説明

プラスチック成形品及びその製造方法

【課題】優れた高い耐摺動性、耐摩耗性を確保しつつ、視認性に優れた透明性を有し、更には自然環境に配慮した分解性を有するプラスチック成形品を提供する。
【解決手段】機能面1と、非機能面2とを有しており、少なくとも前記機能面1の部位の主材料としては石油原料樹脂を、少なくとも前記非機能面の部位の主材料としては、バイオマス原料樹脂を用いたプラスチック成形品を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能面と非機能面とを有するプラスチック成形品の樹脂材料構成についてのものである。
【背景技術】
【0002】
例えば歯車やプーリー等に用いられる駆動伝達系プラスチック成形品は、駆動伝達相手部品との接触面における摺動性や耐摩耗性に関して高い機能が要求されるものである。
図1に駆動伝達装置100の概略図を示す。なお、図1(a)は成形品組付け前の状態を示し、図1(b)は成形品組付け後の状態を示す。これにおいては、駆動歯車4と対接する、いわゆる機能面1を有する機構部品に関し、通常、例えばポリアセタール等の摺動性や耐摩耗性の優れた結晶性樹脂が用いられている。
【0003】
一方、近年の地球環境問題を考慮して、自然界において分解可能な材料を用いた機構部品についての技術の提案もなされており、例えば、電動パワ−ステアリング装置用として、生分解性樹脂で歯車を形成した技術が開示されている(下記特許文献1参照。)。
しかしながら、生分解性樹脂のみを用いたのでは、歯面の摺動摩擦に対する充分な耐久性が確保できないため、ガラス繊維等の充填材を、例えば10重量%以上程度含有させることが必要であった。
【0004】
ところで近年、画像形成装置の分野においては高画質安定化を図るために、画像形成用感光体(図1における被駆動体13)の精密駆動への要求が高まってきており、特に、駆動伝達用のプラスチック、例えば歯車成形品に高精度化が必要とされてきている。このため、歯車の取付け偏芯の一因である回転軸9と歯車軸穴11とのクリアランスを極力少なくする傾向があり、組付け時のはめ合わせが従来よりもきつくなってきている。
【0005】
上記歯車等を構成するプラスチック成形品の材料には、従来、ポリアセタール等の結晶性樹脂が用いられているが、これは透明な材料ではない。例えば図2の、軸・トルク伝達ピンと歯車成形品・軸穴の概略斜視図に示すように、樹脂製はすば歯車を、装置内のトルク伝達ピン10を有する軸9に組付ける際に、組付け作業者はトルク伝達ピン10の方向が見えない状況となる。このため、はすば歯車成形品3を駆動歯車4の歯溝に沿って回転させながら組付けなければならず、歯車成形品3のトルク伝達ピン10はめ合い用ピン溝12の方向を合わせる際に試行錯誤することが多かった。
特に軸9と成形品軸穴11とのクリアランスが小さい場合には、組付け時に歯車成形品3に過剰な力がかかり、外周の歯を相手の金属歯車とぶつけて損傷したり、はめ合いピン溝12周辺、あるいは軸穴11を損傷してしまうことがあり、成形品機能に支障をきたす場合があった。
【0006】
一方、環境保護のために自然界で分解可能な材料である生分解性樹脂を用いて歯車を形成することが提案されているが、生分解性樹脂のみを構成材料とすると、歯面の摺動摩擦に対する耐久性や歯の強度に関して、充分な性能が得られないため、例えばガラス繊維等の充填材を含有させて強度の向上を図っていたために透明性が失われていた。
またその場合、対接する相手側の歯車、例えば駆動歯車4に摩耗が生じてしまい、充分な耐久性が確保できなくなる等の問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開2004−243848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明においては、構造機械に要求される高い耐摺動性および耐摩耗性を確保しつつ、所定の組付けの際の、部材の方向性等の視認性を実現可能な、透明性、及び強度のいずれの特性も満足し、更には自然環境に配慮し、分解性を有するプラスチック成形品及びその製造方法を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、機能面と、非機能面とを有しており、少なくとも前記機能面の部位の主材料としては石油原料樹脂を、少なくとも前記非機能面の部位の主材料としては、バイオマス原料樹脂が用いられている構成のプラスチック成形品を提供する。
【0010】
請求項2の発明においては、前記バイオマス原料樹脂が、非晶状態の透明樹脂であるものとした請求項1に記載のプラスチック成形品を提供する。
【0011】
請求項3の発明においては、前記バイオマス原料樹脂が、生分解性樹脂と、当該生分解性樹脂との屈折率差が±0.1以下である石油原料樹脂とのブレンド体であるものとした請求項1に記載のプラスチック成形品を提供する。
【0012】
請求項4の発明においては、少なくとも前記機能面の部位の主材料として用いられる前記石油原料樹脂と、少なくとも前記非機能面の部位の主材料として用いられる前記バイオマス原料樹脂の線膨張係数の差が、±2×10-5以下であるものとした請求項1に記載のプラスチック成形品を提供する。
【0013】
請求項5の発明においては、機能面と、非機能面とを有しているプラスチック成形品の製造方法であって、少なくとも前記機能面の部位の主材料としては石油原料樹脂を用い、少なくとも前記非機能面の部位の主材料としてはバイオマス原料樹脂を用いて、前記石油原料樹脂と前記バイオマス原料樹脂との2色成形によって加工する工程を有し、前記加工工程の際の型温度が、前記バイオマス原料樹脂の結晶化温度以下とする点に特徴を有するプラスチック成形品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機能面と非機能面とを分けて考え、機能面部位の主材料として石油原料樹脂を用い、非機能面部位の主材料としてバイオマス原料樹脂を用いた構成としたので、機能面に高い機械的機能を保持し、非機能面にバイオマス原料樹脂の特性を担保させることができた。
すなわち、バイオマス原料樹脂を成形品の構成材に適用したことにより、化石資源の使用量削減、CO2排出量の低減化が図られ、環境負荷低減に貢献することができた。
またバイオマス原料樹脂では成形収縮率を0.15〜0.25%と小さくすることができるので、2色成形で内側の樹脂として利用する場合、成形時の樹脂収縮による外側の樹脂とのはがれを防止できる。
更に線膨張係数が近い材料の組合せを選択することにより、環境温度変化による樹脂のはがれや変形を回避できる。
【0015】
請求項2の発明によれば、機能面に他界機械的機能を満足しつつ、非機能面の部位において透明性を活かした組付け性や視認性を確保できた。
【0016】
請求項3の発明によれば、構成材料の優れた透明性を保ちながら、物性面の性能の向上を図ることができた。
【0017】
請求項4の発明によれば、成形品使用時の温度変化による機能面部位の主材料である石油原料樹脂とバイオマス原料樹脂の間の熱膨張差による剥がれや変形を回避できた。
【0018】
請求項5の発明によれば、充分な機械的機能と、透明性、及び環境に配慮した生分解性を具備し、ユニットへの成形品組付けの作業が簡便でかつ他部品への損傷が回避可能なプラスチック成形品が簡易な工程により作製できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
本発明のプラスチック成形品は、図1に示す駆動伝達装置100、及び図3の歯車成形品と軸トルク伝達ピンとの概略図に示すように、機能面1と、非機能面2とを有しているものとし、少なくとも前記機能面の部位の主材料としては石油原料樹脂14を、少なくとも前記非機能面1の部位の主材料としては、バイオマス原料樹脂15を用いるものとする。
図3においては、比較のため、(a)に従来構成の材料構成を示し、(b)に本発明の材料構成を示した。
なおここで、プラスチック成形品における「機能面」とは、例えば画像機器等に用いられる駆動伝達装置用樹脂成形品として、歯車、プーリー等があるが、これら歯車成形品3やプーリー成形品において、相手方の歯車やベルト等と接触することによって、押圧や摺動を受ける面のことであり、それ以外を「非機能面」と称するものとする。
このバイオマス原料樹脂15が、非晶状態の透明樹脂であることが好ましく、これによりプラスチック成形品の優れた視認性を確保できるようになる。
また、バイオマス原料樹脂として、生分解性樹脂と、この生分解性樹脂との屈折率差が±0.1以下である石油原料樹脂とのブレンド体を適用することにより、物理的な機能に優れた材料とすることができる。
また、少なくとも前記機能面1の主材料として用いられる石油原料樹脂14と、少なくとも前記非機能面の主材料である前記バイオマス原料樹脂15の線膨張係数の差を、±2×10-5以下に設定することにより、成形品使用時の温度変化による熱膨張差による剥がれや変形の発生が効果的に回避できることが確かめられた。
【0020】
〔実施例1〕
本例においては、図3(b)に示すように、プラスチック歯車成形品3の機能面1の構成部材の主材料には、摺動性、耐摩耗性、耐久性に優れたポリアセタール樹脂等の石油原料樹脂14を用い、その他の「非機能面2」の構成部材の主材料には、可視光に対して透明な非晶質樹脂であるバイオマス原料樹脂15を用いた。
バイオマス原料樹脂15としては、ポリ乳酸樹脂を用いることとした。これは、結晶化温度以下の型温で成形した場合、成形収縮率が0.15〜0.25%と小さい材料であり、その他の樹脂とともに2色成形で内側の樹脂として利用する場合、成形時の樹脂収縮による外側の樹脂とのはがれを起こし難いという利点を有する材料である。
ちなみに、その他の樹脂の成形収縮率に関しては、ポリメタクリル酸メチルが0.2〜0.8%、ポリスチレンが0.2〜0.5%、ポリカーボネートが0.5〜0.7%である。
また、ポリ乳酸樹脂の線膨張係数(8.8×10-5/℃)が、その他の透明樹脂と比べてポリアセタール樹脂の線膨張係数(10×10-5/℃)に近く、より一体化成形に適した材料であるといえる。
ちなみに、他の主な透明樹脂の線膨張係数に関しては、ポリメタクリル酸メチルが8×10-5/℃、ポリスチレンが7×10-5/℃、ポリカーボネートが7×10-5/℃である。
プラスチック成形品の非機能面2の構成部材の主原料には、バイオマス原料樹脂15を使用するので、結晶化温度以下の型温で成形した場合、良好な透明性が得られる。
従って、組付けの際に透明の部位を通して歯車やプーリーの裏側に位置する相手軸9部材のトルク伝達ピン10方向を確認しながら組付けられるという利点を有している。これによってトルク伝達ピン10と、はめ合い用の成形品ピン溝12の方向を合わせる際の試行錯誤を防ぐことができ、外周の歯を相手の金属歯車とぶつけて損傷したり、はめ合い用ピン溝12周辺、あるいは軸穴11を損傷したりして成形品機能を損なうという問題が回避できる。
【0021】
〔実施例2〕
また、本発明のプラスチック成形品は、駆動伝達系の樹脂成形品に限定されるものではなく、図4に示すような機能面を有する構成の各種複合成形品に利用できる。すなわち、透明の窓を有し、かつ摺動部等のいわゆる「機能面」を有する種々の機構部品や、図4(a)に示すように、耐薬品性を要求される機能面1を有する透明部品、図4(b)に示すように、優れた導電性を要求される機能面1を有する部品にも適用できる。
この場合、図4(a)における機能面1を構成する材料としては、例えば有機溶剤や酸、アルカリに対して耐性を有するポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン等が適用でき、図4(b)における機能面1を構成する材料としては、例えば、導電性を有するポリチオフェン系樹脂、ポリアニリン系樹脂、ポリピロール系樹脂、ポリイソチアナフテン系樹脂、ポリアセチレン系樹脂、カーボン繊維含有樹脂等が適用できる。
図4(a)の構成によれば、薬品と接する面を効果的に保護でき、図4(b)の構成によれば、機能面表面へのゴミや微細粉、異物の付着を低減できる。
また、図5(a)に示すように、親水性を要求される機能面1を有する部品や、図5(b)に示すように疎水性を要求される機能面を有する部品にも適用でき、親水性や撥水性を持つ機能面がパターン状に構成された部品、静電気を伝えて逃がすことができる導電性の面を持つ部品等の様々な用途に適用できる。
この場合、図5(a)における機能面を構成する材料としては、例えば親水性を有するポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、ポリビニルピロリドン等が適用でき、図5(b)における機能面1を構成する材料としては、例えば、疎水性を有するポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、シリコンゴム等が適用できる。
図5(a)の構成によれば、親水部には親水性液体、極性溶媒が付着しやすく、非極性溶剤等が付着しにくくなり、パターン化も有効であるという効果が得られ、図5(b)の構成によれば、疎水部には非極性溶剤等が付着しやすく、極性溶媒、水等が付着しにくくなり、パターン化も有効であるという効果が得られる。
【0022】
本発明の一例である、高強度が要求される駆動伝達系樹脂成形品について説明する。
高強度が要求される歯車やプーリーの機能面は、相手方の歯車やベルトと接触し、押圧や摺動を受ける面であり、この部位には耐久性、耐摩耗性、摺動性に優れたポリアセタール樹脂等の石油原料樹脂を用いる。
その他の部位、いわゆる非機能面を含む部位には、透明な非晶質樹脂であるバイオマス原料樹脂とバイオマス原料樹脂との屈折率差が±0.1以下の石油原料樹脂とのブレンドが用いる。これによって、バイオマス原料樹脂単体より衝撃強度等を向上させてより高強度、高耐久のプラスチック部品が得られるようになる。
また、ポリアセタール樹脂等の石油原料系樹脂とバイオマス原料樹脂とのブレンド比率を調整することによって、樹脂の線膨張係数、成形収縮率を制御し、使用環境温度の変化によって樹脂の剥がれや変形が極めて生じにくい、安定性に優れた一体成形品を得ることができた。
特に石油原料樹脂と、ブレンド樹脂の線膨張係数の差が、±2×10-5以下になるようにブレンド比率を調節することによって、より安定性に優れた一体成形品が得られることが確かめられた。
【0023】
上記実施例1においては、バイオマス原料樹脂15としてポリ乳酸樹脂を使用したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、その他のバイオマス原料樹脂も使用できる。
例えば、脂肪族ポリエステルとして、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸、及びこれらの組合せのコポリマー、微生物産生樹脂であるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)等が挙げられる。
脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸のエステルとしては、例えばポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンアジペート、及びこれらの組合せのコポリマー(例えばポリブチレンサクシネート・アジペート等)が挙げられる。
糖質系高分子としては、例えば、セルロース誘導体(酢酸セルロース、エチルセルロース等)、デンプン、キチン、キトサン等)が挙げられる。
また、石油原料樹脂(14)の例としては、例えばポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル系樹脂、スチレン(PA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等のスチレン共重合体樹脂、あるいはゴム変性スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂を含む環状ポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレンを含むフッ素樹脂等、及びこれらのブレンド樹脂が挙げられ、これらには、所定の充填材を含有させてもよい。
【0024】
本発明のプラスチック成形品を製造する方法について説明する。
この例においては、石油原料樹脂とバイオマス原料樹脂とを用いて2色成形で加工する、
従来公知の2色成形用成形機を用い、溶融状態の石油原料樹脂とバイオマス原料樹脂とを順次金型の中に射出して金型内で冷却固化させ、2色の樹脂からなる一体成形品を作製する。
1種類目の樹脂を射出する際には、金型の一種類目の樹脂用キャビティに射出し、1種類目の樹脂が固化した状態で前記キャビティを構成している半型を2種類目の樹脂用キャビティを有する半型に替えて、1種目の樹脂が型内に残った状態で型を閉じ、型キャビティと1種類目の樹脂によって形成される空間に2種類目の樹脂を射出充填する。
2種類目の樹脂が冷却固化した後に型を開いて一体成形品を取り出す。
例えば、石油原料樹脂としてポリアセタール樹脂、バイオマス原料樹脂としてポリ乳酸樹脂を用いた場合には、この加工時の金型温度をバイオマス原料樹脂の結晶化温度90℃以下の温度、例えば50℃に設定する。この金型温度設定により、成形機シリンダ内で加熱圧縮され溶融状態となった樹脂は金型内に射出されて金型壁面にからの冷却によって急冷固化するため、主に非晶質状態となる。そして結晶化温度以下に冷却されたまま金型から取り出されて室温まで冷却されるため、樹脂の結晶化はほとんど進まず、樹脂の透明性を保った成形が可能となり、上記実施例1のように、成形品組付けの際に透明の部位を通して歯車成形品(3)やプーリー成形品の裏側に位置する相手軸9部材のトルク伝達ピン10方向を確認しながら組付けることができる。これによって、トルク伝達ピン10はめ合い用ピン溝12の方向を合わせる際の試行錯誤を防ぐことができ、外周の歯を相手の金属歯車とぶつけて損傷したり、トルク伝達ピン10はめ合い用ピン溝12周辺、あるいは軸穴11を損傷して成形品機能を損なうという問題を回避することができる。
一方、金型温度が結晶化温度以上の場合、型内で樹脂が結晶化温度以上に保たれるので、結晶化温度以下の場合と比べて結晶化が進行し樹脂の透明性が悪くなってしまうことが確かめられた。
【0025】
電動パワ−ステアリング装置用として、歯車(歯車本体及び外周歯部)を生分解性樹脂により形成すると、歯面に充分な摺動摩擦耐久性を確保できないため、従来においては、ガラス繊維等の充填材を10重量%以上含有させていた。
ガラス繊維を含有させた樹脂によって歯車の歯面を形成すると、表面のガラス繊維が噛合う相手歯車の歯面を削ってしまうため、相手歯車の耐久性が著しく劣化してしまうという問題があった。
これに対し、本発明に係る本例においては、歯車の機能面1である歯部を含む外周部の主材料として石油原料樹脂14を使用し、その他の非機能面2を含む部位の主材料としてバイオマス原料樹脂15を用いることとした。
機能面にガラス繊維等の強化繊維を含まずに、摺動性、耐摩耗性、機械的強度、及び耐久性に優れたポリアセタール等の石油原料樹脂を用いることにより、この機能面と接する相手方の歯車を削って劣化させてしまうことが抑制できる。
また、非機能面には生分解性樹脂を用いたことにより、環境面に対する影響への向上も図られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)駆動伝達装置の概略図であり、成形品組付け前の状態図を示す。(b)駆動伝達装置の概略図であり、成形品組付け後の状態図を示す。
【図2】軸・トルク伝達ピンと歯車成形品・軸穴の概略斜視図を示す。
【図3】(a)歯車成形品と軸トルク伝達ピンの概略図であり、従来の材料構成を適用した図を示す。(b)歯車成形品と軸トルク伝達ピンの概略図であり、本発明の材料構成を適用した図を示す。
【図4】(a)機能面を有する複合成形品の概略図を示し、機能面を耐薬品性材料とした例を示す。(b)機能面を有する複合成形品の概略図を示し、機能面を導電性材料とした例を示す。
【図5】(a)機能面を有する複合成形品の概略図を示し、機能面を親水性材料とした例を示す。(b)機能面を有する複合成形品の概略図を示し、機能面を疎水性材料とした例を示す。
【符号の説明】
【0027】
1 機能面
2 非機能面
3 歯車成形品
4 駆動歯車
5 従動歯車
6 モータ
7 フレーム
8 軸受け
9 軸
10 トルク伝達ピン
11 軸穴
12 ピン溝
13 被駆動体
14 石油原料樹脂
15 バイオマス原料樹脂
100 駆動伝達装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能面と、非機能面とを有しているプラスチック成形品であって、
少なくとも前記機能面の部位の主材料としては石油原料樹脂を用い、
少なくとも前記非機能面の部位の主材料としてはバイオマス原料樹脂を用いていることを特徴とするプラスチック成形品。
【請求項2】
前記バイオマス原料樹脂が、非晶状態の透明樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック成形品。
【請求項3】
前記バイオマス原料樹脂が、生分解性樹脂と、当該生分解性樹脂との屈折率差が±0.1以下である石油原料樹脂とのブレンド体であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック成形品。
【請求項4】
少なくとも前記機能面の部位の主材料として用いられる前記石油原料樹脂と、
少なくとも前記非機能面の部位の主材料として用いられる前記バイオマス原料樹脂の線膨張係数の差が、±2×10-5以下であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック成形品。
【請求項5】
機能面と、非機能面とを有しているプラスチック成形品の製造方法であって、
少なくとも前記機能面の部位の主材料としては石油原料樹脂を用い、
少なくとも前記非機能面の部位の主材料としては、バイオマス原料樹脂が用い、
前記石油原料樹脂と前記バイオマス原料樹脂との2色成形によって加工する工程を有し、
前記加工工程の際の型温度を、前記バイオマス原料樹脂の結晶化温度以下とすることを特徴とするプラスチック成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−160718(P2007−160718A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360057(P2005−360057)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】