説明

プラスチックフィルムの含水率調整方法、カラーフィルターの製造方法、およびプラスチックフィルムの含水率調整装置

【課題】プラスチックフィルムの含水率を短時間で均一にすることができるプラスチックフィルムの含水率調整方法を提供する。
【解決手段】まず、帯状のプラスチックフィルム1が、支持部材2を介して巻き取られ、この支持部材2によって空隙層3が介在されるように、プラスチックフィルム1の巻取体4を形成する。次に、空隙層3に所定の温湿度の気体が供給するプラスチックフィルムの含水率調整方法。空隙層に供給する気体は、巻取体の一方の端面から空隙層に送り込まれることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状のプラスチックフィルムの含水率を調整するプラスチックフィルムの含水率調整方法、この方法を含むカラーフィルターの製造方法、およびプラスチックフィルムの含水率調整装置に係り、とりわけ、プラスチックフィルムの含水率を短時間で均一にすることができるプラスチックフィルムの含水率調整方法、カラーフィルターの製造方法、およびプラスチックフィルムの含水率調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラーフィルターやTFTアレイを構成するディスプレイ部材において、金属または樹脂からなり所定の機能性を有するパターンを形成するための基材として、フレキシブル性を有するロール状のプラスチックフィルムを用いることが研究されている。このように、基材をプラスチック製とすることにより、カラーフィルターやTFTアレイを薄型化、低コスト化するとともに、基材が割れることを防止することができる。
【0003】
しかしながら、ディスプレイ部材の基材としてプラスチックフィルムを用いる場合、プラスチックフィルム上に所定の精度でブラックマトリクス、着色層、柱状構造部、TFTアレイを形成することが困難であるという問題があった。すなわち、プラスチックフィルム上に所定のパターンを形成するプロセスにおいて、フォトリソグラフィまたはインクジェット法等の微細加工手段が用いられるが、そのプロセスにおいては、プラスチックフィルムに加わる熱や、プラスチックフィルムが含有する水分量等によって、プラスチックフィルムの寸法が変化し、パターンの精度が損なわれる。
【0004】
このことに対処するために、例えば、特許文献1および2に示すような方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−66423号公報
【特許文献2】特開2003−177551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ロール状のプラスチックフィルムは、通常、フィルムの位置(巻外、巻内、幅方向)によって、含水率が異なる。ここで含水率とは、雰囲気の温湿度におけるプラスチックフィルムの飽和吸水量に対して、プラスチックフィルム内に吸収されている水分量の割合(重量比)をいう。プラスチックフィルムは、その含水率が外気との平衡状態の含水率より低い場合には、外気中の水分を吸収するが、平衡状態の含水率より高い場合には、プラスチックフィルム内の水分を放出する。プラスチックフィルムをロール状に巻いた場合、巻外側の部分は、巻内側の部分に比べて水分の移動が速いが、巻内側の部分は、水分の移動が極めて遅いため、巻外側の部分と巻内側の部分とで、平衡状態に達するまでの時間が異なる。その結果、プラスチックフィルムは、巻外側の部分と巻内側の部分とにおいて含水率が異なる。プラスチックフィルムの幅方向についても同様であり、プラスチックフィルムの幅方向の中心部分は、幅方向の端部に比べて水分の移動が遅くなり、中心部分と端部とにおいて含水率が異なる。このようなことから、プラスチックフィルムの含水率を均一にするためには、数週間から長くて数ヶ月の期間が必要となる。
【0007】
また、フィルム製造メーカにおいて製造された直後のプラスチックフィルムは、その製造方法の特性から、乾燥状態であることが多い。このため、ロール状のプラスチックフィルムの巻内側の部分は、極度に含水率が低下した状態になっており、巻外側の部分は、外気にふれて含水率が上昇した状態になっている。ここで、製造直後に外気と遮断して乾燥状態を維持した場合であっても、ディスプレイ部材を製造する工程において、各プロセスで外気と触れるため、プラスチックフィルムの含水率を均一に維持して加工することは困難である。
【0008】
また、ディスプレイ部材の製造工程では、加熱工程や、水と接触する工程などがあり、プラスチックフィルムの含水率が変動する場合もある。このように、ロール状のプラスチックフィルムを用いたディスプレイ部材の製造工程においては、その含水率が不均一となる要因が多く存在する。一方で、プロセス毎に、数週間から数ヶ月に亘って含水率を調整するために保管(養生)することが必要となれば、ディスプレイ部材を製造するために多くの時間が費やされる。
【0009】
次に、ディスプレイ部材におけるプラスチックフィルムの含水率とプラスチックフィルムに形成される複数のパターンの各々の寸法変化について説明する。ディスプレイ部材は、数ミクロから数百ミクロンの微細なパターンが長寸法にわたって正確な位置に配列されている必要がある。ここでいう長寸法とは、例えば、ディスプレイの表示サイズの大きさであり、画面の端から端まで規則正しく画素が配列され、その端から端までの長さも決められた寸法である必要がある。したがって、パターンが形成されたプラスチックフィルムの含水率が変化してプラスチックフィルムが伸縮すると、パターンの寸法が設計寸法からずれることになり、ディスプレイ部材として製品化することができない。
【0010】
ディスプレイ部材を製造するにあたり、所定の機能性を有するパターンを形成する方法はいくつかあるが、一般的な、いわゆる印刷では版、フォトリソグラフィではフォトマスク、直描のインクジェット印刷では、その設計プログラムによる描画動作が、パターンの位置および寸法を決定する。これらは、パターンが形成された際のそのパターンの寸法が、最も設計寸法に近くなっている。
【0011】
ここで、含水率が各部分において異なるプラスチックフィルムにパターンを形成し、その後に、外気環境下で含水率が平衡状態になった場合、プラスチックフィルムの伸縮挙動がその各部で均一でないことから、形成されたパターンの寸法が異なるという問題がある。このため、パターンを形成する際には、ロール状のプラスチックフィルムの全体に亘って、含水率が均一であり、さらには、所定の外気の状態に対して、含水率が平衡状態になっていることが必要である。
【0012】
ところで、特許文献1においては、プラスチックフィルムの含水率および寸法を、所定の温湿度における平衡含水率の±10%以内にするために、プラスチックフィルムを高温高湿環境下で保管する方法が提案されている。しかしながら、この場合、上述したように、ロール状のプラスチックフィルムの巻内側の部分と巻外側の部分とにおいて、所定の含水率に達するまでの時間が異なる。このため、プラスチックフィルムの含水率を均一にするためには、多くの時間が費やされる。
【0013】
また、特許文献2においては、プラスチックフィルムを加熱脱水処理した後、露光するまでの時間を管理することにより、所定の寸法を精度良く再現している。しかしながら、この場合、精密な時間管理が必要であり、また、ロール状のプラスチックフィルムの巻内側の部分と巻外側の部分とにおいて、所定の含水率に達するまでの時間が異なるという問題があった。
【0014】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、プラスチックフィルムの含水率を短時間で均一にすることができるプラスチックフィルムの含水率調整方法、この方法を含むカラーフィルターの製造方法、およびプラスチックフィルムの含水率調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、帯状のプラスチックフィルムを、支持部材を介して巻き取り、当該支持部材によって空隙層が介在されるように、プラスチックフィルムの巻取体を形成する工程と、空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程と、を備えたことを特徴とするプラスチックフィルムの含水率調整方法を提供する。
【0016】
なお、上述したプラスチックフィルムの含水率調整方法において、空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程において、当該気体は、プラスチックフィルムの巻取体の一方の端面から空隙層に送り込まれるようにしてもよい。
【0017】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整方法において、空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程において、当該気体は、プラスチックフィルムの巻取体の両方の端面から、交互に、空隙層に送り込まれるようにしてもよい。
【0018】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整方法において、所定の温湿度の気体は、異物を除去する異物除去フィルターを通って空隙層に送り込まれるようにしてもよい。
【0019】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整方法において、所定の温湿度の気体は、その温湿度が調整されて空隙層に送り込まれるようにしてもよい。
【0020】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整方法において、空隙層に送り込まれる気体の温湿度は、この後にプラスチックフィルムに形成される金属または樹脂からなるパターンを形成する際の外気の温湿度と同一となるように調整されるようにしてもよい。
【0021】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整方法において、空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程において、プラスチックフィルムの巻取体はチャンバに収容され、チャンバ内から気体が吸引されてその温湿度が調整され、調整された気体が空隙層に送り込まれるようにしてもよい。
【0022】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整方法において、空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程において、空隙層内の気体は、プラスチックフィルムの巻取体の一方の端面から吸引されて、他方の端面から空隙層に所定の温湿度の気体が吸い込まれるようにしてもよい。
【0023】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整方法において、空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程において、空隙層内の気体は、プラスチックフィルムの巻取体の両方の端面から、交互に吸引されて、吸引時に、吸引される側の端面とは反対側の端面から、空隙層に所定の温湿度の気体が吸い込まれるようにしてもよい。
【0024】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整方法において、空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程は、空隙層内の気体を、プラスチックフィルムの巻取体の一方の端面から吸引して、他方の端面から空隙層に所定の温湿度の気体を吸い込む工程と、所定の温湿度の気体を、プラスチックフィルムの巻取体の当該一方の端面から空隙層に送り込む工程とを有するようにしてもよい。
【0025】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整方法において、プラスチックフィルムの巻取体を形成する工程の後、空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程の前に、プラスチックフィルムの巻取体が吸水処理されるようにしてもよい。
【0026】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整方法において、プラスチックフィルムの巻取体を形成する工程の後、空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程の前に、プラスチックフィルムの巻取体が乾燥処理されるようにしてもよい。
【0027】
本発明は、上述のプラスチックフィルムの含水率調整方法を実行することにより、プラスチックフィルムの含水率を調整する工程と、プラスチックフィルムに、カラーフィルター用の機能性を有するパターンを形成する工程と、を備え、カラーフィルターを得ることを特徴とするカラーフィルターの製造方法を提供する。
【0028】
本発明は、帯状のプラスチックフィルムが支持部材を介して巻き取られ、当該支持部材によって空隙層が介在されるように形成されたプラスチックフィルムの巻取体を保持する保持部材と、保持部材に保持されたプラスチックフィルムの巻取体の空隙層に所定の温湿度の気体を供給する気体供給ユニットと、を備えたことを特徴とするプラスチックフィルムの含水率調整装置を提供する。
【0029】
なお、上述したプラスチックフィルムの含水率調整装置において、気体供給ユニットは、プラスチックフィルムの巻取体の一方の端面から空隙層に所定の温湿度の気体を送り込む送風ユニットを有しているようにしてもよい。
【0030】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整装置において、送風ユニットに、空隙層に送り込む気体から異物を除去する異物除去フィルターが設けられているようにしてもよい。
【0031】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整装置において、送風ユニットに、空隙層に送り込む気体の温湿度を調整する空調ユニットが設けられているようにしてもよい。
【0032】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整装置において、プラスチックフィルムの巻取体を収容するチャンバを更に備え、気体供給ユニットは、チャンバ内の気体を吸引して空調ユニットに送る吸引ユニットを更に有しているようにしてもよい。
【0033】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整装置において、保持部材、気体供給ユニット、および空調ユニットは、チャンバに収容されるようにしてもよい。
【0034】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整装置において、気体供給ユニットは、プラスチックフィルムの巻取体の一方の端面から空隙層内の気体を吸引して、他方の端面から空隙層内に所定の温湿度の気体を吸い込ませる吸引ユニットを有しているようにしてもよい。
【0035】
また、上述したプラスチックフィルムの含水率調整装置において、気体供給ユニットは、プラスチックフィルムの巻取体の一方の端面から空隙層に所定の温湿度の気体を送り込む送風機能と、当該一方の端面から空隙層内の気体を吸引して、他方の端面から空隙層内に所定の温湿度の気体を吸い込ませる吸引機能とを有しているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、プラスチックフィルムが支持部材によって形成される空隙層を介在させて巻き取られてプラスチックフィルムの巻取体が形成され、その空隙層に、所定の温湿度の気体が供給される。このことにより、プラスチックフィルムの全体が、所定の温湿度の気体に接することができる。このため、プラスチックフィルムの含水率を短時間で均一にすることができる。
【0037】
また、本発明によれば、含水率が均一になったプラスチックフィルムに、金属または樹脂からなり、カラーフィルター用の機能性を有するパターンを形成することができる。このため、パターンの寸法精度を向上させて、カラーフィルターの表示画像の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態におけるプラスチックフィルムの含水率調整装置を示す斜視図。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態におけるプラスチックフィルムの含水率調整装置にプラスチックフィルムの巻取体を保持した状態を示す断面図。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態におけるプラスチックフィルムの巻取体を示す斜視図。
【図4】図4(a)は、本発明の第1の実施の形態において、支持部材の配置の一例を示す平面図。図4(b)は、図4(a)の側面図。図4(c)は、支持部材の配置の他の例を示す平面図。図4(d)は、図4(c)の側面図。図4(e)は、支持部材の配置の更なる他の例を示す平面図。図4(f)は、図4(e)の側面図。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態におけるプラスチックフィルムの含水率調整方法のフローチャートを示す図。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態におけるプラスチックフィルムの含水率調整方法において、気体の流れを示す図。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態におけるプラスチックフィルムの含水率調整装置を示す斜視図。
【図8】図8は、本発明の第3の実施の形態におけるプラスチックフィルムの含水率調整装置を示す斜視図。
【図9】図9は、本発明の第4の実施の形態におけるプラスチックフィルムの含水率調整装置を示す斜視図。
【図10】図10は、本発明の第4の実施の形態におけるプラスチックフィルムの含水率調整装置の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1乃至図6は、本発明の第1の実施の形態におけるプラスチックフィルムの含水率調整方法、この方法を含むカラーフィルターの製造方法、およびプラスチックフィルムの含水率調整装置を示す図である。
【0040】
まず、図1および図2により、本実施の形態におけるプラスチックフィルム1の含水率調整装置10について説明する。ここで、プラスチックフィルム1の含水率調整装置10は、例えば、カラーフィルター(図示せず)などでディスプレイ部材(図示せず)の基材として使用されるプラスチックフィルム1の含水率を調整する(養生する)ためのものである。
【0041】
図1および図2に示すように、プラスチックフィルム1の含水率調整装置10は、帯状のプラスチックフィルム1が支持部材2を介して巻き取られ、当該支持部材2によって空隙層3が介在されるように形成されたプラスチックフィルム1の巻取体4を保持する保持部材11と、保持部材11に保持されたプラスチックフィルム1の巻取体4の空隙層3に所定の温湿度の気体を供給する気体供給ユニット20とを備えている。
【0042】
ここで、プラスチックフィルム1は、図2および図3に示すように、円筒状のコア5に巻き取られており、このコア5の中空部5aに、閉塞部材12が取り付けられて、コア5の中空部5aが閉塞されるようになっている。なお、本実施の形態においては、閉塞部材12は、円柱状の部材からなっており、コア5の中空部5aに嵌入して、コア5に取り付けられるようになっているが、このことに限られることはなく、後述する送風ユニット21から送られる気体が、コア5の中空部5aに流れることを防止可能であれば、任意の構造とすることができる。
【0043】
プラスチックフィルム1の巻取体4には、支持部材2によってプラスチックフィルム1間に空隙層3が形成されている。ここで、図4を用いて、支持部材2の配置例について説明する。図4(a)、(b)に示す配置例においては、支持部材2は、コア5の軸線方向(プラスチックフィルム1の長手方向に直交する方向)に延びるように配置されている。この場合、各支持部材2は周方向に互いにずらして配置されることが好ましい。このことにより、プラスチックフィルム1の全体に、均一に、所定の温湿度の気体が接することができる。また、図4(c)、(d)に示す配置例においては、支持部材2は、コア5の軸線方向に直交する方向(プラスチックフィルム1の長手方向)に延びるように、プラスチックフィルム1の長手方向に沿う両縁部に配置されている。この場合、空隙層3に所定の温湿度の気体を供給するように、支持部材2は、後述するような多孔質シートからなっていることが好ましい。さらに、図4(e)、(f)では、図4(c)、(d)に示す配置例と同様に配置された支持部材2のプラスチックフィルム1との接触面に、凹凸が形成されている。この場合、支持部材2の凹部2aを介して、空隙層3に所定の温湿度の気体を供給することができるようになっている。
【0044】
また、支持部材2は、プラスチックフィルム1のうち、プラスチックフィルム1に既に形成された金属または樹脂からなるパターン(またはプラスチックフィルム1の含水率調整が終了した後の工程で形成されるパターン)以外の領域に配置されることが好ましい。このことにより、パターンが損傷することを防止することができる。なお、プラスチックフィルム1に形成されるパターンは、金属または樹脂からなり、カラーフィルター用の所望の機能性を有するものであり、プラスチックフィルム1の用途等に応じて、適宜選択されるものである。このようなパターンの具体例としては、例えば、カラーフィルター用のブラックマトリックス、および複数色(赤色、緑色、青色)の画素、TFTアレイの金属パターン、あるいは、回路基板における導電/絶縁パターン等を挙げることができる。
【0045】
保持部材11は、図2に示すように、プラスチックフィルム1の巻取体4の外周面に嵌合して、当該巻取体4を保持するようになっている。このように、巻取体4の外周面に保持部材11を嵌合させると共に、コア5の中空部5aに、閉塞部材12を嵌入させることにより、後述の送風ユニット21から送られる気体が、外方またはコア5の中空部5aに漏れることを防止し、空隙層3に確実に送り込まれるようになっている。
【0046】
本実施の形態における気体供給ユニット20は、プラスチックフィルム1の巻取体4の一方の端面(第1端面4a)から空隙層3に所定の温湿度の気体を送り込む(供給する)送風ユニット21からなっている。すなわち、送風ユニット21は、送風口22を有し、この送風口22から空隙層3に上記気体を送り込み、送り込まれた気体は、空隙層3を通って、巻取体4の他方の端面(第2端面4b)から排出されるようになっている。なお、本実施の形態においては、空隙層3に送り込まれる気体としては、所定の温湿度(例えば、25度、40%RH)を有する外気からなっている。
【0047】
次に、プラスチックフィルム1の材料について説明する。本実施の形態において適用可能なプラスチックフィルム1は、ロール状に巻き取り可能な程度に可撓性を有していればよい。例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、セルローストリアセテート(CTA)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ノルボルネン系樹脂、アリルエステル樹脂等の合成樹脂を挙げることができ、とりわけ、PEN、PETが好ましい。
【0048】
また、プラスチックフィルム1の厚さとしては、1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜500μmの範囲内であることがより好ましく、50μm〜250μmの範囲内であることがさらに好ましい。プラスチックフィルム1の厚さが上記範囲よりも厚すぎると、フレキシブル性が損なわれ、折れやすくなり、ロール状のプラスチックフィルム1の巻取体4を形成することが困難になるからである。一方、上記範囲よりも薄すぎると、こしが無くなり、各工程における取り扱いが困難になるからである。
【0049】
プラスチックフィルム1の幅としては、特に限定されるものではないが、例えば、100mm〜1000mmの範囲内であることが好ましく、150mm〜600mmの範囲内であることがより好ましい。
【0050】
なお、プラスチックフィルム1は、単一層からなる構成であっても良く、あるいは、複数の層が積層された構成を有するものであっても良い。
【0051】
次に、支持部材2について説明する。本実施の形態に用いられる支持部材2は、コア5に巻き取られたプラスチックフィルム1の間に空隙層3を形成するための部材である。このような支持部材2としては、可撓性を有し、通気性および透湿性が高く、かつ、離型性が高いものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、入手性、通気性および透湿性を考慮し、多孔質シートなどの透湿フィルムを好適に用いることができる。多孔質シートとしては、具体的には、ポリエチレン多孔質シート(日東電工製サンマップ)、ミクロボイド二軸延伸ポリプロピレン(ユポ・コーポレーション製ユポ)、不織布等を挙げることができる。
【0052】
支持部材2に、多孔質シートを用いる場合には、多孔質シートの表面粗さ(Ra)は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。Raが上記範囲より小さいと、支持部材2が有する空隙が少なくなり、通気性および透湿性が低下するからである。なお、多孔質シートのRaは、通常、10μm以下である。また、ここでの「表面粗さ(Ra)」は、「算術平均表面粗さ」であり、JIS−B0601に準拠して測定される。
【0053】
支持部材の他の例としては、凹凸が形成されたエンボスフィルムなどを用いることができる。このようなエンボスフィルムは、例えば、プラスチックフィルム1との接触面積が0.01mm〜100mm程度となるような比較的大きな凹凸を有し、凹凸の間隔が、例えば、0.1mm〜10mm程度と比較的大きな間隔となっているため、空隙層3に通気性を付与するためには好適である。また、エンボスフィルムは、例えば、汎用的に用いられるキャリアテープなどでも良いが、型押し加工などにより任意の凹凸形状が形成された部材を用いても良い。
【0054】
支持部材2の厚さとしては、20〜2000μmの範囲内であることが好ましく、50〜1000μmの範囲内であることがより好ましく、100〜700μmの範囲内であることがさらに好ましい。支持部材2の厚さが上記範囲よりも薄すぎると、プラスチックフィルム1を巻き取ったときに空隙層3がつぶれやすくなり、上記範囲よりも厚すぎると、プラスチックフィルム1を巻き取ることが困難になるからである。
【0055】
また、支持部材2の幅としては、プラスチックフィルム1を巻き取ったときの巻内および巻外の含水率が均一となるように支持部材2をプラスチックフィルム1上に部分的に配置することが可能な幅であれば特に限定されるものではなく、プラスチックフィルム1の幅、パターンが形成される領域の大きさなどにより適宜選択されるものである。
【0056】
なお、支持部材2が介在されることにより、プラスチックフィルム1の表面全体が、空隙層3に接する状態にすることは困難であるが、支持部材2とプラスチックフィルム1との接触面積を十分に小さくすることにより、プラスチックフィルム1の含水率を均一にすることが可能になる。
【0057】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち本実施の形態によるプラスチックフィルム1の含水率調整方法およびこの方法を含むカラーフィルターの製造方法について、図5および図6を用いて説明する。
【0058】
まず、図5に示すように、帯状のプラスチックフィルム1、支持部材2、およびコア5を準備する(ステップS1)。
【0059】
続いて、帯状のプラスチックフィルム1が、支持部材2を介してコア5に巻き取られ、当該支持部材2によって空隙層3が介在されるように、プラスチックフィルム1の巻取体4が形成される(ステップS2)。この場合、支持部材2は、プラスチックフィルム1のうち、プラスチックフィルム1に既に形成された金属または樹脂からなるパターン以外の領域(またはこの後形成されるパターン以外の領域)に配置されることが好ましい。なお、プラスチックフィルム1を巻き取る方法としては、支持部材2の空隙をつぶすことなく、低テンションで巻き取ることができる方法であれば、特に限定されることはなく、空隙層3を形成可能なように、一般的な巻取機(図示せず)を用いることができる。また、プラスチックフィルム1の巻回数は、用途等に応じて、適宜選択されることが好ましい。
【0060】
次に、プラスチックフィルム1の巻取体4が形成されたコア5に、閉塞部材12が取り付けられる(ステップS3)。本実施の形態においては、円柱状の閉塞部材12が、コア5の中空部5aに嵌入される。
【0061】
次に、プラスチックフィルム1の巻取体4が、保持部材11に保持される(ステップS4)。ここでは、巻取体4の外周面に、保持部材11の内周面が嵌合されて、巻取体4が保持される。
【0062】
巻取体4を保持した後、空隙層3に、所定の温湿度の気体が、所定時間、供給される(ステップS5)。本実施の形態においては、送風ユニット21により、所定の温湿度の気体(外気)が取り込まれて、送風口22から、保持部材11の内部を通って、プラスチックフィルム1の巻取体4の第1端面4aから空隙層3に、所定時間、連続的に、送り込まれる。この間、図6に示すように、気体は、プラスチックフィルム1の巻取体4の第1端面4aから空隙層3を通って、第2端面4bから排出され、空隙層3において、気体とプラスチックフィルム1との間で水分の移動が行われるが、この水分の移動により湿度が増減した気体は、プラスチックフィルム1の巻取体4の第2端面4bから排出され、新たに気体が送り込まれる。このことにより、プラスチックフィルム1は、連続して所定の温湿度を有する気体に接することができる。
【0063】
その後、送風ユニット21を停止し、プラスチックフィルム1の巻取体4が、保持部材11から取り外される(ステップS6)。
【0064】
取り外されたプラスチックフィルム1の巻取体4は、図示しないカラーフィルターの製造装置にセットされて、プラスチックフィルム1が繰り出され、プラスチックフィルム1に、金属または樹脂からなり、カラーフィルター用の機能性を有するパターン(例えば、カラーフィルター用のブラックマトリックスおよび複数色の画素)が形成される。具体的なパターン形成方法としては、所望のパターンが精度良く形成することができれば、特に限定されることはなく、例えば、フォトリソグラフィ法、インクジェット法等、一般的に知られた方法を用いることができる。
【0065】
このように本実施の形態によれば、プラスチックフィルム1が支持部材2によって形成される空隙層3を介在させて巻き取られてプラスチックフィルム1の巻取体4が形成され、その空隙層3に、気体が連続的に送り込まれる。このことにより、プラスチックフィルム1の全体が、所定の温湿度の気体に接することができる。このため、プラスチックフィルム1の含水率を短時間で均一にすることができる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、含水率が均一になったプラスチックフィルム1に、金属または樹脂からなり、カラーフィルター用の機能性を有するパターンを形成することができる。このため、パターンの寸法精度を向上させることができ、カラーフィルターの表示画像の精度を向上させることができる。
【0067】
なお、本実施の形態においては、プラスチックフィルム1の巻取体4の第1端面4aから空隙層3に気体が送り込まれる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、気体が、プラスチックフィルム1の巻取体4の両方の端面4a、4bから、交互に、空隙層3に送り込まれるようにしても良い。この場合、例えば、巻取体4の第1端面4aから空隙層3に気体を、所定時間、送り込んだ後、巻取体4の第2端面4bが送風ユニット21側に配置されるように巻取体4の向きを入れ替えて、当該第2端面4bから空隙層3に、所定時間、気体を送り込むようにしても良い。このことにより、プラスチックフィルム1の全体に亘って、含水率をより一層均一にすることができる。
【0068】
また、本実施の形態においては、気体供給ユニット20が、空隙層3に気体を送り込む送風ユニット21からなる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、気体供給ユニット20が、プラスチックフィルム1の巻取体4の第1端面4aから空隙層3内の気体を吸引して、第2端面4bから空隙層内に気体を吸い込ませる吸引ユニット(図示せず)からなっていても良い。この場合、吸引ユニットによりプラスチックフィルム1の巻取体4の第1端面4aから空隙層3内の気体が吸引されている間、第2端面4bから、所定の温湿度の気体(外気)が、空隙層3内に吸い込まれる(供給される)。このことにより、プラスチックフィルム1の全体が、所定の温湿度の気体に接することができ、プラスチックフィルム1の含水率を短時間で均一にすることができる。さらに、空隙層3内の気体が、プラスチックフィルム1の巻取体4の両方の端面から、交互に、吸引されて、吸引時に、巻取体4の吸引される側の端面とは反対側の端面から所定の温湿度の気体(外気)が吸い込まれるようにしても良い。この場合、例えば、巻取体4の第1端面4aから空隙層3内の気体を、所定時間、吸引した後、巻取体4の第2端面4bが吸引ユニット側に配置されるように巻取体4の向きを入れ替えて、当該第2端面4bから空隙層3内の気体を、所定時間、吸引するようにしても良い。このことにより、プラスチックフィルム1の全体に亘って、含水率をより一層均一にすることができる。
【0069】
また、本実施の形態においては、気体供給ユニット20が、空隙層3に気体を送り込む送風ユニット21からなる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、気体供給ユニット20が、プラスチックフィルム1の巻取体4の第1端面4aから空隙層3に気体を送り込む送風ユニットとしての送風機能と、巻取体4の第1端面4aから空隙層3内の気体を吸引して、第2端面4bから気体を吸い込ませる吸引ユニットとしての吸引機能を有するようにしても良い。この場合、まず、空隙層3内の気体が、プラスチックフィルム1の巻取体4の第1端面4aから、所定時間、吸引されて、第2端面4bから空隙層3に所定の温湿度の気体(外気)が吸い込まれ、その後、プラスチックフィルム1の巻取体4の当該第1端面4aから空隙層3に所定の温湿度の気体(外気)が送り込まれる。このことにより、プラスチックフィルム1の全体に亘って、含水率をより一層均一にすることができる。
【0070】
また、本実施の形態において、プラスチックフィルム1の含水率が極度に低い場合には、ステップS2の後、ステップS3の前に、プラスチックフィルム1の巻取体4が吸水処理されるようにしても良い。このことにより、プラスチックフィルム1の含水率を、所定の温湿度の気体との平衡状態における含水率に、短時間で上昇させることができる。なお、吸水処理としては、プラスチックフィルム1の巻取体4に水を噴射させる、若しくは水に浸漬させるようにしても良く、または、高温高湿の雰囲気に曝す方法等が挙げられる。
【0071】
さらに、本実施の形態において、プラスチックフィルム1の含水率が極度に高い場合には、ステップS2の後、ステップS3の前に、プラスチックフィルム1の巻取体4が乾燥処理されるようにしても良い。このことにより、プラスチックフィルム1の含水率を、所定の温湿度の気体との平衡状態における含水率に、短時間で下降させることができる。なお、乾燥処理としては、プラスチックフィルム1の巻取体4を加熱する方法等が挙げられる。
【0072】
第2の実施の形態
次に、図7により、本発明の第2の実施の形態におけるプラスチックフィルムの含水率調整方法、カラーフィルターの製造方法、およびプラスチックフィルムの含水率調整装置について説明する。
【0073】
図7に示す第2の実施の形態においては、送風ユニットに、空隙層に送り込む気体から異物を除去する異物除去フィルターが設けられている点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図7において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0074】
図7に示すように、送風ユニット21に、空隙層3に送り込む気体(外気)から塵埃等の異物を除去する異物除去フィルター30が設けられている。
【0075】
このように本実施の形態によれば、塵埃等の異物が除去された気体を空隙層3に送り込むことができる。このため、プラスチックフィルム1の表面に、塵埃等の異物が付着することを防止することができる。
【0076】
第3の実施の形態
次に、図8により、本発明の第3の実施の形態におけるプラスチックフィルムの含水率調整方法、カラーフィルターの製造方法、およびプラスチックフィルムの含水率調整装置について説明する。
【0077】
図8に示す第3の実施の形態においては、送風ユニットに、空隙層に送り込む気体の温湿度を調整する空調ユニットが設けられている点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図8において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0078】
図8に示すように、送風ユニット21に、空隙層3に送り込む気体の温湿度を調整する空調ユニット40が設けられている。この空調ユニット40は、外気を取り込み、取り込んだ外気の温湿度を、この後に、プラスチックフィルム1に形成される金属または樹脂からなり、カラーフィルター用の機能性を有するパターンを形成する際の外気の温湿度と同一となるように調整する。あるいは、空調ユニット40は、プラスチックフィルム1がこの後曝される任意の工程における外気の温湿度と同一となるように、取り込んだ外気の温湿度を調整するようにしても良い。例えば、プラスチックフィルム1を用いたディスプレイ部材を含むディスプレイパネル(いずれも図示せず)が完成した状態において、温度25度、相対湿度40%RHの状態におけるパターンの寸法が規定されている場合には、空調ユニット40は、外気の温湿度を、25度、40%RHに調整することが好ましい。このことにより、ディスプレイパネル完成時のパターンの寸法精度をより一層向上させることができる。
【0079】
また、空調ユニット40に、空隙層3に送り込む外気に含まれる塵埃等の異物を除去する異物除去フィルター30が設けられている。すなわち、異物除去フィルター30は、空調ユニット40に取り込まれる外気から塵埃等の異物を除去するようになっている。
【0080】
このように本実施の形態によれば、外気が、プラスチックフィルム1に形成される金属または樹脂からなり、カラーフィルター用の機能性を有するパターンを形成する際の外気の温湿度と同一となるように調整されて、空隙層3に送り込まれる。このことにより、プラスチックフィルム1の全体が、パターンを形成する際の温湿度を有する外気に接することができる。このため、プラスチックフィルム1の全体に亘って、含水率を、パターンを形成する際の外気と平衡状態における含水率に均一にすることができる。
【0081】
また、本実施の形態によれば、空隙層3に供給する気体の温湿度を任意に調整することができる。このため、プラスチックフィルム1の含水率を、任意の温湿度の気体と平衡状態における含水率にすることができる。
【0082】
さらに、本実施の形態によれば、塵埃等の異物が除去された外気を空隙層3に送り込むことができる。このため、プラスチックフィルム1の表面に、塵埃等の異物が付着することを防止することができる。
【0083】
第4の実施の形態
次に、図9により、本発明の第4の実施の形態におけるプラスチックフィルムの含水率調整方法、カラーフィルターの製造方法、およびプラスチックフィルムの含水率調整装置について説明する。
【0084】
図9に示す第4の実施の形態においては、プラスチックフィルムの巻取体がチャンバに収容されている点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図9において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0085】
図9に示すように、プラスチックフィルム1の巻取体4は、チャンバ60に収容されている。
【0086】
また、気体供給ユニット20に、空隙層3に供給される気体の温湿度を調整する空調ユニット40が設けられている。なお、この空調ユニット40は、第3の実施の形態と同様に、気体の温湿度を調整するようになっている。
【0087】
気体供給ユニット20は、空隙層3に気体を送り込む送風ユニット21と、チャンバ60内の気体を吸引する吸引ユニット51とを有している。すなわち、気体供給ユニット20は、チャンバ60内の気体を吸引して空調ユニット40に送ると共に、空調ユニット40により温湿度が調整された気体を、プラスチックフィルム1の巻取体4の第1端面4aから空隙層3に送り込むように構成されている。
【0088】
このように本実施の形態によれば、チャンバ60内の気体が吸引されて、空調ユニット40により、その温湿度が調整され、プラスチックフィルム1の巻取体4の第1端面4aから空隙層3に送り込まれる。空隙層3に送り込まれた気体は、空隙層3内を通って、巻取体4の第2端面4bからチャンバ60内に排出される。このことにより、プラスチックフィルの全体が、所定の温湿度を有する気体に接することができる。このため、プラスチックフィルム1の全体に亘って、含水率を、所定の温湿度の気体と平衡状態における含水率にすることができる。
【0089】
また、本実施の形態によれば、空隙層3に供給する気体の温湿度を任意に調整することができる。このため、プラスチックフィルム1の含水率を、任意の温湿度の気体と平衡状態における含水率にすることができる。
【0090】
さらに、本実施の形態によれば、プラスチックフィルム1の巻取体4がチャンバ60に収容されているため、空隙層3に送り込まれる所定の温湿度を有する気体を循環させることができる。このことにより、空隙層3に送り込まれる気体の温湿度を、効率良く調整することができる。
【0091】
なお、本実施の形態においては、図10に示すように、チャンバ60を、保持部材11、気体供給ユニット20、および空調ユニット40を収容するようにしてもよい。
【0092】
以上、本発明による実施の形態について説明してきたが、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に、適宜組み合わせることも可能である。また、これらの本実施の形態においては、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形も可能である。
【実施例】
【0093】
実施例1
本発明のプラスチックフィルム1の含水率調整方法により含水率が調整されたプラスチックフィルム1の各部の含水率を測定した。
【0094】
まず、プラスチックフィルム1として、300mm幅で30m長さのPETフィルム(東洋紡績株式会社製コスモシャインA4100、125μm厚さ)を準備し、支持部材2として、30mm幅の多孔質フィルム(日東電工製サンマップ、200μm厚さ)を準備した。この多孔質フィルムをPETフィルムの両縁部(長手方向に沿った両縁部)に配置し、円筒状のコア(内径3インチ)5に巻き取り、厚さ200μmの空隙層3が介在されたPETフィルムの巻取体4を形成した。このとき、PETフィルムの含水率は、全体に亘って、0.11%〜0.12%であった(表1参照)。なお、含水率の測定は、マイクロ波オンライン水分計(マルカム製)、電気抵抗式水分計((株)山崎精機研究所製)などを用いて行うこともでき、あるいは、JIS−K7209にしたがって行うこともできる。
【0095】
次に、コア5の中空部5aに、閉塞部材12を嵌入させて、PETフィルムの巻取体4の外周面に、保持部材11を嵌合させた。
【0096】
その後、気体供給ユニット20により、空隙層3内の気体を、PETフィルムの巻取体4の第1端面4aから、0.1kPa、700m/sの流量で、48時間吸引して、第2端面4bから、空隙層3に所定の温湿度の気体を吸い込ませた。なお、本実施例においては、25度、40%RHの外気を空隙層3に吸い込ませた。
【0097】
比較例1として、上記と同等のPETフィルムを、支持部材2を用いることなく(空隙層3を介在させることなく)、コア5に巻き取り、25度、40%RHの外気のもとで、48時間、静置させた。
【0098】
48時間経過後に、それぞれのPETフィルムの含水率を測定した。その結果を、表1に示す。なお、表1に示す含水率の単位は%である。
【0099】
【表1】

【0100】
比較例1のPETフィルムでは、巻外側以外の部分では、ほとんど吸水しておらず、養生が進んでいないことが確認できた。また、含水率の均一性も得られなかった。これに対して実施例1のPETフィルムでは、全ての測定ポイントで、養生環境の25度40%RHの飽和吸水率である0.33%とほぼ同等の含水率に達し、全体に亘って、含水率が均一になり、養生が完了したことが確認できた。なお、本実施例においては、巻取体4の一方の端面から空隙層3内の気体を吸引して、他方の端面から外気を吸い込ませた例について説明したが、巻取体4の一方の端面から空隙層3に気体を送風ユニット21等により送り込むようにした場合についても、同様の効果が得られるものと考えられる。
【0101】
実施例2
上記実施例1によって養生されたPETフィルムを用いて、200mm×200mmのパターンを100パターン形成した。パターン形成時の外気の温湿度は、25度、40%RHであった。パターン形成方法としては、一般的なフォトリソグラフィを用いた。
【0102】
比較例2として、上記比較例1によって得られたPETフィルムを用いて、上記と同様にパターンを形成した。
【0103】
それぞれのPETフィルムに形成されたパターンの寸法の均一性を評価した。すなわち、比較例2のパターンは、巻外側の部分から巻内側の部分までの100パターンにおける寸法のばらつきは、設計寸法である100mmに対して40μmの差が見られたが、本実施例のパターンは、その差が10μmに収まっていた。このことにより、パターンの寸法の均一性を確認することができた。
【0104】
なお、寸法の均一性の評価については、具体的には、以下のように行うことができる。パターンの設計寸法がわかっている場合には、上述のように設計寸法を基準として、測定された各パターンの寸法が、どの程度ずれているかを評価する。また、設計寸法が不明である場合には、任意の複数のパターンにおいて測定された寸法から平均寸法を求め、この平均寸法を基準として、測定された各パターンの寸法が、どの程度ずれているかを評価する。また、寸法の測定には、一般に測長機を用いることが好ましい。とりわけ、マイクロメートル単位まで寸法を測定することができる精密な測長機がより好ましい。例えば、SOKKIA製の超精密自動2次元座標測定機や、ニコンインストルメンツカンパニー製のCNC画像測定システムなどを使用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 プラスチックフィルム
2 支持部材
2a 凹部
3 空隙層
4 巻取体
4a 第1端面
4b 第2端面
5 コア
5a 中空部
10 含水率調整装置
11 保持部材
12 閉塞部材
20 気体供給ユニット
21 送風ユニット
22 送風口
30 異物除去フィルター
40 空調ユニット
50 チャンバ
51 吸引ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のプラスチックフィルムを、支持部材を介して巻き取り、当該支持部材によって空隙層が介在されるように、プラスチックフィルムの巻取体を形成する工程と、
空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程と、を備えたことを特徴とするプラスチックフィルムの含水率調整方法。
【請求項2】
空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程において、当該気体は、プラスチックフィルムの巻取体の一方の端面から空隙層に送り込まれることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックフィルムの含水率調整方法。
【請求項3】
空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程において、当該気体は、プラスチックフィルムの巻取体の両方の端面から、交互に、空隙層に送り込まれることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックフィルムの含水率調整方法。
【請求項4】
所定の温湿度の気体は、異物を除去する異物除去フィルターを通って空隙層に送り込まれることを特徴とする請求項2または3に記載のプラスチックフィルムの含水率調整方法。
【請求項5】
所定の温湿度の気体は、その温湿度が調整されて空隙層に送り込まれることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のプラスチックフィルムの含水率調整方法。
【請求項6】
空隙層に送り込まれる気体の温湿度は、この後にプラスチックフィルムに形成される金属または樹脂からなるパターンを形成する際の外気の温湿度と同一となるように調整されることを特徴とする請求項5に記載のプラスチックフィルムの含水率調整方法。
【請求項7】
空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程において、プラスチックフィルムの巻取体はチャンバに収容され、チャンバ内から気体が吸引されてその温湿度が調整され、調整された気体が空隙層に送り込まれることを特徴とする請求項5または6に記載のプラスチックフィルムの含水率調整方法。
【請求項8】
空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程において、空隙層内の気体は、プラスチックフィルムの巻取体の一方の端面から吸引されて、他方の端面から空隙層に所定の温湿度の気体が吸い込まれることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックフィルムの含水率調整方法。
【請求項9】
空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程において、空隙層内の気体は、プラスチックフィルムの巻取体の両方の端面から、交互に吸引されて、吸引時に、吸引される側の端面とは反対側の端面から、空隙層に所定の温湿度の気体が吸い込まれることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックフィルムの含水率調整方法。
【請求項10】
空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程は、空隙層内の気体を、プラスチックフィルムの巻取体の一方の端面から吸引して、他方の端面から空隙層に所定の温湿度の気体を吸い込む工程と、所定の温湿度の気体を、プラスチックフィルムの巻取体の当該一方の端面から空隙層に送り込む工程とを有することを特徴とする請求項1に記載のプラスチックフィルムの含水率調整方法。
【請求項11】
プラスチックフィルムの巻取体を形成する工程の後、空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程の前に、プラスチックフィルムの巻取体が吸水処理されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のプラスチックフィルムの含水率調整方法。
【請求項12】
プラスチックフィルムの巻取体を形成する工程の後、空隙層に所定の温湿度の気体を供給する工程の前に、プラスチックフィルムの巻取体が乾燥処理されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のプラスチックフィルムの含水率調整方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載のプラスチックフィルムの含水率調整方法を実行することにより、プラスチックフィルムの含水率を調整する工程と、
プラスチックフィルムに、カラーフィルター用の機能性を有するパターンを形成する工程と、を備え、
カラーフィルターを得ることを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【請求項14】
帯状のプラスチックフィルムが支持部材を介して巻き取られ、当該支持部材によって空隙層が介在されるように形成されたプラスチックフィルムの巻取体を保持する保持部材と、
保持部材に保持されたプラスチックフィルムの巻取体の空隙層に所定の温湿度の気体を供給する気体供給ユニットと、を備えたことを特徴とするプラスチックフィルムの含水率調整装置。
【請求項15】
気体供給ユニットは、プラスチックフィルムの巻取体の一方の端面から空隙層に所定の温湿度の気体を送り込む送風ユニットを有していることを特徴とする請求項14に記載のプラスチックフィルムの含水率調整装置。
【請求項16】
送風ユニットに、空隙層に送り込む気体から異物を除去する異物除去フィルターが設けられていることを特徴とする請求項15に記載のプラスチックフィルムの含水率調整装置。
【請求項17】
送風ユニットに、空隙層に送り込む気体の温湿度を調整する空調ユニットが設けられていることを特徴とする請求項15または16に記載のプラスチックフィルムの含水率調整装置。
【請求項18】
プラスチックフィルムの巻取体を収容するチャンバを更に備え、
気体供給ユニットは、チャンバ内の気体を吸引して空調ユニットに送る吸引ユニットを更に有していることを特徴とする請求項17に記載のプラスチックフィルムの含水率調整装置。
【請求項19】
保持部材、気体供給ユニット、および空調ユニットは、チャンバに収容されることを特徴とする請求項18に記載のプラスチックフィルムの含水率調整装置。
【請求項20】
気体供給ユニットは、プラスチックフィルムの巻取体の一方の端面から空隙層内の気体を吸引して、他方の端面から空隙層内に所定の温湿度の気体を吸い込ませる吸引ユニットを有していることを特徴とする請求項14に記載のプラスチックフィルムの含水率調整装置。
【請求項21】
気体供給ユニットは、プラスチックフィルムの巻取体の一方の端面から空隙層に所定の温湿度の気体を送り込む送風機能と、当該一方の端面から空隙層内の気体を吸引して、他方の端面から空隙層内に所定の温湿度の気体を吸い込ませる吸引機能とを有していることを特徴とする請求項14に記載のプラスチックフィルムの含水率調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−51173(P2012−51173A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194314(P2010−194314)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】