説明

プラスミン活性を決定するための組成物、キットおよび方法

蛍光発生ペプチド基質を使用してプラスミン活性を決定するための組成物、キットおよび方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスミン活性を決定するため、特に、蛍光発生ペプチド基質、特にクマリン−ペプチド基質を使用してプラスミン活性を決定するための組成物、キットおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスミン活性のための発色性基質は、S−2403として既知のペプチドに基づく基質(pyro−glu−phe−lys−p−ニトロアニリド)である。プラスミンはS−2403のリジン残基後の結合を切断してp−ニトロアナリンを遊離することが知られており、そしてp−ニトロアナリンの測定がプラスミン活性に直接関連することが示されている。しかしながら、プラスミン活性を決定するための従来の組成物および方法は、検出の特異性および感度を含む限界を有する。
【0003】
プラスミン活性を決定するための効率的な組成物、キットおよび方法に対するニーズが残されている。
【発明の概要】
【0004】
プラスミン活性を決定するために有用な基質がここに提供される。
【0005】
1つの態様では、本発明は、式:
−[A]−X (I)
[式中,
はLysであり;AはPheであり;Aはアミノ酸残基であり;
Rはピログルタミン酸またはN−末端保護基であり;
Xは蛍光発生基であり;
mは0または1であり;そして
nは整数≧0である]
の化合物を提供する。
【0006】
その他の態様では、本発明は、式:
−[A]−X (I)
[式中,
はLysであり;AはPheであり;Aはアミノ酸残基であり;
Rはピログルタミン酸またはN−末端保護基であり;
Xは蛍光発生基であり;
mは0または1であり;そして
nは整数≧0である]
の化合物とプラスミンを接触させることを含む、
プラスミンの活性を決定するための方法を提供する。
【0007】
ある態様では、本発明は、式:
−[A]−X (I)
[式中,
はLysであり;AはPheであり;Aはアミノ酸残基であり;
Rはピログルタミン酸またはN−末端保護基であり;
Xは蛍光発生基であり;
mは0または1であり;そして
nは整数≧0である]
の化合物とプラスミンを接触させることを含み、ここで、プラスミンはプラスミンを投与された被験者からの生物学的サンプルから得られる、
プラスミンの薬物動態を決定する方法を提供する。
【0008】
他の態様では、本発明は、式:
−[A]−X (I)
[式中,
はLysであり;AはPheであり;Aはアミノ酸残基であり;
Rはピログルタミン酸またはN−末端保護基であり;
Xは蛍光発生基であり;
mは0または1であり;そして
nは整数≧0である]
の化合物の存在下で、プラスミンと分子を接触させることを含む、
プラスミン活性に影響を与える分子を決定するための方法を提供する。
【0009】
また、本発明の化合物の1種以上を含んでなるキットが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
I.組成物
1つの態様では、本発明は、式:
−[A]−X (I)
[式中,
はLysであり;AはPheであり;Aはアミノ酸残基であり;
Rはピログルタミン酸またはN−末端保護基であり;
Xは蛍光発生基であり;
mは0または1であり;そして
nは整数≧0である]
の化合物を提供する。
【0011】
限定されるものではない蛍光発生基の例は、4−(置換)クマリン、クマリン誘導体、ヒドロキシアリルオキシプロピルナフタルイミドquat、4−メトキシ−N−(3−N‘N’−ジメチルアミノプロピル)ナフタルイミド、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロピルquat、8−(3−ビニルベンジルオキシ)−1,3,6−ピレントリスルホン酸、8−(4−ビニルベンジルオキシ)−1,3,6−ピレントリスルホン酸、8−(アリルオキシ)−1,3,6−ピレントリスルホン酸、1−(置換)ナフタレン、9−(置換)アントラセン、2−(置換)キノリン一塩酸塩、2−(置換)ベンズイミダゾール、5−(置換)フルオレセイン、3−(置換)−6,7−ジメトキシ−1−メチル−2−(1H)−キノキサゾリノン、それらの混合物およびそれらの誘導体を含む。
【0012】
1つの実施態様では、蛍光発生基は7−アミノ−4−メチルクマリンである。
【0013】
Rはピログルタミン酸またはN−末端保護基であってもよい。N−末端保護基は、本発明の化合物のペプチドセグメントのN−末端を保護することができる。N−末端保護基の例は、限定されるものではないが、アシル保護基、芳香族ウレタン保護基および脂肪族ウレタン保護基を含む。例えば、アシル保護基は、スクシニル、メトキシスクシニル、アセチル、ベンゾイルおよびトリフルオロアセチルであってもよい。
【0014】
1つの実施態様では、Rはピログルタミン酸である。
【0015】
その他の実施態様では、RはN−末端保護基である。ある実施態様では、N−末端保護基はスクシニルまたはメトキシスクシニルである。
【0016】
芳香族ウレタン保護基は、例えば,ベンジルオキシカルボニルであってもよい。
【0017】
脂肪族ウレタン保護基は、例えば,tert−ブトキシカルボニルまたはアダマンチルオキシカルボニルであってもよい。
【0018】
本発明によれば、nは0と同じかまたは0を超える整数であってもよい。ある実施態様では、nは30を超えず、具体的には、nは30,29,28,27,26,25,24,23,22,21,20,19,18,17,16,15,14,13,12,11,10,9,8,7,6,5,4,3,2,1および0である。他の実施態様では、mは0または1である。1つの実施態様では、n=0である。その他の実施態様では、m=1の場合のn=0である。
【0019】
他の実施態様では、m=1、n=0であり、Rはピログルタミン酸であり、そしてXは7−アミノ−4−メチルクマリンである。例えば、化合物はpyro−glu−phe−lys−7−アミド−4−メチルクマリンとして特徴づけてもよい。
【0020】
他の実施態様では、本発明は化合物のトリフルオロアセチル誘導体を提供する。
【0021】
II.方法
その他の態様では、本発明は、式:
−[A]−X (I)
[式中,
はLysであり;AはPheであり;Aはアミノ酸残基であり;
Rはピログルタミン酸またはN−末端保護基であり;
Xは蛍光発生基であり;
mは0または1であり;そして
nは整数≧0である]
の化合物とプラスミンを接触させることを含む、
プラスミンの活性を決定するための方法を提供する。
【0022】
1つの実施態様では、m=1、n=0であり、Rはピログルタミン酸であり、そしてXは7−アミノ−4−メチルクマリンである。例えば、化合物はpyro−glu−phe−lys−7−アミド−4−メチルクマリンとして特徴づけてもよい。
【0023】
活性が決定されるプラスミンは、いかなる起源から得られてもよい。ある実施態様では、プラスミンは、限定されるものではないが、血液、血清、血漿、精液および尿を含む、生物学的流体中に存在する。他の実施態様では、プラスミンは、例えば、ストレプトキナーゼのようなプラスミノーゲン活性化因子によりプラスミノーゲンを活性化することによって調製される。例えば、プラスミノーゲンは、血漿由来かまたは遺伝子組み換えによるプラスミノーゲンであってもよい。ある実施態様では、プラスミンはヒトのプラスミンである。非ヒト由来のプラスミンは、また、マウス、ラット、サル、ネコ、イヌ、ウマ、ウシなどのプラスミンを含むことが本発明によって意図される。
【0024】
1つの実施態様では、方法はさらに、プラスミンと式(I)によって表される化合物との間の反応によって生産される少なくとも1種の反応生産物の量を決定することを含む。例えば、R−[A]、Xまたは両方の量が決定されてもよく、ここで、プラスミンの活性は、R−[A]、Xまたは両方の量に基づいて決定される

【0025】
その他の実施態様では、方法はさらに、プラスミンと式(I)によって表される化合物との間の反応によって生産されるXの量を決定することを含み、ここで、プラスミンの活性はXの量に基づいて決定される。
【0026】
他の実施態様では、方法はさらに、形成されたXと本来の化合物との間の蛍光における差異に基づいてプラスミンの活性を決定することを含む。
【0027】
ある態様では、本発明はプラスミンの薬物動態を決定する方法を提供する。例えば、方法は、投与後の時間にわたって種々の生理学的部位における投与されたプラスミンの存在および/または量を決定することを可能にする。薬物動態は、投与されたプラスミンのレベルを調査することによって評価することができる。方法はさらに、プラスミンの吸収および分布、プラスミンの化学的修飾、ならびにプラスミンの貯蔵および排除等々を追跡することを含んでもよい。
【0028】
1つの実施態様では、本発明は、式:
−[A]−X (I)
[式中,
はLysであり;AはPheであり;Aはアミノ酸残基であり;
Rはピログルタミン酸またはN−末端保護基であり;
Xは蛍光発生基であり;
mは0または1であり;そして
nは整数≧0である]
の化合物とプラスミンを接触させることを含み、ここで、プラスミンはプラスミンを投与された被験者からの生物学的サンプルから得られる、
プラスミンの薬物動態を決定する方法を提供する。1つの実施態様では、m=1、n=0であり、Rはピログルタミン酸であり、Xは7−アミノ−4−メチルクマリンである。
【0029】
他の態様では、本発明は、式:
−[A]−X (I)
[式中,
はLysであり;AはPheであり;Aはアミノ酸残基であり;
Rはピログルタミン酸またはN−末端保護基であり;
Xは蛍光発生基であり;
mは0または1であり;そして
nは整数≧0である]
の化合物の存在下で、プラスミンと分子を接触させることを含む、
プラスミン活性に影響を与える分子を決定するための方法を提供する。1つの実施態様では、m=1、n=0であり、Rはピログルタミン酸であり、Xは7−アミノ−4−メチルクマリンである。
【0030】
例えば、ある実施態様では、分子を決定する方法は、プラスミン活性に直接または間接的に影響を与える分子に対するスクリーニング方法であってもよい。例えば、方法は、プラスミン活性に影響を与える分子に対する高処理スクリーニングであってもよい。決定される分子は、プラスミン活性に影響を与えるであろういかなる種類の分子であってもよい。例えば、決定される分子は、ポリペプチド、当該技術分野において低分子と呼ばれる化合物、化学薬品、細菌、ウイルスなどであってもよい。
【0031】
III.キット
その他の態様では、本発明は化合物を含んでなるキットを提供する。化合物は、式:
−[A]−X (I)
[式中,
はLysであり;AはPheであり;Aはアミノ酸残基であり;
Rはピログルタミン酸またはN−末端保護基であり;
Xは蛍光発生基であり;
mは0または1であり;そして
nは整数≧0である]
によって表される。
【0032】
1つの実施態様では、m=1、n=0であり、Rはピログルタミン酸であり、そしてXは7−アミノ−4−メチルクマリンである。その他の実施態様では、化合物はピログルタミン酸−Phe−Lys−7−アミド−4−メチルクマリンである。種々の実施態様では、キットの構成要素は別々の区分に存在してもよい。
【0033】
次の実施例は本発明を具体的に説明するためにのみ与えられ、そして本発明を限定するために与えられたものではない。当業者は、与えられた実施例が、特許請求されるものを具体的に説明するのみであり、そして本発明が随伴される請求項による範囲においてのみ限定されることを評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】3種の異なる蛍光発生基質:(a)Tal−TBMW2、これは、本発明の化合物の1つの実施態様に対応し、そして式:ピログルタミン酸−Phe−Lys−7−アミド−4−メチルクマリンによって表すことができる;(b)Sigma V−3138(Sigma Aldrich,St.Louis,MO);および(c)S2403(Chromogenix,Milano,Italy)との相対的応答を示すグラフである。
【実施例1】
【0035】
3種の異なる蛍光発生基質のプラスミン加水分解によりペプチドを形成させ、そして蛍光発生基7−アミド−4−メチルクマリンが定量された。3種の基質は、(a)Tal−TBMW2、これは、本発明の化合物の1つの実施態様に対応し、そして式:ピログルタミン酸−Phe−Lys−7−アミド−4−メチルクマリンによって表すことができる;(b)Sigma V−3138(Sigma Aldrich,St.Louis,MO);および(c)S2403(Chromogenix,Milano,Italy)であった。結果は図1において示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
−[A]−X (I)
[式中,
はLysであり;AはPheであり;Aはアミノ酸残基であり;
Rはピログルタミン酸またはN−末端保護基であり;
Xは蛍光発生基であり;
mは0または1であり;そして
nは整数≧0である]
の化合物。
【請求項2】
蛍光発生基が、4−(置換)クマリン、クマリン誘導体、ヒドロキシアリルオキシプロピルナフタルイミドquat、4−メトキシ−N−(3−N‘N’−ジメチルアミノプロピル)ナフタルイミド、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロピルquat、8−(3−ビニルベンジルオキシ)−1,3,6−ピレントリスルホン酸、8−(4−ビニルベンジルオキシ)−1,3,6−ピレントリスルホン酸、8−(アリルオキシ)−1,3,6−ピレントリスルホン酸、1−(置換)ナフタレン、9−(置換)アントラセン、2−(置換)キノリン一塩酸塩、2−(置換)ベンズイミダゾール、5−(置換)フルオレセイン、3−(置換)−6,7−ジメトキシ−1−メチル−2(1H)−キノキサゾリノン、それらの混合物およびそれらの誘導体からなる群から選ばれる、請求項1の化合物。
【請求項3】
蛍光発生基が7−アミノ−4−メチルクマリンである、請求項1の化合物。
【請求項4】
Rがピログルタミン酸である、請求項の1の化合物。
【請求項5】
N−末端保護基が、アシル保護基、芳香族ウレタン保護基および脂肪族ウレタン保護基からなる群から選ばれる、請求項1の化合物。
【請求項6】
N−末端保護基がスクシニルまたはメトキシスクシニルである、請求項1の化合物。
【請求項7】
アシル保護基が、スクシニル、メトキシスクシニル、アセチル、ベンゾイルおよびトリフルオロアセチルからなる群から選ばれる、請求項5の化合物。
【請求項8】
芳香族ウレタン保護基がベンジルオキシカルボニルである、請求項5の化合物。
【請求項9】
脂肪族ウレタン保護基がtert−ブトキシカルボニルまたはアダマンチルオキシカルボニルである、請求項5の化合物。
【請求項10】
n=0である、請求項1の化合物。
【請求項11】
m=1であり、n=0であり、Rがピログルタミン酸であり、Xが7−アミノ−4−メチルクマリンである、請求項1の化合物。
【請求項12】
請求項1の化合物のトリフルオロアセチル誘導体。
【請求項13】
式:
−[A]−X (I)
[式中,
はLysであり;AはPheであり;Aはアミノ酸残基であり;
Rはピログルタミン酸またはN−末端保護基であり;
Xは蛍光発生基であり;
mは0または1であり;そして
nは整数≧0である]
の化合物とプラスミンを接触させることを含む、
プラスミンの活性を決定するための方法。
【請求項14】
n=0であり、Rがピログルタミン酸であり、Xが7−アミノ−4−メチルクマリンである。請求項13の方法。
【請求項15】
プラスミンが、血漿由来プラスミノーゲンまたは遺伝子組み換えプラスミノーゲンから調製される、請求項13の方法。
【請求項16】
プラスミンと式(I)によって表される化合物との間の反応によって生産される少なくとも1種のR−[A]およびXの量を決定することをさらに含み、ここで、プラスミンの活性は、少なくともR−[A]、Xまたは両方の量に基づいて決定される、請求項13の方法。
【請求項17】
プラスミンと式(I)によって表される化合物との間の反応によって生産されるXの量を決定することをさらに含み、ここで、プラスミンの活性はXの量に基づいて決定される、請求項13の方法。
【請求項18】
形成されたXと本来の化合物との間の蛍光における差異に基づいてプラスミンの活性を決定することをさらに含む、請求項13の方法。
【請求項19】
式:
−[A]−X (I)
[式中,
はLysであり;AはPheであり;Aはアミノ酸残基であり;
Rはピログルタミン酸またはN−末端保護基であり;
Xは蛍光発生基であり;
mは0または1であり;そして
nは整数≧0である]
の化合物とプラスミンを接触させることを含み、ここで、プラスミンはプラスミンを投与された被験者からの生物学的サンプルから得られる、プラスミンの薬物動態を決定する方法。
【請求項20】
式:
−[A]−X (I)
[式中,
はLysであり;AはPheであり;Aはアミノ酸残基であり;
Rはピログルタミン酸またはN−末端保護基であり;
Xは蛍光発生基であり;
mは0または1であり;そして
nは整数≧0である]
の化合物の存在下で、プラスミンと分子を接触させることを含む、プラスミン活性に影響を与える分子を決定するための方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−517435(P2012−517435A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549278(P2011−549278)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/023296
【国際公開番号】WO2010/091235
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(506074484)グリフオルス・セラピユーテイクス・インコーポレーテツド (10)
【氏名又は名称原語表記】Grifols Therapeutics,Inc.
【Fターム(参考)】