説明

プライマー組成物および粘着シート

【課題】優れた投錨力および優れた耐湿性を有する粘着シート、および、塗工性が良好であり、その粘着シートの下塗り層を形成するためのプライマー組成物を提供する。
【解決手段】無機粒子からなるコアと、無機粒子を被覆する樹脂からなるシェルとから形成されるコアシェル粒子を含むプライマー組成物を得る。基材1の表面に、プライマー組成物から形成される下塗り層2を積層し、下塗り層2の表面に、粘着剤層3を積層して、粘着シート4を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物および粘着シート、詳しくは、各種産業分野に広く用いられるプライマー組成物およびそれを用いる粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粘着シートは、各種産業分野に広く用いられており、基材およびその上に積層される粘着剤層を備えており、投錨力を向上させる目的で、基材および粘着剤層の間に下塗り層を介在させることが知られている。
【0003】
例えば、エチルアミノバインダー(エチレンイミン系バインダー)に水系コロイダルシリカを配合することにより得られるプライマー組成物が提案されており、かかるプライマー組成物から形成される下塗り層が、基材と粘着剤層との間に介在された粘着シートが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−327955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、粘着シートには、より一層優れた投錨力が求められており、特許文献1に記載の粘着シートでは、投錨力が不十分となる場合がある。
【0006】
とりわけ、粘着シートは、高温高湿雰囲気下において投錨力が低下し易いことから、優れた耐湿性が要求される。
【0007】
また、粘着シートの製造においては、さらに、プライマー組成物の塗工性の向上を図ることが望まれている。
【0008】
本発明の目的は、優れた投錨力および優れた耐湿性を有する粘着シート、および、塗工性が良好であり、その粘着シートの下塗り層を形成するためのプライマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のプライマー組成物は、無機粒子からなるコアと、前記無機粒子を被覆する樹脂からなるシェルとから形成されるコアシェル粒子を含むことを特徴としている。
【0010】
また、本発明のプライマー組成物では、前記樹脂が、(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分を重合して得られるアクリル樹脂であることが好適である。
【0011】
また、本発明のプライマー組成物では、前記無機粒子の含有割合が、前記樹脂100質量部に対して、20〜500質量部であることが好適である。
【0012】
また、本発明の粘着シートは、基材と、前記基材の表面に積層され、上記のプライマー組成物から形成される下塗り層と、前記下塗り層の表面に積層される粘着剤層とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプライマー組成物は、無機粒子からなるコアと、無機粒子を被覆する樹脂からなるシェルとから形成されるコアシェル粒子を含むため、塗工性に優れ、また、このプライマー組成物から形成される下塗り層を備える本発明の粘着シートは、優れた投錨力を有している。
【0014】
また、本発明の粘着シートは、優れた耐湿性を有しているので、高温高湿雰囲気下においても、優れた信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の粘着シートの一実施形態の拡大断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のプライマー組成物は、無機粒子からなるコアと、無機粒子を被覆する樹脂からなるシェルとから形成されるコアシェル粒子を含んでいる。
【0017】
コアシェル粒子において、コアを形成する無機粒子としては、特に制限されず、例えば、シリカ(SiOあるいはSiO)、アルミナ(Al)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化チタン(チタニア、TiO)、ジルコニア(ZnO)などの無機化合物、さらには、無機顔料、導電体、磁性体などが挙げられる。
【0018】
無機顔料としては、白色顔料(例えば、酸化亜鉛、リトポンなど)、黄色顔料(例えば、クロムエロー、ニッケルチタンエロー、酸化鉄黄、黄色酸化鉛など)、赤色顔料(例えば、酸化鉄赤、赤色酸化鉛、モリブデンレッドなど)、橙色顔料(例えば、モリブデートオレンジなど)、緑色顔料(例えば、クロムグリーン、酸化クロムなど)、青色顔料(例えば、紺青、群青、コバルトブルー)、紫色顔料(例えば、マンガンバイオレットなど)、黒色顔料(例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック、黒色酸化鉄など)などが挙げられる。
【0019】
また、無機顔料としては、さらに、体質顔料(例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムなど)などが挙げられる。
【0020】
導電体としては、例えば、金、銀、白金、アルミニウム、または、これらの合金などが挙げられる。
【0021】
磁性体としては、例えば、フェライトなどが挙げられる。
【0022】
また、無機粒子としては、例えば、コロイド状の上記無機粒子を用いることもできる。
【0023】
コロイド状の無機粒子としては、例えば、コロイド状シリカ(コロイダルシリカ)、コロイド状アルミナ(アルミナゾル)、コロイド状酸化スズ(酸化スズ水分散体)、コロイド状酸化チタン(チタニアゾル)などが挙げられる。
【0024】
これら無機粒子は、単独使用または2種類以上併用することもできる。
【0025】
無機粒子として、好ましくは、コロイド状の無機粒子、より好ましくは、コロイダルシリカが挙げられる。
【0026】
コロイダルシリカとしては、例えば、特開昭53−112732号公報、特公昭57−9051号公報、特公昭57−51653号公報などにも記載されるように、二酸化ケイ素(無水ケイ酸)の微粒子(平均粒子径が、例えば、5nm〜1μm、好ましくは、10〜100nm)のコロイドなどが挙げられる。
【0027】
また、コロイド状シリカは、必要により、例えば、アルミナ、アルミン酸ナトリウムなどを含有することができ、また、必要により、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなど)や、有機塩基(例えば、テトラメチルアンモニウムなど)などの安定剤を含有することもできる。
【0028】
このようなコロイド状シリカは、特に制限されず、公知のゾル−ゲル法など、具体的には、例えば、Werner Stober et al;J.Colloid and Interface Sci., 26, 62−69 (1968)、Rickey D.Badley et al;Langmuir 6, 792−801 (1990)、色材協会誌,61 [9] 488−493 (1988)などに記載されるゾル−ゲル法などにより、製造することができる。
【0029】
また、このようなコロイダルシリカとしては、市販品を用いることができ、具体的には、例えば、スノーテックス−XL、スノーテックス−YL、スノーテックス−ZL、PST−2、スノーテックス−20、スノーテックス−30、スノーテックス−C、スノーテックス−O、スノーテックス−50(以上、日産化学工業社製)、アデライトAT−30、アデライトAT−40、アデライトAT−50(以上、日本アエロジル社製)などが挙げられる。
【0030】
また、上記したコロイダルシリカ以外のコロイド状の無機粒子としても、市販品を用いることができ、具体的には、例えば、アルミナゾル100、アルミナゾル200、アルミナゾル520(以上、日産化学工業社製)などのアルミナゾル(ヒドロゾル)、例えば、TTO−W−5(石原産業社製)やTS−020(テイカ社製)などのチタニアゾル(ヒドロゾル)、例えば、SN−100D、SN−100S(以上、石原産業社製)などの酸化スズ水分散体などが挙げられる。
【0031】
また、無機粒子としては、針状、板状(または鱗片状)、球状、塊状などの種々の形状の無機粒子を用いることができ、そのような無機粒子の動的光散乱(DNS法)により測定される粒子径は、例えば、5〜500nm、好ましくは、5〜200nmである。
【0032】
粒子径が上記範囲であれば、高温高湿条件下における投錨力の向上を図ることができる。
【0033】
なお、詳しくは後述するが、このような無機粒子は、必要により、表面処理される。
【0034】
コアシェル粒子において、シェルを形成する樹脂としては、例えば、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0035】
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分を重合することにより、得ることができる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルを含む。
【0036】
モノマー成分において、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、t−ペンチル(メタ)アクリレート、3−ペンチル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチル−2−プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1−20)アルキルエステル類などが挙げられる。
【0037】
また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、さらに、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートなど)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、多環式(メタ)アクリレート(例えば、2−イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5−ノルボルネン−2−イル−メチル(メタ)アクリレート、3−メチル−2−ノルボルニルメチル(メタ)アクリレートなど)、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメチル−ブチル(メタ)メタクリレートなど)、アルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなど)、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、ハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなど)、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)などが挙げられる。
【0038】
これら(メタ)アクリル酸エステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0039】
(メタ)アクリル酸エステルとして、好ましくは、アクリル酸(炭素数1−20)アルキルエステル類が挙げられ、より好ましくは、メチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
また、モノマー成分は、さらに、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な、共重合性単量体を含有することもできる。
【0041】
共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド類(例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−i−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなど)、シアン化ビニル類(例えば、(メタ)アクリロニトリルなど)、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニルなど)、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、p−クロロスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウムなど)、カルボキシル基含有単量体またはその塩(例えば、(メタ)アクリル酸,イタコン酸,マレイン酸,フマル酸またはその塩など)、スルホン酸基含有単量体またはその塩(例えば、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウムなど)、不飽和多価カルボン酸誘導体(例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチルなどのエステル類、N−フェニルマレイミドなどのN−置換マレイミドなど)、N−ビニル多価カルボン酸イミド(例えば、N−ビニルスクシンイミドなど)、ジエン類(例えば、ブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレンなど)、複素環式ビニル単量体(例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、1−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジンなど)、N−ビニルアミド類(N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミドなど)、ハロゲン含有ビニル単量体(ビニルクロライド,ビリデンクロライドなど)、ビニルアルキルエーテル類(例えば、メチルビニルエーテルなど)、オレフィン類(エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなど)などが挙げられる。
【0042】
また、共重合性単量体としては、さらに、2つ以上の不飽和基を有する、多官能性共重合性単量体も挙げられる。
【0043】
多官能性共重合性単量体としては、例えば、ジ(メタ)アクリレート類(例えば、4,4’−イソプロピリデンジフェニレンジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキシレンジメチレン(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、ジイソプロピリデングリコールジ(メタ)アクリレート、エチリデンジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチル−1,3−トリメチレンジ(メタ)アクリレート、フェニルエチレンジ(メタ)アクリレート、2,2,2−トリクロロエチリデンジ(メタ)アクリレートなど)、トリ(メタ)アクリレート類(例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチリジントリ(メタ)メタクリレート、プロピリジントリ(メタ)アクリレートなど)、テトラ(メタ)アクリレート類(例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレートなど)、ビス(メタ)アクリルアミド類(例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N−(1,2−ジヒドロキシ)エチレンビス(メタ)アクリルアミドなど)、さらには、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルオキシメタン、アリル(メタ)アクリレート、1,6−ジ(メタ)アクリルアミドヘキサン、1,3,5−トリ(メタ)アクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビス(メタ)アクリルアミド酢酸、ビニルアリルオキシアセテートなどが挙げられる。
【0044】
さらに、共重合性単量体としては、架橋などを構成するため、さらに、公知の反応性基(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、酸無水物基、グリシジル基など)を有する共重合性単量体も挙げられる。
【0045】
これら共重合性単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0046】
共重合性単量体として、好ましくは、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物、カルボキシル基含有単量体またはその塩が挙げられ、より好ましくは、カルボキシル基含有単量体が挙げられ、さらに好ましくは、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0047】
モノマー成分において、(メタ)アクリル酸エステルの含有割合は、モノマー成分の総量100質量部に対して、例えば、0.01〜100質量部である。
【0048】
コアシェル粒子は、特に制限されず、公知の製造方法により得ることができる。
【0049】
より具体的には、例えば、無機粒子を水性媒体(例えば、水)中に分散させ、その分散系において、無機粒子(コア)の表面でモノマー成分を重合させる。これにより、無機粒子(コア)の表面に、樹脂からなるシェルを形成することができ、コアシェル粒子を得ることができる。
【0050】
以下において、コアシェル粒子を製造する方法について、より具体的に説明する。
【0051】
このような方法では、必要により、まず、無機粒子を表面処理する。
【0052】
すなわち、無機粒子が水性媒体(例えば、水)中に分散する場合には、その分散系において、無機粒子は、通常、負電荷を帯び、安定化される。このような場合には、無機粒子の表面でモノマー成分を重合させることが困難である場合があるため、無機粒子の表面でモノマー成分を重合させるために、好ましくは、無機粒子を表面処理する。
【0053】
表面処理としては、例えば、無機粒子の表面にノニオン界面活性剤(以下、後述する第2ノニオン界面活性剤と区別する場合には、第1ノニオン界面活性剤と称する。)を吸着させることなどが挙げられる。このような表面処理により、無機粒子の表面が親水性である場合にも、無機粒子の表面を疎水化でき、無機粒子の表面におけるモノマー成分の重合を促進することができる。
【0054】
無機粒子の表面にノニオン界面活性剤を吸着させるには、例えば、まず、無機粒子とノニオン界面活性剤とを、ノニオン界面活性剤の曇点未満の温度条件下において混合し、その後、ノニオン界面活性剤の曇点以上の温度に加熱する。
【0055】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、蛋白質(ゼラチン、コロイド状アルブミン、カゼイン、レシチンなど)、糖誘導体(寒天、デンプン誘導体など)、セルロース誘導体(ヒドロキシメチルセルロースなど)、多価アルコールのエステル類(エチレングリコールモノ脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸のモノグリコールエステル、ステアリン酸のモノグリコールエステルなど)、ポリエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸モノグリセリドなど)、グリセリンジ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、合成親水性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、末端長鎖アルキル基変性ポリビニルアルコール、ビニル重合体((メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、アルキルビニルエーテル、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する単量体を構成要素として含む単独、または、共重合体)、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)、または、その誘導体(例えば、ポリオキシエチレン(炭素数6−20)アルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなど)、ポリオキシエチレン(炭素数6−20)アルキルアリールエーテル(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなど)など)、脂肪酸エステルのアルキレンオキサイド付加体(例えば、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンショ糖(炭素数12−20)脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン(炭素数12−20)脂肪酸エステルなど)など))や、例えば、ポリオキシアルキレンブロック共重合体(例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体など)、アリル基などのエチレン性不飽和基(重合性不飽和合)を少なくとも1つ有するポリオキシエチレン(炭素数6−20)アルキルフェニルエーテル(例えば、1−アリルオキシメチル−2−ノニルフェニルオキシエタノールエチレンオキサイド付加体など)などが挙げられる。
【0056】
また、ノニオン界面活性剤としては、さらに、アンカー基と分散安定化基とが分離した、グラフトポリマー、ブロックポリマー、マクロマーなども挙げられる。
【0057】
これらノニオン界面活性剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0058】
また、ノニオン界面活性剤として、不飽和結合(例えば、ビニル、イソプロペニル、(メタ)アクリロイルなど)を有するノニオン界面活性剤を用いると、無機粒子の表面に吸着したノニオン界面活性剤と、モノマー成分とを重合できる。
【0059】
また、ノニオン界面活性剤は、市販品としても入手可能であり、そのような市販品としては、例えば、エマルゲン108(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王社製、曇点40℃)、エマルゲン409P(ポリオキシエチレンステアリルエーテル、花王社製、曇点55℃)、エマルゲン909(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、花王社製、曇点40℃)、プルロニックL61(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、旭電化工業社製、曇点24℃)、プルロニックL−64(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、旭電化工業社製、曇点58℃)、NE−10(1−アリルオキシメチル−2−ノニルフェニルオキシエタノールエチレンオキサイド付加体、旭電化工業社製、曇点40℃)などが挙げられる。
【0060】
ノニオン界面活性剤のHLBは、特に制限されず、例えば、1〜30、好ましくは、3〜25、より好ましくは、5〜20である。
【0061】
ノニオン界面活性剤の曇点は、例えば、0〜80℃、好ましくは、10〜70℃、より好ましくは、20〜60℃である。
【0062】
なお、ノニオン界面活性剤の曇点とは、ノニオン界面活性剤の存在下、無機粒子が水性媒体(例えば、水)中に分散した系において、昇温により白濁が生じる温度を示す。
【0063】
また、この方法では、例えば、無機粒子の分散安定化を図るため、乳化重合に一般的に使用されるアニオン界面活性剤を配合することもできる。
【0064】
アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0065】
これらアニオン界面活性剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0066】
なお、無機粒子は、通常、水性媒体(例えば、水)中において、負電荷を帯びているため、アニオン界面活性剤の吸着効率は低いものと予想されるが、負電荷を有するアニオン界面活性剤は、負電荷を帯びている無機粒子に対し、単独でミセルを形成する場合がある。そのため、混合初期にアニオン界面活性剤を添加すると、ポリマー単独粒子が多数生成するおそれがある。
【0067】
そこで、この方法では、例えば、まず、ノニオン界面活性剤を無機粒子の表面に吸着させ、その後、アニオン界面活性剤を添加する。
【0068】
より具体的には、例えば、ノニオン界面活性剤が無機粒子へ均一に吸着した後、または、モノマー成分が重合し、安定化されたシード状粒子が生成した後に、アニオン界面活性剤を添加する。
【0069】
これにより、ノニオン界面活性剤を無機粒子の表面に有効に吸着させることができ、さらには、アニオン界面活性剤を無機粒子の表面に有効に吸着させることができる。
【0070】
アニオン界面活性剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0071】
次いで、この方法では、無機粒子が分散された水性媒体(例えば、水)中において、モノマー成分を重合させる。
【0072】
このとき、無機粒子の表面はノニオン界面活性剤(および必要によりアニオン界面活性剤)による表面処理により疎水化されているため、モノマー成分を無機粒子の表面において効率的に重合させ、樹脂からなるシェルを形成することができる。
【0073】
重合方法としては、特に制限されないが、例えば、水性媒体(例えば、水)中における乳化重合法が挙げられる。
【0074】
乳化重合法では、例えば、分散系(上記したノニオン界面活性剤の存在下、無機粒子が分散された水性媒体(例えば、水))中に、モノマー成分を配合する。
【0075】
モノマー成分の配合方法は、一括であってもよく、連続的であってもよく、また、段階的であってもよい。好ましくは、連続的または段階的に配合する。
【0076】
分散系にモノマー成分を一括で配合すると、無機粒子の表面に吸着したノニオン界面活性剤がモノマー成分の油滴に溶解され、そのノニオン界面活性剤が減少し、コアシェル粒子を効率よく得られない場合がある。
【0077】
なお、例えば、シードとして、安定な粒子が生成した後、モノマー成分を一括で配合してもよい。また、反応系にモノマー成分を追加(添加)する場合、モノマー成分の組成は、最初に配合した組成と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0078】
この重合における各成分の配合割合は、モノマー成分100質量部に対して、無機粒子が、例えば、1〜1500質量部、好ましくは、5〜500質量部、より好ましくは、20〜250質量部であり、ノニオン界面活性剤(第1ノニオン界面活性剤)が、例えば、0.1〜20質量部、好ましくは、0.5〜1.5質量部、より好ましくは、1〜10質量部である。
【0079】
また、重合条件は、重合温度が、例えば、ノニオン界面活性剤の曇点を超過し、具体的には、例えば、20〜110℃、好ましくは、30〜100℃、より好ましくは、60〜100℃、さらに好ましくは、70〜90℃である。
【0080】
また、この方法では、必要により、重合開始剤を配合することができる。
【0081】
重合開始剤としては、例えば、過酸化物(例えば、過酸化水素など)、過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム)、水性アゾ化合物やレドックス重合開始剤などが挙げられる。
【0082】
これら重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0083】
重合開始剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0084】
また、重合において、樹脂の分子量を調整するため、さらに、例えば、連鎖移動剤を配合することができる。
【0085】
連鎖移動剤としては、例えば、ビニル単量体に可溶な有機過酸化物、有機アゾ化合物、ハロゲン化炭化水素(四塩化炭素など)、メルカプタン類、チオール類などが挙げられる。
【0086】
これら連鎖移動剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0087】
連鎖移動剤の配合割合は、例えば、モノマー成分100質量部に対して、例えば、5質量部以下である。
【0088】
また、この方法では、必要により、pH調整剤(例えば、酸(硫酸、塩酸など)、アンモニア、アミンなど)を、反応系(重合系)および/または反応終了後の水性分散体に添加し、反応系(重合系)および/または水性分散体のpHを、例えば、7〜9、好ましくは、7.5〜8.5に調整することができる。
【0089】
反応系(重合系)および/または水性分散体のpHを調整することにより、無機粒子の分散安定性の向上を図ることができる。
【0090】
さらに、この方法では、必要により、架橋剤を配合することができる。
【0091】
架橋剤としては、特に制限されず、公知の架橋剤が挙げられ、より具体的には、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。
【0092】
これら架橋剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0093】
架橋剤の配合割合は、目的および用途に応じて適宜設定される。
【0094】
また、この方法では、ノニオン界面活性剤が無機粒子の表面に吸着するに伴って、および/または、モノマー成分の重合が進行するに伴って、無機粒子が疎水化し、分散安定性が低下して、凝集ゲル化する場合がある。
【0095】
そのため、この方法では、疎水化した無機粒子を水性媒体(例えば、水)中で分散安定化させるために、さらに、上記と同様のノニオン界面活性剤(第2ノニオン界面活性剤)を添加することができる。
【0096】
添加されるノニオン界面活性剤は、例えば、無機粒子およびノニオン界面活性剤の混合初期に添加してもよく、また、昇温時、重合初期、重合後などに添加してもよい。
【0097】
好ましくは、無機粒子およびノニオン界面活性剤を混合し、ノニオン界面活性剤の曇点以上の温度に加熱した後、さらに、ノニオン界面活性剤を添加する。
【0098】
第2ノニオン界面活性剤の曇点は、第1ノニオン界面活性剤が吸着した無機粒子を分散安定化させるために、好ましくは、第1ノニオン界面活性剤の曇点を超過し、また、モノマー成分が重合する過程で無機粒子を安定化させるために、好ましくは、重合温度(後述)を超過する。
【0099】
このような第2ノニオン界面活性剤は、疎水化された無機粒子の表面に配向し、無機粒子を安定化し、さらには第1ノニオン界面活性剤とともに、無機粒子の表面におけるモノマー成分の重合を容易とする。
【0100】
第2ノニオン界面活性剤としては、上記したノニオン界面活性剤と同様の界面活性剤が挙げられ、その配合割合は、ミセル形成によるモノマー成分の単独粒生成を防止するために、臨界ミセル濃度(CMC)以下であることが挙げられる。
【0101】
より具体的には、第2ノニオン界面活性剤の配合割合(固形分換算)は、無機粒子100質量部に対して、例えば、0.01〜5質量部、好ましくは、0.1〜3質量部、より好ましくは、0.1〜2質量部である。
【0102】
そして、これにより、樹脂が、無機粒子に直接または界面活性剤を介して結合するコアシェル粒子を形成でき、そのコアシェル粒子が水系媒体(例えば、水)に分散された分散液として、プライマー組成物を得ることができる。
【0103】
分散液において、その固形分濃度は、例えば、10〜60質量%、好ましくは、30〜55質量%である。
【0104】
また、分散液中の固形分としては、その全てがコアシェル粒子でなくともよく、固形分は、コアシェル粒子と、モノマー成分および/または無機粒子とを含むことができる。
【0105】
また、コアシェル粒子は、無機粒子の表面すべてを樹脂が被覆するものの他、無機粒子の表面の一部を樹脂が被覆するものを含む。
【0106】
このような場合において、固形分中のコアシェル粒子の含有割合は、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上、通常、99質量%以下である。
【0107】
また、コアシェル粒子において、シェルのガラス転移温度は、例えば、−80〜180℃、好ましくは、−50〜50℃である。
【0108】
シェルのガラス転移温度が上記範囲であれば、優れた透明性を確保することができる。
【0109】
なお、シェルのガラス転移温度は、例えば、シェルを形成する樹脂と同様の樹脂を調製し、そのガラス転移温度を熱分析などで測定することにより、求めることができる。
【0110】
このようなコアシェル粒子を含むプライマー組成物において、無機粒子(固形分)の含有割合は、樹脂(固形分)100質量部に対して、例えば、1〜500質量部、好ましくは、5〜500質量部、より好ましくは、20〜500質量部、さらに好ましくは、20〜250質量部である。
【0111】
なお、無機粒子の含有割合は、モノマー成分および無機粒子の仕込みの処方から算出できる。
【0112】
無機粒子の含有割合が上記範囲であれば、基材と粘着剤層との密着性を良好とすることができ、かつ、高温高湿雰囲気下における密着性も良好とすることができる。
【0113】
そして、このようなプライマー組成物は、粘着シートにおいて、基材と粘着剤層との間に介在される下塗り剤として好適に用いられ、詳しくは、例えば、医療用粘着シート用プライマー組成物、光学用粘着シート用プライマー組成物などの、各種産業分野における粘着シート用プライマー組成物、とりわけ、電子機器用粘着シート用プライマー組成物として、好適に用いられる。
【0114】
図1は、本発明の粘着シートの一実施形態の拡大断面図を示す。
【0115】
次に、上記したプライマー組成物から形成される下塗り層を備える本発明の粘着シートの一実施形態について図1を参照して説明する。
【0116】
図1において、この粘着シート4は、基材1と、基材2の表面に積層される下塗り層2と、下塗り層2の表面に積層される粘着剤層3とを備えている。
【0117】
基材1は、例えば、シート状に形成されている。基材1を形成する材料としては、例えば、ポリエステル(具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)など)、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニールアルコール、ナイロン、熱可塑性ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂、例えば、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂(耐熱性樹脂)などの樹脂が挙げられる。なお、上記した樹脂には、必要により、充填剤、酸化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤などの添加剤を適宜の割合で添加することもできる。また、基材1として、上記した樹脂から形成される不織布も挙げられる。
【0118】
基材1を形成する材料として、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0119】
また、基材1の表面(下面)には、例えば、コロナ処理を施すこともできる。
【0120】
基材1の厚みは、例えば、1〜1000μm、好ましくは、5〜500μmである。
【0121】
粘着剤層3は、粘着剤組成物から形成されており、そのような粘着剤組成物は、例えば、重合体、好ましくは、上記と同様のアクリル重合体から形成されている。粘着剤層3を形成する粘着剤組成物は、好ましくは、炭素数4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー成分を重合させることにより得られるアクリル重合体から形成されている。
【0122】
なお、上記したアクリル重合体には、例えば、アミノシラン(具体的には、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどの(アルコキシ)アミノシランなど)などのシランカップリング剤、例えば、ロジン系、テルペン系、石油系などの粘着付与剤、例えば、イソシアネート系、エポキシ系、金属イオン系などの架橋剤などの添加剤を添加することもできる。
【0123】
これら添加剤は、単独使用または併用することができ、添加剤の配合割合は、例えば、粘着剤組成物の固形分100質量部に対して、例えば、50質量部以下、好ましくは35質量部以下である。
【0124】
そして、粘着シート4を得るには、まず、基材1を用意する。
【0125】
次いで、基材1の表面に、下塗り層2を設ける。
【0126】
下塗り層2は、上記したプライマー組成物から形成する。
【0127】
すなわち、下塗り層2を設けるには、例えば、基材1の表面に、上記したプライマー組成物を、例えば、キスコーティング、グラビアコーティング、バーコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、ワイヤーコーティングなどの公知の塗布方法により、直接塗布して、塗膜を形成する。
【0128】
その後、塗膜を、必要により、例えば、80〜150℃で、1〜10分間加熱して乾燥することにより、下塗り層2を基材1の表面に設ける。
【0129】
このようにして設けられる下塗り層2の厚みは、例えば、0.05〜20μm、好ましくは、0.1〜10μm、さらに好ましくは、0.1〜5μmである。
【0130】
次いで、粘着剤組成物を、下塗り層2の表面に、上記と同様の塗布方法により、直接塗布する。その後、これを、例えば、80〜150℃で、1〜10分間加熱して乾燥することにより、粘着剤層3を下塗り層2の表面に設ける。
【0131】
あるいは、粘着剤層3を転写によって、下塗り層2の表面に設けることもでき、具体的には、離型シート(図示せず)の上に粘着剤層3を積層し、その粘着剤層3を下塗り層2に貼り合わせ、その後、粘着剤層3から離型シートを引き剥がす。
【0132】
このようにして設けられる粘着剤層3の厚みは、例えば、1〜100μm、好ましくは、3〜50μm、さらに好ましくは、5〜40μmである。
【0133】
そして、このようにして形成される粘着シート4は、例えば、医療用粘着シート、光学用粘着シートなどの各種産業分野に用いられ、好ましくは、電子機器粘着シートなどに用いられる。
【0134】
なお、図1の説明では、下塗り層2を、基材1の表面に設けたが、例えば、基材1の両面(表面および裏面)に設けることもできる。
【0135】
また、上記した粘着シート4には、例えば、粘着フィルム、粘着テープなどが含まれる。
【0136】
そして、上記したプライマー組成物は、無機粒子からなるコアと、無機粒子を被覆する樹脂からなるシェルとから形成されるコアシェル粒子を含むため、塗工性に優れ、また、このプライマー組成物から形成される下塗り層を備える粘着シートは、優れた投錨力を有している。
【0137】
具体的には、後述する剥離試験において、通常、粘着シート4では、下塗り層2および基材1の間(界面)において破壊が認められる投錨破壊、あるいは、下塗り層2および粘着剤層3の間(界面)において破壊が認められる界面破壊を生じるところ、本発明の粘着シートは、好ましくは、界面破壊を生じる。
【0138】
また、このような粘着シート4は、優れた耐湿性を有しているので、高温高湿雰囲気下においても、優れた信頼性を確保することができる。
【実施例】
【0139】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、それらに何ら制限されるものではない。なお、以下の説明において、「部」および「%」は、特に明記のない限り、質量基準である。
【0140】
実施例1
(1)プライマー組成物の製造
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、水およびコロイダルシリカ(アデライトAT−50(固形分50%)、平均一次粒子径ADEKA社製)を170部(固形分で85部)入れ、窒素雰囲気下、ノニオン界面活性剤(第1ノニオン界面活性剤)(エマルゲン108、曇点40℃、花王社製)を2.5部添加した。70℃に昇温した後、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.53部を添加し、さらに、ブチルアクリレート(BA)/メチルメタクリレート(MMA)/メタクリル酸(MAA)=65/34.5/0.5(質量比)の配合比率で混合したモノマー成分10部を添加し、1時間放置した。
【0141】
次いで、アニオン界面活性剤(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ペレックスSS−H(固形分50%)、花王社製)7部(固形分で3.5部)を加えた後、上記と同じ割合で混合したモノマー成分90部を、70℃で2時間かけて滴下した。
【0142】
反応温度を70℃に保持し、滴下終了後、さらに、70℃で1時間保持し、撹拌した。
【0143】
その後、冷却し、水を添加して濃度調整し、固形分(コアシェル粒子を含む)濃度が35%の水分散液を得た。なお、コロイダルシリカ(固形分)の配合割合は、モノマー成分(樹脂)の総量100部に対して、85部であった。
(2)粘着剤組成物および粘着剤層の製造
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌機を備えた反応容器において、アクリル酸ブチル100部、アクリル酸4部、3一メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503、信越シリコーン社製)0,05部、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド0.1部、1一ドデカンチオール0.05部を、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム1.5部を添加した水100部に加えて、乳化重合した後、10%アンモニウム水を添加して、pH8に調整することにより、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする共重合体の水分散液を調製した。
【0144】
この水分散液に、トルエンに溶解したγ一アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM903、信越シリコーン社製)0.1部と、ロジン系樹脂(スーパーエステルE−100、荒川化学工業社製)とを、水分散液の固形分100部に対して30部添加して、水分散型粘着剤組成物を得た。
【0145】
この水分散型粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤を塗布した剥離ライナー(三菱ダイヤホイル社製、MRF38)に塗工し、120℃で3分乾燥することによって、厚さ23μmの粘着剤層が積層される剥離ライナーを得た。
(3)粘着シートの作製
表面未拠理PETフィルム(ルミラーSl0、#38、東レ社製)からなる基材に、プライマー組成物の製造で得られたプライマー組成物を、ワイヤーバーNo.5を用いて均一塗工し、下塗り層を形成した。
【0146】
次いで、下塗り層の上に、(2)粘着剤組成物および粘着剤層の製造で得られた剥離ライナーから粘着剤層を転写し、粘着テープを得た。
【0147】
実施例2〜10
表1に示す配合処方とした以外は、実施例1と同様の方法により、プライマー組成物を製造し、粘着テープを得た。
【0148】
比較例1
無機粒子を配合せず、樹脂のみからプライマー組成物を製造し、粘着シートを得た。
【0149】
すなわち、ブチルアクリレート(BA)/メチルメタクリレート(MMA)/メタクリル酸(MAA)=65/34.5/0.5(質量比)の配合比率で混合したモノマー成分100部に、乳化剤(LA−16(第一工業製薬(株)製))を1質量部添加し、ホモミキサーを用いて5000rpmで5分攪拌し、強制乳化して、単量体プレエマルション液を製造した。
【0150】
その後、冷却管、窒素導入管、温度計および授拌機を備えた反応容器に、上記プレエマルション液の1/10量と、乳化剤2質量部とを入れ、さらに、重合終了後のポリマー固形分が50質量%となるように水を添加した。
【0151】
次に、重合開始剤として過硫酸アンモニウム(APS、キシダ化学社製)0.03質量部を添加することにより重合を開始し、1時間重合させ、さらに、過硫酸アンモニウム0.07質量部を添加した。その後、プレエマルション液の残部(9/10量)を反応容器中に3時間かけて滴下させ、さらに3時間重合させた。なお、反応容器の温度は65℃に保ち、窒素気流下にて重合させた。これにより、水分散液アクリル系バインダー(プライマー組成物)を得た。
【0152】
得られた水分散液アクリル系バインダー(プライマー組成物)を冷却した後、10%アンモニア水を添加することによって、水分散液アクリル系バインダー(プライマー組成物)のpHを8に調整した。
【0153】
その後、実施例1と同様にして、粘着剤組成物および粘着剤層を製造し、粘着シートを作製した。
【0154】
比較例2
プライマー組成物を用いることなく、粘着テープを得た。
【0155】
(評価)
(剥離試験)
(1) 常温常湿雰囲気
各実施例および各比較例の粘着シートを、幅25mm、長さ100mmに切断して、サンプルを用意した。各サンプルの粘着剤層を、PET基材にRC−1023(LORD社製)が塗布されることにより形成された下塗り層に貼り合わせ、数分経過後、2kgのローラを用いて圧着し、下記の剥離条件で剥離させたときの状態を、目視にて観察して評価した。また、剥離時の接着力を測定した。
【0156】
すなわち、剥離は、万能引張試験機(TCM−1kNB、ミネベア社製)を用いて、室温(23℃)雰囲気下で、クロスヘッドスピード(剥離速度)300mm/minで、180°ピール試験として実施した。
(2) 高温高湿雰囲気
各実施例および各比較例の粘着シートを、幅25mm、長さ100mmに切断して、サンプルを用意し、それらを、40℃、92%RHの恒温高湿機内に、1週間放置した。その後、各サンプルを取り出し、上記(1)と同様にして、下塗り層に貼り合わせた後、180°ピール試験を実施した。
【0157】
それらの結果を、表1に併せて示す。
【0158】
表1において、ピール試験において、下塗り層および基材の間(界面)において破壊が認められることを、投錨破壊とした。また、下塗り層および粘着剤層の間(界面)において破壊が認められることを、界面破壊とした。
【0159】
なお、界面破壊を生じさせるプライマー組成物は、投錨破壊を生じさせるプライマー組成物よりも、投錨力に優れることを示す。
【0160】
【表1】

【0161】
なお、表1中の略号の詳細を下記する。
【0162】
AT50:コロイダルシリカ、アデライトAT−50、平均1次粒径20〜30nm、DLS粒子径40nm、固形分濃度50質量%、日本アエロジル社製
ZL:コロイダルシリカ、スノーテックスZL、平均1次粒径70〜100nm、DLS粒子径40nm、日産化学工業社製
SN100S:アンチモンドープ酸化スズ、SN−100S、石原産業社製
TS020:チタニアゾル、TS−020、テイカ社製
(考察)
無機粒子の配合量(実施例1〜5)、プライマー組成物の固形分濃度および下塗り層厚み(実施例4、6〜7)、無機粒子の種類(実施例8〜10)のいずれを変化させた場合においても、コアシェル粒子を含まない場合(比較例1)およびプライマー組成物を用いない場合(比較例2)に比べ、投錨力の向上が確認され、また、高温高湿雰囲気においても、投錨力の低下が確認されなかった。
【符号の説明】
【0163】
1 基材
2 下塗り層
3 粘着剤層
4 粘着シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子からなるコアと、前記無機粒子を被覆する樹脂からなるシェルとから形成されるコアシェル粒子を含むことを特徴とする、プライマー組成物。
【請求項2】
前記樹脂が、(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分を重合して得られるアクリル樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記無機粒子の含有割合が、前記樹脂100質量部に対して、20〜500質量部であることを特徴とする、請求項1または2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
基材と、
前記基材の表面に積層され、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプライマー組成物から形成される下塗り層と、
前記下塗り層の表面に積層される粘着剤層と
を備えていることを特徴とする、粘着シート。

【図1】
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【公開番号】特開2012−87239(P2012−87239A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236301(P2010−236301)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】