説明

プライマー組成物

【課題】貯蔵安定性および各種被着体への接着性に優れ、また、変性シリコーン系シーリング材に対する打ち継ぎ性に優れ、さらに、長時間または過酷な条件で水に暴露されても白化現象を抑制できるプライマー組成物の提供。
【解決手段】a)ポリイソシアネートと、b)トリアルコキシシランを含むアルコキシシランの縮合物と、c)アミノシラン化合物およびケチミンシラン化合物からなる群より選択される1種以上のシラン化合物と、d)造膜樹脂とを含有し、好ましくは、さらにe)エポキシ樹脂とを含有するプライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物に関し、より詳しくは、貯蔵安定性および各種被着体への接着性に優れ、水による白化現象を抑制できる一液型のプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シーリング材(本発明において、「シーラント」を意味する場合もある。)は、近年、建築物・自動車等において各種部材間の接合部や隙間を充填し、水密性・気密性等を確保する目的で幅広く使用されている。したがって、シーリング材には、窓枠周り、自動車ボディ等を構成する各種被着体、例えば、ガラス、セラミックス、金属、セメント、モルタル等の無機材料やプラスチック等の有機材料等に対して良好な接着性が要求される。また建築物、自動車等に好適に用いられるシーリング材は、雨等の水に暴露される頻度が高く、このような条件下における各種被着体に対する接着性はシーリング材にとって非常に重要な要求特性の一つである。
しかし、シーリング材自身の接着性は所望の目標まで及ばないことが多い。特に、水中または水に暴露される条件下における接着性に劣る場合が多いのが現状である。そのため、シーリング材を用いる場合には、シーリング材を塗布する前に、プライマーを塗布するのが一般的である。
【0003】
このようなプライマーは、被着体およびそれに適用される各種シーリング材、例えば、シリコーン系、変性シリコーン系、ポリウレタン系シーリング材等に応じて、それぞれの被着体およびシーリング材に適合するものが用いられる。
【0004】
例えば、シリコーンゴムを各種被着体に接着させるプライマーとして、(A)一分子中に、イソシアヌレート環を1個以上有し、かつイソシアネート基を2個以上有するウレタンプレポリマー100重量部、(B)エポキシ樹脂変成シリコーン樹脂、固形成分として1〜100重量部、(C)一般式HS(CH2Si(OR)3(式中、nは2または3、Rは1価の炭化水素基を示す。)で表されるメルカプト基含有シラン1〜50重量部、および(D)1種または2種以上の有機溶剤50〜1000重量部からなる皮膜形成性組成物が提案されている(特許文献1参照。)。
【0005】
一方、シーリング材を施工した後に、該シーリング材の劣化等により該施工部を改修等する必要が生じる場合がある。このとき、既存のシーリング材、すなわち、先打ちシーリング材を除去した後に新規のシーリング材(後打ちシーリング材)を施工するが、先打ちシーリング材を完全に除去できないこともあり、先打ちシーリング材に後打ちシーリング材を打ち継ぎしなければならない場合がある。
このシーリング材の打ち継ぎにおいては、両シーリング材同士が良好な接着性を有することが必要であるが、上記したように、接着性が所望の目標まで及ばないことが多く、やはりプライマーを用いるのが一般的である。
【0006】
しかし、シーリング材の打ち継ぎにおいて、先打ちシーリング材および後打ちシーリング材が共にシリコーン系シーリング材である場合には、プライマーを用いてもこれらのシーリング材同士の打ち継ぎ性に劣る、または打ち継ぎできないという問題が生じる場合がある。
【0007】
例えば、上記例示した皮膜形成性組成物は、ガラス、モルタル等の各種被着体に対する室温における養生(硬化)後の接着性および耐水性には優れるが、シリコーン系シーリング材同士の打ち継ぎ性に劣る場合がある。
また、該皮膜形成性組成物は塗装アルミ板等の各種被着体に対する接着性(低温接着性および初期接着性)、組成物を調製しある期間貯蔵(保存)した後の塗装アルミ板に対する接着性(初期接着性および耐水接着性、以下単に「貯蔵接着性」という場合がある。)に劣る場合もある。
さらにまた、プライマー組成物等に強く要求される経時変化による接着性の低下が著しい場合もある。
ところで、シリル化合物を含有する組成物、シリコーン系プライマー組成物等は、一般に、水に暴露されると、次第に白化して外観に劣ること(白化現象)があり、接着性に影響したり、用途が限定されたりすることがある。
【0008】
したがって、近年の技術革新、材料等の最適化、製造工程の簡素化、短縮化等により、プライマーに要求される特性等も高度化する現状においては、従来のプライマー(組成物)には、貯蔵安定性、シリコーン系シーリング材に対する打ち継ぎ性(初期接着性、耐水接着性および低温時での接着性)、ならびに、アルミ塗板等の各種被着体に対する接着性(低温接着性、初期接着性、耐水接着性および貯蔵接着性)等を高い水準で満たし、さらに白化現象を抑制できるものはなく、これら特性のさらなる改善が求められている。
【0009】
【特許文献1】特開昭54−125248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、具体的には、貯蔵安定性ならびに各種被着体への接着性および変性シリコーン系シーリング材に対する打ち継ぎ性(初期および耐水接着性)に優れ、さらに長時間または過酷な条件で水に暴露されても白化現象を抑制できる一液型のプライマー組成物を提供することを目的とする。
【0011】
また、上記特性に加え、さらに変性シリコーン系シーリング材に対する低温時での打ち継ぎ性(低温接着性)にも優れる一液型のプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ウレタン系プライマーにおいて、トリアルコキシシランを含むアルコキシシランの縮合物を含有させることにより接着性および変性シリコーン系シーリング材に対する打ち継ぎ性(初期接着性)が向上し、長時間または過酷な条件で水に暴露されたとしてもプライマー組成物の白化現象を抑制できることを知見した。
また、本発明者らは、アミノシラン化合物およびケチミンシラン化合物の少なくとも1種のシラン化合物を含有させると、一液型組成物としても優れた貯蔵安定性を発現し、さらに、組成物の変性シリコーン系シーリング材に対する打ち継ぎ性(初期および耐水接着性)を改善できることを知見した。
【0013】
さらに、本発明者らは、上記組成物にエポキシ樹脂を含有させると、優れた貯蔵安定性、各種被着体に対する接着性ならびに変性シリコーン系シーリング材に対する初期および耐水接着性を損なうことなく、低温時における変性シリコーン系シーリング材に対する打ち継ぎ性をも改善できることを知見した。
【0014】
すなわち、本発明は、上記知見を基になされたものであり、以下の(1)〜(6)を提供する。
【0015】
(1)a)ポリイソシアネートと、
b)下記一般式(1)で表される構造を有するトリアルコキシシランを含むアルコキシシランの縮合物と、
c)下記一般式(2)で表される構造を有するアミノシラン化合物、下記一般式(3)で表される構造を有するアミノシラン化合物および下記一般式(4)で表される構造を有するケチミンシラン化合物からなる群より選択される1種以上のシラン化合物と、
d)造膜樹脂と
を含有するプライマー組成物。
【0016】
【化4】

(式中、R1は炭素数1〜12の炭化水素基、R2は炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基である。)
【0017】
【化5】

(式中、R3は炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキレン基であり、R4およびR5はそれぞれ炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基であり同一でも異なっていてもよく、R6は炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキレン基であり、R7は水素原子、炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基、炭素数7〜18の分岐していてもよいアラルキル基または炭素数6〜18のアリール基であり、R8およびR9は、それぞれ炭素数1〜12の分岐していてもよい一価の有機基であり同一でも異なっていてもよく、R10は炭素数1〜18の分岐していてもよい二価の有機基であり、nは0〜2の整数である。)
【0018】
ここで、成分a)100質量部に対する、各成分の配合量は、成分b)が1〜50質量部、成分d)が5〜50質量部であるのが好ましい。
【0019】
(2)前記a)ポリイソシアネートが、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートである上記(1)に記載のプライマー組成物。
【0020】
(3)前記イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートが、脂肪族または脂環式ポリイソシアネートである上記(2)に記載のプライマー組成物。
【0021】
(4)さらに、e)エポキシ樹脂を含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のプライマー組成物。
ここで、成分a)100質量部に対する、各成分の配合量は、成分b)が5〜50質量部、成分d)が5〜50質量部、成分e)が0.5〜30質量部であるのが好ましい。
【0022】
上記(1)〜(4)のプライマー組成物は、調製の容易性、塗布工程の作業性を改善するため、さらに、f)有機溶媒を含有するのが好ましい。
ここで、該有機溶媒の配合量は、組成物中の全固形分100質量部に対して、100〜1000質量部であるのが好ましい。
なお、該有機溶媒を用いても該組成物の各種被着体への接着性、変性シリコーン系シーリング材に対する打ち継ぎ性および貯蔵安定性には何ら影響するものではない。
【0023】
(5)組成物中の全イソシアネート基に対する、前記シラン化合物c)のアミノ基(加水分解により生じるアミノ基を含む)の当量比(NH2/NCOまたはNH/NCO)が、0.05〜0.35である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のプライマー組成物。
【0024】
(6)前記アルコキシシランの縮合物が、下記一般式(1)で表される構造を有するトリアルコキシシランを20モル%以上含むアルコキシシランの縮合物である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のプライマー組成物。
【0025】
【化6】

(式中、R1は炭素数1〜12の炭化水素基、R2は炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基である。)
【発明の効果】
【0026】
本発明により、貯蔵安定性ならびに各種被着体への接着性および変性シリコーン系シーリング材に対する打ち継ぎ性(初期および耐水接着性)に優れ、さらに長時間または過酷な条件で水に暴露されても白化現象を起こさない一液型のプライマー組成物を提供できる。
さらに、エポキシ樹脂を含有する場合には、上記特性を有し、変性シリコーン系シーリング材に対する低温時での打ち継ぎ性(低温接着性)にも優れる一液型のプライマー組成物を提供できる。
【0027】
このように、本発明のプライマー組成物は、上記した近年の技術革新等により要求される、貯蔵安定性、各種被着体への接着性、変性シリコーン系シーリング材に対する打ち継ぎ性および白化現象の抑制等を十分満足できるものであり、その有用性は非常に高い。
また本発明のプライマー組成物は、上記の成分a)〜d)を単に配合するだけで調製することができ、製造が容易であるという利点も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明のプライマー組成物(以下、「本発明の組成物」という。)について詳細に説明する。
本発明の組成物は、a)ポリイソシアネートと、b)上記一般式(1)で表される構造を有するトリアルコキシシランを含むアルコキシシランの縮合物と、c)上記一般式(2)で表される構造を有するアミノシラン化合物、上記一般式(3)で表される構造を有するアミノシラン化合物および上記一般式(4)で表される構造を有するケチミンシラン化合物からなる群より選択される1種以上のシラン化合物と、d)造膜樹脂とを含有するプライマー組成物、好ましくはさらに、e)エポキシ樹脂を含有するプライマー組成物である。
【0029】
まず、本発明の組成物に用いる各成分について説明する。
【0030】
本発明の組成物に用いるポリイソシアネートa)は、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、具体的には、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートであってもよく、またこれらを混合したものであってもよい。
【0031】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
また、脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビシクロヘプタントリイソシアネート、上述した各芳香族ポリイソシアネートの水添化合物等が挙げられる。
【0033】
本発明の組成物に用いるポリイソシアネートa)は、上記したポリイソシアネートの他に、ウレタンオリゴマーあるいはウレタンプレポリマーを用いることもできる。
ウレタンプレポリマーは、上記したポリイソシアネートの1種以上と、ウレタンプレポリマーに通常用いられる活性水素原子を2個以上有する化合物とから得られるものであれば特に限定されず、重量平均分子量、官能基数等も特に限定されない。
ここで、活性水素原子を2個以上有する化合物は特に限定されないが、例えば、ポリオール、ポリアミン等が挙げられる。
【0034】
上記ポリイソシアネートa)が、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートであると、ポリイソシアネートの極性が非常に高くなり、組成物としたときに強力な接着性を発現し、各種被着体(例えば、アルミ塗板、ガラス、セラミックス、金属、セメント等の無機材料やプラスチック等の有機材料)をはじめ、モルタル等の多孔質物質に対しても有効な接着性を有する。特に、アルミニウム塗板、モルタルに対する接着性を著しく改善できるので好ましい。
【0035】
上記イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートは、3つのイソシアネート基が重合して形成される環を持つポリイソシアネートである。重合させるイソシアネート基は、特に限定されず、上記例示した芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートに含まれるいずれのイソシアネート基であってもよく、またこれらを混合したものであってもよい。
【0036】
このなかでも、上記例示したポリイソシアネートのいずれか1種が重合して形成されるイソシアヌレート環を有するのが好ましく、具体的には、例えば、TDIのイソシアヌレート体、HDIのイソシアヌレート体、IPDIのイソシアヌレート体等が好適に挙げられる。
【0037】
さらに、組成物の貯蔵安定性とポリイソシアネートのイソシアネート基の反応性(組成物の接着性)を高い水準で両立でき、かつ耐候性にも優れる点で、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートとしては、脂肪族置換基を持つイソシアヌレート環を有するポリイソシアネートまたは脂環式置換基を持つイソシアヌレート環を有するポリイソシアネートがより好ましく、例えば、HDIのイソシアヌレート体、IPDIのイソシアヌレート体等が好適に挙げられる。
【0038】
これらのイソシアヌレート環を有するポリイソシアネートは、通常の方法により製造してもよく、また市販品を用いることもできる。
市販品としては、具体的には、例えば、日本ポリウレタン工業(株)製のコロネート系(コロネート2030、EH等)、住友バイエルウレタン(株)製のスミジュール系(スミジュールIL等)、同デスモジュール系(デスモジュールHL、デスモジュールN3390、Z4370等)、三井・武田ケミカル工業(株)製のタケネート系(タケネート204、D170N等)、大日本インキ化学工業(株)製のバーノック系(バーノックD800、DN980等)、デグサヒュルス社製のVESTANAT系(VESTANAT T1890/100等)等が挙げられる。
【0039】
本発明の組成物には、上記イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートを1種用いてもよく、2種以上併用して用いてもよい。
【0040】
上記したイソシアヌレート環をもつポリイソシアネートを用いる場合、該ポリイソシアネート以外のポリイソシアネートとして、上記したウレタン系プライマー組成物に通常用いられるポリイソシアネート(ウレタンプレポリマー等)を配合することもできる。
このようなポリイソシアネートとしては、好ましくは、例えば、上記例示した低分子量ポリイソシアネートのビウレット体、低分子量ポリイソシアネートと多価アルコール類との付加体等が挙げられる。
【0041】
低分子量ポリイソシアネートと多価アルコール類との付加体としては、多価アルコール類としてトリメチロールプロパンを用いた付加体が好ましく例示される。具体的には、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)とHDIとから形成されるHDI−TMP付加体、TMPとTMXDIとから形成されるTMXDI−TMP付加体、TMPとXDIとから形成されるXDI−TMP付加体、TMPとIPDIとから形成されるIPDI−TMP付加体等が好ましく挙げられる。
これらの付加体は、本発明の組成物の優れた貯蔵安定性を維持できるため好適である。
【0042】
このような付加体は、例えば、サイセン3160(三井サイテック社製)等の商品名で市販されているものを用いることもできる。
【0043】
これらのポリイソシアネートの、イソシアヌレート環をもつポリイソシアネートに対する配合量は、本発明の目的を損なわない範囲であれば特に限定されない。
【0044】
本発明の組成物に用いる下記一般式(1)で表される構造を有するトリアルコキシシランを含むアルコキシシランの縮合物b)(以下、単に「アルコキシシラン縮合物(b)」とも言う。)は、単量体としての該トリアルコキシシランを含むアルコキシシランの高分子化合物またはオリゴマーのいずれであってもよい。
本発明の組成物において、上記アルコキシシラン縮合物(b)は、変性シリコーン系シーリング材への打ち継ぎ性および各種被着体との接着性を向上させ、また、後述する成分c)との相溶性改善効果を有する。さらには、上記アルコキシシラン縮合物を用いると、長時間または過酷な条件で水に暴露されたとしても、プライマー組成物の白化現象を抑制できる。また、モルタルに対する耐水接着性向上効果もある。
【0045】
【化7】

【0046】
上記一般式(1)中、R1は炭素数1〜12の炭化水素基であり、R2は炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基である。
1の炭素数1〜12の炭化水素基は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基、ドデシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基等の分岐状のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基(o−、m−、p−)、ジメチルフェニル基、メシチル基等のアリール基が例示される。これらの基は二重結合または三重結合を含んでいてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、これらはそれぞれ別に置換基を有していてもよい。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基が好ましい。なお、R1にはアミノ基(イミノ基)およびケチミン基は含まれない。
【0047】
の炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられ、これらの基が二重結合または三重結合を含んでいてもよい。この中でも、メチル基、エチル基が好ましい。なお、複数有するR2は同一であっても異なっていてもよい。
【0048】
上記アルコキシシラン縮合物(b)は、単量体としての上記一般式(1)で表される構造を有するトリアルコキシシランの少なくとも1種を含むアルコキシシランを縮合して得られるものであれば特に限定されないが、上記一般式(1)で表される構造を有するトリアルコキシシランを20モル%以上含むアルコキシシランの縮合物であることが好ましい。上記トリアルコキシシランを20モル%以上含むと、上述した変性シリコーン系シーリング材への打ち継ぎ性、各種被着体との接着性、白化現象の抑制、モルタルに対する耐水接着性等をより向上することができる。
【0049】
上記アルコキシシラン縮合物(b)は、上記一般式(1)で表される構造を有するトリアルコキシシラン以外のアルコキシシランを含んでもよく、テトラアルコキシシラン、上記一般式(1)で表される構造を有するトリアルコキシシラン以外のトリアルコキシシラン、ジアルコキシシランを用いることができる。具体的には、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物の含量は、上記アルコキシシラン縮合物(b)の単量体としてのアルコキシシランの80モル%以下であるのが好ましい。
【0050】
上記アルコキシシラン縮合物(b)のアルコキシ基量は、水に暴露されたときの白化を抑制できるという点で、該アルコキシシラン縮合物(b)の5〜70質量%であることが好ましく、5〜55質量%であることがより好ましい。
【0051】
上記アルコキシシラン縮合物(b)の製造方法は、通常の方法を用いることができ特に限定されないが、例えば、上記アルコキシシランのシリル基に対して、0.1〜2.0当量、好ましくは0.2〜1.5当量の水を共存させて、10〜60℃、好ましくは10〜50℃で5〜30時間、好ましくは10〜20時間縮合させた後、生成する水およびアルコールを減圧下で除去することにより得られる。上記一般式(1)で表されるトリアルコキシシランは1種用いても、2種以上を用いてもよく、該トリアルコキシシラン以外のアルコキシシランと併用してもよい。
【0052】
このとき、酸触媒または塩基触媒等の触媒を用いてもよい。酸触媒としては、具体的には、例えば、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、n−ブチルリン酸;ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫等の錫系酸触媒;テトライソプロポキシチタン、チタンアセチルアセトネート等のチタン系酸触媒等が挙げられ、塩基触媒としては、具体的には、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン系触媒等が挙げられる。これらのうち、トリエチルアミン、ピリジンを用いることが、縮合反応後の脱溶媒により該塩基触媒を容易に除去できる理由から好ましい。
【0053】
なお、アルコキシシラン縮合物(b)には、上記一般式(1)で表される構造を有するトリアルコキシシランの他に、加水分解性シリル基を有する化合物、例えば、アルケニルオキシシラン等を単量体として用いてもよい。このときの該化合物の含量は、該アルコキシシラン縮合物(b)の20質量%以下であるのが好ましい。
【0054】
上記アルコキシシラン縮合物(b)は、市販品を用いることもできる。
市販品としては、具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン/ジメチルジメトキシシラン共縮合物(X−40−9246、アルコキシ基量12質量%、信越化学工業(株)製)、メチルトリメトキシシラン/ジメチルジメトキシシラン共縮合物(X−40−9250、アルコキシ基量25質量%、信越化学工業(株)製)、ジメチルジメトキシシラン/フェニルトリメトキシシラン共縮合物(X−40−9227、アルコキシ基量15質量%、信越化学工業(株)製)、フェニルトリメトキシシラン縮合物(KR−217、アルコキシ基量25質量%、信越化学工業(株)製)、ジメチルジメトキシシラン/フェニルトリメトキシシラン共縮合物(X−40−9247、アルコキシ基量16質量%、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0055】
本発明の組成物には、上記アルコキシシラン縮合物(b)を1種用いてもよく、2種以上併用して用いてもよい。
【0056】
本発明の組成物に用いるシラン化合物c)について説明する。
シラン化合物c)は、上記一般式(2)で表される構造を有するアミノシラン化合物、上記一般式(3)で表される構造を有するアミノシラン化合物および上記一般式(4)で表される構造を有するケチミンシラン化合物からなる群より選択される。
これらの化合物は、上記a)および上記b)の硬化剤として機能するだけでなく、変性シリコーン系シーリング材との相溶性に優れ、該シーリング材に対する打ち継ぎ性(初期および耐水接着性)を改善し、さらに、貯蔵安定性の向上にも寄与する。
本発明においては、これらの化合物は少なくとも1種を含有すればよい。
【0057】
アミノシラン化合物およびケチミンシラン化合物中のシリル基は、少なくとも加水分解性の置換基を1個有するのが好ましく、2個以上有するのがより好ましい。2個以上有すると、アミノシラン化合物およびケチミンシラン化合物の接着付与効果がより高まる。3個以上有するのが特に好ましい。
【0058】
加水分解性の置換基としては、具体的には、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基(RCO−O−)、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらのうちでも加水分解性の穏やかなアルコキシ基が好ましい。なお、加水分解性の置換基を選択することにより、用途に応じた、加水分解速度や接着性発現時間を調整することができる。
【0059】
アミノシラン化合物について説明する。
アミノシラン化合物は、アミノ基と上記したシリル基を有すれば特に限定されないが、以下の一般式(2)で表されるアミノシラン化合物であるのが好ましい。
【0060】
【化8】

【0061】
一般式(2)中、R3は炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキレン基であり、R4およびR5はそれぞれ炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基であり同一でも異なっていてもよく、nは0〜2の整数である。
【0062】
ここで、R3の炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキレン基は、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、3,3−ジメチルブチレン基等が挙げられ、入手が容易で接着性が優れる点からトリメチレン基、3,3−ジメチルブチレン基(特に3,3−ジメチル−1,4−ブチレン基)がより好ましい。
4およびR5は上記一般式(1)のR2で説明したのと基本的に同様である。nは、0または1であるのが好ましい。
【0063】
上記一般式(2)で表される化合物として、例えば、N,N−ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリエトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリプロポキシシリル)プロピル]アミン(以上、日本ユニカー社製)等が挙げられる。
【0064】
また、アミノシラン化合物としては、上記した一般式(2)で表される化合物の他に、下記一般式(3)で表されるアミノシラン化合物も好ましい。
【0065】
【化9】

【0066】
一般式(3)中、R4およびR5はそれぞれ炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基であり同一でも異なっていてもよく、R6は炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキレン基であり、R7は水素原子、炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基であり、炭素数7〜18の分岐していてもよいアラルキル基または炭素数6〜18のアリール基であり、nは0〜2の整数である。
【0067】
4およびR5は、上記一般式(1)のR2で説明したのと基本的に同様である。nは0または1であるのが好ましい。
6の炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキレン基は、上記一般式(2)のアルキレン基R3で例示したアルキレン基のいずれかであるのが好ましい。より好ましくは一般式(2)で例示した炭素数2〜6の分岐していてもよいアルキレン基である。
【0068】
7が水素原子である、上記一般式(3)で表される化合物として、具体的には、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン(以上、日本ユニカー社製)等が挙げられる。
【0069】
7の炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基としては、上記一般式(1)のR2で例示したアルキル基を挙げることができる。この中でも、炭素数2〜4の分岐していてもよいアルキル基が好ましい。
また、該R7はそのアルキル基の水素原子の1つ以上が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、特に限定されないが、アミノ基、アミノアルキル基(炭素数1〜8)であるのが好ましく、アミノ基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノブチル基がより好ましい。
7が炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基である、上記一般式(3)で表される化合物として、具体的には、例えば、3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(Dynasilane1189(デグサヒュルス社製))等が挙げられる。
【0070】
7の炭素数7〜18の分岐していてもよいアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等を挙げることができる。
【0071】
7の炭素数6〜18のアリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基(トルイル基)、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基等を挙げることができる。また、アリール基の置換基としては、上記したアルキル基の他に、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子からなる基等が挙げられる。これらの置換基は1または2以上を有してもよく、それらの置換位置も限定されない。
【0072】
7が炭素数6〜18のアリール基である、上記一般式(3)で表される化合物として、具体的には、例えば、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製)等が挙げられる。
【0073】
本発明の組成物には、上記アミノシラン化合物を1種用いてもよく、2種以上併用して用いてもよい。
【0074】
これらのうちでも、組成物の上記機能をより高い水準でバランスよく発揮できる点で、N,N−ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アミン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物が好ましい。
【0075】
ケチミンシラン化合物について説明する。
ケチミンシラン化合物は、ケチミン基(ケチミン結合)と上記したシリル基を有すれば特に限定されないが、下記一般式(4)で表されるケチミンシラン化合物であるのが好ましい。
【0076】
【化10】

【0077】
一般式(4)中、R4およびR5はそれぞれ炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基であり同一でも異なっていてもよく、R8およびR9は、それぞれ炭素数1〜12の分岐していてもよい一価の有機基であり同一でも異なっていてもよく、R10は炭素数1〜18の分岐していてもよい二価の有機基であり、nは0〜2の整数である。
ここで、R4およびR5は上記一般式(1)のR2で説明したのと基本的に同様である。nは0または1であるのが好ましい。
8およびR9は、それぞれ炭素数1〜12の分岐していてもよい一価の有機基であり同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜6の分岐していてもよい一価の有機基(脂肪族基、脂環式基、芳香族基)であるのが好ましく、炭素数1〜6の分岐していてもよいアルキル基であるのがより好ましい。炭素数1〜12の分岐していてもよい一価の有機基および炭素数1〜6の分岐していてもよいアルキル基としては、上記一般式(1)のR2で例示したアルキル基を好適に挙げることができる。
10は炭素数1〜18の分岐していてもよい二価の有機基(脂肪族基、脂環式基、芳香族基)であり、炭素数2〜6の分岐していてもよいアルキレン基であるのが好ましい。炭素数1〜18の分岐していてもよい二価の有機基および炭素数2〜6の分岐していてもよいアルキレン基としては、上記一般式(2)のR3で例示したアルキレン基を好適に挙げることができる。
【0078】
上記一般式(4)で表される化合物として、具体的には、例えば、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(メチルジメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(メチルジエトキシシリル)−1−プロパンアミン等が挙げられる。
【0079】
本発明の組成物には、上記ケチミンシラン化合物を1種用いてもよく、2種以上併用して用いてもよい。
【0080】
これらのうちでも、組成物の上記機能をより高い水準でバランスよく発揮できる点で、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン(チッソ社製)、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン(信越化学工業社製)等を好適に挙げることができる。
【0081】
本発明の組成物に用いる造膜樹脂d)は、NCO基に対して低活性あるいは不活性であり、かつ、造膜性を有する樹脂であれば特に限定されず、一般に用いられるものを使用できる。具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、塩化ゴム、テルペン樹脂等が好適に例示される。
【0082】
本発明の組成物に用いるエポキシ樹脂(そのプレポリマーを含む)e)は、その分子内に、上記シラン化合物c)で説明したシリル基が持つ加水分解性の置換基を含まない樹脂であり、該樹脂を含有することにより、変性シリコーン系シーリング材に対する低温時の打ち継ぎ性を著しく改善できる。
【0083】
エポキシ樹脂e)は、特に限定されず、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ピロカテコール、レソルシノール、クレゾールノボラック、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ビスレソルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールF、ビキシレノール等の多価フェノールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル型;グリセリン、ネオペンチルグリール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジルエーテル型;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルエステル型;フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸等のポリカルボン酸から誘導されるポリグリシジルエステル型;アミノフェノール、アミノアルキルフェノール等から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエーテル型;アミノ安息香酸から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエステル型;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等から誘導されるグリシジルアミン型;さらにエポキシ化ポリオレフィン、グリシジルヒダントイン、グリシジルアルキルヒダントイン、トリグリシジルシアヌレート等;ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル、スチレンオキサイド等のモノエポキシ化合物等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0084】
これらの中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が、入手の容易さおよび硬化物の性質(性能)のバランスが良好であることから好ましい。
また、エポキシ樹脂e)は、そのエポキシ当量が156〜1000であるのが組成物の接着性に優れる点で好ましく、156〜700であるのがより好ましい。
該エポキシ樹脂は市販品を用いてもよく、製造してもよい。製造条件は特に限定されず、通常用いられる条件で行うことができる。
【0085】
本発明の組成物においては、上記成分の他に、調製の容易性、塗布工程の作業性を改善するため、有機溶媒f)を含有させることもできる。
有機溶媒としては、上記成分に対して不活性であり、かつ、適度な揮発性を有するものであれば特に限定されない。
有機溶媒としては、具体的には、例えば、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、イソヘキサン、メチレンクロリド、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの有機溶媒のなかでも、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソヘキサン、トルエンが好ましい。
これらの有機溶媒は、十分に乾燥してから用いることが好ましい。
本発明の組成物には、上記有機溶媒を1種用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0086】
さらに、本発明の組成物には、必要に応じて、他の添加剤を含有させることもできる。
例えば、ランプブラック、チタンホワイト、ベンガラ、チタンイエロー、亜鉛華、鉛丹、コバルトブルー、鉄黒、アルミ粉等の無機顔料;ネオザボンブラック RE、ネオブラック RE、オラゾールブラック CN、オラゾールブラック Ba(いずれもチバ・ガイギー社製)、スピロンブルー2BH(保土ヶ谷化学社製)等の有機顔料等が挙げられる。
また、本発明の組成物にサイアソルブ(Cyasorb UV24Light Absorber、アメリカン・サイアナミド社製)、ウビヌル(Uvinul D−49、D−50、N−35、N−539、ジェネラル・アニリン社製)等の紫外線吸収剤等を含有させると、紫外線や可視光線を遮蔽または吸収し耐光性の向上に有効であり、カーボンブラックを含有させると、紫外線や可視光線を遮蔽もしくは吸収できるため耐候性を付与できる。
さらに、本発明の組成物に3級アミンや有機スズ化合物等の触媒を含有させてもよく、さらに、ガラス粉末、クレー、粉末シリカゲル、極微粉状ケイ酸、モレキュラーシーブス(これは吸水能をも有する)等の充填剤、増粘剤、ブチルベンジルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、塩化パラフィン等の可塑剤、マロン酸ジエチル等の安定剤を含有させてもよい。
【0087】
次に、本発明の組成物について説明する。
本発明の組成物は、a)ポリイソシアネートと、b)上記一般式(1)で表される構造を有するトリアルコキシシランを含むアルコキシシランの縮合物と、c)上記一般式(2)で表される構造を有するアミノシラン化合物、上記一般式(3)で表される構造を有するアミノシラン化合物および上記一般式(4)で表される構造を有するケチミンシラン化合物からなる群より選択される1種以上のシラン化合物と、d)造膜樹脂とを含有するプライマー組成物である。
【0088】
ここで、成分a)100質量部に対する、各成分の配合量は以下の通りである。
成分b)は1〜50質量部が好ましく、3〜30質量部がより好ましい。この範囲であると、接着性の向上、特に変性シリコーン系シーリング材に対する初期接着性の向上に寄与する。
成分c)は組成物中の全イソシアネート基に対する、シラン化合物のアミノ基(ケチミン基の加水分解により生じるアミノ基を含む)の当量比(NH2/NCOまたはNH/NCO)が0.05〜0.35であるのが好ましく、0.05〜0.25がより好ましく、0.05〜0.20であるのが特に好ましい。この範囲であると、特に変性シリコーン系シーリング材に対する打ち継ぎ性(初期および耐水接着性)を改善し、さらに貯蔵安定性の向上に寄与する。
成分d)は5〜50質量部が好ましく、5〜40質量部がより好ましく、5〜20質量部が特に好ましい。この範囲であると、アルミ塗板等の各種被着体に対する接着性の向上に寄与する。
【0089】
本発明の組成物は、上記成分a)〜d)を含有し、これらを上記範囲でバランスよく配合することにより、貯蔵安定性および各種被着体への接着性に優れ、また変性シリコーン系シーリング材に対する打ち継ぎ性(初期および耐水接着性)に優れ、さらには、長時間または過酷な条件で水に暴露されても白化現象を抑制できる。
【0090】
また、本発明の組成物は、上記成分a)〜d)に、さらに、e)エポキシ樹脂を含有するプライマー組成物である。
ここで、成分a)100質量部に対する、成分e)の配合量は0.5〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましい。この範囲であると、変性シリコーン系シーリング材に対する低温時の打ち継ぎ性を著しく改善できる。
【0091】
該組成物は、上記成分a)〜d)成分に、さらにe)成分を含有するので、上記組成物の優れた貯蔵安定性、各種被着体への接着性、変性シリコーン系シーリング材に対する打ち継ぎ性(初期、耐水接着性)および白化現象の抑制効果を損なわず、さらに、変性シリコーン系シーリング材に対する低温での打ち継ぎ性にも優れる。
【0092】
すなわち、本発明の組成物は、上記した近年の技術革新等により要求される、貯蔵安定性、各種被着体への接着性、変性シリコーン系シーリング材に対する打ち継ぎ性および白化現象の抑制等を十分満足できるものであり、その有用性は非常に高い。
【0093】
なお、上記したように、有機溶媒を用いても、各種被着体への接着性、貯蔵安定性および打ち継ぎ性には何ら影響しない。したがって、組成物の調製の容易性、塗布工程の作業性を改善するため、さらに、f)有機溶媒を含有するのが好ましい。該有機溶媒の配合量は、組成物中の全固形分100質量部に対して、100〜1000質量部であるのが好ましい。
【0094】
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、上記成分a)〜d)、所望する組成物の性能等に応じて、エポキシ樹脂e)、有機溶媒f)、さらに必要に応じてカーボンブラック、その他の添加剤等を混合し、ボールミル等の混合装置を用いて室温下または加熱下(例えば、40℃)十分に混練し、均一に分散させることにより得られる。
このように、本発明のプライマー組成物は、成分a)〜d)等を単に配合するだけで調製することができ、製造が容易であるという利点も有する。
【0095】
本発明の組成物は通常採用されている塗布方法、例えば、ハケ塗り法、スプレーコーティング法、ワイヤバー法、ブレード法、ロールコーティング法、ディッピング法等を用いて被着体に塗布できる。
【0096】
本発明の組成物は、各種建築用および各種自動車用シーリング材に対して好適に使用することができる。具体的には、本発明の組成物は、被着体として、ガラス、アルミニウムはもとより、モルタルや石材等の多孔質部材やアクリル電着塗料等に対して良好な接着性を示し、また、変性シリコーン系、シリコーン系、ポリウレタン系等各種シーリング材に対しても良好な接着性を示す。また、これらの被着体とシーリング材との組み合わせであれば、いずれの組み合わせにおいても優れた接着性を有する。
さらに、変性シリコーン系、シリコーン系シーリング材の打ち継ぎ性にも優れ、先打ちシリコーン系シーリング材の打ち継ぎ面の補修目的にも好適に用いられる。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0098】
<実施例1〜25および比較例1〜14>
下記第1表に示す各成分を第1表に示す配合(質量部)で混合し、ボールミルを用いて、室温で十分に混練し、プライマー組成物を調製した。
なお、成分c)について、組成物中の全イソシアネート基に対する、アミノ基の当量比(NH2/NCOまたはNH/NCO)を、便宜上、第1表中、「NH2/NCO」として示した。比較例9および10においては、組成物中の全イソシアネート基に対する、メルカプト基の当量比(SH/NCO)を示した。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
得られた各組成物について、貯蔵安定性、モルタルに対する接着性、アルミ塗板に対する接着性、アルミ塗板に対する貯蔵接着性、変性シリコーン系シーリング材に対する打ち継ぎ性および温水老化後の白化状態を以下の方法により評価した。
その結果を第2表に示す。
【0102】
<貯蔵安定性>
得られた各組成物の調製直後の粘度と、密閉容器中で60℃、2週間養生後の粘度をE型粘度計で測定し、60℃、2週間養生後の粘度の、調製直後の粘度に対する上昇率(倍)を算出し、貯蔵安定性を評価した。
該上昇率が1.5倍以下であるものを「○」とし、1.5倍超2.0倍未満であるものを「△」とし、2.0倍以上であるものを「×」とした。
【0103】
<モルタルに対する接着性>
得られた各組成物をモルタルの表面に塗布し、23℃、相対湿度(RH)50%の条件下に30分間放置した後、組成物の塗布面に変性シリコーン系シーリング材(横浜ゴム社製「スーパーワン」)を3mm厚に圧着させて試験片とした。
この試験片を用いて以下の条件で養生した後、変性シリコーン系シーリング材をナイフでカットし該カット部を手剥離して(手で摘んで引張り)、その剥離状態を観察(ナイフカットによる手剥離試験)することで、被着体と組成物との接着界面の状態を評価した。
【0104】
(1)初期接着性
温度23℃、相対湿度50%の環境下3日間養生
(2)耐水接着性
温度23℃、相対湿度50%の環境下3日間養生後に、50℃の温水に7日間浸漬
【0105】
評価は、シーリング材の凝集破壊が95%以上であったものを「◎」、同70%以上95%未満であったものを「○」、同50%以上70%未満であったものを「△」、同50%未満であったものを「×」とした。
【0106】
<アルミ塗板に対する接着性>
得られた各組成物をアルミ塗板の表面に塗布し、23℃、相対湿度(RH)50%の条件下30分間放置した後、組成物の塗布面に変性シリコーン系シーリング材(横浜ゴム社製「スーパーワン」)を3mm厚に圧着させて試験片とした。
この試験片を用いて以下の条件で養生した後、変性シリコーン系シーリング材をナイフでカットし該カット部を手剥離して(手で摘んで引張り)、その剥離状態を観察(ナイフカットによる手剥離試験)することで、被着体と組成物との接着界面の状態を評価した。
【0107】
(1)低温接着性
温度5℃、相対湿度50%の環境下7日間養生
(2)初期接着性
温度23℃、相対湿度50%の環境下3日間養生
(3)耐水接着性
温度23℃、相対湿度50%の環境下3日間養生後に、50℃の温水に7日間浸漬
【0108】
評価は、シーリング材の凝集破壊が95%以上であったものを「◎」、同70%以上95%未満であったものを「○」、同50%以上70%未満であったものを「△」、同50%未満であったものを「×」とした。
【0109】
<アルミ塗板に対する貯蔵接着性>
得られた組成物を密閉容器に入れ60℃で2週間貯蔵後、上記<アルミ塗板に対する接着性>と同様の条件、方法により、被着体と組成物との接着界面の状態を評価した。
【0110】
<変性シリコーン系シーリング材に対する打ち継ぎ性>
被着体である変性シリコーン系シーリング材として横浜ゴム社製「スーパーワン」を、室温(23℃)で7日、高温(50℃)で7日硬化させたものを使用した。
該硬化させたシーリング材の表面に上記各組成物を接着面積が10mm×50mmとなるように塗布して、23℃、相対湿度(RH)50%の条件下に30分間放置した後、その上に変性シリコーン系シーリング材(横浜ゴム社製「スーパーワン」)を打設して3mm厚に圧着させて試験片とした。
この試験片を用いて以下の条件で養生した後、接着界面部をナイフでカットし該カット部を手剥離して(手で摘んで引張り)、その剥離状態を観察(ナイフカットによる手剥離試験)することで、破壊状態を評価した。
【0111】
(1)低温接着性
温度5℃、相対湿度50%の環境下7日間養生
(2)初期接着性
温度23℃、相対湿度50%の環境下3日間養生
(3)耐水接着性
温度23℃、相対湿度50%の環境下3日間養生後に、50℃の温水に7日間浸漬
【0112】
(1)低温接着性の評価は、シーリング材の凝集破壊が70%以上であったものを「◎」、同50%以上70%未満であったものを「○」、同50%未満であったものを「×」とした。
(2)初期接着性および(3)耐水接着性の評価は、シーリング材の凝集破壊が95%以上であったものを「◎」、同70%以上95%未満であったものを「○」、同50%以上70%未満であったものを「△」、同50%未満であったものを「×」とした。
【0113】
<温水老化後の白化状態>
得られた組成物をアルミ塗板の表面に塗布し、23℃、相対湿度50RH%の環境下3日間養生後に、50℃の温水に7日間浸漬したものを目視で観察し、白化が全くなくアルミ塗板全面が見えるものを「◎」、一部白化するがアルミ塗板全面が透けて見えるものを「○」、一部白化してアルミ塗板の一部が見えないものを「△」、全面が白化してアルミ塗板全面が見えないものを「×」とした。
【0114】
【表3】

【0115】
【表4】



【0116】
本発明の組成物に用いた各成分および触媒を以下に示す。
ポリイソシアネート1;TDI/HDIイソシアヌレート体、デスモジュールHL(イソシアネート基含有量10.5質量%、住友バイエルウレタン社製)
ポリイソシアネート2;HDIイソシアヌレート体、D170N(イソシアネート基含有量21.0質量%、三井・武田ケミカル社製)
ポリイソシアネート3;IPDIイソシアヌレート体、VESTANAT T1890/100(イソシアネート基含有量15.7質量%、デグサヒュルス社製)
ポリイソシアネート4:HDI−TMP付加体、タケネートD160N(イソシアネート基含有量12.8質量%、三井武田ケミカル(株)製)
【0117】
シラン縮合物1;メチルトリメトキシシラン/ジメチルジメトキシシラン共縮合物(X−40−9246、アルコキシ基量12質量%、信越化学工業(株)製)
シラン縮合物2;メチルトリメトキシシラン/ジメチルジメトキシシラン共縮合物(X−40−9250、アルコキシ基量25質量%、信越化学工業(株)製)
シラン縮合物3;ジメチルジメトキシシラン/フェニルトリメトキシシラン共縮合物(X−40−9227、アルコキシ基量15質量%、信越化学工業(株)製)
シラン縮合物4;フェニルトリメトキシシラン縮合物(KR−217、アルコキシ基量25質量%、信越化学工業(株)製)
シラン縮合物5;ジメチルジメトキシシラン/フェニルトリメトキシシラン共縮合物(X−40−9247、アルコキシ基量16質量%、信越化学工業(株)製)
シラン化合物1;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(A−187、日本ユニカー社製)
シラン化合物2;メチルトリメトキシシラン、(KBM13、信越化学工業(株)製)
シラン縮合物6;テトラメトキシシラン縮合物、(MS−51、重量平均分子量600、三菱化学(株)製)
【0118】
ケチミンシラン化合物1;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン(S340、チッソ(株)製)
ケチミンシラン化合物2;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン(KBM−9103、信越化学工業(株)製)
アミノシラン化合物1;N,N−ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アミン(A1170、日本ユニカー(株)製)
アミノシラン化合物2;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(A1110、日本ユニカー(株)製)
メルカプトシラン化合物;メルカプトプロピルトリメトキシシラン(A189、日本ユニカー社製)
【0119】
水素化テルペン樹脂;クリアロンM105(ヤスハラケミカル(株)製)
熱可塑ウレタン樹脂;パンデックスT5205(大日本インキ化学工業(株)製)
【0120】
エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YD−128、エポキシ当量186、東都化成(株)製)
トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、オクチル酸第一スズ;関東化学(株)製
イソヘキサン;丸善石油化学(株)製

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリイソシアネートと、
b)下記一般式(1)で表される構造を有するトリアルコキシシランを含むアルコキシシランの縮合物と、
c)下記一般式(2)で表される構造を有するアミノシラン化合物、下記一般式(3)で表される構造を有するアミノシラン化合物および下記一般式(4)で表される構造を有するケチミンシラン化合物からなる群より選択される1種以上のシラン化合物と、
d)造膜樹脂とを含有するプライマー組成物。
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜12の炭化水素基、R2は炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基である。)
【化2】

(式中、R3は炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキレン基であり、R4およびR5はそれぞれ炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基であり同一でも異なっていてもよく、R6は炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキレン基であり、R7は水素原子、炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基、炭素数7〜18の分岐していてもよいアラルキル基または炭素数6〜18のアリール基であり、R8およびR9は、それぞれ炭素数1〜12の分岐していてもよい一価の有機基であり同一でも異なっていてもよく、R10は炭素数1〜18の分岐していてもよい二価の有機基であり、nは0〜2の整数である。)
【請求項2】
前記a)ポリイソシアネートが、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートである請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートが、脂肪族または脂環式ポリイソシアネートである請求項2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
さらに、e)エポキシ樹脂を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項5】
組成物中の全イソシアネート基に対する、前記シラン化合物c)のアミノ基(加水分解により生じるアミノ基を含む)の当量比が、0.05〜0.35である請求項1〜4のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項6】
前記アルコキシシランの縮合物が、下記一般式(1)で表される構造を有するトリアルコキシシランを20モル%以上含むアルコキシシランの縮合物である請求項1〜5のいずれかに記載のプライマー組成物。
【化3】

(式中、R1は炭素数1〜12の炭化水素基、R2は炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基である。)

【公開番号】特開2006−1975(P2006−1975A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177045(P2004−177045)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】