説明

プラスチック廃材の再資源化方法、プラスチック成形体の製造方法およびプラスチック成形体

【課題】非相溶であるポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂(PC+ABS)でも、マテリアルリサイクルにより、多様な用途に応じた特性を有するプラスチック成形体を得ることができ、サーマルリサイクルされるプラスチック廃材を低減し、効率的なプラスチック廃材の再資源化方法を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂のプラスチック廃材の再資源化方法であって、前記アロイ樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とを混合する工程を含む、プラスチック廃材の再資源化方法、ならびに当該再資源化方法を含むプラスチック成形体の製造方法、それで得られたプラスチック成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック廃材の再資源化方法に関する。また、本発明はプラスチック成形体の製造方法およびプラスチック成形体にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、わが国では所得水準の向上に伴ない、エアコンディショナ(本明細書において、以下、「エアコン」とも記載する。)、テレビジョン受信機(本明細書において、以下、「テレビ」とも記載する。)、冷蔵庫、洗濯機などの家電製品、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサなどの情報機器、プリンタ、ファックスなどの事務用機器、その他の各種の家具、文具、玩具などが、一般家庭に高い普及率で備えられるようになっており、家庭生活における利便性は飛躍的に向上しつつある。その結果、これらの家電製品をはじめとする製品の廃棄量も年々増加する傾向にある。従来は、これらの家電製品などの廃材の再資源化は、鉄くずの回収ルートを通して行われる場合が多かった。
【0003】
しかし、近年では、家電製品をはじめとする各種製品の部材の構成材料が変化し、鉄をはじめとする金属からなる部材が減少し、プラスチックからなる部材の割合が増加する傾向にある。プラスチックは、鉄をはじめとする金属よりもデザインの自由度が大きく、構成成分の調製や添加剤の使用などにより金属では実現の難しい種々の特性を発揮し、軽量で、耐久性が高いなどの多くの利点を有するためである。
【0004】
近年の家電製品をはじめとする各種製品の廃材は、各種構成部材の材質構成が複雑化しており、鉄や銅をはじめとする有価金属からなる部材の割合が少なくなり、有価性が低く、かつ従来の処理方法では多大の手間と経費がかかるプラスチックからなる部材(以下、「プラスチック部材」とも言う。)の割合が多くなっている。また、従来の鉄くずの回収ルートでは、このような廃材を再資源化しても採算が取れないため、対応が難しい状況になりつつある。
【0005】
これらのプラスチック部材は、原油などの埋蔵化石燃料を基礎原料として合成されるものが多く、資源の有効活用の観点から、これらのプラスチック部材の再資源化の推進が近年強く要求されてきている。
【0006】
また、原油などの埋蔵化石燃料の燃焼による二酸化炭素および硫黄酸化物の放出による地球温暖化、酸性雨といった環境破壊、塩素化合物を含むプラスチックの焼却処理によるダイオキシンの生成、飛散といった環境汚染、さらには嵩の大きいプラスチックを含む廃材の増大によるゴミ埋立処理場の不足といった問題が発生しており、これらを抑制するという観点からも、プラスチックからなる廃材の再資源化が、重要かつ緊急に解決すべき課題となりつつある。
【0007】
上記の状況を受けて、2001年4月に家電リサイクル法が施行された。家電リサイクル法においては、エアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機の家電製品4品目のリサイクルが義務付けられ、それぞれの製品の再商品化率については、エアコン60%以上、テレビ55%以上、冷蔵庫50%以上、洗濯機50%以上の法定基準値が定められている。
【0008】
そして、上記の家電リサイクル法の施行を受けて、プラスチック部材の廃棄物(以下、「プラスチック廃材」とも言う。)の回収は進みつつある。回収されたプラスチック廃材の再資源化方法としては、プラスチック廃材を燃料として使用する、いわゆるサーマルリサイクルに関する方法が従来から多く活用されている。しかし、このような方法によれば、燃焼による炭酸ガスの発生などの問題があるため、社会的要請に充分に沿った方法であるとはいえない。
【0009】
そこで、回収されたプラスチック廃材から、たとえば手作業で解体し、プラスチックの系統ごとにプラスチック部材を分離して、それらのプラスチック部材を再度、製品の部材またはその原料に加工して使用するプラスチック廃材の再資源化方法が提案されている。このような再資源化方法は、上記のサーマルリサイクルと対比して、「マテリアルリサイクル」と言われている。
【0010】
上記のようにしてプラスチックの系統ごとに分離されたプラスチック部材の中でも、プラスチックからなる部材は、加熱溶融して再度成形することにより比較的容易にマテリアルリサイクルすることが可能である。そのため、現在、プラスチック廃材のマテリアルリサイクルの比率を高めることを目的として、プラスチック廃材のマテリアルリサイクルによる再資源化方法の研究開発が、各方面で多大な努力を払って行なわれている。
【0011】
しかしながら、プラスチック廃材、特に、家電製品および事務用機器などに使用されていたプラスチック廃材は、厳しい環境で長期間使用されることが多いため、廃材となった時点ですでに特性が低下しており、変色または退色などの外観上の特性の低下だけでなく、強度、柔軟性などの物性も低下し、耐久性に乏しい材料になっていることが多い。そのため、プラスチック廃材は、要求特性の高いプラスチック部材に用いられるプラスチックのバージン材の代替とはならず、要求特性の低いプラスチック部材の原料として用いられることが多い。ここで、本明細書において、「バージン材」とは、未使用の樹脂組成物のことを意味するものとする。また、本明細書において、特性の低下したプラスチック廃材を、要求特性の高いプラスチック部材に用いられるバージン材の代替用途ではなく、要求特性の低いプラスチック部材の原料として用いることを、「カスケードリサイクル」と記載するものとする。
【0012】
現在のところ、プラスチック廃材のマテリアルリサイクルとしては、このようなカスケードリサイクルが主流となっている。そのため、プラスチック廃材から再生されるプラスチック成形体の用途が限られてしまい、サーマルリサイクルされているプラスチック廃材が大量にあるという問題がある。
【0013】
このような問題を克服するため、プラスチック廃材からのマテリアルリサイクルにより得られるプラスチック成形体の特性を向上させ、要求特性の高いプラスチック部材としても使用可能な水準に到達させるべく、多くの研究開発がなされている。たとえば、プラスチック廃材(マテリアルリサイクル材料)にバージン材を混合することによって特性を保持する方法が、数多く提案されている(たとえば、特開2000−159900号公報(特許文献1)、特開2001−26719号公報(特許文献2)、特開2003−160724号公報(特許文献3)などを参照。)。しかしながら、特許文献1〜3に開示されたようなマテリアルリサイクル方法においては、プラスチック廃材よりも多量のバージン材を混合する必要がある場合が多く、資源循環型社会に対応しているとは言い難い。
【0014】
また、芳香族ポリカーボネート樹脂とABS樹脂のアロイ樹脂のマテリアルリサイクル方法が提案されている(たとえば、特開2007−238817号公報(特許文献4)を参照。)。しかしながら、特許文献4に開示されたようなマテリアルリサイクル方法においては、混合されるものがゴム成分などの添加剤のみであるために、母材である芳香族ポリカーボネート樹脂とABS樹脂のアロイ樹脂の劣化度合いが大きければ、バージン材料同等の特性までに回復させることは難しいといった課題がある。
【0015】
さらに、プラスチック廃材(廃芳香族ポリカーボネート樹脂)を、エステル交換反応によりモノマー化し原料再生を行うケミカルリサイクル方法についても提案がなされている(たとえば、特開2003−171324号公報(特許文献5)を参照。)。しかしながら、本手法では、モノマー化に必要な設備が大がかりとなり多大なコストを要することと、ポリカーボネートとその他の熱可塑性樹脂とのアロイ材への適用は難しいといった課題がある。
【特許文献1】特開2000−159900号公報
【特許文献2】特開2001−26719号公報
【特許文献3】特開2003−160724号公報
【特許文献4】特開2007−238817号公報
【特許文献5】特開2003−171324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のように、市場から回収されたプラスチック廃材を主原料とするマテリアルリサイクルによる再資源化方法であって、得られるプラスチック成形体の用途が広く、プラスチック部材またはその原料としても使用可能な特性を有する成形体を得る方法が望まれている。また、効率的かつ低コストのプラスチック廃材の再資源化方法の開発が強く望まれている。しかし、そのような再資源化方法は未だ知られていない。
【0017】
また、最近は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(Field Emission Display:FED)、電子ペーパーなどのフラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)が身の回りの製品に搭載されてきており、たとえば、テレビ、パーソナルコンピュータ、モニター、ビデオ、カメラ、携帯電話、カーナビゲーション、情報携帯端末、小型ゲーム機など、様々な分野で幅広く利用されてきている。FPDの市場規模はその省電力、省スペース、軽量といった特性から、近年の高度情報化社会の進展に伴い急激に増加している。これに伴い、これらFPDの廃棄量も年々増加していくことが予想され、リサイクル活動などの環境活動において、リサイクル性向上等の要求が強くなってきている。
【0018】
ところが、これらFPDは比較的新しい製品であること、また、現状は比較的廃棄物の量が少ないこともあり、ブラウン管テレビのようなリサイクルは実用化されていない。廃棄されたFPDは廃棄物の処理施設で破砕されて、シュレッダーダストとともに埋め立て処理あるいは焼却処理されているのが現状である。
【0019】
加えて液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどに代表される薄型テレビにおいては、近い将来、家電リサイクル法の適用品目として追加される動きもある。この場合、資源の有効活用や再商品化率向上などの観点から、当該製品のキャビネットなどに使用されているプラスチック廃材の再資源化方法の開発についても強く望まれている。
【0020】
たとえば、薄型テレビの一例である液晶テレビのキャビネットにおいては、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とからなるアロイ樹脂(PC+ABS樹脂)がよく使用されている。当該アロイ樹脂は耐熱性、自消性、成形性に富み、機械的特性も非常に優れた材料の1つである。その反面、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とは基本的に非相溶であるため、たとえば射出成形の際の熱エネルギーにより、ポリカーボネート樹脂中に分散されていたアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂が凝集を起こし、機械的特性の低下を引き起こすことがある。リサイクルを考えた場合、少なくとも射出成形を2回(バージン材料の成形と廃材の成形)行うことから、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂がより凝集し、機械的特性の低下を引き起こし、これがポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とからなるアロイ樹脂(PC+ABS樹脂)のリサイクル性を阻害する一要因ともなっている。この現象は、ポリカーボネート樹脂とポリスチレン樹脂とのアロイ材(PC+PS)においても同様である。
【0021】
また、ポリカーボネート樹脂は、炭酸エステル構造を有しており、化学構造上加水分解を起こしやすく、特に、リン酸エステル系難燃剤との組み合わせにおいてはその性質が顕著となるため、バージン材料同等に特性を改善するのは難しい材料である。
【0022】
上記の現状に基づき、本発明の課題は、非相溶であるポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂(PC+ABS樹脂)でも、マテリアルリサイクルにより、多様な用途に応じた特性を有するプラスチック成形体を得ることができ、サーマルリサイクルされるプラスチック廃材を低減し、効率的なプラスチック廃材の再資源化方法を提供することである。
【0023】
さらに、本発明の別の課題は、プラスチック廃材から、マテリアルリサイクルにより、多様な用途に応じた特性を有するプラスチック成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂(PC+ABS樹脂)の廃材のみではバージン材料に比して物性が大きく低下する点、ポリカーボネート樹脂が化学構造上リサイクルしにくい点、およびポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂が非相溶である点に着目し、PC+ABS樹脂になじみ易い別の母材(樹脂)を混合すること、およびポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂の両方になじみ易い成分を添加することにより、廃材の物性低下を抑制し、かつ、低下した物性を回復させることにより、上記課題を解決し得るとの着想を得、プラスチック廃材の再資源化方法を開発すべく物性についての実験を行ない鋭意検討を重ねた。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0025】
本発明のプラスチック廃材の再資源化方法は、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂のプラスチック廃材の再資源化方法であって、前記アロイ樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とを混合する工程を含むことを特徴とする。
【0026】
本発明のプラスチック廃材の再資源化方法において、アロイ樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂との混合率は、アロイ樹脂およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂の合計重量を100とした場合に、アロイ樹脂が50以上となる割合であることが、好ましい。
【0027】
また本発明のプラスチック廃材の再資源化方法において、アロイ樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂との混合において、アロイ樹脂およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂の合計重量を100としてアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂が50以上となる割合である場合に、アロイ樹脂およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂の両者になじみ易い成分を添加することが好ましい。ここにおいて、前記アロイ樹脂およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂の両者になじみ易い成分は、内部にゴム成分、外殻にアロイ樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂との相溶成分を構成した、コア部およびシェル部を有するコアシェル構造を備えるものであることが好ましい。またこの場合、前記コア部の成分は、ブタジエン系、アクリル系、シリコーン−アクリル複合系から選ばれる少なくともいずれかであり、前記シェル部の成分は、アクリル系、アクリロニトリル−スチレン系から選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。
【0028】
本発明のプラスチック廃材の再資源化方法におけるアロイ樹脂に混合させるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂は、バージン材、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂がプラスチック廃材から得られたもののいずれであってもよい。
【0029】
また本発明のプラスチック廃材の再資源化方法において、アロイ樹脂の廃材およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂の廃材の少なくともいずれかが、家電製品と、OA機器と、電気電子部品とからなる群より選ばれる少なくともいずれかであるか、または、フラットパネルディスプレイが搭載された製品の部品であることが好ましい。また、フラットパネルディスプレイが搭載された製品は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイおよび電子ペーパーから選ばれる少なくともいずれかであることが、好ましい。
【0030】
本発明はまた、上述した本発明のプラスチック廃材の再資源化方法を含む、プラスチック成形体の製造方法についても提供する。
【0031】
本発明はさらに、上述した本発明のプラスチック成形体の製造方法により製造された、プラスチック成形体についても提供する。
【0032】
本発明のプラスチック成形体は、マテリアルリサイクルされる製品に用いられることが好ましい。このマテリアルリサイクルされる製品は、家電製品と、OA機器と、電機電子部品とからなる群より選ばれる少なくともいずれかであるか、フラットパネルディスプレイが搭載された製品の部品であることが好ましい。また、フラットパネルディスプレイが搭載された製品は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイおよび電子ペーパーから選ばれる少なくともいずれかであることが、好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明のプラスチック廃材の再資源化方法によれば、本来はマテリアルリサイクルが難しいポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂で形成されたプラスチック廃材を効率よくマテリアルリサイクルすることができ、多様な用途に応じた特性を有するプラスチック成形体を得ることが可能となり、サーマルリサイクルされるプラスチック廃材を低減することができる。
【0034】
また、本発明のプラスチック廃材の再資源化方法によれば、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂(PC+ABS樹脂)で形成されたプラスチック廃材にアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)を混合する。一般的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)は、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂(PC+ABS樹脂)に比して樹脂溶融温度が低いため、これら混合物を射出成形する際に樹脂溶融温度を下げられるため、成形加工時の省エネルギー化につながる。さらに、樹脂溶融温度を下げることにより成形時間の短縮が可能となるため、生産性向上にも寄与できる。
【0035】
そして、本発明のプラスチック成形体の製造方法により、プラスチック廃材を主原料とするマテリアルリサイクルを行ない、多様な用途に適した特性を有するプラスチック成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
<プラスチック廃材>
本発明のプラスチック廃材の再資源化方法は、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂のプラスチック廃材(プラスチック製品の廃棄物)を再資源化の対象とする。
【0037】
本発明のプラスチック廃材の再資源化方法におけるプラスチック廃材としては、家電製品と、OA機器と、電気電子部品とからなる群より選ばれる少なくともいずれかの廃棄物であることが好ましい。なお、上記家電製品としては、エアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機などからなる群から選ばれる製品であり、特に、液晶テレビ、複写機などに使用される難燃剤を含有するプラスチックからなる部材も含まれる。使用済み製品として廃棄された液晶テレビ、複写機のキャビネットから回収されたプラスチックの材質としては、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂からなるアロイ樹脂が使用されているケースが多い。
【0038】
また、本発明のプラスチック廃材の再資源化方法は、最近、拡大基調にあるフラットパネルディスプレイ(FPD)が搭載された製品(FPD製品)から回収されるプラスチック廃材にも適用でき、効率的なプラスチック廃材の再資源化を図ることができる。この場合、フラットパネルディスプレイ製品は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイおよび電子ペーパーから選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。
【0039】
なお、本明細書において、「プラスチック」または「熱可塑性樹脂」と呼称する際には、狭義の熱可塑性樹脂の組成物のみを示すのではなく、熱可塑性エラストマー組成物および高分子組成物なども含む広い意味での熱可塑性樹脂の組成物を示すものとする。
【0040】
<使用済み液晶テレビキャビネットの再資源化方法の手順>
図1は、本発明のプラスチック廃材の再資源化方法の好ましい一例を示すフローチャートである。以下、プラスチック廃材が具体的に使用済み製品である液晶テレビのキャビネットである場合を例に挙げ、図1を参照しながら、本発明のプラスチック廃材の再資源化方法について詳細に説明する。当該液晶テレビのキャビネットは、たとえば、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂(PC+ABS樹脂)やアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)などから形成される。
【0041】
まず、使用済み液晶テレビからキャビネット(材質はポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂(PC+ABS樹脂)およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂))を回収する(ステップS1)。キャビネットは通常、複数本のビスで固定されているため、ドライバーを用いてビスを外すことにより筐体を取り外すことができる。
【0042】
ここで、図1には、当該工程で、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂の廃材(PC+ABS廃材)およびおよびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂の廃材(ABS廃材)の両方を回収する場合を例に挙げているが、当該工程では再資源化の対象となるPC+ABS廃材が少なくとも回収されていればよく、当該工程でABS廃材を回収せず、後述する混合工程(ステップS8)ではアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂のバージン材を混合させるようにしてもよい。
【0043】
次に、キャビネットとは異なる材質のもの(「異材質物」と称する)を除去する(ステップS2)。異材質物としては、たとえば、キャビネットに取り付けられたシール、ロゴバッチ、振動防止用テープ、コード結束用バンドなどが挙げられる。また前部のキャビネットには塗装が施されていることが多いが該塗膜も異材質物である。これら異材質物の混入は物性低下要因となるため除去することが好ましい。キャビネットから異材質物を除去する方法としては、切削、研磨などの機械的方法や、薬品を用いた除去など、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜使用することができる。
【0044】
次に、キャビネットを10mm程度に破砕する(ステップS3)。その後、キャビネット破砕物を洗浄し、付着している汚れ、埃、異物などを除去する(ステップS4)。該キャビネット破砕物を洗浄する方法は、破砕した樹脂同士をこすり合わせることにより異物などを除去する乾式方法や、水洗浄などの湿式方法が挙げられるが、その方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜使用することができる。
【0045】
次に、洗浄したキャビネット破砕物を乾燥する(ステップS5)。ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂(PC+ABS樹脂)は、比較的加水分解を起こしやすい樹脂であるため、乾燥を行うことが好ましい。乾燥条件としては、たとえば、80℃で4〜6時間程度であるが特に限定はされない。また、乾燥設備についても、恒温器、除湿乾燥機、熱風乾燥機などが挙げられるが、これについても特に限定はされない。
【0046】
次に、乾燥後の樹脂材料(PC+ABS樹脂およびABS樹脂)について、少量を抜き取りロット検査を行う(ステップS6)。これにより、プラスチック廃材(PC+ABS廃材、ABS廃材)の特性を把握し、特性改善処方を組むことが可能となる。検査項目としては、たとえば、引張強度、引張伸び、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度などの機械物性や流動特性、難燃特性などが挙げられる。なお、ABS樹脂については、上述したように廃材であってもバージン材であってもどちらでもよく、バージン材を用いる場合には、PC+ABS廃材のみロット検査を行えばよい。
【0047】
次に、ロット検査の結果により、特性改善処方を決定する(ステップS7)。ここにおいては、たとえば、PC+ABS樹脂とABS樹脂とを混合する際の混合比率、添加する相溶化剤の種類および量などを決定する。次に、決定した特性改善処方に基づいて、PC+ABS樹脂(PC+ABS廃材)とABS樹脂(ABS廃材またはABS樹脂のバージン材)、相溶化剤(PC+ABS樹脂、ABS樹脂の両方になじみ易い成分)などを混合する(ステップS8)。
【0048】
PC+ABS樹脂とABS樹脂は比較的なじみ易いため、PC+ABS樹脂とABS樹脂とを混合してリサイクルするようにすることで、PC+ABS樹脂単体でリサイクルするよりも機械物性、特に衝撃特性が向上するため有効な手法である。たとえば、PC+ABS廃材のリサイクルに際し、ABS樹脂をPC+ABS廃材の増量剤として用いることができる。また、ABS樹脂のグレードによっては、PC+ABS樹脂用途としての使用も可能である。
【0049】
PC+ABS樹脂とABS樹脂の混合比率については、両者の重量を100として、PC+ABS樹脂が50以上であれば、特に相溶化剤を添加する必要性がない場合があるが、PC+ABS樹脂が50未満の場合は、相溶化剤を添加することが好ましい。PC+ABS樹脂が50未満の場合は、PC+ABS樹脂とABS樹脂の相溶性が悪くなり、衝撃特性が大きく低下する虞があるためである。
【0050】
また、相溶化剤の種類については、内部(コア部)にゴム成分、外殻(シェル部)にPC+ABS樹脂とABS樹脂の両方になじみ易い成分を構成したコアシェル構造のものが好ましい。詳しくは、前記コア部の成分は、ブタジエン系、アクリル系、シリコーン−アクリル複合系から選べられる少なくともいずれかであり、前記シェル部の成分は、アクリル系、アクリロニトリル−スチレン系から選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。アクリル系、アクリロニトリル−スチレン系はポリカーボネート樹脂とABS樹脂の両方になじみ易いが、アクリル系は特にポリカーボネート樹脂と、アクリロニトリル−スチレン系は特にABS樹脂となじみ易いため、PC+ABS樹脂とABS樹脂の混合でポリカーボネート樹脂成分が多い場合はアクリル系、ABS樹脂が多い場合にはアクリロニトリル−スチレン系を選択することが好ましい。
【0051】
相溶化剤として市販品を用いても勿論よく、具体的には、メタブレンC−223A(三菱レイヨン株式会社製)、C−323A(三菱レイヨン株式会社製)、E−901(三菱レイヨン株式会社製)、W−450A(三菱レイヨン株式会社製)、S−2001(三菱レイヨン株式会社製)、S−2006(三菱レイヨン株式会社製)、SRK−200(三菱レイヨン株式会社製)、SX−006(三菱レイヨン株式会社製)などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0052】
次に、PC+ABS樹脂(PC+ABS廃材)とABS樹脂(ABS廃材またはABS樹脂のバージン材)、相溶化剤などの混合物を加熱溶融し、ペレット状の成形用樹脂原料を製造する(ステップS9)。ペレット製造は、押出成形機により行なうことができる。押出成形機は、特に限定されるものではなく、たとえば単軸押出成形機、二軸押出成形機あるいは多軸式押出成形機などを好ましく使用することができる。
【0053】
上記混合物をペレット状に成形してマテリアルリサイクルする場合には、押出成形した後に、シートカット、ストランドカット、ホットエアカット、アンダーウォーターカットなどの方法により造粒することができる。また、後で射出成形により特定の形状に成形する場合には、樹脂原料の供給が円滑に行なえ、大量に処理できる点で、アンダーウォーターカット法が特に好ましい。
【0054】
ペレットの粒径は1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましい。また、ペレットの粒径は8mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。ペレットの粒径が1mm未満の場合には、浮遊するため作業性が低下しやすく、ペレットの粒径が8mmを超えると、成形機のシリンダ内で充分に溶融しないため、均一な混練が困難になりやすい。
【0055】
上述した成形用樹脂原料の形状は、ペレット状に限定されず、たとえばシート状、フィルム状、パイプ状などの形態とすることができる。したがって、押出成形機の種類、使用の態様あるいは求められる特性などから適宜決定することができる。また、上述した成形用樹脂原料には、熱安定剤や光安定剤、帯電防止剤、滑剤、フィラ、銅害防止剤、抗菌剤、着色剤、難燃剤などの添加剤を、必要により、本発明の効果を害しない範囲の量で添加することができる。
【0056】
なお、プラスチック部材の製造工程を簡略化するため、ペレット状などに成形することなく、破砕したプラスチックなどを射出成形機にそのまま投入し、プラスチック部材を直接作製することもできるが、PC+ABS樹脂の場合、押出加工によるせん断力により、ポリカーボネート樹脂の中にアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂をほどよく分散させることができる観点から、さらには、相溶化剤などの添加剤を混合する場合は、押出加工を行う方が均一にブレンドできるという観点から、押出加工によるペレット製造を行うことが好ましい。
【0057】
次に、ペレット状の樹脂原料を射出成形機で加熱溶融し、プラスチック成形体を製造する(ステップS10)。射出成形機としては、特に限定されるものではないが、たとえばスクリューインライン式射出成形機またはプランジャ式射出成形機などが挙げられる。
【0058】
<プラスチック成形体の製造方法、プラスチック成形体>
本発明は、上述した本発明のプラスチック廃材の再資源化方法を含むプラスチック成形体の製造方法についても提供する。本発明のプラスチック成形体の製造方法における上述した本発明のプラスチック廃材の再資源化方法以外の工程は、適宜公知の工程を組み合わせることができ、特に制限されるものではない。さらに、本発明は、上述した本発明のプラスチック成形体の製造方法により製造されたプラスチック成形体についても提供する。
【0059】
本発明のプラスチック成形体は、マテリアルリサイクルされる製品に用いられるものであることが好ましく、この場合、マテリアルリサイクルされる製品は、家電製品と、OA機器と、電機電子部品とからなる群より選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。またマテリアルリサイクルされる製品は、フラットパネルディスプレイが搭載された製品の部品であってもよく、この場合、フラットパネルディスプレイが搭載された製品は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイおよび電子ペーパーから選ばれる少なくともいずれかであることが、好ましい。
【0060】
以下、実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
<実験例1>
回収した液晶テレビ(製造日より5年経過品)を手作業により解体して、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂(PC+ABS樹脂)の廃材(PC+ABS廃材)として、筐体キャビネット(サイコロイC6600、SABICイノベーティブプラスチックス製)の廃棄物を回収した。その後、ラベルなどの付着物を除去し、破砕した後、水洗浄を行った。一方、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂はバージン材を用意した(テルランGP35、BASF製)(以下、「ABSバージン材」と呼称する。)。次に、PC+ABS廃材およびABSバージン材を除湿乾燥機((株)松井製作所製)にて乾燥後、相溶化剤(メタブレンC−223A、三菱レイヨン製)とともに所定の比率で混合し(実施例1〜6、比較例1〜4)、その後、スクリュー径25mm、L/D=26の二軸溶融混練押出機((株)テクノベル製))を用いて、設定温度230℃で加熱溶融混練するとともに押出成形し、ペレタイザーを用いてカットし、ペレット状の成形用樹脂原料を得た。
【0062】
続いて、この成形用樹脂原料廃材原料を10トン射出成形機(日精樹脂工業(株)製)のホッパーに投入し、成形温度230℃、金型温度40℃、冷却時間30秒の射出成形条件で、ASTM準拠の物性測定用試験片を作製した。また、面衝撃強度測定のために、厚み3mmの物性測定用試験片も作製した。そして、これら各試験片を用いて、後述する引張強度、伸び、曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度、面衝撃強度を測定した。
【0063】
<物性測定方法>
(1)引張強度(MPa)および伸び(%)
JIS K7113の規定に準拠して、引張破断点降伏強さ、引張破断点伸びとしてそれぞれ測定した。なお、「引張強度」、「伸び」とは、材料を一定の速度で引張、応力と歪との関係を求めるもので、伸長された材料は、はじめに弾性変形をし、その後塑性変形をはじめ、極大強度に達し、さらに降伏点を超えるとネッキングを生じ、破断に至る。応力の一番大きいところ(最大点応力)を「引張強度」、破断したときの歪(破断点伸び)を「伸び」としている。
【0064】
(2)曲げ強度(MPa)および曲げ弾性率(MPa)
JIS K7203の規定に準拠してそれぞれ測定した。なお、「曲げ強度」、「曲げ弾性率」とは、2点で支えた試験片の中心に応力をかけることにより、応力と歪との関係を求めるものである。応力の一番大きいところを「曲げ強度」、応力−歪曲線の傾きを「曲げ弾性率」としている。
【0065】
(3)ノッチ付アイゾット衝撃強度(KJ/m2
JIS K7110の規定に準拠して測定した。
【0066】
(4)面衝撃強度(cm)
JIS K7211の規定に準拠して測定した。
【0067】
実験例1の物性測定結果を表1(実施例1〜6)および表2(比較例1〜4)に示す。表1、2から、PC+ABS廃材とABSバージン材の重量を100として、PC+ABS廃材が50および75の場合は、特に相溶化剤を添加しなくても顕著な物性低下は見られず良好である。一方、PC+ABS廃材とABSバージン材の重量を100として、PC+ABS廃材が25の場合は、相溶化剤が無添加ではアイゾット衝撃強度の顕著な低下が見られた。これに対し、相溶化剤を添加すると該強度の大幅な向上が見られた。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
<実験例2>
次に、実験例1で用いたABSバージン材を、エアコンの筺体部品で用いられていたABS廃材(製造日より5年経過品)(テルランGP35、BASF製)に置き換え、ABS廃材をPC+ABS廃材と同様に洗浄まで行った以外は、実験例1と同一の実験を行った(実施例7〜12、比較例5〜8)。実験例2の物性測定結果を表3(実施例7〜12)および表4(比較例5〜8)に示す。結果、実験例1と同様な結果が得られた。
【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
本発明のプラスチック廃材の再資源化方法は、家電製品やOA機器や電気・電子部品から回収されたプラスチック廃材の再資源化方法に限定されるものではなく、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂(PC+ABS樹脂)により構成される部材を備える製品であれば、どのような製品にも好適に適用可能である。
【0074】
今回開示された実施の形態および実験例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のプラスチック廃材の再資源化方法によれば、本来はマテリアルリサイクルが難しいポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂(PC+ABS樹脂)で形成されたプラスチック廃材を効率よくマテリアルリサイクルすることができ、多様な用途に応じた特性を有するプラスチック成形体を得ることが可能となり、サーマルリサイクルされるプラスチック廃材を低減することができる。
【0076】
また、本発明のプラスチック廃材の再資源化方法によれば、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂(PC+ABS樹脂)で形成されたプラスチック廃材にアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)を混合する。一般的にはポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂(PC+ABS樹脂)に比してアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)は樹脂溶融温度が低いため、これら混合物を射出成形する際に樹脂溶融温度を下げられるため、成形加工時の省エネルギー化につながる。さらに、樹脂溶融温度を下げることにより成形時間の短縮が可能となるため、生産性向上にも寄与できる。
【0077】
そして、本発明のプラスチック成形体の製造方法により、プラスチック廃材を主原料とするマテリアルリサイクルを行ない、多様な用途に適した特性を有するプラスチック成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明のプラスチック廃材の再資源化方法の好ましい一例を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とのアロイ樹脂のプラスチック廃材の再資源化方法であって、前記アロイ樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂とを混合する工程を含む、プラスチック廃材の再資源化方法。
【請求項2】
前記アロイ樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂との混合率は、アロイ樹脂およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂の合計重量を100とした場合に、アロイ樹脂が50以上となる割合である、請求項1に記載のプラスチック廃材の再資源化方法。
【請求項3】
前記アロイ樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂との混合において、アロイ樹脂およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂の合計重量を100としてアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂が50以上となる割合である場合に、相溶化剤を添加する、請求項1に記載のプラスチック廃材の再資源化方法。
【請求項4】
前記相溶化剤が、内部にゴム成分、外殻にアロイ樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂との相溶成分を構成した、コア部およびシェル部を有するコア−シェル構造を備える、請求項3に記載のプラスチック廃材の再資源化方法。
【請求項5】
前記コア部の成分は、ブタジエン系、アクリル系、シリコーン−アクリル複合系から選ばれる少なくともいずれかであり、前記シェル部の成分は、アクリル系、アクリロニトリル−スチレン系から選ばれる少なくともいずれかである、請求項4に記載のプラスチック廃材の再資源化方法。
【請求項6】
前記アロイ樹脂に混合させるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂がバージン材である、請求項1〜5のいずれかに記載のプラスチック廃材の再資源化方法。
【請求項7】
前記アロイ樹脂に混合させるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂がプラスチック廃材から得られたものである、請求項1〜5のいずれかに記載のプラスチック廃材の再資源化方法。
【請求項8】
前記アロイ樹脂の廃材およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂の廃材の少なくともいずれかが、家電製品と、OA機器と、電気電子部品とからなる群より選ばれる少なくともいずれかである、請求項7に記載のプラスチック廃材の再資源化方法。
【請求項9】
前記アロイ樹脂の廃材およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂の廃材の少なくともいずれかが、フラットパネルディスプレイが搭載された製品の部品である、請求項7に記載のプラスチック廃材の再資源化方法。
【請求項10】
前記フラットパネルディスプレイが搭載された製品が、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイおよび電子ペーパーから選ばれる少なくともいずれかである、請求項9に記載のプラスチック廃材の再資源化方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のプラスチック廃材の再資源化方法を含む、プラスチック成形体の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のプラスチック成形体の製造方法により製造された、プラスチック成形体。
【請求項13】
マテリアルリサイクルされる製品に用いられる、請求項12に記載のプラスチック成形体。
【請求項14】
マテリアルリサイクルされる製品が、家電製品と、OA機器と、電機電子部品とからなる群より選ばれる少なくともいずれかである、請求項13に記載のプラスチック成形体。
【請求項15】
マテリアルリサイクルされる製品が、フラットパネルディスプレイが搭載された製品の部品である、請求項13に記載のプラスチック成形体。
【請求項16】
フラットパネルディスプレイが搭載された製品が、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイおよび電子ペーパーから選ばれる少なくともいずれかである、請求項15に記載のプラスチック成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−46894(P2010−46894A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212716(P2008−212716)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】