説明

プラスチック製の二重容器

【課題】プラスチック製の二重容器において、熱湯を用いた使用の後においても、外容器と内容器の間隙に水等の浸入を防ぐことができる二重容器を提供する。
【解決手段】
外容器1と内容器2は、両底面部に設けられたネジ部により螺合するものであり、内容器1を外容器2に締め方向に回転させてねじ込む過程で、外容器開口上端部12と内容器開口周縁部のフランジ部21が、弾性を有するリング状のガスケット4を介して圧着して嵌合することで、外容器1と内容器2の相対位置が固定される構造とし、両側壁間には、所定の間隙を設ける。また、フランジ部内面の上面側のガスケット4と密着する領域にリブ部25を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック製の二重容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製の二重容器は外容器と内容器からなり、これらの容器間には間隙を有することで空気層を保有させることができる。この結果、内部にスープ等の熱い食品を入れた場合においても保温性が高く、また、断熱性を有するため素手で容器を保持できる。また、内部にアイスクリーム等の冷たい食品を入れた場合においても同様の効果を得ることができる。
【0003】
このような二重容器としては、例えば、外容器と内容器の嵌合構造によって一体性よく強固に結合でき、両容器の肉厚を厚くすることなく充分な保形強度を有するものや(特許文献1)、本願出願人による即席食品用の二重容器がある(特許文献2)。
【0004】
これらの容器は、それぞれ特有の効果を有するものである。実公昭63−6020に開示された二重容器であると、容器を洗浄等する場合において外容器と内容器の間隙への水の浸入を防ぐためには、外容器と内容器の開口端部での嵌合において完全に接着させることが必要となる。しかし、この場合には、外容器と内容器の隙間にラベル等を挿入した場合に、この入れ替え等が困難になるという問題がある。
【0005】
また、本出願人による特願2006−307130については、外容器と内容器を両底面部に設けた連結部で螺合係止させ、かつ外容器と内容器の開口フランジ部にガスケットを介して圧着して嵌合させるという構造が開示されている。本二重容器であれば、保温性・断熱性に優れており、また、外容器と内容器の間隙にラベルをたるみなく保持することができる。それでいて外容器と内容器を簡単に分離でき、ラベルの入れ替え等も容易に行うことができるという優れた効果を有している。
【0006】
【特許文献1】実公昭63−6020
【特許文献2】特願2006−307130
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特願2006−307130に開示される二重容器において、本発明者の熱湯を用いた実験の結果、熱湯を注加して喫食した後に、二重容器の洗浄のために水等に浸漬すると外容器と内容器の間隙に水が進入してくるおそれがあることが判明した。
【0008】
この原因としては、次のように考えることができる。熱湯をプラスチック製の内容器に注加すると、内容器は加熱されるため、熱による膨張が大きく、一方、外容器には、熱湯は直接に接触しないために、熱による膨張は比較的小さくなる。
【0009】
このように、外容器は膨張しないが、内容器のみが膨張した状態であることが原因となり、ガスケットを介する外容器と内容器の圧着が弱まり、二重容器を使用後に洗浄のために、水を使用した場合に、外容器と内容器の間隙への水の浸入が起こりやすくなることが予想される。
【0010】
そこで、本発明者らは、上記の二重容器を改良し、熱湯を用いた場合に、外容器と内容器のガスケットを介する圧着性の低下という問題点を回避できるようなプラスチック製の二重容器を開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、プラスチック製の二重容器を熱湯を用いた使用の後においても、外部からの外容器と内容器との間隙への水の侵入を防ぐ点で有利な構造を見出した。
【0012】
本発明の二重容器における外容器(1)と内容器(2)の固定方法については両底面部にねじ部(11、22)をそれぞれ設け、これらを螺合させる構成を採用する。但し、本ねじ部(11、22)における締め付けによって両容器(1、2)を係止して固定するのではない。
【0013】
すなわち、内容器(2)を外容器(1)に対して締め方向に回転させてねじ込む過程で、外容器開口上端部(12)が内容器フランジ部(21)に挿入されたガスケット(4)に接触し、これの圧縮を始めると、締め方向の回転が徐々に困難になる。そして、締め方向の回転が阻止される程度まで回転させることで、外容器の開口上端部(12)と内容器開口周縁部のフランジ部(21)を、弾性を有するリング状のガスケット(4)を介して圧着して嵌合させる状態となり、ここで、両容器が固定される構造を採用した。
【0014】
この構造を採用することで、ガスケット(4)を介した両容器間の間隙(6)の密閉性を高めることができ、熱湯を用いた使用の後においても、水等で洗浄した場合に間隙(6)の内部への水の浸入を防止することができる。
【0015】
また、本構造において外容器(1)と内容器(2)の各側壁間に、所定幅の間隙(6)が形成させることで二重容器の保温性や断熱性を担保することができる。また、この間隔(6)にラベル(8)を挿入することができ、好みの絵や写真などを入れたオリジナルのマイカップを楽しむことができる。
【0016】
すなわち、本願第一の発明は、
カップ状の外容器と内容器を含み、内容器開口周縁部に、外容器開口上端部と嵌合する下向きに凹状のフランジ部を有するプラスチック製二重容器であって、
(1)外容器と内容器は、両底面部に設けられたネジ部により螺合するものであり、内容器を外容器に締め方向に回転させてねじ込む過程で、外容器開口上端部と内容器開口周縁部のフランジ部が、弾性を有するリング状のガスケットを介して圧着して嵌合することで、締め方向の回転が阻止されることにより、外容器と内容器の相対位置が固定されており、
(2)外容器と内容器の各側壁間には、所定幅の間隙が形成されている、
ことを特徴とするプラスチック製二重容器、
である。
【0017】
また、間隙(6)への水の侵入を防ぐ点においては、特に、外容器の開口部上端部(12)、ガスケット(4)、内容器開口周縁部のフランジ部(21)の圧着状態が関係するが、内容器開口周縁部のフランジ部(21)内面の上面側のガスケット(4)と密着する円周領域に沿って、1又は数本のリブ部(25)を形成させることによって密着性を高め、外容器(1)と内容器(2)の間隙(6)への水の浸入をより防止できることを見出した。
【0018】
すなわち、本願第二の発明は、
内容器フランジ部内面の上面側のガスケットと密着する円周領域に1又は数本の凸状リブ
が形成されている請求項1に記載のプラスチック製二重容器、
である。
【0019】
次に、内容器(2)の側壁下端部(23)が外容器(1)の底面内側に接触するか又は接触するに等しい間隔しか有しない場合には、熱湯を用いた使用によって内容器(2)が膨張によってその側壁部が伸長する。そして、この場合、内容器の側壁下端部(23)が外容器の底面内側に接触して内容器(2)が上方に押し上げられ、ガスケット(4)を介する外容器(1)と内容器(2)の圧着が弱まり、これによって、二重容器を洗浄したときの外容器と内容器の隙間(6)への水の浸入が起こりやすくなることが予想される。
【0020】
また、同様に内容器のねじ部(22)においても、内容器の熱膨張によって、内容器側の雄ねじ部(22)の位置が下方向に伸長する場合がある。この場合、雄ねじ部(22)と雌ねじ(11)の螺合状態が、締め方向に回転できないか、ほぼこれに近い状態であると、やはり内容器(2)が上方に押し上げられ、外容器と内容器の隙間(6)への水の浸入が起こりやすくなることが考えられる。
【0021】
尚、これらの熱膨張による変形は、熱湯を用いた繰り返しの使用によっても徐々に進行するものと考えられる。
【0022】
そこで、内容器の側壁下端部(23)と外容器の底面部内側との間に所定の隙間が存在すれば、熱変形による膨張が起こったとしても、内容器の側壁下端部(23)が外容器の底面部内側に接触することはなく、また、同様に、ねじ部における螺合状態が、さらに締め方向に回転可能な状態であれば、上述のような問題は生じない。
【0023】
すなわち、本願第三の発明は、
請求項1又は2に記載のプラスチック製二重容器であって、
(A)内容器の側壁下端部が外容器の底面部内側より所定の隙間を有し、
(B)ねじ部の螺合状態は、締め方向にさらに回転可能な状態である、
プラスチック製二重容器、
である。
【0024】
次に、ガスケット(4)は、内容器開口周縁部のフランジ部(21)に挿入されるが、ラベル(8)の入れ替え等の作業において、外容器(1)と内容器(2)を分離する際に、内容器(2)からガスケット(4)が落下すると、再度挿入することが必要であり、煩雑になる。そこで、ガスケット落下防止用の凸部(24)を内容器開口周縁部のフランジ部内面の側面又は側壁部上端付近に設けておけば便利である。
【0025】
すなわち、本願第四の発明は、
内容器の側壁部上端部付近又はフランジ部内面の側面側にガスケット落下防止用の凸部を
設けた請求項1ないし3のいずれかに記載のプラスチック製二重容器、
である。
【0026】
次に、外容器(1)の側壁部と内容器(2)の側壁部が略同テーパー形状を有すれば、間隔(6)にラベル(8)をゆるみなく挿入することができ、また、両容器の間隙(6)において、両容器の側壁間の距離を短く設定することができるため、ラベル等をたるみなく保持することができる。
【0027】
すなわち、本願第五の発明は、
外容器の側壁部と内容器の側壁部が略同テーパー形状を有する請求項1ないし4のいずれ
か記載の二重容器、
である。
【0028】
また、内容器の側壁下端部(23)が内容器の側壁部と連続して外容器の底面内側付近まで伸長していると、外部より目視した場合に、二重容器内部のねじ部(11、22)等が外部から見えず、視覚的にも優れており、また、ラベルを内容器側壁の全面を覆うように設定できるため有利である。
【0029】
すなわち、本願第六の発明は、
内容器の側壁下端部が内容器の側壁部と連続して外容器の底面内側付近まで伸長して形成
されている請求項1ないし5のいずれかに記載の二重容器、
である。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るプラスチック製の二重容器によって、熱湯を利用した使用後においても、外容器と内容器の間隙への水の浸入を防ぐことができ、両容器の間隙に挿入したラベル等を濡らすこと等なく安全に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明するが、本実施例は、本発明の一形態に過ぎず、これらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
図1及び図2は、本発明に係る二重容器の実施例を示す。図1及び図2において、符号(1)は、上面が開口するプラスチック製の外容器、(2)は同じく上面が開口するプラスチック製の内容器である。内容器(2)は外容器(1)の内部に収容でき、蓋材(3)によって内容器(2)を閉じる構成になっている。外容器(1)と内容器(2)は、外容器底面部内側中央部より凸設して形成された雌ねじ部(11)と、内容器の底面部外側中央部より凸設した雄ねじ部(22)より螺合されている。
【0033】
尚、ねじ部の螺合の態様は、図1(a)に示したものに限定されない。例えば、図1(b)に示す態様もある。また、外容器(1)に雄ねじ部、内容器(2)に雌ねじ部が凸設されているものであってもよい。
【0034】
外容器(1)と内容器(2)の各側壁は、略同テーパー形状を有し、両側壁間には空気層の間隙(6)が形成されている。
【0035】
さらに、各部の詳細を記載する。外容器(1)は種々のプラスチックを選択できるが、例えば、アクリルニトリルスチレンやポリカーボネートがある。
【0036】
尚、前述のようにラベル(8)を外容器(1)と内容器(2)の間に挿入させる場合には、外部よりラベルを視認できる様、外容器1を透明又は半透明の材質を用いることが好ましい。
【0037】
外容器(1)には、底面部内側に凸設して雌ねじ部(11)が一体に形成されており、
底面部外側には、滑り止め等の目的のために接地部(7)が設けられている。接地部(7
)としては、種々のものを用いることができるが、例えば、シリコーンゴム、エチレン-
プロピレンゴム、二トリルゴムがある。
【0038】
内容器(2)は、熱湯に触れる場合があるが、耐熱性のものであれば種々のプラスチックを用いることができる。例えば、耐熱性のポリプロピレンやポリエチレンナフタレートの樹脂がある。尚、内容器(2)は、無地の他、インモールド成型して側壁部の外面に特定のデザインを施してもよい。
【0039】
内容器(2)には、開口上端部にフランジ部(21)が形成されている。このフランジ部を拡大したものが図3であるが、本実施例の場合、図3(a)に示すように、リング状のガスケット(4)を装着するフランジ部の側壁部上端部付近に緩やかな凸部(24)が設けられている。このような凸部を設けることで、ガスケット(4)を装着した際に、その落下を防ぐことができる。尚、落下防止用の凸部は図3(b)に示すようにフランジ部内面の側面側に設けても良いし、図3(c)に示すように両方に設けてもよい。次に、内容器のフランジ部(21)の内面の上面側には、外容器(1)と内容器(2)の間隙(6)の密閉性を高めるために、リブ部(25)が円周上にそって、2つ設けられている。
【0040】
内容器(2)のフランジ部(21)と、外容器の開口上端部(12)はガスケット(4)を介して圧着する構造を有する。二重容器を組立てた後の本構造の拡大図が図4である。
【0041】
外容器の開口上端部(12)は、内容器(12)のフランジ部(21)に嵌合することができるように、厚みが薄く調整されている。
【0042】
内容器のフランジ部(21)には、ガスケット(4)が装着されており、ガスケット(4)は外容器の開口上端部(12)がフランジ部(12)に嵌合する際に、フランジ部内面と外容器の開口上端部(12)によって、挟まれて圧力よって圧縮、変形されており、両容器と密着した状態になっている。
【0043】
尚、リング状のガスケット(4)は、上記のような構造を有するため弾力性のある素材である必要があるが、特に種類は限定されず、種々素材が使用可能である。例えば、シリコーンゴム、エチレン-プロピレンゴムが挙げられる。
【0044】
次に、内容器フランジ部(21)のリブ部(25)がガスケット(4)に食い込むような状態となっており、外部から間隙(6)への水の浸入の防止効果を高めている。
【0045】
尚、リブ部(25)は、本実施例によると断面が三角形であるが、この形に限定されず、楕円形や長方形であっても可能である。リブの数は、1又は複数であれば良い。具体的には、1〜5程度が好ましい。
【0046】
リブ部(25)を設けた場合に、水の浸入防止効果が向上する理由については、明白ではない。しかし、例えば、図5に示すように、リブ部(25)を設けた場合の(a)と設けない場合の(b)を比較すると、まず、リブ部(25)を設けない場合(図5(b))には、ガスケット(4)が圧縮されてつぶれにくいため、ガスケット(4)と外容器上端部及び、内容器フランジ部(12)に十分な密着性を保つことができないものと考えられる。
【0047】
一方、リブ部を設けた場合(図5(a))には、リブ部によりガスケットがつぶれやすく、安定的にガスケットを圧縮することができるため、ガスケット(4)と外容器上端部及び、内容器フランジ部(12)がリブ部のない場合よりも密着した状況を得ることができるものと考えられる。このような理由により、間隙(6)への水の浸入を効果的に防ぐものであると推定される。
【0048】
尚、本実施例では、ガスケットの断面は円形であるが、これに限定されず、断面が方形等であってもよい。
【0049】
フランジ部(21)内面、ガスケット(4)と大きさ、リブ部(25)の大きさについては、フランジ部の大きさは、ガスケット直径に相当する幅があればよく、また、使用するリブの大きさとしては、例えば、約2mmの直径の断面が円形のガスケット(4)であれば、高さが0.2〜0.7mm程度であればよい。
【0050】
外容器(1)と内容器(2)は、外容器底面部内側より凸設して形成された雌ねじ部(11)と、内容器底面部外側より凸設した雄ねじ部(22)により螺合されている。
【0051】
外容器(1)と内容器(2)を固定する場合には、内容器を外容器に対して回転することで、締め方向にねじ込むことで、外容器の雌ねじ部(11)と内容器雄ねじ部(22)を螺合させる。
【0052】
この場合、締め方向への回転を開始し、これを進行させると、外容器の開口上端部(12)と内容器フランジ部内に装着されたガスケット(4)が接近し始め、やがて、図5(a)の上図に示すように、外容器の開放上端部(12)がガスケット(4)まで到達し、これを圧縮し始める。これに従い、締め方向の回転は徐々に困難になる。
【0053】
さらに締め方向への回転を進行させると、ガスケット(4)はさらに圧縮され、図5(a)の下図に示すように、やがて圧縮できないほどにまでつぶれて変形し、外容器開口上端部(12)と内容器開口周縁部のフランジ部(12)内面が、変形されたガスケット(4)を介して圧着することとなる。この状態では、ねじ部自体は、さらに締め方向に螺入することができる状態にはあるが、外容器開口上端部(12)と内容器フランジ部(12)での圧着度が高まっており、これ以上の内容器を締め方向への回転をおこなうことは困難となる。
【0054】
一方、逆に緩み方向についても、ガスケットは弾性を有しており外容器開口上端部(12)及び内容器フランジ部(12)と密着しているため、一定以上の緩み方向への回転力を加えなければ、緩み方向にも回転はできない。ここで、外容器(1)と内容器(2)の相対位置の固定が完了する。
【0055】
外容器(1)と内容器(2)の固定が完了した時点において、両容器の底面部付近を示したのが図6である。ここで、内容器の側壁下端部(23)は、外容器底面部内側付近まで到達している。これによって、内部にラベル(8)を挿入しても、側壁部に沿わせて保持することができるため、外容器底面内側付近までたるみなくラベル(8)を保持することができる。
【0056】
但し、側壁下端部(23)は、図6に示すように、底面部内側からは、所定の間隔d1を保つ構造を採っている。上述のように、側壁下端部(23)が、外容器底面内側に接するかこれに等しい状態であると、熱湯を用いた使用により、内容器の形状が膨張して変化し、垂直方向に伸長した場合、内容器の側壁下端部が外容器の底面部内側に接触して内容器のフランジ部(12)が上方に押し上げられ、ガスケットを介する外容器と内容器の圧着が弱まり、これによって、二重容器を洗浄したときの外容器と内容器の隙間への水の浸入が起こりやすくなることが推定される。
【0057】
このため予め内容器の側壁下端部と外容器底面部との間に所定の隙間(d1)を持たせている。尚、本隙間(d1)については、使用するプラスチックの材質にもよるが、概ね、内容器の側壁部の長さの0.3〜1.0%程度以上の隙間であればよい。
【0058】
また、ねじ部についてもねじ部の螺合状態が締め方向に回転できない状態であると、内容器(2)の熱膨張によって、内容器の雄ねじ部(22)が伸長するため、内容器(2)が上方に押し上げられ、外容器(1)と内容器(2)の隙間への水の浸入が起こりやすくなることが推定される。このため、図6に示すように、ねじ部での螺合状態は、内容器フランジ部(21)での圧着を考慮しなければ、さらに締め方向に回転可能な状態にある。
【0059】
さらに、このような状態の場合、外容器底面部内側と内容器(2)より凸設された雄ねじ部(22)の最下部には隙間(d2)が生じていることとなる。
【0060】
尚、雄ねじ部(22)がどの程度さらに締め方向に回転可能であればよいかについては、
プラスチックの材質等にもよるが、雄ねじ部が回転した場合の進度が隙間(d2)となることより、この隙間(d2)が概ね、内容器(2)の高さの0.3〜1.0%程度以上の隙間であればよい。
【0061】
次に、本実施例においては、蓋材(3)も想定している。蓋材(3)は図1、図2に示すように、内容器(2)の開口部にほぼ沿うように円形の外形を有し、該壁面の下部には該壁面よりも半径が小さく同心円状の凸部を有しており、該凸部が円中心部から外側方向に向かって鍔部(31)を有している。該鍔部(31)には第二のガスケット(5)が嵌め込まれている。蓋材(3)は、図4に示すように、内容器(2)の開口部と第二のガスケット(5)を介して密着して嵌合することができ、第二のガスケット(5)を介してこの弾性を利用して抜け止め状に構成することができる。また、蓋材(3)には、蓋を開けやすくするために摘み手部(33)を設けてもよい。
【0062】
また、通常、本発明の容器に即席食品を収納後、熱湯等を注加し、蓋材(3)で内容器
を嵌合し密着状態にすると、内部の蒸気圧力のために、蓋材(3)が跳ね飛んだりする等
の問題が生じるおそれがある。そこで、過剰の蒸気を抜く目的のために、小孔(32)が
設けられている。
【0063】
本容器の外容器(1)と内容器(2)の各側壁は略同テーパーを有し、両側壁間には空
気層の間隙(6)を形成している。この空気層の間隙(6)にラベル(8)を挿入することができる。挿入の方法は種々可能であるが、例えば、外容器(1)の胴部の内周面又は内容器の胴部の外周面にラベル(8)を密着させ、この状態で外容器(1)に内容器(2)を収納し、螺合することでラベル(8)を両容器間の間隙に挿入する方法がある。このラベル(8)は紙等の種々の材質を用いることができる。例えば、紙のほか、比較的弾性を有するポリエチレンテレフタレート等の種々の材質が可能である。印刷する好みの絵や写真等を自由に入れ替え等することができる。
【0064】
本容器で収納・喫食可能な即席食品としては、内容器(1)内に収納できる大きさのも
のであれば種々の形状・タイプの食品が可能である。特に、熱湯を注加することができるため、即席食品が好適である。具体的には、即席麺、即席ワンタンや即席スープ等が可能である。
【0065】
即席食品のうち、特に即席麺については、本容器を有効に利用できる即席食品であるが
、この場合、簡易包装された詰め替え式の即席麺が好ましい。
【0066】
具体的には、例えば、本願出願人による特願2006−254247号に記載されてい
る包装即席麺が好適である。すなわち、当該技術は、市販の即席カップ麺のように、熱湯
を注加するだけで、麺、スープ、具材が復元でき、喫食することができ、それでいて即席
カップ麺の場合とは異なり、包装体から容器に移して喫食するタイプの包装即席麺である
。本包装即席麺であればカップ容器を廃棄することがなく、廃棄する包材を極力減らすこ
とができる。
【0067】
この包装即席麺は、図7(a)に示すように、詰め替え用の即席麺塊(9)を軟包材(10)により脱気包装した包装即席麺であり、図7(b)に示すように、底面より開封して、図7(c)に示すように上部より本発明に係る二重容器を被せ、反転させて図7(d)に示すように、包装体より即席麺塊(9)を取り出し、これを本発明の二重容器に収納することで、この後、熱湯を注加した後、喫食することができる。
【0068】
特に、該即席麺塊(9)の形状を調整して、本願容器のテーパー形状に合わせて、図8(a)に示すように中間に保持することができると、熱湯を容器内に注加した場合、熱湯が上部のみならず、麺塊下部よりも麺塊を復元させることができるため、迅速に復元することができる。また、ラベル(8)を挿入している状態では、図8(b)に示すように、ラベル(8)のたるみ等が生じることなく、安定して保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のプラスチック製の二重容器であれば、熱湯等を利用した使用の後においても外容器と内容器の間隙に水等の浸入を防止すすることができるため、間隙内に挿入したラベルを安定して保持することができる。これによって、消費者に好みの絵や写真を挿入し、オリジナルなマイカップを提供したり、収納物を明確に表示することもできる。このように、本容器を利用することで、食品、特に即席麺等の即席食品の一層の発展を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施例の二重容器の縦切断部端面図である。(a)は本実施例の縦切断部端面図であり、(b)は変形例の縦切断部端面図である。
【図2】実施例の二重容器の分解斜視図である。
【図3】内容器のみのフランジ部縦断面の拡大図である。(a)は本実施例の縦断面図、(b)、(c)は変形例の縦断面図である。
【図4】実施例の二重容器のフランジ部付近の縦断面の拡大図である。
【図5】ガスケットの圧縮状態を示した縦断面図である。
【図6】実施例の二重容器のねじ部と内容器側壁下端部の状態を示した縦断面図である。
【図7】包装即席麺を実施例の二重容器に利用した場合の斜視図である。(a)は包装即席麺の斜視図である。(b)は、前記包装即席麺を開口蓋を剥がし始めた状態の斜視図である。(c)は、二重容器を開口後の包装即席麺に被せた斜視図である。(d)は、即席麺塊を実施例の二重容器内に収納する状態の斜視図である。
【図8】実施例の二重容器に即席麺塊を収納した状態の斜視図である。(a)は、二重容器内に即席麺塊を収納した状態の斜視図である。(b)は、(a)においてさらにラベルを挿入した場合の斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
1 外容器
2 内容器
3 蓋材
4 第一のガスケット(内容器フランジ部用)
5 第二のガスケット(蓋材用)
6 間隙
7 接地部
8 挿入ラベル
9 即席麺塊
10 包装容器
11 雌ねじ部
12 外容器開口上端部
21 内容器のフランジ部
22 雄ねじ部
23 側壁下端部
24 落下防止用凸部
25 リブ部
31 凸状係合部(第二のガスケットための鍔部)
32 蓋材の小孔
33 蓋材の摘み手
d1 内容器側壁下端部と外容器底面部内側との隙間
d2 内容器雄ねじ部下端と外容器底面部との隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状の外容器と内容器を含み、内容器開口周縁部に、外容器開口上端部と嵌合する下向きに凹状のフランジ部を有するプラスチック製二重容器であって、
(1)外容器と内容器は、両底面部に設けられたネジ部により螺合するものであり、内容器を外容器に締め方向に回転させてねじ込む過程で、外容器開口上端部と内容器開口周縁部のフランジ部が、弾性を有するリング状のガスケットを介して圧着して嵌合することで、締め方向の回転が阻止されることにより、外容器と内容器の相対位置が固定されており、
(2)外容器と内容器の各側壁間には、所定幅の間隙が形成されている、
ことを特徴とするプラスチック製二重容器。
【請求項2】
内容器フランジ部内面の上面側のガスケットと密着する円周領域に1又は数本の凸状リブ
が形成されている請求項1に記載のプラスチック製二重容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプラスチック製二重容器であって、
(A)内容器の側壁下端部が外容器の底面部内側より所定の隙間を有し、
(B)ねじ部の螺合状態は、締め方向にさらに回転可能な状態である、
プラスチック製二重容器。
【請求項4】
内容器の側壁部上端部付近又はフランジ部内面の側面側にガスケット落下防止用の凸部を
設けた請求項1ないし3のいずれかに記載のプラスチック製二重容器。
【請求項5】
外容器の側壁部と内容器の側壁部が略同テーパー形状を有する請求項1ないし4のいずれ
か記載の二重容器。
【請求項6】
内容器の側壁下端部が内容器の側壁部と連続して外容器の底面内側付近まで伸長して形成
されている請求項1ないし5のいずれかに記載の二重容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−239157(P2008−239157A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77925(P2007−77925)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000226976)日清食品株式会社 (127)
【Fターム(参考)】