プラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成形型製造装置
【課題】プラスチックレンズ用成形型を品質が高くかつ均一となるように製造できるようにする。
【解決手段】テープ16が巻回されたモールド組立体11をクランプ装置31に保持させる保持ステップS1を有する。テープ16の予め定めた目標注入口位置を注入口形成装置5に位置決めする位置決めステップS2を有する。注入口形成装置5によってテープ16に注入口を形成する注入口形成ステップS3を有する。モールド組立体11の外周面における注入口と対応する位置に注入補助部材を接着させる接着ステップS4とを有する。
【解決手段】テープ16が巻回されたモールド組立体11をクランプ装置31に保持させる保持ステップS1を有する。テープ16の予め定めた目標注入口位置を注入口形成装置5に位置決めする位置決めステップS2を有する。注入口形成装置5によってテープ16に注入口を形成する注入口形成ステップS3を有する。モールド組立体11の外周面における注入口と対応する位置に注入補助部材を接着させる接着ステップS4とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注型重合によってプラスチックレンズを成形する際に使用するプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成形型製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の眼鏡用プラスチックレンズは、一般に注型重合によって形成されている。この注型重合とは、成形型にプラスチックレンズ材料を注入し、熱あるいは紫外線等のエネルギーにより硬化させて成形物を得る方法である。注型重合に用いる成形型は、たとえば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に開示されている成形型は、レンズ成形用のキャビティが内部に形成されたモールド組立体と、このモールド組立体に接着された注入補助部材とによって構成されている。前記モールド組立体は、レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材と、これらのモールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるように巻き付けられたテープとによって構成されている。前記テープには、プラスチックレンズ材料を注入するための注入口が形成されている。
【0004】
前記注入補助部材は、プラスチックレンズ材料を前記キャビティ内に導くためのものである。この注入補助部材は、プラスチックレンズ材料を供給するノズルを挿入するための筒体と、この筒体の一端部に一体に形成された板状の取付片とを備えている。前記取付片には、筒体の内外を連通する開口が形成されている。この取付片は、粘着テープや接着剤によって前記モールド組立体の外周面に接着されている。
【0005】
この取付片に形成されている前記開口は、前記テープの注入口と対向する位置に位置付けられている。注入口は、注入補助部材をモールド組立体に接着する以前に形成されたり、注入補助部材をモールド組立体に接着した後に前記開口に工具を挿入して形成される。前記ノズルは、注入補助部材から前記テープの注入口に挿入され、前記キャビティ内にプラスチックレンズ材料を注入する。
【0006】
前記注入補助部材をモールド組立体に接着するためには、先ず、作業者が注入補助部材の取付片に粘着テープを貼着したり、接着剤を塗布する。粘着テープには、取付片の開口と対向する位置に貫通孔が形成されている。次に、このように粘着テープが貼着されたり接着剤が塗布された注入保持部材を作業者が手で持ち、モールド組立体の外周面に押し付ける。テープに予め注入口が形成されている場合は、取付片の開口が注入口と対向するように接着作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開 WO 2010/098466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、モールド組立体に注入補助部材を作業者が押し付けて接着する従来のプラスチックレンズ用成形型の製造方法では、プラスチックレンズ用成形型を品質が高くかつ品質が均一となるように製造することはできなかった。この理由は、成形型の良否が作業者の技量に応じて変わるからである。このため、従来の製造方法では、以下のような問題があった。
【0009】
注入補助部材とテープとの間に隙間が形成され、プラスチックレンズ材料内に前記隙間から空気が混入されてしまうことがあった。また、注入補助部材をモールド組立体に接着した後に注入補助部材を手で持つと、モールド組立体が注入補助部材から外れて落下することがあった。これらの問題の原因は、注入補助部材がテープに正しく接着されていないからであると考えられる。この問題を解消しようとして注入補助部材をモールド組立体に強く押し付けると、テープにしわが形成されてしまう。テープの変形は、キャビティの形状が変化することを意味するから、この場合の成形後のプラスチックレンズは不良品になる。
【0010】
さらに、テープの注入口が正しい位置に形成されていなかったり、注入補助部材が正しい位置に接着されていないことがあった。このような場合には、プラスチックレンズ材料注入用のノズルをキャビティ内に正しく挿入することができなくなる。
加えて、従来のプラスチックレンズ用成形型の製造方法では、作業者が各種の作業を行うことにより生じた塵埃が注入補助部材に付着し、プラスチックレンズ材料とともにキャビティ内に混入してしまうことがあった。
【0011】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、プラスチックレンズ用成形型を品質が高くかつ均一となるように製造でき、しかも、この成形型の中に異物が混入し難くなるようなプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成形型製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の製造方法は、レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるテープが巻き付けられてなるモールド組立体を治具に保持させる保持ステップと、前記治具を支持した状態で移動させる移動装置によって前記テープの予め定めた目標注入口位置を注入口形成装置に位置決めする位置決めステップと、前記注入口形成装置によって前記テープにプラスチックレンズ材料の注入口を形成する注入口形成ステップと、プラスチックレンズ材料を流す通路が内部に形成されるとともに前記通路の一端が開口する取付片が一端部に形成された注入補助部材を専用の移動装置によって移動させ、前記通路の開口が前記テープの注入口と対向する状態で前記取付片を前記モールド組立体の外周面に接着させる接着ステップとを有する方法である。
【0013】
本発明は、上記発明において、前記接着ステップを実施する以前に、前記注入補助部材を専用の保持装置に保持させた状態で接着剤塗布装置によって接着剤を前記取付片に塗布する接着剤塗布ステップと、接着剤塗布後の前記注入補助部材を前記保持装置から前記注入補助部材用移動装置に移す移載ステップとを実施する方法である。
【0014】
本発明に係るプラスチックレンズ用成形型製造装置は、レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるテープが巻き付けられてなるモールド組立体を保持する治具と、前記テープにプラスチックレンズ材料の注入口を形成する注入口形成装置と、前記治具を支持した状態で移動させ、前記テープの予め定めた目標注入口位置を前記注入口形成装置に位置決めする治具用移動装置と、プラスチックレンズ材料を流す通路が内部に形成されるとともに前記通路の一端が開口する取付片が一端部に形成された注入補助部材を移動させる注入補助部材用移動装置を有し、かつ前記通路の開口が前記テープの注入口と対向する状態で前記取付片を前記モールド組立体の外周面に接着させる接着装置とを備えているものである。
【0015】
本発明は、上記発明において、前記接着装置は、前記注入補助部材を専用の保持装置に保持させた状態で前記取付片に接着剤を塗布する接着剤塗布装置と、接着剤塗布後の前記注入補助部材を前記保持装置から前記注入補助部材用移動装置に移す移載装置とをさらに備えているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、モールド組立体のテープに注入口を形成する注入口形成ステップと、前記モールド組立体に注入補助部材を接着する接着ステップとが自動化され、これらの工程を作業者による作業を何も必要とすることなく実施することができる。
このため、注入補助部材を最適な押圧力でモールド組立体に接着できるとともに、接着部の品質が均一となるように多数の成形型を製造することができる。前記最適な押圧力とは、テープにしわが形成されることがない押圧力であって注入補助部材がモールド組立体から外れることがないような押圧力である。
【0017】
したがって、本発明によれば、多数のプラスチックレンズ用成形型を品質が高くかつ品質が均一となるように製造することが可能なプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成形型製造装置を提供することができる。
本発明に係る製造方法によって製造された成形型は、注入補助部材がモールド組立体に強固に接着されているために、注入補助部材を保持して搬送することができる。しかも、この成形型は、後工程のプラスチックレンズ材料注入装置において注入補助部材のみを支持させることができる。この構成を採ることにより、成形型をプラスチックレンズ材料注入装置に搬入するステップから材料注入ステップを経て搬出ステップに至るまでの全てのステップを容易に自動化することができる。
【0018】
また、モールド組立体のテープに注入口を形成する注入口形成ステップと、前記モールド組立体に注入補助部材を接着する接着ステップとが無人化されるために、これらのステップで発生する塵埃の量を可及的少なく抑えることができる。このため、本発明によれば、レンズ内に異物が混入し難いプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成形型製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るプラスチックレンズ用成形型製造装置の構成を示すブロック図である。
【図2】プラスチックレンズ用成形型を示す斜視図である。
【図3】プラスチックレンズ用成形型の断面図で、同図(A)は成形型の全体を破断して示す縦断面図、同図(B)は要部を拡大して示す断面図である。
【図4】クランプ装置の構成を示す図で、同図(A)は平面図、同図(B)は側面図である。
【図5】プラスチックレンズ用成形型製造装置の構成を示す斜視図である。
【図6】前後方向位置決め装置の構成を示す側面図である。
【図7】上下方向位置決め装置の構成を示す図で、同図(A)は平面図、同図(B)は側面図である。
【図8】注入口形成装置の構成を示す図で、同図(A)は平面図、同図(B)は側面図である。
【図9】接着装置の構成を示す平面図である。
【図10】接着装置の構成を示す側面図である。
【図11】塗布装置の構成を示す側面図である。
【図12】移載装置が接着装置本体に注入補助部材を移載している状態を示す斜視図である。
【図13】接着装置本体が注入補助部材をモールド組立体に接着している状態を示す斜視図である。
【図14】本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の製造方法を説明するためのフロチャートである。
【図15】プラスチックレンズ用成形型の製造方法の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成形型製造装置の一実施の形態を図1〜図15によって詳細に説明する。
図1に示すプラスチックレンズ用成形型製造装置1は、本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の製造方法を実施するためのもので、一つのハウジング2の中に収容されている。ハウジング2内には、前記製造方法の各ステップを実施するための各種の処理装置3〜6と、これらの処理装置の動作を制御するための制御装置7とが配置されている。前記各種の処理装置としては、後述する搬送装置3を含む移動装置4と、注入口形成装置5と、接着装置6などである。
本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の製造方法は、前記各種の装置の動作を制御するプログラムとして制御装置7内のメモリ(図示せず)に記録されている。この前記製造方法は、図2および図3に示すモールド組立体11に注入補助部材12を取付けてプラスチックレンズ用成形型13を製造するための方法である。
【0021】
前記モールド組立体11は、図2に示すように、一対の円板状のモールド部材(第1のモールド部材14と第2のモールド部材15)と、これらのモールド部材14,15の外周面に巻き付けられた透明なテープ16とによって構成されている。本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の製造方法を実施するにあたっては、予め組み立てられたモールド組立体11を使用する。
【0022】
前記モールド部材14,15は、光を透過可能なガラス材料によって所定の形状に形成されており、レンズ面を成形するための型を構成している。図3において上側に位置する第1のモールド部材14の下面14aは、上方に向けて凸になる凹曲面であり、他方の第2のモールド部材15の上面15aは、上方に向けて凸になる凸曲面である。
前記テープ16は、レンズのコバ面を成形するための型を構成している。このテープ16は、いわゆる粘着テープであり、第1、第2のモールド部材14,15の外周面に1周以上巻回されて貼り付けられている。
【0023】
前記テープ16は、第1、第2のモールド部材14,15の外周面の全域を覆っている。また、テープ16は、第2のモールド部材15の非使用面から突出することがないように第1、第2のモールド部材14,15に巻き付けられている。前記非使用面とは、第2のモールド部材15における上面15aとは反対側の凹面である。なお、テープ16の幅は、第1、第2のモールド部材14,15間の間隙を密閉する幅であれば適宜変更することができる。
【0024】
前記テープ16は、図示してはいないが帯状の基材と、この基材の片面(モールド部材14,15と対向する面)に形成された粘着層とによって構成されている。前記基材としては、たとえばポリエステルを挙げることができる。前記粘着層を形成する材料は、プラスチックレンズ材料に溶け出したり、重合を阻害したりしないものが望ましく、たとえばシリコーン系の粘着剤などを挙げることができる。このテープ16を一対のモールド部材14,15に巻き付けることによって、内部にレンズ成形用のキャビティ17が形成されたモールド組立体11が組み立てられる。
【0025】
テープ16には、プラスチックレンズ材料をキャビティ17内に注入するために注入口18が形成されている。この注入口18は、後述するプラスチックレンズ用成形型の製造方法を実施することによって形成される。この注入口18の位置は、モールド組立体11毎に決められている。注入口18の位置としては、第1のモールド部材14と第2のモールド部材15との間の中央に設定することができる。この注入口18の位置は、本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の製造方法を実施するにあたっては、目標注入口位置として予め設定されている。
【0026】
前記注入補助部材12は、図2および図3に示すように、前記モールド組立体11の外周部に重ねることが可能な形状に形成された取付片21と、この取付片21に一体に形成された補助部材本体22とによって構成されている。この注入補助部材12は、プラスチック材料によって形成されている。前記取付片21は、モールド組立体11の外周面に沿うような曲率で湾曲した板状に形成されている。図2および図3に示す組立状態においては、取付片21は接着剤23によってモールド組立体11に接着されている。
【0027】
前記補助部材本体22は、断面形状が四角形の筒体であって、前記取付片21からモールド組立体11とは反対側に延びるように形成されている。この実施の形態による補助部材本体22は、図3に示すように、モールド組立体11の径方向と平行に延びる平板部22aと、この平板部22aと対向する傾斜部22bとを有している。前記傾斜部22bは、取付片21に向かうにしたがって漸次平板部22aに接近するように傾斜している。また、補助部材本体22における取付片21とは反対側の端部には、フランジ24が設けられている。
【0028】
この補助部材本体22の内部は、溶融状態のプラスチックレンズ材料(図示せず)が流れる通路25になる。前記取付片21には、前記通路25の一端の開口となるスリット状の穴26(図3参照)が形成されている。この穴26は、取付片21をモールド組立体11側から見た状態において、前記平板部22aと平行に延びるように形成されている。
【0029】
注入補助部材12は、後述するプラスチックレンズ用成形型の製造方法を実施することによって、前記穴26が前記注入口18と対向する状態でモールド組立体11に接着される。
【0030】
この実施の形態によるプラスチックレンズ用成形型の製造方法は、詳細は後述するが、図1および図15に示すように、保持ステップS1と、位置決めステップS2と、注入口形成ステップS3と、接着ステップS4とによって実施する。
前記保持ステップS1は、上述したモールド組立体11を前記製造装置1に保持させるステップである。前記製造装置1は、モールド組立体11を保持するクランプ装置31(図4参照)を備えている。このクランプ装置31は、前記モールド組立体11をレンズ面が上下方向を指向する状態で保持する。このクランプ装置31によるモールド組立体11の保持は、モールド組立体11の外周部を複数の保持部材32により径方向の外側から挟むことによって行われる。この実施の形態においては、前記クランプ装置31によって本発明でいう「治具」が構成されている。
【0031】
図4に示すクランプ装置31は、4本の保持部材32と、これらの保持部材32を駆動するアクチュエータ33とを備えている。この実施の形態による保持部材32は、円柱状に形成されている。なお、保持部材32の形状や数量は適宜変更することができる。アクチュエータ33は、水平方向に並ぶ2個のスライダ33a,33bを互いに接近させたり離間させる構成のものである。これらのスライダ33a,33bには、前記保持部材32が2本ずつ取付けられている。
【0032】
このクランプ装置31は、図4に示すように、上方から見てモールド組立体11の軸心Cが予め定めた基準位置Aと一致するようにモールド組立体11を保持する。
また、前記クランプ装置31は、後述する各種の処理装置にモールド組立体11を送ることができるように、搬送装置3に支持されている。この搬送装置3は、クランプ装置31を3方向に移動できるように支持している。前記3方向とは、各種の処理装置の近傍を通る搬送路34(図1参照)に沿う搬送方向と、前記搬送路34と各種の処理装置との間で往復する方向である前後方向と、上下方向とである。図1に示す搬送路34は、同図において最も上に位置する投入位置P1から同図において最も下に位置する取出し位置P2まで延びている。
【0033】
このような搬送装置3は、たとえば図5に示すように、ターンテーブル35を用いて構成することができる。以下においては、ターンテーブル35を使用して構成されたプラスチックレンズ用成形型製造装置1について説明する。
前記ターンテーブル35は、基台36の上で上下方向を軸線方向として回転するテーブル37を備えている。テーブルは、所定の角度ずつ間欠的に回転するように構成されている。なお、このターンテーブル35は、図示してはいないが、テーブル37と一体に回転する各装置に空気圧を供給する空気通路がテーブル37の中心部分で基台36に対して回転できる構成が採られている。
【0034】
前記テーブル37は、前記基台36に回転自在に支持されている。このテーブル37には、図5に示すように、複数のクランプ装置31が設けられている。これらのクランプ装置31は、テーブル37の回転方向に等間隔で並ぶ状態で後述するスライド機構41(図6参照)を介してテーブル37に支持されている。この場合の前記搬送方向は、テーブル37の回転方向になる。このように搬送装置3をターンテーブル35によって構成する場合は、後述する各種の処理装置がターンテーブル35の径方向の外側に配置される。
【0035】
前記スライド機構41は、図6に示すように、前記ターンテーブル35に上下方向へ移動自在に支持された上下方向スライダ42と、この上下方向スライダ42に前記前後方向へ移動自在に支持された前後方向スライダ43とを備えている。前記前後方向スライダ43は、テーブル37からターンテーブル35の径方向の外側に延びるように形成されている。前記クランプ装置31は、前後方向スライダ43の上に装着されている。
【0036】
前記上下方向スライダ42には、この上下方向スライダ42を上下方向に移動させるためのアクチュエータ44が接続されている。このアクチュエータ44は、詳細には図示してはいないが、モータあるいはエアシリンダを動力源として上下方向スライダ42を駆動する構成のものである。このアクチュエータ44は、前記テーブル37または基台36に支持させることができる。また、この上下方向スライダ42と前後方向スライダ43とには、それぞれ移動を規制するためのブレーキ45,46が設けられている。これらのブレーキ45,46は、上下方向スライダ42や前後方向スライダ43をスライドさせるときにのみ制動状態が解除される。
【0037】
前記製造方法の位置決めステップS2は、前記クランプ装置31に保持されたモールド組立体11の目標注入口位置を注入口形成装置5に位置決めするステップである。この位置決めステップS2においては、下記の3種類の位置について位置決めが行われる。3種類の位置としては、モールド組立体11の前記前後方向の位置と、目標注入口位置の上下方向の位置と、目標注入口位置の搬送方向の位置である。前記前後方向の位置決めは、図15に示すように、前記位置決めステップS2の中の前後方向位置決めステップS2Aで実施され、上下方向の位置決めは、上下方向位置決めステップS2Bで実施される。また、搬送方向の位置決めは、搬送方向位置決めステップS2Cで実施される。
【0038】
モールド組立体11の前記前後方向の位置決めは、図1および図6に示すような前後方向位置決め装置51によって行う。
前後方向位置決め装置51は、前記前後方向スライダ43を前記上下方向スライダ42に対して所定の移動量だけ前方(各種の処理装置に接近する方向)または後方に押す構成のものである。前後方向位置決め装置51は、詳細には図示してはいないが、モータあるいはエアシリンダを動力源として前後方向スライダ43を駆動する構成のものである。図6に示す前後方向位置決め装置51は、基台36に支持されており、前後方向スライダ43から下方に延びる受圧片52を前方または後方に押す構成が採られている。なお、この前後方向位置決め装置51は、この実施の形態で示す構成に限定されることはなく、基台36に支持させることができる。
【0039】
前後方向位置決め装置51が前後方向スライダ43を移動させるときの前記移動量は、モールド組立体11が後述する注入口形成装置5と対向する位置に送られたときに、モールド組立体11と注入口形成装置5との間隔が予め定めた間隔D1(図6参照)となるように設定されている。モールド組立体11の外周面と注入口形成装置5とを間隔D1だけ離間させるためには、図6に示すように、クランプ装置31の前記基準位置Aと注入口形成装置5との間隔D2からモールド組立体11の半径rを減算した値が間隔D1となるように前後方向スライダ43を移動させればよい。
【0040】
たとえば、図6に示すモールド組立体11より外径が大きいモールド組立体11の場合は、外周面と注入口形成装置5とが間隔D1だけ離間するように、前後方向位置決め装置51が前後方向スライダ43を注入口形成装置5から離間する方向に移動させる。
前後方向スライダ43に設けられているブレーキ46は、前後方向位置決め装置51による位置決めが行われるときに制動を解除し、位置決め終了後に制動状態になる。
【0041】
前記目標注入口位置の上下方向の位置決めは、図1および図7に示すような上下方向位置決め装置53によって行う。この位置決めを行うにあたっては、モールド組立体11の予め定めた基準点を検出子によって検出し、この検出時の上下方向スライダ42の位置(検出位置)から所定量だけ上下方向スライダ42を移動させることによって行う。この所定量とは、目標注入口位置の上下方向の位置と注入口形成装置5の加工部分の上下方向の位置とが一致するような長さである。
【0042】
前記検出子としては、光学式のものや接触式のものを使用することができる。光学式の検出子は、モールド組立体11を光路が横切るように構成することができる。接触式の検出子は、モールド組立体11の上面あるいは下面に接触するように構成することができる。光学式の検出子を用いる場合の上下方向位置決め装置53の一実施の形態を図7によって説明する。
【0043】
図7に示す上下方向位置決め装置53は、検出子としての発光素子54と受光素子55とを備えており、発光素子54と受光素子55との間の光路56がモールド組立体11を水平方向に横切るように構成されている。発光素子54と受光素子55とは、前後方向移動装置56を介して前記基台36に支持されている。前後方向移動装置56は、発光素子54および受光素子55を図7において実線で示す検出位置と、同図中に二点鎖線で示す退避位置との間で移動させる。発光素子54と受光素子55が前記検出位置に移動することによって、上方から見て光路56がモールド組立体11を横切るようになる。発光素子54と受光素子55が前記退避位置に移動することによって、搬送路34が開放され、発光素子54と受光素子55がモールド組立体11の搬送を妨げることがなくなる。
【0044】
この上下方向位置決め装置53による上下方向の位置の検出は、発光素子54と受光素子55とを前記検出位置に移動させた状態で前記上下方向スライダ42を動作させてモールド組立体11を上昇あるいは下降させて行う。たとえば、モールド組立体11を光路56が遮られるように下方から上方に移動させた場合は、光は、上に位置する第1のモールド部材14に照射された後にテープ16に照射される。光が第1のモールド部材14を透過するときの透過率と、光がテープ16を透過するときの透過率とは大きく異なる。この実施の形態においては、前記光の透過率が大きく変化したときの上下方向スライダ42の上下方向の位置が前記検出位置になる。
【0045】
前記光路56の上下方向の位置と、後述する注入口形成装置5の加工位置との高さの差は、プラスチックレンズ用成形型製造装置1の組立後は変化することがない。このため、この高さの差は予め計測しておくことができる。また、第1のモールド部材14の下端の上下方向の位置と目標注入口位置の上下方向の位置との差は、モールド組立体11毎に決められている。すなわち、目標注入口位置の上下方向の位置と、注入口形成装置5の加工部分の上下方向の位置は、何れも光路56(第1のモールド部材14の下端)の上下方向の位置に基づいて求めることができる。この実施の形態においては、上下方向位置決めステップS2Bにおいて、これらの上下方向の位置に基づいて目標注入口位置の上下方向の位置と前記加工部分の上下方向の位置とが一致するように上下方向スライダ42が上下方向に移動させられる。
【0046】
目標注入口位置の搬送方向の位置決めは、搬送装置3によって行う。すなわち、搬送装置3は、モールド組立体11の目標注入口位置が注入口形成装置5の加工部分と対向したときにクランプ装置31の搬送を停止させる。
この実施の形態においては、この搬送装置3と、上述した前後方向位置決め装置51および上下方向位置決め装置53とによって、本発明でいう「治具用移動装置」が構成されている。
【0047】
前記製造方法の注入口形成ステップS3は、前記モールド組立体11の目標注入口位置に注入口18を形成するステップである。この注入口形成ステップS3を実施する注入口形成装置5は、目標注入口位置にあるテープ16をモールド組立体11の周方向に予め定めた長さだけ切るものである。テープ16を切るにあたっては、刃をテープ16に刺して切断する場合と、レーザー光のエネルギーでテープ16の一部を溶かす場合とがある。
【0048】
刃を使う注入口形成装置5の一実施の形態を図8に示す。図8に示す注入口形成装置5は、テープ切断用カッター61と、このカッター61を支持する支持装置62とによって構成されている。テープ切断用カッター61は、刃61aを備えたものである。
前記支持装置62は、前記カッター61を支持する前後方向移動装置63と、この前後方向移動装置63を支持する周方向移動装置64とによって構成されている。周方向移動装置64は、基台36に支持されている。
【0049】
前記前後方向移動装置63は、テープ切断用カッター61をテープ16に対して進退させるためのものである。この前後方向移動装置63は、詳細には図示してはいないが、モータあるいはエアシリンダを動力源として構成されており、前記カッター61を図8に実線で示す切断位置と、図8(B)中に二点鎖線で示す退避位置との間で移動させる。
前記切断位置は、カッター61の刃61aがテープ16に所定の長さだけ刺さる位置である。退避位置は、カッター61の刃61aが搬送路34を遮ることがないように退避する位置である。
【0050】
前記周方向移動装置64は、テープ16に刺さった刃を移動させてモールド組立体11の周方向に予め定めた長さだけ切るためのものである。この周方向移動装置64は、前記カッター61の移動方向を規制するためのガイドレール65と、このガイドレール65に沿ってカッター61を移動させるアクチュエータ66を備えている。ガイドレール65は、上方から見てモールド組立体11と略同心の円上で延びる円弧状に形成されている。この実施の形態による周方向移動装置64は、注入口を形成するときに前記カッター61および前後方向移動装置63をガイドレール65の一端部65aから他端部65bまで移動させる。
【0051】
注入口形成装置5によってモールド組立体11に注入口18を形成するためには(注入口形成ステップS3を実施するためには)、先ず、カッター61および前後方向移動装置63をガイドレール65の切断開始位置である一端部65aに移動させる。そして、前後方向移動装置63によってカッター61を前記切断位置に移動させる。カッター61が前後方向移動装置63の駆動によりモールド組立体側に進むことによって、刃61aがテープ16に刺さる。次に、カッター61および前後方向移動装置63を周方向移動装置64によってガイドレール65の切断終了位置である他端部65bまで移動させる。この移動によりテープ16に所定の長さの注入口18が形成される。その後、カッター61を前後方向移動装置63により退避位置に移動させることによって、注入口形成ステップS3が終了する。
【0052】
前記製造方法の接着ステップS4は、注入補助部材12を専用の移動装置を用いてモールド組立体11に接着するステップである。注入補助部材12をモールド組立体11に接着するための接着剤23は、注入補助部材12の取付片21またはモールド組立体11の外周面に貼り付けた粘着テープ(図示せず)や、注入補助部材12の取付片21に塗布されたものである。この実施の形態においては、接着剤23を使用して注入補助部材12をモールド組立体11に接着する場合の例を説明する。
この場合は、前記接着ステップS4を実施する以前に、図15に示すように、注入補助部材12に接着剤23を塗布する接着剤塗布ステップS4Aと、接着剤23が塗布された注入補助部材12を前記注入補助部材12用の移動装置に移す移載ステップS4Bとが実施される。
【0053】
この実施の形態による接着ステップS4は、図9および図10に示す接着装置6によって実施される。この接着装置6は、前記接着剤塗布ステップS4Aを実施する接着剤塗布装置71と、前記移載ステップS4Bを実施する移載装置72と、注入補助部材12をモールド組立体11に接着させる接着ステップS4を実施する接着装置本体73とを備えている。
【0054】
接着剤塗布装置71は、図9〜図11に示すように、注入補助部材12の取付片21に上方から接着剤23を塗布する構成が採られている。この実施の形態を採るときに用いる接着剤23は、紫外線硬化型のものである。また、この実施の形態によるプラスチックレンズ用成形型製造装置1は、前記接着剤23が環境光(紫外線)に晒されて不必要に硬化することを防ぐために、ハウジング2(図5参照)で覆われている。このハウジング2の壁は、上述した各装置を外部から視認できるように、紫外線が透過しない透明な材料によって形成されたボード(図示せず)によって形成されている。このハウジング2には、図5に示すように、モールド組立体11を出し入れするための扉2aと、注入補助部材12を装填するための扉2bとが設けられている。
【0055】
注入補助部材12は、基台36上に取付けられた保持装置74に作業者または自動投入装置(図示せず)によって装填される。前記保持装置74は、注入補助部材12をスライド式押圧部材74aとストッパー74bとによって挟んで保持するものである。注入補助部材12は、取付片21が上方を指向する状態で保持装置74に保持される。
接着剤23の塗布は、塗布ノズル75を上方から取付片21に押し付けるようにして行う。塗布ノズル75は、接着剤23が下端から流出する構成のもので、昇降機構76と水平移動装置77とを介して基台36に支持されている。
【0056】
昇降機構76は、接着剤23を塗布するときに塗布ノズル75を図11において実線で示す塗布位置に下降させ、塗布後に同図中に二点鎖線Aで示す待機位置に上昇させる。水平移動装置77は、塗布ノズル75が注入補助部材12の上方に位置する前記待機位置と、図11中に二点鎖線Bで示す側方の後退位置との間で移動させる。このように塗布ノズル75を注入補助部材12の側方に移動させる理由は、後述する移載装置72が動作するときに注入補助部材12が塗布ノズル75に接触することを避けるためである。
【0057】
前記移載装置72は、図9および図10に示すように、前記保持装置74に保持された注入補助部材12を吸着ノズル81によって吸着し、この吸着ノズル81を移動させて所定の位置まで送るものである。移載装置72は、前記吸着ノズル81を有する第1の移載装置本体82と、後述する接着装置本体73を移動させるための第2の移載装置本体83とによって構成されている。
【0058】
第1の移載装置本体82は、吸着ノズル81を前記保持装置74に隣接する下側位置PL(図10参照)と、後述する接着装置本体73と同じ高さである上側位置PUとの間で上下方向に移動させる機能を有している。また、第1の移載装置本体82は、前記下側位置PLから上側位置PUまで上昇する間に吸着ノズル81を90°回転させる機能を有している。この吸着ノズル81を回転させる方向は、吸着ノズル81に吸着された注入補助部材12の取付片21が水平方向(モールド組立体11の外周面と対向する方向)を指向するような方向である。
【0059】
第2の移載装置本体83は、前記上側位置PUに送られた注入補助部材12を接着装置本体73に移すためのものである。この第2の移載装置本体83は、図9および図12に示すように、後述する接着装置本体73を支持するスライダ84を有し、このスライダ84を前記上側位置PUと、モールド組立体11と隣接する接着位置との間で水平に移動させる構成が採られている。
【0060】
接着装置本体73には、図12に示すように、注入補助部材12が挿入可能な正面視コ字状の支持部材85と、この支持部材85と協働して注入補助部材12の前記フランジ24を挟む押圧部材86とを備えている。前記支持部材85は、前記上側位置PUに位置する注入補助部材12が挿入できるように、側方に向けて開く状態で装備されている。前記押圧部材86は、エアシリンダ87に支持されており、このエアシリンダ87による駆動によって注入補助部材12のフランジ24を支持部材85に向けて押圧する。
【0061】
第2の移載装置本体83による注入補助部材12の移載は、前記押圧部材86が支持部材85から離間するように後退した状態で前記スライダ84が前記接着位置から上側位置PUに移動することによって行われる。このようにスライダ84が移動することによって、上側位置PUに保持されている注入補助部材12が支持部材85に挿入される。そして、注入補助部材12が支持部材85に挿入された後、押圧部材86が注入補助部材12のフランジ24を支持部材85に向けて押し、支持部材85と協働して注入補助部材12を挟持する。このように支持部材85と押圧部材86とが注入補助部材12を挟持した後にスライダ84が前記接着位置に移動することによって、移載ステップS4Bが終了する。
【0062】
接着装置本体73は、図9、図10および図13に示すように、前記スライダ84に支持された平行移動装置91と、この平行移動装置91に設けられた前記支持部材85および前記エアシリンダ87と、複数の紫外線照射装置92とによって構成されている。この実施の形態においては、前記平行移動装置91によって、本発明でいう「注入補助部材用移動装置」が構成されている。
【0063】
前記平行移動装置91は、前記支持部材85およびエアシリンダ87を図9において実線で示す接着位置と、同図中に二点鎖線で示す後退位置との間で移動させるものである。前記接着位置は、支持部材85と押圧部材86とによって挟持された注入補助部材12の取付片21がモールド組立体11の外周面に接触する位置である。前記退避位置は、支持部材85と押圧部材86とによって挟持された注入補助部材12の取付片21が搬送路34の外に退避する位置である。
【0064】
接着ステップS4において、モールド組立体11は、前記搬送装置3によって接着装置本体73と対向する位置に送られる。前記支持部材85とエアシリンダ87の上下方向の位置は、支持部材85と押圧部材86とによって挟持された注入補助部材12の前記スリット状の穴26がモールド組立体11の注入口18と対向するように位置付けられている。このため、平行移動装置91による駆動によって前記支持部材85およびエアシリンダ87が前記退避位置から前記接着位置に移動することによって、注入補助部材12がモールド組立体11の正しい位置に接着される。
【0065】
前記平行移動装置91の動力源はモータ(図示せず)である。この実施の形態による平行移動装置91は、前記モータの出力軸の負荷を検出する検出部93を備えている。この検出部93によって検出された前記負荷は、支持部材85およびエアシリンダ87が移動するときの抵抗と連動するように増大する。この実施の形態による平行移動装置91は、前記検出部93によって検出された前記負荷の大きさが予め定めた大きさに達したときにモータを停止させる構成が採られている。すなわち、平行移動装置91は、注入補助部材12が接着時に最適な押圧力でモールド組立体11に押し付けられるように構成されている。ここでいう最適な押圧力とは、注入補助部材12によって押されたテープ16が変形することがなく、しかも、接着剤23がモールド組立体11と取付片21との間で十分に拡がるような押圧力である。
【0066】
前記紫外線照射装置92は、注入補助部材12をモールド組立体11に接着した後に接着剤23に紫外線を照射し、接着剤23を硬化させるためのものである。この実施の形態においては、複数の紫外線照射装置92が接着部分の周辺に配置されている。これらの紫外線照射装置92は、図示してはいないが、基台36に支持させることができる。なお、接着部分より搬送装置3の搬送方向下流側に位置する紫外線照射装置92は、注入補助部材12が接着されたモールド組立体11を搬送するときに注入補助部材12と接触することがないように、昇降装置(図示せず)に支持させることが望ましい。この構成を採ることにより、紫外線照射装置92を搬送路34から上方または下方に退避させることができる。
【0067】
注入補助部材12が接着されたモールド組立体11は、搬送装置3によって取出し位置P2に送られる。この実施の形態においては、搬送装置3がターンテーブル35によって構成されているために、取出し位置P2は投入位置P1と同一位置に設けられている。このため、注入補助部材12が接着されたモールド組立体11は、取出し位置P2に送られた後、クランプ装置31によるクランプ状態が解除されて作業者によってハウジング2の外に搬出される。モールド組立体11が搬出されたクランプ装置31は、新しいモールド組立体11が装填され、再びクランプ状態になる。
【0068】
注入補助部材12が接着されたモールド組立体11を次工程で搬送するにあたっては、注入補助部材12のみを保持して行うことができる。すなわち、モールド組立体11の内部にプラスチックレンズ材料を注入する注入装置(図示せず)においても、注入補助部材12を支持することによって、この注入装置への搬入から搬出までを容易に自動化することができる。
【0069】
この実施の形態によるプラスチックレンズ用成形型の製造方法とプラスチックレンズ用成形型製造装置1においては、モールド組立体11のテープ16に注入口18を形成する注入口ステップS3と、前記モールド組立体11に注入補助部材12を接着する接着ステップS4とを含めてモールド組立体11の投入から接着終了までの間の全てのステップが自動化される。すなわち、モールド組立体11を投入してから注入補助部材12が接着されるまでの全てのステップが作業者による作業を何も必要とすることなく実施される。
【0070】
このため、この実施の形態によれば、注入補助部材12を最適な押圧力でモールド組立体11に接着できるとともに、接着部の品質が均一となるように多数の成形型13を製造することができる。前記最適な押圧力とは、テープ16にしわが形成されることがない押圧力であって注入補助部材12がモールド組立体11から外れることがないような押圧力である。
したがって、この実施の形態によれば、多数のプラスチックレンズ用成形型13を品質が高くかつ品質が均一となるように製造することが可能なプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成形型製造装置を提供することができる。
【0071】
また、モールド組立体11のテープ16に注入口18を形成する注入口形成ステップS3と、前記モールド組立体11に注入補助部材12を接着する接着ステップS4とが無人化されるために、これらのステップで発生する塵埃の量を可及的少なく抑えることができる。このため、この実施の形態によれば、レンズ内に異物が混入し難いプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成形型製造装置を提供することができる。この実施の形態においては、製造装置1の全体がハウジング2によって覆われているから、塵埃がより一層レンズ内に入り難くなる。
【0072】
この実施によるプラスチックレンズ用成形型の製造方法における接着ステップS4は、接着剤塗布ステップS4Aと移載ステップS4Bとを有している。接着剤塗布ステップS4Aにおいては、注入補助部材12が専用の保持装置74に保持された状態で接着剤塗布装置71によって接着剤23が取付片21に塗布される。移載ステップS4Bにおいては、接着剤塗布後の注入補助部材12が前記保持装置74から前記接着装置本体73に移載される。
このため、この実施の形態によれば、注入補助部材12に接着剤23を塗布する工程も自動化することができ、接着剤23の塗布量が最適になるように接着剤23を塗布することができる。したがって、この実施の形態を採ることにより、注入補助部材12をより一層確実にモールド組立体11に接着させることが可能なプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成型製造装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…プラスチックレンズ用成形型、3…搬送装置、5…注入口形成装置、6…接着装置、11…モールド組立体、14…第1のモールド部材、15…第2のモールド部材、16…テープ、18…注入口、31…クランプ装置、35…ターンテーブル、51…前後方向位置決め装置、53…上下方向位置決め装置、71…接着剤塗布装置、72…移載装置、73…接着装置本体、74…保持装置、85…支持部材、86…押圧部材、87…エアシリンダ、91…平行移動装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、注型重合によってプラスチックレンズを成形する際に使用するプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成形型製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の眼鏡用プラスチックレンズは、一般に注型重合によって形成されている。この注型重合とは、成形型にプラスチックレンズ材料を注入し、熱あるいは紫外線等のエネルギーにより硬化させて成形物を得る方法である。注型重合に用いる成形型は、たとえば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に開示されている成形型は、レンズ成形用のキャビティが内部に形成されたモールド組立体と、このモールド組立体に接着された注入補助部材とによって構成されている。前記モールド組立体は、レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材と、これらのモールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるように巻き付けられたテープとによって構成されている。前記テープには、プラスチックレンズ材料を注入するための注入口が形成されている。
【0004】
前記注入補助部材は、プラスチックレンズ材料を前記キャビティ内に導くためのものである。この注入補助部材は、プラスチックレンズ材料を供給するノズルを挿入するための筒体と、この筒体の一端部に一体に形成された板状の取付片とを備えている。前記取付片には、筒体の内外を連通する開口が形成されている。この取付片は、粘着テープや接着剤によって前記モールド組立体の外周面に接着されている。
【0005】
この取付片に形成されている前記開口は、前記テープの注入口と対向する位置に位置付けられている。注入口は、注入補助部材をモールド組立体に接着する以前に形成されたり、注入補助部材をモールド組立体に接着した後に前記開口に工具を挿入して形成される。前記ノズルは、注入補助部材から前記テープの注入口に挿入され、前記キャビティ内にプラスチックレンズ材料を注入する。
【0006】
前記注入補助部材をモールド組立体に接着するためには、先ず、作業者が注入補助部材の取付片に粘着テープを貼着したり、接着剤を塗布する。粘着テープには、取付片の開口と対向する位置に貫通孔が形成されている。次に、このように粘着テープが貼着されたり接着剤が塗布された注入保持部材を作業者が手で持ち、モールド組立体の外周面に押し付ける。テープに予め注入口が形成されている場合は、取付片の開口が注入口と対向するように接着作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開 WO 2010/098466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、モールド組立体に注入補助部材を作業者が押し付けて接着する従来のプラスチックレンズ用成形型の製造方法では、プラスチックレンズ用成形型を品質が高くかつ品質が均一となるように製造することはできなかった。この理由は、成形型の良否が作業者の技量に応じて変わるからである。このため、従来の製造方法では、以下のような問題があった。
【0009】
注入補助部材とテープとの間に隙間が形成され、プラスチックレンズ材料内に前記隙間から空気が混入されてしまうことがあった。また、注入補助部材をモールド組立体に接着した後に注入補助部材を手で持つと、モールド組立体が注入補助部材から外れて落下することがあった。これらの問題の原因は、注入補助部材がテープに正しく接着されていないからであると考えられる。この問題を解消しようとして注入補助部材をモールド組立体に強く押し付けると、テープにしわが形成されてしまう。テープの変形は、キャビティの形状が変化することを意味するから、この場合の成形後のプラスチックレンズは不良品になる。
【0010】
さらに、テープの注入口が正しい位置に形成されていなかったり、注入補助部材が正しい位置に接着されていないことがあった。このような場合には、プラスチックレンズ材料注入用のノズルをキャビティ内に正しく挿入することができなくなる。
加えて、従来のプラスチックレンズ用成形型の製造方法では、作業者が各種の作業を行うことにより生じた塵埃が注入補助部材に付着し、プラスチックレンズ材料とともにキャビティ内に混入してしまうことがあった。
【0011】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、プラスチックレンズ用成形型を品質が高くかつ均一となるように製造でき、しかも、この成形型の中に異物が混入し難くなるようなプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成形型製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の製造方法は、レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるテープが巻き付けられてなるモールド組立体を治具に保持させる保持ステップと、前記治具を支持した状態で移動させる移動装置によって前記テープの予め定めた目標注入口位置を注入口形成装置に位置決めする位置決めステップと、前記注入口形成装置によって前記テープにプラスチックレンズ材料の注入口を形成する注入口形成ステップと、プラスチックレンズ材料を流す通路が内部に形成されるとともに前記通路の一端が開口する取付片が一端部に形成された注入補助部材を専用の移動装置によって移動させ、前記通路の開口が前記テープの注入口と対向する状態で前記取付片を前記モールド組立体の外周面に接着させる接着ステップとを有する方法である。
【0013】
本発明は、上記発明において、前記接着ステップを実施する以前に、前記注入補助部材を専用の保持装置に保持させた状態で接着剤塗布装置によって接着剤を前記取付片に塗布する接着剤塗布ステップと、接着剤塗布後の前記注入補助部材を前記保持装置から前記注入補助部材用移動装置に移す移載ステップとを実施する方法である。
【0014】
本発明に係るプラスチックレンズ用成形型製造装置は、レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるテープが巻き付けられてなるモールド組立体を保持する治具と、前記テープにプラスチックレンズ材料の注入口を形成する注入口形成装置と、前記治具を支持した状態で移動させ、前記テープの予め定めた目標注入口位置を前記注入口形成装置に位置決めする治具用移動装置と、プラスチックレンズ材料を流す通路が内部に形成されるとともに前記通路の一端が開口する取付片が一端部に形成された注入補助部材を移動させる注入補助部材用移動装置を有し、かつ前記通路の開口が前記テープの注入口と対向する状態で前記取付片を前記モールド組立体の外周面に接着させる接着装置とを備えているものである。
【0015】
本発明は、上記発明において、前記接着装置は、前記注入補助部材を専用の保持装置に保持させた状態で前記取付片に接着剤を塗布する接着剤塗布装置と、接着剤塗布後の前記注入補助部材を前記保持装置から前記注入補助部材用移動装置に移す移載装置とをさらに備えているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、モールド組立体のテープに注入口を形成する注入口形成ステップと、前記モールド組立体に注入補助部材を接着する接着ステップとが自動化され、これらの工程を作業者による作業を何も必要とすることなく実施することができる。
このため、注入補助部材を最適な押圧力でモールド組立体に接着できるとともに、接着部の品質が均一となるように多数の成形型を製造することができる。前記最適な押圧力とは、テープにしわが形成されることがない押圧力であって注入補助部材がモールド組立体から外れることがないような押圧力である。
【0017】
したがって、本発明によれば、多数のプラスチックレンズ用成形型を品質が高くかつ品質が均一となるように製造することが可能なプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成形型製造装置を提供することができる。
本発明に係る製造方法によって製造された成形型は、注入補助部材がモールド組立体に強固に接着されているために、注入補助部材を保持して搬送することができる。しかも、この成形型は、後工程のプラスチックレンズ材料注入装置において注入補助部材のみを支持させることができる。この構成を採ることにより、成形型をプラスチックレンズ材料注入装置に搬入するステップから材料注入ステップを経て搬出ステップに至るまでの全てのステップを容易に自動化することができる。
【0018】
また、モールド組立体のテープに注入口を形成する注入口形成ステップと、前記モールド組立体に注入補助部材を接着する接着ステップとが無人化されるために、これらのステップで発生する塵埃の量を可及的少なく抑えることができる。このため、本発明によれば、レンズ内に異物が混入し難いプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成形型製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るプラスチックレンズ用成形型製造装置の構成を示すブロック図である。
【図2】プラスチックレンズ用成形型を示す斜視図である。
【図3】プラスチックレンズ用成形型の断面図で、同図(A)は成形型の全体を破断して示す縦断面図、同図(B)は要部を拡大して示す断面図である。
【図4】クランプ装置の構成を示す図で、同図(A)は平面図、同図(B)は側面図である。
【図5】プラスチックレンズ用成形型製造装置の構成を示す斜視図である。
【図6】前後方向位置決め装置の構成を示す側面図である。
【図7】上下方向位置決め装置の構成を示す図で、同図(A)は平面図、同図(B)は側面図である。
【図8】注入口形成装置の構成を示す図で、同図(A)は平面図、同図(B)は側面図である。
【図9】接着装置の構成を示す平面図である。
【図10】接着装置の構成を示す側面図である。
【図11】塗布装置の構成を示す側面図である。
【図12】移載装置が接着装置本体に注入補助部材を移載している状態を示す斜視図である。
【図13】接着装置本体が注入補助部材をモールド組立体に接着している状態を示す斜視図である。
【図14】本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の製造方法を説明するためのフロチャートである。
【図15】プラスチックレンズ用成形型の製造方法の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成形型製造装置の一実施の形態を図1〜図15によって詳細に説明する。
図1に示すプラスチックレンズ用成形型製造装置1は、本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の製造方法を実施するためのもので、一つのハウジング2の中に収容されている。ハウジング2内には、前記製造方法の各ステップを実施するための各種の処理装置3〜6と、これらの処理装置の動作を制御するための制御装置7とが配置されている。前記各種の処理装置としては、後述する搬送装置3を含む移動装置4と、注入口形成装置5と、接着装置6などである。
本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の製造方法は、前記各種の装置の動作を制御するプログラムとして制御装置7内のメモリ(図示せず)に記録されている。この前記製造方法は、図2および図3に示すモールド組立体11に注入補助部材12を取付けてプラスチックレンズ用成形型13を製造するための方法である。
【0021】
前記モールド組立体11は、図2に示すように、一対の円板状のモールド部材(第1のモールド部材14と第2のモールド部材15)と、これらのモールド部材14,15の外周面に巻き付けられた透明なテープ16とによって構成されている。本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の製造方法を実施するにあたっては、予め組み立てられたモールド組立体11を使用する。
【0022】
前記モールド部材14,15は、光を透過可能なガラス材料によって所定の形状に形成されており、レンズ面を成形するための型を構成している。図3において上側に位置する第1のモールド部材14の下面14aは、上方に向けて凸になる凹曲面であり、他方の第2のモールド部材15の上面15aは、上方に向けて凸になる凸曲面である。
前記テープ16は、レンズのコバ面を成形するための型を構成している。このテープ16は、いわゆる粘着テープであり、第1、第2のモールド部材14,15の外周面に1周以上巻回されて貼り付けられている。
【0023】
前記テープ16は、第1、第2のモールド部材14,15の外周面の全域を覆っている。また、テープ16は、第2のモールド部材15の非使用面から突出することがないように第1、第2のモールド部材14,15に巻き付けられている。前記非使用面とは、第2のモールド部材15における上面15aとは反対側の凹面である。なお、テープ16の幅は、第1、第2のモールド部材14,15間の間隙を密閉する幅であれば適宜変更することができる。
【0024】
前記テープ16は、図示してはいないが帯状の基材と、この基材の片面(モールド部材14,15と対向する面)に形成された粘着層とによって構成されている。前記基材としては、たとえばポリエステルを挙げることができる。前記粘着層を形成する材料は、プラスチックレンズ材料に溶け出したり、重合を阻害したりしないものが望ましく、たとえばシリコーン系の粘着剤などを挙げることができる。このテープ16を一対のモールド部材14,15に巻き付けることによって、内部にレンズ成形用のキャビティ17が形成されたモールド組立体11が組み立てられる。
【0025】
テープ16には、プラスチックレンズ材料をキャビティ17内に注入するために注入口18が形成されている。この注入口18は、後述するプラスチックレンズ用成形型の製造方法を実施することによって形成される。この注入口18の位置は、モールド組立体11毎に決められている。注入口18の位置としては、第1のモールド部材14と第2のモールド部材15との間の中央に設定することができる。この注入口18の位置は、本発明に係るプラスチックレンズ用成形型の製造方法を実施するにあたっては、目標注入口位置として予め設定されている。
【0026】
前記注入補助部材12は、図2および図3に示すように、前記モールド組立体11の外周部に重ねることが可能な形状に形成された取付片21と、この取付片21に一体に形成された補助部材本体22とによって構成されている。この注入補助部材12は、プラスチック材料によって形成されている。前記取付片21は、モールド組立体11の外周面に沿うような曲率で湾曲した板状に形成されている。図2および図3に示す組立状態においては、取付片21は接着剤23によってモールド組立体11に接着されている。
【0027】
前記補助部材本体22は、断面形状が四角形の筒体であって、前記取付片21からモールド組立体11とは反対側に延びるように形成されている。この実施の形態による補助部材本体22は、図3に示すように、モールド組立体11の径方向と平行に延びる平板部22aと、この平板部22aと対向する傾斜部22bとを有している。前記傾斜部22bは、取付片21に向かうにしたがって漸次平板部22aに接近するように傾斜している。また、補助部材本体22における取付片21とは反対側の端部には、フランジ24が設けられている。
【0028】
この補助部材本体22の内部は、溶融状態のプラスチックレンズ材料(図示せず)が流れる通路25になる。前記取付片21には、前記通路25の一端の開口となるスリット状の穴26(図3参照)が形成されている。この穴26は、取付片21をモールド組立体11側から見た状態において、前記平板部22aと平行に延びるように形成されている。
【0029】
注入補助部材12は、後述するプラスチックレンズ用成形型の製造方法を実施することによって、前記穴26が前記注入口18と対向する状態でモールド組立体11に接着される。
【0030】
この実施の形態によるプラスチックレンズ用成形型の製造方法は、詳細は後述するが、図1および図15に示すように、保持ステップS1と、位置決めステップS2と、注入口形成ステップS3と、接着ステップS4とによって実施する。
前記保持ステップS1は、上述したモールド組立体11を前記製造装置1に保持させるステップである。前記製造装置1は、モールド組立体11を保持するクランプ装置31(図4参照)を備えている。このクランプ装置31は、前記モールド組立体11をレンズ面が上下方向を指向する状態で保持する。このクランプ装置31によるモールド組立体11の保持は、モールド組立体11の外周部を複数の保持部材32により径方向の外側から挟むことによって行われる。この実施の形態においては、前記クランプ装置31によって本発明でいう「治具」が構成されている。
【0031】
図4に示すクランプ装置31は、4本の保持部材32と、これらの保持部材32を駆動するアクチュエータ33とを備えている。この実施の形態による保持部材32は、円柱状に形成されている。なお、保持部材32の形状や数量は適宜変更することができる。アクチュエータ33は、水平方向に並ぶ2個のスライダ33a,33bを互いに接近させたり離間させる構成のものである。これらのスライダ33a,33bには、前記保持部材32が2本ずつ取付けられている。
【0032】
このクランプ装置31は、図4に示すように、上方から見てモールド組立体11の軸心Cが予め定めた基準位置Aと一致するようにモールド組立体11を保持する。
また、前記クランプ装置31は、後述する各種の処理装置にモールド組立体11を送ることができるように、搬送装置3に支持されている。この搬送装置3は、クランプ装置31を3方向に移動できるように支持している。前記3方向とは、各種の処理装置の近傍を通る搬送路34(図1参照)に沿う搬送方向と、前記搬送路34と各種の処理装置との間で往復する方向である前後方向と、上下方向とである。図1に示す搬送路34は、同図において最も上に位置する投入位置P1から同図において最も下に位置する取出し位置P2まで延びている。
【0033】
このような搬送装置3は、たとえば図5に示すように、ターンテーブル35を用いて構成することができる。以下においては、ターンテーブル35を使用して構成されたプラスチックレンズ用成形型製造装置1について説明する。
前記ターンテーブル35は、基台36の上で上下方向を軸線方向として回転するテーブル37を備えている。テーブルは、所定の角度ずつ間欠的に回転するように構成されている。なお、このターンテーブル35は、図示してはいないが、テーブル37と一体に回転する各装置に空気圧を供給する空気通路がテーブル37の中心部分で基台36に対して回転できる構成が採られている。
【0034】
前記テーブル37は、前記基台36に回転自在に支持されている。このテーブル37には、図5に示すように、複数のクランプ装置31が設けられている。これらのクランプ装置31は、テーブル37の回転方向に等間隔で並ぶ状態で後述するスライド機構41(図6参照)を介してテーブル37に支持されている。この場合の前記搬送方向は、テーブル37の回転方向になる。このように搬送装置3をターンテーブル35によって構成する場合は、後述する各種の処理装置がターンテーブル35の径方向の外側に配置される。
【0035】
前記スライド機構41は、図6に示すように、前記ターンテーブル35に上下方向へ移動自在に支持された上下方向スライダ42と、この上下方向スライダ42に前記前後方向へ移動自在に支持された前後方向スライダ43とを備えている。前記前後方向スライダ43は、テーブル37からターンテーブル35の径方向の外側に延びるように形成されている。前記クランプ装置31は、前後方向スライダ43の上に装着されている。
【0036】
前記上下方向スライダ42には、この上下方向スライダ42を上下方向に移動させるためのアクチュエータ44が接続されている。このアクチュエータ44は、詳細には図示してはいないが、モータあるいはエアシリンダを動力源として上下方向スライダ42を駆動する構成のものである。このアクチュエータ44は、前記テーブル37または基台36に支持させることができる。また、この上下方向スライダ42と前後方向スライダ43とには、それぞれ移動を規制するためのブレーキ45,46が設けられている。これらのブレーキ45,46は、上下方向スライダ42や前後方向スライダ43をスライドさせるときにのみ制動状態が解除される。
【0037】
前記製造方法の位置決めステップS2は、前記クランプ装置31に保持されたモールド組立体11の目標注入口位置を注入口形成装置5に位置決めするステップである。この位置決めステップS2においては、下記の3種類の位置について位置決めが行われる。3種類の位置としては、モールド組立体11の前記前後方向の位置と、目標注入口位置の上下方向の位置と、目標注入口位置の搬送方向の位置である。前記前後方向の位置決めは、図15に示すように、前記位置決めステップS2の中の前後方向位置決めステップS2Aで実施され、上下方向の位置決めは、上下方向位置決めステップS2Bで実施される。また、搬送方向の位置決めは、搬送方向位置決めステップS2Cで実施される。
【0038】
モールド組立体11の前記前後方向の位置決めは、図1および図6に示すような前後方向位置決め装置51によって行う。
前後方向位置決め装置51は、前記前後方向スライダ43を前記上下方向スライダ42に対して所定の移動量だけ前方(各種の処理装置に接近する方向)または後方に押す構成のものである。前後方向位置決め装置51は、詳細には図示してはいないが、モータあるいはエアシリンダを動力源として前後方向スライダ43を駆動する構成のものである。図6に示す前後方向位置決め装置51は、基台36に支持されており、前後方向スライダ43から下方に延びる受圧片52を前方または後方に押す構成が採られている。なお、この前後方向位置決め装置51は、この実施の形態で示す構成に限定されることはなく、基台36に支持させることができる。
【0039】
前後方向位置決め装置51が前後方向スライダ43を移動させるときの前記移動量は、モールド組立体11が後述する注入口形成装置5と対向する位置に送られたときに、モールド組立体11と注入口形成装置5との間隔が予め定めた間隔D1(図6参照)となるように設定されている。モールド組立体11の外周面と注入口形成装置5とを間隔D1だけ離間させるためには、図6に示すように、クランプ装置31の前記基準位置Aと注入口形成装置5との間隔D2からモールド組立体11の半径rを減算した値が間隔D1となるように前後方向スライダ43を移動させればよい。
【0040】
たとえば、図6に示すモールド組立体11より外径が大きいモールド組立体11の場合は、外周面と注入口形成装置5とが間隔D1だけ離間するように、前後方向位置決め装置51が前後方向スライダ43を注入口形成装置5から離間する方向に移動させる。
前後方向スライダ43に設けられているブレーキ46は、前後方向位置決め装置51による位置決めが行われるときに制動を解除し、位置決め終了後に制動状態になる。
【0041】
前記目標注入口位置の上下方向の位置決めは、図1および図7に示すような上下方向位置決め装置53によって行う。この位置決めを行うにあたっては、モールド組立体11の予め定めた基準点を検出子によって検出し、この検出時の上下方向スライダ42の位置(検出位置)から所定量だけ上下方向スライダ42を移動させることによって行う。この所定量とは、目標注入口位置の上下方向の位置と注入口形成装置5の加工部分の上下方向の位置とが一致するような長さである。
【0042】
前記検出子としては、光学式のものや接触式のものを使用することができる。光学式の検出子は、モールド組立体11を光路が横切るように構成することができる。接触式の検出子は、モールド組立体11の上面あるいは下面に接触するように構成することができる。光学式の検出子を用いる場合の上下方向位置決め装置53の一実施の形態を図7によって説明する。
【0043】
図7に示す上下方向位置決め装置53は、検出子としての発光素子54と受光素子55とを備えており、発光素子54と受光素子55との間の光路56がモールド組立体11を水平方向に横切るように構成されている。発光素子54と受光素子55とは、前後方向移動装置56を介して前記基台36に支持されている。前後方向移動装置56は、発光素子54および受光素子55を図7において実線で示す検出位置と、同図中に二点鎖線で示す退避位置との間で移動させる。発光素子54と受光素子55が前記検出位置に移動することによって、上方から見て光路56がモールド組立体11を横切るようになる。発光素子54と受光素子55が前記退避位置に移動することによって、搬送路34が開放され、発光素子54と受光素子55がモールド組立体11の搬送を妨げることがなくなる。
【0044】
この上下方向位置決め装置53による上下方向の位置の検出は、発光素子54と受光素子55とを前記検出位置に移動させた状態で前記上下方向スライダ42を動作させてモールド組立体11を上昇あるいは下降させて行う。たとえば、モールド組立体11を光路56が遮られるように下方から上方に移動させた場合は、光は、上に位置する第1のモールド部材14に照射された後にテープ16に照射される。光が第1のモールド部材14を透過するときの透過率と、光がテープ16を透過するときの透過率とは大きく異なる。この実施の形態においては、前記光の透過率が大きく変化したときの上下方向スライダ42の上下方向の位置が前記検出位置になる。
【0045】
前記光路56の上下方向の位置と、後述する注入口形成装置5の加工位置との高さの差は、プラスチックレンズ用成形型製造装置1の組立後は変化することがない。このため、この高さの差は予め計測しておくことができる。また、第1のモールド部材14の下端の上下方向の位置と目標注入口位置の上下方向の位置との差は、モールド組立体11毎に決められている。すなわち、目標注入口位置の上下方向の位置と、注入口形成装置5の加工部分の上下方向の位置は、何れも光路56(第1のモールド部材14の下端)の上下方向の位置に基づいて求めることができる。この実施の形態においては、上下方向位置決めステップS2Bにおいて、これらの上下方向の位置に基づいて目標注入口位置の上下方向の位置と前記加工部分の上下方向の位置とが一致するように上下方向スライダ42が上下方向に移動させられる。
【0046】
目標注入口位置の搬送方向の位置決めは、搬送装置3によって行う。すなわち、搬送装置3は、モールド組立体11の目標注入口位置が注入口形成装置5の加工部分と対向したときにクランプ装置31の搬送を停止させる。
この実施の形態においては、この搬送装置3と、上述した前後方向位置決め装置51および上下方向位置決め装置53とによって、本発明でいう「治具用移動装置」が構成されている。
【0047】
前記製造方法の注入口形成ステップS3は、前記モールド組立体11の目標注入口位置に注入口18を形成するステップである。この注入口形成ステップS3を実施する注入口形成装置5は、目標注入口位置にあるテープ16をモールド組立体11の周方向に予め定めた長さだけ切るものである。テープ16を切るにあたっては、刃をテープ16に刺して切断する場合と、レーザー光のエネルギーでテープ16の一部を溶かす場合とがある。
【0048】
刃を使う注入口形成装置5の一実施の形態を図8に示す。図8に示す注入口形成装置5は、テープ切断用カッター61と、このカッター61を支持する支持装置62とによって構成されている。テープ切断用カッター61は、刃61aを備えたものである。
前記支持装置62は、前記カッター61を支持する前後方向移動装置63と、この前後方向移動装置63を支持する周方向移動装置64とによって構成されている。周方向移動装置64は、基台36に支持されている。
【0049】
前記前後方向移動装置63は、テープ切断用カッター61をテープ16に対して進退させるためのものである。この前後方向移動装置63は、詳細には図示してはいないが、モータあるいはエアシリンダを動力源として構成されており、前記カッター61を図8に実線で示す切断位置と、図8(B)中に二点鎖線で示す退避位置との間で移動させる。
前記切断位置は、カッター61の刃61aがテープ16に所定の長さだけ刺さる位置である。退避位置は、カッター61の刃61aが搬送路34を遮ることがないように退避する位置である。
【0050】
前記周方向移動装置64は、テープ16に刺さった刃を移動させてモールド組立体11の周方向に予め定めた長さだけ切るためのものである。この周方向移動装置64は、前記カッター61の移動方向を規制するためのガイドレール65と、このガイドレール65に沿ってカッター61を移動させるアクチュエータ66を備えている。ガイドレール65は、上方から見てモールド組立体11と略同心の円上で延びる円弧状に形成されている。この実施の形態による周方向移動装置64は、注入口を形成するときに前記カッター61および前後方向移動装置63をガイドレール65の一端部65aから他端部65bまで移動させる。
【0051】
注入口形成装置5によってモールド組立体11に注入口18を形成するためには(注入口形成ステップS3を実施するためには)、先ず、カッター61および前後方向移動装置63をガイドレール65の切断開始位置である一端部65aに移動させる。そして、前後方向移動装置63によってカッター61を前記切断位置に移動させる。カッター61が前後方向移動装置63の駆動によりモールド組立体側に進むことによって、刃61aがテープ16に刺さる。次に、カッター61および前後方向移動装置63を周方向移動装置64によってガイドレール65の切断終了位置である他端部65bまで移動させる。この移動によりテープ16に所定の長さの注入口18が形成される。その後、カッター61を前後方向移動装置63により退避位置に移動させることによって、注入口形成ステップS3が終了する。
【0052】
前記製造方法の接着ステップS4は、注入補助部材12を専用の移動装置を用いてモールド組立体11に接着するステップである。注入補助部材12をモールド組立体11に接着するための接着剤23は、注入補助部材12の取付片21またはモールド組立体11の外周面に貼り付けた粘着テープ(図示せず)や、注入補助部材12の取付片21に塗布されたものである。この実施の形態においては、接着剤23を使用して注入補助部材12をモールド組立体11に接着する場合の例を説明する。
この場合は、前記接着ステップS4を実施する以前に、図15に示すように、注入補助部材12に接着剤23を塗布する接着剤塗布ステップS4Aと、接着剤23が塗布された注入補助部材12を前記注入補助部材12用の移動装置に移す移載ステップS4Bとが実施される。
【0053】
この実施の形態による接着ステップS4は、図9および図10に示す接着装置6によって実施される。この接着装置6は、前記接着剤塗布ステップS4Aを実施する接着剤塗布装置71と、前記移載ステップS4Bを実施する移載装置72と、注入補助部材12をモールド組立体11に接着させる接着ステップS4を実施する接着装置本体73とを備えている。
【0054】
接着剤塗布装置71は、図9〜図11に示すように、注入補助部材12の取付片21に上方から接着剤23を塗布する構成が採られている。この実施の形態を採るときに用いる接着剤23は、紫外線硬化型のものである。また、この実施の形態によるプラスチックレンズ用成形型製造装置1は、前記接着剤23が環境光(紫外線)に晒されて不必要に硬化することを防ぐために、ハウジング2(図5参照)で覆われている。このハウジング2の壁は、上述した各装置を外部から視認できるように、紫外線が透過しない透明な材料によって形成されたボード(図示せず)によって形成されている。このハウジング2には、図5に示すように、モールド組立体11を出し入れするための扉2aと、注入補助部材12を装填するための扉2bとが設けられている。
【0055】
注入補助部材12は、基台36上に取付けられた保持装置74に作業者または自動投入装置(図示せず)によって装填される。前記保持装置74は、注入補助部材12をスライド式押圧部材74aとストッパー74bとによって挟んで保持するものである。注入補助部材12は、取付片21が上方を指向する状態で保持装置74に保持される。
接着剤23の塗布は、塗布ノズル75を上方から取付片21に押し付けるようにして行う。塗布ノズル75は、接着剤23が下端から流出する構成のもので、昇降機構76と水平移動装置77とを介して基台36に支持されている。
【0056】
昇降機構76は、接着剤23を塗布するときに塗布ノズル75を図11において実線で示す塗布位置に下降させ、塗布後に同図中に二点鎖線Aで示す待機位置に上昇させる。水平移動装置77は、塗布ノズル75が注入補助部材12の上方に位置する前記待機位置と、図11中に二点鎖線Bで示す側方の後退位置との間で移動させる。このように塗布ノズル75を注入補助部材12の側方に移動させる理由は、後述する移載装置72が動作するときに注入補助部材12が塗布ノズル75に接触することを避けるためである。
【0057】
前記移載装置72は、図9および図10に示すように、前記保持装置74に保持された注入補助部材12を吸着ノズル81によって吸着し、この吸着ノズル81を移動させて所定の位置まで送るものである。移載装置72は、前記吸着ノズル81を有する第1の移載装置本体82と、後述する接着装置本体73を移動させるための第2の移載装置本体83とによって構成されている。
【0058】
第1の移載装置本体82は、吸着ノズル81を前記保持装置74に隣接する下側位置PL(図10参照)と、後述する接着装置本体73と同じ高さである上側位置PUとの間で上下方向に移動させる機能を有している。また、第1の移載装置本体82は、前記下側位置PLから上側位置PUまで上昇する間に吸着ノズル81を90°回転させる機能を有している。この吸着ノズル81を回転させる方向は、吸着ノズル81に吸着された注入補助部材12の取付片21が水平方向(モールド組立体11の外周面と対向する方向)を指向するような方向である。
【0059】
第2の移載装置本体83は、前記上側位置PUに送られた注入補助部材12を接着装置本体73に移すためのものである。この第2の移載装置本体83は、図9および図12に示すように、後述する接着装置本体73を支持するスライダ84を有し、このスライダ84を前記上側位置PUと、モールド組立体11と隣接する接着位置との間で水平に移動させる構成が採られている。
【0060】
接着装置本体73には、図12に示すように、注入補助部材12が挿入可能な正面視コ字状の支持部材85と、この支持部材85と協働して注入補助部材12の前記フランジ24を挟む押圧部材86とを備えている。前記支持部材85は、前記上側位置PUに位置する注入補助部材12が挿入できるように、側方に向けて開く状態で装備されている。前記押圧部材86は、エアシリンダ87に支持されており、このエアシリンダ87による駆動によって注入補助部材12のフランジ24を支持部材85に向けて押圧する。
【0061】
第2の移載装置本体83による注入補助部材12の移載は、前記押圧部材86が支持部材85から離間するように後退した状態で前記スライダ84が前記接着位置から上側位置PUに移動することによって行われる。このようにスライダ84が移動することによって、上側位置PUに保持されている注入補助部材12が支持部材85に挿入される。そして、注入補助部材12が支持部材85に挿入された後、押圧部材86が注入補助部材12のフランジ24を支持部材85に向けて押し、支持部材85と協働して注入補助部材12を挟持する。このように支持部材85と押圧部材86とが注入補助部材12を挟持した後にスライダ84が前記接着位置に移動することによって、移載ステップS4Bが終了する。
【0062】
接着装置本体73は、図9、図10および図13に示すように、前記スライダ84に支持された平行移動装置91と、この平行移動装置91に設けられた前記支持部材85および前記エアシリンダ87と、複数の紫外線照射装置92とによって構成されている。この実施の形態においては、前記平行移動装置91によって、本発明でいう「注入補助部材用移動装置」が構成されている。
【0063】
前記平行移動装置91は、前記支持部材85およびエアシリンダ87を図9において実線で示す接着位置と、同図中に二点鎖線で示す後退位置との間で移動させるものである。前記接着位置は、支持部材85と押圧部材86とによって挟持された注入補助部材12の取付片21がモールド組立体11の外周面に接触する位置である。前記退避位置は、支持部材85と押圧部材86とによって挟持された注入補助部材12の取付片21が搬送路34の外に退避する位置である。
【0064】
接着ステップS4において、モールド組立体11は、前記搬送装置3によって接着装置本体73と対向する位置に送られる。前記支持部材85とエアシリンダ87の上下方向の位置は、支持部材85と押圧部材86とによって挟持された注入補助部材12の前記スリット状の穴26がモールド組立体11の注入口18と対向するように位置付けられている。このため、平行移動装置91による駆動によって前記支持部材85およびエアシリンダ87が前記退避位置から前記接着位置に移動することによって、注入補助部材12がモールド組立体11の正しい位置に接着される。
【0065】
前記平行移動装置91の動力源はモータ(図示せず)である。この実施の形態による平行移動装置91は、前記モータの出力軸の負荷を検出する検出部93を備えている。この検出部93によって検出された前記負荷は、支持部材85およびエアシリンダ87が移動するときの抵抗と連動するように増大する。この実施の形態による平行移動装置91は、前記検出部93によって検出された前記負荷の大きさが予め定めた大きさに達したときにモータを停止させる構成が採られている。すなわち、平行移動装置91は、注入補助部材12が接着時に最適な押圧力でモールド組立体11に押し付けられるように構成されている。ここでいう最適な押圧力とは、注入補助部材12によって押されたテープ16が変形することがなく、しかも、接着剤23がモールド組立体11と取付片21との間で十分に拡がるような押圧力である。
【0066】
前記紫外線照射装置92は、注入補助部材12をモールド組立体11に接着した後に接着剤23に紫外線を照射し、接着剤23を硬化させるためのものである。この実施の形態においては、複数の紫外線照射装置92が接着部分の周辺に配置されている。これらの紫外線照射装置92は、図示してはいないが、基台36に支持させることができる。なお、接着部分より搬送装置3の搬送方向下流側に位置する紫外線照射装置92は、注入補助部材12が接着されたモールド組立体11を搬送するときに注入補助部材12と接触することがないように、昇降装置(図示せず)に支持させることが望ましい。この構成を採ることにより、紫外線照射装置92を搬送路34から上方または下方に退避させることができる。
【0067】
注入補助部材12が接着されたモールド組立体11は、搬送装置3によって取出し位置P2に送られる。この実施の形態においては、搬送装置3がターンテーブル35によって構成されているために、取出し位置P2は投入位置P1と同一位置に設けられている。このため、注入補助部材12が接着されたモールド組立体11は、取出し位置P2に送られた後、クランプ装置31によるクランプ状態が解除されて作業者によってハウジング2の外に搬出される。モールド組立体11が搬出されたクランプ装置31は、新しいモールド組立体11が装填され、再びクランプ状態になる。
【0068】
注入補助部材12が接着されたモールド組立体11を次工程で搬送するにあたっては、注入補助部材12のみを保持して行うことができる。すなわち、モールド組立体11の内部にプラスチックレンズ材料を注入する注入装置(図示せず)においても、注入補助部材12を支持することによって、この注入装置への搬入から搬出までを容易に自動化することができる。
【0069】
この実施の形態によるプラスチックレンズ用成形型の製造方法とプラスチックレンズ用成形型製造装置1においては、モールド組立体11のテープ16に注入口18を形成する注入口ステップS3と、前記モールド組立体11に注入補助部材12を接着する接着ステップS4とを含めてモールド組立体11の投入から接着終了までの間の全てのステップが自動化される。すなわち、モールド組立体11を投入してから注入補助部材12が接着されるまでの全てのステップが作業者による作業を何も必要とすることなく実施される。
【0070】
このため、この実施の形態によれば、注入補助部材12を最適な押圧力でモールド組立体11に接着できるとともに、接着部の品質が均一となるように多数の成形型13を製造することができる。前記最適な押圧力とは、テープ16にしわが形成されることがない押圧力であって注入補助部材12がモールド組立体11から外れることがないような押圧力である。
したがって、この実施の形態によれば、多数のプラスチックレンズ用成形型13を品質が高くかつ品質が均一となるように製造することが可能なプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成形型製造装置を提供することができる。
【0071】
また、モールド組立体11のテープ16に注入口18を形成する注入口形成ステップS3と、前記モールド組立体11に注入補助部材12を接着する接着ステップS4とが無人化されるために、これらのステップで発生する塵埃の量を可及的少なく抑えることができる。このため、この実施の形態によれば、レンズ内に異物が混入し難いプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成形型製造装置を提供することができる。この実施の形態においては、製造装置1の全体がハウジング2によって覆われているから、塵埃がより一層レンズ内に入り難くなる。
【0072】
この実施によるプラスチックレンズ用成形型の製造方法における接着ステップS4は、接着剤塗布ステップS4Aと移載ステップS4Bとを有している。接着剤塗布ステップS4Aにおいては、注入補助部材12が専用の保持装置74に保持された状態で接着剤塗布装置71によって接着剤23が取付片21に塗布される。移載ステップS4Bにおいては、接着剤塗布後の注入補助部材12が前記保持装置74から前記接着装置本体73に移載される。
このため、この実施の形態によれば、注入補助部材12に接着剤23を塗布する工程も自動化することができ、接着剤23の塗布量が最適になるように接着剤23を塗布することができる。したがって、この実施の形態を採ることにより、注入補助部材12をより一層確実にモールド組立体11に接着させることが可能なプラスチックレンズ用成形型の製造方法およびプラスチックレンズ用成型製造装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…プラスチックレンズ用成形型、3…搬送装置、5…注入口形成装置、6…接着装置、11…モールド組立体、14…第1のモールド部材、15…第2のモールド部材、16…テープ、18…注入口、31…クランプ装置、35…ターンテーブル、51…前後方向位置決め装置、53…上下方向位置決め装置、71…接着剤塗布装置、72…移載装置、73…接着装置本体、74…保持装置、85…支持部材、86…押圧部材、87…エアシリンダ、91…平行移動装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるテープが巻き付けられてなるモールド組立体を治具に保持させる保持ステップと、
前記治具を支持した状態で移動させる移動装置によって前記テープの予め定めた目標注入口位置を注入口形成装置に位置決めする位置決めステップと、
前記注入口形成装置によって前記テープにプラスチックレンズ材料の注入口を形成する注入口形成ステップと、
プラスチックレンズ材料を流す通路が内部に形成された注入補助部材を専用の移動装置によって移動させ、前記通路が前記テープの注入口と対向する状態で前記取付片を前記モールド組立体の外周面に接着させる接着ステップとを有することを特徴とするプラスチックレンズ用成形型の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のプラスチックレンズ用成形型の製造方法において、前記接着ステップを実施する以前に、前記注入補助部材を専用の保持装置に保持させた状態で接着剤塗布装置によって接着剤を前記取付片に塗布する接着剤塗布ステップと、
接着剤塗布後の前記注入補助部材を前記保持装置から前記注入補助部材用移動装置に移す移載ステップとを実施することを特徴とするプラスチックレンズ用成形型の製造方法。
【請求項3】
レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるテープが巻き付けられてなるモールド組立体を保持する治具と、
前記テープにプラスチックレンズ材料の注入口を形成する注入口形成装置と、
前記治具を支持した状態で移動させ、前記テープの予め定めた目標注入口位置を前記注入口形成装置に位置決めする治具用移動装置と、
プラスチックレンズ材料を流す通路が内部に形成された注入補助部材を移動させる注入補助部材用移動装置を有し、かつ前記通路が前記テープの注入口と対向する状態で前記取付片を前記モールド組立体の外周面に接着させる接着装置とを備えていることを特徴とするプラスチックレンズ用成形型製造装置。
【請求項4】
請求項3記載のプラスチックレンズ用成形型製造装置において、前記接着装置は、前記注入補助部材を専用の保持装置に保持させた状態で前記取付片に接着剤を塗布する接着剤塗布装置と、
接着剤塗布後の前記注入補助部材を前記保持装置から前記注入補助部材用移動装置に移す移載装置とをさらに備えていることを特徴とするプラスチックレンズ用成形型製造装置。
【請求項1】
レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるテープが巻き付けられてなるモールド組立体を治具に保持させる保持ステップと、
前記治具を支持した状態で移動させる移動装置によって前記テープの予め定めた目標注入口位置を注入口形成装置に位置決めする位置決めステップと、
前記注入口形成装置によって前記テープにプラスチックレンズ材料の注入口を形成する注入口形成ステップと、
プラスチックレンズ材料を流す通路が内部に形成された注入補助部材を専用の移動装置によって移動させ、前記通路が前記テープの注入口と対向する状態で前記取付片を前記モールド組立体の外周面に接着させる接着ステップとを有することを特徴とするプラスチックレンズ用成形型の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のプラスチックレンズ用成形型の製造方法において、前記接着ステップを実施する以前に、前記注入補助部材を専用の保持装置に保持させた状態で接着剤塗布装置によって接着剤を前記取付片に塗布する接着剤塗布ステップと、
接着剤塗布後の前記注入補助部材を前記保持装置から前記注入補助部材用移動装置に移す移載ステップとを実施することを特徴とするプラスチックレンズ用成形型の製造方法。
【請求項3】
レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるテープが巻き付けられてなるモールド組立体を保持する治具と、
前記テープにプラスチックレンズ材料の注入口を形成する注入口形成装置と、
前記治具を支持した状態で移動させ、前記テープの予め定めた目標注入口位置を前記注入口形成装置に位置決めする治具用移動装置と、
プラスチックレンズ材料を流す通路が内部に形成された注入補助部材を移動させる注入補助部材用移動装置を有し、かつ前記通路が前記テープの注入口と対向する状態で前記取付片を前記モールド組立体の外周面に接着させる接着装置とを備えていることを特徴とするプラスチックレンズ用成形型製造装置。
【請求項4】
請求項3記載のプラスチックレンズ用成形型製造装置において、前記接着装置は、前記注入補助部材を専用の保持装置に保持させた状態で前記取付片に接着剤を塗布する接着剤塗布装置と、
接着剤塗布後の前記注入補助部材を前記保持装置から前記注入補助部材用移動装置に移す移載装置とをさらに備えていることを特徴とするプラスチックレンズ用成形型製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−201051(P2012−201051A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69454(P2011−69454)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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