説明

プラスチックキャップ

【課題】内容液を注ぎ出す際の容器の傾きの度合いが多少変化した場合にも、スムーズに且つ一定の液幅で内容液の注ぎ出しを行なうことが可能であり、液量の調整を容易に行なうことができる注出筒付プラスチックキャップを提供する。
【解決手段】キャップ本体1の頂板部5に設けられている注出筒11の上端部分には、外方に傾斜して突出しているクチバシ部20が形成されており、注出筒11の内面の下端部分は、略円筒形状のシール面17となっており、注出筒11のクチバシ部20の内面には、シール面17の上端部分からクチバシ部20上端まで延びている溝30が形成されており、上蓋2の内面には、上蓋2を閉じたときに、注出筒11の内面のシール面17と密着するシール用リング29が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内容液の注ぎ出し用案内となる注出突部(例えば注出筒)の上端に、外方に突出したクチバシ部が注ぎ口として形成されているプラスチックキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器内容液の注ぎ出し用案内となる注出筒の如き注出突部を備えたプラスチックキャップは、広く使用されている。このような注出筒付プラスチックキャップの代表的なものは、例えば容器口部に固定されるキャップ本体と、該キャップ本体に開閉可能にヒンジ連結された上蓋とからなり、該キャップ本体に注出筒が設けられた構造を有している。即ち、キャップ本体は、筒状側壁と、該筒状側壁の上端を閉じるようにして形成されている頂板部とを有しており、この頂板部の上面に注出筒が形成されており、頂板部の注出筒で囲まれた部分には、無端状のスコアで区画された開口予定部が形成されている。容器口部に固定されているキャップ本体の上記スコアを引裂くことにより開口が形成され、この開口を通して容器内容液の注ぎ出しを行うと、注ぎ出された液は、注出筒の壁面に沿って流れ、飛び散り等を生じることなく、スムーズに内容液の注ぎ出しが行われることとなる。
【0003】
上記のような注出筒においては、一般に、その上端の少なくとも一部は、注出筒の付け根部分よりも外方に突出して注ぎ口となっており、該注ぎ口では、その上端部分が、ラッパ状に外方に湾曲しているが、最近では、注出筒の上端に、外方に大きく突出したクチバシ部を形成し、このようなクチバシ部を注ぎ口とすることが提案されており、クチバシ部の形成により液切れ性が高められることが知られている(特許文献1、2参照)。
【0004】
また、注出筒の一部を下端から上端にわたって外方に細長く突出した部分を形成し、この部分を通して内容液の注ぎ出しを行なうキャップも提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−40299号公報
【特許文献2】特開2004−352284号公報
【特許文献3】特開2007−131352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2のように注出筒にクチバシ部が設けられたプラスチックキャップは、液切れ性という点では優れているものの、内容液を注ぎ出す際の容器の傾きの度合いが僅かに変化するだけで、クチバシ部から注ぎ出される液の幅が変動し、この結果、注ぎ出された液の落下部の大きさ(面積)が大きく変動してしまうことがある。特に、液の落下部の大きさが小さくなる場合にはさほどの問題は生じないが、逆に液の落下部の大きさが大きくなってしまうときには、不必要な部分に内容液を落としてしまうなどの不都合を生じることがある。
【0007】
また、特許文献3のように、細長く突出した部分が注出筒に形成されているキャップでは、容器を大きく傾斜しなければ、内容液の注ぎ出しが行われず、この結果、内容液の小出しを行うには適当でなく、また、注ぎ出される液量が多いため、やはり、容器の傾き度合いの変化により、注ぎ出される液の幅の変動を生じ易く、液切れ性もあまり期待できないという問題がある。
【0008】
また、特許文献1〜3のキャップでは、内容液の注出容量が一定の場合にクチバシ部や細長い突出部が有効に機能するが、内容液の注出容量の変化に追随し得ず、例えば、少量の液を注ぎ出す場合に、クチバシ部等からスムーズに液の注ぎ出しが行なわれるように設計されているときには、容器を大きく傾けて大容量の液を注ぎ出す場合には、クチバシ部等が有効に機能せず、例えばクチバシ部などの部分以外の箇所からも液が注ぎ出されてしまい、液の注ぎ出しが不安定となったり、液切れも不満足となってしまう。また、大容量の液を注ぎ出す場合に、クチバシ部等からスムーズに液の注ぎ出しが行なわれるように設計されているときには、小容量の液を注ぎ出す場合にも、スムーズに液の注ぎ出しを行なうことができるものの、反面、クチバシ部や細長い突出部を必要以上に大きく形成しなければならないという問題がある。従って、一般需要者の利便性を考えると、未だ改善の余地がある。
【0009】
従って、本発明の目的は、内容液を注ぎ出す際の容器の傾きの度合いが多少変化した場合にも、スムーズに且つ一定の液幅で内容液の注ぎ出しを行なうことが可能で、しかも液切れ性の良好な注出突部を備えたプラスチックキャップを提供することにある。
本発明の他の目的は、少量の液を注ぎ出す場合及び大量の液を注ぎ出す場合にも、安定してスムーズに液の注ぎ出しを行なうことができ、利便性に優れた注出突部を備えたプラスチックキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、容器口部に固定されるキャップ本体と、該キャップ本体に開閉可能に装着される上蓋とからなり、キャップ本体は、頂板部と頂板部の周縁部から降下したスカート部とを備えていると共に、該頂板部には、容器内容液を注ぎ出すための開口或いは開口予定部が形成されており、該頂板部の上面には、該開口或いは開口予定部の外側部分に、容器内容液の注ぎ出し用案内となる注出突部が形成されている注出筒付プラスチックキャップにおいて、
前記注出突部の上端部分には、外方に傾斜して突出しており、且つ上面から見て、中心部に頂点を有している三角形状のクチバシ部が形成されており、
前記注出突部の内面の下端部分は、垂直方向に延びているシール面となっており、
前記注出突部の前記クチバシ部の内面には、前記シール面の上端部分からクチバシ部上端まで延びている溝が形成されており、
前記上蓋の内面には、該上蓋を閉じたときに、前記シール面と密着するシール用リングが形成されていることを特徴とするプラスチックキャップが提供される。
【0011】
本発明においては、
(1)前記注出突部が筒状形状または弧状形状を有していること、
(2)前記注出突部の前記クチバシ部の内面は、前記シール面の上端から上方に向かって外方に傾斜した傾斜面となっており、該クチバシ部の周方向中心での側断面でみて、該傾斜面は、該注出突部の少なくとも半分以上の高さにわたって形成されていること、
(3)前記開口或いは開口予定部は、前記クチバシ部に対面する側の部分が小幅の注出液絞り領域を有している形状に形成されていること、
(4)前記クチバシ部の内面に形成されている前記溝は、前記開口或いは開口予定部の注出液絞り領域と同程度の幅を有していること、
(5)前記クチバシ部の内面に形成されている前記溝は、上方からみて、前記シール面の上端部分からクチバシ部上端まで延びている大容量注出案内用溝部と、該大容量注出案内用領域溝部の内部に位置し、大容量注出案内用溝部よりも小幅で且つ前記シール面の上端部分からクチバシ部上端まで延びている小容量もしくは中容量注出案内用の溝部が少なくとも1個形成されていること、
(6)前記溝の大容量注出案内用溝部の内側には、該大容量注出案内用溝部よりも小幅で且つ前記シール面の上端部分からクチバシ部上端まで延びている中容量注出案内用の溝部と、該中容量注出案内用溝部よりもさらに小幅で且つ前記シール面の上端部分からクチバシ部上端まで延びている小容量注出案内用の溝部とが形成されていること、
(7)前記頂板部の注出筒よりも内側の部分には、中心部が最も凹んだ凹部が形成されており、該凹部に前記開口或いは開口予定部が形成されており、該開口或いは開口予定部の注出液絞り領域からは、前記注出筒の付け根部分に向かって先細のテーパー形状の注出流路が形成されおり、この注出流路の延長線上に前記溝の中心部分が位置していること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプラスチックキャップにおいては、注出突部の外方に突出したクチバシ部の内面には、前記シール面の上端部分からクチバシ部上端まで延びている溝が形成されていることが重要な特徴である。即ち、このような溝は、注ぎ出される液を絞るという作用を有している。このため、内容液を注ぎ出す際の容器の傾きの度合いが多少変化した場合にも、スムーズに且つ一定の液幅で内容液の注ぎ出しを行なうことが可能となり、内容液の注ぎ出しの調整が容易に行えるようになる。例えば、容器の傾きが多少大きくなって注ぎ出される液量が多くなった場合にも、上記の溝で液が絞られるため、クチバシ部から注ぎ出される液の幅はほとんど変動せず、液の落下点での面積が大きくなることはない。
【0013】
また、クチバシ部の内面は、ほぼ垂直のシール面の上端から外方に傾斜している傾斜面となっており、この傾斜面に上記の溝が形成されているため、容器を大きく傾けなくとも液の注ぎ出しを行なうことができる。
【0014】
さらに、本発明において、前記溝に大容量注出案内用溝部を形成し、この溝部の内部にさらに小幅の小容量注出案内用溝部や中容量注出用案内用溝部を形成した場合には、容器を大きく傾けて大容量の液を注ぎ出す場合、及び容器を小さく傾けて小量の液を注ぎ出す場合の何れにおいても、液幅の変動を抑制しながらスムーズに液の注ぎ出しを行なうことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を、以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、筒状形状の注出突部を備えた本発明のプラスチックキャップの例を、上蓋が開放された状態で示す平面図であり、
図2は、図1のプラスチックキャップの側断面図(A−A断面図)であり、
図3は、図1のプラスチックキャップを、上蓋を閉じた状態で示す側断面図であり、
図4は、図1のプラスチックキャップにおいて、スコアを引き裂いて頂板部に開口が形成された状態のキャップ本体を斜め上方から見た斜視図であり、
図5は、図1のプラスチックキャップの要部を拡大して示す平面図であり、
図6は、図4に示されている注出突部(注出筒)のクチバシ部の拡大側断面図(B−B断面図)であり、
図7は、図1のプラスチックキャップの要部であるクチバシ部の他の例を拡大して示す平面図であり、
図8は、弧状形状の注出突部を備えた本発明のプラスチックキャップの例を、上蓋が開放された状態で示す側断面図である。
【0016】
図1乃至図4を参照して、このキャップは、キャップ本体1と、キャップ本体1にヒンジ連結された上蓋2とからなっており、それ自体公知の合成樹脂、例えば、低−、中−または高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂や、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ABS樹脂、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド等を用いての射出成形等により、上蓋2が開栓された状態(図2参照)で成形される。
【0017】
キャップ本体1は、頂板部5と、頂板部5の周縁部から垂下しているスカート部6とを有しており、上蓋2は、スカート部6の上端部分にヒンジ連結されている。具体的には、上蓋2は、周方向に間隔を置いて設けられている一対のヒンジ連結バンド7a,7aにより、スカート部6の上端より若干下方に連結され、さらに、該ヒンジ連結バンド7a,7aの間に設けられているヒンジ連結部7bにより、スカート部6の上端に連結されている。このようにしてスカート部6にヒンジ連結されている上蓋2を旋回することにより、キャップ本体1の頂板部5は、上蓋2によって閉じられる。
【0018】
キャップ本体1のスカート部6の内面には、係止突起8が形成されており、また、頂板部5の内面の周縁部分には、スカート部6とは間隔を置いて下方に延びているインナーリング9が形成されている。即ち、このインナーリング9とスカート部6との間の空間に容器口部(図示せず)が嵌め込まれ、且つ係止突起8と容器口部の外面との係合により、キャップ本体1は、容器口部にしっかりと固定されるものである。
【0019】
また、スカート部6には、その厚み部分に上端から下方に向かって延びているスリット10が形成されており、かかるスリット10によって、スカート部6は、内側壁6aと外側壁6bとに区画された2重壁構造となっており、図2及び図3に示されているように、内側壁6aと外側壁6bとは下端で連なっている。このようにスカート部6を2重壁構造とすることにより、キャップの分別廃棄に際して、キャップを容器口部から容易に取り除くことが可能となる。
【0020】
キャップ本体1の頂板部5の上面には、内容液を注ぎ出す際に注ぎ出される液の案内となる注出筒(即ち注出突部)11が形成されており、図2及び図3から理解されるように、注出筒5の内側部分において、頂板部5は、お椀状に凹んだ凹部となっている。また、図1に示されているように、この凹部内に、注出用開口を形成するための無端状スコア12が形成されており、頂板部5の外面には、無端状スコア12の内側となる領域に形成された支柱14を介してスコア破断用タブリング15が設けられている。即ち、このタブリング15を引っ張り上げることにより、スコア12が破断し、図4に示されているように、頂板部5に注出用開口が形成され、この注出用開口を介して容器内容液の注ぎ出しが行われるようになっている。
【0021】
従って、スコア12の破断によって形成された注出用開口から流れ出た内容液は、注出筒11によって案内され、その内面に沿って注ぎ出される。特に、図2及び図3から理解されるように、注出筒11は、上蓋2とヒンジ連結されている部分側が低くなっており、この背の低い部分の上方部分11aは、外方に向かって傾斜している。これは、上蓋2を閉じる際に、注出筒11が邪魔にならないようにするためである。
【0022】
また、注出筒11の内面の下端部分は、全周に渡ってフラットであり且つ略直立したシール面17となっており、上蓋2を閉じたとき、このシール面17に上蓋2の一部が密着し、スコア12を破断して注出用開口が形成された後の密封性が確保されるようになっている。
【0023】
上記注出筒11のヒンジ連結部側とは反対側部分には、上端部分の一部が外方に傾斜しており、図1の平面図及び図4の斜視図に示されているように、三角形状に外方に突出したクチバシ部20が形成されている。このクチバシ部20の先端(もっとも突出した上端中心部分20aは、ヒンジ連結部7bを通るキャップの中心線X上に位置しており、三角形の頂点となっている。かかるクチバシ部20の内面の下方部分(クチバシ部20が形成する三角形の底辺部分に相当)は、前記シール面17の上端部分に位置しており、クチバシ部20の内面は、この部分から上方に向かって傾斜した傾斜面20bとなっている。このように注出筒11の付け根部分よりも外方に大きく突出しているクチバシ部20は注ぎ口となり、この部分から内容液を注ぎ出すことにより、内容液の注ぎ出しをスムーズに行うことができる。
【0024】
また、図2及び図3に示されているように、上記のクチバシ部20においては、その上端が薄肉となっており、ラッパ状に外方に湾曲している。即ち、クチバシ形状に加えて、このようにラッパ状に湾曲させることにより、この部分での液の付着が抑制されて液切れ性が向上し、内容液の注ぎ出し終了時の液垂れを有効に防止することができる。
【0025】
さらに、頂板部5の外面には、上記注出筒11のさらに外側部分に、上蓋2との係合用の小突起21が形成されている。
【0026】
一方、上蓋2は、天板25と、天板25の周縁部から延びている筒状側壁27とから形成されており、天板25の内面には、シール用リング29が形成されている。即ち、上蓋2を閉じたとき、このシール用リング29の外面が注出筒11の内面下方のシール面17に密着し、この密着により、スコア12の破断により注出用開口を形成した後のシール性が確保される。尚、注出筒11のヒンジ連結部側部分11aの背が低くなって且つ外方に傾斜しているため、この上蓋2を閉じる際にシール用リング29はスムーズに注出筒11内に入り込み、シール面17と密着することとなる。
【0027】
また、図3に示されているように、上蓋2の天板25の中央部分はドーム状に膨出した膨出部25aとなっている。このような膨出部25aを形成することにより、シール用リング29の内面からシール用リング29で囲まれた天板25の内面を角部のない円弧状面にすることができ、スコア12の破断後に天板25の内面に付着した内容液を速やかに容器内に戻すことができる。
【0028】
さらに、天板25のヒンジ連結部とは反対側部分(注出筒11のクチバシ部20が位置する側)には鍔25bが形成されており、これにより、上蓋2の開閉操作を容易に行うことができるようになっている。
【0029】
上蓋2の筒状側壁27の下端面の先端部側(ヒンジ連結部7bとは反対側部分)には、小突起27aが適当な間隔で設けられている。即ち、内容液の注出を行ったとき、キャップ本体1の頂板部5の上面の周縁部分、特にヒンジ連結部7bとは反対側部分には、注ぎ出された液が付着する場合がある。このような場合、上蓋2を閉じた時に、筒状側壁27の下端面が全体にわたって頂板部5の上面の周縁部分に密着してしまうと、付着している液がはじき飛ばされてしまい、周囲を汚してしまうなどの不都合を生じることがある。しかるに、上記のような小突起27aを形成しておけば、付着した液のはじき飛ばしを有効に回避することができる。
尚、筒状側壁27の下端面のヒンジ連結部7b側には、上記のような小突起27aの形成により傾きを回避するための高さ調整用の弧状突起27bが形成されている。
【0030】
また、筒状側壁27の下方部分の内面には、凹部27cが周状に形成されている。即ち、上蓋2を閉じたとき、この凹部27cが頂板部5の外面に形成されている小突起21と係合し、これにより上蓋2の閉栓状態が保持されることとなる。
【0031】
本発明の要部を拡大して示す図5及び図6を図4の斜視図と共に参照して、注出筒11のクチバシ部20の内面には、溝30が形成されていることが重要である。この溝30は、前述したシール面17の上端部分からクチバシ部20の上端まで延びているものであり、このような溝30が形成されているため、本発明のキャップでは、注ぎ出される液がクチバシ部20で絞られ、例えば、容器を傾けて内容液を注ぎ出す際、容器の傾き度合いが多少変化した場合にも、クチバシ部20が注ぎ出される液の幅を一定に保持され、液の落下点の面積をほぼ一定に保持することができ、液の落下点の面積が増大して周囲を汚すなどの不都合を有効に回避することができ、注出する量の調整が容易となる。
【0032】
また、上記の溝30は、ほぼ垂直のシール面17の上端から外方に傾斜している傾斜面20b(クチバシ部20の内面)に形成されているため、容器を必要以上に大きく傾けずに内容液の注出を行うことができるという利点もある。
【0033】
本発明において、前記溝30が形成されるクチバシ部20の内面、即ち傾斜面20bは、図6の側断面図に示されているように、注出筒11の高さhの少なくとも半分以上にわたって形成されていることが好適である。即ち、傾斜面20bの領域が短いと、液の注ぎ出しに際して容器を大きく傾けることが必要となってしまうなどの不都合を生じてしまうからである。また、この傾斜面20b内に形成される溝30の長さも短くなってしまい、溝30による絞り効果も半減してしまう。
【0034】
また、上記の傾斜面20aの傾斜角θ(図6参照)は、液の注ぎ出し性やキャップ成形後の型抜き性を考慮して、10乃至55度程度の大きさとすることが好適である。
【0035】
また、図1及び図5を参照して、頂板部5に形成されているスコア12によって画定される開口予定部(開口に相当、図中Zで示す)は、クチバシ部20に対面する側の部分が小幅の注出液絞り領域Z1を有している形状であることが好ましく、溝30は、この注出液絞り領域Z1と同程度の幅wを有していることが好適である。即ち、このような注出液絞り領域Z1を形成させることにより、スコア12を引き裂いて形成される開口から溝30にかけて注出液の絞りが行われるため、絞り効果を一層高めることができる。
【0036】
また、図1及び図5に示されている例では、お椀型の凹部内にスコア12により開口予定部(或いは開口)Zが形成されており、注出筒11の付け根部分に向かって注出液絞り領域Z1が先細のテーパー形状で延びており、この部分が他の部分よりも凹んだ溝となっており、しかも、この注出液絞り領域Z1の延長線上にクチバシ部20の先端部分20a(溝30の中心)が位置している。従って、容器を傾けたとき、注出液絞り領域Z1からクチバシ部20の先端部分20aまで、一直線上に注出流路が形成されることとなり、容器内容液の注ぎ出し及び絞りを効果的に行うことができる。
【0037】
また、本発明の他の例を示す図7の部分拡大平面図を参照して、この溝30を多段に形成することが好ましい。即ち、図7において、最も大きな溝30a(以下、大容量注出案内用溝部と呼ぶ)の内部には、これよりも小幅の溝30b(以下、中容量注出案内用の溝部と呼ぶ)が形成され、中容量注出案内用の溝部30bの内部には、さらに小幅の溝部30c(以下、小容量注出案内用の溝部と呼ぶ)が形成され、これらの溝部30a〜30cは、何れも、シール面17の上端部分からクチバシ部20の上端まで延びている。このように溝30を多段構成とすることにより、一般の需要者は、注出液の液量を容易に調整することができる。具体的には、容器を大きく傾けたときには、大きな幅の大容量注出案内用溝部30aを通って液の注ぎ出しが行われ、容器の傾きの度合いを小さくすると、中位の幅の中容量注出案内用の溝部30bを通って液の注ぎ出しが行われ、容器の傾きの度合いをさらに小さくすると、最も小幅の小容量注出案内用の溝部30cを通って液の注ぎ出しが行われる。即ち、クチバシ部20から注ぎ出される液幅をみて、一般の需要者は、容器の傾き度合いを調整して注ぎ出される液量を正確に調整できるのである。
【0038】
尚、上述した本発明においては、クチバシ部20が外方に大きく突出するため、図示されていないが、上蓋2の内面に特開2004−352284号に開示されているような変形修正リブを設けておくことが好ましい。型抜きに際してクチバシ部が変形してしまうおそれがあるため、キャップ成形後に上蓋を閉めることにより、クチバシ部20の変形を変形修正リブによって修正するわけである。
【0039】
また、上述した具体例では、スコア12により開口予定部Zが形成されており、スコア12を引き裂くことにより注出用の開口が形成されるが、このようなスコア12を形成せず、初めから注出用の開口を形成しておくこと(即ち、図4の状態としておくこと)も勿論可能である。
【0040】
さらに、上蓋2はキャップ本体1にヒンジ連結されているが、本発明は、クチバシ部20の内面に所定の溝30を形成すればよいので、上蓋2がキャップ本体1にネジ締結されるキャップにも本発明を適用し得ることは、当業者であれば容易に理解できよう。
【0041】
また、上述した図1に示されているプラスチックキャップでは、注出突部として筒状形状を有するもの、即ち、注出筒11が形成されているが、本発明において、注出突部は、このような注出筒11に限定されるものではなく、弧状形状を有するものであってよい。図8には、このような弧状形状を有している注出突部が形成されているプラスチックキャップの側断面図が示されている。
【0042】
図8のキャップは、基本的な構造は、図1〜図4に示されているキャップと同じであり、従って、図8では、図1〜図4と同じ引用数字が用いられている。
【0043】
図8の態様のキャップでは、注出筒11の代わりに、弧状形状を有している注出突部110が形成されている。即ち、この注出突部110は、注出筒11のヒンジ連結部7側の背の低い部分が切欠かれて弧状形状に形成されたものである。即ち、ヒンジ連結部7とは反対側の部分から内容液の注ぎ出しが行なわれるため、この部分には案内壁は必要ではなく、従って、この部分を切り欠いておくことにより、上蓋2を閉じる際に、注出突部110が邪魔にならないようにしたものである。
【0044】
このような注出突部110の周方向中心部分に、注出筒11と同様にクチバシ部20が形成され、クチバシ部20の内面(傾斜面)20b内には、前述した溝30が形成されている。即ち、クチバシ部20は、ヒンジ連結部7b側とは反対側の部分に位置しており、クチバシ部20の先端20aは、ヒンジ連結部7bの中心を通る中心線上に位置している。
【0045】
図8から理解されるように、注出突部110の内側部分において、頂板部5は、ヒンジ連結部7b側が低くなるように傾斜している。また、注出突部110の内面の下端部分は、全域に渡ってフラットであり且つ略直立したシール面17となっており、ヒンジ連結部7b側の切り欠き部(即ち、注出突部110が切欠かれて存在していない領域)において、頂板部5には、無端状スコア12に向かって下方に落とし込まれた面が形成されている。この面の下方部分は、無端状スコア12まで延びているテーパー面となっており、このテーパー面に続く上方部分が略直立したシール面17aとなっており、シール面17aは、注出突部110の下部のシール面17に連続している。即ち、上蓋2を閉じたとき、注出突部110と頂板部5に形成されたシール面17,17aに上蓋2のシールリング29が密着し、スコア12が破断されて注出用開口が形成された後の密封性が確保されるようになっている。従って、図8に示されているように、上蓋2に形成されているシールリング29は、シール面17aに密着する部分が長く形成されている。
【0046】
尚、このキャップの上蓋2の筒状側壁27の内面には、ヒンジ連結部7とは反対側の部分(鍔25bが形成されている部分の内側)には、肉抜きにより縦溝40が形成されている。このような縦溝40を形成しておくことにより、上蓋2を閉じたときに、注出突部110のクチバシ部20が上蓋2の筒状側壁27の内面に接触せず、スムーズに上蓋2を閉じることができる。
尚、上記のキャップにおいても、頂板部5の注出突部110で囲まれる領域の形状を図3に示すような構造とすることもできる。
【0047】
本発明においては、上記のような注出突部110が形成されているキャップにおいても、そのクチバシ部20の内面に、前述した溝30を形成することにより、容器内容液の注ぎ出し及び絞りを効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】筒状形状の注出突部を備えた本発明のプラスチックキャップの例を、上蓋が開放された状態で示す平面図。
【図2】図1のプラスチックキャップの側断面図(A−A断面図)。
【図3】図1のプラスチックキャップを、上蓋を閉じた状態で示す側断面図。
【図4】図1のプラスチックキャップにおいて、スコアを引き裂いて頂板部に開口が形成された状態のキャップ本体を斜め上方から見た斜視図。
【図5】図1のプラスチックキャップの要部を拡大して示す平面図。
【図6】図4に示されている注出突部(注出筒)のクチバシ部の拡大側断面図(B−B断面図)。
【図7】図1のプラスチックキャップの要部であるクチバシ部の他の例を拡大して示す平面図。
【図8】弧状形状の注出突部を備えた本発明のプラスチックキャップの例を、上蓋が開放された状態で示す側断面図。
【符号の説明】
【0049】
1:キャップ本体
2:上蓋
11:注出筒
17:シール面
20:クチバシ部
29:シール用リング
30:溝
30a:大容量注出案内用の溝部
30b:中容量注出案内用の溝部
30c:小容量注出案内用の溝部
110:弧状の注出突部
Z:開口予定部
Z1:注出液絞り領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部に固定されるキャップ本体と、該キャップ本体に開閉可能に装着される上蓋とからなり、キャップ本体は、頂板部と頂板部の周縁部から降下したスカート部とを備えていると共に、該頂板部には、容器内容液を注ぎ出すための開口或いは開口予定部が形成されており、該頂板部の上面には、該開口或いは開口予定部の外側部分に、容器内容液の注ぎ出し用案内となる注出突部が形成されている注出筒付プラスチックキャップにおいて、
前記注出突部の上端部分には、外方に傾斜して突出しており、且つ上面から見て、中心部に頂点を有している三角形状のクチバシ部が形成されており、
前記注出突部の内面の下端部分は、垂直方向に延びているシール面となっており、
前記注出突部の前記クチバシ部の内面には、前記シール面の上端部分からクチバシ部上端まで延びている溝が形成されており、
前記上蓋の内面には、該上蓋を閉じたときに、前記シール面と密着するシール用リングが形成されていることを特徴とするプラスチックキャップ。
【請求項2】
前記注出突部が筒状形状または弧状形状を有している請求項1に記載のプラスチックキャップ。
【請求項3】
前記注出突部の前記クチバシ部の内面は、前記シール面の上端から上方に向かって外方に傾斜した傾斜面となっており、該クチバシ部の周方向中心での側断面でみて、該傾斜面は、該注出突部の少なくとも半分以上の高さにわたって形成されている請求項2に記載のプラスチックキャップ。
【請求項4】
前記開口或いは開口予定部は、前記クチバシ部に対面する側の部分が小幅の注出液絞り領域を有している形状に形成されている請求項2に記載のプラスチックキャップ。
【請求項5】
前記クチバシ部の内面に形成されている前記溝は、前記開口或いは開口予定部の注出液絞り領域と同程度の幅を有している請求項4に記載のプラスチックキャップ。
【請求項6】
前記クチバシ部の内面に形成されている前記溝は、上方からみて、前記シール面の上端部分からクチバシ部上端まで延びている大容量注出案内用溝部と、該大容量注出案内用領域溝部の内部に位置し、大容量注出案内用溝部よりも小幅で且つ前記シール面の上端部分からクチバシ部上端まで延びている小容量もしくは中容量注出案内用の溝部が少なくとも1個形成されている請求項4に記載のプラスチックキャップ。
【請求項7】
前記溝の大容量注出案内用溝部の内側には、該大容量注出案内用溝部よりも小幅で且つ前記シール面の上端部分からクチバシ部上端まで延びている中容量注出案内用の溝部と、該中容量注出案内用溝部よりもさらに小幅で且つ前記シール面の上端部分からクチバシ部上端まで延びている小容量注出案内用の溝部とが形成されている請求項6に記載のプラスチックキャップ。
【請求項8】
前記頂板部の注出筒よりも内側の部分には、中心部が最も凹んだ凹部が形成されており、該凹部に前記開口或いは開口予定部が形成されており、該開口或いは開口予定部の注出液絞り領域からは、前記注出筒の付け根部分に向かって先細のテーパー形状の注出流路が形成されおり、この注出流路の延長線上に前記溝の中心部分が位置している請求項4乃至6の何れかに記載のプラスチックキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−62091(P2009−62091A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204994(P2008−204994)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】