説明

プッシュスイッチ

【課題】異常温度を検知してロック解除を行うとともに、各部材の組み付け不良を検出し得るように構成したプッシュスイッチを提供すること。
【解決手段】ベースハウジンク9に支持壁17bを設けるとともに、その基部Xを薄肉に構成する。支持壁17bにより板バネ13を支持し、板バネ13によりガイドピン11をハートカム21方向に付勢する。異常温度により支持壁17bが溶融して変形すると、板バネ13が遊動状態になり、ガイドピン11を付勢できなくなる。この結果、ガイドピン11とハートカム21の係合が解除され、スイッチノブ7がノブ用コイルバネ15の作用によりスイッチオフの位置に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチノブの押動操作によってスイッチ回路をオン状態及びオフ状態に切換制御するプッシュスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は従来のプッシュスイッチの一例を示すものであり、下記特許文献1に開示されている。
プッシュスイッチ51は、樹脂により成形されたハウジング52内にスイッチノブ53を摺動自在に装着し、ノブ用コイルバネ58によりスイッチオフの方向(図の上方)に付勢するとともに、ノブ用コイルバネ54の反発力に抗してスイッチノブ53を図の下方に押動することによりスイッチオンに切換えるものである。
【0003】
即ち、スイッチノブ53の一部であるカム板54にはカム溝55が設けられ、カム溝55に追従するピン56の一端56aはハウジング52に取り付けられている。そして、ピン56の他端に屈曲形成されたピン先端部56bとカム溝55に形成されたハート形状のハートカム57との係合によりスイッチノブ53をスイッチオン状態に保持するようになっている。
【0004】
一方、ハートカム57の下方には、ピン先端部56bに係止されてスイッチノブ53をアンロック状態に固定するアンロック用凹部であるカム溝が設けられている。そして、ピン先端部56bが、ハートカム57から離脱したときロック解除になってアンロック用凹部に位置決めされ、スイッチノブ53がノブ用コイルバネ58により上方に付勢されて元のスイッチオフ位置に復帰する。
【0005】
また、図9に示すようなプッシュスイッチも提案されている。
このプッシュスイッチ61は、ベースハウジング62に図9の上下方向に摺動自在にスイッチノブ63を装着するとともに、コイルバネ64によりスイッチオフの方向、即ち上方に付勢するようになっている。
【0006】
一方、ベースハウジング62には、スイッチノブ63に設けられたカム溝65に追従するガイドピン66が、板バネ67と樹脂壁68とで保持されている。そして、ガイドピン66と、特許文献1と同様の、カム溝65に形成されたハートカム69との係合により、スイッチノブ63をスイッチオン状態に保持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−161600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記2種のプッシュスイッチは、何れも下記のような問題点を有している。
即ち、プッシュスイッチの使用中において、不測の事態により異常発熱することがあった場合、前記構成にあっては異常発熱を検知してスイッチオフに切換える機能がなく、ハウジング等を構成する樹脂が熱により溶損してしまうことがあった。
また、スイッチのオン/オフ接触不良等があっても、気付かずにそのまま次工程に搬送してしまう、等の問題があった。
【0009】
本発明の目的は上記課題を解消することに係り、異常な高温になったとき、スイッチノブのオン状態を解除し得るように構成したプッシュスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の前記目的は、下記構成により達成される。
(1)筒状部を有するハウジングと、
前記筒状部内に摺動自在に装着されるスイッチノブと、
前記スイッチノブをスイッチオフ方向に付勢するとともに、前記スイッチノブが押動操作されたとき前記付勢に抗して前記スイッチノブをスイッチオン方向に摺動させることを許容するノブ用バネと、
前記スイッチノブがスイッチオフ位置で押動操作されたとき、当該スイッチノブをスイッチオン位置に案内するカム機構と、
前記スイッチノブがスイッチオン位置に案内されたとき、前記カム機構に係合して前記スイッチオン位置を保持するガイドピンと、
前記ガイドピンを前記カム機構に付勢する板バネと、
を備えたプッシュスイッチであって、
正常状態において前記板バネを支持し、異常発熱時に溶融して変形し前記板バネを遊動可能にさせることにより、前記板バネによる前記ガイドピンの付勢を解除せしめる支持壁が更に設けられ、
前記異常発熱時における前記支持壁の溶融により、前記スイッチノブのスイッチオン位置における前記ガイドピンによるロックが解除されることを特徴とするプッシュスイッチ。
【0011】
(2)前記ハウジングに前記スイッチノブを組み付けた状態で連通する開口部が、前記ハウジング及び前記スイッチノブにそれぞれ設けられ、連通した前記開口部に臨む位置に前記支持壁が設けられていることを特徴とする前記(1)に記載のプッシュスイッチ。
【0012】
(3)前記支持壁は、熱による溶融を促進するために少なくともその一部が薄肉に形成されていることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のプッシュスイッチ。
【0013】
前記(1)の構成によれば、異常発熱により前記支持壁が溶融するので、前記支持壁により支持されていた前記板バネが遊動状態になる。すると板バネは前記ガイドピンを付勢できなくなり、前記ガイドピンによる前記スイッチノブのロックが解除される。
【0014】
前記(2)の構成によれば、連通した前記開口部に臨む位置に前記支持壁が設けられているので、溶融した前記支持壁、遊動状態になった前記板バネ、前記板バネによる付勢が解除された前記ガイドピンが、前記開口部内に容易に移動する。
【0015】
前記(3)の構成によれば、前記支持壁の少なくとも一部が薄肉に形成されているので、異常発熱に対応して速やかに溶融するようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるプッシュスイッチは、異常な高温、例えばハウジングを構成する樹脂材料のガラス転位温度程度になった場合、板バネを支持している支持壁が溶融するので、支持壁により支持されていた板バネがガイドピンを付勢できなくなり、ガイドピンによるスイッチノブのスイッチオン位置におけるロックが解除され、通電が強制的に遮断される。
また、ハウジング等の樹脂材の溶損、発火を防止することができる。
【0017】
更に、既に異常により支持壁が溶融している場合、スイッチノブをスイッチオン位置にロックすることが不可能であるので、このような不良品のプッシュスイッチが正常部品に混じって製造ラインを流れても、導通検査時に不完全組み付けを検知することができ、不良品の次工程への搬送を阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態であるプッシュスイッチの構成を示す分解斜視図である。
【図2】プッシュスイッチの構成を示す斜視図である。
【図3】プッシュスイッチの構成を示す一側面図である。
【図4】スイッチノブのスイッチオフ状態を示すプッシュスイッチの側面図である。
【図5】スイッチノブのスイッチオン状態を示すプッシュスイッチの側面図である。
【図6】スイッチノブのスイッチオン状態における図3のA−A断面図である。
【図7】スイッチノブのスイッチオン状態におけるロック解除作用を示すプッシュスイッチの断面図である。
【図8】従来のプッシュスイッチの第1例を示す断面図である。
【図9】従来のプッシュスイッチの第2例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るプッシュスイッチの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態は、車両の室内用照明装置におけるプッシュスイッチである。
【0020】
図1に示すように、本実施形態におけるプッシュスイッチ1は、合成樹脂により成形したハウジング3と、ハウジング3内に設けた筒状部3a内に摺動可能に収容される案内筒体5と、案内筒体5内に設けた筒状部5a内に摺動可能に収容されるスイッチノブ7等を備えている。
【0021】
また、ハウジング3内には、図6及び図7に示すようにベースハウジング9が内装されるが、このベースハウジング9には、正常状態でスイッチノブ7をロックするとともに、高熱発生時にロック解除を行うガイドピン11、更にガイドピン11を押圧する板バネ13等が組み付けられる。板バネ13は、ベースハウジング9に設けた一対の支持壁17a,17bにより支持され、自己の弾性によりガイドピン11を矢印a(図1参照)方向に付勢するためのものである。
【0022】
そして、図6及び図7に示すように、支持壁17a,17bの基部Xは薄肉に形成されているが、常温では板バネ13の反力によって変形しないようになっている。しかし、異常温度、例えば支持壁17a,17bのガラス転位温度に達した場合は溶融してガイドピン11とともに、開口部3b,5bからハウジング3の外側に倒れ出るようになっている。
【0023】
なお、スイッチノブ7の下端にはノブ用コイルバネ15の一端が固定されている。このノブ用コイルバネ15は、自己の反発力によってスイッチノブ7全体を上方に付勢するためのものであるが、スイッチノブ7を手指によって押すことにより、スイッチノブ7全体を下方に押し下げることができる。そして、ベースハウジング9の略中央部は山形の係止部19に形成され、ノブ用コイルバネ15の下端を位置決めするようになっている。
【0024】
前記ハウジング3の一側面には開口部3bが形成され、案内筒部5に開口部5bが、スイッチノブ7にも開口部7bが形成されている。図2に示すように、ハウジング3に前記各部材を組み付けた状態では、図2、図4、図5等に示すように各開口部3b,5b,7bが連通するようになっている。
【0025】
また、スイッチノブ7に形成された開口部7bの内奥部には、図4、図5に示すようにハートカム21を含むカム機構が設けられている。なお、図4、図5では、カム機構とガイドピン11との関連を示すために板バネ13の図示を省略している。
【0026】
前記ハウジング3には、バルブ用ソケット23、不図示の電線を圧接させるための接続端子25が設けられている。また、スイッチノブ7の頂部には、不図示のキャップが被せられ、操作性及び美観を向上させるようになっている。
【0027】
前記各部材を組み付けることにより、図2及び図3に示すようなプッシュスイッチ1が構成される。
以下に、前記プッシュスイッチ1の作用を説明する。スイッチオフ状態時にはハートカム21が図4に示すように位置決めされ、ガイドピン11の摺動側端部11aはカム溝21aの下端側に位置決めされる。なお、ガイドピン11の固定側端部11bは、図6に実線で示すようにベースハウジング9の上部に位置決めされる。
【0028】
次に、スイッチノブ7を手指等により下方に押動すると、カム機構によりガイドピン11が図4、図5で反時計方向に回動し、ガイドピン11の摺動側端部11aがカム溝21aからハートカム21のカム溝21bに入り込み、スイッチノブ7がスイッチオン状態にロックされる。この状態で前記組み付けが正常であれば、パイロットランプ等が点灯する。
【0029】
一方、プッシュスイッチ1を使用中に不測の事態によりプッシュスイッチ1が異常な高温になった場合は、下記のような作用が行われる。
即ち、プッシュスイッチ1が異常な高温、例えば支持壁17a,17bを構成する材料のガラス転位温度程度に上昇すると、図6及び図7に示すように薄肉に形成されていた支持壁17a,17bの基部Xが溶融し、支持壁17a,17bが倒れるように変形することで板バネ13を支えていた力が解除されるので、支持壁17a,17b、板バネ13、ガイドピン11が想像線で示すようにハウジング3外に倒れ出る。
【0030】
この結果、ガイドピン11とカム溝21bとによるスイッチノブ7のスイッチオン状態でのロックが解除され、スイッチノブ7がノブ用コイルバネ15の反発力によって上方に押し上げられ、スイッチオフ状態になる。
【0031】
以上の如く、本実施形態におけるプッシュスイッチ1は、異常な温度を検知してスイッチノブ7のスイッチオン状態のロック解除を行うことができ、ハウジング3等の樹脂部材の溶融や発火等の事故を防止できる。
更に、各部材の組み付け不良も検知でき、不良品の検査漏れを防止できる。
【0032】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0033】
例えば、実施形態において、支持壁の厚さはガラス転位温度程度で溶融するように設定されているが、安全性向上のため更に低温で溶融するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 プッシュスイッチ
3 ハウジング
5 案内筒体
7 スイッチノブ
9 ベースハウジング
11 ガイドピン
13 板バネ
15 ノブ用コイルバネ
19 山型の係止部
21 ハートカム
21a,21b カム溝
23 バルブ用ソケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部を有するハウジングと、
前記筒状部内に摺動自在に装着されるスイッチノブと、
前記スイッチノブをスイッチオフ方向に付勢するとともに、前記スイッチノブが押動操作されたとき前記付勢に抗して前記スイッチノブをスイッチオン方向に摺動させることを許容するノブ用バネと、
前記スイッチノブがスイッチオフ位置で押動操作されたとき、当該スイッチノブをスイッチオン位置に案内するカム機構と、
前記スイッチノブがスイッチオン位置に案内されたとき、前記カム機構に係合して前記スイッチオン位置を保持するガイドピンと、
前記ガイドピンを前記カム機構に付勢する板バネと、
を備えたプッシュスイッチであって、
正常状態において前記板バネを支持し、異常発熱時に溶融して変形し前記板バネを遊動可能にさせることにより、前記板バネによる前記ガイドピンの付勢を解除せしめる支持壁が更に設けられ、
前記異常発熱時における前記支持壁の溶融により、前記スイッチノブのスイッチオン位置における前記ガイドピンによるロックが解除されることを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項2】
前記ハウジングに前記スイッチノブを組み付けた状態で連通する開口部が、前記ハウジング及び前記スイッチノブにそれぞれ設けられ、連通した前記開口部に臨む位置に前記支持壁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプッシュスイッチ。
【請求項3】
前記支持壁は、熱による溶融を促進するために少なくともその一部が薄肉に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプッシュスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−262822(P2010−262822A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112549(P2009−112549)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】