説明

プラズマディスプレイパネルの製造方法、プラズマディスプレイパネル及びプラズマディスプレイ装置

【課題】排気管の設置箇所に排気管設置用の溝を設け、溝の両端にシールストッパーリブを設けることで、低融点ガラスの想定外の流動を防ぎ、排気口からの確実な排気を行えるようにする。
【解決手段】背面パネル20の開口部72形成用の溝の両脇にシールストッパーリブ71を設ける。背面パネル20と前面パネル10の接合時に低融点ガラス73がシールストッパーリブ71によって開口部72に流入することがなくなり、確実な排気を行うことを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマディスプレイパネル、特に側面に排気管を有するもの、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ装置はプラズマディスプレイパネル(PDP)の前面ガラス基板上に設けられた表示電極対を用い、背面基板上に設けられた蛍光体を発光させることで、前面ガラス基板を表示面として表示する平面表示装置である。
【0003】
放電ガス中でプラズマ発光する関係から、PDPはパネル中に放電ガスを充填する必要がある。従来はPDP背面の開口部に排気管を設けていた。しかし、近年PDP装置の薄型化のニーズからPDP側面に排気管を設ける事例がある。たとえば特開平6−251748号公報(特許文献1)記載の発明などがそれに当たる。
【特許文献1】特開平6−251748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、単に側面に排気管を設ける場合、PDPの前面パネルと背面パネルの接合用の低融点ガラスが排気管設置箇所に流れ込み、排気管の設置に支障を及ぼす。また、排気管の設置に支障が無くとも排気管の断面積が減少するなどの問題も生じる。
【0005】
本発明の目的は、排気管の設置箇所に排気管設置用の溝を設け、溝の両端にシールストッパーリブを設けることで、低融点ガラスの想定外の流動を防ぎ、排気口からの確実な排気を行えるようにする手段を提供することにある。
【0006】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0008】
本発明の代表的な実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルの製造方法は、前面パネルと背面パネルとをシール材により密着し、前面パネルと背面パネルの間の放電空間に放電ガスを封入するプラズマディスプレイパネルを対象とし、前面パネルまたは背面パネルに放電ガスを封入する排気管を設ける排気管溝を形成する工程と、排気管を排気管溝に設ける工程と、排気管溝の周辺にシール材防止用のリブを形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このプラズマディスプレイパネルの製造方法において、排気管を前面パネルと背面パネルの側面に配置することを特徴としても良い。
【0010】
このプラズマディスプレイパネルの製造方法において、シール材防止用のリブを、放電空間をセルに区画するリブと略同じ高さになるように形成することを特徴としても良い。
【0011】
本発明の代表的な実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルは、前面パネルと背面パネルとをシール材により密着し、前面パネルと背面パネルの間の放電空間に放電ガスを封入したものであって、背面パネルは、前面パネルとの接合面に放電ガスを封入する排気管を設ける排気管溝を有し、この排気管溝の周囲にシール材防止用のリブを備えることを特徴とする。
【0012】
このプラズマディスプレイパネルにおいて、排気管は、前面パネルと背面パネルの側面に配置されることを特徴としても良い。
【0013】
このプラズマディスプレイパネルにおいて、リブは、放電空間をセルに区画するリブと略同じ高さであることを特徴としても良い。
【0014】
本発明の代表的な実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルは、前面パネルと、背面パネルと、を有し、背面パネルは、前面パネルとの接合面に、放電ガスを封入するための排気管を設ける排気管溝を有し、この排気管溝の両脇にシールストッパーリブを有することを特徴とする。
【0015】
このプラズマディスプレイパネルにおいて、シールストッパーリブの高さは、プラズマ放電をセル単位に独立にさせるためのリブと略同じ高さであることを特徴としても良い。
【0016】
これらのプラズマディスプレイパネルを使用したプラズマディスプレイ装置も本発明の射程に入る。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0018】
本発明の代表的な実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルでは確実に排気管設置時の溝への低融点ガラスの意図しない流入を防止し、排気口からの確実な排気を行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1はプラズマディスプレイ装置(平面表示装置)に用いられるプラズマディスプレイパネル(PDP)100の構成を示す分解斜視図である。
【0021】
プラズマディスプレイパネル100は、前面ガラス基板1を中心とする前面パネル10と背面ガラス基板21を構成する背面パネル20に挟まれる形で構成される。
【0022】
この前面パネル10は、前面ガラス基板1、誘電体層2、保護膜層3、X電極5、Y電極6を含んで構成される。一方、背面パネル20は背面ガラス基板21、下地層22、リブ23、赤色蛍光体24、緑色蛍光体25、青色蛍光体26、アドレス電極27より構成される。
【0023】
前面ガラス基板1は、背面ガラス基板21との間で、プラズマディスプレイパネル100の構成要素を密封するために用いるガラス基板である。
【0024】
誘電体層2は、前面ガラス基板1上にコーティングされる透明な誘電体の層である。X電極5及びY電極6構成後に低融点ガラス層を20ミクロンの厚みで形成することで構成する。
【0025】
保護膜層3は、放電現象で誘電体層2が傷つけられることを防ぐための絶縁保護膜である。真空蒸着法により保護膜材料(酸化マグネシウムや酸化スカンジウム、酸化カルシウム、酸化バリウムなど)の層を1ミクロン形成することで作成される。
【0026】
X電極5及びY電極6は、背面ガラス基板21上に設けられたアドレス電極27による予備放電後に、X電極5及びY電極6間で電圧を印加することにより、前面ガラス基板1及び背面ガラス基板21の間に封入されたキセノン等の希ガスをプラズマ放電させるための透明な電極である。これらの各電極は、サステイン電極(透明電極)14及びバス電極15から構成される。プラズマによって発生した放電は、蛍光体(赤色蛍光体24、緑色蛍光体25、青色蛍光体26のいずれか)を励起・発光させる。
【0027】
背面ガラス基板21は、前面ガラス基板1との間にプラズマディスプレイパネル100の構成要素を密封するために用いるガラス基板である。
【0028】
下地層22は、リブ23の構成などにおいてアドレス電極27を保護するための誘電体層である。
【0029】
リブ23は、プラズマ放電をセル単位に独立させるための隔壁である。これと前面パネル10、背面ガラス基板21によって仕切られた空間(放電空間)に放電ガスを充填させる。
【0030】
赤色蛍光体24は、X電極5及びY電極6及びアドレス電極27への電圧印加により生じたプラズマによって励起し、赤色に発光する蛍光体である。主にイットリウム系の化合物が用いられる。
【0031】
緑色蛍光体25は、プラズマによる紫外線励起で緑色に発光する蛍光体である。緑色蛍光体25として緑色珪酸塩系の蛍光体が用いられる。
【0032】
青色蛍光体26は、プラズマによる紫外線励起で青色に発光する蛍光体である。青色蛍光体26として青色アルミン酸塩系の蛍光体が用いられる。
【0033】
アドレス電極27はプラズマ放電のための予備放電を行う電極である。
【0034】
これらの前面パネル10及び背面パネル20を組み合わせ、周辺を低融点ガラスでシールする。シール後、パネル内部を真空に排気し、昇温脱ガス処理する。その後パネル内部に放電ガス(キセノン10%+ネオン90%)を封入してプラズマディスプレイパネル100は生産される。
【0035】
本発明は、この低融点ガラスでシールする際のパネルの構造について検討したものである。
【0036】
すなわち、放電ガスの封入に際しては開口部が必要である。しかし、低融点ガラスでのシールに際し、低融点ガラスが開口部に入り込む可能性がある。このようになると低融点ガラスが詰まって排気しにくい状態になることがあり、プラズマディスプレイパネル作製時の工数の面で問題になっていた。
【0037】
図2は本発明に関わる前面パネル10及び背面パネル20を側方から見た図である。また、図3はこの2つを重ね合わせた状態を側方から見た図である。
【0038】
本発明においては、開口部72は側面の前面パネル10及び背面パネル20の接触面に設けられることが前提となる。したがって前面パネル10及び背面パネル20のそれぞれに開口部72用の凹み(排気管溝)が設けられている。
【0039】
更に背面パネル20の開口部72用凹みの両脇にはシールストッパーリブ71が設けられている。このリブの高さは135μm前後を想定する。この値は、リブ23とほぼ同じ高さを想定している。シールストッパーリブ71の存在により前面パネル10と背面パネル20の接合面の物理的干渉を防ぐためである。
【0040】
なお、本発明における前面パネル10の前面ガラス基板1、誘電体層2、保護膜層3の厚さの合計は、1800μm(1.8mm)である。また、背面パネル20の厚さもほぼ同等である。また、開口部72の直径は2000μm(2.0mm)を想定する。
【0041】
図4は、図3の状態のものに低融点ガラス73を流し込み、PDPパネル外周をシールした状態を表す側面図である。また、図5はPDPパネル外周をシールした状態のA−A´断面を表す断面図である。
【0042】
図5からも明らかな通り、前面パネル10及び背面パネル20の重複部外周の接する面で低融点ガラス73によってシールされる。この際、シールストッパーリブ71により低融点ガラス73が開口部72に進入しない。これにより開口部に低融点ガラス73が回り込むことなく排気管径を確保でき、確実な排気が可能になる。
【0043】
図6はこの排気管を固定した際の側面図であり、図7は排気管を固定した状態のB−B´断面を表す断面図である。これらの図は開口部72に排気管74を挿入し、その排気管74の外周を低融点ガラス73によってシールしたものである。
【0044】
このようにしてシールされたものに放電ガスを注入し、完成品としてのPDP100が完成する。その後、最終製品にこのPDP100を組み込むなどして利用する。
【0045】
以上述べたように、シールストッパーリブ71を設けることで流動体である低融点ガラス73の流れ込みを防ぎ、確実な排気を行うことを可能にする。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
プラズマディスプレイパネルの製造及び該プラズマディスプレイパネルを使用したプラズマディスプレイ装置の製造に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】プラズマディスプレイ装置に用いられるプラズマディスプレイパネルの構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に関わる前面パネル及び背面パネルを側方から見た図である。
【図3】本発明に関わる前面パネル及び背面パネルを重ね合わせた状態を側方から見た図である。
【図4】本発明に関わる前面パネル及び背面パネルを低融点ガラスでシールした状態を側方から見た図である。
【図5】本発明に関わる前面パネル及び背面パネルを低融点ガラスでシールした状態におけるA−A´断面の断面図である。
【図6】本発明に関わる前面パネル及び背面パネルに排気管を固定した状態を側方から見た図である。
【図7】本発明に関わる前面パネル及び背面パネルに排気管を固定した状態におけるB−B´断面の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…前面ガラス基板、2…誘電体層、3…保護膜層、5…X電極、6…Y電極、
10…前面パネル、14…サステイン電極(透明電極)、
15…バス電極、20…背面パネル、
21…背面ガラス基板、22…下地層、23…リブ、
24…赤色蛍光体、25…緑色蛍光体、26…青色蛍光体、27…アドレス電極、
71…シールストッパーリブ、72…開口部、73…低融点ガラス、
74…排気管、100…プラズマディスプレイパネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面パネルと背面パネルとをシール材により密着し、前記前面パネルと前記背面パネルの間の放電空間に放電ガスを封入するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記前面パネルまたは前記背面パネルに前記放電ガスを封入する排気管を設ける排気管溝を形成する工程と、
前記排気管を前記排気管溝に設ける工程と、
前記排気管溝の周囲に前記シール材防止用のリブを形成する工程と、を備えることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
前記排気管を前記前面パネルと前記背面パネルの側面に配置することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
前記シール材防止用のリブを、前記放電空間をセルに区画するリブと略同じ高さになるように形成することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項4】
前面パネルと背面パネルとをシール材により密着し、前記前面パネルと前記背面パネルの間の放電空間に放電ガスを封入したプラズマディスプレイパネルであって、
前記背面パネルは、前記前面パネルとの接合面に前記放電ガスを封入する排気管を設ける排気管溝を有し、前記排気管溝の周囲に前記シール材防止用のリブを備えることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
請求項4記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記排気管は、前記前面パネルと前記背面パネルの側面に配置されることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
請求項4記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記リブは、前記放電空間をセルに区画するリブと略同じ高さであることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
前面パネルと、背面パネルと、を有し、前記前面パネルと前記背面パネルを密着し、放電ガスを封入するプラズマディスプレイパネルであって、
前記背面パネルは、前記前面パネルとの接合面に、前記放電ガスを封入するための排気管を設ける排気管溝を有し、
前記排気管溝の両脇にシールストッパーリブを有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
請求項7記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、前記シールストッパーリブの高さは、プラズマ放電をセル単位に独立にさせるためのリブと略同じ高さであることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
請求項4または8に記載のプラズマディスプレイパネルを使用することを特徴とするプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−21003(P2010−21003A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180001(P2008−180001)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】