説明

プラズマディスプレイパネルおよびその製造方法ならびにこれを用いたプラズマディスプレイ装置

【課題】PDPのアドレス電圧変化量の増大を抑制する。
【解決手段】基板上に配置された表示電極対であるX、Y電極14、15と、X、Y電極14、15を被覆する誘電体層17と、この誘電体層17を被覆する保護層18とを有する。保護層18は誘電体層17の表面に積層されるMgO膜18aと、MgO膜18a上に付着する複数のMgO結晶粒子18bとを備えている。また、MgO膜18aの結晶配向が(110)配向となっているMgO膜18aの結晶配向を(110)配向とすることにより、MgO膜18aの結晶密度を高くすることができるので、アドレス電圧変化量の増大を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルおよびその製造技術に関し、特に、保護膜の表面に複数のMgO結晶粒子が付着したプラズマディスプレイパネルに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP;Plasma Display Panel)は、例えば希ガスなどの放電ガスを封入したセルと呼ばれる放電空間内で、気体放電を発生させ、この際に発生する真空紫外線で蛍光体を励起して、画像を表示する表示パネルである。
【0003】
現在、一般に商品化されているAC(交流)駆動方式のPDPは面放電型である。面放電型PDPでは、カラー表示のための蛍光体を表示電極対からパネルの厚さ方向に遠ざけて配置することができ、それによって放電時のイオン衝撃(スパッタ)による蛍光体の特性劣化を低減することができる。したがって、面放電型PDPは、対を成す表示電極(X電極およびY電極と呼ばれる)を前面基板と背面基板とに振り分けて配置する対向放電型に比べて、長寿命化に適している。
【0004】
前記一般の面放電型AC型PDPの前面基板では、表示電極対を覆う誘電体層が放電時のイオンの衝撃により劣化することを防ぐために保護膜を設ける。また、この保護膜は、誘電体層を放電時のスパッタから誘電体層を保護する機能の他、該保護膜にイオンが衝突することにより、二次電子を放出し、放電を成長させる機能も有する。
【0005】
前記保護膜として、耐イオン衝撃性や二次電子の放出のしやすさから、酸化マグネシウム(MgO)の薄膜が一般に用いられる。(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特許第3247632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PDPでは所定のフレーム時間(フィールド)を、複数のサブフィールドに分割し、各サブフィールドで行う維持放電(表示放電)の回数の組み合わせにより階調表示を行う。また、画像を形成するために、サブフィールド毎に、点灯するセルを選択する動作(アドレス動作)を行う。アドレス動作には、アドレス放電を発生させたセルで表示放電をさせる選択書き込み方式と、アドレス放電を発生させないセルで表示放電をさせる選択消去方式がある。例えば、選択書き込み放電では、選択するセルの走査電極とアドレス電極へパルスを印加して放電(アドレス放電)を発生させて壁電荷を形成する。その後、セル群に対して駆動波形の印加により選択セルで維持放電(表示放電)を発生させる動作(維持動作)を行う。
【0007】
<放電遅れについての検討>
前記MgOの保護膜は二次電子放射係数が高く、放電開始電圧を低減するには有効である。しかし近年、PDPの高精細化の要求に伴ってアドレス速度を向上させる必要が生じ、この結果、放電遅れの改善が新たに重要な課題となっている。
【0008】
放電遅れとは、一般に形成遅れと統計遅れの和として考えられる。形成遅れは、電極間に生成した初電子が発生してから明確な放電が形成されるまでの時間であり、多数回放電を実施したときの略最小放電時間と見なされている。一方、統計遅れは、電圧印加から電離が始まって放電が開始するまでの時間であり、表示セル毎の放電遅れのばらつきは、この時間によりほぼ支配されるため、一般に統計遅れと呼ばれている。
【0009】
これらの放電遅れが長いと、表示ミス防止のためにアドレス時間を長くせざるを得ず、画像形成に寄与する表示期間が短くなるなどの悪影響を与える。したがって、PDPにとって、放電遅れが短いことが望ましい。
【0010】
ガス放電では、空間(放電空間)中の荷電粒子が外部電界によって加速され、他のガス分子に衝突し、該ガス分子が電離することで電離粒子の数を増やし成長するが、最初に荷電粒子が供給されないと放電は始まらず、荷電粒子が供給されるまで放電開始が遅れる。したがって放電の種火となるプライミング電子(初期荷電粒子)を放電空間内により多く供給する程、放電遅れを短くすることができる。
【0011】
近年、放電空間内のプライミング電子の数を供給する手段として、保護膜上に単結晶のMgO粉末を付着させる構造が提案されている。この単結晶のMgO粉末を付着させることにより、プライミング電子の供給量が増加する原理は、完全に解明された訳ではないが、放電遅れを改善することができることが、実験的に確認されている。
【0012】
<単結晶のMgO粉末を付着することにより生じる新たな課題の検討>
ところが、本願発明者が検討した結果、保護膜上に単結晶のMgO粉末を付着させたPDPにおいては、以下に示す新たな課題が生じることを見出した。
【0013】
すなわち、アドレス放電を行うために必要な印加電圧であるアドレス電圧にばらつきが大きくなるという課題である。詳しく説明すると、アドレス動作では、表示電極対の延在方向に沿って並べて配置されるアドレス電極にアドレス電圧を印加する。一方、PDPの表示ラインを構成する複数の表示電極対の一方は走査電極と呼ばれ、アドレス動作においては、この走査電極毎に順次スキャンしながら走査パルスを印加する。
【0014】
アドレス放電は、アドレス電圧が印加されたアドレス電極と、走査パルスが印加された走査電極が交差するセルで発生することとなる。したがって、アドレス電極にアドレス電圧を印加するのみでは、アドレス放電は開始されず、走査パルスが印加されることにより開始されるので、アドレス放電が開始されるタイミングは、表示ライン毎に異なっている。
【0015】
ここで、前記した保護膜上に単結晶のMgO粉末を付着させたPDPにおいては、アドレス動作の初期段階で印加するアドレス電圧と、アドレス動作の後半で印加するアドレス電圧の必要電圧量の差(以下アドレス電圧変化量と呼ぶ)が非常に大きくなることが判明した。
【0016】
また、前記アドレス電圧変化量は、PDPの温度にも依存し、PDPの温度が高くなるほど、アドレス電圧変化量が増大することが判明した。
【0017】
アドレス放電において放電不良が発生すると、表示不良の原因となるので、アドレス電圧変化量が増大するPDPにおいては、高い側の電圧にあわせて印加するアドレス電圧を設定することとなる。この結果、アドレス電圧を制御するマージンが狭くなる。
【0018】
また、アドレス電圧の上昇により、PDPの消費電力の上昇を招くこととなる。
【0019】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、PDPのアドレス電圧変化量の増大を抑制することができる技術を提供することにある。
【0020】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0022】
すなわち、本発明の一つの実施の形態におけるプラズマディスプレイパネルは、放電ガスを封入して形成された放電空間を介して対向する一対の基板構造体を備え、前記一対の基板構造体の一方は、基板上に配置された複数の表示電極対と、前記複数の表示電極対を被覆する誘電体層と、この誘電体層を被覆する保護層とを有し、前記保護層は、前記誘電体層の表面に積層されるMgO(酸化マグネシウム)膜と、前記MgO膜上に付着する複数のMgO結晶粒子とを備え、前記MgO膜の結晶配向が(110)配向となっているものである。
【発明の効果】
【0023】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。すなわち、PDPのアドレス電圧変化量の増大を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本願発明を詳細に説明する前に、本願における用語の意味を説明すると次の通りである。
【0025】
プラズマディスプレイパネル(PDP;Plasma Display Panel)とは、対向配置される一対の基板の間に形成された放電セル内で気体放電を発生させ、この際に発生する励起光で蛍光体を励起させて、所望の画像を形成する略平面板状の表示パネルである。PDPの内部構造や構成材料は、要求性能あるいは駆動方式に応じて種々の構成例があるが、原理的に明らかに適用できない構成を除き、これら全ての構成例を含む。
【0026】
プラズマディスプレイモジュール(PDPモジュール)は、PDPと、PDPの表示面の反対側に配置されてPDPを支持するシャーシ部材と、シャーシ部材の背面(PDPとの対向面の反対側に位置する面)側に配置され、PDPを駆動、制御する、あるいはPDPに電源を供給するための各種電気回路が形成された回路基板とを備えたモジュールであって、各種電気回路とPDPとが電気的に接続されたものである。なお、PDPモジュールの実施態様としては、上記した各種電気回路が形成された回路基板の一部または全部が取り付けられず、該回路基板の取り付け予定位置に取り付け用治具が形成された構造もある。本願では、このような実施態様もPDPモジュールに含まれる。
【0027】
プラズマディスプレイセット(PDPセット)は、PDPモジュールを外部筐体でカバーした表示装置である。また、PDPモジュールを例えばスタンドなどの支持構造物に固定した表示装置もこれに含まれる。また、PDPセットをテレビ受像機として用いる場合には、PDPモジュールとチューナとが電気的に接続されるが、このチューナを含むものもPDPセットに含まれる。
【0028】
プラズマディスプレイ装置(PDP装置)には、上記したPDPモジュールおよびPDPセットが含まれる。
【0029】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0030】
また、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は原則として省略する。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
<PDPの基本構造>
まず、図1および図2を用いて本実施の形態のPDPの構造の一例についてカラー表示用のAC駆動型の3電極面放電型PDPを例に説明する。図1は本実施の形態のPDPの要部を拡大して示す要部拡大組み立て斜視図、図2は図1に示す前面基板構造体の上下を反転させて保護層の表面状態を示す要部拡大斜視図である。
【0032】
図1において、PDP1は放電ガスを封入して形成された放電空間24を介して対向する一対の基板構造体である前面基板構造体11と背面基板構造体12とを有している。
【0033】
前面基板構造体11は、前面基板13(第1基板)上に配置された複数の表示電極対であるX電極14およびY電極15と、これらの表示電極対を被覆する誘電体層17と、この誘電体層を被覆する保護層18とを有している。また、保護層18は、図2に示すように誘電体層17の表面に積層されるMgO(酸化マグネシウム)膜18aと、MgO膜18a上に付着する複数のMgO結晶粒子18bとを備えている。
【0034】
前面基板構造体11と背面基板構造体12とは対向配置された状態で重ね合わされ、その間に放電空間24を有している。つまり、前面基板構造体11と背面基板構造体12とは放電空間24を介して対向配置されている。
【0035】
前面基板構造体11はPDP1の表示面となる第1の面13aを有し、例えばガラス基板である前面基板13を有している。前面基板13の第1の面13aの反対側の面(内面)にはPDP1の表示電極であるX電極(表示電極)14と、Y電極(表示電極、走査電極)15とがそれぞれ複数形成されている。
【0036】
X電極14およびY電極15は維持放電(表示放電)を行うための一対の表示電極対を構成し、例えば、行方向DXに沿って帯状に延在するようにそれぞれ交互に配置されている。この一対のX電極14とY電極15とがPDP1における行方向DXの表示ラインを構成する。なお、図1では、X電極14およびY電極15の一部を拡大して示しているが、PDP1は、この表示ラインの行数に応じて複数のX電極14およびY電極15を有している。
【0037】
このX電極14およびY電極15は一般に例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やSnOなどの透明な電極材料で構成されるX透明電極14a、Y透明電極15aと、例えば、Ag、Au、Al、Cu、Cr、あるいはこれらの積層体(例えばCr/Cu/Crの積層体)などからなるXバス電極14b、Yバス電極15bとで構成される。
【0038】
X透明電極14a、Y透明電極15aは主に維持放電に寄与し、蛍光体の発光を前面基板13側から観察することができるように光透過性がXバス電極14b、Yバス電極15bよりも高い。一方Xバス電極14b、Yバス電極15bは駆動用の電流を低抵抗で流すため、X透明電極14a、Y透明電極15aよりも抵抗の低い金属材料を用いる。
【0039】
前面基板(第1基板)13の一方の面(第1の面13aの反対側に位置する面)に表示電極対(X電極14およびY電極15)を形成する工程は例えば以下のように行う。すなわち、透明な電極材料やAg、Auについてはスクリーン印刷のような厚膜形成技術を用いて、またその他の金属については蒸着法やスパッタ法などの薄膜形成技術とエッチング技術とを用いることにより、所定の本数、厚さ、幅および間隔で形成することができる。
【0040】
図1では、X透明電極14a、Y透明電極15aが帯状に延びる形状を示しているが、X透明電極14a、Y透明電極15aの電極構造はこれに限定されない。例えば、維持放電の安定化や放電効率の向上のため、一対の電極対間の最短距離(放電ギャップと呼ばれる)がセルに対応して近づくようにXバス電極14b、Yバス電極15bと重なる位置からそれぞれ対向する方向に突出部を形成する構造としても良い。また、突出部の形状もストレート形、T字形又は梯子形等種々の変形例を用いることができる。また、X電極14とY電極15の電極構造も図1に示す形状には限定されず、例えば、これらの表示電極対を等間隔に配置して、隣接するX電極14とY電極15との間がすべて表示ラインになる、いわゆるALIS(Alternate Lighting of Surface Method)と呼ばれる構造としても良い。
【0041】
これらの電極群(X電極14、Y電極15)は、主にSiOなどのガラス材料で構成される誘電体層17で被覆されている。表示電極対を被覆するように誘電体層17を形成する工程は例えば以下のように行う。すなわち、誘電体層17は、例えば低融点ガラス粉末を主成分とするフリットペーストを、前面基板13上にスクリーン印刷法で塗布し、焼成することにより形成している。他に、いわゆるグリーンシートと呼ばれるシート状の誘電体シートを貼り付けて焼成する方法で形成することもできる。あるいは、プラズマCVD法でSiO膜を成膜することにより形成してもよい。
【0042】
誘電体層17の内面側には、表示の際の放電(主に維持放電)により生じるイオンの衝突による衝撃から誘電体層17を保護するための保護層18が形成されている。このため保護層18は誘電体層17の表面を被覆するように形成されている。保護層18は、図2に示すように誘電体層17の表面に積層されるMgO(酸化マグネシウム)膜18aと、MgO膜18a上に付着する複数のMgO結晶粒子18bとで構成されている。この保護層18の詳細な構造、機能、および誘電体層17の表面に保護層18を形成する工程の詳細については後述する。
【0043】
一方、背面基板構造体12は、例えばガラス基板である背面基板19を有している。背面基板19の前面基板構造体11と対向する面(内側面)上には、複数のアドレス電極20が形成されている。各アドレス電極20は、X電極14およびY電極15が延在する方向と交差する(略直交する)列方向DYに沿って延在するように形成されている。また、各アドレス電極20は、互いに略平行となるように所定の配置間隔を持って配置されている。
【0044】
アドレス電極20を構成する材料としては、Xバス電極14b、Yバス電極15bと同様に例えば、Ag、Au、Al、Cu、Cr、あるいはこれらの積層体(例えばCr/Cu/Crの積層体)などを用いることができる。また、アドレス電極20に用いる材料に応じて厚膜形成技術あるいは蒸着法やスパッタ法などの薄膜形成技術とエッチング技術とを用いることにより、所定の本数、厚さ、幅および間隔で形成することができる。
【0045】
このアドレス電極20と、前面基板構造体11に形成されたY電極15とは、セル25の点灯/非点灯を選択するための放電であるアドレス放電を行うための電極対を構成する。つまり、Y電極15は維持放電用の電極としての機能とアドレス放電用の電極(走査電極)としての機能とを併せ持っている。
【0046】
アドレス電極20は、誘電体層21で被覆されている。誘電体層21は前面基板13上の誘電体層17と同じ材料、同じ方法を用いて形成することができる。誘電体層21上には背面基板構造体12の厚さ方向に伸びる複数の隔壁22が形成されている。
【0047】
背面基板10の前面(内面)側は隔壁22により複数の放電空間24に区画されている。図1に示すように、放電空間24をセル25毎に格子状に区画する隔壁22の配置構造はボックス構造と呼ばれる。隔壁22の配置構造は、ボックスリブ構造の他、セル25毎にアドレス電極20の延在する列方向DYに沿って帯状に区画するストライプリブ構造と呼ばれる構造としても良い。
【0048】
隔壁22を形成する工程は、サンドブラスト法、フォトエッチング法などにより形成することができる。例えば、サンドブラスト法では、低融点ガラスフリット、バインダー樹脂、溶媒などからなるフリットペーストを誘電体層21上に塗布して乾燥させた後、そのフリットペースト層上に隔壁パターンの開口を有する切削マスクを設けた状態で切削粒子を吹き付けて、マスクの開口部に露出したフリットペースト層を切削し、さらに焼成することにより形成する。また、フォトエッチング法では、切削粒子で切削することに代えて、バインダー樹脂に感光性の樹脂を使用し、マスクを用いた露光および現像の後、焼成することにより形成する。
【0049】
アドレス電極20上の誘電体層21の上面、および隔壁22の側面には、真空紫外線により励起されて赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の可視光を発生する蛍光体23r、23g、23bがそれぞれ所定の位置に形成されている。隔壁22で区画された領域に蛍光体23r、23g、23bを形成する工程は例えば以下のように行う。まず、各色の発光特性を有する蛍光体粉末とバインダー樹脂と溶媒とを含む蛍光体ペーストをそれぞれ準備する。この蛍光体ペーストを隔壁で区切られた放電空間内にスクリーン印刷またはディスペンサを用いた方法などで塗布し、これを色(発光色)毎に繰り返した後、焼成することにより形成している。
【0050】
また、蛍光体23r、23g、23bは、蛍光体粉末と感光性材料とバインダー樹脂とを含むシート状の蛍光体層材料(いわゆるグリーンシート)を使用し、フォトリソグラフィー技術で形成することもできる。この場合、所定の色のシートを基板上の表示領域全面に貼り付けて、露光、現像を行い、これを各色ごとに繰り返すことで、対応する隔壁22間に各色の蛍光体23を形成することができる。
【0051】
また、各放電空間24には、放電ガスと呼ばれる希ガスなどのガスが所定の圧力で封入されている。放電ガスとしては、例えばXeの分圧比が数%〜数十%に調整されたXe−Neなどの混合ガスを用いることができる。
【0052】
PDP1は、上記した前面基板13の表示電極対を形成した面と、背面基板19とを放電空間24を介して対向配置して組み立てることにより得られる。この組み立てる工程には、前面基板13と背面基板19との位置合わせ工程、各基板(前面基板13および背面基板19)の間の外周部を例えばシールフリットと呼ばれる低融点ガラス材料を用いて封止する封止工程、PDP1の内部空間に残るガスを排気して、放電ガスを充填する工程などが含まれる。
【0053】
PDP1では、一対のX電極14、Y電極15とアドレス電極20との交差に対応して1個のセル25が構成される。つまり、セル25は表示電極対(X電極14とY電極15の対)とアドレス電極20の交差毎に形成される。セル25の平面積は一対のX電極14とY電極15の配置間隔と、隔壁22の配置間隔により規定される。また、各セル25には、赤用の蛍光体23r、緑用の蛍光体23g、または青用の蛍光体23bのいずれかがそれぞれ形成されている。
【0054】
このR、G、Bの各セル25のセットにより画素(ピクセル)が構成される。つまり、各蛍光体23r、23g、23bはPDP1の発光素子であり維持放電によって発生する所定波長の真空紫外線に励起されて赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の可視光を発光する。
【0055】
なお、図1ではアドレス電極20を背面基板構造体12に形成する例について示したが、アドレス電極20を前面基板構造体11に形成することもできる。この場合、図1に示す誘電体層17を複数層構造として、第1層目の誘電体層で表示電極対を被覆し、この第1層目と第2層目の誘電体層の間にアドレス電極20を形成することができる。
【0056】
<PDPモジュールの全体構成と駆動方式>
次に、図3〜図5を用いて図1に示すPDP1を組み込んだPDPモジュールの駆動方式の一例について説明する。図3は図1に示すPDPを組み込んだPDPモジュールの全体構成を概略的に示すブロック図である。また、図4は図3に示すPDPモジュールにおける階調駆動シーケンスの一例を示す説明図、図5は図3に示すPDPモジュールにおける駆動波形の一例を示す説明図である。
【0057】
図3において、PDPモジュール30に組み込まれるPDP1は、X電極14、Y電極15、アドレス電極20、等より構成されている。また、PDPモジュール30は、それぞれの電極(X電極14、Y電極15、アドレス電極20)間に電圧を印加するために、アドレス駆動回路ADRV、YスキャンドライバYSCDRV、Y駆動回路YSUSDRV、X駆動回路XSUSDRVが電気的に接続されている。また、PDPモジュール30は、各駆動回路(ドライバ)を制御するための制御回路CNTを備えている。
【0058】
PDP1は、サステイン放電(維持放電、表示放電)を行うX電極(X1,X2,X3,・・・Xn)14とY電極(Y1,Y2,Y3,・・・Yn)15とが交互に配置されて表示ラインを構成し、X電極14およびY電極15の対で構成される表示電極対と該表示電極対(表示ライン)と略直交するアドレス電極(A1,A2,A3,・・・An)20との交差毎にマトリクス状のセルが構成されている。
【0059】
YスキャンドライバYSCDRVは、アドレス過程TA(図4参照)において、電圧を制御して順次Y電極(表示ライン)15を選択し、アドレス駆動回路ADRVに電気的に接続されたアドレス電極20と各Y電極15との間で、各サブフィールドSF1〜SFn(図4参照)に対するセルの点灯/非点灯を選択するアドレス放電を生じさせる。
【0060】
また、Y駆動回路YSUSDRVおよびX駆動回路XSUSDRVは、表示過程TS(図4参照)において、アドレス放電により選択されたセルに対して各サブフィールドの重みに応じた数の維持放電(サステイン放電)を生じさせる。
【0061】
また、制御回路CNTは、例えば、TVチューナやコンピュータ等の外部装置から入力される画像データや信号からそれぞれの駆動回路(ドライバ)に適した制御信号を出力して所定の画像表示を行う役割を果たしている。
【0062】
また、図4に示されるように、PDPモジュール30における階調駆動シーケンスは、1フィールド(フレーム)F1をそれぞれ所定の輝度の重みを有する複数のサブフィールド(サブフレーム)SF1〜SFnで構成し、各サブフィールドSF1〜SFnの組み合わせにより所望の階調表示を行うようになっている。
【0063】
複数のサブフィールドの構成例を説明すると、例えば、2の巾乗の輝度重みを有する8つのサブフィールドSF1〜SF8(維持放電の回数の比が1:2:4:8:16:32:64:128)により256階調の表示を行うようになっている。なお、サブフィールドの数および各サブフィールドの重みは様々な組み合わせが可能なのはいうまでもない。
【0064】
また、各サブフィールドSF1〜SFnは、それぞれ表示領域における全てのセルの壁電荷を均一にする初期化過程(リセット期間)TR、点灯セルを選択するアドレス過程(アドレス期間)TA、および、選択されたセルを輝度(各サブフィールドの重み)に応じた回数だけ放電(点灯)させる表示過程(維持放電期間)TSで構成され、各サブフィールドの表示毎に輝度に応じてセルを点灯させ、例えば、8つのサブフィールド(SF1〜SF8)を表示することで1フィールドの表示を行うようになっている。
【0065】
次に、図5では図4に示す各サブフィールドSF1〜SFnにおける図1に示す各電極(X電極14、Y電極15、アドレス電極20)に印加する駆動波形例(PX,PY,PA)を示している。
【0066】
まず、第1のステップとして、初期化過程TRでは、X電極14(図1参照)とY電極15(図1参照)との間でリセット放電を発生させることにより、全てのセルに電荷(壁電荷)を形成して全セルの初期化(次のアドレス動作期間に備える状態にすること)を行う。
【0067】
この初期化過程TRでは例えば、図4に示すように、それぞれPDP1の表示電極対を構成するX電極14に正のY書き込み鈍波PY1を、Y電極15に負のX電圧PX1を印加する。これにより、X電極14が陰極、Y電極15が陽極となって両電極間でリセット放電が発生し、全てのセルに壁電荷が形成される。
【0068】
続いてセル内に形成された壁電荷を必要量残して消去するY補償鈍波PY2とX補償電圧PX2が印加される。これにより、全セルに形成された壁電荷の量が略一様になる。この時、全てのセル形成されている壁電荷は、アドレス過程TAにおいてアドレス放電を発生させるために必要な電荷量であれば良い。したがって、後述する表示過程TSにおいて、維持放電を発生させるために必要な壁電荷の電荷量よりは小さい。
【0069】
このように初期化過程TRにおいて、リセット放電を発生させるための電圧波形として、Y書き込み鈍波PY1やX電圧PX1のように後述する繰り返し維持パルスPX5、PX6、PX7、PY5、PY6、PY7と比較して緩やかな波形を印加することにより、リセット放電が過大な放電状態となることを防止することができる。
【0070】
次に、第2のステップとして、アドレス過程TAでは、点灯させることを選択するセルに対し、アドレス電極20(図1参照)とY電極15との間でアドレス放電を発生させることにより、セルの点灯/非点灯を選択する。また、及びそれに続く表示電極(X電極14、Y電極15)対での放電(維持放電、表示放電)を発生させる。
【0071】
このアドレス過程TAでは、例えば、図5に示すように、表示するセルを行方向に順次決定していく放電を行うため、Y電極15に走査パルスPY3が、X電極14にX電圧PX3が印加される。この走査パルスPY3は行毎にタイミングをずらして印加される。
【0072】
本実施の形態では、点灯させることを選択したセルでアドレス放電を発生させる、所謂アドレス書き込み方式を用いている。したがって、アドレス放電が発生したセルには、後述する表示過程TSにおいて、維持放電を発生させるために必要な電荷量の壁電荷を形成する。
【0073】
一方、アドレス電極20には、列方向の表示するセルを決める放電を行うため、アドレスパルスPA1が印加される。このアドレスパルスPA1は、行毎に印加される走査パルスPY3に合わせて印加され、Y電極15とアドレス電極20との交点に形成される表示させたいセルに放電を発生させるタイミングで印加される。
【0074】
ただし、アドレス電極20は図3に示すようにY電極15と交差して配置されているため、各Y電極15に走査パルスPY3を印加する度に、アドレス電極20には、アドレスパルスPA1が印加される。つまり、走査パルスPY3を各Y電極15に印加する回数に応じて、アドレス電極20にはアドレスパルスPA1が複数回印加される。
【0075】
次に、第3のステップとして、表示過程TSでは、点灯させることを選択したセルのX電極14、Y電極15の間で維持放電(表示放電、サステイン放電)を維持させ、当該セルを所定期間の間発光させる。
【0076】
この表示過程TSでは、例えば、図5に示すように、異なる電気的極性を有する第1の維持パルスPX4、PY4をそれぞれX電極14とY電極15に印加する。これにより、表示電極対間の放電状態が維持される。
【0077】
続いて、X電極14およびY電極15に、互いに電気的極性の異なる繰り返し維持パルスPX5、PX6、PX7、PY5、PY6、PY7が繰り返し印加されることにより、表示電極対間の放電状態がさらに維持される。
【0078】
図5に示すように、維持パルスPX4、PX5、PX6、PX7および維持パルスPY4、PY5、PY6、PY7はその電気的極性が交互に入れ替わる。つまり、X電極14とY電極15とは、維持放電の際に、交互に陰極あるいは陽極となって繰り返し放電がなされる。
【0079】
以上本実施の形態のPDP装置の全体構成と、階調駆動方法の例について説明したが、種々の変形例が存在することは言うまでもない。例えば、図5で説明した駆動波形において、印加するパルスあるいは電圧の電気的極性を反転させても良い。この場合、図5に示す初期化過程TRでは、X電極14が陽極に、Y電極15が陰極になる。また、例えば、図5に示す駆動波形に加え、表示過程TSの最後に壁電荷消去のための電圧波形を加えることもある。またアドレス放電の方式として、点灯させないことを選択したセルでアドレス放電を発生させる、所謂アドレス消去方式を用いることもできる。この場合、初期化過程TRにおいて、全てのセルに維持放電を行うために必要な電荷量の壁電荷を形成し、アドレス放電により、該壁電荷をセル毎に消去することとなる。
【0080】
<保護層の詳細構造および機能>
次に図1および図2に示す保護層18の詳細な構造および機能について説明する。図2において、保護層18は誘電体層17の表面に積層されるMgO膜18aと、MgO膜18a上に付着する複数のMgO結晶粒子18bとを備えている。MgO結晶粒子18bはMgOの単結晶粒子であり、各粒子の形状は、例えばそれぞれ立方形である。なお、MgO膜18a上に付着するMgO結晶粒子18bは、図2に示すように1個の粒子が独立して付着している場合と、複数の粒子が凝集した状態で付着している場合がある。本実施の形態では、これらが混在した状態で付着している。
【0081】
MgO膜18aには、誘電体層17が放電時のイオンの衝撃により劣化することを防ぐ機能とともに、二次電子を放出して放電の成長、維持を促進する機能が要求される。このため、MgO膜18aには二次電子放出係数の高いMgOが用いられる。
【0082】
また、MgO膜18a上に付着する複数のMgO結晶粒子18bは、アドレス放電あるいは表示放電などを行う際に放電の種火となるプライミング電子(初期荷電粒子)を放電空間24により多く供給する機能を有している。つまり、複数のMgO結晶粒子18bをMgO膜18a上に付着させることにより、放電空間24内のプライミング電子を増加させることができる。放電空間24内のプライミング電子が増加すると、放電のための電圧を印加してから放電が開始されるまでの時間を短縮することができる。例えば、アドレス放電の場合であれば、図1に示すアドレス電極20とY電極15との間に電圧が印加してからアドレス放電が開始されるまでの時間を短縮することができるので、アドレス放電における放電遅れを短くすることができる。
【0083】
ところで、MgO膜18aの結晶配向は、二次電子放出係数が、(100)配向よりも高い(111)配向が一般に用いられるが、本実施の形態では、(110)配向としている。以下、MgO膜の結晶配向を(111)配向とした場合の問題点、およびその解決策について本発明者が検討した経緯に沿って順に説明する。
【0084】
本発明者は、まず、図2に示すMgO膜18aの結晶配向を(111)配向とした比較例1のPDPモジュールを作成した。この比較例1のPDPモジュールについてアドレス電圧(アドレス放電を発生させるために必要なアドレスパルスの電位)の測定試験を行ったところ、アドレス動作の初期段階(詳しくは、順次パルスを印加する走査の初期段階)で印加するアドレス電圧と、アドレス動作の後半(詳しくは順次パルスを印加する最終段階)で印加するアドレス電圧の必要電圧量の差(アドレス電圧変化量)が非常に大きくなることが判明した。
【0085】
この現象は以下の理由により発生したと考えられる。すなわち、図5に示すアドレス過程TAでは、走査パルスPY3を各Y電極15に印加する回数に応じて、アドレス電極20にはアドレスパルスPA1が複数回印加される。ここで、アドレスパルスPA1が印加されても、走査パルスPY3が印加されなければ、設計上放電は発生しない。ところが、図2に示すようにMgO膜18a上に複数のMgO結晶粒子18bを付着させると、前述の通り、放電空間24中のプライミング電子の量が増加する。このプライミング電子が増加すると、放電が発生し易くなるため、意図しない微弱放電が発生してしまう。とくに、アドレス電極20にアドレスパルスPA1が印加されると、走査パルスPY3が印加されていない場合でも、微弱放電が発生してしまう場合がある。
【0086】
このように意図しない微弱放電が発生すると、アドレス放電を発生させるために形成された壁電荷が減少してしまう。この結果、壁電荷が不足した状態でアドレス放電を発生させるためには、より高いアドレスパルスPA1を印加する必要が生じる。とくに、走査パルスPY3を印加するまでの期間(アドレス待機時間と呼ぶ)が長くなる後半のセルにおいては、走査パルスPY3を印加する前に、複数回アドレスパルスPA1が印加されることとなるので、壁電荷が減少しやすくなる。
【0087】
そこで、本発明者はアドレス電圧変化量の増大を抑制するためには、意図しない微弱放電が発生した場合に、壁電荷の減少を抑制する技術について検討した結果、図2に示すMgO膜18aの結晶配向を(110)配向とすることにより微弱放電の発生を抑制できることを見出した。
【0088】
図6〜図9は、本実施の形態であるMgO膜の結晶構造を説明するための図であって、図6は、(110)配向の結晶構造を示すモデル図、図7はMgO膜の断面のイメージを示す拡大断面図、図8は、図7に示すMgO膜の表面のイメージを示す拡大平面図、図9は、図8に示すMgO膜の表面の一部を走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)により撮影した画像を示す拡大平面図である。一方、図14〜図17は本実施の形態に対する比較例であるMgO膜の結晶構造を説明するための図であって、図14は、(111)配向の結晶構造を示すモデル図、図15はMgO膜の断面のイメージを示す拡大断面図、図16は、図15に示すMgO膜の表面のイメージを示す拡大平面図、図17は、図16に示すMgO膜の表面の一部をSEMにより撮影した画像を示す拡大平面図である。
【0089】
(111)配向は、図14に示すように三角錐型の結晶構造であり、(111)配向の結晶を成長させると、図15から図17に示すように各結晶柱31の間に多くの隙間32が形成される。一方、(110)配向は、図6に示すように三角柱型の結晶構造であり、(110)配向の結晶を成長させると、図7〜図9に示すように、(111)配向の場合と比較して各結晶柱31の間の隙間32を小さくすることができる。つまり、各結晶柱31の密度(結晶密度と呼ぶ)を向上させることができる。
【0090】
ここで、図2に示すMgO膜18aに壁電荷を形成し、該壁電荷を保持する観点からは、結晶密度を向上させる方が好ましい。つまり、本実施の形態では、MgO膜18aの結晶配向を(110)配向とすることにより、意図しない微弱放電が発生した場合であっても、壁電荷の減少を抑制することができる。このため、アドレス放電を発生させるために必要なアドレス電圧変化量の増大を抑制することができる。
【0091】
ところで、MgO膜18aの結晶配向を(110)配向とすると、(111)配向の場合と比較すると、二次電子放出係数は低下する。しかし、本実施の形態では、MgO膜18a上に複数のMgO結晶粒子18bを付着させているので、プライミング電子が増加する。また、MgO結晶粒子18bからも二次電子が放出されるので、MgO結晶粒子18bを有しない保護層18と比較すると、二次電子放出係数を向上させることができる。
【0092】
なお、MgO膜18aの表面の配向は主として(110)面を有しているが、MgO膜18aの表面が(110)面以外の配向面を含んだ実施態様を排除するものではない。ただし、本発明者の検討によれば、(110)面以外の配向面が多く含まれるMgO膜18aにおいては、アドレス電圧変化量がPDP1の温度に依存して変化することが判明した。以下、アドレス放電変化量の温度依存特性の詳細、およびその解決策について説明する。
【0093】
<アドレス放電変化量の温度依存特性>
本発明者は、PDP1の温度が常温の25℃である場合に、MgO膜18aの結晶配向を(110)配向とすることにより、アドレス電圧変化量の増大を抑制することができることを見出した。ところが、PDP1の温度が上昇するにつれて、アドレス放電電圧変化量が増大することが判明した。また、アドレス放電電圧変化量が増大する程度は、MgO膜18aに含まれる(110)面以外の結晶面が含まれる割合、あるいはMgO膜18aに含まれる不純物の割合に応じて異なることが判明した。
【0094】
図10は、本実施の形態の各実施例および比較例1におけるアドレス放電電圧の温度依存特性を測定した結果を示す説明図である。図10において、実施例1〜実施例5は、それぞれMgO膜18aに含まれる(110)面以外の結晶面が含まれる割合、あるいはMgO膜18aに含まれる不純物であるSiの割合を変化させている。
【0095】
MgO膜18aに含まれる(110)面以外の結晶面が含まれる割合については、X線回折(XRD;X-Ray Diffract meter)を用いて評価することができる。すなわち、保護層18について、X線回折信号強度測定を行い、(220)面の信号強度と(200)面の信号強度を比較することにより評価する。なお、(220)面と(110)面、(200)面と(100)面はそれぞれ等価であり、(220)面の信号強度は、MgO膜18aの結晶配向が(110)面で揃っている場合に強くなる。また、MgO結晶粒子18bは単結晶の粒子であり(100)面を有している。したがって、(200)面の信号は、主にMgO結晶粒子18bからの信号である。
【0096】
また、(220)面の信号強度と(200)面の信号強度の比較は、(220)面のピーク強度をMgO膜18aの膜厚で規格化した値と、(200)面のピーク強度をMgO膜18a上における複数のMgO結晶粒子18bによる被覆率で規格化した値とを比較する。(220)面の信号強度は、MgO膜18aの膜厚に、(200)面の信号強度はMgO膜18aの被覆率に影響を受けるため、これらの要素を排除し、MgO膜18aに含まれる(110)面以外の結晶面が含まれる割合を評価する指標として用いるためである。
【0097】
具体的には、(220)面のピーク強度/MgO膜の膜厚[単位:μm]の値P220と(200)面のピーク強度/被覆率の値P200とを比較して、図10にはP220/P200を示している。ここで、「被覆率」とは、MgO結晶粒子18bを分散配置したMgO膜18aの面に対して垂直方向に観察した際の、下地となるMgO膜18aの面積に対するMgO結晶粒子18bの面積の割合である。本実施の形態では、0.6mm×0.6mmの正方形の視野範囲について複数の測定点毎に被覆率を測定し、例えば直線的に10mm間隔で10点の測定点について測定した。視野範囲を0.6mm×0.6mmの正方形としたのは、MgO結晶粒子の累積粒度分布と被覆率の測定精度の関係から特に好ましい範囲を設定した。また、測定点の数および測定間隔については、特に限定されるものではないが、精度を向上させるため、測定点は少なくとも10点以上は測定することが好ましい。
【0098】
また、図10では25℃におけるアドレス放電電圧変化量をVa1、60℃におけるアドレス放電電圧変化量をVa2とし、Va2−Va1で表わされる温度依存変化量をΔVaとしている。なお、Va2の値をPDP1が60℃の時の値としたのは、PDP1が実際に駆動する際のPDPの到達温度を考慮して、高温域の平均的な温度が約60℃程度となるためである。
【0099】
また、図10では、MgO膜18a中に含まれる不純物であるSi(シリコン)の濃度をSi濃度として示している。MgO膜18a中に含まれるSiの濃度の測定は、二次イオン質量分析法(SIMS;Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定した結果を示している。
【0100】
図10において、実施例1〜実施例3を比較すると、P220/P200の値が大きくなる程ΔVaが小さくなっていることが判る。例えば、実施例1においては、Va1は20.7Vと比較例1の22.1vよりも低いが、ΔVaが25.5Vと非常に高いため、高温域では、Va2は、比較例1よりも大幅に高くなってしまっている。
【0101】
しかし、P220/P200の値を大きくする、すなわち、MgO膜18aの結晶配向を(110)配向で揃えることにより、ΔVaの値は改善し、実施例2に示すようにP220/P200の値が0.8となると、Va2の値も比較例1のVa2の値よりも約1V改善することができる。さらに、P220/P200の値が1となっている実施例3では、ΔVaの値も比較例1よりも小さくなり、結果として高温域においてもアドレス電圧変化量Va2を大幅に改善することができる。
【0102】
なお、P220/P200の値が大きくなる程ΔVaはが小さくなる現象は、MgO膜18a中のSi濃度を変化させた(薄くした)場合にも同様の傾向があり、実施例4と実施例5を比較するとP220/P200の値が大きい実施例5の方が実施例4よりもΔVaの値が小さくなる。
【0103】
このように、P220/P200の値が大きくなる程ΔVaが小さくなる現象は以下の理由によると考えられる。P220/P200の値が大きくなるということは、MgO膜18aを構成する各結晶柱31(図7参照)の結晶配向が、(110)配向で揃うことを意味する。したがって、MgO膜18bの結晶密度が高くなる。また、図7に示す各結晶柱31の結晶構造も(110)配向で揃うことにより、安定化する。PDP1の温度が上昇すると、MgO膜18aに形成された壁電荷が熱影響により放出されやすくなる。しかし、結晶配向を(110)で揃えた場合には、結晶密度が上昇する、あるいは結晶構造が安定化する結果、PDP1の温度が上昇した場合であっても、壁電荷が熱影響により放出されることを抑制することができる。
【0104】
次に、アドレス放電変化量の温度依存特性とMgO膜中のSi濃度との関係について説明する。図10に示す実施例1と実施例4の比較、および実施例3と実施例5の比較から、ΔVaの値は、Si濃度を低くすることにより小さくなる。詳しくは、実施例4に示すように、MgO膜18a中のSi濃度を150ppm以下とすることによりVa2の値も比較例1のVa2の値よりも約2.5V改善することができる。また、実施例5に示すようにMgO膜18a中のSi濃度を150ppm以下とし、かつ、P220/P200の値を1以上とすることにより、ΔVaの値は、実施例3よりもさらに改善することができる。
【0105】
このようにMgO膜18a中のSi濃度を150ppm以下とすることにより、ΔVaが小さくなる現象は以下の理由によると考えられる。MgO膜18a中に不純物としてSiが含まれている場合、例えばMgO膜18aの結晶構造においてMgとSiが置換する。Mgは2価の陽イオンで、Siは4価の陽イオンであるため、置換によって酸素欠損が生じる。この酸素欠損は正孔(ホール)の役割を担うことで、MgO膜18aのインピーダンスに影響を与える。したがって、PDP1の温度が高温になるとホールに存在する電子がクーロン引力による束縛から解放されやすくなり、MgO膜18aのインピーダンスが低下する。また、例えば、SiがMgO膜18aの結晶格子間に侵入すると、MgO膜18a中に不純物準位が形成される。この不純物準位はキャリアとしての役割を果たす。この場合においても、PDP1の温度が高温になるとキャリアがクーロン引力による束縛から解放されやすくなり、MgO膜のインピーダンスが低下する。
【0106】
つまり、本実施の形態では、高温特性(高温領域でのアドレス放電電圧Va2が上昇する現象)を改善する観点から、不純物であるSiの濃度を低減し、高温でのMgO膜18aのインピーダンス低下を抑えている。
【0107】
<保護層の形成方法>
次に、図1および図2に示す保護層を形成する工程について説明する。図11は本実施の形態のMgO膜を成膜する装置の概要を示す要部断面図である。また、図12は、図10に示す実施例1〜実施例5、および比較例1の成膜条件を示す説明図である。
【0108】
図1および図2に示す誘電体層17の表面に保護層18を形成する工程には、誘電体層17の表面にMgO膜18aを形成(成膜)する工程と、MgO膜18aの表面に複数のMgO結晶粒子18bを付着させる工程とが含まれる。
【0109】
誘電体層17の表面にMgO膜18aを形成する工程は、図11に示すように、成膜材料であるMgOのターゲット材33を減圧雰囲気下で加熱蒸発(気化)させ、前面基板13の表面(詳しくは図1に示す誘電体層17の表面)に堆積する、所謂真空蒸着法により形成する。
【0110】
図11に示すように成膜装置34は減圧チャンバ34a、ターゲット材33を載置するルツボ34b、およびターゲット材33を気化させるための加熱源34cを有している。加熱源34cは例えば、電子ビームを照射する電子銃である。加熱源34cから発射された電子ビームが、ターゲット材33に照射されると、照射された領域のターゲット材33が蒸発(気化)する。一方、ルツボ34bの上部には、前面基板13が図1に示す誘電体層17の表面をルツボ34b側に向けた状態で配置され、ルツボ34b上を通過する。これにより、前面基板13の誘電体層17の表面にMgO膜18aが形成される。
【0111】
ここで、図10において比較例1として示した結晶配向が(111)配向となっているMgO膜を形成する場合、減圧チャンバ34a内に酸素ガスを導入しながらMgOを蒸着させる。詳しくは、MgOを蒸着する際の減圧チャンバ34a内の全圧は、例えば0.1Pa〜0.11Pa程度であるが、このうち、酸素ガスの分圧を0.8Pa以上とすることにより、図14に示すような(111)配向の結晶構造を有するMgO膜を比較的安定的に形成することができる。
【0112】
一方、本実施の形態では、MgOを蒸着する際の減圧チャンバ34a内に酸素ガス以外の第1ガスを導入する。詳しくは、本実施の形態ではMgOを蒸着する際の減圧チャンバ34a内に水蒸気を導入する。ここで、本発明者が検討を行った結果、少なくとも減圧チャンバ34a内(すなわち、減圧雰囲気中)の酸素ガスの分圧を、減圧雰囲気中に導入される水蒸気(第1ガス)の分圧よりも低くすることにより、形成されるMgO膜18aの結晶配向を(110)配向とすることができる。また、図12に示すように、水蒸気の分圧を0.08Pa以上とすることにより、P220/P200の値を1以上、すなわち、(110)配向で揃えることができる。
【0113】
なお、本実施の形態1では、MgO膜18aをイオンプレーティング法により形成している。つまり、減圧雰囲気中に導入される水蒸気、および気化したMgOの一部をイオン化させて、誘電体層17(図1参照)の表面で結晶化する。イオンプレーティング法を用いることにより、得られるMgO膜18aは、より均一な膜質となる。また、イオンプレーティング法において、導入する反応ガスとして水蒸気を用いると水蒸気から水素イオンおよび酸素イオンが供給される。この水素イオンは、MgO膜18aの結晶化を促進する効果を有し、酸素イオンは、MgO膜18aの原料イオンとなるので、導入するガスとしては水蒸気が特に好適である。
【0114】
ところで、ターゲット材33はMgOを主成分として構成されているが、このターゲット材33は海水、あるいは鉱物を精製することにより形成するので、MgO以外の不純物が含まれる。この不純物には、前記したSiの他、例えばCaなどが含まれる。ここで、ターゲット材33に不純物が含まれている場合、成膜されるMgO膜18a中にも不純物が含まれることとなるので、MgO膜18a中Si濃度を150ppm以下とするためには、このターゲット材33に含まれるSi濃度を図12に示すように50ppm以下とすることが好ましい。これにより、MgO膜18a中のSi濃度を150ppm以下とすることができる。
【0115】
<MgO膜の被覆率について>
本実施の形態では、以下の理由からMgO結晶粒子18bによるMgO膜の被覆率を10%以下としている。
【0116】
前記の通り、複数のMgO結晶粒子18bをMgO膜18a上に付着させることにより、放電空間24内のプライミング電子を増加させることができる。しかし、本発明者の検討によれば、MgO結晶粒子18bの付着量を過剰に多くしすぎるとPDP1の表示色に異常が生じる。すなわち、MgO結晶粒子18bを付着させると、MgO結晶粒子18bを付着させない場合と比較して、MgO結晶粒子18bが放電空間に露出する表面積が大きくなる。MgOはCOやHOなどの不純物を吸着し易い性質を有しており、表面積の増大に伴って増加した不純物により蛍光体(特に緑色の発光特性を有する蛍光体)が劣化して緑色の発光が弱くなり、表示色に赤みが増す色ムラ(いわゆる画面内における赤ムラ)が発生する場合がある。MgO結晶粒子18bの付着量が少ない場合、この現象は実効上無視できる程小さいが、付着量が増加するにしたがってこの現象が増大する。本発明者がこの臨界点について実験的に検討を行った結果、MgO膜18aの被覆率が10%を超えると、この現象が特に顕著になる。そこで、本実施の形態ではMgO結晶粒子18bの付着量を低減し、MgO膜18aの被覆率を10%以下とした。なお、「被覆率」の説明は前記した通りなので、重複する説明は省略する。
【0117】
本実施の形態のPDP1は前記した全ての視野範囲において、被覆率が10%以下となっている。また、PDP1が有する全てのセル25において被覆率が10%以下となっている。したがって、本実施の形態におけるPDP1は、MgO結晶粒子18bが略均一に分散配置されている。
【0118】
このようにPDP1が有する全てのセル25において被覆率が10%以下となるようにMgO結晶粒子18bの付着量を低減することにより、PDP1の表示色の異常(赤ムラ)を抑制することができる。
【0119】
また、このように被覆率を10%以下とすると、相対的にMgO膜18aの露出面積が増加する。したがって、本実施の形態のようにMgO膜18aの被覆率を10%以下としたPDP1においては、MgO膜18aの結晶構造や組成がアドレス放電電圧変化量に与える影響が大きくなる。
【0120】
<耐スパッタ性について>
前述の通り、本実施の形態によれば、MgO膜18aの結晶配向を(110)配向とすることにより、(111)配向の場合と比較してMgO膜18aの結晶密度を高くすることができる。このため、MgO膜18aの耐スパッタ性を向上させることができる。
【0121】
ところで、PDP1の発光効率(投入電力量に対する発光量の割合)を向上させるため、放電ガス中のXe(キセノン)の濃度を高くする技術がある。放電によりイオン化されたXeは、電子を捕獲して基底状態に遷移する際に、蛍光体の励起源である真空紫外線を発する。したがって、放電ガス中のXeの濃度を高めることにより、発光効率を向上させることができる。
【0122】
しかし、放電ガス中のXeの濃度を高くすると、MgO膜の耐スパッタ性が低下するという問題がある。そこで、本発明者は、MgO膜18aを(110)配向とすることにより、耐スパッタ性の低下を抑制する効果について検証実験を行った。図13は、本実施の形態の実施例、および比較例であるPDPについて、それぞれXeガスの濃度を変化させた場合のスパッタレートの変化を示す説明図である。
【0123】
図13では、図12においてアドレス放電電圧変化量が最も小さかった実施例5と比較例1についてスパッタレートを比較している。実施例5および比較例1では、いずれも放電ガス中のXeの濃度は18%としている。また。比較例2〜比較例5ではXeの濃度を8%とした場合のスパッタレートについて示している。なお、比較例2〜比較例5では、MgO膜の結晶配向、および結晶配向が揃っている程度がスパッタレートに与える影響を確認するため、図2に示すMgO結晶粒子18bは付着させない状態でスパッタレートを確認した。また、スパッタレートは、比較例2のスパッタレートを基準として、これに対する相対値として示し、数値が小さい程スパッタされ難いということを意味する。
【0124】
比較例2〜比較例5において、(111)配向である比較例2よりも(110)配向である比較例3〜比較例5の方がスパッタレートは低くなることが判った。また、比較例3〜比較例5において、成膜中の水蒸気分圧を上げる程(つまり、結晶配向を(110)配向で揃える程)、スパッタレートは改善される。特に、比較例5に示すように水蒸気の分圧を0.08Paとした場合には、スパッタレートの改善効果が顕著であり、比較例2に対して75%に低減されることが判った。
【0125】
一方、比較例1、実施例5では、Xeの濃度を18%にした影響によりスパッタレートはいずれも1より大きくなる。しかし、実施例5のスパッタレートは、比較例1に対して約66%である。つまり、(110)配向とすることにより、スパッタレートの上昇を抑制することができることが判った。
【0126】
図13に示す結果から、図2に示すMgO膜18aの結晶配向を(110)配向で揃えることにより、スパッタレートを改善する効果が得られる。また、このスパッタレートの改善効果は、放電ガスに含まれるXeの濃度を18%とした場合に特に顕著となることが判った。
【0127】
つまり、本実施の形態のPDPは、発光効率を向上させるため、10%を超えるXe濃度の放電ガスを封入した場合であっても、スパッタレートの上昇を抑制することができるので、PDPを長寿命化することができる。
【0128】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション等のディスプレイ装置、平面型のテレビ受像器、あるいは、広告や情報等を表示するための装置として利用されるプラズマディスプレイ装置に幅広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の一実施の形態であるPDPの要部を拡大して示す要部拡大組み立て斜視図である。
【図2】図1に示す前面基板構造体の上下を反転させて保護層の表面状態を示す要部拡大斜視図である。
【図3】図1に示すPDPを組み込んだPDPモジュールの全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】図3に示すPDPモジュールにおける階調駆動シーケンスの一例を示す説明図である。
【図5】図3に示すPDPモジュールにおける駆動波形の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態であるMgO膜の結晶構造を説明するための図であって、(110)配向の結晶構造を示すモデル図である。
【図7】本発明の一実施の形態であるMgO膜の結晶構造を説明するための図であって、MgO膜の断面のイメージを示す拡大断面図である。
【図8】図7に示すMgO膜の表面のイメージを示す拡大平面図である。
【図9】図8に示すMgO膜の表面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影した画像を示す拡大平面図である。
【図10】本発明の一実施の形態の各実施例および比較例におけるアドレス放電電圧の温度依存特性を測定した結果を示す説明図である。
【図11】本発明の一実施の形態のMgO膜を成膜する装置の概要を示す要部断面図である。
【図12】図10に示す実施例1〜実施例5、および比較例1の成膜条件を示す説明図である。
【図13】本発明の一実施の形態の各実施例および比較例であるPDPについて、それぞれXeガスの濃度を変化させた場合のスパッタレートの変化を示す説明図である。
【図14】本発明の一実施の形態に対する比較例であるMgO膜の結晶構造を説明するための図であって、(111)配向の結晶構造を示すモデル図である。
【図15】本発明の一実施の形態に対する比較例であるMgO膜の結晶構造を説明するための図であって、MgO膜の断面のイメージを示す拡大断面図である。
【図16】図15に示すMgO膜の表面のイメージを示す拡大平面図である。
【図17】図16に示すMgO膜の表面の一部を走査型電子顕微鏡により撮影した画像を示す拡大平面図である。
【符号の説明】
【0131】
1 PDP(プラズマディスプレイパネル)
11 前面基板構造体(第1基板構造体)
12 背面基板構造体(第2基板構造体)
13 前面基板(第1基板)
13a 第1の面(表面)
14 X電極(表示電極)
14a X透明電極
14b Xバス電極
15 Y電極(表示電極)
15a Y透明電極
15b Yバス電極
17 誘電体層
18 保護層
18a MgO膜
18b MgO結晶粒子
19 背面基板(第2基板)
20 アドレス電極
21 誘電体層
22 隔壁
23、23r、23g、23b 蛍光体
24 放電空間
25 セル
30 PDPモジュール
31 結晶柱
32 隙間
33 ターゲット材
34 成膜装置
34a 減圧チャンバ
34b ルツボ
34c 加熱源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ガスを封入して形成された放電空間を介して対向する一対の基板構造体を備え、前記一対の基板構造体の一方は、基板上に配置された複数の表示電極対と、前記複数の表示電極対を被覆する誘電体層と、前記誘電体層を被覆する保護層とを有し、
前記保護層は、前記誘電体層の表面に積層されるMgO(酸化マグネシウム)膜と、前記MgO膜上に付着する複数のMgO結晶粒子とを備え、
前記MgO膜の結晶配向が(110)配向となっていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記複数のMgO結晶粒子の結晶配向は、(100)配向を有し、
前記保護層について、X線回折信号強度測定を行い、(220)面のピーク強度を前記MgO膜の膜厚で規格化した値は、(200)面のピーク強度を前記MgO膜上における前記複数のMgO結晶粒子による被覆率で規格化した値に対して、0.8倍以上であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記保護層について、X線回折信号強度測定を行い、(220)面のピーク強度を前記MgO膜の膜厚で規格化した値は、(200)面のピーク強度を前記MgO膜上における前記複数のMgO結晶粒子による被覆率で規格化した値に対して、等倍以上であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記MgO膜の表面の被覆率は10%以下であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記MgO膜には不純物としてSi(シリコン)が含まれ、前記Siの濃度は150ppm以下であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記保護層について、X線回折信号強度測定を行い、(220)面のピーク強度を前記MgO膜の膜厚で規格化した値は、(200)面のピーク強度を前記MgO膜上における前記複数のMgO結晶粒子による被覆率で規格化した値に対して、等倍以上であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
請求項6に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記MgO膜の表面の被覆率は10%以下であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
第1基板の一方の面に表示電極対を形成する工程と、
前記表示電極対を被覆するように誘電体層を形成する工程と、
前記誘電体層の表面に保護層を形成する工程と、を有し、
前記保護層を形成する工程には、
前記誘電体層の表面にMgO膜を形成する工程と、
前記MgO膜の表面に前記複数のMgO結晶粒子を付着させる工程と、が含まれ、
前記誘電体層の表面に前記MgO膜を形成する工程は、
前記MgO膜の成膜材料を減圧雰囲気化で気化させて前記誘電体層の表面に堆積させることにより形成され、
前記減圧雰囲気中の酸素ガスの分圧は、前記減圧雰囲気中に導入される第1ガスの分圧よりも低いことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
前記MgO膜は、イオンプレーティング法により形成され、
前記第1ガスは、水蒸気であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
前記第1ガスの分圧は、0.08Pa以上であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項11】
プラズマディスプレイパネルと、
前記プラズマディスプレイパネルを駆動する回路と、を有し、
前記プラズマディスプレイパネルは、
放電ガスを封入して形成された放電空間を介して対向する一対の基板構造体を備え、前記一対の基板構造体の一方は、基板上に配置された複数の表示電極対と、前記複数の表示電極対を被覆する誘電体層と、前記誘電体層を被覆する保護層とを有し、
前記保護層は、前記誘電体層の表面に積層されるMgO(酸化マグネシウム)膜と、前記MgO膜上に付着する複数のMgO結晶粒子とを備え、
前記MgO膜の結晶配向が(110)配向となっていることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図9】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−80300(P2010−80300A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248119(P2008−248119)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(599132708)日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】