説明

プラスチック成形組成物、成形品及び製造法

本発明は、少なくとも1つのポリ(メタ)アクリレートA)及び少なくとも1つの耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)を含むプラスチック成形組成物に関し、ここで、プラスチック成形組成物のダイスエルは、5MPa及び220℃でDIN54811(1984)により測定すると少なくとも15%であり、ポリ(メタ)アクリレートA)のメルトフロー速度は、ISO1133により230℃にて3.8kgの負荷で測定すると少なくとも10ml/10分である。本発明は、前述のプラスチック成形組成物を含む成形品、及び前記成形品の製造法も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック成形組成物、前記プラスチック成形組成物を含む成形品、及びその製造法に関する。
【0002】
ポリ(メタ)アクリレートは優れた光学特性を特徴とし、したがって、これらのプラスチックは高い透明度を要する用途に広く使用される。前記プラスチックはこの場合、多くの化学物質に対して非常に高い耐性を示し、高い耐候性を有する。しかし、短所は、他のプラスチックと比べて比較的低い耐衝撃性である。したがって、この特性は、特定の要件を満たすために、衝撃改質剤として知られているものを用いて改善される。
【0003】
この種類の成形組成物は、DE−A3300526、DE−A3329765、EP−A0113924、EP−A0465049、EP−A0522351及びWO2006/029704で一例として記載されている。
【0004】
モバイル機器のディスプレーカバーに関する要件は特に厳しい。なぜなら、これらの機器は日常使用において一時的に高い機械的負荷にさらされる可能性があるからである。表面は、通常、アルコール含有溶液などを用いて清浄化され、したがって材料はこれらの化学物質に対して耐性でなければならない。さらに、光学的要求は非常に厳しい。なぜなら、曇ると表示された情報が非常に読みにくくなるからである。
【0005】
市場に受け入れられるディスプレーカバーは、コストの理由から、高度に自動化された方法での生産が可能でなければならず、したがって、射出成形法がここで使用できる唯一の方法である。比較的新しい方法により、下流操作に対する要求がなく、すぐにインストールできる成形品の製造が可能になる。下流操作の一例は、スプルーの除去である。前記技術は、トンネルゲート又はホットランナーダイを使用する。しかし、これらの技術は、ゲートに関して非常に小さな直径を要する。モバイル機器がますます小型化することにより特定の問題が提起され、通常、厚さが0.5mm〜1.2mmの範囲の非常に薄いディスプレーカバーに至る。
【0006】
前記の耐衝撃性が改良されたプラスチック成形組成物を、ディスプレーカバーを製造するための費用効率が高い方法で使用する場合、高いヘイズ値が生じ、混濁が伴う場合もある。
【0007】
本明細書中で記載され、議論される先行技術の観点から、本発明の1つの目的は、したがって、高効率の射出成形法により成形でき、優れた特性プロフィールを有する比較的薄い成形品を得られるプラスチック成形組成物を見出すことである。
【0008】
特に、成形組成物は、高い耐衝撃性を有する成形品を得るための加工が可能でなければならない。さらに、通常の洗浄組成物を使用して、成形組成物から得られる成形品を洗浄することが可能でなければならず、特に表面に対して攻撃することなく、又は応力亀裂として知られるものが形成されることなく、アルコール含有溶液などを使用することが可能でなければならない。さらに、当該成形組成物から、優れた光学特性、特に高い透明度を示す成形品を得られなければならない。当該成形組成物から形成される成形品は、更に高い表面品質を有していなければならない。
【0009】
別の目的は、最新の射出成形法を用いて加工して、結果として得られる成形品が高レベルのヘイズ、又は混濁を示さない、特に薄い成形品を得られる成形組成物を提供することであると考えることができる。最新の射出成形法の特性の性質は、結果として得られる成形品が使用又は更に加工される前に下流操作を必要としないことである。ここで、成形組成物は、得られる成形品の品質の点で、結果として得られる短所がなく、非常に高いサイクル速度での加工が可能でなければならない。
【0010】
本発明の別の目的は、比較的低いコストで製造及び加工可能な成形組成物を提供することである。
【0011】
本願請求項1の特性の全てを有するプラスチック成形組成物は、これらの目的を達成し、明確に記載されていないが、それでも前記序論で議論される状況から容易に導き出すことができる、又は推論できる他の目的も達成する。本発明による成形組成物の有利な実施形態は、従属クレームにより保護される。請求項15及び18は、成形品及びその製造法を対象とする目的を達成する。
【0012】
したがって、本発明は、少なくとも1つのポリ(メタ)アクリレートA)及び少なくとも1つの耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)を含み、プラスチック成形組成物のダイスエルが、5MPa及び220℃でDIN54811(1984)にしたがって測定すると少なくとも15%であり、ポリ(メタ)アクリレートA)のメルトフロー速度が、ISO1133にしたがって230℃にて3.8kgの負荷で測定すると、少なくとも10ml/10分であることを特徴とするプラスチック成形組成物を提供する。
【0013】
驚くべきことに、これにより、非常に効率的な方法で、優れた特性プロフィールを有する成形品が得られる、プラスチック成形組成物を提供することが可能になる。
【0014】
本発明の手段はさらに、とりわけ以下の利点を達成することができる。
本発明の成形組成物を加工して、高い耐衝撃性を有する成形品を得ることができる。
【0015】
さらに、通常の洗浄組成物、特にアルコール含有溶液等を用いて、表面に対して影響を及ぼすことなく、又は応力亀裂として知られるものが形成されることなく、当該成形組成物から得られる成形品を洗浄することができる。
【0016】
成形組成物により、さらに、優れた光学特性、特に高い透明度及び低いヘイズを示す成形品が得られる。当該成形組成物から形成される成形品は、高い表面品質をさらに示す。
【0017】
さらに、本発明による成形組成物を、最新の射出成形法を用いて加工して、特に薄い成形品を得ることができ、結果として得られる成形品は、高いヘイズ又は混濁を示さない。最新の射出成形法の特定の性質は、結果として得られる成形品を使用又はさらに加工する前に下流操作を必要としないことである。ここで、成形組成物は、得られる成形品の品質に関して、結果として生じる短所がなく、非常に高いサイクル速度での加工が可能でなければならない。
【0018】
本発明はさらに、低いコストで製造及び加工可能な成形組成物を提供する。
【0019】
プラスチック成形組成物は、そのメルトフロー速度が、ISO1133にしたがい230℃にて3.8kgの負荷で測定すると、少なくとも10ml/10分であり、好ましくは少なくとも15ml/10分であり、特に好ましくは少なくとも20ml/10分である少なくとも1つのポリ(メタ)アクリレートA)を含む。特に興味深いプラスチック成形組成物は、特に、そのメルトフロー速度が、ISO1133にしたがい230℃にて3.8kgの負荷で測定すると、10ml/10分〜50ml/10分の範囲であり、特に好ましくは15ml/10分〜40ml/10分の範囲であり、非常に極めて好ましくは20ml/10分〜30ml/10分の範囲である少なくとも1つのポリ(メタ)アクリレートA)を使用するものである。
【0020】
ポリ(メタ)アクリレートは、モノマーの質量に基づいて、少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも80質量%の(メタ)アクリレートを含むモノマー混合物を重合することによって得られるポリマーである。これらのモノマーは当業者に周知であり、市販されている。
【0021】
これらには、とりわけ、(メタ)アクリル酸及び飽和アルコール由来の(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート,2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート;不飽和アルコール由来の(メタ)アクリレート、例えばオレイル(メタ)アクリレート、2−プロピニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート等;
(メタ)アクリル酸のアミド及びニトリル、例えばN−(3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(ジエチルホスホノ)(メタ)アクリルアミド、
1−メタクリロイルアミド−2−メチル−2−プロパノール;シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;
グリコールジ(メタ)アクリレート、例えば1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、エーテルアルコールの(メタ)アクリレート、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート;及び
多官能性(メタ)アクリレート、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0022】
前記(メタ)アクリレートとともに、ポリ(メタ)アクリレートを製造するために、前記メタクリレートと共重合可能な他の不飽和モノマーを使用することもできる。前記化合物の一般的に使用される量は、モノマーの質量に基づいて、0〜40質量%、好ましくは0〜20質量%であり、ここでのコモノマーは個別に又は混合物の形態で用いることができる。
【0023】
これらには、とりわけ、1−アルケン、例えば1−ヘキセン、1−ヘプテン;分枝アルケン、例えばビニルシクロヘキサン、3,3−ジメチル−1−プロペン、3−メチル−1−ジイソブチレン、4−メチル−1−ペンテン;
ビニルエステル、例えば酢酸ビニル;
スチレン、側鎖中にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばα−メチルスチレン及びα−エチルスチレン、環上にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエン及びp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン、及びテトラブロモスチレン;複素環ビニル化合物、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾール、及び水素化ビニルチアゾール、ビニルオキサゾール及び水素化ビニルオキサゾール;
ビニル及びイソプレニルエーテル;
マレイン酸誘導体、例えば無水マレイン酸、
無水メチルマレイン酸、マレイミド、メチルマレイミド;及び
ジエン、例えばジビニルベンゼンが含まれる。
【0024】
好ましいポリ(メタ)アクリレートA)は、少なくとも20質量%、特に少なくとも60質量%、そして特に好ましくは少なくとも80質量%(それぞれの場合、重合されるモノマーの合計質量に基づく)のメチルメタクリレートを含む混合物を重合することによって得られる。これらのポリマーは、本発明に関して、ポリメチルメタクリレートと称する。好ましい成形組成物は、一例として、分子量又はモノマー構造が異なる種々のポリ(メタ)アクリレートを含み得る。
【0025】
特に、繰り返し単位の質量に基づいて、少なくとも90質量%のメチルメタクリレート由来の単位及び少なくとも2質量%の他の(メタ)アクリレート由来の単位を有するポリメチルメタクリレートA)を使用可能であることが特に好ましい。特に、約92質量%のメチルメタクリレート及び約8質量%のメチルアクリレートを含むモノマー混合物由来のポリメチルメタクリレートを使用することができる。
【0026】
本発明にしたがって使用されるポリ(メタ)アクリレートA)の質量平均モル質量Mwは、広範囲に変化し得、ここでのモル質量は、通常、意図される用途に適合し、成形組成物を加工するために用いられる方法に適合する。しかし、一般的には10000〜180000g/mol、好ましくは20000〜150000g/mol、そして特に好ましくは、40000〜110000g/molの範囲であるが、結果的に制限されることはない。その多分散性指数Mw/Mnが1〜10の範囲にあり、特に好ましくは1.5〜7の範囲にあり、非常に極めて好ましくは1.7〜3の範囲にあるポリ(メタ)アクリレートA)も特に興味深い。モル質量は、PMMA標準に対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0027】
前述のモノマーからフリーラジカル重合の種々の方法によって(メタ)アクリレートホモポリマー及び/又はコポリマーを製造することは、それ自体公知である。ポリマーは、塊状重合、溶液重合、懸濁液重合または乳化重合によって製造することができる。塊状重合は、一例として、Houben−Weyl, Volume E20, Part 2(1987),第1145頁以降に記載されている。溶液重合に関する有用な情報も、この刊行物の第1156頁以降に見出すことができる。懸濁重合技術に関する説明も、この刊行物の第1149頁以降に見出すことができ、一方、乳化重合も、この刊行物の第1150頁以降に記載されている。
【0028】
前述の特性を有し、優先的に使用されるポリ(メタ)アクリレートA)は、とりわけ、Evonik Roehm社から商標PLEXIGLAS(登録商標)及び商標ACRYLITE(登録商標)で市販され、特にPLEXIGLAS(登録商標)POQ62又はACRYLITE(登録商標)L40を挙げることができる。
【0029】
本発明によるプラスチック成形組成物は、前述の特性を有する少なくとも1つのポリ(メタ)アクリレートA)だけでなく、少なくとも1つの耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)も含む。耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)は、プラスチック成形組成物のダイスエルが、5MPa及び220℃でDIN54811(1984)にしたがって測定すると、少なくとも15%であるように選択される。
【0030】
特に興味深い耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)は、したがって、ポリ(メタ)アクリレートA)のダイスエルの低下を最小限に抑えるものである。懸濁重合により得られる耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)は、この特性を示すものの一つである。
【0031】
優先的に使用可能な耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)は、少なくとも二段階重合反応により得られるものであり、この場合、第一段階で、少なくとも70質量%のメチルメタクリレートを含むガラス転移温度Tg>25℃のハード相A)を製造し、次いで、第二段階で、そのポリマーが<25℃のガラス転移温度Tgを有するタフ相B)のモノマーを添加して重合反応を完了し、ここで、第一段階におけるハード相A)の重合は、a)油溶性フリーラジカル開始剤及びb)分子中に少なくとも2個のチオール基を有する有機硫黄連鎖移動剤の存在下で起こる。
【0032】
前述の特性を有する耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)は、一例として、1983年8月18日に独国特許庁にP3329765.7の出願番号で出願されたDE−A3329765に記載されている(前記刊行物は開示目的で参照され、そこに開示されている耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレート及びそれらの製造法は、本出願中で援用される)。
【0033】
前述の耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)を製造するために、70〜100質量%のメチルメタクリレート(MMA)及び0〜30質量%のC1〜C8アルコールのアクリル酸エステル又はC2〜C8アルコールのメタクリル酸エステル及び0〜10質量%の前述のエステルと共重合可能な1以上の他のビニルモノマーから構成される、ガラス転移温度Tg>25℃を有するハード相A)を、好ましくは第一段階で重合させる。
【0034】
第二段階では、タフ相B)のモノマーを添加、重合する。タフ相B)のポリマーは、ハード相の存在と独立して、<25℃、好ましくは<10℃のガラス転移温度Tgを有する。
【0035】
第一段階でのハード相A)の重合は、a)油溶性フリーラジカル開始剤及びb)分子中に少なくとも2個のチオール基を有する有機硫黄連鎖移動剤の存在下で起こる。
【0036】
好適な一態様によれば、ハード相A)の存在下でのタフ相B)の重合は、あらかじめ形成されたハード相A)を膨潤させるためにモノマーを使用し、したがって本質的にあらかじめ形成されたハード相内でタフ相のモノマーを重合させることによって実施される。この場合、ハード相中にまだ存在する残存開始剤を利用して重合反応を実施することが特に有利である。
【0037】
ガラス転移温度(Tg)は、一例として、以下の参考文献で見いだすことができる:Brandrup and E.H. Immergut, "Polymer Handbook", lnterscience 1966, pIII−61 to III−63、又は"Kunststoff−Handbuch" [Plastics handbook], Volume IX, edited by R.Vieweg and F.Esser, Carl−Hanser−Verlag, Munich 1975, pp. 333−339、及びT.G. Fox in "Bull.Am. Physics soc, Vol. I,(3) p. 123(1956)。ハード相A)及び/又はタフ相B)のガラス転移温度は、さらに、示差操作熱量測定(DSC)により、特にDIN EN ISO 11357にしたがって測定することができる。ガラス転移温度は、好ましくは、10℃/分の加熱速度を用いて第2の加熱曲線におけるガラス転移の中点として測定することができる。
【0038】
段階A)で重合されるハード相(タフ相と独立して考える)のガラス転移温度Tgは、一般的に、25℃を上回り、好ましくは60℃又はこれを上回る。
【0039】
これらの値は、70〜100質量%のメチルメタクリレートを用いることによって得られ、ここでは、0〜30質量%のC1〜C8アルコールのアクリル酸エステル及び/又はC2〜C8アルコールのメタクリル酸エステルを共重合させることが可能である。
【0040】
アクリル酸のアルキルエステルの言及することができる例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、特にn−ブチル及びイソブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレート、並びにネオペンチルアクリレートである。
【0041】
メタクリル酸のC2〜C8アルコールとのアルキルエステルの言及できる例は、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、及びブチルメタクリレート、特にn−ブチルメタクリレートである。
【0042】
言及されるエステルは、混合物の形態で用いることもできる。0〜10質量%の割合で記載したエステルと共重合可能な他のビニルモノマーの例は、少し詳しく前述されている。芳香族ビニル化合物、例えばスチレン及びその誘導体、例えばα−メチルスチレン若しくはp−メチルスチレン、又は芳香族若しくは脂肪族カルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニル若しくは安息香酸ビニル、又はアクリロニトリル若しくはメタクリロニトリルを使用するのが好ましい。
【0043】
タフ相B)のモノマーは、ホモポリマー若しくはコポリマーの形態で(ハード相と独立して)ガラス転移温度Tg<25℃、好ましくは<10℃を有すると定義されている。使用可能なメタクリル酸のエステルは、C2〜C8アルコールの前記エステルであり、使用可能なアクリル酸のエステルは、C1〜C8アルコールのエステル(混合物の形態も)である。
【0044】
分子中に少なくとも2個のチオール基を有する、使用される硫黄連鎖移動剤は、分子中に、一般的には少なくとも2個、好ましくは少なくとも6個、一般的には40個以下の炭素原子を含む。一例として、1つ、又は好ましくはそれ以上のα−メルカプトカルボン酸エステルが分子中に存在し、好ましくは、たとえばポリオール、例えばグリコール、プロパンジオール、グリセロール、ペンタエリスリトール等由来であるのが有利であり、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレートを特に挙げることができる。部分的に、分子中に少なくとも2個のチオール基を有する硫黄連鎖移動剤は、式(I)
【化1】

[式中、Aは、3〜16個の炭素原子を有する炭化水素鎖、特に4〜8個の炭素原子を有する炭化水素鎖であるか、又は部分
【化2】

(式中、nは0又は1〜8の数値であり、特に0、及び1〜5であり、Yは2〜16個の炭素原子を有する炭化水素鎖である)であり、適切ならば置換されて
【化3】

(式中、n’はnについて定義され、そしてmは0又は1〜8の数値である)単位を有する]により表すことができる。
【0045】
段階A)におけるハード相の重合中の有機硫黄調節剤の含有量は、一般的に、ハード相A)のモノマーに基づいて、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%である。
【0046】
使用可能な油溶性(水不溶性)フリーラジカル開始剤a)の例は、この種類の過酸化及びアゾ化合物である(米国特許2471959)。言及することができる例は有機過酸化物、例えば過酸化ジベンゾイル、若しくは過酸化ラウリル、又はパーエステル、例えばtert−ブチル2−エチルパーヘキサノエート、並びにアゾ化合物、たとえばアゾイソブチロニトリル、及びこの種類の他の公知開始剤である。たとえば、温度が反応の終わりにむかって上昇するならば、重合反応の完了を最大にするために、さらに高い分解温度を有するフリーラジカル生成剤を使用することもできる。
【0047】
油溶性フリーラジカル開始剤の割合は、一般的に、段階A)のモノマーに基づいて、0.01〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、特に好ましくは0.5〜2.5質量%である。
【0048】
段階B)で好ましく使用されるグラフト結合剤は、少なくとも2個の異なる反応性の重合性単位を分子内に有するモノマー又は少なくとも3個の同じ種類の重合性単位を分子内に有するモノマーのいずれかである(後者の場合、それ自体同じ種類である重合性単位の異なる反応性は、おそらくは重合反応の過程で残存する重合性単位に起因する立体障害によるものである)。
【0049】
両種類のグラフト結合剤(すなわち、分子内に少なくとも2個の異なる反応性の重合性単位を有するモノマー、及び分子内に少なくとも3個の同じ種類の重合性単位を有するモノマー)は、耐衝撃性成形組成物の透明性を改善する。前記種類のグラフト結合剤は、材料の熱可塑性加工可能性(すなわち、その押出性)の改善において、他の架橋剤、例えばブタンジオールジメタクリレートよりも良好に機能する。
【0050】
異なる反応性の少なくとも2個の重合性単位を有する、好ましく使用される前述のグラフト結合剤は、一般式II
【化4】

[式中、R1及びR2は、水素及びメチルであり、R3は部分
【化5】

(式中、R4は水素又はメチルであり、q及びq’は0又は1であり、R’1、R''1及びR’2は、それぞれR1及びR2について定義したとおりである、である)]により表すことができる。
【0051】
言及することができる例は、α,β−不飽和カルボン酸のアリル、メタリル及びクロチルエステル、例えばアリルメタクリレート及びアリルアクリレート、並びに対応するメタリル、クロチル及びビニルエステルである。トリメチロールプロパントリアクリレートを、分子内に同じ種類の3個の重合性単位を有するグラフト結合剤の一例としてあげることができる。
【0052】
耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)は、好ましくはビーズ重合又は懸濁重合により得られる。水性相のモノマー相に対する比は、ここでは好ましくは1.5:1〜4:1の範囲であり得る。
【0053】
ビーズ重合反応を実施する際、通常の分散剤(ディスパーサー)を使用し;それらの量は、一般的に、水性相に基づいて、数質量パーセントを超えない。有機ディスパーサーとして知られるもの、たとえば部分加水分解ポリ酢酸ビニル、スチレン−又は酢酸ビニル−マレイン酸コポリマーのアルカリ金属塩、並びに同じポリマー分子中に疎水性及び親水性基を有する他のポリマーが特に好ましい。エマルジョンポリマーの形成を抑制するために、塩、例えば塩化ナトリウムを水性相に添加することもできる。低分子量乳化剤、例えばアルカンスルホン酸のナトリウム塩を使用して、ビーズ懸濁液の安定性を改善することもできる。
【0054】
ここで特に興味深いビーズポリマー又はエマルジョンポリマーは、ハード相A)の製造に使用されるモノマーの、タフ相B)の製造に使用されるモノマーに対する質量比が、好ましくは1:0.15〜1:3の範囲であり、特に好ましくは1:0.25〜1:1.5の範囲であるものである。
【0055】
耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)のメルトフロー速度は、好ましくは、ISO1133にしたがい230℃にて10kgの負荷で測定すると、0.1〜5ml/10分の範囲であり、特に好ましくは0.3〜3ml/10分の範囲である。
【0056】
耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)として優先的に使用可能な衝撃改質剤は、とりわけEvonik Roehm社から商品名PLEXIGLAS(登録商標)zk50で市販されている。
【0057】
成形組成物は、したがって前記ポリ(メタ)アクリレートとともに他のポリマーを含み得る。これらには、一例として、前記のものとは異なるポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルが含まれる。ここでは、ポリ(メタ)アクリレート及びポリ(メタ)アクリルイミドが好ましい。これらのポリマーは個別に、又は混合物の形態で使用することができる。これらのポリマーは、さらにコポリマーの形態をとることもできる。好ましいコポリマーは、とりわけスチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマー及びポリメチルメタクリレートコポリマー、特にポリメチルメタクリレート−ポリ(メタ)アクリルイミドコポリマーである。しかし、これらの割合は、本発明による利点に関して過度の短所をもたらさない量に限定される。本発明による成形組成物中のこれらのさらなるポリマーが好ましく存在する量は、最大で40質量%まで、特に好ましくは30質量%までであり、きわめて特に好ましくは15質量%までである。
【0058】
重合される組成物、本発明による成形組成物、及び/又はそれらから得られる成形品は、さらに周知の添加剤を含み得る。これらの添加剤には、とりわけ、連鎖移動剤、離型剤、硬化防止剤、抗酸化剤、離型剤、難燃剤、潤滑剤、染料、流動性向上剤、フィラー、光安定剤、顔料、耐候安定剤及び可塑剤が含まれる。
【0059】
添加剤の使用量は、慣例通り、すなわち、全組成物に基づいて50質量%まで、好ましくは10質量%までである。量が、全組成物に基づいて50質量%を超える場合、プラスチックの特性(一例は加工可能性)が損なわれる可能性がある。
【0060】
本発明によるプラスチック成形組成物のダイスエルは、5MPa及び220℃でDIN54811(1984)にしたがって測定すると、少なくとも15%、特に好ましくは少なくとも20%である。ダイスエルは、耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)の性質により特に影響を受ける。ダイスエルは、さらに、ポリ(メタ)アクリレートA)の割合及び耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)の割合にそれぞれ依存する。ポリ(メタ)アクリレートA)の割合が高い場合、プラスチック成形組成物は高いダイスエルを示す。しかし、結果として耐衝撃性が低下する。
【0061】
特に興味深いプラスチック成形組成物は、特に、ポリ(メタ)アクリレートA)の、耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)に対する質量比が10:1〜1:10の範囲であり、特に好ましくは2:1〜1:4の範囲であり、そして特に好ましくは1:1.1〜1:3の範囲である本発明のプラスチック成形組成物である。
【0062】
プラスチック成形組成物は、好ましくは、10〜60質量%、特に好ましくは20〜40質量%のポリ(メタ)アクリレートA)、及び40〜90質量%、特に好ましくは55〜75質量%の耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)を含む。本発明の更なる実施形態によれば、10〜60質量%、特に好ましくは20〜40質量%のポリ(メタ)アクリレートA)、40〜90質量%、特に好ましくは55〜75質量%の耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)、及び0〜30質量%、特に好ましくは1〜10質量%の添加剤から構成される成形組成物が特に好ましい。
【0063】
本発明によるプラスチック成形組成物のポリマーの分子量分布は、GPCにより測定すると、少なくとも2つの極大を有し得る。
【0064】
本発明の好ましいプラスチック成形組成物のメルトフロー速度は、ISO1133により230℃にて3.8kgの負荷で測定すると、好ましくは1〜7ml/10分の範囲であり得、特に好ましくは2〜5ml/10分の範囲であり得る。
【0065】
特に興味深い他のプラスチック成形組成物は、23℃でISO179により測定すると、少なくとも50kJ/m2、好ましくは少なくとも60kJ/m2、そして特に好ましくは少なくとも100kJ/m2の耐衝撃性を有するものである。
【0066】
好ましいプラスチック成形組成物及びそれらから得られる成形品の弾性率はそれぞれ、ISO527(1mm/分)によると、1200MPa以上、好ましくは1600MPa以上であり得る。本発明によるプラスチック成形組成物及びそれらから得られる成形品のノッチ付きシャルピー耐衝撃性はそれぞれ、さらにISO179によると、4kJ/m2以上、好ましくは6kJ/m2以上であり得る。
【0067】
ISO527(1mm/分)により、23℃および50℃でそれぞれ測定すると、30MPa以上、好ましくは35MPa以上の引張強度を有するプラスチックを製造することがさらに可能である。
【0068】
本発明による成形組成物は、特に、前記ポリマーを配合することによって得られる。ここで、ポリマーは溶融状態で混合される。ポリマーは、一般的に、150〜350℃、好ましくは220〜330℃の範囲の温度にて、押出機、好ましくは二軸押出機で配合される。
【0069】
本発明は、特に、優れた特性プロフィールを有し、したがって多用途の新規成形品を提供する。本発明は、したがって、本発明によるプラスチック成形組成物を含む成形品をさらに提供する。
【0070】
本発明による成形品は、特に、低いヘイズと高い耐衝撃性を特徴とし、これらの特性は、薄い成形品でも達成することができる。好ましい成形品の厚さは、たとえば、0.5〜1.5mmの範囲であり得る。
【0071】
ひっかき耐性成形品の透過率τD65が、DIN5036パート3によると≧86%、好ましくは≧88%であり得ることは特に驚くべきことである。成形品について前述の機械的及び/又は光学特性は、本発明を決して制限することを意図しない。それどころか、前記データは、成形品の特に顕著な特性を説明するのに役立つ。好ましい成形品のヘイズは、ASTM D1003により23℃で測定すると、好ましくは最大で1.0%、特に好ましくは最大で0.7%であり、これらの値は、その厚さが1.5mmまで、特に好ましくは約1mmである成形品に特に当てはまる。
【0072】
好ましい成形品は、さらに亀裂がなく、高い耐薬品性を示す。好ましい本発明による成形品は、少なくとも30分の暴露時間を使用し、23℃で、エタノール/水混合物(70/30)、NaOH溶液(1%)又は硫酸(1%)に対して高い耐薬品性を示す。
【0073】
本発明の成形品はさらに、優れた耐候性を示し得る。キセノン試験における耐候性は、好ましくは少なくとも1000時間、特に好ましくは少なくとも2000時間である。たとえば、透過率のわずかな低下を用いて、この安定性を測定することができる。特に興味深い成形品は、特にその透過率が、照射処理の開始時の透過率値に基づいて、キセノン照射の2000時間後に、最高で10%、特に好ましくは最高で5%低下するものである。
【0074】
特に好ましい成形品は、特に、携帯電話、スマートフォン、カメラ、MP3プレーヤーなどの小型モバイル電子装置のディスプレーを被うディスプレーカバーである。
【0075】
本発明に関して、プラスチック成形組成物という表現は、プラスチック混合物が熱可塑的に、特に射出成形により加工できることを意味する。射出成形法は、それ自体使用歴が長く、本発明のプラスチック成形組成物は、とりわけ、特に良好な加工可能性を特徴とする。したがって、これらのプラスチック成形組成物は、特に、結果として得られる成形品が下流操作を必要としない比較的新しい方法で使用することができる。下流操作の一例は、スプルーの除去である。これらの技術は、トンネルゲート又はホットランナーダイを使用する。
【0076】
成形組成物が射出成形金型中に注入される温度は、特に、ポリマーの性質、及び添加剤に依存する。これらの加工温度は当業者に公知である。成形組成物が射出成形金型中に注入される際の成形組成物の温度は、一般的に150〜300℃、好ましくは220〜290℃の範囲である。
【0077】
成形品が金型から取り出される前に、適切な金型温度を設定することにより、成形組成物を好ましくは20〜130℃、特に好ましくは30〜100℃、そして特に非常に好ましくは35〜80℃の範囲の温度まで冷却することができる。
【0078】
驚くべきことに、本発明のプラスチック成形組成物は、ここでは特に短い射出時間をもたらす可能性があり、射出時間は好ましい実施形態では、0.2〜2秒の範囲であり、特に好ましくは0.3〜1秒の範囲である。これらの値は、一例として、40×50×1.2mmの通常のディスプレー形式について達成される。
【0079】
驚くべきことに、ここでは、結果として得られる成形品の特性に対して悪影響を及ぼすことなく、少なくとも400mm/s、特に好ましくは少なくとも600mm/sの射出速度を設定することが可能である。ここで、射出速度とは、溶融物がホットランナーダイを通って流れる際の流速を指す。一例として、これらの値は、1.5mm以上のダイ直径を有するホットランナーを用いる場合に得られる。
【0080】
以下、本発明の実施例及び比較例を用いて本発明を説明するが、結果的に制限することを意図しない。
【0081】
比較例1
100mm×100mm×1mmの寸法の成形品を、ENGEL製の射出成形機中、高光沢の研磨されたキャビティー及びホットランナーゲートを有する射出成形金型により製造する。ゲートの直径は2mmであり、射出成形機は35mm×20Dスクリューの射出ユニットを有していた。
【0082】
ここでは、商標PLEXIGLAS(登録商標)zk6HFでEvonik Roehm社から市販されている耐衝撃性が改良されたPMMA成形組成物を使用した。前記成形組成物は、2個のシェルを用いる構造を有し、乳化重合により得られるコア−シェル衝撃改質剤40質量%、及びそのメルトフロー速度が約21ml/10分(230℃/3.8kg)であるポリメチルメタクリレート約60質量%を含んでいた。成分を記載した混合比でスクリュー式混錬機(この場合、W&P製の共回転ZSK25mm二軸押出機)中に供給することによって製造した。
【0083】
Evonik Roehm社から得られるデータシートに記載されているように、PLEXIGLAS(登録商標)zk6HFは、薄肉携帯電話ディスプレー及び前述の他の用途の射出成形に好ましく、そして頻繁に使用される、易流動性耐衝撃性成形組成物である。
【0084】
成形品を製造するために、成形組成物を260℃の温度まで加熱し、金型中に130mm/s(スクリュー進行速度)の速度で注入した。保持圧は1000バールであり、圧力保持時間は2秒であり、冷却時間は8秒であった。
【0085】
ASTM D1003によるヘイズを、結果として得られた成形品に関して23℃で測定した。比較のため、DIN5036による23℃での透過率(τD65)及びISO179による23℃、標準的気候条件下での耐衝撃性を、同様の方法で得られた厚さ3mmの試料に関して測定した。230℃、3.8kgでのメルトフロー速度、及び220℃、5MPaでのダイスエルも測定した。得られたデータを第1表に示す。
【0086】
比較例2
比較例1を本質的に繰り返した、使用した成形組成物は、商品名PLEXIGLAS(登録商標)zk40でEvonik Roehm社から市販されている。
【0087】
この成形組成物は、プラスチック成形組成物(商品名PLEXIGLAS(登録商標)zk50でEvonik Roehm社から市販されている)の高いダイスエルをもたらす衝撃改質剤約67質量%、そのメルトフロー速度が約3ml/10分(230℃/3.8kg)であるポリメチルメタクリレート約33質量%を含んでいた。
【0088】
プラスチック成形組成物の特性を、前述の方法を用いて研究し、ここではヘイズを厚さ1mmの成形品に関して同様に評価した。得られたデータを第1表に示す。
【0089】
本発明による例1
比較例1を本質的に繰り返した、本発明の実施例1は、メルトフロー速度が約21ml/10分であるPMMA成形組成物A)(商品名PLEXIGLAS(登録商標)POQ62でEvonik Roehm社から市販されている)約33質量%、及びプラスチック成形組成物(商品名PLEXIGLAS(登録商標)zk50でEvonik Roehm社から市販されている)の高ダイスエルもたらす衝撃改質剤約67質量%の配合(溶融状態で混合)により製造したプラスチック成形組成物を使用した。
【0090】
プラスチック成形組成物の特性を、前述の方法を用いて研究し、ここではヘイズを厚さ1mmの成形品に関して同様に評価した。得られたデータを第1表に示す。
【0091】
比較例3
比較例1を本質的に繰り返した、使用した成形組成物は、商品名PLEXIGLAS(登録商標)zk6BRでEvonik Roehm社から市販されている。
【0092】
この成形組成物は、その構造が2つのシェルを有し、乳化重合により得られる衝撃改質剤約40質量%、及びメルトフロー速度が約6ml/10分(230℃/3.8kg)であるポリメチルメタクリレート約60質量%を含んでいた。
【0093】
プラスチック成形組成物の特性を、前述の方法を用いて研究し、ヘイズをここでは厚さ1mmの成形品に関して同様に評価した。得られたデータを第1表に示す。
【0094】
比較例4
比較例1を本質的に繰り返した、使用した成形組成物は、商品名PLEXIGLAS(登録商標)zk30でEvonik Roehm社から市販されている。
【0095】
この成形組成物は、プラスチック成形組成物(商品名PLEXIGLAS(登録商標)zk50でEvonik Roehm社から市販されている)の高ダイスエルもたらす衝撃改質剤約50質量%、及びメルトフロー速度が約3ml/10分(230℃/3.8kg)であるポリメチルメタクリレート約50質量%を含んでいた。
【0096】
プラスチック成形組成物の特性を、前述の方法を用いて研究し、ここでは、ヘイズを厚さ1mmの成形品に関して同様に評価した。得られたデータを第1表に示す。
【0097】
本発明による例2
比較例1を本質的に繰り返した、本発明の実施例2は、そのメルトフロー速度が約21ml/10分であるPMMA成形組成物A)(商品名PLEXIGLAS(登録商標)POQ62でEvonik Roehm社から市販されている)約50質量%、及びプラスチック成形組成物(商品名PLEXIGLAS(登録商標)zk50でEvonik Roehm社から市販されている)の高ダイスエルをもたらす衝撃改質剤約50質量%を配合(溶融状態で混合)することにより製造されたプラスチック成形組成物を使用した。
【0098】
プラスチック成形組成物の特性を、前述の方法を用いて研究し、ここではヘイズを厚さ1mmの成形品に関して同様に評価した。得られたデータを第1表に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
前記データから明らかなように、本発明による構成を使用した場合にのみ、厚さ1mmの試料で1%よりも小さなヘイズが得られる。これらのデータは、メルトフロー速度と独立して達成することができる(それぞれ比較例1及び本発明による例2ならびに本発明による例1及び比較例3を参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリ(メタ)アクリレートA)及び少なくとも1つの耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)を含み、プラスチック成形組成物のダイスエルが、5MPa及び220℃でDIN54811(1984)にしたがって測定して少なくとも15%であり、ポリ(メタ)アクリレートA)のメルトフロー速度が、230℃にて3.8kgの負荷でISO1133にしたがって測定して少なくとも10ml/10分であることを特徴とする、プラスチック成形組成物。
【請求項2】
耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)のメルトフロー速度が、230℃にて10kgの負荷でISO1133にしたがって測定すると、0.1〜5ml/10分の範囲にあることを特徴とする、請求項1記載のプラスチック成形組成物。
【請求項3】
耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)が懸濁重合によって得られることを特徴とする、請求項1又は2記載のプラスチック成形組成物。
【請求項4】
耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)が、少なくとも二段階の重合反応により得られ、この場合、第一段階で、少なくとも70質量%のメチルメタクリレートを含み、ガラス転移温度Tg>25℃を有するハード相A)を製造し、次いで第二段階で、そのポリマーが<25℃のガラス転移温度を有するタフ相B)のモノマーを添加して重合反応を完了し、ここで、第一段階でのハード相A)の重合が、a)油溶性フリーラジカル開始剤及びb)分子中に少なくとも2個のチオール基を有する有機硫黄連鎖移動剤の存在下で生じることを特徴とする、先行する請求項の少なくとも1項に記載のプラスチック成形組成物。
【請求項5】
ハード相A)の製造に用いられるモノマーの、タフ相B)の製造に用いられるモノマーに対する質量比が、1:0.15〜1:3の範囲にあることを特徴とする、請求項4記載のプラスチック成形組成物。
【請求項6】
油溶性フリーラジカル開始剤の割合が、ハード相を製造するためのモノマーの質量に基づいて、0.01〜5質量%であることを特徴とする、請求項4又は5記載のプラスチック成形組成物。
【請求項7】
少なくとも2個のチオール基を有する有機硫黄連鎖移動剤の割合が、ハード相を製造するためのモノマーの質量に基づいて、0.05〜5質量%であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のプラスチック成形組成物。
【請求項8】
ポリ(メタ)アクリレートA)のメルトフロー速度が、230℃にて3.8kgの負荷でISO1133にしたがって測定すると、少なくとも15ml/10分であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のプラスチック成形組成物。
【請求項9】
ポリ(メタ)アクリレートA)の、耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)に対する質量比が10:1〜1:10の範囲にあることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のプラスチック成形組成物。
【請求項10】
プラスチック成形組成物のポリマーが、GPCにより測定すると、少なくとも2つの極大値を有する分子量分布を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のプラスチック成形組成物。
【請求項11】
プラスチック成形組成物が、10〜50質量%のポリ(メタ)アクリレートA)及び40〜90質量%の耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のプラスチック成形組成物。
【請求項12】
プラスチック成形組成物が、10〜50質量%のポリ(メタ)アクリレートA)、40〜90質量%の耐衝撃性が改良されたポリ(メタ)アクリレートB)、及び0〜30質量%の添加剤から構成されることを特徴とする、請求項11記載のプラスチック成形組成物。
【請求項13】
プラスチック成形組成物のメルトフロー速度が、230℃にて3.8kgの負荷でISO1133にしたがって測定すると、1〜6ml/10分の範囲にあることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載のプラスチック成形組成物。
【請求項14】
23℃にてISO179にしたがい測定されたプラスチック成形組成物の耐衝撃性が少なくとも60kJ/m2であることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載のプラスチック成形組成物。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載のプラスチック成形組成物を含む成形品。
【請求項16】
成形品の厚さが、0.5〜1.5mmの範囲にあることを特徴とする、請求項15記載の成形品。
【請求項17】
1mmの厚さについて、成形品のヘイズが、ASTM D1003にしたがい23℃にて測定した場合、最大で1%であることを特徴とする、請求項15又は16記載の成形品。
【請求項18】
請求項1から14までのいずれか1項記載のプラスチック成形組成物を射出成形する、請求項15から17までのいずれか1項記載の成形品の製造法。
【請求項19】
本発明によるプラスチック成形組成物の射出時間が0.3秒〜1秒の範囲にあることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
射出速度が少なくとも600mm/sであることを特徴とする、請求項18又は19記載の方法。

【公表番号】特表2012−532234(P2012−532234A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518720(P2012−518720)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000771
【国際公開番号】WO2011/003219
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】