説明

プライマー組成物

【課題】基材と、基材上に形成される層との密着性を高めることが可能なプライマー層を形成させるためのプライマー組成物を提供する。
【解決手段】プライマー組成物は、基材の表面にプライマー層を形成させるためのプライマー組成物であり、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物にα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物が付加された形態の酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(A)と、水酸基価が50〜200mgKOH/gであるポリエステルポリオール(B)とを含有することを特徴とする。ポリエステルポリオール(B)は、脂環族多価カルボン酸を主成分として含有する多価カルボン酸成分(B1)と、脂肪族多価アルコールを主成分として含有する多価アルコール成分(B2)との縮合物が好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面にプライマー層を形成させるためのプライマー組成物に関し、より詳細には、基材と、基材上に形成される層との密着性を高めることが可能なプライマー層を形成させるためのプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にプラスチック基材、特にポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィン系の基材は、基材上に形成される層との密着性が乏しく、これまでに様々な密着性の改良方法が提案されてきた。例えば、コロナ放電処理に代表される酸化処理により密着性を改善する方法が、広く一般的に用いられているが、何らかの要因(例えば、コロナ表面処理をすることによって、基材同士がブロッキングを起こしやすくなることなど)により、酸化処理を利用できない場合がある。このように、酸化処理を利用できない場合、基材表面にプライマーを塗布してプライマー層を設けることにより、基材と、基材上に形成される層との密着性を改良する方法が提案されているが、例えば、酸化処理をしていないポリエチレン基材表面に接着剤を用いて他のプラスチックフィルムを貼り合わせる場合において、十分な密着性が得られるプライマーは未だ得られていない。
【0003】
一方、包装材料の分野においては、商品が内包されている包装袋などの各種包装材料には、商品名、使用法、販売者、製造者等の各種情報を明示したり、意匠性を高めて消費者の購買意欲を高めたりするために、その外面に印刷が施されている場合がある。このような印刷を施す方法としては、製造コストなどの観点から、包装材料の表面に印刷する表刷り印刷法が広く利用されている。
【0004】
包装材料としては、例えば、ポリオレフィン製包装材料(例えば、ポリエチレン製包装材料、ポリプロピレン製包装材料、エチレン−プロピレン共重合体製包装材料など)、ポリスチレン製包装材料の他、ポリエステル製包装材料等の各種プラスチック製包装材料などが用いられている。このようなプラスチック製包装材料では、ヒートシール(熱融着)により包装袋の形態に形成している場合があり、例えば、ポリエチレン製包装材料は、ポリエチレン製基材をヒートシールさせて、包装袋の形態にして形成されている。しかしながら、ポリエチレン製包装材料を形成するためのポリエチレン製基材は、非極性のポリエチレンにより形成されているので、通常のインキでは密着性が低く、印刷を施しても容易に剥がれてしまう。そのため、一般的に、印刷前に、ポリエチレン製基材に、表面を極性状態にするためのコロナ放電処理を施し、インキの密着性を確保している。しかし、このコロナ放電処理により、貯蔵中の経時で、フィルム表面に添加剤や低分子量の分解物が移行して、インキの密着性や、ヒートシール性を著しく低下させ、製品品質を低下させることが経験的に知られている。ヒートシール性が低下した場合の対処方法としては、例えば、(1)ヒートシール時の温度(ヒートシール温度)を高くする方法、(2)ヒートシール時の加圧する時間(加圧時間)を長くする方法などがある。しかしながら、ヒートシール温度を高くする方法(1)の場合は、ポリエチレン製基材に穴が開いて不良品となる可能性が高くなり、加圧時間を長くする方法(2)の場合は、生産性が低下し、いずれの場合も、コストアップの要因となっている。
【0005】
そこで、インキ密着性等の印刷適性と、ヒートシール性等の製袋加工適性とを両立させるために、印刷を施す部分にはコロナ放電処理を行い、ヒートシール強度が必要な部分にはコロナ放電処理を行わない方法があるが、コロナ放電の処理特性や生産性等の観点から、図2で示されるように、(3)コロナ放電処理をする際には、ポリエチレン製基材の流れ方向(搬送方向)に、ヒートシール部を含む線状の部分に、コロナ放電処理をせず、その他の線状の部分のみにコロナ放電処理をする方法が一般的に採用されている。しかしながら、前記(3)の方法の場合は、ヒートシール強度が必要な部分は一部であっても、ポリエチレン製基材の流れ方向に平行に線状にコロナ放電処理をしない部分を設けなければならない。そのため、ポリエチレン製基材において、コロナ放電処理が施されていない線状部分は、インキの密着性が低いために印刷を行うことができず、ポリエチレン製基材の表面が露出しており、該ポリエチレン製基材により作製されたポリエチレン製包装材料の意匠性が低下していた。このように、従来、ポリエチレン製包装材料などの包装材料では、実質的に、包装袋の形状と印刷可能部位とに制約が生じていた。
【0006】
図2は、部分的にコロナ放電処理を施した際のポリエチレン製基材の表面を示す概略図である。図2において、4はポリエチレン製基材、5はコロナ放電処理が施された部位(コロナ放電処理部)、6はコロナ放電処理が施されていない部位(コロナ放電非処理部)、6aはヒートシール強度が必要な部分、7はポリエチレン製基材4の搬送方向である。図2で示されるポリエチレン製基材4では、コロナ放電処理部5と、ヒートシール強度が必要な部分6aを含むコロナ放電非処理部6とが、コロナ放電処理を施す際にポリエチレン製基材4をコロナ放電処理装置内に搬送する搬送方向7(ポリエチレン製基材4の流れ方向)に平行に且つ線状に形成されている。もちろん、ポリエチレン製基材4において、コロナ放電処理部5が印刷を行うことが可能な部位(印刷可能面)であり、コロナ放電非処理部6がヒートシールを行うことが可能な部位(ヒートシール可能面)である。このように、線状のコロナ放電処理部と、線状のコロナ放電非処理部とを設ける方法でコロナ放電処理を行うことにより、基材に連続的にコロナ放電処理を施すことができる。
【0007】
なお、ポリエチレン製基材においてコロナ放電処理が施されていない部位に適用される印刷インキ(未処理フィルム用印刷インキ)もあるが、未処理フィルム用印刷インキは、インキ密着性等の印刷適性や、耐摩擦性、耐熱性等の印刷物性が、コロナ放電処理が施された部位に適用される印刷インキ(処理フィルム用印刷インキ)よりも劣り、汎用的に使用することができるものではない。
【0008】
また、ポリエチレン製基材の表面に印刷を施す際のインキ密着性を高める方法として、プライマーによる処理方法(プライマー処理方法)がある。しかしながら、包装材料(特に、ポリエチレン製包装材料、ポリプロピレン製包装材料等のポリオレフィン製包装材料や、ポリスチレン製包装材料などの包装材料)において、該包装材料を形成するための基材に対してインキ密着性を効果的に高めることが可能なプライマー組成物は、未だに開示や提案などがされていないのが現状である。
【0009】
なお、オレフィン系樹脂等の樹脂成形品などに適用されるプライマー組成物としては、例えば、(1)スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加物にα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物をグラフト重合して得た酸基を有する樹脂(A)が、該樹脂(A)を溶解する有機溶剤(B)に溶解してなるオレフィン系樹脂用プライマー組成物(特許文献1参照)や、(2)(A)スチレン・イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物に、モノオレフィンジカルボン酸およびその無水物、ならびにモノオレフィンジカルボン酸のモノアルキルエステルから選ばれる少なくとも1種の変性単量体を0.05〜20質量%含むようにグラフト共重合させてなる変性共重合体、(B)1〜50質量%のモノエポキシ化合物を付加反応して含有するエポキシ変性ポリエステル樹脂、及び(C)有機溶媒を含有するプライマー組成物(特許文献2参照)などが知られている。
【0010】
【特許文献1】特公平4−45532号公報
【特許文献2】特許第3191226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特公平4−45532号公報では、酸基を有する樹脂(A)として、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物に、無水マレイン酸をグラフト重合して得たマレイン酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体が用いられており、このような酸基を有する樹脂(A)は、水添スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、塩化ゴム、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレンの無水マレイン酸グラフト付加物、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト付加物などと併用することが可能となっている。
【0012】
また、特許第3191226号公報では、変性共重合体(A)として、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物に、無水マレイン酸を0.05〜20質量%含むようにグラフト共重合させてなる無水マレイン酸変性水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などが用いられており、マレイン酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等の酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体は、用いられていない。なお、特許第3191226号公報では、変性共重合体(A)は、無水マレイン酸変性水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等の酸変性されたスチレン−イソプレン共重合体又はその水素添加物であるので、1〜50質量%のモノエポキシ化合物を付加反応して含有するエポキシ変性ポリエステル樹脂(B)と組み合わせられることにより、被塗物表面への塗料の付着性が向上されている。
【0013】
しかしながら、特公平4−45532号公報に記載のオレフィン系樹脂用プライマー組成物や、特許第3191226号公報に記載のプライマー組成物であっても、基材(特に、ポリオレフィン製基材)と、該基材上に形成される層(例えば、印刷層、接着層や粘着層など)との密着性が未だ十分でなく、より一層、インキ密着性が高められたプライマー組成物が求められている。
【0014】
従って、本発明の目的は、基材と、基材上に形成される層との密着性を高めることが可能なプライマー層を形成させるためのプライマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体と、特定の水酸基価を有するポリエステルポリオールとが組み合わせられたプライマー組成物を用いて、基材上にプライマー層を形成し、該プライマー層を介して、基材上に他の層を形成すると、基材と、基材上に形成される層との密着性を大きく高めることが可能であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0016】
すなわち、本発明は、基材の表面にプライマー層を形成させるためのプライマー組成物であって、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物にα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物が付加された形態の酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(A)と、水酸基価が50〜200mgKOH/gであるポリエステルポリオール(B)とを含有することを特徴とするプライマー組成物を提供する。
【0017】
前記ポリエステルポリオール(B)としては、23℃において液状の形態を有していることが好ましく、ポリエステルポリオール(B)の数平均分子量は、1,000〜10,000であってもよい。ポリエステルポリオール(B)としては、脂環族多価カルボン酸を主成分として含有する多価カルボン酸成分(B1)と、脂肪族多価アルコールを主成分として含有する多価アルコール成分(B2)との縮合物が好適であり、該多価アルコール成分(B2)は、主成分としての脂肪族ジオールとともに、3価以上の脂肪族ポリオールを含有していることが好ましい。
【0018】
本発明のプライマー組成物において、ポリエステルポリオール(B)の割合は、酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(A)およびポリエステルポリオール(B)の総量に対して1〜30質量%であることが好適である。
【0019】
前記酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(A)としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物にマレイン酸又はその無水物が付加された形態のマレイン酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体が好適である。
【0020】
このようなプライマー組成物は、エチレン性不飽和単量体を単量体とするビニル系重合体による基材の表面に、プライマー層を形成させるためのビニル系重合体製基材用プライマー組成物として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のプライマー組成物は、前記構成を有しているので、基材と、基材上に形成される層との密着性を高めることが可能なプライマー層を形成させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(A)]
酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(A)は、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物にα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物が付加された形態を有している。酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(A)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(「SBSブロック共重合体」と称する場合がある)は、スチレンによる重合体単位(「ポリスチレン単位」と称する場合がある)と、ブタジエンによる重合体単位(「ポリブタジエン単位」と称する場合がある)と、ポリスチレン単位とが、この順でブロック状に結合された形態の共重合体であり、公知のSBSブロック共重合体の中から適宜選択することができる。
【0024】
SBSブロック共重合体において、全ポリスチレン単位の含有割合(ポリブタジエン単位の両側に位置している2つのポリスチレン単位の総量)(スチレン含有量)としては、特に制限されないが、例えば、SBSブロック共重合体を構成している全構成単位(ポリブタジエン単位、および2つのポリスチレン単位の総量)に対して60質量%以下(好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下)の範囲から適宜選択することができる。もちろん、SBSブロック共重合体における全ポリスチレン単位の含有割合(質量%)は、SBSブロック共重合体を調製するために用いられる単量体全量(スチレン、ブタジエンの総量)に対するスチレンの含有量(質量%)に相当する。
【0025】
なお、ポリブタジエン単位の両側に位置している2つのポリスチレン単位は、それぞれの間で、繰り返し単位の数が、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0026】
また、SBSブロック共重合体において、ポリブタジエン単位を構成している各構成単位(繰り返し単位)は、通常、いわゆる「1,2−結合」の構造を有する構成単位[−CH2−CH(−CH=CH2)−](「1,2−結合単位」と称する場合がある)と、いわゆる「1,4−結合(シス、トランス)」の構造を有する構成単位[−CH2−CH=CH−CH2−](「1,4−結合単位」と称する場合がある)とを有している。このようなポリブタジエン単位では、1,2−結合単位と、1,4−結合単位との割合としては、特に制限されない。
【0027】
なお、ポリブタジエン単位が1,2−結合単位および1,4−結合単位を有している場合、1,2−結合単位と1,4−結合単位とは通常ランダムな配置形態となっている。
【0028】
SBSブロック共重合体の水素添加物(「水添SBSブロック共重合体」と称する場合がある)は、SBSブロック共重合体に、水素が添加されたものであり、該水素添加により、ポリブタジエン単位中(主鎖又は側鎖)の二重結合を構成している2つの炭素原子に水素が付加され、二重結合が単結合に変換される。従って、ポリブタジエン単位において、水素添加により、1,4−結合単位の部分はブチレンになり、一方、1,2結合単位はエチル基を有するエチレンになる(主鎖を構成する部分はエチレンである)。なお、水添SBSブロック共重合体は、SBSブロック共重合体が少なくとも部分的に水素添加された構成を有していればよく、例えば、SBSブロック共重合体が部分的に水素添加された構成や、完全に水素添加された構成のいずれであってもよいが、完全に水素添加された構成であることが好ましい。そのため、水添SBSブロック共重合体には、いわゆる「スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体」(「SEBSブロック共重合体」と称する場合がある)が含まれる。もちろん、該SEBSブロック共重合体は、ポリスチレン単位と、エチレンとブチレンとによる重合体単位と、ポリスチレン単位とが、この順でブロック状に結合された形態の共重合体である。なお、SEBSブロック共重合体において、エチレンとブチレンとによる重合体単位は、通常、エチレンと、ブチレンとがランダムに配置された形態のランダム共重合体単位となっている。
【0029】
SBSブロック共重合体の水素添加物を調製する方法(SBSブロック共重合体の水添方法)は、特に制限されず、公知の方法から適宜選択することができる。SBSブロック共重合体の水添方法としては、例えば、いわゆる「水添触媒」の存在下、水素ガスを導入することにより、SBSブロック共重合体に水素を添加させる方法などが挙げられ、例えば、チタノセン系化合物とアルキルリチウムとを組み合わせて用いて水添する方法(特開昭61−33132号公報、特開平1−53851号公報、特開昭61−47706号公報、特開昭63−5402号公報など)、メタロセン系化合物と、有機アルミニウム、亜鉛、マグネシウムとを組み合わせて用いて水添する方法(特開昭61−28507号公報、特開昭62−209103号公報など)、チタノセン系化合物とアルコキシリチウムとを組み合わせて用いて水添する方法(特開平1−275605号公報など)、チタノセン系化合物と、オレフィン系化合物と、還元剤とを組み合わせて用いて水添する方法(特開平2−172537号公報など)、液状ゴムと、チタノセン系化合物と、還元剤とを組み合わせて用いて水添する方法(特開平4−96905号公報など)、チタノセン系化合物と、還元剤と、液状ゴムと、極性化合物とを組み合わせて用いて水添する方法(特開平8−33846号公報)などが挙げられる。
【0030】
酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(A)[「酸変性水添SBSブロック共重合体(A)」と称する場合がある]は、水添SBSブロック共重合体にα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物(「α,β−不飽和カルボン酸系化合物」と称する場合がある)が付加されて酸変性されたものである。なお、α,β−不飽和カルボン酸系化合物は、通常、グラフト重合により水添SBSブロック共重合体に付加される。α,β−不飽和カルボン酸系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸)、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのα,β−不飽和カルボン酸(α,β−不飽和1価又は多価カルボン酸)や、無水マレイン酸、無水イコタン酸などのα,β−不飽和多価カルボン酸の無水物などが挙げられる。α,β−不飽和カルボン酸系化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
なお、本発明では、α,β−不飽和カルボン酸系化合物に代えて、α,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステル化物を用いることもできる。α,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステル化物としては、アルキル−オキシ−カルボニル基(アルコキシカルボニル基)におけるアルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数が10以下(好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下、特に1又は2)のアルキル基であるα,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステル化物などが挙げられる。具体的には、α,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステル化物として、無水マレイン酸のアルキルエステル化物について例示すると、例えば、マレイン酸ジメチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル等のマレイン酸ジアルキルエステル;マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル等のマレイン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。
【0032】
本発明では、α,β−不飽和カルボン酸系化合物としては、特に、マレイン酸又はその無水物(中でも、無水マレイン酸)を好適に用いることができる。すなわち、酸変性水添SBSブロック共重合体(A)としては、水添SBSブロック共重合体にマレイン酸又はその無水物が付加された形態のマレイン酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(「マレイン酸変性水添SBSブロック共重合体」と称する場合がある)を好適に用いることができる。
【0033】
なお、α,β−不飽和カルボン酸系化合物とともに、該α,β−不飽和カルボン酸系化合物と共重合が可能な単量体(共重合性単量体)が用いられていてもよい。このような共重合性単量体としては、α,β−不飽和カルボン酸系化合物と共重合が可能であれば特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等のヒドロキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有単量体;塩化ビニル等の塩素原子含有単量体などの官能基含有単量体などが挙げられる。共重合性単量体は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
酸変性水添SBSブロック共重合体(A)を調製する方法としては、水添SBSブロック共重合体にα,β−不飽和カルボン酸系化合物を付加させて、水添SBSブロック共重合体を酸変性させることにより調製する方法であれば特に制限されず、公知の酸変性水添SBSブロック共重合体の製造方法から適宜選択することができる、例えば、重合開始剤の存在下、水添SBSブロック共重合体にα,β−不飽和カルボン酸系化合物をグラフト重合させることにより、水添SBSブロック共重合体にα,β−不飽和カルボン酸系化合物を付加させる方法(例えば、特公平4−45532号公報に記載されている方法など)を好適に採用することができる。前記重合開始剤としては、特に制限されないが、ラジカル重合開始剤を好適に用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤の中から適宜選択して用いることができ、例えば、有機過酸化物系化合物や、アゾ系化合物などが挙げられる。ラジカル重合開始剤等の重合開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
なお、水添SBSブロック共重合体にα,β−不飽和カルボン酸系化合物をグラフト重合により付加させる反応は、有機溶媒の存在下又は非存在下で行うことができ、また、必要に応じて加熱して、所定の温度下で行うことができる。
【0036】
酸変性水添SBSブロック共重合体(A)において、α,β−不飽和カルボン酸系化合物が水添SBSブロック共重合体に付加している量(α,β−不飽和カルボン酸系化合物の付加量)としては、特に制限されず、目的とする特性などに応じて適宜設定することが可能である。α,β−不飽和カルボン酸系化合物の付加量としては、例えば、酸変性水添SBSブロック共重合体(A)中のα,β−不飽和カルボン酸系化合物に由来するカルボキシル基の量が、0.01〜4.0mmol/g(好ましくは0.02〜2.0mmol/g、さらに好ましくは0.04〜1.0mmol/g)となるような量であることが好適である。
【0037】
このような酸変性水添SBSブロック共重合体(A)としては、例えば、商品名「タフテックM1943」(旭化成ケミカルズ株式会社製)、商品名「タフテックM1913」(旭化成ケミカルズ株式会社製)、商品名「タフテックM1911」(旭化成ケミカルズ株式会社製)、商品名「KRATON FG1901X」(KRATON Polymers Japan ltd社製)などの市販品を用いることができる。
【0038】
[ポリエステルポリオール(B)]
ポリエステルポリオール(B)は、50〜200mgKOH/gの水酸基価を有していることが重要である。ポリエステルポリオール(B)の水酸基価は、好ましくは60〜150mgKOH/gであり、さらに好ましくは80〜120mgKOH/gである。ポリエステルポリオール(B)の水酸基価が、50mgKOH/g未満であると、ポリエステルポリオール(B)の使用量を増加させることが必要になり、プライマー組成物は、酸変性水添SBSブロック共重合体(A)による優れた特性を発揮することができなくなる。一方、ポリエステルポリオール(B)の使用量が200mgKOH/gを超えると、酸変性水添SBSブロック共重合体(A)とポリエステルポリオール(B)との相溶性が低下し、良好な相溶性で混合されたプライマー組成物を調製することができなくなる。
【0039】
本発明では、ポリエステルポリオール(B)は、23℃において液状の形態を有していることが好ましい。
【0040】
また、ポリエステルポリオール(B)の数平均分子量は、1,000〜10,000であることが好ましく、さらに好ましくは1,500〜8,000であり、特に2,000〜6,000であることが好適である。ポリエステルポリオール(B)の数平均分子量が1,000未満であると、ポリエステルポリオール(B)が、基材、基材上に形成される層や、これらとの界面へ移行することによる不具合が発生しやすくなり、一方、10,000を超えると、プライマー組成物を塗布面に優れた均一性で塗布することが困難になる。なお、ポリエステルポリオール(B)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)により、ポリスチレン換算して求められた値である。
【0041】
ポリエステルポリオール(B)は、多価カルボン酸成分(B1)と、多価アルコール成分(B2)との縮合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価カルボン酸成分(B1)、多価アルコール成分(B2)及び環状エステルの3種類の成分による反応物のいずれであってもよいが、組成や水酸基価などをコントロールする観点などから、多価カルボン酸成分(B1)と、多価アルコール成分(B2)との縮合物が好適である。ポリエステルポリオール(B)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
【0042】
多価カルボン酸成分(B1)には、脂環族多価カルボン酸、脂肪族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸や、これらの多価カルボン酸の無水物や、多価カルボン酸のアルキルエステル化物などが含まれる。脂環族多価カルボン酸としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸(4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、2−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸など)、3−メチル−テトラヒドロフタル酸、4−メチル−テトラヒドロフタル酸、2,3−ノルボルネンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。芳香族多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、3−メチルフタル酸、4−メチルフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸、4,4´−ジフェニルメタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、多価カルボン酸成分(B1)としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、カンホロン酸、トリメシン酸などの3価以上の多価カルボン酸も用いることができる。
【0043】
また、多価カルボン酸の無水物としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸の無水物、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸の無水物、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸の無水物、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸などが挙げられる。
【0044】
さらに、多価カルボン酸のアルキルエステル化物としては、アルキル−オキシ−カルボニル基(アルコキシカルボニル基)におけるアルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数が10以下(好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下、特に1又は2)のアルキル基である多価カルボン酸のアルキルエステル化物などが挙げられる。具体的には、多価カルボン酸のアルキルエステル化物として、脂環族多価カルボン酸のアルキルエステル化物について例示すると、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステル、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステル、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステルなどが挙げられる。
【0045】
なお、多価カルボン酸成分(B1)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
本発明では、多価カルボン酸成分(B1)としては、脂環族多価カルボン酸を主成分として含有する多価カルボン酸成分を好適に用いることができる。なお、多価カルボン酸成分(B1)が、脂環族多価カルボン酸を主成分として含有する多価カルボン酸成分である場合、主成分として用いられる脂環族多価カルボン酸の割合としては、多価カルボン酸成分(B1)の全量に対して60質量%以上(好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上)であることが望ましい。もちろん、多価カルボン酸成分(B1)は、すべてが脂環族多価カルボン酸であってもよい。
【0047】
一方、多価アルコール成分(B2)には、脂肪族多価アルコール、脂環族多価アルコール、芳香族多価アルコールが含まれる。脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、1,4−テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,2−ジメチル−1,3−テトラメチレンジオール、2,2−ジエチル−1,3−テトラメチレンジオール、2,2−ジプロピル−1,3−テトラメチレンジオール、2,2−ジイソプロピル−1,3−テトラメチレンジオール、2,2−ジブチル−1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−テトラメチレンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−テトラメチレンジオール等の脂肪族ジオールなどが挙げられる。脂環族多価アルコールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、2,5−ノルボルナンジオール、アダマンタンジオール、水素化ビスフェノール類(水素化ビスフェノールAなど)、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオールなどが挙げられる。芳香族多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、p−キシレンジオール、4,4´−メチレンジフェノール、ナフタレンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の芳香族ジオールなどが挙げられる。また、多価アルコール成分(B2)としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセロール、ジグリセロール、グルコース、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、アラビトール等の3価以上の脂肪族ポリオールや、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジトリメチロールプロパン、ショ糖、ブドウ糖などの3価以上の多価アルコールも用いることができる。さらに、多価アルコール成分(B2)としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコールの他、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などのモノマー成分として複数のアルキレンオキシドを含む(アルキレンオキサイド−他のアルキレンオキサイド)共重合体を用いることもできる。
【0048】
なお、多価アルコール成分(B2)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
本発明では、多価アルコール成分(B2)としては、脂肪族多価アルコールを主成分として含有する多価アルコール成分を好適に用いることができ、なかでも、主成分としての脂肪族ジオールとともに、3価以上の脂肪族ポリオールを含有している多価アルコール成分が好適である。なお、多価アルコール成分(B2)が、脂肪族多価アルコールを主成分として含有する多価アルコール成分である場合、主成分として用いられる脂肪族多価アルコールの割合としては、多価アルコール成分(B2)の全量に対して60質量%以上(好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上)であることが望ましい。もちろん、多価アルコール成分(B2)は、すべてが脂肪族多価アルコールであってもよい。
【0050】
従って、ポリエステルポリオール(B)としては、脂環族多価カルボン酸を主成分として含有する多価カルボン酸成分(B1)と、脂肪族多価アルコールを主成分として含有する多価アルコール成分(B2)との縮合物が好ましく、なかでも、脂環族多価カルボン酸を主成分として含有する多価カルボン酸成分(B1)と、脂肪族多価アルコールを主成分として含有しており、該脂肪族多価アルコールが、主成分としての脂肪族ジオールとともに、3価以上の脂肪族ポリオールを含有している多価アルコール成分(B2)との縮合物が好適である。
【0051】
なお、ポリエステルポリオール(B)の水酸基価は、多価カルボン酸成分(B1)と、多価アルコール成分(B2)との割合(比率)や、多価アルコール成分(B2)中の3価以上の多価アルコール成分の割合などを調節することにより、調整することができる。特に、本発明では、ポリエステルポリオール(B)の水酸基価が50〜200mgKOH/gと高いので、多価アルコール成分(B2)中の3価以上の多価アルコール成分の割合が、ヒドロキシル基を両末端のみに有するポリエステルポリオールの場合よりも多くなっている。
【0052】
ポリエステルポリオール(B)を製造する方法としては、所定の水酸基価を有するポリエステルポリオールを製造する方法であれば特に制限されず、公知のポリエステルポリオールの製造方法から適宜選択することができ、例えば、エステル化触媒の存在下、多価カルボン酸成分(B1)と多価アルコール成分(B2)とを反応させる方法などが挙げられる。なお、前記エステル化触媒としては、特に制限されないが、ポリエステルポリオールを調製する際に用いられる公知のエステル化触媒から適宜選択して用いることができ、例えば、パラトルエンスルホン酸、硫酸、リン酸、有機チタン化合物、有機スズ化合物、酸化スズ、酸化チタン、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。エステル化触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、多価カルボン酸成分(B1)と多価アルコール成分(B2)との反応は、必要に応じて、加熱下、減圧下、不活性ガスの存在下などの各種条件下で行うことができる。
【0053】
このようなポリエステルポリオール(B)としては、例えば、商品名「ゼオファイン231L」(日本ゼオン株式会社製)などの市販品を用いることができる。
【0054】
[プライマー組成物]
本発明のプライマー組成物は、酸変性水添SBSブロック共重合体(A)と、水酸基価が50〜200mgKOH/gであるポリエステルポリオール(B)とを含有することを特徴としている。このように、本発明のプライマー組成物では、酸変性水添SBSブロック共重合体(A)が、所定の水酸基価を有しているポリエステルポリオール(B)と組み合わせて用いられているので、基材上に形成される層を、前記プライマー組成物を用いて形成されたプライマー層を介して基材上に形成させることにより、基材上に形成される層が、基材に対しては密着性が低くても、優れた密着性で、基材上に形成される層を基材上に形成させることができる。
【0055】
このようなプライマー組成物において、ポリエステルポリオール(B)の割合としては、特に制限されないが、例えば、酸変性水添SBSブロック共重合体(A)およびポリエステルポリオール(B)の総量に対して1〜50質量%の範囲から選択することができ、好ましくは1〜30質量%(さらに好ましくは2〜10質量%)であり、特に3〜6質量%であることが好適であり、中でも4〜5質量%であることが好ましい。ポリエステルポリオール(B)の割合が、酸変性水添SBSブロック共重合体(A)およびポリエステルポリオール(B)の総量に対して1質量%未満であると、基材と、該基材上にプライマー組成物によるプライマー層を介して形成される層との密着性を向上させる効果が低下し、一方、50質量%を超えると、酸変性水添SBSブロック共重合体(A)の割合が低下することにより、酸変性水添SBSブロック共重合体(A)による優れた特性を発揮することができなくなる場合がある。
【0056】
プライマー組成物には、必要に応じて、粘着付与樹脂、架橋剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、充填材、熱安定剤、着色剤(顔料や染料など)、乳化剤、界面活性剤、エマルジョンやラテックス、カップリング剤、香料などの各種添加剤又は成分などが含まれていてもよい。なお、粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂の他、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂などが挙げられる。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ポリエチレンイミン系架橋剤、メラミン系架橋剤などが挙げられる。
【0057】
プライマー組成物は、酸変性水添SBSブロック共重合体(A)とポリエステルポリオール(B)とを含有していれば、どのような形態を有していてもよいが、酸変性水添SBSブロック共重合体(A)とポリエステルポリオール(B)とが、溶媒又は分散媒に、溶解又は分散された形態を有していることが好ましく、特に、酸変性水添SBSブロック共重合体(A)とポリエステルポリオール(B)とが溶媒に溶解された形態を有していることが好適である。酸変性水添SBSブロック共重合体(A)とポリエステルポリオール(B)とを溶解させることが可能な溶媒としては、特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルエーテル等の脂肪族エーテル類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類;クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類などの有機溶媒が挙げられる。このような有機溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。有機溶媒としては、乾燥性、酸変性水添SBSブロック共重合体(A)やポリエステルポリオール(B)の溶解性、労働衛生性等の観点からは、メチルシクロヘキサンを好適に用いることができる。
【0058】
なお、プライマー組成物が、酸変性水添SBSブロック共重合体(A)とポリエステルポリオール(B)とが溶媒に溶解された形態を有している場合、プライマー組成物中の固形分の割合としては、特に制限されないが、例えば、プライマー組成物全量(固形分および溶媒の全量)に対して1〜50質量%(好ましくは3〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%)の範囲から適宜選択することができる。
【0059】
本発明のプライマー組成物は、基材の表面にプライマー層を形成させるためのプライマー組成物であり、基材の所定の表面に、プライマー組成物を、所定の厚さとなる塗布量で塗布し、必要に応じて乾燥や硬化などを行うことにより、プライマー層を形成させることができる。プライマー組成物により形成されるプライマー層の厚さとしては、特に制限されないが、例えば、プライマー組成物の塗布量(固形分)としては、0.01〜10.0g/m2(好ましくは0.01〜3.0g/m2、さらに好ましくは0.01〜1.0g/m2)の範囲から適宜選択することができる。また、プライマー組成物の塗布方法としては、特に制限されず、公知のプライマー組成物の塗布方法から適宜選択して利用することができ、例えば、塗布具(刷毛など)を用いた塗布方法、塗布装置(エアスプレー、エアレススプレー、メイヤーバーコーター、べーカー式アプリケータ、ナイフコーター、ダイコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、スプレーコーター、カーテンコーター、コンマコーター、静電コーター、押出コーターなど)を用いた塗布方法、印刷法(グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法など)を利用した塗布方法、静電塗布、スピンコート、スプレーコートなどが挙げられる。
【0060】
なお、本発明では、各種塗布方法を利用することにより、プライマー組成物は、基材の表面の少なくとも印刷が必要な部位のみに(例えば、ヒートシール強度が必要な部分以外の部分のみに)、連続的に、良好な生産性で塗布することができる。
【0061】
特に、本発明では、プライマー組成物によるプライマー層上に接着層や印刷層を形成する場合は、別途、プライマー組成物を塗布してプライマー層のみを形成する工程を必要とせず、接着層や印刷層を形成する工程で、プライマー組成物の塗布も行ってプライマー層を形成させることができるので、生産性を大きく向上させることができる。
【0062】
従って、例えば、基材がヒートシール可能な基材であり、且つプライマー組成物によるプライマー層上に接着層や印刷層を形成する場合は、接着層や印刷層を形成する工程で、図1で示されるように、基材の表面において、ヒートシール強度が必要な部分には、プライマー組成物を塗布せず、ヒートシール強度が必要でない部分のみに、プライマー組成物を塗布することができ、極めて優れた生産性で、プライマー組成物の塗布を行って、プライマー層の形成を行うことができる。図1は、部分的にプライマー層を形成した際の基材の表面を示す概略図である。図1において、1はヒートシール可能な基材、1aは基材の表面、2はプライマー層、3は基材の搬送方向である。図1で示される基材1は、ヒートシール可能な基材であり、該基材1の表面に、プライマー層2が部分的に形成されており、ヒートシール強度が必要な部分には、プライマー層2が形成されておらず、基材の表面1aが露出している。従って、基材1において、プライマー層2が形成された部位は、接着層や印刷層を形成することが可能な部位であり、基材の表面1aが露出している部位は、ヒートシールを行うことが可能な部位である。
【0063】
本発明において、プライマー組成物を適用することが可能な基材としては、特に制限されないが、例えば、エチレン性不飽和単量体を単量体とするビニル系重合体による基材(ビニル系重合体製基材)、ポリエステル製基材、ウレタン系樹脂製基材、エポキシ系樹脂製基材、フッ素系樹脂製基材、ポリアミド(ナイロン)製基材、ポリイミド製基材などが挙げられる。前記ビニル系重合体製基材としては、エチレン性不飽和結合を有するエチレン性不飽和単量体(ビニル系モノマー)により形成された基材であれば特に制限されないが、例えば、ポリエチレン製基材、ポリプロピレン製基材、エチレン−プロピレン共重合体製基材、エチレン−酢酸ビニル共重合体製基材、エチレン−ビニルアルコール共重合体製基材等のポリオレフィン製基材の他、ポリスチレン製基材、アクリル系樹脂製基材、メタクリル系樹脂製基材などが挙げられる。
【0064】
基材は、単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。
【0065】
このような基材としては、フィルム状又はシート状の形態を有していることが好ましいが、各種形状の成型体の形態を有していてもよい。なお、基材がフィルム状又はシート状の形態を有している場合、該フィルム状又はシート状の基材は、包装材料(包装袋など)を形成するための包装材として利用することができる。
【0066】
本発明のプライマー組成物によるプライマー層を介して、基材上に形成される層としては、特に制限されないが、例えば、接着層、粘着層、印刷層、トップコート層(オーバーコート層)の他、各種中間層や樹脂層などが挙げられる。なお、接着層を形成するための接着剤としては、特に制限されず、例えば、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリアミド系接着剤などの公知の接着剤の中から適宜選択して用いることができる。また、粘着層を形成するための粘着剤としては、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などの公知の粘着剤の中から適宜選択して用いることができる。さらに、印刷層を形成するための印刷インキとしては、特に制限されず、公知の印刷法(例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法)で用いられるインキの中から適宜選択して用いることができる。さらにまた、トップコート層を形成するためのトップコート剤(オーバーコート剤)としては、特に制限されず、公知のトップコート剤の中から適宜選択して用いることができる。また、中間層としては、特に制限されず、それぞれ公知の方法によって形成されるガスバリア層、金属(酸化物)蒸着層、帯電防止層、導電層、電磁波反射層、電磁波吸収層などが挙げられる。さらに、樹脂層を形成するための樹脂としては、特に制限されず、公知の樹脂(熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂など)の中から適宜選択することができる。なお、樹脂層を形成する方法としては、特に制限されず、公知の方法(例えば加熱溶融した熱可塑性樹脂をTダイからフィルム状に押し出しながら、予めプライマー層が形成された基材と貼り合わせる方法、紫外線硬化性樹脂組成物を、予めプライマー層が形成された基材のプライマー層上に塗布し紫外線を照射して硬化させる方法など)を用いることができる。
【0067】
特に、本発明では、基材が、極性基(例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、エポキシ基など)を有していないポリマー(ポリエチレン等のポリオレフィンなど)により形成された基材であっても、基材にコロナ放電処理等の表面処理を施さなくても、該基材上に接着層や印刷層等の他の層を、前記プライマー組成物によるプライマー層を介して、優れた密着性で形成することができる。
【0068】
なお、プライマー層上に、接着層や印刷層等の他の層を形成させた後、該他の層上に、さらに、トップコート層を形成することにより、ブロッキング防止性、耐熱性、耐摩擦性などを高めることができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた材料は下記の通りである。
【0070】
[酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体]
(1)商品名「タフテックM1943」[旭化成ケミカルズ株式会社製;マレイン酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体;スチレン単位/エチレン−ブチレン単位(質量%)=20/80、酸価:10mgCH3ONa/g;「酸変性水添SBS(A-a)」と称する場合がある]
(2)商品名「タフテックM1913」[旭化成ケミカルズ株式会社製;マレイン酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体;スチレン単位/エチレン−ブチレン単位(質量%)=30/70、酸価:10mgCH3ONa/g;「酸変性水添SBS(A-b)」と称する場合がある]
【0071】
[ポリエステル]
(1)商品名「ゼオファイン231L」[日本ゼオン株式会社製;ポリエステルポリオール;非晶性高分岐鎖ポリエステル;脂環族多価カルボン酸・脂肪族多価アルコール縮合物;数平均分子量:4,000、水酸基価:100mgKOH/g;「ポリエステル(B-a)」と称する場合がある]
(2)商品名「バイロン220」[東洋紡績株式会社製;ポリエステルポリオール;水酸基価:50mgKOH/g;「ポリエステル(B-b)」と称する場合がある]
(3)商品名「TLM」[豊国製油株式会社製;ひまし油系ポリエステルポリオール;水酸基価:161mgKOH/g;「ポリエステル(B-c)」と称する場合がある]
(4)商品名「POLYCASTOR♯10」[豊国製油株式会社製;ひまし油系ポリエステルポリオール;水酸基価:160.1mgKOH/g;「ポリエステル(B-d)」と称する場合がある]
(5)商品名「ニッポラン121E」日本ポリウレタン工業株式会社製;ポリエステルポリオールの70質量%の溶液;水酸基価:270〜310mgKOH/g;「ポリエステル(B-e)」と称する場合がある]
(6)商品名「DYNACOLL7210」デグサジャパン株式会社製;液状ポリエステルポリオール;水酸基価:28.6mgKOH/g;「ポリエステル(B-f)」と称する場合がある]
(7)商品名「エリーテルUE−3221」[ユニチカ株式会社製;ポリエステル樹脂;極限粘度:0.69、酸価:0.2mgKOH/g、水酸基価:7.9mgKOH/g、軟化点:47℃;「ポリエステル(B-g)」と称する場合がある]
【0072】
(実施例1)
攪拌装置、環流冷却器、加熱装置を備えた容器に、酸変性水添SBS(A-a):95質量部、ポリエステル(B-a):5質量部、およびメチルシクロヘキサン:900質量部を仕込み、溶け残りがなくなるまで、70℃の温度下で加熱攪拌を行った後、室温まで冷却して、プライマー組成物を調製した。
【0073】
(実施例2〜11)
表1〜3に示される組成で、酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(表1〜3中、「酸変性水添SBS」と称する)、ポリエステルおよび溶媒を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、プライマー組成物を調製した。
【0074】
(比較例1〜6)
表1〜3に示される組成で、酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(酸変性水添SBS)、ポリエステルおよび溶媒を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、プライマー組成物を調製した。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
(評価)
実施例、比較例に係るプライマー組成物について、下記の接着強度の測定方法により、プライマー組成物によるプライマー層を介して接着層を形成した際の接着強度(T型剥離接着強さ)を測定し、プライマー層を介して形成された接着層の接着性(密着性)を評価した。なお、測定結果は表1〜3の「接着強度(N/25mm)」の欄に示した。
【0079】
(接着強度の測定方法)
片面のみにコロナ放電処理が施されているリニアローデンシティポリエチレン(LLDPE)フィルム(商品名「LL−XMTN 50μm」フタムラ化学株式会社製)の未処理面(コロナ放電処理が施されていない側の面)に、メイヤーバーコーター♯3を用いて、23℃且つ50%RHの環境下、プライマー組成物を塗布し、70℃のオーブン中で20秒間乾燥させる。なお、プライマー組成物の塗布量は、約0.5g/m2(固形分)であった。
【0080】
また、ドライラミネート用接着剤(商品名「タケネートA−5」三井武田ケミカル株式会社製):1質量部、商品名「タケラックA−969V」(三井武田ケミカル株式会社製):3質量部、および酢酸エチル:7質量部を混合し、ドライラミネート用接着剤液を調製する。このドライラミネート用接着剤液を、片面のみにコロナ放電処理が施されているLLDPEフィルム(商品名「LL−XMTN 50μm」フタムラ化学株式会社製)のコロナ放電処理面に、23℃且つ50%RHの環境下、メイヤーバーコーター♯7を用いて塗布し、80℃のオーブン中で20秒間乾燥する。なお、ドライラミネート用接着剤液の塗布量は、約3g/m2(固形分)であった。
【0081】
その後、23℃且つ50%RHの環境下、ドライラミネート用接着剤液の塗布面と、プライマー組成物の塗布面とが接触する形態で重ね合わせて、ローラーで圧着させながら貼り合わせた後、40℃で24時間エージングを行い、接着強度の測定用試験片を作製する。
【0082】
そして、接着強度の測定用試験片を、25mm幅に切り取り、23℃且つ50%RHの環境下、ドライラミネート用接着剤液の塗布面側のフィルムと、プライマー組成物の塗布面側のフィルムとを、T型剥離方向に、毎分50mmの速度で剥離させた時の強さ(T型剥離接着強さ;N/25mm)を測定する。
【0083】
また、ブランクとして、プライマー層を形成させなかったこと以外は、前記と同様にして、2枚のLLDPEフィルム(商品名「LL−XMTN 50μm」フタムラ化学株式会社製)を貼り合わせて、前記と同様にして、T型剥離接着強さ(N/25mm)を測定する。
【0084】
表1から明らかなように、実施例1〜11に係るプライマー組成物は、ポリエチレンフィルムにおけるコロナ放電処理等の表面処理が施されていない面に対して、密着性が優れているとともに、該プライマー組成物によるプライマー層上に、優れた密着性で、接着層を形成することが可能であることが確認された。従って、実施例1〜11に係るプライマー組成物を用いると、該プライマー組成物によるプライマー層を介して、コロナ放電処理等の表面処理が施されていないポリエチレンフィルム上に、接着層等の他の層を優れた密着性で形成させることができる。
【0085】
一方、比較例1〜2に係るプライマー組成物は、ポリエステルポリオール(B)を含有しておらず、酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(A)のみにより構成されているので、コロナ放電処理等の表面処理が施されていないポリエチレンフィルム上にプライマー層を介して形成された接着層の密着性が十分でない。比較例3に係るプライマー組成物は、水酸基価が200mgKOH/gを超えているポリエステルポリオールが用いられており、また、比較例4〜6に係るプライマー組成物は、水酸基価が50mgKOH/g未満のポリエステルポリオールが用いられているので、いずれも、コロナ放電処理等の表面処理が施されていないポリエチレンフィルム上にプライマー層を介して形成された接着層の密着性が低くなっている。
【0086】
また、実施例1に係るプライマー組成物について、下記のインキの密着性の評価方法により、プライマー組成物によるプライマー層を介して印刷層を形成した際のインキの密着性を評価した。評価結果は、表4に示した。
【0087】
(インキの密着性の評価方法)
片面のみにコロナ放電処理が施されているLLDPEフィルム(商品名「LL−XMTN 50μm」フタムラ化学株式会社製)の未処理面(コロナ放電処理が施されていない側の面)に、23℃且つ50%RHの環境下、メイヤーバーコーター♯3を用いて、実施例1に係るプライマー組成物を塗布し[塗布量:約0.5g/m2(固形分)]、プライマー層を形成させた後、該プライマー層上に、処理フィルム用印刷インキ(コロナ放電処理施された部位に適用される印刷インキ)を用いて印刷層(サイズ:100mm×300mm)を形成する。その後、40℃で48時間エージングを行った後、23℃且つ50%RHの環境下、粘着テープ(商品名「セロテープ:CT―15M」ニチバン社製;幅:15mm)を、前記印刷層上に貼り合わせ、圧着させて貼り付けた後、手で、剥離角度:180°で剥離させる操作を、同一の印刷層について5回行い、下記の評価基準により、インキの密着性を評価した。
評価基準
◎:印刷層の剥離が全くない。
○:印刷層の表面部分で一部、薄く剥離が見られる。
△:印刷層の一部で剥離が見られる。
×:印刷層のほとんど又はすべてで剥離が見られる。
【0088】
前記評価基準において、「◎」は「優」を意味しており、「○」は「良」を意味しており、「△」は「可」を意味しており、「×」は「不可」を意味している。
【0089】
なお、参考として、(1)片面のみにコロナ放電処理が施されているLLDPEフィルム(商品名「LL−XMTN 50μm」フタムラ化学株式会社製)のコロナ放電処理面に、前記と同様の処理フィルム用印刷インキを用いて、前記と同様にして印刷層を形成した際のインキの密着性(参考例1)、(2)片面のみにコロナ放電処理が施されているLLDPEフィルム(商品名「LL−XMTN 50μm」フタムラ化学株式会社製)の未処理面(コロナ放電処理が施されていない側の面)に、前記と同様の処理フィルム用印刷インキを用いて、前記と同様にして印刷層を形成した際のインキの密着性(参考例2)、(3)片面のみにコロナ放電処理が施されているLLDPEフィルム(商品名「LL−XMTN 50μm」フタムラ化学株式会社製)の未処理面(コロナ放電処理が施されていない側の面)に、未処理フィルム用印刷インキ(コロナ放電処理が施されていない部位に適用される印刷インキ)を用いて、前記と同様にして印刷層を形成した際のインキの密着性(参考例3)についても、前記と同様にして評価した。評価結果は、表4に示した。
【0090】
【表4】

【0091】
表4から明らかなように、実施例1に係るプライマー組成物を用いると、ポリエチレンフィルムのコロナ放電処理が施されていない表面上に印刷層を形成する場合であっても、ポリエチレンフィルムのコロナ放電処理が施されている表面に直接に印刷層を形成する場合(参考例1)と同様の優れたインキ密着性で、印刷層を形成することができる。
【0092】
なお、ポリエチレンフィルムのコロナ放電処理が施されていない表面上に直接に、処理フィルム用印刷インキや、未処理フィルム用印刷インキ等を用いて印刷層を形成すると、インキ密着性が低く、印刷層が部分的に又は完全に剥がれてしまう。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、部分的にプライマー層を形成した際の基材の表面を示す概略図である。
【図2】図2は、部分的にコロナ放電処理を施した際のポリエチレン製基材の表面を示す概略図である。
【符号の説明】
【0094】
1 ヒートシール可能な基材
1a 基材の表面
2 プライマー層
3 基材の搬送方向
4 ポリエチレン製基材
5 コロナ放電処理が施された部位(コロナ放電処理部)
6 コロナ放電処理が施されていない部位(コロナ放電非処理部)
6a ヒートシール強度が必要な部分
7 ポリエチレン製基材4の搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面にプライマー層を形成させるためのプライマー組成物であって、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物にα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物が付加された形態の酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(A)と、水酸基価が50〜200mgKOH/gであるポリエステルポリオール(B)とを含有することを特徴とするプライマー組成物。
【請求項2】
ポリエステルポリオール(B)が、23℃において液状の形態を有している請求項1記載のプライマー組成物。
【請求項3】
ポリエステルポリオール(B)の数平均分子量が、1,000〜10,000である請求項1又は2記載のプライマー組成物。
【請求項4】
ポリエステルポリオール(B)が、脂環族多価カルボン酸を主成分として含有する多価カルボン酸成分(B1)と、脂肪族多価アルコールを主成分として含有する多価アルコール成分(B2)との縮合物である請求項1〜3の何れかの項に記載のプライマー組成物。
【請求項5】
多価アルコール成分(B2)が、主成分としての脂肪族ジオールとともに、3価以上の脂肪族ポリオールを含有している請求項4記載のプライマー組成物。
【請求項6】
ポリエステルポリオール(B)の割合が、酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(A)およびポリエステルポリオール(B)の総量に対して1〜30質量%である請求項1〜5の何れかの項に記載のプライマー組成物。
【請求項7】
酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(A)が、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物にマレイン酸又はその無水物が付加された形態のマレイン酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体である請求項1〜6の何れかの項に記載のプライマー組成物。
【請求項8】
エチレン性不飽和単量体を単量体とするビニル系重合体による基材の表面に、プライマー層を形成させるためのビニル系重合体製基材用プライマー組成物である請求項1〜7の何れかの項に記載のプライマー組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−112832(P2007−112832A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302964(P2005−302964)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【出願人】(000106715)ザ・パック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】