説明

プッシュスイッチ及びその製造方法

【課題】プッシュスイッチの防水性を高めると共に生産性を向上することができるプッシュスイッチを提供する。
【解決手段】キャップ形状の上部操作部11と、前記上部操作部11の開口端から側方に延びて形成された平坦部14と、前記平坦部14の外縁から下方へ向けて延びて形成された側壁15とを有する軟質材料のボタン10と、前記ボタン10の平坦部14の下面14Bに当接し、前記側壁15内周に密着して装着されたスイッチ基板20と、前記スイッチ基板20上にあって前記ボタン10内に配置されたスイッチ30と、を備え、前記ボタン10の側壁15の外周面と前記スイッチ基板の下面20Aは、一体成形された硬質樹脂で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプッシュスイッチとして、例えば、車載用に用いられ外部から押圧操作するスイッチ操作装置がある(特許文献1)。このプッシュスイッチは、図10(a)、図10(b)に示すように、硬質樹脂製のスイッチケース101と、軟質樹脂製のスイッチボタン部102と、スイッチ本体部107を有する。
【0003】
このスイッチケース101は、スイッチボタン部102を収容するように内側に空間を有する直方体のボックスとして形成され、スイッチボタン部102の内側に、スイッチ本体部107が組み付けられ、熱硬化樹脂111がスイッチケース101の内側に塗布される。この熱硬化樹脂111により、スイッチ本体部107がスイッチケース101やスイッチボタン部102に強固に固定できると共に、スイッチ本体部107の防水保護ができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−10360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スイッチケース本体の内側に樹脂を塗布する方法では、スイッチケースの内側に隙間なく充填することが困難であり樹脂とスイッチケース内側との間に隙間が生じる可能性がある。すると、水滴がスイッチケース下部に付着した場合、この水滴がスイッチ本体部に侵入し、プッシュスイッチの防水性が低下する危険性がある。
また、熱硬化樹脂の塗布作業は多くの時間と熟練を要し、生産性が大幅に低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、プッシュスイッチの防水性を高めると共に生産性を向上することができるプッシュスイッチを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成すべく成された本発明の請求項1のプッシュスイッチは、
キャップ形状の上部操作部と、前記上部操作部の開口端から側方に延びて形成された平坦部と、前記平坦部の外縁から下方へ向けて延びて形成された側壁とを有する軟質材料のボタンと、
前記ボタンの平坦部の下面に当接し、前記側壁内周に密着して装着されたスイッチ基板と、
前記スイッチ基板上にあって前記ボタン内に配置されたスイッチと、を備え、
前記ボタンの側壁の外周面と前記スイッチ基板の下面あるいは下部は、一体成形された硬質樹脂で覆われていることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2の人体検知装置は、請求項1に記載のプッシュスイッチにおいて、
前記ボタンの側壁の下端は、前記スイッチ基板より下方に延出されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3は、請求項1または請求項2に記載のプッシュスイッチを製造する方法であって、
前記スイッチを有する前記スイッチ基板を前記ボタン内に配置する工程と、
前記スイッチ基板を配置したボタンを成形金型にインサートして前記ボタンの側壁の外周面に外壁を一体成形する工程と、
前記外壁を一体成形したボタンを成形金型にインサートして前記スイッチ基板の下面に下壁を一体成形する工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4は、請求項1または請求項2に記載のプッシュスイッチを製造する方法であって、
前記スイッチを有する前記スイッチ基板を前記ボタン内に配置する工程と、
前記スイッチ基板を配置したボタンを成形金型にインサートして前記スイッチ基板の下面に第1下壁を一体成形する工程と、
前記第1下壁を一体成形したボタンを成形金型にインサートして前記ボタンの側壁の外周面と前記第1下壁の下面に外壁と第2下壁を一体成形する工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5は、請求項1または請求項2に記載のプッシュスイッチを製造する方法であって、
前記スイッチを有する前記スイッチ基板を前記ボタン内に配置する工程と、
前記ボタン内のスイッチ基板の下面にストッパを装着する工程と、
前記ストッパを装着したボタンを成形金型にインサートして前記ボタンの側壁の外周面と前記スイッチ基板の下部に外壁と下壁を一体成形する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ボタンの側壁の外周面とスイッチ基板の下面あるいは下部は、一体成形された硬質樹脂で覆われることにより、ボタン内が密封され確実に防水することのできると共に、従来例のように熱硬化樹脂を注入する作業が不要になり、組立作業時間が大幅に短縮され生産性が格段に向上するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプッシュスイッチの完成斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る図1の切断線A−Aの断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るプッシュスイッチの製造工程を示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態のプッシュスイッチの変形例である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るプッシュスイッチの断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るプッシュスイッチの製造工程を示す断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るプッシュスイッチの断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るプッシュスイッチの製造工程を示す断面図である。
【図9】本発明のボタンの変形例である。
【図10】(a)は、従来のプッシュスイッチの組立斜視図である。(b)は、スイッチボタン部の内側にスイッチ本体部が組み付けられた状態で、スイッチケースの下面から熱硬化樹脂を塗布する前の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るプッシュスイッチ1の完成斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る図1の切断線A−Aの断面図である。本実施形態のプッシュスイッチ1は、図2に示すように、ボタン10と、スイッチ基板20と、スイッチ30と、外壁40と、下壁50とを有する。
【0016】
本実施形態におけるプッシュスイッチ1は、図示しない車両用のドアハンドル装置の開口孔に装着される。ドアハンドル装置の開口孔にはプッシュスイッチ1のボタン10が外部に露出して取り付けられ、車両ユーザの指等によりボタン10が押圧されドアの施錠もしくは解錠ができるようになっている。
【0017】
ボタン10は、スイッチ30を覆うものであり、図2に示すように軟質樹脂により一体成形される。このボタン10は、ハンドル部材の開口孔からドアの外方に突出するキャップ形状の上部操作部11と、上部操作部11の下方に突出する押圧部12と、上部操作部11の開口端から側方に延びる平坦部14と、平坦部14の外縁から下方へ向けて延びる四角筒状の開口部13を有する側壁15を有する。ボタン10を構成する軟質樹脂は、シリコンゴムが好ましく、エラストマー樹脂や合成ゴムでもよい。また、上部操作部11のキャップ形状は、ドーム形状が好ましく、有底筒状であっても、有底四角形状であってもよい。
【0018】
スイッチ基板20は、スイッチ30を載置するものである。スイッチ基板20は、平面20Cを有する薄板のガラスエポキシ基板で形成される。スイッチ基板20の外形は、ボタン10の開口部13内形と略同一に形成される。このスイッチ基板20は、ボタン10内の平坦部の下面14Bに当接し、ボタン10の側壁15内周に密着して装着される。また、ボタン10の平坦部14の上面14Aとスイッチ基板の外周20Bは、スイッチ基板20の平面20Cと略直角方向で少なくとも一部が重なるように配置される。
【0019】
スイッチ30は、車両ユーザの施錠あるいは解錠の意思を電気信号に変換するものであり、スイッチ基板20上にあってボタン10内に配置される。スイッチ30は、操作部31と本体部32と図示しない端子を有する。このスイッチ30の操作部31は、ボタン10の押圧部12と対向配置される。
【0020】
スイッチ30の端子は、スイッチ基板20に半田付けにより接続される。スイッチ30の操作部31は、図2の上方に付勢され、操作部31が図2の下方に押圧されるとクリック感を得て図示しない接点間が導通し、操作部31の押圧力を除くと元の状態に戻り接点間が不導通となり、スイッチ30の開閉ができる。このスイッチ30の信号は、スイッチ基板20下面に取り付けられるリード線33を介して外部に伝達される。
【0021】
外壁40は、後述する図3のキャビティ型60Aとコア型61Aとを有する開閉可能な1次成形金型62Aにスイッチ基板20を含むボタン10がインサートされた状態で、ボタン10の側壁15の外周面に硬質樹脂で四角筒状に一体成形されるものである。外壁40の一端(図2の上端)は、ボタンの平坦部14と同一の高さに形成される。外壁40の他端(図2の下端)は、ボタン10の開口部13の開口端と同一の高さに形成される。本発明において、硬質樹脂は、一般的な熱可塑性樹脂がよく、より好ましくは、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)などがよい。この硬質樹脂は、熱硬化樹脂でもよい。
【0022】
下壁50は、後述する図3のキャビティ型60Bとコア型61Bとを有する開閉可能な2次成形金型62Bに上述の、スイッチ基板20を含むボタン10がインサートされた状態で、スイッチ基板の下面20Aに上述と同一の硬質樹脂で一体成形されたものである。この下壁の側面の下端部外周50Aは、図2に示す外壁の下端40Aと全周にわたり一体成形により連結(密着)される。これにより、外壁40と下壁50は、1つの樹脂成形体となり、ボタン10の側壁15外周面とスイッチ基板20下面は一体成形された硬質樹脂で覆われる。
【0023】
次に、本実施形態のプッシュスイッチ1を製造する方法を説明する。
図3(a)は、本発明の第1実施形態に係る1次成形金型にスイッチ基板を含むボタンを挿入した状態の断面図である。図3(b)は、本発明の第1実施形態に係る1次成形金型を閉じた状態の断面図である。図3(c)は、本発明の第1実施形態に係る1次成形金型に硬質樹脂が注入された状態の断面図である。図3(d)は、本発明の第1実施形態に係る2次成形金型に図3(c)のボタンを挿入した状態の断面図である。図3(e)は、本発明の第1実施形態に係る2次成形金型を閉じた状態の断面図である。図3(f)は、本発明の第1実施形態に係る2次成形金型に硬質樹脂が注入された状態の断面図である。
【0024】
まず、リード線33が、スイッチ30を有するスイッチ基板20に半田付けされる。その後、スイッチ30を有するスイッチ基板20がボタン10内に配置される。このボタン10は、キャビティ型60Aとコア型61Aとを有する開閉可能な1次成形金型62Aにインサートされる(図3(a)参照)。このキャビティ型の凹部60A1の下面は、ボタン10の上部操作部11と同一形状に形成され、キャビティ型の凹部60A1の内側面は、ボタンの側壁15の外周面より大きく形成されている。
【0025】
また、ボタン10の上部操作部11がキャビティ型の凹部60A1下面に装着された際(図3(a)参照)、キャビティ型の凹部60A1の高さ(深さ)は、ボタン10の側壁15と同じ高さに形成される。また、コア型61Aには、ボタン10の開口部13内形より若干小さい外形を持つ凸形状61A1が設けられ、1次成形金型62Aが閉じると、凸形状61A1先端はスイッチ基板の下面20Aに当接し押圧する。
【0026】
1次成形金型62Aが閉じると(図3(b)参照)、コア型61Aの凸形状61A1がボタン10の開口部13に挿入された状態で、溶融した硬質樹脂がキャビティ型の凹部60A1の内側面とボタン10の側壁15との間に注入され(図3(c)参照)、ボタン10の側壁15の外周面に外壁40が一体成形される(1次成形)。
【0027】
次に、外壁40を一体成形されたボタン10は、キャビティ型60Bとコア型61Bを有する開閉可能な2次成形金型62Bにインサートされる(図3(d)参照)。このキャビティ型の凹部60B1の下面は、ボタン10の上部操作部11と同一形状に形成され、このキャビティ型の凹部60B1の内側面は、ボタン10に設けられた外壁40と略同一に形成される。また、ボタン10の上部操作部11がキャビティ型の凹部60B1下面に装着された際(図3(d)参照)、キャビティ型の凹部60B1の高さ(深さ)は、ボタン10の側壁15より高く形成される。また、コア型61Bのキャビティ型60Bと接する面は、平面となっている。
【0028】
そして、2次成形金型62Bが閉じた状態で(図3(e)参照)、溶融した上述と同一の硬質樹脂がボタン10内に注入されて、下壁50がスイッチ基板の下面20Aに一体成形され(2次成形)、下壁の側面の下端部外周50Aが外壁40の下端40Aと連結され(図2参照)、プッシュスイッチ1が完成する(図3(f)参照)。
【0029】
このように構成された本実施形態のプッシュスイッチは、ボタンの下部に水滴が付着したことによる防水性の低下や熱硬化樹脂の塗布作業による生産性の低下を一挙に解決できるものである。
すなわち、本実施形態によれば、ボタン10の側壁15の外周面とスイッチ基板の下面20Aは、一体成形された硬質樹脂で覆われていることにより、従来例のように隙間が生じることはなくスイッチ30が配されているキャップ形状の上部操作部11の内部空間が硬質樹脂で確実に密封されるため、水滴がプッシュスイッチに付着しても、水滴がボタン内側を通ってスイッチに付着することがなく、確実に防水することのできる高信頼性のプッシュスイッチとなる。
【0030】
また、ボタン10の側壁15の外周面とスイッチ基板の下面20Aは、硬質樹脂により覆われているため、従来例のように熱硬化樹脂を注入する作業が不要になり、組立作業時間が大幅に短縮され生産性が格段に向上するものである。
【0031】
また、ボタン10は、キャップ形状の上部操作部11と、上部操作部11の開口端から側方に延びて形成される平坦部14と、平坦部14の外縁から下方へ向けて延びて形成される側壁15とを有し、スイッチ基板20は、ボタン10の平坦部の下面14Bに当接し、ボタンの側壁内周に密着して装着されている。
このように構成すると、外壁の樹脂成形(1次成形)時に、成形金型が閉じると、コア型の凸形状61A1が、スイッチ基板を介してボタンの平坦部を変形させながら成形金型(キャビティ型)を押圧することにより、ボタンの平坦部の上面はキャビティ型を圧接する。よって、射出成形により高圧の溶融した樹脂がキャビティ型の凹部内側面とボタンの側壁との間に流れ込んだ際に、ボタンの平坦部の上面とキャビティ型との間に樹脂バリが発生することなく成形ができる。
また、下壁の樹脂成形(2次成形)時に、射出成形により高圧の溶融した樹脂がスイッチ基板の下面(ボタンの開口部内)に流れ込んだ際に、溶融した樹脂の圧力が、スイッチ基板を介してボタンの平坦部を変形させながら成形金型(キャビティ型)に加わるため、ボタンの平坦部の下面とスイッチ基板の外周が圧接されることにより、溶融した樹脂が上部操作部内に入り込むことがない。
したがって、再現性の高い成形を行うことができ、信頼性の高い防水のプッシュスイッチができる。
【0032】
また、ボタン10の側壁15の外周面には、硬質樹脂により一体成形される外壁40が設けられ、スイッチ基板の下面20Aには、上述と同一硬質樹脂により一体成形される下壁50が設けられ、下壁の側面の下端部の外周50Aは、外壁の下端40Aと連結される。このように成形すると、軟質樹脂のボタンの側壁が変形せずに成形ができ、さらに、外壁と下壁の硬質の成形樹脂が同一のものであるため、耐久試験(例えば、ヒートショック試験)が行われた場合でも、成形樹脂の熱膨張率が同一であり、成形樹脂が熱変形しても外壁と下壁との間に隙間が生じることがなく、より確実に防水することのできる高信頼性のプッシュスイッチとなる。
【0033】
また、本実施形態をより具体的に説明すると、ボタン10の側壁15の下端がスイッチ基板20より下方に延出され、スイッチ基板20は、ボタン10の開口部13に囲い包まれて形成される。よって、スイッチ基板の下面のボタンの開口部内に硬質樹脂が一体成形されることにより、下壁の側面は、ボタンの開口部内(側壁の内側面)と確実に密着でき、さらに防水性が高まると共に、ボタンの側壁が下壁と外壁により一体成形されて挟まれることにより軟質のボタンが確実に固定されものである。
【0034】
次に、図4は、本発明の第1実施形態のプッシュスイッチの変形例である。
図4に示すようにボタン10の側壁15外周面に設けられる外壁40Bの外周下端に切欠き40B1を設け、外壁40Bと下壁50外周との連結面積を多くして連結強度を高めてもよく、さらにまた確実に防水することのできる高信頼性のプッシュスイッチとなる。
【0035】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係るプッシュスイッチの断面図である。
図6(a)は、本発明の第2実施形態に係る1次成形金型にスイッチ基板を含むボタンを挿入した状態の断面図である。図6(b)は、本発明の第2実施形態に係る1次成形金型を閉じた状態の断面図である。図6(c)は、本発明の第2実施形態に係る1次成形金型に硬質樹脂が注入された状態の断面図である。図6(d)は、本発明の第2実施形態に係る2次成形金型に図6(c)のボタンを挿入した状態の断面図である。図6(e)は、本発明の第2実施形態に係る2次成形金型を閉じた状態の断面図である。図6(f)は、本発明の第2実施形態に係る2次成形金型に硬質樹脂が注入された状態の断面図である。図5、図6において第1実施形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0036】
本実施形態において第1実施形態と異なる点は、第1実施形態では、スイッチ基板20を配置するボタン10を1次成形金型62Aにインサートしてボタン10の側壁15外周面に外壁40を一体成形し、このボタン10を2次成形金型62Bにインサートしてスイッチ基板の下面20Aに下壁50を一体成形していたが、本実施形態では、スイッチ基板20を配置するボタン10を1次成形金型65Aにインサートしてスイッチ基板20の下面に第1下壁51を一体成形し、その後、第1下壁51を一体成形したボタン10を2次成形金型65Bにインサートしてボタン10の側壁15の外周面と第1下壁51の下面に外壁41と第2下壁51Aを一体成形する点である。
【0037】
すなわち、スイッチ基板の下面20Aには、硬質樹脂により一体成形される第1下壁51が設けられ、ボタン10の側壁15の外周面と第1下壁51の下面には、上述と同一の硬質樹脂により一体成形される外壁41と第2下壁51Aが設けられ、第2下壁51Aは、第1下壁51の下面に連結(密着)されて設けられるものである。
【0038】
次に、本実施形態のプッシュスイッチ1の組み立て手順を説明する。
まず、リード線33が、スイッチ30を有するスイッチ基板20に半田付けされる。その後、スイッチ30を有するスイッチ基板20がボタン10内に配置される。このボタン10は、キャビティ型63Aとコア型64Aとを有する開閉可能な1次成形金型65Aにインサートされる(図6(a)参照)。このキャビティ型の凹部63A1の下面は、ボタン10の上部操作部11と同一形状に形成され、このキャビティ型の凹部63A1の内側面は、ボタン10の側壁15の外周面と同一形状に形成される。
【0039】
また、ボタン10の上部操作部11がキャビティ型の凹部63A1下面に装着された際(図6(a)参照)、キャビティ型の凹部63A1の高さ(深さ)は、ボタン10の側壁15と同じ高さに形成される。また、コア型64Aのキャビティ型63Aと接する面は、平面となっている。
【0040】
そして、1次成形金型が閉じた状態で(図6(b)参照)、溶融した硬質樹脂がボタン10内に注入され(図6(c)参照)、第1下壁51がスイッチ基板の下面20Aに一体成形される(1次成形)。
【0041】
次に、第1下壁51を一体成形されたボタン10は、キャビティ型63Bとコア型64Bを有する開閉可能な2次成形金型65Bにインサートされる(図6(d)参照)。このキャビティ型の凹部63B1の下面は、ボタン10の上部操作部11と同一形状に形成され、このキャビティ型63Bの内側面は、ボタン10の側壁15より大きく形成される。また、ボタン10の上部操作部11がキャビティ型の凹部63B1下面に装着された際(図6(d)参照)、キャビティ型の凹部63B1の高さ(深さ)は、ボタン10の側壁15より高く形成される。また、コア型64Bには、2次成形金型65Bが閉じた際、第1下壁51の下面を押圧する押さえピン64B1が設けられる。
【0042】
そして、2次成形金型65Bが閉じた状態で(図6(e)参照)、溶融した上述と同一の硬質樹脂が、キャビティ型の凹部63B1の内側面とボタン10の側壁15との隙間と、第1下壁51とコア型64Bとの隙間に注入される。そして、外壁41と第2下壁51Aが、ボタン10の側壁15の外周面と第1下壁51の下面に一体成形され(2次成形)、プッシュスイッチ1が完成する(図6(f)参照)。なお、本実施形態のプッシュスイッチには押さえピンの跡51A1が形成されるが(図5参照)、このピンの跡51A1によりボタン内の防水性が低下することはない。
【0043】
このように第2実施形態でも、ボタン10の側壁15の外周面とスイッチ基板20の下面20Aは、一体成形された硬質樹脂で覆われていることにより、従来例のように隙間が生じることはなくスイッチ30が配されているキャップ形状の上部操作部11の内部空間が硬質樹脂で確実に密封されるため、水滴がプッシュスイッチに付着しても、水滴がボタン内側を通ってスイッチに付着することがなく、確実に防水することのできる高信頼性のプッシュスイッチとなる。
【0044】
また、ボタン10の側壁15の外周面とスイッチ基板の下面20Aは、硬質樹脂により覆われているため、従来例のように熱硬化樹脂を注入する作業が不要になり、組立作業時間が大幅に短縮され生産性が格段に向上するものである。
【0045】
また、ボタン10は、キャップ形状の上部操作部11と、上部操作部11の開口端から側方に延びて形成される平坦部14と、平坦部14の外縁から下方へ向けて延びて形成される側壁15とを有し、スイッチ基板20は、ボタン10の平坦部の下面14Bに当接し、ボタンの側壁内周に密着して装着されている。
このように構成すると、第1下壁の樹脂成形(1次成形)時に、射出成形により高圧の溶融した樹脂がスイッチ基板の下面(ボタンの開口部内)に流れ込んだ際に、溶融した樹脂の圧力が、スイッチ基板を介してボタンの平坦部を変形させながら成形金型(キャビティ型)に加わるため、ボタンの平坦部の下面とスイッチ基板の外周が圧接されることにより、溶融した樹脂が上部操作部内に入り込むことがない。
また、外壁と第2下壁の樹脂成形(2次成形)時に、成形金型が閉じると、押さえピンが、第1下壁を介してボタンの平坦部を変形させながら成形金型(キャビティ型)を押圧することにより、ボタンの平坦部の上面はキャビティ型を圧接する。よって、射出成形により高圧の溶融した樹脂がキャビティ型の凹部の内側面とボタンの側壁との間に流れ込んだ際に、ボタンの平坦部の上面とキャビティ型との間に樹脂バリが発生することなく成形ができる。
よって、再現性の高い成形を行うことができ、信頼性の高い防水のプッシュスイッチができる。
【0046】
また、本実施形態をより具体的に説明すると、ボタン10の側壁15の下端がスイッチ基板20より下方に延出され、スイッチ基板20は、ボタン10の開口部13に囲い包まれて形成される。よって、スイッチ基板の下面のボタンの開口部内に硬質樹脂が一体成形されることにより、第1下壁の側面は、ボタンの開口部内(側壁の内側面)と確実に密着でき、さらに防水性が高まると共に、ボタンの側壁が第1下壁と外壁により一体成形されて挟まれることにより軟質のボタンが確実に固定されものである。
【0047】
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態に係るプッシュスイッチの断面図である。
図8(a)は、本発明の第3実施形態に係る成形金型にスイッチ基板を有するボタンを挿入した状態の断面図である。図8(b)は、本発明の第3実施形態に係る成形金型を閉じた状態の断面図である。図8(c)は、本発明の第3実施形態に係る成形金型に硬質樹脂が注入された状態の断面図である。図7、図8において第1実施形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0048】
本実施形態において第1実施形態と異なる点は、第1実施形態では、スイッチ基板20を配置するボタン10を1次成形金型62Aにインサートしてボタン10の側壁15の外周面に外壁40を一体成形し、ボタン10を2次成形金型62Bにインサートしてスイッチ基板の下面20Aに下壁50を一体成形していたが、本実施形態では、スイッチ30を有するスイッチ基板20をボタン10内に配置し、このボタン10内のスイッチ基板の下面20Aにストッパ70を装着し、ストッパ70を装着したボタン10を成形金型にインサートしてボタン10の側壁15の外周面とストッパ70の下面(スイッチ基板20の下部)に外壁42と下壁52を一体成形する点である。
【0049】
次に、本実施形態のプッシュスイッチ1の組み立て手順を説明する。
まず、リード線33が、スイッチ30を有するスイッチ基板20に半田付けされる。その後、スイッチ30を有するスイッチ基板20がボタン10内に配置される。さらに、ボタン10のスイッチ基板20の下面には、有底四角筒状のストッパ70が装着され固定される。このストッパ70の外形は、ボタン10の側壁内形と略同一に形成される。また、ストッパ70の有底部がスイッチ基板の下面20Aに装着されると、このストッパ70によりボタン10の側壁15は、樹脂成形時にボタンの内側方向に変形しない。
【0050】
そして、ボタン10は、キャビティ型66とコア型67とを有する開閉可能な成形金型68にインサートされる(図8(a)参照)。このキャビティ型の凹部66Aの下面は、ボタン10の上部操作部11と同一形状に形成され、このキャビティ型の凹部66Aの内側面は、ボタン10の側壁15の外周面より大きく形成されている。また、コア型67のキャビティ型66と接する面は、平面になっている。
【0051】
また、ボタン10の上部操作部11がキャビティ型の凹部66A下面に装着された際(図8(a)参照)、キャビティ型の凹部66Aの高さ(深さ)は、ボタン10の側壁15より高く形成される。また、キャビティ型の凹部66Aの内側面には、凹部66A内に突出可能なボタンの側壁15の外周面と当接する突出ピン66Bが設けられている。この突出ピン66Bによりボタン10の側壁15は、樹脂成形時にボタンの外側方向に変形しない。そして、突出ピン66Bは、樹脂成形後に、凹部66Aの内側面内に戻ることができ、ボタン10は、キャビティ型66から取り出すことができる。
【0052】
そして、成形金型68が閉じて(図8(b)参照)、溶融した硬質樹脂が、キャビティ型の凹部66Aの内側面とボタン10の側壁15との隙間と、ストッパ70の下面とコア型67との隙間に注入され、外壁42と下壁52が、ボタン10の側壁15の外周面とストッパ70の下面に硬質樹脂で一体成形される。
【0053】
このように第3実施形態であっても、ボタン10の側壁15の外周面とストッパ70の下面(スイッチ基板の下部)は、硬質樹脂により覆われているため、従来例のように隙間が生じることはなくスイッチ30が配されているキャップ形状の上部操作部11の内部空間が硬質樹脂で確実に密封されるため、水滴がプッシュスイッチに付着しても、水滴がボタン内側を通ってスイッチに付着することがなく、確実に防水することのできる高信頼性のプッシュスイッチとなる。
【0054】
また、ボタン10の側壁15の外周面とストッパ70の下面(スイッチ基板20の下部)は、硬質樹脂により覆われているため、従来例のように熱硬化樹脂を注入する作業が不要になり、組立作業時間が大幅に短縮され生産性が格段に向上するものである。
【0055】
また、ボタン10は、キャップ形状の上部操作部11と、上部操作部11の開口端から側方に延びて形成される平坦部14と、平坦部14の外縁から下方へ向けて延びて形成される側壁15とを有し、スイッチ基板20は、ボタン10の平坦部の下面14Bに当接し、ボタンの側壁内周に密着して装着されている。
このように構成すると、外壁と下壁の樹脂成形時に、射出成形により高圧の溶融した樹脂がストッパの下面に流れ込んだ際に、溶融した樹脂の圧力が、ストッパを介しスイッチ基板を通じてボタンの平坦部を変形させながら成形金型(キャビティ型)に加わり、ボタンの平坦部の上面がキャビティ型を圧接する。よって、射出成形により高圧の溶融した樹脂がキャビティ型の凹部の内側面とボタンの側壁との間に流れ込んだ際に、ボタンの平坦部の上面とキャビティ型との間に樹脂バリが発生することなく成形ができる。したがって、再現性の高い成形を行うことができ、信頼性の高い防水のプッシュスイッチができる。
【0056】
また、本実施形態は、第1実施形態と第2実施形態に比べ、1つの成形金型で樹脂成形することができるため製造コストが大幅に低減できる。
【0057】
また、本実施形態をより具体的に説明すると、ボタン10の側壁15の下端がスイッチ基板20より下方に延出され、スイッチ基板20は、ボタン10の開口部13内に囲い包まれ、このボタン20内のスイッチ基板の下面には、ストッパ70が装着される。よって、ボタンが変形することなく樹脂成形ができる。
【0058】
なお、上述の説明では、スイッチ基板の外形は、ボタンの開口部内形と同一に形成され、スイッチ基板は、ボタン内の平坦部に当接して装着されていたが、図9に示すように、ボタン内周に溝16を設け、この溝16にスイッチ基板の外周が嵌合されるよう構成してもよい。このようにすると、樹脂成形時に溶融した樹脂がキャップ形状の上部操作部の内部空間に入り込むことがなく、非常に再現性の高い成形を行うことができ、より信頼性の高い防水のプッシュスイッチができる。
【0059】
また、上述のリード線は、キャビティ型あるいはコア型に有する図示しない逃がし溝に挿入された状態で、樹脂が一体成形される。よって、リード線は成形金型が閉じた状態でも押し潰れることはない。
【0060】
また、第1実施形態と第2実施形態の1次成形と2次成形では同じ硬質樹脂を用いて説明したが、第2実施形態の1次成形(第1下壁)と2次成形(外壁と第2下壁)は別々の硬質樹脂を用いてもよいものである。
【符号の説明】
【0061】
1 プッシュスイッチ
10 ボタン
11 上部操作部
12 押圧部
13 開口部
14 平坦部
14A 平坦部の上面
14B 平坦部の下面
15 側壁
16 溝
20 スイッチ基板
20A スイッチ基板の下面
20B スイッチ基板の外周
20C スイッチ基板の平面
30 スイッチ
31 操作部
32 本体部
33 リード線
40 外壁
40A 外壁の下端
40B 外壁
40B1 切り欠き
41 外壁
42 外壁
50 下壁
50A 下壁の側面の下端部外周
50B 下壁の側面
51 第1下壁
51A 第2下壁
51A1 押さえピンの跡
52 下壁
60A キャビティ型
60A1 キャビティ型の凹部
60B キャビティ型
60B1 キャビティ型の凹部
61A コア型
61A1 コア型の凸形状
61B コア型
62A 1次成形金型
62B 2次成形金型
63A キャビティ型
63A1 キャビティ型の凹部
63B キャビティ型
63B1 キャビティ型の凹部
64A コア型
64B コア型
64B1 コア型の押さえピン
65A 1次成形金型
65B 2次成形金型
66 キャビティ型
66A キャビティ型の凹部
66B 突出ピン
67 コア型
68 成形金型
70 ストッパ




















【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ形状の上部操作部と、前記上部操作部の開口端から側方に延びて形成された平坦部と、前記平坦部の外縁から下方へ向けて延びて形成された側壁とを有する軟質材料のボタンと、
前記ボタンの平坦部の下面に当接し、前記側壁内周に密着して装着されたスイッチ基板と、
前記スイッチ基板上にあって前記ボタン内に配置されたスイッチと、を備え、
前記ボタンの側壁の外周面と前記スイッチ基板の下面あるいは下部は、一体成形された硬質樹脂で覆われていることを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項2】
前記ボタンの側壁の下端は、前記スイッチ基板より下方に延出されていることを特徴とする請求項1に記載のプッシュスイッチ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプッシュスイッチを製造する方法であって、
前記スイッチを有する前記スイッチ基板を前記ボタン内に配置する工程と、
前記スイッチ基板を配置したボタンを成形金型にインサートして前記ボタンの側壁の外周面に外壁を一体成形する工程と、
前記外壁を一体成形したボタンを成形金型にインサートして前記スイッチ基板の下面に下壁を一体成形する工程と、を備えることを特徴とするプッシュスイッチの製造方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のプッシュスイッチを製造する方法であって、
前記スイッチを有する前記スイッチ基板を前記ボタン内に配置する工程と、
前記スイッチ基板を配置したボタンを成形金型にインサートして前記スイッチ基板の下面に第1下壁を一体成形する工程と、
前記第1下壁を一体成形したボタンを成形金型にインサートして前記ボタンの側壁の外周面と前記第1下壁の下面に外壁と第2下壁を一体成形する工程と、を備えることを特徴とするプッシュスイッチの製造方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のプッシュスイッチを製造する方法であって、
前記スイッチを有する前記スイッチ基板を前記ボタン内に配置する工程と、
前記ボタン内のスイッチ基板の下面にストッパを装着する工程と、
前記ストッパを装着したボタンを成形金型にインサートして前記ボタンの側壁の外周面と前記スイッチ基板の下部に外壁と下壁を一体成形する工程と、を備えることを特徴とするプッシュスイッチの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−134026(P2012−134026A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285481(P2010−285481)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000220125)東京パーツ工業株式会社 (122)
【Fターム(参考)】