説明

プラスチック製光学素子の収納容器、プラスチック製光学素子の運搬方法及びプラスチック製光学素子の保管方法

【課題】収納するプラスチック製光学素子の耐久性及び視認性に優れたプラスチック製光学素子の収納容器、プラスチック製光学素子の運搬方法及びプラスチック製光学素子の保管方法を提供する。
【解決手段】少なくとも脂環式樹脂と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する樹脂組成物により成型したプラスチック製光学素子の収納容器であって、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率が20%以下であることを特徴とするプラスチック製光学素子の収納容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製光学素子の耐久性が向上したプラスチック製光学素子の収納容器、プラスチック製光学素子の運搬方法及びプラスチック製光学素子の保管方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MO、CD、DVDといった光情報記録媒体(以下、単に媒体ともいう)に対して、情報の読み取りや記録を行なうプレーヤー、レコーダー、ドライブといった情報機器には、光ピックアップ装置が備えられている。光ピックアップ装置は、光源から発した所定波長の光を媒体に照射し、反射した光を受光素子で受光する光学素子ユニットを備えており、光学素子ユニットはこれらの光を媒体の反射層や受光素子で集光させるためのレンズ等の光学素子を有している。
【0003】
光ピックアップ装置で用いるプラスチック製光学素子は、射出成形等の手段により安価に作製できる等の点で、プラスチックを材料として適用することが好ましい。光学素子に適用可能なプラスチックとしては、脂環式樹脂、例えば、環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体(例えば、特許文献1)等が知られている。
【0004】
ところで、例えば、CD/DVDプレーヤーのような、複数種の媒体に対して情報の読み書きが可能な情報機器の場合、光ピックアップ装置は、両者の媒体の形状や適用する光の波長の違いに対応した構成とする必要がある。この場合、光学素子ユニットはいずれの媒体に対しても共通とすることがコストやピックアップ特性の観点から好ましい。
【0005】
また、近年、CDやDVDよりも高い密度で情報を記録できる媒体として、CD(λ=780nm)やDVD(λ=635、650nm)で用いるよりも短い波長で情報の記録、再生を行なうBlu−Ray Disc等の媒体やこれらの媒体で情報の読み書きを行なう情報機器の開発が新たに行なわれている。
【0006】
また、これらのプラスチック製光学素子は、製造後、プラスチック製光学素子単独あるいは光ピックアップ装置に組み込まれたユニットとして、次工程である組み立て工程に移送されるが、そのような保管あるいは搬送時には、主には収納容器に収納される状態で取り扱われる。この収納容器は、作業や保管を行う環境下での外光(例えば、蛍光灯や太陽光)によるプラスチック製光学素子(主に樹脂材料)の劣化を防止する目的で、遮光処理が施されている場合が多い。
【特許文献1】特開2002−105131号公報 (第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らが様々なプラスチック製光学素子の耐光特性について検討を進めた結果、確かに、太陽光等の可視光に対する安定性は高く、通常の収納容器に長期間にわたり保存を行っても、透過率等の低下はなく、特に問題の発生は見られなかった。しかしながら、情報の記録、再生に405nmの波長を用いるBlu−Ray Disc等のいわゆる次世代光ディスクで用いられ、透過率が80%以上の特性を備えた特許文献1に記載されている様な脂環式樹脂材料を用いたプラスチック製光学素子では、保管中に300〜380nmの波長範囲に分光エネルギー分布を有する光線により長期間にわたり照射を受けると、プラスチック製光学素子の405nmにおける透過率がやや低下することが判明した。この現象は、特に、特許文献1に記載されている樹脂材料と共に、特定の安定剤、具体的には、ヒンダードアミン系安定剤(以下、HALSと略記する)を適用すると、顕著に発現することが判明した。
【0008】
したがって、本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、収納するプラスチック製光学素子の耐久性及び視認性に優れたプラスチック製光学素子の収納容器、プラスチック製光学素子の運搬方法及びプラスチック製光学素子の保管方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0010】
1.少なくとも脂環式樹脂と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する樹脂組成物により成型したプラスチック製光学素子の収納容器であって、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率が20%以下であることを特徴とするプラスチック製光学素子の収納容器。
【0011】
2.450nm以上、650nm以下の波長領域における平均透過率が、20%以上であることを特徴とする前記1に記載のプラスチック製光学素子の収納容器。
【0012】
3.前記樹脂組成物が含有する脂環式樹脂が、α−オレフィンと下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体であることを特徴とする前記1または2に記載のプラスチック製光学素子の収納容器。
【0013】
【化1】

【0014】
〔式中、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、kは0または1を表し、R〜R18、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表す。〕
【0015】
【化2】

【0016】
〔式中、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、r及びsはそれぞれ0、1または2を表し、R21〜R39はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表す。〕
4.収納容器の構成材料と、前記プラスチック製光学素子を構成する脂環式樹脂材料とが、同一材料であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子の収納容器。
【0017】
5.顔料、染料または紫外線吸収剤を含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子の収納容器。
【0018】
6.顔料、染料または紫外線吸収剤を含有し、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率が20%以下であるフィルムシートを容器表面に貼り付けたことを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子の収納容器。
【0019】
7.前記プラスチック製光学素子は、波長405nmにおける透過率が80%以上であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子の収納容器。
【0020】
8.少なくともα−オレフィンと下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体と、ヒンダードアミン系化合物とを含む樹脂組成物により成型したプラスチック製光学素子を、前記1〜7のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子の収納容器に収納して運搬することを特徴とするプラスチック製光学素子の運搬方法。
【0021】
【化3】

【0022】
〔式中、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、kは0または1を表し、R〜R18、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表す。〕
【0023】
【化4】

【0024】
〔式中、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、r及びsはそれぞれ0、1または2を表し、R21〜R39はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表す。〕
9.少なくともα−オレフィンと下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体と、ヒンダードアミン系化合物とを含む樹脂組成物により成型したプラスチック製光学素子を、前記1〜7のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子の収納容器に保管することを特徴とするプラスチック製光学素子の保管方法。
【0025】
【化5】

【0026】
〔式中、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、kは0または1を表し、R〜R18、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表す。〕
【0027】
【化6】

【0028】
〔式中、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、r及びsはそれぞれ0、1または2を表し、R21〜R39はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表す。〕
【発明の効果】
【0029】
本発明により、収納するプラスチック製光学素子の耐久性及び視認性に優れたプラスチック製光学素子の収納容器、プラスチック製光学素子の運搬方法及びプラスチック製光学素子の保管方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0031】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、少なくとも脂環式樹脂と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する樹脂組成物により成型したプラスチック製光学素子の収納容器であって、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率が20%以下であることを特徴とするプラスチック製光学素子の収納容器を用いることにより、収納した波長405nmでの高い透過率を有するプラスチック製光学素子に対し、300nm以上、450nm以下の波長領域(紫外領域から可視光の短波長領域)等の光からの光学特性の劣化(例えば、405nmにおける透過率の低下)を抑制することができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0032】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0033】
はじめに、本発明のプラスチック製光学素子の収納容器(以下、単に収納容器ともいう)について説明する。
【0034】
《収納容器》
近年、プラスチック製光学素子としては、金型加工技術及びレンズの面精度評価技術の向上により、光学面に、この光学面を通過する特定の波長光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を設けたレンズが多用されるようになっている。また、この成形により形成された多数のレンズは、レンズ収納容器にまとめて収納され、このレンズ収納容器に収納された状態でレンズの保管や輸送等が行われている。
【0035】
このようなレンズ収納容器の例として、端部に凹部を形成した筒状の収納ケースと、この凹部に係合する爪を形成した蓋部材とを有するレンズ収納容器が主に用いられている。
【0036】
図1は、本発明のプラスチック製光学素子の収納容器の形態の一例を示す概略図である。
【0037】
図1の(a)はプラスチック製光学素子の収容容器内部の状態を示す横断面図であり、図1の(b)はプラスチック製光学素子の収容容器内部の状態を示す縦断面図である。
【0038】
図1に示すように、プラスチック製光学素子の収納容器20は、プラスチック製光学素子10を一列に並べ、プラスチック製光学素子10の最外周に形成されたフランジ部10bを相互に当接させた状態で収納する筒状の収納部21を有している。収納部21の両端には開口部が形成され、プラスチック製光学素子10の挿脱が可能となっている。収納部21の両端の開口部には、この開口部の少なくとも一部を塞ぐ蓋部材22が装着され、プラスチック製光学素子10の脱落が防止されるようになっている。
【0039】
蓋部材22は、収納部21の端面に当接して停止するストッパと、この蓋部材22の挿脱のためのつまみを兼ねて収納部外に露出している。
【0040】
本発明のプラスチック製光学素子の収納容器においては、例えば、上記図1に示すような構成からなるプラスチック製光学素子の収納容器として、それを構成する収納部(図1に記載の収納部21)の光学特性が、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率が20%以下であることを特徴とし、本発明の目的効果からは、下限は特に制限はない。
【0041】
上記のような光学特性を備えた本発明のプラスチック製光学素子の収納容器に、脂環式樹脂と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する樹脂組成物により成型したプラスチック製光学素子を収納することにより、特に、波長405nmで高い透過率を有するプラスチック製光学素子の保管時や輸送時における300nm以上、450nm以下の光による影響を効果的に排除することができるものである。
【0042】
更に、本発明のプラスチック製光学素子の収納容器においては、内部に収納したプラスチック製光学素子の視認性を高める観点から、450nm以上、650nm以下の波長領域における平均透過率が20%以上とすることが好ましく、本発明の目的効果からは、上限は特に制限はない。
【0043】
〔収納容器の構成材料〕
本発明のプラスチック製光学素子の収納容器に適用可能な構成材料としては、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率を20%以下とすることができれば特に制限はないが、好ましくは、収納容器の構成材料として樹脂素材を用い、この樹脂に本発明で規定する300〜450nmにおける平均透過率とするための透過率制御素材を添加して構成することが好ましい。
【0044】
樹脂素材としては、特に制限はないが、プラスチック製光学素子を収納した際の静電気等の発生を防止し、プラスチック製光学素子の取り出しや収納を容易にでき、かつプラスチック製光学素子を製造した際の廃材を有効に活用できる観点から、プラスチック製光学素子と同一の樹脂材料を用いることが好ましい。
【0045】
本発明の収納容器に適用可能な樹脂材料としては、脂環式樹脂材料であることが好ましく、例えば、ZEONEX(日本ゼオン社製)、アートン(JSR社製)、アペル(三井化学社製)、TOPAS(ポリプラスチック社製)等を挙げることができるが、その中でも耐久性の観点から、詳細に関しては後述するα−オレフィンと前記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体を用いることが好ましい。
【0046】
本発明の収納容器においては、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率を20%以下とするため、樹脂材料と共に透過率制御素材を適用するが、透過率制御素材としては、紫外部領域で吸光度を有する化合物であれば特に制限はないが、内部に収納したプラスチック製光学素子の視認性を高める観点から、450nm以上、650nm以下の波長領域における吸光度は低く、300nm以上、450nm以下の波長領域に高い吸光度を有する素材を選択することが好ましく、例えば、紫外線吸収剤、染料、顔料等を適用することができる。
【0047】
〈紫外線吸収剤〉
本発明の収納容器に適用可能な紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系及びトリアジン系のものから選ばれることが好ましい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、ヒドロキシ置換ベンゾトリアゾール化合物であって、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール、2−(2−nオクタデシルオキシ−3、5−ジメチルフェニル)−5−メチルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−5−メチルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5,6−ジクロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4,5−ジクロロフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−5−ブトキシカルボニルベンゾトリアゾール、2−(2−アセトキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2Hベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノールなどを挙げることができる。これらは、例えば、シーソーブ706、チヌビン328、チヌビンP、サイアソーブUV5411などの商品名で市販されている。
【0048】
〈染料、顔料〉
本発明の収納容器に適用可能な染料、顔料としては、樹脂に一般的に用いられている各色材を用いることができ、例えば、染料系色材としては、水溶性染料(例えば、塩基性染料、酸性染料等)、油溶性染料(例えば、アゾ系、アンスラキノン系、ペリノン系の各染料)、また顔料系色材としては、無機系(例えば、酸化物、硫化物、フェロシアン化物、クロム酸塩、珪酸塩等の各顔料)、有機系(例えば、アゾ系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、インジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、キノフタロン系、ピロール系、金属錯塩系、蛍光系等の各顔料)を挙げることができる。
【0049】
染料は、加熱溶融状態で樹脂材料と混練して含有させることができ、また、顔料の用いる場合には、そのまま粉体状態で添加されることはまれで、一旦分散処理を行って顔料微粒子とした状態で添加される。
【0050】
本発明の収納容器に適用する透過率制御素材としては、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率を20%以下、更に、450nm以上、650nm以下の波長領域における平均透過率を20%以上という条件を満たす観点から、紫外線吸収剤あるいは、300nm以上、450nm以下の波長領域に吸収を有するイエロー染料、イエロー顔料等を適用することが好ましい。
【0051】
〔フィルムシート〕
本発明の収納容器として、上記のように収納容器自身に透過率を制御する手段(例えば、紫外線吸収剤、染料、顔料等)を組み入れる方法の他に、本発明では、顔料、染料または紫外線吸収剤を含有し、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率が20%以下であるフィルムシートを容器表面に貼り付ける方法も好ましく用いることができる。
【0052】
フィルムシートを構成する材料としては、透明でシート状に加工できるものであれば特に制限はなく、例えば、エチレンテトラフルオロエチル共重合体(ETFE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、延伸ポリプロピレン(0PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、延伸ナイロン(ONy)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ポリエーテルスチレン(PES)などを用いることができる。
【0053】
上記の様なフィルムシートを形成する段階で、所望の紫外線吸収剤、染料、顔料等を組み入れて、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率が20%以下であるフィルムシートを形成してもよく、あるいは、一旦上記樹脂材料で透明のフィルムシートを形成した後、その表面に紫外線吸収剤、染料、顔料等を含む塗工液を塗布して、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率が20%以下であるフィルムシートとしてもよい。
【0054】
《運搬方法》
本発明のプラスチック製光学素子の運搬方法においては、上記構成からなる本発明の収納容器を用いて、少なくともα−オレフィンと下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体と、ヒンダードアミン系化合物とを含む樹脂組成物により成型したプラスチック製光学素子を収納して運搬することを特徴とする。
【0055】
本発明の収納容器に収納した状態でプラスチック製光学素子の運搬を行うことにより、運搬過程で受ける外光(紫外線あるいは可視光線)によるプラスチック製光学素子への影響を効果的に遮断することができる。
【0056】
《保管方法》
本発明のプラスチック製光学素子の保管方法においては、上記構成からなる本発明の収納容器に、少なくともα−オレフィンと下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体と、ヒンダードアミン系化合物とを含む樹脂組成物により成型したプラスチック製光学素子を保管することを特徴とする。
【0057】
本発明の収納容器に収納した状態でプラスチック製光学素子を保管することにより、保管時の外光(紫外線あるいは可視光線)によるプラスチック製光学素子への影響を効果的に遮断することができる。
【0058】
《プラスチック製光学素子》
次いで、本発明の収納容器に収納するプラスチック製光学素子について説明する。
【0059】
本発明に係るプラスチック製光学素子は、少なくとも脂環式樹脂と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する樹脂組成物により成型されたことを特徴とし、更に該脂環式樹脂が、α−オレフィンと下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体であることが好ましい。
【0060】
(一般式(I)及び(II)で表される環状オレフィン)
本発明においては、本発明に係るプラスチック製光学素子を構成する樹脂材料が、α−オレフィンと下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体であることが好ましい。
【0061】
【化7】

【0062】
上記一般式(I)において、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、kは0または1である。なおkが1の場合には、kを用いて表される環は6員環となり、kが0の場合にはこの環は5員環となる。
【0063】
R1〜R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。ここで、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
【0064】
また、炭化水素基としては、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基などが挙げられる。これらアルキル基はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0065】
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。さらに上記一般式(I)において、R15とR16とが、R17とR18とが、R15とR17とが、R16とR18とが、R15とR18とが、あるいはR16とR17とがそれぞれ結合して(互いに共同して)、単環または多環の基を形成していてもよく、しかもこのようにして形成された単環または多環が二重結合を有していてもよい。ここで形成される単環または多環としては、具体的に以下のようなものが挙げられる。
【0066】
【化8】

【0067】
なお上記例示において、1または2の番号を付した炭素原子は、前記一般式(I)においてそれぞれR15(R16)またはR17(R18)結合している炭素原子を表す。
【0068】
また、R15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。このようなアルキリデン基は、通常は炭素原子数2〜20のアルキリデン基であり、このようなアルキリデン基の具体的な例としては、エチリデン基、プロピリデン基およびイソプロピリデン基が挙げられる。
【0069】
【化9】

【0070】
上記一般式(II)において、pおよびqはそれぞれ独立に、0または正の整数であり、rおよびsはそれぞれ独立に、0、1または2である。また、R21〜R39はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基である。
【0071】
ここでハロゲン原子は、上記一般式(I)中のハロゲン原子と同じである。また炭化水素基としては、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基などが挙げられる。これらアルキル基はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0072】
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、アリール基、アラルキル基などが挙げられ、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。
【0073】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。ここで、R29およびR30が結合している炭素原子と、R33が結合している炭素原子またはR31が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよい。すなわち、上記二個の炭素原子がアルキレン基を介して結合している場合には、R29とR33とが、または、R30とR31とが互いに共同して、メチレン基(−CH2−)、エチレン基(−CH2CH2−)またはプロピレン基(−CH2CH2CH2−)の内のいずれかのアルキレン基を形成している。
【0074】
さらに、r=s=0のとき、R35とR32またはR35とR39とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。具体的には、r=s=0のとき、R35とR32とにより形成される以下のような芳香族環が挙げられる。
【0075】
【化10】

【0076】
ここで、qは一般式(II)におけるqと同義である。
【0077】
本発明に係る一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンとしては、具体的には、ビシクロ−2−ヘプテン誘導体(ビシクロヘプト−2−エン誘導体)、トリシクロ−3−デセン誘導体、トリシクロ−3−ウンデセン誘導体、テトラシクロ−3−ドデセン誘導体、ペンタシクロ−4−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ−3−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ−3−ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロ−4−ヘキサデセン誘導体、ヘキサシクロ−4−ヘプタデセン誘導体、ヘプタシクロ−5−エイコセン誘導体、ヘプタシクロ−4−エイコセン誘導体、ヘプタシクロ−5−ヘンエイコセン誘導体、オクタシクロ−5−ドコセン誘導体、ノナシクロ−5−ペンタコセン誘導体、ノナシクロ−6−ヘキサコセン誘導体、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン誘導体、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン誘導体などが挙げられる。
【0078】
以下に、本発明に係る一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンのより具体的な例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0079】
〈ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン誘導体〉
1)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
2)6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
3)5,6−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
4)1−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5)6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
6)6−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
7)6−イソブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
8)7−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、等
〈テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン誘導体〉
9)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
10)8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
11)8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
12)8−プロピルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
13)8−ブチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
14)8−イソブチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
15)8−ヘキシルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
16)8−シクロヘキシルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
17)8−ステアリルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
18)5,10−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
19)2,10−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
20)8,9−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
21)8−エチル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
22)11,12−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
23)2,7,9−トリメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
24)9−エチル−2,7−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
25)9−イソブチル−2,7−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
26)9,11,12−トリメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
27)9−エチル−11,12−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
28)9−イソブチルー11,12−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
29)5,8,9,10−テトラメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
30)8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
31)8−エチリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
32)8−エチリデン−9−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
33)8−エチリデン−9−イソプロピルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
34)8−エチリデン−9−ブチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
35)8−n−プロピリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
36)8−n−プロピリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
37)8−n−プロピリデン−9−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
38)8−n−プロピリデン−9−イソプロピルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
39)8−n−プロピリデン−9−ブチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
40)8−イソプロピリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
41)8−イソプロピリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
42)8−イソプロピリデン−9−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
43)8−イソプロピリデン−9−イソプロピルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
44)8−イソプロピリデン−9−ブチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
45)8−クロロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
46)8−ブロモテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
47)8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
48)8,9−ジクロロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、等
〈ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン誘導体〉
49)ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン
50)12−メチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン
51)12−エチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン
52)12−イソブチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン
53)1,6,10−トリメチル−12−イソブチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、等
〈オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン誘導体〉
54)オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン
55)15−メチルオクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン
56)15−エチルオクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン、等
〈ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン誘導体〉
57)ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン
58)1,3−ジメチルペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン
59)1,6−ジメチルペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン
60)15,16−ジメチルペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、等
〈ヘプタシクロ−5−エイコセン誘導体あるいはヘプタシクロ−5−ヘンエイコセン誘導体〉
61)ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン
62)ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン、等
〈トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン誘導体〉
63)トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン
64)2−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン
65)5−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、等
〈トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン誘導体〉
66)トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン
67)10−メチルトリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、等
〈ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン誘導体〉
68)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン
69)1,3−ジメチルペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン
70)1,6−ジメチルペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン
71)14,15−ジメチルペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、等
〈ジエン化合物〉
72)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4、10−ペンタデカジエン、等
〈ペンタシクロ[7.4.0.12,6.19,12.08,13]−3−ペンタデセン誘導体〉
73)ペンタシクロ[7.4.0.12,6.19,12.08,13]−3−ペンタデセン
74)メチル置換ペンタシクロ[7.4.0.12,6.19,12.08,13]−3−ペンタデセン、等
〈ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン誘導体〉
75)ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン
76)ジメチル置換ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン、等
〈ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.03,8.02,10.012,21.014,19]−5−ペンタコセン誘導体〉
77)ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.03,8.02,10.012,21.014,19]−5−ペンタコセン
78)トリメチル置換ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.03,8.02,10.012,21.014,19]−5−ペンタコセン、等
〈ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン誘導体〉
79)ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン
80)11−メチル−ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン
81)11−エチル−ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン
82)10,11−ジメチル−ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン、等
〈ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン誘導体〉
83)ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン
84)15−メチル−ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン
85)トリメチル−ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン、等
〈ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]−5−ヘキサコセン誘導体〉
86)ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]−5−ヘキサコセン、等
〈その他〉
87)5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
88)5−メチル−5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
89)5−ベンジル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
90)5−トリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
91)5−(エチルフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
92)5−(イソプロピルフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
93)5−(ビフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
94)5−(β−ナフチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
95)5−(α−ナフチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
96)5−(アントラセニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
97)5,6−ジフェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
98)シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物
99)1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン
100)1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン
101)8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
102)8−メチル−8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
103)8−ベンジル−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
104)8−トリル−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
105)8−(エチルフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
106)8−(イソプロピルフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
107)8,9−ジフェニル−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
108)8−(ビフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
109)8−(β−ナフチル)−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
110)8−(α−ナフチル)−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
111)8−(アントラセニル)−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
112)(シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物)に、シクロペンタジエンを更に付加した化合物
113)11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン
114)11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ヘキサデセン
115)11−フェニル−ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン
116)14,15−ベンゾ−ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン
(α−オレフィン)
次いで、本発明に係る樹脂を構成するα−オレフィンについて説明する。
【0080】
共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの直鎖状α−オレフィン;4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテンなどの分岐状α−オレフィンなどが挙げられる。好ましくは、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンが好ましい。このような直鎖状または分岐状のα−オレフィンは置換基で置換されていても良く、また1種単独、或いは2種以上組合わせて用いることができる。
置換基としては、種々のものが挙げられ特に制限はないが、代表的なものとしてアルキル、アリール、アニリノ、アシルアミノ、スルホンアミド、アルキルチオ、アリールチオ、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、アルコキシ、アリールオキシ、複素環オキシ、シロキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミド、ウレイド、スルファモイルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、複素環チオ、チオウレイド、ヒドロキシル及びメルカプトの各基、並びにスピロ化合物残基、有橋炭化水素化合物残基、スルホニル、スルフィニル、スルホニルオキシ、スルファモイル、ホスホリル、カルバモイル、アシル、アシルオキシ、オキシカルボニル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン置換アルコキシ、ハロゲン置換アリールオキシ、ピロリル、テトラゾリル等の各基及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0081】
上記アルキル基としては炭素数1〜32のものが好ましく、直鎖でも分岐でもよい。アリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0082】
アシルアミノ基としては、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基;スルホンアミド基としては、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基;アルキルチオ基、アリールチオ基におけるアルキル成分、アリール成分は上記のアルキル基、アリール基が挙げられる。
【0083】
アルケニル基としては炭素数2〜23のもの、シクロアルキル基としては炭素数3〜12、特に5〜7のものが好ましく、アルケニル基は直鎖でも分岐でもよい。シクロアルケニル基としては炭素数3〜12、特に5〜7のものが好ましい。
【0084】
ウレイド基としては、アルキルウレイド基、アリールウレイド基;スルファモイルアミノ基としてはアルキルスルファモイルアミノ基、アリールスルファモイルアミノ基;複素環基としては5〜7員のものが好ましく、具体的には2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル等;飽和複素環としては5〜7員のものが好ましく、具体的にはテトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル等;複素環オキシ基としては5〜7員の複素環を有するものが好ましく、例えば、3,4,5,6−テトラヒドロピラニル−2−オキシ、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ等;複素環チオ基としては5〜7員の複素環チオ基が好ましく、例えば2−ピリジルチオ、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジフェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ等;シロキシ基としてはトリメチルシロキシ、トリエチルシロキシ、ジメチルブチルシロキシ等;イミド基としては琥珀酸イミド、3−ヘプタデシル琥珀酸イミド、フタルイミド、グルタルイミド等;スピロ化合物残基としてはスピロ[3.3]ヘプタン−1−イル等;有橋炭化水素化合物残基としてはビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−イル、トリシクロ[3.3.1.13.7]デカン−1−イル、7,7−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−イル等が挙げられる。
【0085】
スルホニル基としては、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ハロゲン置換アルキルスルホニル基、ハロゲン置換アリールスルホニル基等;スルフィニル基としては、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基等;スルホニルオキシ基としては、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基等;スルファモイル基としては、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル等;ホスホリル基としては、アルコキシホスホリル基、アリールオキシホスホリル基、アルキルホスホリル基、アリールホスホリル基等;カルバモイル基としては、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基等;アシル基としては、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基等;アシルオキシ基としては、アルキルカルボニルオキシ基等;オキシカルボニル基としては、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等;ハロゲン置換アルコキシ基としてはα−ハロゲン置換アルコキシ基等;ハロゲン置換アリールオキシ基としては、テトラフルオロアリールオキシ基、ペンタフルオロアリールオキシ基等;ピロリル基としては1−ピロリル等;テトラゾリル基としては1−テトラゾリル等の各基が挙げられる。
【0086】
上記置換基の他に、トリフルオロメチル、ヘプタフルオロ−i−プロピル、ノニルフルオロ−t−ブチル等の各基や、テトラフルオロアリール基、ペンタフルオロアリール基なども好ましく用いられる。更に、これらの置換基は、他の置換基で置換されてもよい。
本発明共重合体中の非環状モノマー含有量は成形性の観点から20質量%以上であることが好ましく、25%以上で90%以下であることがより好ましく、30%以上で85%以下であることがさらに好ましい。
【0087】
本発明に係る共重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは80〜250℃、より好ましくは90〜220℃、最も好ましくは100〜200℃の範囲である。数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算値で、好ましくは10,000〜1,000,000、より好ましくは20,000〜500,000、最も好ましくは50,000〜300,000の範囲である。分子量分布は、上記Mnと、同様にGPCで測定されるポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)で表したときに、好ましくは2.0以下である。
Mw/Mnが大きすぎると、成形体の機械的強度や耐熱性が低下する。特に機械的強度、耐熱性、成形加工性を向上させるには、Mw/Mnが1.8以下がより好ましく、1.6以下が特に好ましい。
【0088】
重合時の温度は、0〜200℃、好ましくは50〜150℃の範囲から選ばれ、圧力は大気圧〜100気圧の範囲から選ばれる。また、重合体帯域に水素を存在させることによって、生成する重合体の分子量を容易に調整することができる。
【0089】
本発明に係るオレフィン系樹脂は、1成分の環状モノマーから合成された高分子でもよいが、好適には2成分以上の環状モノマー、或いは環状モノマーと非環状モノマーを用いて合成された共重合体が選ばれる。この共重合体については、100成分以上のモノマーを用いて製造しても良いが生産効率重合安定性からモノマーの混合は10成分以下が好ましい。更に好ましいのは、5成分以下である。また、得られた共重合体は、結晶性高分子でも非晶性高分子でもかまわないが、好ましくは非晶性高分子が良い。
【0090】
本発明に係る共重合体の炭素−炭素不飽和結合(芳香環含む)を水素添加する方法には、公知の方法を用いることができるが、中でも、水素添加率を高くし、且つ水素添加反応と同時に起こる重合体鎖切断反応を少なくするためには、有機溶媒中、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む触媒を用いて水素添加反応を行なうのが好ましい。水素化触媒は、不均一触媒、均一触媒のいずれも使用可能である。不均一系触媒は、金属または金属化合物のままで、又は適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭化カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素等が挙げられ、触媒の担持量は、触媒合計質量に対する金属含有量で、通常0.01〜80質量%、好ましくは0.05〜60質量%の範囲である。均一系触媒は、ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒、またはロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等の有機金属錯体触媒を用いることができる。これらの水素添加触媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上組み合わせて使用することができ、その使用量は、重合体100質量部に対して、通常、0.01〜100質量部、好ましくは0.05〜50質量部、より好ましくは0.1〜30質量部である。
【0091】
水素添加反応温度は、通常0〜300℃の温度であり、好ましくは室温〜250℃、特に好ましくは50〜200℃の温度範囲である。
【0092】
また、水素圧力は、通常0.1MPa〜30MPa、好ましくは1MPa〜20MPa、より好ましくは2MPa〜15MPaである。得られた水素添加物の水素添加率は、耐熱性や耐候性の観点から、1H−NMRによる測定において、主鎖の炭素−炭素不飽和結合の通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。水素化率が低いと、得られる重合体の透過率、低複屈折性、熱安定性等の光学特性が低下する。
【0093】
本発明に係る共重合体の水素添加反応に於いて用いられる溶媒としては、本発明に係る共重合体を溶解し、溶媒自体が水素添加されないものであればどのようなものでもよく、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、デカリンなどの脂肪族環状炭化水素、メチレンジクロリド、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素等が挙げられ、これらは2種以上混合して使用してもよい。
【0094】
本発明に係る共重合体水素添加物の製造は、重合体溶液から共重合体水素添加物を単離した後、再度溶媒に溶解しても可能であるが、単離することなく、上記有機金属錯体と有機アルミニウム化合物からなる水素添加触媒を加えることにより水素添加反応を行う方法を採用することもできる。
【0095】
水素添加反応の終了後、公知の方法により重合体に残存する水素添加触媒を除去することができる。例えば、吸着剤による吸着法、良溶媒による溶液に乳酸等の有機酸と貧溶媒と水とを添加し、この系を常温下或いは加温下に於いて抽出除去する方法、更には良溶媒による溶液または重合体スラリーを窒素または水素ガスの雰囲気下でトリメチレンジアミン、アニリン、ピリジン、エタンジアミド、水酸化ナトリウム等の塩基性化合物で接触処理した後に、或いは接触処理と同時に酢酸、クエン酸、安息香酸、塩酸等の酸性化合物を接触処理した後、洗浄除去する方法等が挙げられる。
【0096】
本発明に係る共重合体水素添加物溶液から重合体水素化物の回収法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、撹拌下の貧溶媒中に反応溶液を排出し重合体水素化物を凝固させ濾過法、遠心分離法、デカンテーション法等により回収する方法、反応溶液中にスチームを吹き込んで重合体水素化物を析出させるスチームストリッピング法、反応溶液から溶媒を加熱等により直接除去する方法等が挙げられる。
【0097】
本発明において、水素添加方法を用いると水素添加率は90%以上が容易に達成でき、95%以上、特に99%以上とすることが可能であり、そうして得られる重合体又は共重合体水素添加物は容易に酸化されることがなく、優れた重合体又は共重合体水素添加物となる。
【0098】
(各種安定剤)
本発明に係るプラスチック製光学素子においては、脂環式樹脂組成物と共に、安定剤としてヒンダードアミン系化合物を用いることを一つの特徴とする。
【0099】
〈ヒンダードアミン系安定剤〉
本発明に係るプラスチック製光学素子に適用可能なヒンダードアミン系安定剤(以下、HALSと記す。)としては、特に制限はないが、テトラヒドロフランを溶媒として用いたGPCにより測定したポリスチレン換算のMnが1000〜10000であるものが好ましく、2000〜5000であるものがより好ましく、2800〜3800であるものが特に好ましい。Mnが小さすぎると、該HALSをブロック共重合体に加熱溶融混練して配合する際に、揮発のため所定量を配合できなかったり、射出成型等の加熱溶融成型時に発泡やシルバーストリークが生じるなど加工安定性が低下する。また、ランプを点灯させた状態でレンズを長時間使用する場合に、レンズから揮発性成分がガスとなって発生する。逆にMnが大き過ぎると、ブロック共重合体への分散性が低下して、レンズの透明性が低下し、耐光性改良の効果が低減する。したがって、本発明においては、HALSのMnを上記範囲とすることにより加工安定性、低ガス発生性、透明性に優れたレンズが得られる。
【0100】
このようなHALSの具体例としては、N,N′,N″,N′″−テトラキス−〔4,6−ビス−{ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ}−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕などの、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物などの、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した高分子量HALS等が挙げられる。
【0101】
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物などのMnが2,000〜5,000のものが好ましい。
【0102】
本発明に係る脂環式樹脂に対する上記配合量は、本発明に係る共重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.02〜15質量部、特に好ましくは0.05〜10質量部である。添加量が少なすぎると耐光性の改良効果が十分に得られず、屋外で長時間使用する場合等に着色が生じる。一方、HALSの配合量が多すぎると、その一部がガスとなって発生したり、樹脂への分散性が低下して、レンズの透明性が低下する。
【0103】
本発明においては、本発明に係るHALSの他に、本発明の目的効果を損なわない範囲で、その他の安定剤を併用してもよく、例えば、ベンゾフェノン系安定剤、ベンゾトリアゾール系安定剤などを適宜選択して用いることができる。
【0104】
また、本発明に係る樹脂組成物の調製時や樹脂組成物の成型工程においては、上記HALSの他に、必要に応じて各種添加剤(配合剤ともいう)を添加することができる。添加剤については、格別限定はないが、酸化防止剤、熱安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤などの安定剤;滑剤、可塑剤などの樹脂改質剤;染料や顔料などの着色剤;帯電防止剤、難燃剤、フィラーなどが挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができ、その配合量は本発明に記載の効果を損なわない範囲で適宜選択される。
【0105】
以下に、代表的な添加剤である酸化防止剤について説明する。
【0106】
〈酸化防止剤〉
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成型時の酸化劣化等によるレンズの着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明に係る重合体100質量部に対して好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0107】
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[すなわちペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
【0108】
リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(炭素数12〜15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
【0109】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−β−ラウリル−チオ−プロピオネート、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0110】
また、本発明に係る樹脂組成物に、さらに最も低いガラス転移温度が30℃以下である化合物を配合することにより、透明性、耐熱性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。
【0111】
例えば、本発明に係る樹脂組成物と、(1)軟質重合体、(2)アルコール性化合物、からなる群から選ばれる少なくとも1種類の配合剤を含んでなる樹脂組成物とすることができる。これらの配合剤を配合することにより、透明性、低吸水性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。
【0112】
これらの中でも、(1)軟質重合体、及び(2)アルコール性化合物が、高温高湿度環境下における白濁防止効果、得られる樹脂組成物の透明性に優れる。
【0113】
(1)軟質重合体
本発明に用いる軟質重合体は、通常30℃以下のTgを有する重合体であり、Tgが複数存在する場合には、少なくとも最も低いTgが30℃以下であることが好ましい。
【0114】
これらの軟質重合体の具体例としては、例えば、液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体、ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などのジエン系軟質重合体、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサン、などのケイ素含有軟質重合体、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体などのα,β−不飽和酸からなる軟質重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などの不飽和アルコールおよびアミンまたはそのアシル誘導体またはアセタールからなる軟質重合体、エチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴム、などのエポキシ系軟質軟質重合体、フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、などのフッ素系軟質重合体、天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体、等が挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性反応により官能基を導入したものでもよい。
【0115】
上記軟質重合体の中でもジエン系軟質重合体が好ましく、特に該軟質重合体の炭素−炭素不飽和結合を水素化した水素化物が、ゴム弾性、機械強度、柔軟性、分散性の点で優れる。
【0116】
(2)アルコール性化合物
また、アルコール性化合物は、分子内に少なくとも1つの非フェノール性水酸基を有する化合物で、好適には、少なくても1つの水酸基と少なくとも1つのエーテル結合またはエステル結合を有する。このような化合物の具体例としては、例えば2価以上の多価アルコール、より好ましくは3価以上の多価アルコール、さらに好ましくは3〜8個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基の1つがエーテル化またはエステル化されたアルコール性エーテル化合物やアルコール性エステル化合物が挙げられる。
【0117】
2価以上の多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、ジペンタエリスリトール、1,6,7−トリヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−4−オキソヘプタン、ソルビトール、2−メチル−1,6,7−トリヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−4−オキソヘプタン、1,5,6−トリヒドロキシ−3−オキソヘキサンペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられるが、特に3価以上の多価アルコール、さらには3〜8個の水酸基を有する多価アルコールが好ましい。またアルコール性エステル化合物を得る場合には、α、β−ジオールを含むアルコール性エステル化合物が合成可能なグリセロール、ジグリセロール、トリグリセロールなどが好ましい。
【0118】
このようなアルコール性化合物として、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンジラウレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノラウレート、ペンタエリスリトールモノベヘレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジラウレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジペンタエリスリトールジステアレートなどの多価アルコール性エステル化物;3−(オクチルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(デシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(ラウリルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(4−ノニルフェニルオキシ)−1,2−プロパンジオール、1,6−ジヒドロオキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−7−(4−ノニルフェニルオキシ)−4−オキソヘプタン、p−ノニルフェニルエーテルとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物、p−オクチルフェニルエーテルとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物、p−オクチルフェニルエーテルとジシクロペンタジエンの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物などが挙げられる。これらの多価アルコール性化合物は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。これらの多価アルコール性化合物の分子量は特に限定されないが、通常500〜2000、好ましくは800〜1500のものが、透明性の低下も少ない。
【0119】
(3)有機または無機フィラー
有機フィラーとしては、通常の有機重合体粒子または架橋有機重合体粒子を用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル重合体;ポリアリレート、ポリメタクリレートなどのα,β−不飽和酸から誘導された重合体;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどの不飽和アルコールから誘導された重合体;ポリエチレンオキシド、またはビスグリシジルエーテルからから誘導された重合体;ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリスルフォンなどの芳香族縮合系重合体;ポリウレタン;ポリアミド;ポリエステル;アルデヒド・フェノール系樹脂;天然高分子化合物などの粒子または架橋粒子を挙げることができる。
【0120】
無機フィラーとしては、例えば、フッ化リチウム、硼砂(硼酸ナトリウム含水塩)などの1族元素化合物;炭酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、炭酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどの2族元素化合物;二酸化チタン(チタニア)、一酸化チタンなどの4族元素化合物;二酸化モリブデン、三酸化モリブデンの6族元素化合物;塩化マンガン、酢酸マンガンなどの7族元素化合物;塩化コバルト、酢酸コバルトなどの8〜10族元素化合物;沃化第一銅などの11族元素化合物;酸化亜鉛、酢酸亜鉛などの12族元素化合物;酸化アルミニウム(アルミナ)、フッ化アルミニウム、アルミノシリケート(珪酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)などの13族元素化合物;酸化珪素(シリカ、シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラスなどの14族元素化合物;カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ、キンウンモ)、バイロース鉱などの天然鉱物の粒子が挙げられる。
【0121】
(1)〜(3)の化合物の配合量は脂環式炭化水素系共重合体と配合される化合物の組み合わせによって決まるが、一般に、配合量が多すぎれば、組成物のガラス転移温度や透明性が大きく低下し、光学材料として使用するのに不適である。また配合量が少なすぎれば、高温高湿下において成型物の白濁を生じる場合がある。配合量としては、脂環式炭化水素系共重合体100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.02〜5質量部、特に好ましくは0.05〜2質量部の割合で配合する。配合量が少なすぎる場合には高温高湿度環境下における白濁防止効果が得られず、配合量が多すぎる場合は成型品の耐熱性、透明性が低下する。
【0122】
〔本発明に係るプラスチック製光学素子の用途〕
本発明に係るプラスチック製光学素子は、高い精度の光学特性を具備すると共に、長期間にわたる高い耐久性を有し、かつ短期間での光学安定性に優れた特性を有しており、様々な光学部品への適用が可能である。
【0123】
本発明のプラスチック製光学素子の適用範囲としては、例えば、光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズなどのレンズ;眼鏡レンズなどの全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などの光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズなどのレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズなどが挙げられる。
【0124】
光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などが挙げられる。その他の光学用途としては、液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルムなどの光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板などが挙げられる。
【0125】
これらの中でも、低複屈折性が要求されるピックアップレンズやレーザ走査系レンズとして好適であり、ピックアップレンズに最も好適に用いられる。
【実施例】
【0126】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0127】
実施例1
《収納容器の作製》
〔収納容器1の作製〕
環状オレフィン系重合体としてテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとエチレンの共重合体(表1には、樹脂1と記載)と、紫外線吸収剤として反応性紫外線吸収剤を反応結合させた共重合樹脂(チバスペシャリティーケミカルズ社製、CGP1644)を収納容器とした時に、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率が10%となる量を添加して約220℃で混練りした後、インライン方式の射出成型機により、シリンダー温度を240度で、図1に記載の構成からなる収納容器1を作製した。この収納容器1の450nm以上、650nm以下の波長領域における平均透過率は、75%であった。
【0128】
なお、各波長域における透過率は、JIS−R−1635に従い、日立製作所製分光光度計U−4000型を用いて測定した。
【0129】
〔収納容器2〜6の作製〕
上記収納容器1の作製において、表1に記載の300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率となるように、紫外線吸収剤の添加量を適宜変更し以外は同様にして、収納容器2〜6を作製した。
【0130】
《プラスチック製光学素子の作製》
〔光学素子1の作製〕
環状オレフィン系重合体としてテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとエチレンの共重合体(表1には、樹脂1と記載)を約220℃で混練し、押し出し機でペレット化して樹脂組成物を作製した。
【0131】
このペレット化した樹脂組成物を用いて、シリンダー温度を240度でインライン方式の射出成型機より押し出し、直径が約3mmのプラスチックレンズを作製し、これを光学素子1とした。作製した光学素子1の405nmにおける透過率は、40%であった。
【0132】
〔光学素子2の作製〕
環状オレフィン系重合体としてテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとエチレンの共重合体(表1には、樹脂1と記載)を用い、これにHALSとしてビス−[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル]セバシエート(表1には、化合物1と記載)を1.0質量%添加し、これを約220℃で混練し、押し出し機でペレット化して樹脂組成物を作製した。
【0133】
このペレット化した樹脂組成物を用いて、シリンダー温度を240度でインライン方式の射出成型機より押し出し、直径が約3mmのプラスチックレンズを作製し、これを光学素子2とした。作製した光学素子2の405nmにおける透過率は、87%であった。
【0134】
〔耐久性の評価〕
上記作製した各光学素子を、23℃、55%RHの環境室内で、公知の光ピックアップ装置を用いて、光源よりレーザダイオードにより405nmの波長の光を、各レンズ上に、スポット光として250時間の連続照射を施した後、そのレーサー照射箇所を目視観察し、下記の基準に従って耐久性の評価を行った。
【0135】
◎:連続照射後も、レーザー照射箇所に変質は全く認められない
○:連続照射後に、レーザー照射箇所に極弱い濁りが認められるが実用上は全く問題がない
△:連続照射後に、レーザー照射箇所に弱い白濁現象が認められるが実用上許容の範囲にある
×:連続照射後に、レーザー照射箇所に強い白濁現象が認められ、実用上問題がある
《収納容器の評価》
〔収納容器への光学素子の装填〕
表1に記載の組み合わせで、各収納容器中に各光学素子を収納し、その両端を蓋部材で塞いで、評価サンプル1〜12を作製した。
【0136】
〔耐光性の評価〕
上記評価サンプルを、三菱電機社製の昼光色蛍光灯を用い、1720Luxの照度条件で、168時間の照射を行った。
【0137】
次いで、収納した光学素子の昼光色蛍光灯の照射前の405nmにおける透過率T1と、照射後の透過率をT2を求め、下式に従って透過率変化率ΔT%(405nm)を求めた。
【0138】
透過率変化率ΔT=(T1−T2)/T1(%)
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0139】
【表1】

【0140】
表1に記載の結果より明らかなように、405nmでの透過率が高く耐久性に優れた光学素子2を収納容器として、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率を20%以下とすることにより、昼光色蛍光灯による光学素子への影響(透過率の低下)を効果的に抑制できており、405nmでの透過率が低い比較の光学素子1とほぼ同等の保管性を具備していることが分かる。
【0141】
実施例2
《収納容器の作製》
〔収納容器7〜14の作製〕
実施例1に記載の収納容器2の作製において、油溶性染料としてValifast Yellow 4120(オリエント化学工業株式会社製)を、表2に記載の450nm以上、650nm以下の波長領域における平均透過率となるように添加した以外は同様にして、収納容器7〜14を作製した。なお、収納容器14は、実施例1で作製した収納容器2と同一で、油溶性染料を添加しないものである。
【0142】
《収納容器の評価》
〔収納容器への光学素子の装填〕
上記作製した各収納容器中に、実施例1で作製した光学素子2を収納し、その両端を蓋部材で塞いで、評価サンプル13〜20を作製した。
【0143】
〔耐光性及び視認性の評価〕
実施例1に記載の方法と同様にして耐光性の評価と、下記の方法に従って視認性の評価を行った。
【0144】
(視認性の評価)
標準光源下で、上記作製した各評価サンプル中に収納された光学素子を確認できるか否かを目視観察し、下記の基準に従って視認性の評価を行った。
【0145】
◎:収納されている光学素子を明瞭に確認することができる
○:収納されている光学素子をほぼ確認することができる
△:収納容器の濃度は高いが、どうにか収納されている光学素子の確認ができる
×:収納容器の濃度が高く、内容物の確認が全くできない
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0146】
【表2】

【0147】
表2に記載の結果より明らかなように、450nm以上、650nm以下の波長領域における平均透過率が20%以上の収納容器を用いることにより、優れた耐光性を維持すると共に内部に収納した光学素子の視認性が高いことが分かる。
【0148】
実施例3
《収納容器の作製》
〔収納容器15の作製〕
実施例1に記載の収納容器2の作製において、樹脂材料として環状オレフィン系重合体としてテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとエチレンの共重合体(樹脂1)に代えて、脂環式樹脂であるZEONEX(日本ゼオン社製)を用いた以外は同様にして、収納容器15を作製した。
【0149】
〔収納容器16の作製〕
実施例1に記載の収納容器2の作製において、樹脂材料として環状オレフィン系重合体としてテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとエチレンの共重合体(樹脂1)に代えて、脂環式樹脂であるTOPAS(ポリプラスチック社製)を用いた以外は同様にして、収納容器16を作製した。
【0150】
〔収納容器17の作製〕
実施例1に記載の収納容器2の作製において、樹脂材料として環状オレフィン系重合体としてテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとエチレンの共重合体(樹脂1)に代えて、ポリカーボネート樹脂を用いた以外は同様にして、収納容器17を作製した。
【0151】
〔収納容器18の作製〕
実施例1に記載の収納容器2の作製において、樹脂材料として環状オレフィン系重合体としてテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとエチレンの共重合体(樹脂1)に代えて、ポリプロピレン樹脂を用いた以外は同様にして、収納容器18を作製した。
【0152】
《収納容器の評価》
〔収納容器への光学素子の装填〕
上記作製した各収納容器と実施例1で作製した収納容器2中に、実施例1で作製した光学素子2を収納し、その両端を蓋部材で塞いで、評価サンプル21〜25を作製した。
【0153】
〔耐光性及び視認性の評価〕
実施例1に記載の方法と同様にして耐光性の評価と、下記の方法に従って取りだし容易性の評価を行った。
【0154】
(取り出し容易性)
各評価サンプルを、23℃、20%RHの環境下で24時間保存して、収容容器内で適度な振動を与えた後、収納した光学素子の取り出しやすさを目視観察し、下記の基準に従って取り出し容易性の評価を行った。
【0155】
○:傾けるだけで、内部に収納された光学素子をスムーズに取り出すことができる
△:多少の振動を与えることにより、内部に収納された光学素子をスムーズに取り出すことができる
×:静電気等の発生で、内部に収納された光学素子を取り出すことができない
以上により得られた結果を、表3に示す。
【0156】
【表3】

【0157】
表3に記載の結果より明らかなように、本発明の脂環式樹脂を用いた収納容器は、耐光性に優れていることが分かる。更に、光学素子と同一の樹脂材料で形成した収納容器を用いた評価サンプル25が、最も取り出し性に優れていることが分かる。
【0158】
実施例4
《フィルムシートの作製》
ポリエチレンテレフタレート中に、紫外線吸収剤として反応性紫外線吸収剤を反応結合させた共重合樹脂(チバスペシャリティーケミカルズ社製、CGP1644)の添加量を適宜変更して混練、製膜し、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率が10%〜70%のフィルムシートを作製した。
【0159】
《収納容器の作製》
実施例1に記載の方法と同様にして収納容器(300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率:95%)を作製し、その表面に各透過率を有するフィルムシートを全面に貼り付けて各収納容器を作製した。
【0160】
《収納容器の評価》
実施例1に記載の方法と同様にして、光学素子を収納して評価を行った結果、実施例1と同様に結果を得ることができた。
【0161】
実施例5
実施例1に記載の方法において、光学素子を公知の光ピックアップ装置に組み込んたユニットとし、それを実施例1と同様の透過特性を有する収納容器に収納した。次いで、実施例1に記載の方法と同様にして、光学素子を収納して評価を行った結果、実施例1と同様に結果を得ることができた。
【0162】
実施例6
実施例1で作製した評価サンプル1〜12を、長期間にわたる保管評価及び運搬時の評価を行った結果、実施例1と同様に結果を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】本実施のレンズ収納容器の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0164】
10 レンズ
10a 光学有効面(レンズ)
10b フランジ部(レンズ)
20 レンズ収納容器
21 収納部
22 蓋部材
22p 突出部(蓋部材)
22t 爪部(蓋部材)
22m つまみ部(蓋部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも脂環式樹脂と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する樹脂組成物により成型したプラスチック製光学素子の収納容器であって、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率が20%以下であることを特徴とするプラスチック製光学素子の収納容器。
【請求項2】
450nm以上、650nm以下の波長領域における平均透過率が、20%以上であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック製光学素子の収納容器。
【請求項3】
前記樹脂組成物が含有する脂環式樹脂が、α−オレフィンと下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック製光学素子の収納容器。
【化1】

〔式中、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、kは0または1を表し、R〜R18、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表す。〕
【化2】

〔式中、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、r及びsはそれぞれ0、1または2を表し、R21〜R39はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表す。〕
【請求項4】
収納容器の構成材料と、前記プラスチック製光学素子を構成する脂環式樹脂材料とが、同一材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子の収納容器。
【請求項5】
顔料、染料または紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子の収納容器。
【請求項6】
顔料、染料または紫外線吸収剤を含有し、300nm以上、450nm以下の波長領域における平均透過率が20%以下であるフィルムシートを容器表面に貼り付けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子の収納容器。
【請求項7】
前記プラスチック製光学素子は、波長405nmにおける透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子の収納容器。
【請求項8】
少なくともα−オレフィンと下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体と、ヒンダードアミン系化合物とを含む樹脂組成物により成型したプラスチック製光学素子を、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子の収納容器に収納して運搬することを特徴とするプラスチック製光学素子の運搬方法。
【化3】

〔式中、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、kは0または1を表し、R〜R18、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表す。〕
【化4】

〔式中、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、r及びsはそれぞれ0、1または2を表し、R21〜R39はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表す。〕
【請求項9】
少なくともα−オレフィンと下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体と、ヒンダードアミン系化合物とを含む樹脂組成物により成型したプラスチック製光学素子を、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子の収納容器に保管することを特徴とするプラスチック製光学素子の保管方法。
【化5】

〔式中、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、kは0または1を表し、R〜R18、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表す。〕
【化6】

〔式中、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、r及びsはそれぞれ0、1または2を表し、R21〜R39はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表す。〕

【図1】
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【公開番号】特開2007−119668(P2007−119668A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315986(P2005−315986)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】