説明

プライマー樹脂組成物

【課題】 本発明は、ポリエチレンテレフタレート基材との密着性が良好な非塩素系の樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 ポリエチレンテレフタレート基材用の樹脂組成物であって、該樹脂組成物が、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜25モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜75モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成され、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の重量比が(A)/(B)=70/30〜40/60であるブロック共重合体(C)を含有すること特徴とするポリエチレンテレフタレート基材用の樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート基材の保護又は美粧を目的として用いられる樹脂組成物に関する。更に詳しくは、ポリエチレンテレフタレートで成型されたシート、フィルム、成型物に対し、優れた付着性やその他の物性に優れる塗料、印刷インキ、接着剤あるいはプライマー用の樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートは、芳香環を有するともとに分子鎖が流動性を持つ温度では芳香環や分子鎖の配向が起こりやすく、結晶部分を作りやすい。このため、比較的耐熱性の良好な樹脂である。このような結晶性樹脂としての特性を生かし、容器・食品用フィルム、日用雑貨、おもちゃ、衣料用繊維、などに広く用いられている。用途の拡大に伴い、このナイロン樹脂を用いられた各種シート、フィルム、成型物など(ナイロン系基材)の保護又は美粧性が求められている。しかし、ポリエチレンテレフタレート基材は、高い結晶性を有しているため、従来の印刷インキ、接着剤との密着性が十分ではないといった問題があった。
この問題に対しては、印刷あるいは接着剤等を塗装の前処理として、塩素化ポリオレフィンを主成分としたプライマー(下塗り剤)を塗装する方法が開示されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−036128号
【特許文献2】特公昭63−036624号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、塩素化ポリオレフィンを主成分としたプライマーは、ポリエチレンテレフタレート基材に対する付着性は優れるものの、脱塩酸による塩素化ポリオレフィンの安定性の問題があるとともに、近年の環境意識の高まりから、塩素の使用が忌避される傾向がある。このため、ポリエチレンテレフタレート基材との密着性が良好な非塩素系の樹脂組成物、特に非塩素系のプライマー用樹脂組成物が求められている。
そこで、本発明は、ポリエチレンテレフタレート基材との密着性が良好な非塩素系の樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、以下の〔1〕〜〔2〕を提供するものである。
【0006】
〔1〕ポリエチレンテレフタレート基材用の樹脂組成物であって、該樹脂組成物が、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜25モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜75モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成され、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の重量比が(A)/(B)=70/30〜40/60であるブロック共重合体(C)を含有すること特徴とするポリエチレンテレフタレート基材用の樹脂組成物。
【0007】
〔2〕前記ブロック共重合体(C)が全樹脂組成物100重量部に対して、1重量部〜50重量部含有されていることを特徴とする〔1〕記載のポリエチレンテレフタレート基材用の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリエチレンテレフタレート基材との密着性が良好な非塩素系の樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材とは、エチレングリコールとテレフタル酸の脱水縮合により作られ、エステル結合が連なっているポリエステルをシート、フィルム、成型物に加工したものである。
【0010】
本発明におけるブロック共重合体(C)は、以下に述べる重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)から構成されており、例えば、AB型ジブロック共重合体、ABA型トリブロック共重合体、BAB型トリブロック共重合体などを挙げることができる。これらのなかでも、AB型ジブロック共重合体が好ましい。
【0011】
重合体ブロック(A)は、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロックである。すなわち、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体により構成される重合体ブロックである。重合体ブロック(A)におけるオレフィン系単量体単位の含有量としては、重合体ブロック(A)の全構造単位の合計モル数に基づいて50〜100モル%の範囲内であるのが好ましく、70〜100モル%の範囲内であるのがより好ましく、80〜100モル%の範囲内であるのがさらに好ましい。
【0012】
オレフィン系単量体単位とは、オレフィン系単量体から誘導される単位を意味する。オレフィン系単量体単位としては、例えば、エチレン;プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等のα−オレフィン;2−ブテン;イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等の共役ジエン;ビニルシクロヘキサン;β−ピネンなどのオレフィン系単量体から誘導される単位を挙げることができ、重合体ブロック(A)は、これらのオレフィン系単量体単位のうち1種または2種以上を含有することができる。
【0013】
重合体ブロック(A)は、エチレン、プロピレンから誘導される単位を含むのが好ましい。中でも、プロピレンから誘導される単位からなる重合体ブロック;プロピレンから誘導される単位およびプロピレン以外の他のα−オレフィンから誘導される単位からなる共重合体ブロックであるのがより好ましい。重合体ブロック(A)におけるプロピレンの含有量としては、重合体ブロック(A)の全構造単位の合計モル数に基づいて70〜100モル%の範囲内、より好ましくは、80モル%〜100モル%であるのが好ましい。また前記の他のα−オレフィンとしては、エチレン、ブテンが好ましい。
【0014】
上記のオレフィン系単量体単位がブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等の共役ジエンから誘導される単位の場合には、残存する不飽和結合が水素添加されていてもよい。
【0015】
重合体ブロック(A)を構成する重合体は、上記したオレフィン系単量体単位から主としてなるものである。従ってオレフィン系単量体単位のほかに、オレフィン系単量体以外の単位を含み得る。例えば必要に応じて、上記のオレフィン系単量体と共重合可能なビニル系単量体から誘導される単位を0〜50モル%の範囲内の割合で含有することができる。該単量体単位の含有量は、0〜30モル%の範囲内であるのが好ましく、0〜20モル%の範囲内であるのがより好ましい。
【0016】
上記のオレフィン系単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、ビバリン酸ビニル等のビニルエステル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N−ビニル−2−ピロリドンなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、酢酸ビニルが好ましい。
【0017】
重合体ブロック(A)を構成するオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体は、変性されていてもよい。該変性は、該重合体に対して、エポキシ化;ヒドロキシル化;無水カルボン酸化;カルボン酸化などの公知の諸法を用いて行なうことができる。
【0018】
重合体ブロック(A)は、上記したオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を減成したものであっても良い。これにより、重合体ブロック(A)を構成するオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体の末端に二重結合を導入し、重合体ブロック(A)の分子量を調整することができる。減成の方法としては、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を無酸素雰囲気中400〜500℃にて熱分解する方法や、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を無酸素雰囲気中、有機過酸化物存在下にて分解する方法が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。
【0019】
前記有機過酸化物としては、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート等が挙げられる。
【0020】
重合体ブロック(B)は、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体からなる重合体ブロックである。すなわち、前記置換基を有するビニル系単量体及び該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の重合体により構成される重合体ブロックである。
【0021】
重合体ブロック(B)は、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体の単位を重合体ブロック(B)の全構造単位のモル数に基づいて2〜25モル%含有する。この範囲にすることにより、上塗り塗料との密着性の点から好ましい。
【0022】
カルボキシル基を有するビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、マレイン酸などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0023】
無水カルボン酸基(式:−CO−O−CO−で示される基)を有するビニル系単量体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、無水マレイン酸が好ましい。
【0024】
また、スルホン酸基を有するビニル系単量体としては、例えば、4−スチレンスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸などを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。なお、スルホン酸基が、ナトリウムやカリウム等の金属の塩や各種アンモニウム塩となっているビニル単量体を使用することも可能である。
【0025】
重合体ブロック(B)は、上記のカルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位を重合体ブロック(B)の全構造単位のモル数に基づいて75〜98モル%含有する。上記の他のビニル系単量体とは、カルボキシル基、無水カルボン酸基またはスルホン酸基を有するビニル系単量体以外のビニル系単量体を意味し、スチレン、p−スチレンスルホン酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩等のスチレン系単量体;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、ビバリン酸ビニル等のビニルエステル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドンなどが例示され、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、酢酸ビニルが好ましい。
【0026】
本発明における重合体ブロック(B)を構成するモノマーの組み合わせとしては、カルボキシル基を有するビニル形単量体と(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸と、メチルアクリレート、エチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレートなどの(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
なお、本発明において(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタアクリレートを指すものとする。
【0028】
重合体ブロック(A)の重量平均分子量としては、1,000〜100,000の範囲内であるのが好ましく、5,000〜70,000の範囲内であるのがより好ましい。重合体ブロック(B)の重量平均分子量としては、1,000〜100,000の範囲内であるのが好ましく、5,000〜70,000の範囲内であるのがより好ましい。
【0029】
ブロック共重合体(C)の重量平均分子量としては、5,000〜100,000の範囲内であるのが好ましく、10,000〜70,000の範囲内であるのがより好ましい。ブロック共重合体(C)の重量平均分子量が100,000を超える場合は活性エネルギー線硬化性化合物(D)と混合した場合の溶液粘度が高くなる、または溶解し難くなり溶液性状が不安定になる等の問題が生じ、塗工性の低下を引き起こす。ブロック共重合体(C)の重量平均分子量が5,000を下回る場合は凝集力不足となり、ポリオレフィン基材への付着性が発揮できない。なお、本発明でいう重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン検量線から求めた値である。
【0030】
本発明におけるブロック共重合体(C)は、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とから構成されていればよく、その製造方法は特に限定されない。例えば、末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)の存在下に、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分をラジカル重合することにより製造することができる。この方法によれば、目的とする重量平均分子量および分子量分布を有するブロック共重合体(C)を簡便かつ効率的に製造することができる。また、この方法によれば、重合体ブロック(A)として市販品を含む種々のポリオレフィンを前記の通りに減成したものを使用でき、リビング重合によってブロック共重合体を製造する場合に比べて、重合体ブロック(A)の構造や融点を自由に選択することが可能である。
【0031】
末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)は、各種の方法により製造することができる。例えば、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体の末端に二重結合を導入し、この二重結合を介して、チオ酢酸、チオ安息香酸、チオプロピオン酸、チオ酪酸またはチオ吉草酸などを付加させた後、酸またはアルカリで処理する方法、アニオン重合法によりオレフィン系単量体単位から主としてなる重合体を製造する際の停止剤としてエチレンスルフィドを用いる方法などにより製造することができる。
【0032】
末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)の存在下における、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分のラジカル重合は、公知の方法によって進めることが可能である。例えば、末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)をトルエンなどの有機溶剤に溶解した後、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分を加え、撹拌下ラジカル発生剤を添加する溶液法などが挙げられる。また、例えば末端にメルカプト基を有する重合体ブロック(A)をその融点以上に加温することで無溶剤にて溶融した後、重合体ブロック(B)を構成する単量体成分を加え、撹拌下ラジカル発生剤を添加する溶融法なども挙げられる。
【0033】
前記ラジカル重合を行う際のラジカル発生剤は、公知のものより適宜選択することができる。特にアゾ系開始剤が好ましく、例えば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられ、ラジカル重合を行う温度に応じて適切な半減期温度を有するものを選択できる。
【0034】
本発明において、ブロック共重合物(C)は、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の重量比が、重合体ブロック(A)/重合体ブロック(B)=70/30〜40/60であることが必要である。重量比がこの範囲内であると、溶剤溶解性、他樹脂との相溶性の点から好ましい。
【0035】
本発明の組成物は、有機溶剤に溶解して用いることもできる。溶液濃度は用途により適宜選択すればよいが、溶液濃度は高すぎても低すぎても塗工作業性が損なわれるため、樹脂濃度は5〜60重量%が好ましい。使用する溶剤はトルエン、キシレン等の芳香族系溶剤が好ましく、他に酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、n−ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式系溶剤が使用することができる。さらには、樹脂溶液の保存安定性を高めるために、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル等のプロピレン系グリコールエーテルを、単独または2種以上混合して上記溶剤に対し1〜20重量%添加する事が好ましい。
本発明の樹脂組成物はブロック共重合体(C)と有機溶剤を公知の方法にて混合することにより得られる。また、組成物を90℃以下にて一定時間加熱・攪拌した後、冷却することにより、その溶液性状を向上させることができる。
本発明にかかる樹脂組成物は、ポリエチレンテレフタレート系のフィルム、シート、成型物に適用できる塗料、印刷インキ、接着剤及びプライマーとして用いることができる。そのままコーティングして用いてもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で、溶剤、顔料、その他の添加剤を加えて用いてもよい。また、該組成物はそれだけでバランスのとれた塗膜物性を示すが、必要であれば環化ゴム、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂などをさらに添加して用いても差し支えない。
【実施例】
【0036】
次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、下記の参考例において、融点の測定は次のようにして行った。
(融点の測定方法)
融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定する。融点Tmの測定は、例えば以下の条件で行うことができる。DSC測定装置(セイコー電子工業製)を用い、約10mgの試料を200℃で5分間融解後、−60℃まで10℃/minの速度で降温して結晶化した後に、更に10℃/minで200℃まで昇温して融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度をTmとして評価する。尚、後述の参考例におけるTmは前述の条件で測定されたものである。
【0037】
(塩素含有率)
JIS−K7229に準じて測定した。
【0038】
(実施例1)
ブロック共重合体(融点75℃ ポリオレフィンブロック/エチルアクリレート−アクリル酸ブロック共重合体)の製造
(1)オレフィン系重合体(プロピレン成分92モル%、エチレン成分8モル%であるプロピレン系共重合体を、メタロセン触媒を用いて製造した。重量平均分子量80,000、Tm=75℃)を二軸押出機に供給し、420℃で溶融混練して熱分解させて、末端に二重結合を有するポリオレフィンをそれぞれ製造した。
(2)上記(1)で得られた末端に二重結合を有するポリオレフィン100重量部、キシレン300重量部およびチオ酢酸10重量部を反応器に入れて、内部を充分に窒素置換した後、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を加えて、90℃で2時間反応させて、末端にチオアセチル基を有するポリオレフィンを製造した。
(3)上記(2)で得られた末端にチオアセチル基を有するポリオレフィン100重量部を、キシレン200重量部とn−ブタノール20重量部の混合溶媒中に溶解し、水酸化カリウムの4%n−ブタノール溶液10重量部を加えて、窒素中110℃で1時間反応させることにより、末端にメルカプト基を有するポリオレフィンを製造した。
(4)上記(3)で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにエチルアクリレート85重量部、アクリル酸5重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり10〜20%になるように2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、重合率が95%になった時点で反応を停止した。反応液を冷却後、溶媒を除去し、ポリオレフィンブロック(A)およびエチルアクリレートーアクリル酸ブロック(B)から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(2)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(2)の重合体ブロック(A)の重量平均分子量は21000、重合体ブロック(B)の重量平均分子量は19000、ブロック共重合体(2)の重量平均分子量は40000であり、重合体ブロック(A)の融点は75℃であった。
【0039】
(実施例2)
ブロック共重合体(融点75℃ ポリオレフィンブロック/エチルアクリレート−アクリル酸ブロック共重合体)の製造
(1)オレフィン系重合体(プロピレン成分92モル%、エチレン成分8モル%であるプロピレン系共重合体を、メタロセン触媒を用いて製造した。重量平均分子量80,000、Tm=75℃)を二軸押出機に供給し、420℃で溶融混練して熱分解させて、末端に二重結合を有するポリオレフィンをそれぞれ製造した。
(2)上記(1)で得られた末端に二重結合を有するポリオレフィン100重量部、キシレン300重量部およびチオ酢酸10重量部を反応器に入れて、内部を充分に窒素置換した後、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を加えて、90℃で2時間反応させて、末端にチオアセチル基を有するポリオレフィンを製造した。
(3)上記(2)で得られた末端にチオアセチル基を有するポリオレフィン100重量部を、キシレン200重量部とn−ブタノール20重量部の混合溶媒中に溶解し、水酸化カリウムの4%n−ブタノール溶液10重量部を加えて、窒素中110℃で1時間反応させることにより、末端にメルカプト基を有するポリオレフィンを製造した。
(4)上記(3)で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにエチルアクリレート85重量部、アクリル酸2.0重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり10〜20%になるように2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、重合率が95%になった時点で反応を停止した。反応液を冷却後、溶媒を除去し、ポリオレフィンブロック(A)およびエチルアクリレートーアクリル酸ブロック(B)から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(2)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(2)の重合体ブロック(A)の重量平均分子量は21000、重合体ブロック(B)の重量平均分子量は18000、ブロック共重合体(2)の重量平均分子量は39000であり、重合体ブロック(A)の融点は75℃であった。
【0040】
(実施例3)
ブロック共重合体(融点75℃ ポリオレフィンブロック/エチルアクリレート−アクリル酸ブロック共重合体)の製造
(1)オレフィン系重合体(プロピレン成分92モル%、エチレン成分8モル%であるプロピレン系共重合体を、メタロセン触媒を用いて製造した。重量平均分子量80,000、Tm=75℃)を二軸押出機に供給し、420℃で溶融混練して熱分解させて、末端に二重結合を有するポリオレフィンをそれぞれ製造した。
(2)上記(1)で得られた末端に二重結合を有するポリオレフィン100重量部、キシレン300重量部およびチオ酢酸10重量部を反応器に入れて、内部を充分に窒素置換した後、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を加えて、90℃で2時間反応させて、末端にチオアセチル基を有するポリオレフィンを製造した。
(3)上記(2)で得られた末端にチオアセチル基を有するポリオレフィン100重量部を、キシレン200重量部とn−ブタノール20重量部の混合溶媒中に溶解し、水酸化カリウムの4%n−ブタノール溶液10重量部を加えて、窒素中110℃で1時間反応させることにより、末端にメルカプト基を有するポリオレフィンを製造した。
(4)上記(3)で得られた末端にメルカプト基を有するポリオレフィン100重量部をトルエン250重量部に溶解し、これにエチルアクリレート85重量部、アクリル酸20重量部を加えて、窒素中、90℃で、重合速度が1時間あたり10〜20%になるように2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、重合率が95%になった時点で反応を停止した。反応液を冷却後、溶媒を除去し、ポリオレフィンブロック(A)およびエチルアクリレートーアクリル酸ブロック(B)から構成されるAB型ジブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(2)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(2)の重合体ブロック(A)の重量平均分子量は21000、重合体ブロック(B)の重量平均分子量は16000、ブロック共重合体(2)の重量平均分子量は37000であり、重合体ブロック(A)の融点は75℃であった。
【0041】
(参考例1)
二軸押出機に、メタロセン触媒を重合触媒として製造したプロピレン系ランダム共重合体(プロピレン約97%−エチレン約3%)(日本ポリケム株式会社製 Tm=125℃)500g、無水マレイン酸30g、ジクミルパーオキサイド15gを投入した。滞留時間は10分、バレル温度は180℃(第1バレル〜第7バレル)として反応し、第7バレルにて脱気を行い、未反応の無水マレイン酸を除去し無水マレイン酸変性プロピレン系ランダム共重合体を得た。この樹脂500gをグラスライニングされた反応釜に投入し、5Lのクロロホルムを加え、2kg/cm2の圧力下、紫外線を照射しながらガス状の塩素を反応釜底部より吹き込み塩素化した。途中抜き取りを行い、それぞれ溶媒であるクロロホルムをエバポレーターで留去し、トルエンで置換し無水マレイン酸で変性された塩素化プロピレン系ランダム共重合体の20重量%溶液を得た。なお、得られた塩素化プロピレン系ランダム共重合体の塩素含有率は20.8%、塩素化プロピレン系ランダム共重合体に対する無水マレイン酸含有量は5.0重量%であった。
(参考例2)
参考例1と同様にして、塩素含有率は25.1%、無水マレイン酸含有量は5.1重量%の塩素化プロピレン系ランダム共重合体を得た。
【0042】
〈PET基材付着性試験〉
実施例1〜3と比較例1の15%トルエン溶液をPET基材に乾燥被膜厚が10μm以上15μm以下となるようにスプレー塗布し、80℃で30分間乾燥を行った。一晩静置した後、碁盤目付着試験を実施した。
・付着性評価
塗面上に2mm間隔で素地に達する100個の碁盤目を作り、その上にセロハン粘着テープを密着させて180度方向に引き剥し、塗膜の残存する程度で判定した。結果を(表1)に示す。
【0043】
〈プライマー試験〉
実施例1〜3と比較例1の10%トルエン溶液をPET基材に乾燥被膜厚が10μm以上15μm以下となるようにスプレー塗布し、10分室温に静置した。次に、顔料成分が含まれているベース(下塗り)塗料(溶剤系)をスプレー塗装し、10分室温に静置後、クリアー樹脂成分と硬化剤の2種類が含まれているクリアー(上塗り)塗料(溶剤系)を塗装し、10分室温に静置した後、80℃で30分間焼付を行った。試験片を室温で3日間静置した後、上記の付着試験と同様の試験を行った。結果を(表1)に示す。
【0044】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート基材用の樹脂組成物であって、該樹脂組成物が、オレフィン系単量体単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、カルボキシル基を有するビニル系単量体の単位2〜25モル%および該ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の単位98〜75モル%からなる重合体ブロック(B)とから構成され、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の重量比が(A)/(B)=70/30〜40/60であるブロック共重合体(C)を含有すること特徴とするポリエチレンテレフタレート基材用の樹脂組成物。
【請求項2】
前記ブロック共重合体(C)が全樹脂組成物100重量部に対して、1重量部〜50重量部含有されていることを特徴とする請求項1記載のポリエチレンテレフタレート基材用の樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−72049(P2013−72049A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213633(P2011−213633)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】