説明

プラスチック歯車の性能試験方法及びその装置

【課題】プラスチック歯車の動作状態での破壊強度、耐久性の試験方法及びその試験装置を提供する。
【解決手段】駆動機構41に金属製駆動歯車42を連結した駆動部4と、負荷発生機構51と連結した回転軸52にトルク測定機構53を付設し、且つ試験歯車の前記回転軸への同軸連結機能を有する取付機構54を設けた測定部5とを備え、少なくとも駆動部と測定部の何れかに、試験歯車と基準歯車との噛み合わせのための位置調整機構を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック歯車の強度等の評価を行うための性能試験方法並びに同方法を実現する性能試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック歯車は、種々の機器の回転駆動伝達部品として採用されているが、近年は特にプリンター等のOA機器に多用されている。ところでOA機器の高性能化に伴い、充分に対応できる高品質(高精度)のプラスチック歯車が要求されるが、製出したプラスチック歯車の性能(精度、耐久性、強度)を正確に評価することができ、且つ安価に提供できる試験装置が提供されていないのが現状である(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−23421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また歯車が金属製であれば設計強度により保証され、殆ど考慮されない破壊耐力に関して、プラスチック歯車では、その特性から当然考慮されるべき歯車性能である。通常は各種部品のような静的破壊試験による場合には、実際の使用状態における耐久性能の測定はできないし、従前では、プラスチック歯車の動作状態での破壊強度や耐久性の試験装置は知られていない。
【0005】
そこで本発明は、プラスチック歯車の動作状態での破壊強度、耐久性の試験方法及びその試験装置を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプラスチック歯車の性能試験方法は、駆動機構と連結した金属製駆動歯車と、負荷発生機構と連結した試験歯車とを噛み合わせて回転させながら、試験歯車の負荷トルクを変化させたり、又は所定負荷で長時間作動させて、試験歯車の破壊時の負荷トルクや、歯形摩耗度と作動時間との関係の一方又は双方を計測して、試験歯車の破壊限度や、耐久性の何れか又は双方を知ることを特徴とするものであり、更に前記方法において、試験歯車の微小径軸にも対応するように、試験歯車と負荷発生機構の外側に試験歯車と噛み合う従動歯車を介装してなることを特徴とするものである。
【0007】
前記本発明方法を実現するプラスチック歯車の性能試験装置は、駆動機構に金属製駆動歯車を連結した駆動部と、負荷発生機構と連結した回転軸にトルク測定機構を付設し、且つ試験歯車の前記回転軸への同軸連結機能を有する取付機構を設けた測定部とを備え、少なくとも駆動部と測定部の何れかに、試験歯車と基準歯車との噛み合わせのための位置調整機構を設けてなることを特徴とするものであり、また前記性能試験装置に於いて、測定部を、負荷発生機構と連結した回転軸に従動歯車を装着した従動部と、試験歯車を装着保持する取付部とで形成すると共に、少なくとも従動部と取付部との何れか一方に、試験歯車と従動歯車の噛み合わせを可能とする位置設定機構を設けてなることを特徴とするものである。
【0008】
而して図1に示した模式図のとおり、駆動する駆動歯車(42)で、負荷と連結した試験歯車(軸負荷歯車)Bを回転させ、試験歯車Bの回転軸の負荷を徐々変化させ、破壊に至るまで運転を行うことや、所定の負荷状態で破壊に至るまで運転を行ったり、或いは所定負荷での所定時間運転後の歯車の摩耗状態を測定する等して、回転軸に負荷が接続されていた場合における試験歯車Bの強度並びに耐久性を知ることができる。
【0009】
また図3に示した模式図のとおり、駆動する駆動歯車(42)で、負荷と連結した従動歯車(56)との間に試験歯車(伝達負荷歯車)Cを噛み合わせて回転させ、前記の軸負荷歯車の試験と同様に、従動歯車(56)の負荷を徐々に変化させたり、所定負荷状態で所定時間運転や破壊までの運転を行い、試験歯車の回転軸が無負荷で伝達誤差のみを負っている場合における試験歯車Cの強度並びに耐久性を知ることができる。
【発明の効果】
【0010】
上記のとおり本発明は、駆動する金属製駆動歯車と、負荷を負わせた試験歯車とを噛み合わせて回転作動させたり、駆動歯車と負荷を負った従動歯車の間に、試験歯車を介装して作動させ、その運転中にトルクを変化させたり、所定の負荷状態で運転を継続して、試験歯車の破壊限度を知る性能試験方法及び装置で、製出したプラスチック歯車の実際の使用状態と同一環境下での強度や耐久性を測定することができ、製出したプラスチック歯車の品質(性能)評価を正確に且つ速やかに行うことができたと共に、性能評価装置を安価に提供できたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図2は本願発明の第一の実施形態を示したものである。この実施形態は、プラスチック歯車の強度性能並びに耐久性能を測定するもので、実施形態に示した装置は、駆動部4と測定部5とで構成され、駆動部4は、駆動モータや変速機機構からなる駆動機構41に、金属製駆動歯車42を連結してなる。
【0012】
測定部5は、負荷発生機構51と連結した回転軸52に、トルク測定機構53を付設すると共に、試験歯車Bの着脱が可能な取付機構54を備えてなる。また試験歯車Bの大小に対応できるように、駆動歯車42と取付機構54との間には、相対的位置調整機能を備えさせる必要があるので、測定部5の全体を移動機構を有するテーブル55上に設ける。勿論駆動部4側に移動機能を付与しても良い。また取付機構54は、前記の第一実施形態と同様に、歯車装着軸と、回転軸側の受け突起と、軸方向移動可能に設けた押圧軸と、回転軸52及び歯車装着軸に設けたケレ及びケレ受けとで形成される。
【0013】
而して試験歯車Bを取付機構54に装着して金属製駆動歯車42と噛み合わせ、駆動歯車42を作動させて、試験歯車Bを従動させると共に、試験歯車Bの回転軸52に所定の負荷(軸負荷)を印加する。この負荷状態での作動を継続して、試験歯車Bが破壊するまでや、異音を発するまでの時間によって当該歯車Bの耐久性能を知ることができるし、所定時間の負荷運転後の試験歯車Bの歯形形状の測定で、摩耗性能を知ることができる。また負荷を徐々に大きくして、当該歯車Bが破壊に至るまで運転し、破壊時の印加負荷トルクの値によって、当該歯車Bが、回転軸に負荷が接続されている状態での使用における破壊強度を知ることができる。
【0014】
図3は、本願発明の第二の実施形態を示したもので、前記第一実施形態と同様にプラスチック歯車の強度性能並びに耐久性能を測定するものである。特に駆動部4は前記第二実施形態と同様であるが、測定部を従動部5aと取付部5bとで構成したものである。
【0015】
従動部5aは、負荷発生機構51と連結した回転軸52に、トルク測定機構53を付設すると共に、従動歯車56を軸装したものである。また取付部5bは、試験歯車Cを自由回転状態(軸無負荷状態)で保持するもので、試験歯車Cの装着軸57と、装着軸57を保持する保持部58からなり、保持部58には、着脱機能を備えさせて、試験歯車Cの着脱を自在とする。
【0016】
更に試験歯車Cは駆動歯車42と従動歯車56の間に噛み合わせ介装させるもので、当該歯車Cの大小に対応できるように、駆動部4と、従動部5aと取付部5bのうち、少なくとも二つに移動機構を付設する必要がある。例えば、従動部5aと取付部5bを各々移動機構を有するテーブル55a,55b上に設けることで実現できる。勿論前記のテーブル機構に限定されるものではなく、所定の機能を有するものであれば、任意の機構を採用しても良い。
【0017】
而して取付部5bの装着軸57に装着し、テーブル55a,55bを移動させて、駆動歯車42と従動歯車56との間に、試験歯車Cを噛み合わせ、駆動機構41を作動させて駆動歯車42を回転させ、試験歯車C及び従動歯車56を従動させる。同時に従動歯車56の回転軸52に所定の負荷を印加する。そして所定負荷状態での長時間運転や、負荷変化による破壊試験を行うことで、歯車軸が無負荷状態のままで、且つ所定の伝達負荷がある使用状態における試験歯車Cの強度並びに耐久性や耐摩耗性の性能を知ることができる。
【0018】
尚前記の第一実施形態及び第二実施形態において、各駆動機構41と駆動歯車42の間、及び負荷発生機構51と回転軸52との間は、図示したような同軸に限定されるものではなく、途中に変速機や適宜な伝達機構を介在させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の強度等の性能試験(軸負荷)説明模式図。
【図2】同第一実施形態の簡易な構造説明図。
【図3】本発明の強度等の性能試験(伝達負荷)説明模式図。
【図4】同第二実施形態の簡易な構造説明図。
【符号の説明】
【0020】
4 駆動部
41 駆動機構
42 金属製駆動歯車
5 測定部
5a 従動部
5b 取付部
51 負荷発生機構
52 回転軸
53 トルク測定機構
54 取付機構
55,55a,55b テーブル
56 従動歯車
57 装着軸
58 保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構と連結した金属製駆動歯車と、負荷発生機構と連結した試験歯車とを噛み合わせて回転させながら、試験歯車の負荷トルクを変化させたり、又は所定負荷で長時間作動させて、試験歯車の破壊時の負荷トルクや、歯形摩耗度と作動時間との関係の一方、又は双方を計測して、試験歯車の破壊限度や、耐久性の何れか一方、又は双方を知ることを特徴とするプラスチック歯車の性能試験方法。
【請求項2】
試験歯車と負荷発生機構との間に、試験歯車と噛み合う従動歯車を介装してなる請求項1記載のプラスチック歯車の性能試験方法。
【請求項3】
駆動機構に金属製駆動歯車を連結した駆動部と、負荷発生機構と連結した回転軸にトルク測定機構を付設し、且つ試験歯車の前記回転軸への同軸連結機能を有する取付機構を設けた測定部とを備え、少なくとも駆動部と測定部の何れかに、試験歯車と基準歯車との噛み合わせのための位置調整機構を設けてなることを特徴とするプラスチック歯車の性能試験装置。
【請求項4】
測定部を、負荷発生機構と連結した回転軸に従動歯車を装着した従動部と、試験歯車を装着保持する取付部とで形成すると共に、少なくとも従動部と取付部との何れか一方に、試験歯車と従動歯車の噛み合わせを可能とする位置設定機構を設けてなる請求項3記載のプラスチック歯車の性能試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−242962(P2006−242962A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110397(P2006−110397)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【分割の表示】特願2000−69630(P2000−69630)の分割
【原出願日】平成12年3月14日(2000.3.14)
【出願人】(500117749)株式会社丸互 (1)
【出願人】(592102940)新潟県 (41)
【Fターム(参考)】