説明

プッシュスイッチ

【課題】クリック感を伴って動作するプッシュスイッチに関し、良好なクリック感触が得られ、かつ防滴が可能なものを実現することを目的とする。
【解決手段】上方開口の凹部内底面に中央固定接点2と外側固定接点3を備えたケース1の凹部内に、上方凸形の円形ドーム形状に形成された弾性金属薄板からなる可動接点6を収容し、下面に粘着剤が設けられ、PI樹脂、LCP樹脂、PEEK樹脂等の耐熱性を備えた絶縁フィルムからなる保護シート11が、ケース1の上面に粘着固定されて凹部を塞いでおり、その保護シート11を、気体は通すが液体は通さない微細貫通孔12が複数箇所に設けられたもので構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の操作部に用いられるプッシュスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の操作部には、押圧操作で軽快なクリック感を伴って動作するプッシュスイッチが多く用いられている。
【0003】
このような従来のプッシュスイッチについて、図5〜図7を用いて説明する。
【0004】
図5は従来のプッシュスイッチの断面図、図6は同分解斜視図、図7は同動作状態の断面図であり、同図において、1は上方開口の箱型をしたLCPやPPA等の耐熱性樹脂からなるケースで、開口の凹部内底面に中央固定接点2と外側固定接点3を電気的に独立状態で露出している。そして、そのケース1の対向する側壁のそれぞれから中央固定接点2および外側固定接点3のそれぞれと接続して、端子4および5が対になって突設されている。
【0005】
6は上方凸形の円形ドーム形状に形成された弾性金属薄板からなる可動接点で、外周端が外側固定接点3上に載置されて、ドーム形状中央部下面が中央固定接点2の上面と間隔を空けて対向している。
【0006】
7は下面に図示しない粘着剤が設けられ、PI樹脂、LCP樹脂、PEEK樹脂等の耐熱性を備えた絶縁フィルムからなる保護シートで、ケース1の凹部上面を覆って粘着されている。
【0007】
以上のように構成されたプッシュスイッチにおいて、次に動作を説明する。
【0008】
保護シート7の上方から可動接点6の中央部に押圧力を加え、その押圧力が所定の大きさを超えると図7に示すように、可動接点6がクリック感を伴って下方凸形に弾性反転し、ドーム形状中央部下面が中央固定接点2の上面に接触する。これにより、可動接点6を介して外側固定接点3と中央固定接点2との間が電気的に導通し、対応する端子4および5の間でスイッチオンとなる。
【0009】
そして、加えていた押圧力を解除すると、可動接点6がクリック感を伴って元の上方凸形のドーム形状に弾性復帰し、中央部下面が中央固定接点2から離れ、対応する端子4および5の間が絶縁状態となり、スイッチオフとなる。
【0010】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−63398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら上記従来のプッシュスイッチにおいては、保護シート7で覆われたケース1の凹部内の空気が密閉されており、押圧操作およびその解除操作によって、可動接点6のドーム形状を境とする下方空間と上方空間との間で空気の急速な移動が必要になるため、空気の移動による抵抗が影響してクリック感が鈍くなるという課題があった。
【0013】
また、保護シート7は可撓性を備えたものであるため、可動接点6が弾性反転した際に、ドーム形状の上方空間に移動する空気の圧力により保護シート7の粘着が弱い部分を剥がしてケース1の外方へ抜け出ることもあり、その場合は、次に押圧力が解除されて可動接点6が元の上方凸形に弾性復帰する際にドーム形状の下方空間に空気が引き込まれるため、外方と通じた隙間から水滴などの異物が内部に入って、接触不良を起こす要因となるという課題もあった。
【0014】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、良好なクリック感触が得られ、かつ防滴が可能なプッシュスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0016】
本発明の請求項1に記載の発明は、上方開口の凹部内底面に少なくとも2つの電気的に独立した固定接点を設けたケースと、押圧操作およびその解除操作によりクリック感を伴って上記固定接点間を接離する可動接点と、上記ケースの凹部上面を塞ぐ保護シートとを備えたプッシュスイッチであって、上記保護シートは、上下方向に直線的に貫通した気体は通すが液体は通さない微細貫通孔が設けられていることを特徴とするプッシュスイッチとしたものであり、可動接点の弾性反転および弾性復帰動作によるケース凹部内の空気の急速な移動に際し、保護シートの微細貫通孔を介して外方との空気の流出入が可能となるため、空気の急速な移動による抵抗が緩和されて、良好なクリック感触が得られ、かつ防滴が可能なプッシュスイッチを提供することができるという作用を有する。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、保護シートの微細貫通孔が、レーザー光により孔径が10μm〜50μmの大きさで加工形成されたものであることを特徴とするものであり、気体は通すが液体は通さない微細貫通孔を備えた保護シートを効率良く容易に安定して得ることができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、良好なクリック感触が得られ、かつ防滴が可能なプッシュスイッチを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態によるプッシュスイッチの外観図
【図2】同分解斜視図
【図3】同動作状態の断面図
【図4】保護シートの微細貫通孔の配置を変更したプッシュスイッチの上面図
【図5】従来のプッシュスイッチの断面図
【図6】同分解斜視図
【図7】同動作状態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて説明する。
【0021】
なお、従来の技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0022】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるプッシュスイッチの外観図、図2は同分解斜視図、図3は同動作状態の断面図であり、同図において、1は上方開口の箱状をしたLCPやPPA等の耐熱性樹脂からなるケースで、開口の凹部内底面の中央に中央固定接点2を備え、その中央固定接点2を中心とした点対称位置の2ヶ所に外側固定接点3を備えており、中央固定接点2と外側固定接点3とは電気的に独立している。そして、ケース1の対向する左右の側部のそれぞれから中央固定接点2および外側固定接点3のそれぞれと接続した端子4および5が対になって延設されている。6は上方凸形の円形ドーム形状に形成された弾性金属薄板からなる可動接点で、その外周端が外側固定接点3上に載置され、ドーム形状中央部下面が中央固定接点2の上面と間隔を空けて対向し、ケース1の凹部内に収容されている。そして、11は下面に図示しない粘着剤が設けられ、PI樹脂、LCP樹脂、PEEK樹脂等の耐熱性を備えた絶縁フィルムからなる保護シートで、ケース1の上面に粘着固定されて凹部を塞いでいる。
【0023】
以上は、背景技術の項で説明した従来のものと同じであるが、本実施の形態のプッシュスイッチは、保護シート11に気体は通すが液体は通さない複数の微細貫通孔12が設けられているところが異なっている。
【0024】
微細貫通孔12は、レーザー光により加工形成されて、下面に設けられた粘着剤を含めて保護シート11の厚み方向にその孔径が10μm〜50μmの大きさで直線的に空けられ、略矩形の保護シート11の全面に前後左右方向で等間隔に設けられている。なお、分かりやすくするために図中の微細貫通孔12は拡大して描いている。
【0025】
以上の構成において、その動作を説明する。
【0026】
まず、保護シート11を介して上方から可動接点6の中央部を押圧すると、可動接点6は、図3に示すように、クリック感を伴ってドーム形状中央部が弾性反転し、下方の中央固定接点2と接触する。これにより外側固定接点3と中央固定接点2との間が電気的に導通してスイッチオンとなる。
【0027】
この押圧操作での可動接点6の瞬間的な弾性反転動作によって、ドーム形状の下方空間が狭くなり、ドーム形状の上方空間が広くなるが、良好なクリック感を確保するには、下方空間の空気が急速に押し出されてドーム形状の上方空間に急速に移動して、空気移動の抵抗を少なくする必要がある。
【0028】
ここで、ケース1の凹部を塞いで粘着固定された保護シート11には、全面に亘って多くの微細貫通孔12が設けられているため、可動接点6のドーム形状の下方空間から上方空間に空気が急速に移動する際に、微細貫通孔12を介して外方との空気の流通が確保される。つまり、ケース1の凹部内だけの閉じた空間での空気の移動ではなくなるので、ドーム形状の下方空間から上方空間への急速な移動に伴う抵抗がなくなり、滑らかな動作が可能で良好なクリック感が得られる。
【0029】
次に、加えていた押圧操作を解除すると、可動接点6は自身の弾性力でクリック感を伴ってドーム形状中央部が元の上方凸形に弾性復帰し、外側固定接点3と中央固定接点2との間が離間して元の絶縁状態、つまりスイッチオフとなる。
【0030】
この押圧解除操作において、可動接点6が弾性復帰する際に元の押圧操作前の状態までドーム形状の下方空間が広がり、上方空間は狭くなるが、ここでも保護シート11の微細貫通孔12を介して外方との空気の流通が確保されるため、滑らかな可動接点6の弾性復帰動作が可能で、良好なクリック感が得られる。
【0031】
また、保護シート11の微細貫通孔12は、気体は通すが液体は通さない大きさで形成されているため、外方の水滴等がケース1の凹部内に入ることはない。
【0032】
このように本実施の形態によれば、押圧操作およびその解除操作に際して、ケース1内に収納された可動接点6にドーム形状の下方空間と上方空間との間で空気の急速な移動が必要になっても、保護シート11に形成された微細貫通孔12を通じて外方との空気の流出入がなされるために、空気の移動による可動接点6の挙動への影響が殆どなく、良好なクリック感触を得ることができるプッシュスイッチを提供することができる。そして、この微細貫通孔12は保護シート11の厚み方向に直線的に設けられているため、空気の流出入に抵抗が少なく、効率的である。
【0033】
また、保護シート11の微細貫通孔12を介して空気の流出入がなされるが、微細貫通孔12は、気体は通すが液体は通さないように10μm〜50μmの孔径に形成されているため、外方の水滴等がスイッチ内部に浸入することがなく、防滴性を備えたものにできる。
【0034】
なお、本実施の形態の保護シート11の厚みは、25μm〜100μmで、粘着剤の厚みは5μm〜25μmのものを用いている。
【0035】
さらに、保護シート11に形成する微細貫通孔12の配置を、図4に示すような配置にしてもよい。
【0036】
図4において、13はケース1の凹部を塞ぐように図示しない粘着剤で粘着固定された保護シートであり、保護シート13以外の構成は図1、図2の構成と同じである。
【0037】
この保護シート13に設けられた微細貫通孔14は、ケース1の凹部に対応した上面部分に設けられており、凹部を構成する側壁の上面部分および凹部の中央部分には設けられていない。そして、微細貫通孔14は、可動接点6の周縁部に対応する部分およびケース1の外側固定接点3が配された位置の内側壁付近で密度が高く設けられている。また、この図4においても分かりやすくするために、微細貫通孔14は拡大して描いている。
【0038】
このような微細貫通孔14が設けられた保護シート13を備えたプッシュスイッチの動作は上述のものと同じであるため説明は省略するが、可動接点6の弾性反転および弾性復帰動作によりドーム形状の下方空間と上方空間との間で空気が行き来する部分に対応するように微細貫通孔14を集中させて設けているものとしたことによって、外方との空気の流出入がより効率よくなされて、良好なクリック感触が得られるものにできる。
【0039】
また、この図4の保護シート13によっても、微細貫通孔14は、気体は通すが液体は通さないため、空気の流出入は可能であっても、外方の水滴等がスイッチ内部に入ることがなく、防滴性を備えたものにできる。
【0040】
なお、保護シートに設ける微細貫通孔の配置は以上の構成のみに限らず、空気の流通が確保され、かつ水滴等の液体が通らないものであれば他の構成であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によるプッシュスイッチは、良好なクリック感触が得られ、かつ防滴が可能なものにでき、主に各種電子機器の操作部等に有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 ケース
2 中央固定接点
3 外側固定接点
4,5 端子
6 可動接点
11,13 保護シート
12,14 微細貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方開口の凹部内底面に少なくとも2つの電気的に独立した固定接点を設けたケースと、押圧操作およびその解除操作によりクリック感を伴って上記固定接点間を接離する可動接点と、上記ケースの凹部上面を塞ぐ保護シートとを備えたプッシュスイッチであって、上記保護シートは、上下方向に直線的に貫通した気体は通すが液体は通さない微細貫通孔が設けられていることを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項2】
保護シートの微細貫通孔が、レーザー光により孔径が10μm〜50μmの大きさで加工形成されたものであることを特徴とする請求項1記載のプッシュスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−104354(P2012−104354A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251471(P2010−251471)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】