説明

プラスチック燃料タンク

【解決手段】本発明は、少なくとも1つの燃料ボリュームを取り囲む少なくとも1つのタンク壁(2)を有する自動車のプラスチック燃料タンク(1)に関し、タンク壁(2)は、実質的に及び/又は確実にその上に接続された2次元に延びた強化層(3)の形で、曲げ剛性を増大する手段を、少なくとも所定の領域或いは所定の領域群に、提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの燃料ボリュームを取り囲む少なくとも1つのタンク壁を有する自動車のプラスチック燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
この種類のプラスチック燃料タンクは、それらの製造の効力により、それらは複雑な輪郭と複数の相互に通じているタンクボリュームを持つことができるので、特に自動車での使用に好適であることが分かり、特に、この種類のプラスチック燃料タンクは、自動車での取り付け状況に好ましくは適合させることができる。
【0003】
ディーゼル或いは火花点火エンジンで動作する自動車において、燃料タンクシステムは一般に減圧された態様で作動され、即ち、ガス体(atmosphere)に関する均圧が、運転中の通気のための装置を介してタンクボリュームと連絡する少なくとも1つの燃料気化フィルターを介して発生する。通例、用いられる燃料気化フィルターは、活性化されたカーボンフィルタとして設計されている。自動車が静止している、或いは同様に燃料の補給を受ける間、例えば、前記フィルターはガス状の炭化水素が加えられる一方で、内燃機関の作動中、それらはエンジンで引き込まれる燃焼用空気によるリバースパージング(reverse purging)を介して排出される。燃料気化フィルターの吸着能力は、そのサイズで少なからず決定されると理解される。電気モータ、内燃機関の双方により運転される自動車の場合、燃料気化フィルターのリバースパージングは、システムの特質により、内燃機関エンジンの作動中にのみ可能である。従って、対応する総量により燃料気化フィルターの給気能力を増加する必要が理論上はあり、これはより大きな全体的なボリュームを必然的に伴う。これは、普通は望ましくない。別の方法として、燃料タンクで蒸気気圧勾配を減らすことは可能であり、燃料が液体段階からガス段階へと移行する傾向のより少ないものを持つことを確実なものとする。これは、例えば、燃料タンクを圧力容器として構成することにより成し遂げられ、即ち、それは、大気圧に関連して与えられた圧力差で密閉して封印される。これは、特にプラスチックタンクの堅さが、とりわけ周囲温度に依存して、燃料タンクが比較的高い荷に耐えなければならないことを意味しており、そして、自動車の燃料タンクが比較的高い周囲温度にさらされるという可能性は特定の状況下で除外されることができない。
【0004】
プラスチック燃料タンクのための強化剤は基本的には知られているが、それらは、内部の支柱(braces)又は支持材の形で提供されており、燃料タンクのボリュームをかなり削減する。さらに、燃料タンクの中のそのような支柱の挿入は、複雑なプロセスである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎を形成する目的は、この点で初めに述べられるタイプの燃料タンクを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、少なくとも1つの燃料ボリュームを取り囲む少なくとも1つのタンク壁を有する自動車のプラスチック燃料タンクにより成し遂げられ、プラスチック燃料タンクは、前記タンク壁が、実質的に及び/又は確実にその上に接続された2次元に延びた強化層の形で、曲げ剛性を増加する手段を、少なくとも所定の領域或いは所定の領域群に、提供するという事実により特徴づけられる。
【0007】
これは、それが保持できるボリュームを減じることなく、その曲げ剛性が増加するような方法で、外側及び内側の双方からプラスチック燃料タンクを部分的に強化することを可能とする。そのような強化層は、タンク壁の外側及び内側の双方に提供される。そのような強化層が燃料タンクの特に高いストレスポイントに選択的に提供されることができることは、とりわけ有利である。
【0008】
本発明に従ったプラスチック燃料タンクの好ましい変形では、強化されるようにタンク壁におよそ平行に延びている熱可塑性物質のシート及び/又はストリップ(strips)は、強化層として提供される。そのようなシート又はストリップは、強化されるエリアで燃料タンクの外観におよそ合致するように設計されることができる。
【0009】
例えば、強化層は、少なくとも所定の領域或いは所定の領域群で、後者から少し離れて補強されるように、スペーサと一体となって、前記タンク壁に取り付けられている。
【0010】
補強される前記領域において、前記タンク壁は、強化層に、例えば、リベットで留められるか、溶接されるか、或いは係止される、突起か、ノブか、或いはドーム形状の隆起を提供することができる。
【0011】
別の方法として、強化層は、タンク壁に、溶接されるか、リベットで留められるか、或いは係止される、突起か、ノブか、或いはドーム形状の隆起を提供することができる。
【0012】
所定のポイントにて間隔を有するタンク壁に接続されている、そのような強化層によって、タンク壁の曲げ剛性は段ボール紙の作用の原理に従って強化される。ノブ、ドーム形状の隆起、或いは突起は、タンク壁と強化層の間の物質的なブリッジを生成するものであり、そのブリッジは曲げ剛性を著しく高める。
【0013】
別の方法として、強化層が、中間層を介して、タンク壁に接続されている何れの場合にも設備は作られる。
【0014】
本発明に従ったプラスチック燃料タンクの好適な実施形態において、熱可塑性物質でできた波形のシートのような構造体は、その頂点がタンク壁及び強化層にそれぞれ溶接され及び/又は接着剤で貼り合わされ、中間層として提供される。
【0015】
本発明に用いられる意味での用語"2次元に延びた製品"或いは"シートのような構造体"は、シート形状の実質的にフラットなエレメントを意味する意図である。
【0016】
本発明に従ったプラスチック燃料タンクの好適な実施形態において、強化層が、開口を提供することが可能である。そのような開口は、燃料タンクの中に固定される構成要素を据え付けるのに用いられることができる。それら自身の或いは中の開口は、それらが波を吸収して、車両の原動力によって動かされる燃料のエネルギーに影響を与えて、それ故に打上げ波と大波を防ぐ要素としての役割を果たす、という利点がある。
【0017】
これに対して、強化層とタンク壁の間の空間は、燃料が溢れる或いは流れることを可能にするように設計されることも可能である。そのような効果は、強化層が燃料タンクの中に配置された場合にのみ成し遂げられることが可能である。基本的に、強化層をタンク壁の内側及び/又は外側に提供することは可能である。
【0018】
本発明に従ったプラスチック燃料タンクは、タンクは、運転中の通気及び燃料補給中の通気のための手段を有し、運転中の通気のための装置は、圧力保持機能を備えた少なくとも1つの運転中通気バルブを備え、その手段により、プラスチック燃料タンクのボリュームは、大気圧と比例して予め定められた圧力差の範囲内に保たれるような態様で便宜上設計される。
【0019】
本発明のたくさんの実例となる実施形態は、添付図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、断面で本発明に従ったプラスチック燃料タンクの配置図を示す。
【図2】図2は、図1の詳細IIの拡大図を示す。
【図3】図3は、図2のラインIII−IIIに沿った断面図を示す。
【図4】図4は、タンク壁の強化層の取り付けの選択的な実施形態を示す。
【図5】図5は、タンク壁に提供される強化層の更なる選択的な実施形態を示す。
【図6】図6は、本発明に従った態様でタンク壁に提供される強化層の第3の変形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明に従ったプラスチック燃料タンク1を非常に簡素化した断面図で示しており、図1のサイズ比率は大げさに一定の比率でない態様で表されている。
【0022】
プラスチック燃料タンク1は、繊維(webs)又はシートの形式の予備的成形品の押し出しブロー成形により取得される押し出しブロー成形プラスチック燃料タンクとして便宜上設計されている。繊維又はシートの形式のそれら予備的成形品は、閉じたワンピースのプラスチックタンクを与えるために、3部ブロー成形金型のマルチステージオペレーションで成形される。
【0023】
この種類のプラスチック燃料タンクの製造の間、後者の成形の間、燃料タンクの次の輪郭を定めるハーフシェルの内壁の上に、比較的単純な態様で、作り付けの及び取り付けられた部品、作り付け及び/又は取り付けられた部品を、位置決めする可能性が原則としてある。
【0024】
図面に表わされたプラスチック燃料タンク1は、また、その輪郭に関して非常に簡素化された態様で表されている。当業者は、この種のプラスチック燃料タンクは、複数の互いに連絡し合う構成要素のボリュームを備えた非常に複雑な輪郭を有しているという事実に通じている。
【0025】
詳細には以下に説明されるように、記述されている実施形態の中でタンク壁2の部分的な強化のために、2枚の強化層3は、タンク壁2により囲まれるボリュームの中で、より具体的にはタンク壁2から少し離れて、タンク壁2に取り付けられる。強化層3とタンク壁2の間の距離は、誇張されたスケールで表されている。図1に示されるプラスチック燃料タンクの改良において、強化層3は、それらがタンクの下部側及び上部側全体の上に本質的に延びているような方法で、表わされている。しかしながら、本発明は、それら強化層はシート或いはストリップ形状のデザインとされてよく、強化が必要とされるプラスチック燃料タンクの特定のポイントにのみ提供されてよいものと説明される。それら強化層3は、プラスチック燃料タンク1のタンク壁2に直接的に適用されてよい。述べられた実施形態において、しかしながら、それらはタンク壁2から少し離れて、より詳細には、全体的にタンク壁2の曲げ剛性が関係している範囲にて著しく増大されるように、それらがタンク壁2に適切に接触するような方法で、配置されている。
【0026】
図1乃至3に表わされた実施形態において、V形状の側面4は強化層3とタンク壁2との間に提供され、前記V形状の側面は、互いに接続されておらず、強化層3とタンク壁2との間の空間5に燃料が流入することができるハチの巣状の構造を与える。側面4は強化層3よりも相対的により柔軟であってよい。配置が、プラスチック燃料タンク1の中で打ち上げ波或いは大波を抑制するエレメントとして付加的に作用するように、空間5はタンクボリュームの残余に連絡する。およそV形状の側面4の開口側は、内部にてタンク壁2に向けて曲がっている。前記側面は、力学の観点から、一種の"段ボール効果(corrugated-cardboad effect)"が引き起こされるような方法で配置されている。
【0027】
プラスチック燃料タンクの他の実施形態は図4に表わされている。ここで、波形の中間層6は強化層3とタンク壁2の間に配置されており、前記中間層は、同様に熱可塑性物質で構成されており、波形構造の頂点7は、それぞれタンク壁2と強化層3に結合されている。中間層6は、タンク壁2及び強化層3よりもより小さな曲げ剛性であり、その結果として、タンク壁2全体の曲げ剛性は、曲げの一方向では増大されるが、それに対して横断する方向には変わらないままである。
【0028】
このように、曲げ剛性の方向の増大は、タンク壁の特定のポイントで図4に示される構造の選択的な配列を通して成し遂げられることができる。
【0029】
本発明に従ったプラスチック燃料タンク1の更なる実施形態は図5に表わされる。ここで、強化層3は、うねのある外形として直接的に設計されており、タンク壁2に直線的に結合されている。代案として、強化層3の個々のドーム形状に隆起した部分が、縦方向に或いは横に延びたリブの代わりに、タンク壁2に結合(welded)されることも可能である。
【0030】
本発明に従ったプラスチック燃料タンク1の更なる変形(不図示)において、中間層6は、たとえば、図5におけるそれに関連した断面外形を有してよい。
【0031】
図5は、開口8a,8bが与えられるうねのある強化層3を示す。開口8aはおよそ横にタンク壁2へと延びており、燃料の通路としての役目を果たし、この第1の目的はそれらにオーバーフローする燃料のうねりのエネルギーを分散することにある。タンク壁におよそ平行に延びている開口8bは、自明に燃料が同様に流入することを許すが、それらはプラスチック燃料タンク1に提供されるように内部の付属品を設置するのに使用されてよい。
【0032】
最後に、図6は強化層3の設計の更なる改良を示し、それは台形の外形の縦の或いは横のリブのどちらかを有してよく、対応するドーム形状の突起、或いは隆起した部分が提供されてよい。これらは、同様に、開口8a,8bを備えていることができる。
【0033】
別の方法として、およそ平面に、2次元に延びた構造として分離したポイントにてタンク壁に熱的に強化層3をリベットで留めるか溶接することは可能である。強化層3は、プラスチック燃料タンクの成形の間に、タンク壁2に溶接されるスタッド形状の突起が提供されていてもよい。強化層3は、プラスチック燃料タンク1の外側に取り付けられると、強化層は、例えば熱反射体による突き合わせ溶接、摩擦溶接、またはその種の他のものにより、第2の加熱段階にてタンク壁2に接続される。別の方法として、接着力を高める手段の使用が考えられる。
【符号の説明】
【0034】
1 プラスチック燃料タンク
2 タンク壁
3 強化層
4 側面
5 空間
6 中間層
7 頂点
8a,8b 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの燃料ボリュームを取り囲む少なくとも1つのタンク壁(2)を有する自動車のプラスチック燃料タンク(1)において、前記タンク壁(2)は、実質的に及び/又は確実にその上に接続された2次元に延びた強化層(3)の形で、曲げ剛性を増加する手段を、少なくとも所定の領域或いは所定の領域群に、提供することを特徴とする自動車のプラスチック燃料タンク。
【請求項2】
強化されるようにタンク壁(2)におよそ平行に延びている熱可塑性物質のシート及び/又はストリップは、強化層(3)として提供されることを特徴とする請求項1に従ったプラスチック燃料タンク。
【請求項3】
前記強化層(3)は、少なくとも所定の領域或いは所定の領域群で、後者から少し離れて補強されるように、スペーサと一体となって、前記タンク壁(2)に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2の1つに従ったプラスチック燃料タンク。
【請求項4】
補強される前記領域において、前記タンク壁(2)は、強化層(3)に、リベットで留められるか、溶接されるか、或いは係止される、突起か、ノブか、或いはドーム形状の隆起を提供することを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに従ったプラスチック燃料タンク。
【請求項5】
前記強化層(3)は、前記タンク壁(2)に、溶接されるか、リベットで留められるか、或いは係止される、突起か、ノブか、或いはドーム形状の隆起を提供することを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに従ったプラスチック燃料タンク。
【請求項6】
前記強化層(3)は、中間層(6)を介して、前記タンク壁(2)に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに従ったプラスチック燃料タンク。
【請求項7】
熱可塑性物質でできた波形のシートのような構造体は、その頂点(7)がタンク壁(2)及び強化層(3)にそれぞれ溶接され及び/又は接着剤で貼り合わされ、中間層(6)として提供されることを特徴とする請求項6に従ったプラスチック燃料タンク。
【請求項8】
前記強化層(3)は、開口(8a,8b)を備えていることを特徴とする請求項1乃至7のうちの1つに従ったプラスチック燃料タンク。
【請求項9】
少なくとも1つの強化層(3)は、前記タンク壁(2)の内側及び/又は外側に提供されることを特徴とする請求項1乃至8のうちの1つに従ったプラスチック燃料タンク。
【請求項10】
前記タンクは、運転中の通気及び燃料補給中の通気のための手段を有し、運転中の通気のための装置は、圧力保持機能を備えた少なくとも1つの運転中通気バルブを備え、その手段により、プラスチック燃料タンク(1)のボリュームは、大気圧と比例して予め定められた圧力差の範囲内に保たれることを特徴とする請求項1乃至9のうちの1つに従ったプラスチック燃料タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−520785(P2012−520785A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500102(P2012−500102)
【出願日】平成22年2月27日(2010.2.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001230
【国際公開番号】WO2010/105734
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(510169365)コーテックス テクストロン ジーエムビーエイチ アンド シーオー ケージー (12)
【Fターム(参考)】