高温・高圧の条件が実現され、ミクロンオーダで接合(ファンデルワールス力)された接合部が得られる。このため、レーザー溶着接合法は、金属材料と樹脂材料とを、樹脂材料表面側からレーザー光を照射することで生じる物理的相互作用により、接合するものである。ここで、物理的相互作用とは分子間(引)力といわれるもので、あらゆる分子の間の引き合う力(ファンデルワールス力)をいい、二次結合力ともいう。
【0035】
また、別途、弾性材層11を構成する樹脂リング体を成形することなく、金属製バンド本体10の内周面に樹脂をコーティングすることによって、金属製バンド本体10の内周面に弾性材層11を成形するようにしてもよい。弾性材層11がゴム材料の場合、金属製バンド本体10と弾性材層11とが加硫一体成形にて一体化される加硫一体成形品としてもよい。
【0036】
次に、前記したように構成されたブーツバンド1を使用して、ブーツ2の小径部2bをブーツバンド1にて締め付ける方法を説明する。まず、シャフト3のブーツ装着部5にブーツ2の小径部2bを外嵌した状態とする。そして、小径部2bのブーツバンド嵌合溝6にブーツバンド1を遊嵌状に嵌合させる。この場合、ブーツバンド1をブーツバンド嵌合溝6に嵌合させた後、このブーツ2の小径部2bをブーツ装着部5に外嵌させても、小径部2bをブーツ装着部5に外嵌させた後、ブーツバンド1をブーツバンド嵌合溝6に嵌合させてもよい。
【0037】
このように、小径部2bのブーツバンド嵌合溝6に遊嵌状に嵌合させたブーツバンド1を、図示省略の加締装置等で縮径する。これによって、ブーツ2の小径部2bをブーツ装着部5に締め付けることができる。
【0038】
金属製バンド本体10とブーツ2の装着部5との間に弾性材層11が介在されるので、バンド1を縮径させた際、この弾性材層11は締め付け量に対して締め付け力が緩やかに変化する。このため、締め付け量の管理(締め付け力の管理)が容易となる。この際、弾性材層11がブーツ2と金属製バンド本体10の間で縮径方向にバネのような役目を果たす。このため、ブーツ2が経年劣化した場合も、このバネの効果で密着性が確保できるのでシール性の低下を防ぐことができる。
【0039】
すなわち、本発明にかかるブーツバンド1を用いれば、Ωバンドと称されるブーツバンドのような突起部を設けることなく、コンパクト化を図ることができ、しかも、締め付け量の管理も容易であって、高精度なシール効果を発揮することができる。
【0040】
前記弾性材層11が金属製バンド本体10の内周面全体に対応するので、密着性の向上を図ることができ、高精度のシール性を発揮することができる。また、金属製バンド本体10と弾性材層11とが一体化されているので、金属製バンド本体10と弾性材層11とが分離せず、取り扱い性に優れ、作業性の向上を図ることができる。また、金属製バンド本体10と弾性材層11とが一体化されているものを、加硫一体成形にて容易に製作でき、コスト低減を図ることができる。
【0041】
弾性材層11を構成する弾性材の弾性率を、金属製バンド本体10よりも小さく、ブーツ材料よりも大きいものとしているので、弾性材層11が金属製バンド本体10よりも弾性変形し易くなる。このため、安定した密着性が確保でき、高精度のシール機能を発揮する。すなわち、弾性率が高いブーツ2であっても、締め付け量の管理が容易であって、高精度なシール効果を発揮することができる。このため、ブーツ2が樹脂製ブーツであってもゴム製ブーツであっても、本ブーツバンドを用いれば、安定したシール機能を発揮することができる。
【0042】
次に、図5は他の実施形態を示し、この場合、金属製バンド本体10の内周面の周方向に連続する複数(図例では3本)の弾性リング15を、金属製バンド本体10の内周面の軸方向に沿って配設することによって、弾性材層11を構成している。すなわち、弾性リング15はその断面形状が正方形とされ、軸方向中央部の第1の弾性リング15aと、軸方向一端部の第2の弾性リング15bと、軸方向他端部の第3の弾性リング15cとを備える。このため、第1の弾性リング15aと第2の弾性リング15bとの間、及び第1の弾性リング15aと第3の弾性リング15cとの間に、それぞれ所定寸の隙間16、16が設けられている。
【0043】
この金属製バンド本体10は、前記図1のブーツバンド1の金属製バンド本体10と同様の材質のものが用いられ、また、弾性リング15も、前記図1のブーツバンド1の弾性材層11を構成する材質のものが用いられる。この場合も、金属製バンド本体10と弾性材層11とを、接着剤を用いた接合方法やレーザー溶着接合法で接合することができる。さらには、金属製バンド本体10の内周面に樹脂をコーティングするものであっても、金属製バンド本体10と弾性リング15とが加硫一体成形にて一体化される加硫一体成形品であってもよい。
【0044】
金属製バンド本体10の肉厚T1、弾性リング15の肉厚T3、弾性リング15の幅寸法W1は、ブーツバンド1の外径寸法D、軸方向長さW、金属製バンド本体10の材質、及び弾性リング15の材質等によって、種々変更できる。
【0045】
このようなブーツバンド1であっても、バンド1を縮径させた際、この弾性材層11は締め付け量に対して締め付け力が緩やかに変化する。しかも、弾性材層11がブーツ2と金属製バンド本体10の間で縮径方向にバネのような役目を果たす。このため、この図5に示すブーツバンド1であっても、前記図1に示すブーツバンド1と同様の作用効果を奏する。しかも、内周面全体に対応しているものに比べて弾性材層11の材料が少なくて済み、コスト低減を図ることができる。
【0046】
ところで、前記実施形態では、ブーツバンド1は継ぎ目を有さないものであったが、ブーツバンド1として、継ぎ目を有するものであってもよい。継ぎ目を有さないブーツバンド1とは、少なくとも金属製バンド本体10が継ぎ目を有さないものである。このため、弾性材層11としては、継ぎ目を有さないものであっても、継ぎ目を有するものであってもよい。継ぎ目を有さない金属製バンド本体10の成形は、継ぎ目を有さないパイプ材を成形した後、所定寸に輪切りすればよい。また、このような金属製バンド本体10に対して、継ぎ目を有さない弾性材層11を接合したり、帯状の弾性材層を成形して、この帯状の弾性材層を金属製バンド本体10の内周面に沿って付設して、その端縁をつき合わせてリング状にしたりできる。
【0047】
継ぎ目を有するブーツバンド1は、帯状の所定寸の金属板を、円形に丸めて、その端部同士を接合して金属製バンド本体10を成形し、この金属製バンド本体10に対して、継ぎ目を有さない弾性材層11を接合したり、帯状の弾性材層11を成形して、この帯状の弾性材層を金属製バンド本体10の内周面に沿って付設して、その端縁をつき合わせてリング状にしたりすればよい。なお、帯状の所定寸の金属板の端部同士の接合は、たとえば、特開2005−96450号公報に記載のように、一方の端部に雄鍵部を設けるとともに、他方の端部に雌鍵部を設け、この金属板を円形に丸めて、雄鍵部と雌鍵部とを係合させればよい。継ぎ目を有するブーツバンド1では、裏面に弾性材層が付設された帯状の所定寸の金属板を成形し、この金属板を円形に丸めて、その端部同士を接合するようにしてもよい。
【0048】
このように継ぎ目を有するブーツバンド1であっても、継ぎ目を有さないブーツバンド1と同様、金属製バンド本体10は無端のリング体であって、外径側に突起を有さないものであり、しかも、自由状態から加締装置等で縮径させることができる。このため、継ぎ目を有するブーツバンド1であっても、継ぎ目を有さないブーツバンド1と同様の作用効果を奏する。また、継ぎ目を有さないものであっても、継ぎ目を有するものであっても、無端リングを構成することができる。このため、このブーツバンド1は設計性に優れ、生産性の向上を図ることができる。
【0049】
なお、継ぎ目を有するブーツバンド1であっても、図1に示すように、弾性材層11が金属製バンド本体10の内周面全体に対応するものであっても、図5に示すように、金属製バンド本体10の内周面の周方向に連続する複数の弾性リング15を、金属製バンド本体10の内周面の軸方向に沿って配設するものであってもよい。
【0050】
前記各実施形態では、金属製バンド本体10と弾性材層11とが一体化されたものであったが、金属製バンド本体10と弾性材層11とが分離しているものであってもよい。この場合、締め付け状態で、弾性材層11が金属製バンド本体10とブーツ2の装着部5との間で挟持されることになる。
【0051】
このように、締め付け前の自由状態で、金属製バンド本体10と弾性材層11とが分離していても、バンドを縮径させた際、この弾性材層11は締め付け量に対して締め付け力が緩やかに変化する。しかも、弾性材層11がブーツ2と金属製バンド本体10の間で縮径方向にバネのような役目を果たす。このため、この図5に示すブーツバンド1であっても、前記図1に示すブーツバンド1と同様の作用効果を奏する。
【0052】
この場合、金属製バンド本体10と弾性材層11とをそれぞれ別個に成形することができ、成形しやすい利点がある。また、いずれか一方が損傷等した場合に、その損傷した部材のみを交換すればよく、コスト低減に寄与する。
【0053】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、図5に示すように、複数の弾性リング15を配設するものでは、その数の増減は任意であるが、少なくとも、軸方向両端部に配設される2本があればよい。また、弾性材層11は、締め付け量に対して締め付け力が緩やかに変化し、しかも、ブーツ2と金属製バンド本体10の間で縮径方向にバネのような役目を果たすことが可能な範囲で、前記したように、種々の樹脂材料及びゴム材料にて構成することができる。この場合、締め付け力が経年劣化により緩くなりシール性が低下するのを防ぐために、熱硬化性樹脂等のように耐熱性に優れたものを用いるのが好ましい。なお、このブーツバンドを用いる等速自在継手は、固定型等速自在継手であっても、摺動型等速自在継手であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
2 ブーツ
5 ブーツ装着部
10 金属製バンド本体
11 弾性材層
15 弾性リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング体からなり、ブーツの装着部に外嵌した状態で縮径させることによって、ブーツの装着部を締め付けるブーツバンドであって、
無端リングの金属製バンド本体と、この金属製バンド本体と前記ブーツの装着部との間に介在される弾性材層とからなることを特徴とするブーツバンド。
【請求項2】
前記弾性材層は、金属製バンド本体の内周面全体に対応していることを特徴とする請求項1に記載のブーツバンド。
【請求項3】
前記弾性材層は、金属製バンド本体の内周面の周方向に連続する複数の弾性リングを、金属製バンド本体の内周面の軸方向に沿って配設したことを特徴とする請求項1に記載のブーツバンド。
【請求項4】
金属製バンド本体と弾性材層とが一体化されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のブーツバンド。
【請求項5】
金属製バンド本体と弾性材層との加硫一体成形品であることを特徴とする請求項4に記載のブーツバンド。
【請求項6】
金属製バンド本体と弾性材層とは自由状態で分離しており、締め付け状態で、金属製バンド本体とブーツの装着部との間で挟持されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のブーツバンド。
【請求項7】
弾性材層を構成する弾性材の弾性率を、金属製バンド本体よりも小さく、ブーツ材料よりも大きくしたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のブーツバンド。
【請求項8】
前記ブーツが樹脂製ブーツであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のブーツバンド。
【請求項9】
前記ブーツがゴム製ブーツであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のブーツバンド。
【請求項10】
継ぎ目を有さないリング体からなることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のブーツバンド。
【請求項11】
継ぎ目を有するリング体からなることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のブーツバンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−261561(P2010−261561A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114750(P2009−114750)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】