説明

プライマー塗布装置及びプライマー塗布方法

【課題】コスト低減と作業環境改善とを図ることが可能なプライマー塗布装置及びプライマー塗布方法を提供する。
【解決手段】プライマーを染みこませたスポンジ部材11を一対のプレス板12に各々設け、電線13の両側からこの電線13を挟み込むように一対のプレス板12を移動させるとともに、一対のプレス板12の移動に伴い一対のスポンジ部材11を電線13に接触させつつ押し潰すことで、一対のスポンジ部材11からそれぞれ染み出したプライマーを電線13の被覆表面に塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマーを電線に塗布する装置、及びプライマーを電線に塗布する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の被覆表面に予めプライマー処理を施した後、この処理を施した部分に接着剤を塗布してグロメットとの接着を行うことにより、電線とグロメットとの接着力を高めるようにした技術が下記特許文献1に開示されている。電線とグロメットとを接着するのは、例えば接着剤を止水材として用いるためである。
【0003】
複数の電線に対してプライマー処理を一括して施す場合、例えば図3に示すような方法が採用される。
【0004】
図3において、先ず、電線整列治具1を用いて複数の電線2を上方に所望の間隔で並べ、次に、プライマー3を吹き付けるスプレーガン4を用意する。そして最後に、複数の電線2のプライマー塗布部分5に向けてプライマー3を吹き付け(噴霧)て塗布すると、プライマー処理が一括して完了する。
【特許文献1】実開昭58−165808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スプレーガン4を用いることにより、プライマー3は霧状に噴出して霧散することから、次のような問題点を有している。すなわち、プライマー3の霧散によって多くの無駄が生じ、これにより材料コストが高くなってしまうという問題点を有している。また、プライマー3の成分に有機溶剤が含まれていると、プライマー3の霧散によって作業環境が悪くなるという問題点を有している。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、コスト低減と作業環境改善とを図ることが可能なプライマー塗布装置及びプライマー塗布方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のプライマー塗布装置は、一対のプレス板と、該一対のプレス板を電線の両側から該電線を挟み込むように移動させるプレス板移動機構と、前記一対のプレス板に各々に設けられ前記電線に接触しながら潰れが生じるとプライマーが染み出る一対のスポンジ部材と、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の本発明のプライマー塗布装置は、請求項1に記載のプライマー塗布装置において、前記プライマーを前記一対のスポンジ部材の各々に定量供給するプライマー定量供給手段を更に備えることを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の本発明のプライマー塗布装置は、請求項2に記載のプライマー塗布装置において、ギアポンプを含んで前記プライマー定量供給手段を構成し、前記ギアポンプの吐出口と前記スポンジ部材とを管部材で接続することを特徴としている。
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項4記載の本発明のプライマー塗布方法は、プライマーを染みこませたスポンジ部材を一対のプレス板に各々設け、電線の両側から該電線を挟み込むように前記一対のプレス板を移動させるとともに、該移動に伴い前記スポンジ部材を前記電線に接触させつつ押し潰すことで、染み出した前記プライマーを前記電線の被覆表面に塗布することを特徴としている。
【0011】
請求項5記載の本発明のプライマー塗布方法は、請求項4に記載のプライマー塗布方法において、前記一対のスポンジ部材の各々に前記プライマーを1プレス毎、若しくは所定プレス回数毎に定量供給することを特徴としている。
【0012】
請求項6記載の本発明のプライマー塗布方法は、請求項5に記載のプライマー塗布方法において、ギアポンプから定量的に吐出した前記プライマーを前記スポンジ部材に染みこませることを特徴としている。
【0013】
以上のような特徴を有する本発明によれば、スポンジ部材が電線の被覆表面に接触しつつ潰れると、スポンジ部材からプライマーが染み出して塗布がなされるようになる。また、本発明によれば、プライマーは定量供給され、これによりプライマーの使用量管理が容易になる。また、本発明によれば、スポンジ部材に対してプライマーを供給するに当たり、ギアポンプを用いることでプライマーへの定量供給が容易になる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、4に記載された本発明によれば、プライマーの無駄は霧散ではなくスポンジ部材からの自然気化のみとなることから、従来に比べてコスト低減と作業環境の改善とを図ることができるという効果を奏する。
【0015】
請求項2、5に記載された本発明によれば、プライマーの定量供給を行うことにより、プライマーの使用量を容易に管理することができるという効果を奏する。
【0016】
請求項3、6に記載された本発明によれば、プライマーの定量供給をより確実に行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のプライマー塗布装置及びプライマー塗布方法の一実施の形態を示す図であり、(a)はプライマーを塗布する直前の状態を示す模式図、(b)はプライマーを塗布している最中の状態を示す模式図である。また、図2はプライマー塗布装置の概略的な構成図である。
【0018】
図1において、本発明は、プライマーを染みこませたスポンジ部材11を一対のプレス板12に各々設け、電線13の両側からこの電線13を挟み込むように一対のプレス板12を移動させるとともに、一対のプレス板12の移動に伴い一対のスポンジ部材11を電線13に接触させつつ押し潰すことで、一対のスポンジ部材11からそれぞれ染み出したプライマーを電線13の被覆表面に塗布することを特徴としている。
【0019】
プライマーの塗布対象となる電線13は1本でも良いが、一括して処理をする場合には、図示の如く、電線13を複数並べることが好ましいものとする。引用符号14は、複数の電線13を整列させる治具(電線整列治具)を示している。本形態においては、電線整列治具14により複数の電線13を上下方向に保持した状態で、電線13の被覆表面にプライマーが塗布されるようになっている。
【0020】
スポンジ部材11は、プライマーが染み込み、また、押し潰すとプライマーが染み出すような部材であって、本形態においては形状の復元性が良好な公知のスポンジが用いられている(例えば不織布のようなものでも適用可能とする。電線13に接触してプライマーが染み出し、これにより塗布することができるような部材であれば特に限定されないものとする)。
【0021】
プライマーは、本形態において電線13とグロメット(図示省略)との接着力を高めるためのものが用いられている。プライマーの種類は、用途に応じて各種選択されるものとする。
【0022】
本発明によれば、上記の如く、一対のスポンジ部材11が電線13の被覆表面に接触しつつ潰れると、スポンジ部材11からプライマーが染み出して塗布がなされるようになる。プライマーの無駄は従来例のような霧散ではなく、スポンジ部材11からの自然気化のみとなることから、本発明は従来例に比べてコスト低減と作業環境の改善とを図ることができるようになる。
【0023】
以下、図2を参照しながら本発明のプライマー塗布装置21の構成等について、もう少し詳しく説明する。
【0024】
図2において、電線整列治具14により上下方向に保持された複数の電線13の左右両側には、一対のプレス板12と、この一対のプレス板12に各々に設けられ一対のスポンジ部材11とが配置されている。一対のスポンジ部材11及び一対のプレス板12は、複数の電線13に対して一括してプライマーを塗布することができるようなサイズに形成されている。
【0025】
一対のプレス板12は、プレス板移動機構22に連結されている。一対のプレス板12は、このプレス板移動機構22の作動によって左右方向に移動するようになっている。一対のプレス板12は、上下方向に保持された複数の電線13を、この電線13の左右両側から挟み込むことができるように配置されている。プレス板移動機構22は、一対のプレス板12を所定のスピードで移動させることができるように構成されている。プレス板移動機構22は、プライマー塗布装置21の制御部23により制御されて作動するようになっている。
【0026】
制御部23は、制御機能、演算機能、記憶機能等を含む構成になっている。すなわち、制御部23は、コンピュータの機能を有している。制御部23は、上記機能に基づくプレス板移動機構制御部24とプライマー定量供給制御部25とを有している。プレス板移動機構制御部24は、プレス板移動機構22を作動させるための制御機能を有している。また、プライマー定量供給制御部25は、一対のスポンジ部材11の各々にプライマーを定量供給するための制御機能を有している。プレス板移動機構制御部24は、信号線を介してプレス板移動機構22に接続されている。また、プライマー定量供給制御部25も信号線を介してプライマー定量供給手段26に接続されている。
【0027】
プライマー定量供給手段26は、プライマーの入ったペール缶27から一対のスポンジ部材11までプライマーを供給するための手段であって、この手段の一部にプライマーを定量で供給することができる部分を含んでいる。もう少し具体的な例で説明すると、プライマー定量供給手段26は、プライマーに対する一次供給部分としてのポンプ28と、分岐部分を有する一次供給管29と、プライマーに対する二次供給部分としての一対のギアポンプ30と、一対の二次供給管31とを備えて構成されている。
【0028】
ポンプ28は、例えばシリンダー型のポンプであって、プライマーの入ったペール缶27からプライマーを吸い上げるとともに、吸い上げたプライマーを一次供給管29に流すことができるようになっている。ポンプ28には、エアホース32を介してエアーが供給されるようになっている。ポンプ28は、プライマー定量供給制御部25により制御されるようになっている。
【0029】
尚、シリンダー型のポンプにあっては、プライマーに脈流が生じてしまうが、この脈流は一対のスポンジ部材11まで伝わることにないようになっている(ギアポンプ30があるため伝わることはない)。
【0030】
ギアポンプ30は、この吸入口に一次供給管29の端末が接続されてプライマーが供給されるようになっている。ギアポンプ30は、ギアの形状をした羽根車が低速で回転し、プライマーを移送することができるようになっている。ギアポンプ30は、上記羽根車の回転数に応じてプライマーの供給量を変化させることができるようになっている。上記羽根車の回転数は、プライマー定量供給制御部25により制御されるようになっている。ギアポンプ30は、脈流のない状態でプライマーをスポンジ部材11に供給することができるようになっている。ギアポンプ30は、一対のプレス板12を移動させるプレス板移動機構22の作動に伴って、言い換えれば、プレス毎にプライマーを供給するようになっている(1プレス毎ではなく、所定プレス回数毎に定量供給するようにしても良いものとする)。
【0031】
二次供給管31は、この一端がギアポンプ30の吐出口に接続されている。二次供給管31は、脈流のない状態のままでプライマーをスポンジ部材11に供給する管部材であって、他端は例えばプレス板12に設けられた接続管33(図1参照)に接続されている。接続管33は、プレス板12を貫通するように設けられており、二次供給管31を介して供給されるプライマー34(図1参照)をスポンジ部材11に供給することができるようになっている。スポンジ部材11は、プライマー34(図1参照)が供給されることによって、このスポンジ部材11全体にプライマー34(図1参照)が染み込むようになっている。尚、接続管33の配置や形状は一例であるものとする。
【0032】
以上、プライマー塗布装置21によれば、プライマーを定量供給する構成にすることで、より一層プライマーの無駄がなくなるようになっている。また、プライマーの使用量管理も容易になっている。
【0033】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のプライマー塗布装置及びプライマー塗布方法の一実施の形態を示す図であり、(a)はプライマーを塗布する直前の状態を示す模式図、(b)はプライマーを塗布している最中の状態を示す模式図である。
【図2】プライマー塗布装置の概略的な構成図である。
【図3】従来例のプライマー塗布装置及びプライマー塗布方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0035】
11 スポンジ部材
12 プレス板
13 電線
14 電線整列治具
21 プライマー塗布装置
22 プレス板移動機構
23 制御部
24 プレス板移動機構制御部
25 プライマー定量供給制御部
26 プライマー定量供給手段
27 ペール缶
28 ポンプ
29 一次供給管
30 ギアポンプ
31 二次供給管(管部材)
32 エアホース
33 接続管
34 プライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のプレス板と、該一対のプレス板を電線の両側から該電線を挟み込むように移動させるプレス板移動機構と、前記一対のプレス板に各々に設けられ前記電線に接触しながら潰れが生じるとプライマーが染み出る一対のスポンジ部材と、を備える
ことを特徴とするプライマー塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプライマー塗布装置において、
前記プライマーを前記一対のスポンジ部材の各々に定量供給するプライマー定量供給手段を更に備える
ことを特徴とするプライマー塗布装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプライマー塗布装置において、
ギアポンプを含んで前記プライマー定量供給手段を構成し、前記ギアポンプの吐出口と前記スポンジ部材とを管部材で接続する
ことを特徴とするプライマー塗布装置。
【請求項4】
プライマーを染みこませたスポンジ部材を一対のプレス板に各々設け、電線の両側から該電線を挟み込むように前記一対のプレス板を移動させるとともに、該移動に伴い前記スポンジ部材を前記電線に接触させつつ押し潰すことで、染み出した前記プライマーを前記電線の被覆表面に塗布する
ことを特徴とするプライマー塗布方法。
【請求項5】
請求項4に記載のプライマー塗布方法において、
前記一対のスポンジ部材の各々に前記プライマーを1プレス毎、若しくは所定プレス回数毎に定量供給する
ことを特徴とするプライマー塗布方法。
【請求項6】
請求項5に記載のプライマー塗布方法において、
ギアポンプから定量的に吐出した前記プライマーを前記スポンジ部材に染みこませる
ことを特徴とするプライマー塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−151965(P2009−151965A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326776(P2007−326776)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】