説明

プライマーサーフェーサーなしの多層塗膜の製造方法

1)10〜35μm厚さのベースコート層をEDCプライマーが付いた基材に塗布する工程、2)クリアコート層を該ベースコート層上へ塗布する工程、3)該ベースコートおよびクリアコート層を一緒に硬化させる工程の一連の工程を含む、多層塗膜の製造方法であって、該ベースコート層が第1層におよび第2層に塗布され、該第1層が未変性の水性ベースコートを着色された混合剤構成材料と混合することによって製造された変性された水性ベースコートを含み、そして該第2層が未変性の水性ベースコートを含み、該混合剤構成材料が1つ以上のバインダーAを含有し、0.05:1〜1:1の顔料内容物対樹脂固形分内容物の重量比を有し、そして0.1〜1部のバインダーA:未変性の水性ベースコートの1部の樹脂固形分の重量比で未変性の水性ベースコートへ混合され、該混合剤構成材料の顔料内容物がUV透過率を効果的に下げる少なくとも1つの顔料を含み、そして顔料内容物が、280〜380nmの波長範囲で0.1%未満の、および380〜400nmの波長範囲で0.5%未満のUV透過率に従ってのみUV光が変性された水性ベースコートおよび未変性の水性ベースコートから形成されたベースコート層を透過することができるようなものである方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマーサーフェーサーなしの(充填剤層を全く含まない)多層塗膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車塗膜は、通例、別々にベーキングされた電着塗料(EDC)プライマーと、それに塗布された、別々にベーキングされたプライマーサーフェーサー層(充填剤層)とそれに塗布された、ウェット−オン−ウェット塗布のカラー−および/または特殊効果−付与ベースコート層および保護用の光沢−付与クリアコート層を含むトップコートとからなる。全プリマーサーフェーサー・プラス・ベースコート層厚さは一般に30〜60μmである。
【0003】
勿論、塗膜材料消費および全層厚さを減らすプライマーサーフェーサー層の塗布および別個のベーキングの省略を可能にする、装飾的多層塗膜の製造方法は米国特許第5,976,343号明細書から公知である。この方法では、第1の変性された水性ベースコート、第2の未変性の水性ベースコートおよびクリアコートを含む多層塗膜構造体は、ベーキングされたEDCプライマーに塗布されるこれら3つの塗膜層の同時硬化を含むウェット−オン−ウェット法で塗布される。実際には、この方法は、通常のプライマーサーフェーサーおよびベースコートのそれより、約15〜25μmだけ著しく低い全層厚さを可能にする2つのベースコート層を用いる。変性された水性ベースコートは、未変性のベースコートより高いポリウレタンの内容物を有し、ポリウレタン樹脂と混合することによって未変性の水性ベースコートから製造されてもよく、通常のプライマーサーフェーサーの機能の代わりをすることを意図される。
【0004】
米国特許第5,976,343号明細書から公知の方法の弱点は、多層塗膜をある種の色合い(「問題のある(problematic)色合い」)で製造することが容易にはできないことである。その理由は、UV光(UV放射線)が、自然光の成分として、EDCプライマーに塗布された塗膜層をプライマーサーフェーサー層の不存在下にかなりの程度でEDCプライマーの表面まで通過し、EDCプライマーの分解を引き起こすことである。
【0005】
プライマーサーフェーサーなしの多層塗膜の製造に関して問題のある色合いは、観察者に不透明であると見える塗膜を(問題のない(unproblematic)色合いのように)提供しながら、許容できないほど大量のUV光がクリアコート、未変性の水性ベースコートおよび変性された水性ベースコートの多層構造体をEDCプライマーの表面まで透過し、そしてEDC層への長期損傷を引き起こすことを可能にするものである。かかる問題のある色合いは、単一の(単純な)色合いおよび特殊効果色合いの両方中に見いだされるべきである。例は、特に、フタロシアニン顔料をベースにする紺青色単一の色合いの水性ベースコート中におよび明確な特殊効果色合い、例えば、紺青色金属色合いまたは、特に、銀色合いなどの淡い金属色合いの水性ベースコート中におよび顔料内容物中に高い割合の雲母顔料を含有する明確な特殊効果色合いの水性ベースコート中に見いだされるかもしれない。問題のある色合いのケースで、UV光は多層塗膜構造体を、例えば、特定のUV透過レベルを超える程度まで透過するかもしれず、そしてEDC層に達する。
【0006】
自動車メーカーの規格には、例えば、車両車体の完全な外板の区域でベースコート層を通ってのUV透過率が合計280〜380nmの波長範囲で0.1%未満、および380〜400nmの波長範囲で0.5%未満になるべきであると記載されている。EDC層への許容できないレベルのUV光透過の可能な望ましくない長期結果は、塗装された基材の耐用年数にわたってのEDC層の白亜化および多層塗膜の層間剥離である。
【0007】
あるいはまた、変性されたおよび/または未変性の水性ベースコートは、EDCプライマーへのUV光のアクセスを適切な程度まで防ぐのに十分な全体的なより高い層厚さで塗布することができよう。しかしながら、これは、高い全フィルム厚さの方向での後戻りする技術的措置であろう。
【0008】
クリアコートまたはベースコートでのUV吸収剤の使用は、例えば、米国特許第5,574,166号明細書および国際公開第94/18278号パンフレットから公知であり、層間剥離の問題に対する解決策である。しかしながら、UV吸収剤は、コスト理由のためだけでなく、UV吸収剤の移動傾向のために、そしてUV吸収剤の漸次分解のために、ベースコート層および/またはクリアコート層中にそれほど高い程度で使用することはできない。
【0009】
EDCサイドからの層間剥離問題にアプローチする他の解決策は、EP 0 576 943号明細書、米国特許第6,368,719号明細書、米国特許出願公開第2003/0054193 A1号明細書および米国特許出願公開第2003/0098238 A1号明細書から公知である。これらは、特別に選択されたバインダーによりまたは好適な添加剤の添加によりUV光の作用に耐えるEDC塗料組成物の使用を開示している。これは、例えば、防食などの他の技術的特性に関して譲歩しなければならないかもしれないように、EDC組成物を必然的に制限する。
【0010】
意外なことに、米国特許第5,976,343号明細書による方法(プライマーサーフェーサーの塗布なしで済ますおよび低い全フィルム厚さを提供する)の利点は、未変性の水性ベースコートが顔料なしのポリウレタン樹脂の形態で米国特許第5,976,343号明細書から公知の混合剤構成材料の代わりに混合剤構成材料として特異的に着色されたバインダー含有調製品で変性される場合、EDCプライマーに対して、長期にわたって破壊的であるUV光のアクセスをなお十分に抑制しながら保持されるかもしれない。変性された水性ベースコートおよび未変性の水性ベースコートで形成されたベースコート層を通ってのUV透過率はその時280〜380nmの波長範囲で0.1%未満に、および380〜400nmの波長範囲で0.5%未満に調整されてもよく、それによって、例えば、相当する自動車メーカーの規格が実現されてもよい。
【0011】
ポリウレタン樹脂を含有する水性充填剤(増量剤)ペーストの水性ベースコートへの添加は米国特許第5,968,655号明細書から公知である。該充填剤ペーストは顔料を含有してもよい。充填剤ペーストの添加により変性された水性ベースコートはEDC下塗り基材上へ塗布され、未変性の水性ベースコートおよびクリアコートで上塗りされ、一緒にベーキングされる。本発明によって解決される過度に高いUV透過率の上述の問題は、米国特許第5,968,655号明細書では直接にも間接にも取り組まれていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
1)10〜35μm厚さのベースコート層をEDCプライマーが付いた基材に塗布する工程、
2)クリアコート層を該ベースコート層上へ塗布する工程、
3)該ベースコートおよびクリアコート層を一緒に硬化させる工程
の一連の工程を含む、多層塗膜の製造方法であって、
該ベースコート層が第1層におよび第2層に塗布され、該第1層が未変性の水性ベースコートを着色された混合剤構成材料と混合することによって製造された変性された水性ベースコートを含み、そして該第2層が未変性の水性ベースコートを含み、
該混合剤構成材料が1つ以上のバインダーAを含有し、0.05:1〜1:1の顔料内容物対樹脂固形分内容物の重量比を有し、そして0.1〜1部のバインダーA:未変性の水性ベースコートの1部の樹脂固形分の重量比で未変性の水性ベースコートへ混合され、
該混合剤構成材料の顔料内容物がUV透過率を効果的に下げる少なくとも1つの顔料を含み、そして顔料内容物が、280〜380nmの波長範囲で0.1%未満の、および380〜400nmの波長範囲で0.5%未満のUV透過率に従ってのみUV光が変性された水性ベースコートおよび未変性の水性ベースコートから形成されたベースコート層を透過することができるように製造(構成)される方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
用語「顔料内容物」は、充填剤(増量剤)なしの塗料組成物中に含有される顔料すべての合計を意味する。用語「顔料」は本明細書ではDIN 55944のように用いられ、特殊効果顔料に加えて、無機の白色、着色および黒色顔料ならびに有機着色および黒色顔料をカバーする。同時に、それ故、DIN55944は顔料と充填剤とを区別している。
【0014】
本明細書および特許請求の範囲は「UV透過率を効果的に下げる顔料」に言及している。明らかに、すべての顔料は究極的に、しかし2つの群の顔料、より強いUV吸収またはUV反射を示すものとより弱いUV吸収またはUV反射を示すものとを区別することができるように、顔料に依存して異なる程度にUV透過率を下げる。従って、語句「UV透過率を効果的に下げる顔料」は、本発明による方法の目的のためにUV透過率を下げるのに十分に好適である顔料を意味する。
【0015】
本明細書および特許請求の範囲は「1つ以上のバインダーA」に言及している。これは、未変性の水性ベースコートのバインダーと混合剤構成材料のバインダー(バインダーA)とを区別するために役立つ。
【0016】
本発明による方法では、EDCプライマーが付いた通常の基材が塗装される。特に、基材は、EDCプライマー、特に、陰極電着(CED)塗膜が付いた自動車車体または車体部品である。EDCプライマーが付いた基材の製造は当業者に公知である。EDCプライマーの選択に関して制限は全くなく、特に、UV光への長期露光によって損傷されるであろうEDCプライマーもまた好適である。
【0017】
EDCプライマーを有する基材は、先ず第一に、10〜35μmの範囲のプロセスフィルム厚さでベースコート層を提供される。ベースコート層は2つの層で塗布される、すなわち、第1層、例えば、未変性の水性ベースコートを混合剤構成材料と混合することによって製造された、5〜25μm厚さの変性された水性ベースコートが塗布され、それに続く第2層、例えば、3〜20μm厚さの未変性の水性ベースコートが次に塗布される。ベースコート層の全フィルム厚さはとりわけ色合いに依存し、ベースコートフィルム厚さについての自動車メーカーの要件は、いわゆるプロセスフィルム厚さ(自動車の元の塗装プロセスでの全体車体の一面に望まれる平均フィルム厚さ)で表され、それは、基材上で所望の色合いを達成するためにおよび技術的特性(例えば、耐石片性)を達成するために必要とされる各ベースコート色合いのためのフィルム厚さに、ならびに関連水性ベースコートの経済的な塗布に、すなわち、できるだけ薄いフィルムでの塗布に向けられる。全ベースコートフィルム厚さは10〜35μmの範囲であり、例えば、5〜25μmの変性された水性ベースコートプラス、例えば、3〜20μmの未変性の水性ベースコートの合計である。ベースコートについてのかかるフィルム厚さは、関連基材、例えば、自動車車体の塗膜要件を満たす。特に、これは、10〜35μmのこの範囲内の具体的な値が特定の個々のベースコートについてのプロセスフィルム厚さを表すことを意味する。前記の具体的なプロセスフィルム厚さは本明細書では、相当する変性された水性ベースコートの、例えば、5〜25μmの範囲内に入る具体的なプロセスフィルム厚さと相当する未変性の水性ベースコートの、例えば、3〜20μmの範囲内に入る具体的なプロセスフィルム厚さとの合計からなる。
【0018】
塗膜層について本明細書および特許請求の範囲で示されるフィルム厚さは、各ケースで乾燥フィルム厚さを意味する。
【0019】
本明細書および特許請求の範囲で、未変性の水性ベースコートと変性された水性ベースコートとは区別される。
【0020】
変性された水性ベースコートが1つ以上のバインダーAを含有する、そして顔料内容物を有する混合剤構成材料と混合することによってそれから製造されてもよい未変性の水性ベースコートは、例えば、0.05:1〜0.6:1の顔料内容物対樹脂固形分内容物の重量比を有する水性塗料組成物である。水、バインダーを含む樹脂固形分内容物、場合により、ペースト樹脂および場合により、架橋剤、顔料、場合により、充填剤および場合により、有機溶剤に加えて、未変性の水性ベースコートは一般にまた通常の添加剤を含有する。
【0021】
未変性の水性ベースコートはイオン的におよび/または非イオン的に安定化されたバインダー系を含有する。これらは好ましくは陰イオン的におよび/または非イオン的に安定化されている。陰イオン的安定化は好ましくは、バインダー中の少なくとも部分的に中和されたカルボキシル基によって達成されるが、非イオン的安定化は好ましくは、バインダー中の側鎖または末端ポリエチレンオキシド単位によって達成される。未変性の水性ベースコートは物理的に乾燥性であってもまたは共有結合の形成によって架橋性であってもよい。共有結合を形成する架橋性の未変性の水性ベースコートは、自己架橋性または外部架橋性システムであってもよい。
【0022】
未変性の水性ベースコートは1つ以上の通常のフィルム形成バインダーを含有する。それらは場合によりまた、バインダーが自己架橋性でも物理的に乾燥性でもない場合には架橋剤を含有してもよい。使用されてもよいフィルム形成バインダーの例は、通常のポリエステル、ポリウレタン、(メタ)アクリルコポリマーおよび/またはこれらのクラスの樹脂から誘導されたハイブリッド樹脂である。場合により含有される架橋剤の選択は、当業者に周知のように、バインダーの官能性に依存する、すなわち、架橋剤は、それらがバインダーの官能性を補完する反応型官能性を示すようなやり方で選択される。バインダーと架橋剤との間のかかる補完的な官能性の例は、カルボキシル/エポキシ、ヒドロキシル/メチロールエーテルおよび/またはメチロール(アミノプラスト樹脂、特にメラミン樹脂の架橋性基ような、好ましくはメチロールエーテルおよび/またはメチロール)である。
【0023】
上の段落でならびに下記の説明および特許請求の範囲で用いられる用語「ポリウレタン樹脂」は、問題のポリウレタン樹脂がまた、特に、エステル基および/またはウレア基などの、ウレタン基以外の基をポリマー主鎖中に含有してもよいことを除外しない。代わりに、用語「ポリウレタン樹脂」は当然ながら、特にまた、ポリエステルポリオール構成要素および/またはウレア基を含有するポリウレタン樹脂を含み、ここで、ウレア基は、例えば、イソシアネート基と水および/またはポリアミンとの反応によって形成されてもよい。
【0024】
未変性の水性ベースコートは通常の顔料、例えば、特殊効果顔料および/または白色、着色および黒色顔料の中から選択された顔料を含有する。
【0025】
特殊効果顔料の例は、例えば、アルミニウム、銅もしくは他の金属の非リーフィング金属顔料、例えば、金属酸化物コーテッド金属顔料、例えば、酸化鉄コーテッドアルミニウムなどの干渉顔料、例えば、二酸化チタンコーテッド雲母などのコーテッド雲母、グラファイト効果付与顔料、フレーク形態の酸化鉄、液晶顔料、コーテッド酸化アルミニウム顔料、コーテッド二酸化ケイ素顔料のような、観察の角度に依存して塗膜カラーフロップおよび/または明度フロップを与える通常の顔料である。
【0026】
白色、着色および黒色顔料の例は、例えば、二酸化チタン、酸化鉄顔料、カーボンブラック、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ピロロピロール顔料、およびペリレン顔料などの、当業者に公知の通常の無機または有機顔料である。
【0027】
未変性の水性ベースコートは問題のある色合いのもの、すなわち、280〜380nmの波長範囲で0.1%より大きい、および/または380〜400nmの波長範囲で0.5%より大きいUV透過率に相当するUV光がプロセスフィルム厚さで塗布された、そして0.1〜1部のバインダーA:未変性の水性ベースコートの1部の樹脂固形分の重量比の顔料なしのバインダーAで変性された関連水性ベースコートと相当する未変性の水性ベースコートとからなるベースコート層を透過するかもしれないという点において区別される水性ベースコートである。言い換えれば、問題のある色合いの未変性の水性ベースコートは、構成成分顔料のタイプおよび割合のおかげで、280〜380nmの波長範囲で0.1%より大きい、および/または380〜400nmの波長範囲で0.5%より大きいUV透過率に相当するUV光がプロセスフィルム厚さで塗布された、そして0.1〜1部のバインダーA:未変性の水性ベースコートの1部の樹脂固形分の重量比の顔料なしのバインダーAで変性された関連水性ベースコートと相当する未変性の水性ベースコートとからなるベースコート層を透過するかもしれないような低レベルの顔料着色(顔料内容物対樹脂固形分内容物の重量比)および/または顔料内容物を有する。問題のある色合いの未変性の水性ベースコートは従って、UV透過率を効果的に下げる過度に小さい割合の顔料の有無にかかわらず過度に低いレベルの顔料着色および/または顔料内容物を有する。問題のある色合いのかかる未変性の水性ベースコートは、単一の色合いのおよび特殊効果色合いの両方の未変性の水性ベースコート中に見いだされるかもしれない。例は特に、フタロシアニン顔料をベースにする紺青色単一の色合いの水性ベースコート中におよび明確な特殊効果色合い、例えば、紺青色金属色合いまたは、特に、銀色合いなどの淡い金属色合いの水性ベースコート中におよび顔料内容物に高い割合の雲母顔料を含有する明確な特殊効果色合いの水性ベースコート中に見いだされるかもしれない。
【0028】
UV透過率は、変性された水性ベースコートおよび未変性の水性ベースコートの相当する塗膜構造体をUV光透過支持体、例えば、シリカガラス板に塗布し、そして相当する未コーテッドUV光透過支持体を対照として用いて相当する波長範囲でUV透過率を測定することによって測定されてもよい。着色された混合剤構成材料を用いて本発明に従って製造されたベースコート構造体と顔料なしのバインダーA混合剤構成材料を用いて先行技術に従って製造された相当するベースコート構造体との間のUV透過率の差を正確に測定するために、同様な条件下に作業することが必要であることは自明である。本発明に関して、これは、特に、両ケースで0.1〜1部:1部の述べられた範囲内でバインダーAと未変性の水性ベースコートの樹脂固形分との間で同じ重量比を選択することを意味する。
【0029】
未変性の水性ベースコートはまた、例えば、樹脂固形分内容物に対して0〜30重量%の割合で、充填剤を含有してもよい。充填剤は、未変性の水性ベースコートの顔料内容物の一部を構成しない。例は、硫酸バリウム、カオリン、タルカム、二酸化ケイ素、層状シリケートおよびそれらの任意の混合物である。
【0030】
特殊効果顔料は、場合により、好ましくは水希釈性の有機溶剤および添加剤と組み合わせられ、そして次に水性バインダーと混合された、通常の市販の水性または非水性ペーストの形態で一般に最初に導入される。粉末状の特殊効果顔料は先ず、好ましくは水希釈性の有機溶剤および添加剤と処理されてペーストをもたらしてもよい。
【0031】
白色、着色および黒色顔料および/または充填剤は、例えば、ある割合の水性バインダー中で研削されてもよい。研削は好ましくはまた、特別な水性ペースト樹脂中で行われてもよい。研削は当業者に公知の通常のアセンブリで行われてもよい。調合物は次に、残りの割合の水性バインダーまたは水性ペースト樹脂で完成される。
【0032】
未変性の水性ベースコートは、例えば、その固形分内容物に対して0.1〜5重量%の通常の量で通常の添加剤を含有してもよい。例は、消泡剤、湿潤剤、接着促進剤、触媒、均染剤、クレーター形成防止剤、増粘剤および光安定剤、例えば、UV吸収剤および/またはHALSベース化合物(HALS、ヒンダードアミン光安定剤)である。未変性の水性ベースコートが光安定剤を含有する場合、これらは決して、UV光が280〜380nmの波長範囲で0.1%未満の、および380〜400nmの波長範囲で0.5%未満のUV透過率に従ってのみ変性された水性ベースコートおよび未変性の水性ベースコートから形成されたベースコート層を透過できることのみに関与するわけではない。この効果は代わりに、特にその耐久性に関して、1つ以上のバインダーAを含有する着色された混合剤構成材料を用いることによって達成される。
【0033】
未変性の水性ベースコートは、例えば、好ましくは20重量%未満の、特に好ましくは15重量%未満の割合で、通常の溶剤を含有してもよい。これらは、例えば、バインダーの製造に由来してもよいかまたは別個に加えられる通常の塗料溶剤である。かかる溶剤の例は、アルコール、例えば、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール;グリコールエーテルまたはエステル、例えば、ジエチレングリコールジC1〜C6アルキルエーテル、ジプロピレングリコールジC1〜C6アルキルエーテル、エトキシプロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテル;グリコール、例えば、エチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール、およびそれらの二量体もしくは三量体;例えば、N−メチルピロリドンなどのN−アルキルピロリドン;メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン;芳香族もしくは脂肪族炭化水素、例えば、トルエン、キシレンまたは線状もしくは分岐脂肪族C6〜C12炭化水素である。
【0034】
未変性の水性ベースコートは、例えば、10〜40重量%、好ましくは15〜30重量%の固形分内容物を有する。
【0035】
変性された水性ベースコートは、0.1〜1部、好ましくは0.1〜0.5部のバインダーA:未変性の水性ベースコートの1部の樹脂固形分の重量比で1つ以上のバインダーAを含有する着色された混合剤構成材料と混合することによって未変性の水性ベースコートから製造されてもよい。
【0036】
未変性の水性ベースコートへの混合剤構成材料の添加は、得られた変性された水性ベースコートに、仕上げ多層塗膜に重要である、例えば、耐石片性などの技術的特性を与える。
【0037】
未変性の水性ベースコートおよび混合剤構成材料は、変性された水性ベースコートの塗布の少し前にまたは直前にユーザーの施設で好ましくは混合される。工業的塗装設備のケースでは、未変性の水性ベースコートは異なる色合いの各ケースでそれら自体の循環ラインにそれぞれ導かれる。本発明による方法では、単一の混合剤構成材料または2つ以上の、例えば、各ケースで異なって着色された2〜5の混合剤構成材料で作業することは可能である。水性ベースコートが2つ以上の色合いで、色合いプログラムで塗布される場合、それぞれが異なる顔料着色を有する2つ以上の混合剤構成材料を使用することが目的に適うかもしれず、未変性の水性ベースコートの特定色合いと着色された混合剤構成材料の色合いとの間で調整することが望まれる。例えば、未変性の水性ベースコートの淡い色合いのケースで、当業者は、淡着色の顔料内容物の混合剤構成材料を選択する傾向があろう。異なって着色された未変性の水性ベースコートのように、各ケースにおいて専用の循環ラインで搬送され、工業的塗装設備で通常の混合技術を用いて、例えば、ケニックス(Kenics)ミキサーを用いて特定の未変性の水性ベースコートと自動的に混合される。nの色合いの色合いプログラムで水性ベースコートを塗布するとき、それ故、例えば2nの循環ライン(各ケースで、異なる色の未変性の水性ベースコート用および異なる色の変性された水性ベースコート用のnの循環ライン)を提供することは必要ではなく、むしろ異なる色の未変性の水性ベースコート用のちょうどnの循環ラインプラス着色された混合剤構成材料用の、例えば、1〜5の循環ラインが必要である。色合いプログラムがまた問題のない色合いを含む場合には、相当する未変性の水性ベースコートは、変性された水性ベースコートを調製する目的のために1つ以上の着色された混合剤構成材料と必ずしも混合される必要はなく、その代わりにこれらのケースでは相当する顔料なしの混合剤構成材料で作業することもまた可能である。しかしながら、このアプローチは、顔料なしの混合剤構成材料用の追加の循環ラインを必要とする。
【0038】
1つ以上のバインダーAを含有する、そして顔料内容物を含む混合剤構成材料は、20〜100重量%の、一般に、30〜60重量%の固形分内容物の組成物である。揮発性内容物は、可能な揮発性添加剤に加えて、水および/または有機溶剤によって形成される。固形分内容物はそれ自体、樹脂固形分内容物プラス顔料内容物を形成する顔料、場合によりプラス充填剤および場合より、プラス非揮発性添加剤からなる。充填剤は顔料内容物の一部を構成しない。顔料内容物対樹脂固形分内容物の重量比は0.05:1〜1:1、特に0.1:1〜0.8:1である。この比の値は、顔料対樹脂固形分内容物の基本的に選択された比および顔料内容物を形成する個々の顔料の比重量の結果である。
【0039】
混合剤構成材料の樹脂固形分内容物は、1つ以上のバインダーAと、場合により、バインダーAとは異なり、そして別個の顔料研削媒体としてまたは顔料研削助剤(いわゆる研削またはペースト樹脂)として使用される1つ以上の樹脂と、場合により1つ以上の架橋剤、例えば、ブロックトポリイソシアネート、例えば、メラミン樹脂などのアミノプラスト樹脂とを含む。一般に、樹脂固形分内容物は、重量百分率が合計100重量%になる、100重量%の程度までの少なくとも1つのバインダーAまたは、例えば、70〜99重量%の少なくとも1つのバインダーAプラスバイダーAとは異なる1〜20重量%の少なくとも1つの研削樹脂プラス0〜30重量%の少なくとも1つの架橋剤からなる。
【0040】
混合剤構成材料のバインダーAは、未変性の水性ベースコート中と同じバインダーおよび/またはそれらとは異なるバインダーを含んでもよい。
【0041】
バインダーAは通常の水希釈性の、特に陰イオン的に安定化されたバインダー、例えば、相当するポリエステル、ポリウレタン、(メタ)アクリルコポリマーおよび/またはこれらのクラスの樹脂から誘導されたハイブリッド樹脂である。ポリエステルおよび特にポリウレタン樹脂が好ましい。
【0042】
特に好ましいポリウレタン樹脂は、特に陰イオン的に安定化されたポリウレタン樹脂を含む。特に、それらは水性ポリウレタン樹脂溶液または分散系を含む。かかるポリウレタン樹脂分散系は、例えば、20〜50重量%の固形分内容物を有する。ポリウレタン樹脂の重量平均モル質量(Mw)は、例えば、1000〜500000に達する。
【0043】
使用に適したポリウレタン分散系の例は、イソシアネート官能性プレポリマーのポリアミンおよび/またはポリオールでの鎖延長によって製造されてもよいものである。それらは、例えば、米国特許第4,558,090号明細書、同第4,914,148号明細書、同第4,851,460号明細書およびEP 0 512 524号明細書に記載されている。
【0044】
さらなる例は、例えば、米国特許第4,948,829号明細書および同第5,342,882号明細書に記載されているような、イソシアネート官能性プレポリマーの水での鎖延長によって製造されてもよい、ポリウレタン分散系である。
【0045】
例えば、DE 39 03 804号明細書および国際公開第91/11477号パンフレットに記載されているような、活性水素を含有するイソシアネート反応性ポリウレタンプレポリマーのポリイソシアネートでの鎖延長によって製造されるポリウレタン分散系を使用することもまた可能である。
【0046】
シロキサン・ブリッジを用いて鎖延長されたポリウレタン樹脂をベースにするポリウレタン分散系もまた使用されてもよい。これらは、例えば、米国特許第5,760,123号明細書から公知である。
【0047】
特にカルボキシル基などの、水希釈性を確実にする基は別として、バインダーAは、変性された水性ベースコートのその後の熱硬化中に場合により進行する架橋反応に関与してもよい官能基を含んでもよく、かかる架橋反応は特に付加および/または縮合反応である。バインダーAはまた自己架橋性であってもよい。バインダーA官能基の例はヒドロキシル基、ブロックトイソシアネート基およびエポキシ基である。
【0048】
混合剤構成材料は、0.05:1〜1:1の、特に、0.1:1〜0.8:1の顔料内容物対樹脂固形分内容物の重量比を示す。顔料内容物および樹脂固形分内容物によって寄与される固形分内容物の合計は、例えば、混合剤構成材料の15〜100重量%、一般に、25〜60重量%である。
【0049】
混合剤構成材料の顔料内容物は、UV透過率を効果的に下げる、少なくとも1つの顔料を含む。顔料内容物は、所与の未変性の水性ベースコート、0.1〜1、好ましくは0.1〜0.5重量部のバインダーA:未変性の水性ベースコートの1重量部の樹脂固形分の範囲での所与の混合比の混合剤構成材料および未変性の水性ベースコート、ならびに混合剤構成材料中で0.05:1〜1:1の所与の重量比の顔料内容物対樹脂固形分内容物で、UV光が280〜380nmの波長範囲で0.1%未満の、および380〜400nmの波長範囲で0.5%未満のUV透過率に従ってのみプロセスフィルム厚さで塗布されたそして変性された水性ベースコートおよび未変性の水性ベースコートからなるベースコート層を透過することができるようなやり方で製造される。言い換えれば、顔料内容物は、UV透過率を効果的に下げる少なくとも1つの顔料を含み、さらに、各ケースで述べられた範囲での、所与の未変性の水性ベースコート、所与の混合比の混合剤構成材料および未変性の水性ベースコート、ならびに所与の重量比の顔料内容物対樹脂固形分内容物で、UV光が280〜380nmの波長範囲で0.1%未満の、および380〜400nmの波長範囲で0.5%未満のUV透過率に従ってのみプロセスフィルム厚さで塗布された、そして変性された水性ベースコートおよび未変性の水性ベースコートからなるベースコート層を透過することができるような定性的および定量的組成を有する。UV透過率を効果的に下げる少なくとも1つの顔料に加えて、混合剤構成材料の顔料内容物はまた他の顔料を含んでもよい。しかしながら一般に、顔料内容物は専ら、UV透過率を効果的に下げる1つ以上の顔料からなる。
【0050】
UV透過率を効果的に下げる、そして混合剤構成材料の顔料内容物において単独でまたは組み合わせて使用されてもよい顔料の例は、特にカーボンブラック、二酸化チタン、酸化鉄顔料およびアルミニウムフレーク顔料であり、後者は特に、例えば、10nm〜1μmのフレーク厚さで、例えば、1〜20μmの範囲の平均粒度である。
【0051】
UV透過率の所望の低下に関しておよび本発明による方法の目的のために特に好適な組成物の顔料内容物の例は、重量百分率が合計100重量%になる、0〜100重量%のカーボンブラック、0〜100重量%の二酸化チタン、0〜100重量%の1つ以上のアルミニウムフレーク顔料、例えば、先行する段落で述べられた1つ以上のアルミニウムフレーク顔料、0〜100重量%の1つ以上の酸化鉄顔料および0〜90重量%の1つ以上の他の顔料からなる顔料内容物である。好ましい顔料内容物は、重量百分率が各ケースで合計100重量%になる、0〜100重量%のカーボンブラック、0〜100重量%の二酸化チタンおよび0〜100重量%の1つ以上のアルミニウムフレーク顔料からなるもの、特に、0.1〜10重量%のカーボンブラックおよび90〜99.9重量%の二酸化チタンからなる様々なグレー色合いを可能にする顔料内容物である。
【0052】
一般に、顔料または混合剤構成材料の顔料内容物を形成する顔料は研削される。研削は、当業者に公知の通常のアセンブリで行われてもよい。顔料は少なくとも1つのバインダーAの存在下に研削されてもよい。バインダーAとは異なる1つ以上の研削樹脂が本明細書では研削助剤として加えられてもよい。あるいはまた、しかしながら、バインダーAとは異なる研削樹脂または研削樹脂の混合物の形態での別個の研削媒体で研削を行うこともまた可能である。
【0053】
アルミニウムフレーク顔料は研削されないが、その代わりに一般に、場合により、好ましくは水希釈性の有機溶剤および場合により添加剤と組み合わせられた、通常の市販の非水性ペーストの形態で最初に導入され、次にバインダーAと混合される。粉末状アルミニウムフレーク顔料は先ず、好ましくは水希釈性の有機溶剤および場合により添加剤で処理されてペーストをもたらしてもよい。
【0054】
いったん顔料調製品が製造されてしまったら、それらは、任意の残りのまたは欠けている構成成分と混合することによって仕上げ混合剤構成材料へメイクアップされる。特に、研削がバインダーAの存在下に行われない場合、後者は混ぜ入れられて仕上げ混合剤構成材料をもたらす。
【0055】
混合剤構成材料は場合により、例えば、0〜5重量%より下の1つ以上の充填剤を含有してもよい。混合剤構成材料での使用に適した充填剤の例は、硫酸バリウム、カオリン、タルカム、二酸化ケイ素、および層状シリケートである。
【0056】
混合剤構成材料は一般に水性組成物を含み、混合剤構成材料はそのとき、例えば、20〜70重量%水を含有する。水は本明細書では、様々な異なる方法で、例えば、そのままでまたはバインダーAの水性溶液もしくは分散系の構成成分としての添加によって混合剤構成材料に入ってもよい。
【0057】
それが水性か非水性組成物かどうかにかかわりなく、混合剤構成材料は、例えば、5〜70重量%の総量で1つ以上の有機溶剤を含有してもよい。かかる溶剤の例は、一価または多価アルコール、例えば、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール;グリコールエーテルもしくはエステル、例えば、ジエチレングリコールC1〜C6ジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールC1〜C6ジアルキルエーテル、エトキシプロパノール、ブチルグリコール;グリコール、例えば、エチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール、およびそれらの二量体もしくは三量体;N−アルキルピロリドン、例えば、N−メチルピロリドンならびにケトン、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン;芳香族もしくは脂肪族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、または線状もしくは分岐脂肪族C6〜C12炭化水素である。溶剤は好ましくは水希釈性である。溶剤は本明細書では様々なやり方で、例えば、そのままでまたはバインダーAおよび/または添加剤調製品の成分としての添加によって混合剤構成材料に入ってもよい。
【0058】
少なくとも1つのバインダーAおよび顔料内容物を形成する顔料ならびに各ケースで任意の構成成分充填剤、水、有機溶剤および研削樹脂に加えて、混合剤構成材料は、各ケースで、一般に6重量%以下の総量に相当する、例えば、0.1〜4重量%の割合で添加剤を含有してもよい。添加剤の例は、消泡剤、クレーター形成防止剤、湿潤剤、中和剤およびレオロジー調整剤である。混合剤構成材料は、好ましいわけではないが、光安定剤、例えば、UV吸収剤および/またはHALSベース化合物を含有してもよい。混合剤構成材料が光安定剤を含有する場合、これらは、UV光が280〜380nmの波長範囲で0.1%未満の、および380〜400nmの波長範囲で0.5%未満のUV透過率に従ってのみ変性された水性ベースコートおよび未変性の水性ベースコートから形成されたベースコート層を透過することができるために極めて重要であるわけではない。この効果はその代わりに、特にその耐久性に関して、混合剤構成材料の顔料内容物によって達成される。
【0059】
既に上述のように、本発明による方法は、その顔料内容物が未変性の水性ベースコートの色合いに関連して調節された混合剤構成材料で都合よく行われるかもしれない。この目的を達成するために、使用される未変性の水性ベースコートの色合いプログラムとの譲歩の手段として着色された単一混合剤構成材料で作業するか、あるいはまた、2つ以上の異なって着色された混合剤構成材料を使用するかのどちらかが可能である。後者のケースで、個々の未変性の水性ベースコートと混合剤構成材料との間でより程度の高い色合い調節を、未変性の水性ベースコートの適切な色群の形成および各ケースでの異なって着色された混合剤構成材料の1つへの割り当てによって達成することは当然可能である。
【0060】
本発明による方法では、EDC下塗り基材は最初に、変性された水性ベースコートで、例えば、5〜25μmの乾燥フィルム厚さにスプレー塗装される。これは好ましくは静電気的にアシストされた高速回転噴霧化を用いて行われる。
【0061】
次に、好ましくは、例えば、20〜25℃の空気温度で30秒〜5分の短時間フラッシュオフ段階の後に、相当する未変性の水性ベースコートが、例えば、3〜20μmの乾燥フィルム厚さにスプレー塗布される。このスプレー塗布は好ましくは空気圧スプレー塗布である。
【0062】
これに好ましくはまた、例えば、20〜100℃の空気温度で30秒〜10分の短時間フラッシュオフ段階が続き、その後クリアコートが、例えば、20〜60μmの乾燥フィルム厚さに塗布される。
【0063】
すべての公知のクリアコートは原則として本クリアコートとして好適である。使用に適したクリアコートは、両方の溶剤含有1成分(1パック)または2成分(2パック)クリアコート、水希釈性1パックまたは2パッククリアコート、粉体クリアコートまたは水性粉体クリアコートスラリーである。
【0064】
任意のフラッシュオフ段階後に、変性されたおよび未変性の水性ベースコートならびにクリアコート層からなる塗布水性ベースコート層は、例えば、80〜160℃物体温度で、例えばベーキングすることによって一緒に硬化させられる。
【0065】
本発明による方法を用いて、EDC下塗り基材はプライマーサーフェーサーなしの塗膜を提供されてもよい。クリアコート層と変性されたおよび未変性の水性ベースコートからEDCプライマーに塗布されたベースコート層とを通ったUV光のいかなる破壊的アクセスも本明細書では、ベースコート層がたったの10〜35μmのプロセスフィルム厚さで塗布されるにもかかわらず、防がれるかもしれない。着色された混合剤構成材料は変性された水性ベースコートの製造中に未変性の水性ベースコートへ混合されるが、所望の色合いの多層塗膜を製造することは本発明による方法で可能である。プライマーサーフェーサー層の塗布およびベーキングは必要ではなく、多層塗膜の技術的特性は自動車メーカーの要件を満たす。
【0066】
下記実施例は本発明を例示する。すべての部および百分率は、特に明記しない限り重量基準である。
【実施例】
【0067】
実施例1(混合剤構成材料の製造)
下記組成の着色された混合剤構成材料を通常のやり方(ビーズミルでの顔料およびタルクの研削)で製造した:
19.4重量部の樹脂固形分(ポリウレタンバインダー、バイエル(Bayer)製のバイヒドロール(Bayhydrol)(登録商標)VPLS 2341)
14.0重量部の二酸化チタン(デュポン(DuPont)製のチタンピュア(TiPure)(登録商標)R706)
0.4重量部のデグッサ(Degussa)製のカーボンブラックFW 200
4.5重量部のタルク
0.2重量部のジメチルエタノールアミン
0.6重量部のポリアクリル酸増粘剤
2.6重量部の消泡剤
48.7重量部の脱イオン水
9.6重量部の有機溶剤(4.0重量部のエチレングリコールモノブチルエーテル、3.8重量部のジエチレングリコールモノブチルエーテル、1.8重量部のn−プロパノール)。
【0068】
実施例2
実施例1と同じ方法を、しかし二酸化チタンおよびカーボンブラックを使用することなく用いた。
【0069】
実施例3
a)下記組成の青色、未変性の雲母顔料含有水性ベースコートを製造した:
15.9重量部の樹脂固形分(6.4重量部のポリエステルアクリレート樹脂、5.8重量部のポリウレタン樹脂、3.7重量部のヘキサメトキシメチルメラミン)
0.5重量部のメルク(Merck)製のイリオジン(Iriodin)(登録商標)SW9225
0.4重量部のサン・ケミカル(Sun Chemical)製のクインドマゼンタ(Quindo Magenta)RV6843
1.4重量部のヒューバッハ(Heubach)製のモノライトブルー(Monolite Blue)3R
0.2重量部のデグッサ製のカーボンブラックFW 200F
0.3重量部のジメチルエタノールアミン
0.2重量部の消泡剤
0.6重量部のポリアクリル酸増粘剤
1.0重量部のポリプロピレングリコール900
14.6重量部の有機溶剤(4.2重量部のエチレングリコールモノブチルエーテル、1.7重量部のジエチレングリコールモノブチルエーテル、0.7重量部のエチレングリコールモノヘキシルエーテル、3.0重量部のN−メチルピロリドン、3.5重量部のn−ブタノール、1.0重量部のn−プロパノール、0.5重量部のシェルゾル(Shellsol)T)
64.9重量部の脱イオン水。
b)変性された水性ベースコートを、a)からの100重量部の未変性の水性ベースコートを15重量部の実施例1からの混合剤構成材料と混合することによって製造した。
c)変性された水性ベースコートを、a)からの100重量部の未変性の水性ベースコートを12.84重量部の実施例2からの調製品と混合することによって製造した。
【0070】
実施例4
a)下記組成の銀色、未変性の水性ベースコートを製造した:
15.3重量部の樹脂固形分(5.6重量部のポリウレタン樹脂、5.8重量部のポリエステルアクリレート樹脂、3.9重量部のヘキサメトキシメチルメラミン)
3.0重量部の非リーフィングアルミニウム顔料(1.7重量部のスタパ・ヒドロラン(Stapa Hydrolan)(登録商標)8154、0.8重量部のスタパ・ヒドロラン(登録商標)2156、0.5重量部のスタパ・ヒドロラン(登録商標)618;ヒドロラン(Hydrolan)(登録商標)、エッカート(Eckart)製のアルミニウム顔料)
0.5重量部の層状シリケート
0.4重量部のジメチルエタノールアミン
0.3重量部の消泡剤
0.7重量部のポリアクリル酸増粘剤
1.7重量部のポリプロピレングリコール900
16.7重量部の有機溶剤(6.6重量部のエチレングリコールモノブチルエーテル、1.9重量部のN−メチルピロリドン、1.0重量部のn−ブタノール、4.5重量部のn−プロパノール、2.2重量部のイソプロパノール、0.5重量部のシェルゾルT)
61.4重量部の脱イオン水。
b)変性された水性ベースコートを、a)からの100重量部の未変性の水性ベースコートを15重量部の実施例1からの混合剤構成材料と混合することによって製造した。
c)変性された水性ベースコートを、a)からの100重量部の未変性の水性ベースコートを12.84重量部の実施例2からの調製品と混合することによって製造した。
【0071】
実施例5(ベースコート層のUV透過率の測定)
変性された水性ベースコート3bおよび3cならびに4bおよび4cをそれぞれ、静電気的にアシストされた高速回転噴霧化を用いて石英ガラス板にそれぞれ塗布した(3bおよび3cを各ケースで17μmの乾燥フィルム厚さに、4bおよび4cを各ケースで15μmの乾燥フィルム厚さに)。
【0072】
室温での3分および40秒フラッシュオフ後に、相当する未変性の水性ベースコート3aおよび4aをそれぞれ5μm乾燥フィルム厚さにそれぞれ空気圧スプレー塗布し、80℃で5分間フラッシュオフし、140℃で20分間ベーキングした。
【0073】
次に、ベースコート層でこのように塗装したシリカガラス板のUV透過率を光度的に測定した(基準ビームパスで未変性シリカガラス板;塗装面からのUV照射)。
【0074】
結果を表1に示す。
【0075】
表1

【0076】
それぞれ実施例1の着色混合剤構成材料を使用して製造された、ベースコート構造体3b+3aおよび4b+4aは、280〜380nmの波長範囲でたったの0.1%未満の、および380〜400nmの波長範囲で0.5%未満のUV透過率を可能にした。それぞれ実施例2の非着色混合剤構成材料を使用して製造された、ベースコート構造体3c+3aおよび4c+4aは当該UV透過率限界値を超えた。
【0077】
実施例6(多層塗膜の製造および技術的試験)
変性された水性ベースコート3bおよび4bをそれぞれ、静電的にアシストされた高速回転噴霧化を用いてEDCプライマーが付いたスチール試験パネルにそれぞれ塗布した(3bを17μmの乾燥フィルム厚さに;4bを15μmの乾燥フィルム厚さに)。
【0078】
室温で3分および40秒フラッシュオフした後に、相当する未変性の水性ベースコート3aおよび4aをそれぞれ5μm乾燥フィルム厚さにそれぞれ空気圧スプレー塗布し、80℃で5分間フラッシュオフした。
【0079】
フラッシュオフしたベースコート層をこのように付けられた試験パネルを次に、2つのやり方でさらに塗装した。
a)ベースコート構造体3b+3aおよび4b+4aをそれぞれ、市販の2成分ポリウレタンクリアコートで40μm層厚さにそれぞれスプレー塗装し、20℃で5分間フラッシュオフした後に140℃物体温度で30分間ベーキングした。
b)実施例6b)と同じ手順に従った。その後変性されたおよび未変性の水性ベースコートならびに2成分ポリウレタンクリアコートの同じ塗膜構造体を再びそして前と同じ条件下に塗布した(修理塗装のシミュレーション)。
【0080】
このように製造した試験パネルを技術的試験にかけ、その結果を表2に示す。
【0081】
表2

1)スチームジェット試験
スチームジェット装置でのクリーニングの効果を、DIN EN ISO 7253に従ったX-カット(対角線の交わり)を90度のスプレー角度で76バール(操作圧力)および60℃(ノズルの10cm前で測定された)のスチームジェットに100mmのノズル距離で60秒間対角線の交わりの交差点で暴露して、予め提供された試験パネルによってシミュレートした。コーティング層間剥離を対角線の交わりのサイドからmm単位で評価した。コーティング層間剥離は受け入れられない。
2)耐石片性(DIN 55996-1)
試験は、VDAによる石片試験装置(会社エリクセン(Erichsen)、モデル508;試験条件:2×500gスチール粗粒子4〜5mm 鋭いエッジの、2バール)を用いて+20℃で実施した。損傷の評価(指標0=剥離なし、指標5=完全な剥離)。
3)モノ−ヒット
「色およびラッカー(Farbe und Lack)」、8/1984、646-653ページに従って石衝撃シミュレーターを用いて試験、試験温度:-20℃、試験検体:0.15gの質量および2mmの直径の球体、衝突角度:88度、衝突速度250 km/h。
【0082】
評価:
mm2単位での損傷の円形面積および1%硫酸銅溶液への10分の暴露によって引き起こされる損傷面積での錆の程度についての記述;錆の程度0=最良の値、錆の程度5=最も不満足な値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)10〜35μm厚さのベースコート層をEDCプライマーが付いた基材に塗布する工程、
2)クリアコート層を該ベースコート層上へ塗布する工程、
3)該ベースコートおよびクリアコート層を一緒に硬化させる工程
の一連の工程を含む、多層塗膜の製造方法であって、
該ベースコート層が第1層におよび第2層に塗布され、該第1層が未変性の水性ベースコートを着色された混合剤構成材料と混合することによって製造された変性された水性ベースコートを含み、そして該第2層が未変性の水性ベースコートを含み、
該混合剤構成材料が1つ以上のバインダーAを含有し、0.05:1〜1:1の顔料内容物対樹脂固形分内容物の重量比を有し、そして0.1〜1部のバインダーA:未変性の水性ベースコートの1部の樹脂固形分の重量比で未変性の水性ベースコートへ混合され、
該混合剤構成材料の顔料内容物がUV透過率を効果的に下げる少なくとも1つの顔料を含み、そして顔料内容物が、280〜380nmの波長範囲で0.1%未満の、および380〜400nmの波長範囲で0.5%未満のUV透過率に従ってのみUV光が変性された水性ベースコートおよび未変性の水性ベースコートから形成されたベースコート層を透過することができるようなものである方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのバインダーAがポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリルコポリマー樹脂およびこれらのクラスの樹脂から誘導されたハイブリッド樹脂からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合剤構成材料の顔料内容物対樹脂固形分内容物の重量比が0.1:1〜0.8:1である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記未変性の水性ベースコートのバインダーA対樹脂固形分の重量比が0.1:1〜0.5:1である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記基材が自動車車体および車体部品からなる群から選択された基材を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記変性された水性ベースコートが5〜25μmのフィルム厚さに、そして前記未変性の水性ベースコートが3〜20μmのフィルム厚さに塗布される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合剤構成材料が20〜100重量%の固形分内容物を含み、そして固形分内容物が樹脂固形分内容物、顔料内容物を形成する顔料、場合により、充填剤および場合により、非揮発性添加剤からなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
UV透過率を効果的に下げる少なくとも1つの顔料がカーボンブラック、二酸化チタン、酸化鉄顔料、アルミニウムフレーク顔料およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記混合剤構成材料の顔料内容物が、
0〜100重量%のカーボンブラック、
0〜100重量%の二酸化チタン、
0〜100重量%の1つ以上のアルミニウムフレーク顔料、
0〜100重量%の1つ以上の酸化鉄顔料および
0〜90重量%の1つ以上の他の顔料
からなり、
ここで、重量百分率が合計100重量%になる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記混合剤構成材料の顔料内容物が、
0〜100重量%のカーボンブラック、
0〜100重量%の二酸化チタンおよび
0〜100重量%の1つ以上のアルミニウムフレーク顔料
からなり、
ここで、重量百分率が合計100重量%になる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合剤構成材料の顔料内容物が、
0.1〜10重量%のカーボンブラックおよび
90〜99.9重量%の二酸化チタン
からなり、ここで、重量百分率が合計100重量%になる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法に従って塗装された基材。

【公表番号】特表2008−529766(P2008−529766A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554311(P2007−554311)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/004227
【国際公開番号】WO2006/084260
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】