説明

プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】保護層形成原料の大小粒子が塗布乾燥時に混ざることを防止したPDP製造法を提供すること。
【解決手段】前面板における保護層の形成が、(i)第1MgO粒子および第1溶剤を含んだ第1保護層原料ならびに第2MgO粒子および第2溶剤を含んだ第2保護層原料を用意する工程、(ii)前面板基板に形成された誘電体層に対して第1保護層原料と第2保護層原料とを同時に塗布することによって、第1保護層原料層および第2保護層原料層との2層構造の保護層原料層を形成する工程、ならびに、(iii)2層構造の保護層原料層を乾燥に付す工程を含んで成り、工程(i)で用意する第1保護層原料および第2保護層原料では、第1MgO粒子の粒子サイズが第2MgO粒子の粒子サイズよりも小さくなっており、工程(ii)においては、塗布されることになる誘電体層面を鉛直方向下向きにした状態で、第1保護層原料と第2保護層原料とを同時に塗布することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、プラズマディスプレイパネルの製造方法のうち特に保護層形成に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)は、気体放電からの放射を利用した平面表示装置である。高速表示や大型化が容易であり、映像表示装置や広報表示装置などの分野で広く実用化されている。PDPには直流型(DC型)と交流型(AC型)があるが、面放電型AC型PDPは寿命特性や大型化の点で特に高い技術的ポテンシャルを持ち、商品化されている。
【0003】
図10は、一般的なAC型PDPにおける放電単位となる放電セル構造の模式的組図である。図示するように、PDP(101’)は、フロントパネル(102’)とバックパネル(109’)との貼り合せから構成される。フロントパネル(102’)は、フロントパネルガラス(103’)の片面に、走査電極および維持電極を一対とする表示電極対(106’)が複数対にわたり配設されており、当該表示電極対(106’)を覆うように誘電体層(107’)および保護層(108’)が順次積層されて成るパネルである。走査電極および維持電極は、それぞれ透明電極(120’)及びバスライン(121’)を積層して構成されている。
【0004】
誘電体層(107’)は低融点ガラスから形成され、AC型PDP特有の電流制限機能を奏する。そして、表面層(108’)は、誘電体層(107’)及び表示電極対(106’)をプラズマ放電のイオン衝突から保護すると共に、二次電子を効率よく放出し、放電開始電圧を低下させる役目を果たす。通常、当該表面層(108’)は、二次電子放出特性、耐スパッタ性、光学透明性に優れる酸化マグネシウム(MgO)を用いて真空蒸着法や印刷法によって成膜される。かかる表面層(108’)と同様の構成は、誘電体層(107’)及び表示電極対(106’)を保護する他に、二次電子放出特性の確保を目的とした保護層として設けられる。
【0005】
他方、バックパネル(109’)は、バックパネルガラス(110’)上に画像データを書き込むための複数のデータ(アドレス)電極(111’)が前記フロントパネル(102’)の表示電極対(106’)と直交方向で交差するように併設されて成るパネルである。バックパネルガラス(110’)には、データ電極(111’)を覆うように低融点ガラスからなる誘電体層(112’)が配設される。誘電体層(112’)において隣接する放電セル(図示省略)との境界上には、低融点ガラスからなる所定の高さの隔壁リブ(113’)が(放電空間115’)を区画するように、井桁状等のパターン部(113’)を組み合わせて形成される。誘電体層(112’)の表面と隔壁(113’)の側面には、R、G、B各色の蛍光体インクが塗布及び焼成されてなる蛍光体層(114’)(即ち、蛍光体層R、G、B)が形成されている。
【0006】
フロントパネル(102’)とバックパネル(109’)とは、表示電極対(106’)とデータ電極(111’)とが放電空間(115’)をおいて互いに直交するように配置され、その各周囲で封着されている。フロントパネル(102’)およびバックパネル(109’)の内部の放電空間(115’)には、放電ガスとしてXe−Ne系あるいはXe−He系等の希ガスが約数十kPaの圧力で封入されている。以上のような構成でもってPDP(101)が構築されている。
【0007】
PDPで画像表示を実現するためには、1フィールドの映像を複数のサブフィールド(S.F.)に分割する階調表現方式(例えばフィールド内時分割表示方式)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−27924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年の電化製品においては低電力駆動が望まれており、PDPについても同様の要求がある。高精細なPDPにおいては、放電セルが微細化されて放電セル数も増大するので、書込放電の確実性を上げるべく動作電圧が高くなる問題が生じる。これらの問題の対策として、MgO保護層の結晶構造を変化させたり、或いはMgOにFe、CrおよびVや、Si、Alを添加物として加えることで、MgOの改質を図ることが講じられている。また、誘電体層上或いは、真空蒸着方法やスパッタ法で成膜したMgO膜上に、放電遅れの改善効果が期待できるMgO保護層を気相法で成膜したり、気相法で作製したMgOの粉体を誘電体層上に塗布する構成も提案されている。このような従来技術では、真空蒸着方法で成膜したMgO層の上にダイコータによりMgOの粉体が塗布する方法が取られてきた。
【0010】
しかしながら、いわゆる薄膜成膜と言われる真空蒸着方法と厚膜成膜と言われるダイコート方法とが連続して行われることを考えると、この2層を同じ塗布プロセスで実施すべきとの考え方が浮上してくる。その1つの方法として、まず従来、蒸着法にて成膜されていたMgO層をダイコート法にて微細なMgOを分散させたインクを用いて形成し、乾燥後、この層の粒子よりも少し大きなMgOを分散させたインクを用いて同様に塗布乾燥させる方法が考えられる。特に、2層を同時に塗布乾燥することが、工程の削減や、工程間で発生するダストの低減、2層間の密着力向上などの点で望まれている。
【0011】
MgO粒子の積層膜を形成するには、下層にあたるインク内に微細なMgO粒子を供する一方、上層にあたるインク内に下層の粒子の数百倍ある粒子サイズのMgOを並べることが必要である。ここで従来の積層塗布としては、光学フィルムの製造方法というものがある(例えば、上記特許文献1参照)。図11は、特許文献1に記載された従来法で粒子を含んだインクの積層塗布を行う態様を示している。図示するように、それぞれにMgO粒子を含んだインク(40’および50’)は、スリットダイ(70’)のスリット(71’および72’)を通してパネル(10’)上へ積層塗布される。塗布後は、乾燥装置(図示せず)でインクを乾燥させている。しかしながら、かかる従来法では、図12に示すように、大粒子(56’)と小粒子(46’)との上下関係が入れ替わってしまい、混ざりを発生した粒子の積層体が生じてしまう。
【0012】
つまり、粒子サイズの異なる2種類のインクを同時塗布して乾燥した場合には、2層の乾燥が終了するまでに大粒子(56’)が沈降を開始し、小粒子(46’)層の中に大粒子(56’)が混ざってしまう。これにより、本来、小粒子(46’)層の上に存在すべき大粒子(56’)が減少し、PDPパネルとして目的の電気特性を得られないということが懸念される。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものである。つまり、本発明の課題は、保護層形成原料の大小粒子が塗布乾燥時に混ざることを防止したPDP製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、基板A上に電極Aと誘電体層Aと保護層とが形成された前面板と、基板B上に電極Bと誘電体層Bと隔壁と蛍光体層とが形成された背面板とが対向配置されて成るプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前面板の保護層の形成が、
(i)第1MgO粒子および第1溶剤を含んで成る第1保護層原料ならびに第2MgO粒子および第2溶剤を含んで成る第2保護層原料を用意する工程、
(ii)基板A上に形成された誘電体層Aに対して第1保護層原料と第2保護層原料とを実質的に同時に塗布することによって「第1保護層原料から成る第1保護層原料層」と「第2保護層原料から成る第2保護層原料層」との2層構造の保護層原料層を形成する工程、ならびに
(iii)2層構造の保護層原料層を乾燥に付す工程
を含んで成り、
工程(i)で用意する第1保護層原料および第2保護層原料につき、第1保護層原料の第1MgO粒子の粒子サイズが第2保護層原料の第2MgO粒子の粒子サイズよりも小さくなっており、
工程(ii)においては、「塗布されることになる誘電体層Aの面」を鉛直方向下向きにした状態で、第1保護層原料および第2保護層原料を実質的に同時に誘電体層Aの面に向かって供給しており、それによって、誘電体層Aと接するようにその誘電体層A上に第1保護層原料層を形成すると共に、第1保護層原料層と接するようにその第1保護層原料層上に第2保護層原料層を形成することを特徴とする、プラズマディスプレイパネルの製造方法が提供される。
【0015】
本発明の製造方法では、「塗布されることになる誘電体層Aの面」を鉛直方向下向きにした状態で2種類の保護層原料を個別に同時塗布することを特徴としている。つまり、図1に示すように、塗布面を地面側へ向けた状態で2種類の保護層原料(40,50)を鉛直方向上向きに供給して2層同時塗布を行う。
【0016】
本明細書において「第1保護層原料および第2保護層原料を同時に塗布」とは、誘電体層Aの塗布される面に対して、第1保護層原料を供給すると共に、その供給に際して第2保護層原料も併せて供給する態様を実質的に意味している。
【0017】
また、本明細書において「塗布されることになる誘電体層Aの面を鉛直方向下向きにした状態」とは、保護層原料が供される誘電体層面が地面側を向いていることを実質的に意味している。従って、本発明では、誘電体層Aの面が大きく見て地面側を向いていればよく鉛直方向下向きから僅かにずれた態様(例えば鉛直方向から±30°以内の範囲で誘電体層面が地面側を向いている態様)をも包含している。
【0018】
更に、本明細書において「粒子サイズ」とは、粒子のあらゆる方向における長さのうち最大となる長さを実質的に意味している。特に本発明で用いられるMgO粒子はMgO粉体の形態で用いられ得るので、「MgO粒子サイズ」は実質的には粉体粒子における「平均粒子サイズ」のことを指している。ここで、かかる「平均粒子サイズ」とは、粒子の透過型電子顕微鏡写真または光学顕微鏡写真に基づいて例えば10個の粒子のサイズを測定し、その数平均として算出した粒子サイズを実質的に意味している。
【0019】
ある好適な態様では、工程(i)で用意する第1保護層原料および第2保護層原料につき、“第2保護層原料における第2MgO粒子の沈降速度”が“第1保護層原料における第1MgO粒子の沈降速度”よりも速くなっており、かつ、“第2保護層原料における第2溶剤の蒸気圧”が“第1保護層原料における第1溶剤の蒸気圧”よりも低くなっている。
【0020】
別のある好適な態様では、工程(ii)で形成された2層構造の保護層原料層をその形成時における向きをそのまま維持した状態で真空乾燥に付す。つまり、工程(iii)において、誘電体層Aに対して保護層原料層の方が鉛直方向に下側となった配置状態で「2層構造の保護層原料層」を真空乾燥させる。かかる場合、保護層原料層を2段階で真空乾燥に付すことが好ましい。具体的には、第1真空乾燥と第2真空乾燥との2段階の真空乾燥を実施することが好ましく、第1真空乾燥では、第1減圧下において第1保護層原料層を乾燥させ、第2真空乾燥では、その第1減圧から更に減圧した第2減圧下において第2保護層原料層を乾燥させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の製造方法によれば、保護層形成原料の大小粒子(MgO大粒子およびMgO小粒子)が塗布乾燥時に混ざり合うといった不都合が防止される。つまり、パネルの塗布面に近い側の第1保護層として小粒子のMgO粒子層が形成され、遠い側の第2保護層として大粒子のMgO粒子層が形成される。具体的には図2に示すように、前面板の保護層としては、誘電体層上に「第1保護層原料層の乾燥によって得られる第1MgO粒子層(46)」が設けられると共に、「第2保護層原料層の乾燥によって得られる第2MgO粒子層(56)」が第1MgO粒子層(46)の上に設けられる(第1MgO粒子サイズ<第2MgO粒子サイズ)。
【0022】
このように、本発明では、パネル基板に近い側の第1保護層としてMgO小粒子層および遠い側の第2保護層としてMgO大粒子層を実現できるので、得られるPDPでは、従来に比べ、低消費電力と高コントラストという有利な効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明における背面積層塗布の態様を表した断面模式図
【図2】本発明における真空乾燥後の前面板パネル(特に保護層)の態様を表した断面模式図
【図3】PDPの構成を模式的に示した図(図3(a):PDPの概略構成を模式的に示した斜視図、図3(b):PDP前面板を模式的に示した断面図)
【図4】本発明の製造方法における工程を模式的に表した断面斜視図
【図5】保護層原料中における粒子径と沈降速度との相関関係を表したグラフ(実験結果)
【図6】本発明における2層同時の背面塗布の態様を模式的に表した断面斜視図
【図7】本発明で用いることができる真空排気チャンバーの構成を模式的に表した図
【図8】本発明における真空乾燥時の真空度特性を表したグラフ
【図9】大粒子の8割以上が小粒子層から飛び出ている場合の電顕写真図
【図10】一般的なPDPの保護膜周辺の構成を表した断面模式図
【図11】従来技術における積層塗布時の態様を表した断面模式図
【図12】従来技術における真空乾燥後の前面板パネル(特に保護層)の態様を表した断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下にて、図面を参照しながら、本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法を詳細に説明する。図面に示す各種の要素は、本発明の理解のために模式的に示したにすぎず、寸法比や外観などは実物と異なり得ることに留意されたい。
【0025】
プラズマディスプレイパネルの構成
まず、本発明の製造方法を経ることによって最終的に得られるプラズマディスプレイパネルを簡単に説明する。図3(a)に、PDPの構成を断面斜視図で模式的に示すと共に、図3(b)にPDPの前面板の断面図を模式的に示す。
【0026】
本発明のPDP(100)の構成は、図3(a)に示すように、「基板A(10)に電極A(11)と誘電体層A(15)と保護層(16)とが設けられた前面板(1)」および「基板B(20)上に電極B(21)と誘電体層B(22)と隔壁(23)と蛍光体層(25)とが設けられた背面板(2)」からなる。
【0027】
図示するように、前面板(1)では基板A(10)上に電極A(11)が設けられ、電極A(11)を覆うように誘電体層A(15)が基板A(10)上に設けられ、また、誘電体層A(15)上に保護層(16)が設けられている。背面板(2)では基板B(20)上に電極B(21)が設けられ、電極B(21)を覆うように誘電体層B(22)が基板B(20)上に設けられ、誘電体層B(22)上に隔壁(23)および蛍光体層(25)が設けられている。前面板(1)と背面板(2)とは、保護層(16)と蛍光体層(25)とが互いに向き合うように対向配置されている。前面板(1)および背面板(2)の周縁部は、例えば低融点フリットガラス材料などから成る封着部材によって気密封着されている(図示せず)。前面板(1)と背面板(2)との間に形成された放電空間(30)には放電ガス(ヘリウム、ネオンまたはキセノンなど)が例えば20kPa〜80kPa程度の圧力で封入されている。
【0028】
更に具体的に、本発明のPDP(100)を説明していく。本発明のPDP(100)の前面板(1)は、上述したように、基板A(10)、電極A(11)、誘電体層A(15)および保護層(16)を有して成る。基板A(10)は、透明で絶縁性を有する基板(厚さは例えば約1.0mm以上かつ約3mm以下)である。基板A(10)としては、例えば、フロート法などで製造されたフロートガラス基板を挙げることができる他、ソーダライムガラス基板またはホウケイ酸塩ガラス基板などを挙げることができる。電極A(11)は、基板A(10)上にストライプ状に平行に複数配置されるものであり、例えば、走査電極(12)および維持電極(13)から成る表示電極である。この場合、走査電極(12)および維持電極(13)は、それぞれ「酸化インジウム(ITO)または酸化スズ(SnO)などから成る透明導電膜である透明電極(12a、13a)」、および、かかる透明電極上に形成された「銀を主成分としたバス電極(12b、13b)」から構成される(図3(b)参照)。透明電極(12a、13a)は、蛍光体層で発生した可視光を透過させる電極として主に機能する一方、バス電極(12b、13b)は、透明電極の長手方向に導電性を付与するための電極として主に機能する。透明電極(12a、13a)の厚さは、好ましくは約50nm以上かつ約500nm以下である。また、バス電極(12b、13b)の厚さは、好ましくは約1μm以上かつ約20μm以下である。尚、図3(a)に示すように、基板A(10)上にはブラックストライプ(14)(遮光層)もパターン形成され得る。
【0029】
誘電体層A(15)は、基板A(10)の表面に形成された電極A(11)を覆うように設けられている。かかる誘電体層A(15)は、主としてガラス成分およびビヒクル成分(=バインダ樹脂および有機溶剤などを含んだ成分)から成る誘電体原料ペーストを塗布および熱処理して得られるガラス組成から成る膜である。誘電体層A(15)の上には、例えば酸化マグネシウム(MgO)などから成る保護層(16)が形成されている(厚さは例えば約0.5μm以上かつ約1.5μm以下)。
【0030】
一方、本発明のPDPの背面板(2)は、上述したように、基板B(20)、電極B(21)、誘電体層B(22)、隔壁(23)および蛍光体層(25)を有して成る。基板B(20)は、透明で絶縁性を有する基板(厚さは例えば約1.0mm以上かつ約3mm以下)であることが好ましく、例えば、フロート法などで製造されたフロートガラス基板を挙げることができる他、ソーダライムガラス基板、ホウケイ酸塩ガラス基板または各種セラミック基板などを挙げることができる。電極B(21)は、基板B(20)上にストライプ状に複数形成される銀を主成分とした電極(厚さは例えば約1μm以上かつ約10μm以下)であり、例えば、アドレス電極(またはデータ電極)である。アドレス電極は、各放電セルを選択的に放電させる機能を主に有している。
【0031】
誘電体層B(22)は、下地誘電体層と一般に呼ばれるものであり、基板B(20)の表面に形成された電極B(21)を覆うように設けられている。かかる誘電体層B(22)は、主としてガラス成分およびビヒクル成分(=バインダ樹脂および有機溶剤などを含んだ成分)から成る誘電体原料ペーストを塗布および熱処理して得られるガラス組成から成る膜である。誘電体層B(22)の厚さは、例えば約5μm以上かつ約50μm以下である。誘電体層B(22)の上には、蛍光体材料を主成分とした蛍光体層(25)が形成されている(厚さは例えば約5μm以上かつ約20μm以下程度)。蛍光体層(25)は、放電によって放射された紫外線を可視光線に変換する機能を主に有している。かかる蛍光体層(25)は、赤色、緑色および青色を発する蛍光体層を構成単位としており、それぞれが隔壁(23)で区切られている。隔壁(23)は、放電空間をアドレス電極(21)毎に区画する目的で、ストライプ状または井桁状に誘電体層B(22)上に形成されている。
【0032】
本発明のPDP(100)では、前面板(1)の表示電極(11)と背面板(2)のアドレス電極(21)とが直交するように、前面板(1)と背面板(2)とが放電空間(30)を挟んで対向して配置されている。このようなPDP(100)では、隔壁(23)によって仕切られ、アドレス電極(21)と表示電極(11)とが交差する放電空間(30)が放電セル(32)として機能することになる。換言すれば、マトリクス状に配列されている放電セルが画像表示領域を構成している。従って、外部駆動回路から表示電極(11)に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電ガスを放電させ、かかる放電によって生じる紫外線によって、各色の蛍光体層を励起させて赤色、緑色および青色の可視光を発生させると、カラー画像表示が実現される。
【0033】
PDPの一般的な製造方法
次に、PDPの一般的な製造方法について簡潔に説明する。特に言及しない限り、本発明に係るPDPは、原則、一般的なPDP製造法に基づいて得ることができる。また、特に言及しない限り、各種構成部材の原材料(原料ペースト)/構成材料なども一般的なPDP製造法で常套的に用いられているものであってよい。
【0034】
まず、ガラス基板である基板A(10)上に、電極Aとして走査電極(12)と維持電極(13)とから構成される表示電極(11)を形成する。走査電極(12)および維持電極(13)のそれぞれの透明電極(12a、13a)とバス電極(12b、13b)とは、露光・現像するフォトリソグラフィ法などを用いてパターニングできる。透明電極(12a、13a)は薄膜プロセスなどを用いて形成でき、バス電極(12b、13b)は銀(Ag)材料を含むペーストを乾燥(100〜200℃程度)および焼成(400〜600℃程度)に付すことによって形成できる。また、電極Aの形成に際して、遮光層(14)も形成してよく、黒色顔料を含んだ原料ペーストをスクリーン印刷する方法や黒色顔料を含んだ原料をガラス基板の全面に設けた後、露光・現像するフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、焼成することによって形成できる。次いで、走査電極(12)、維持電極(13)および遮光層(14)を覆うように基板A(10)上に、ガラス成分(SiO、Bなどから形成される材料)とビヒクル成分とを主成分とした誘電体原料ペーストをダイコート法または印刷法などにより塗布して誘電体ペースト層を形成する。塗布した後、所定の時間放置すると塗布された誘電体ペーストの表面がレベリングされて平坦な表面になる。その後、誘電体ペースト層を焼成すると誘電体層A(15)が形成される。誘電体層A(15)を形成した後、かかる誘電体層A(15)上に保護膜(16)を形成する。保護膜(16)は、一般的には、真空蒸着法、CVD法またはスパッタリング法などを用いて形成できる。
【0035】
以上の工程により、基板A(10)上に所定の構成部材である電極A(走査電極(12)および維持電極(13))、誘電体層A(15)および保護層(16)が形成され、前面板(1)が完成する。
【0036】
一方、背面板(2)は次のようにして形成する。まず、ガラス基板である基板B(20)上に、電極Bとしてアドレス電極(21)を形成する。具体的には、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、銀を主成分とした金属膜を全面に形成した後、露光・現像するフォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法などによって前駆体層を形成し、それを所望の温度(例えば約400〜約600℃)で焼成することによりアドレス電極(21)を形成する。この「アドレス電極」は、クロム/銅/クロムの3層薄膜上にフォトレジストを塗布したものをフォトリソグラフィ及びウェットエッチングによりパターニングして形成してもよい。次いで、アドレス電極(21)が形成された基板B(20)上に、下地誘電体層となる誘電体層B(22)を形成する。まず、「ガラス成分(SiO、Bなどから形成される材料)およびビヒクル成分などを主成分とした誘電体原料ペースト」をダイコート法などにより塗布して誘電体ペースト層を形成する。そして、かかる誘電体ペースト層を焼成することで誘電体層B(22)を形成できる。次いで、隔壁(23)を形成する。まず、誘電体層B(22)上に誘電体原料ペーストを塗布して所定の形状にパターニングすることにより、隔壁材料層を形成し、その後、それを焼成に付して隔壁(23)を形成する。例えば、低融点ガラス材料、ビヒクル成分およびフィラー等を主成分とした原料ペーストをダイコート法または印刷法によって塗布して約100℃〜200℃の乾燥に付した後、露光・現像するフォトリソグラフィ法でパターニングし、次いで、約400℃〜約600℃の焼成に付すことによって隔壁(23)を形成する。隔壁(23)の形成に引き続いて、蛍光体層(25)を形成する。隣接する隔壁(23)間の誘電体層B(22)上および隔壁(23)の側面に蛍光体材料を含む蛍光体原料ペーストを塗布し、焼成することによって蛍光体層(25)を形成する。より具体的には、蛍光体粉末およびビヒクル成分等を主成分とした原料ペーストをダイコート法、印刷法、ディスペンス法またはインクジェット法などによって塗布し、次いで、約100℃の乾燥に付すことによって蛍光体層(25)を形成する。
【0037】
以上の工程により、基板B(20)上に、所定の構成部材たる電極B(アドレス電極(21))、誘電体層B(22)、隔壁(23)および蛍光体層(25)が形成され、背面板(2)が完成する。
【0038】
このようにして所定の構成部材を備えた前面板(1)と背面板(2)とは、表示電極(11)とアドレス電極(21)とが直交するように対向配置させる。次いで、前面板(1)と背面板(2)の周囲をガラスフリットで封着すると共に、形成される放電空間(30)に放電ガス(ヘリウム、ネオンまたはキセノンなど)を封入することによってPDP(100)が完成する。
【0039】
本発明の製造方法]
本発明の方法は、PDP製造において、特に前面板側の保護層形成に特徴を有している。かかる保護層形成においては、原料が塗布されることになる誘電体層面を鉛直方向下向きにした状態で2種類の保護層原料を同時塗布することを特徴としている(図1参照)。即ち、2種類の保護層原料を“背面積層塗布”ないしは“裏面積層塗布”している。
【0040】
前面板の製作を図4(a)〜(d)を参照して説明する。前面板の製作に際しては、まず、「電極が形成された基板」を用意する。「電極が形成された基板」とは、「前面板側の電極Aが形成された基板A」のことを意味しており、より具体的には図4(a)に示すように「表示電極(11)が形成されたガラス基板(10)」のことを意味している。つまり、ガラス基板(10)上に、走査電極(12)と維持電極(13)とから構成される表示電極(11)が形成されたものを用意する。基板(10)は、ソーダライムガラスや高歪み点ガラス、各種セラミックスからなる絶縁基板であることが好ましく、厚さは1.0mm〜3mm程度であることが好ましい。走査電極(12)および維持電極(13)には、それぞれ、厚さ50〜500nm程度のITO等から成る透明電極(12a、13a)が形成されていると共に、表示電極の抵抗値を下げるべく透明電極上に、銀を含んで成る厚さ1〜20μm程度のバス電極(12b、13b)が形成されている。具体的には、透明電極を薄膜プロセスなどで形成した後に、バス電極を焼成プロセスなどを経て形成する。特に、バス電極の形成に際しては、まず、銀を主成分とした導電性ペーストをスクリーン印刷法によりストライプ状に形成する。また、バス電極は銀を主成分とした感光性ペーストをダイコート法や印刷法により塗布した後に、100℃〜200℃で乾燥した後、露光・現像するフォトリソグラフィー法によりパターンニングすることによってストライプ状に形成してもよい。別法にてディスペンス法やインクジェット法を用いてもよい。最終的には、乾燥に付した後、400℃〜600℃の焼成に付すことによって、バス電極を得ることができる。尚、透明電極上には、Al、CuまたはCr等の金属やCr/Cu/Crのような積層体からなる金属電極を形成してもよい。
【0041】
表示電極(11)の形成に引き続いて、図4(b)に示すように誘電体層(15)を形成する。誘電体層(15)は、PDP前面板の一般的な製造で用いられる焼成法またはゾルゲル法などを用いて得ることができる。例えば、SiO、B、ZnO、Biなどを含むガラス粉末と有機溶剤とバインダ樹脂とを混合して成る誘電体原料ペーストをスクリーン印刷法で塗布し、その後、熱処理に付すことによって誘電体層を形成することができる。誘電体層(15)の厚さは、好ましくは5μm〜30μm程度であり、より好ましくは10μm〜20μm程度である。尚、有機溶剤としてはアルコール類(例えばイソプロピルアルコール)やケトン類(例えばメチルイソブチルケトン)を挙げることができ、バインダ樹脂としては、セルロース系樹脂またはアクリル系樹脂などを挙げることができる。
【0042】
誘電体層(15)の形成に引き続いて、保護層(16)を形成する。従って、まず、本発明の製造方法の工程(i)を実施する。具体的には「第1MgO粒子および第1溶剤を含んで成る第1保護層原料」ならびに「第2MgO粒子および第2溶剤を含んで成る第2保護層原料」を用意する。
【0043】
第1保護層原料は、“第1MgO粒子としてのMgO粒子粉体”と“第1溶剤としての有機溶剤”とを相互に混合することによって調製することができる。第1MgO粒子は、好ましくはMgO結晶粉体(MgO微結晶粉体)であり、より好ましくはMgO単結晶粉体である。かかる第1MgO粒子の粒径は、第2保護層原料の第2MgO粒子のサイズよりも小さくなっており、好ましくは50nm以下、より好ましくは約5nm〜50nm程度、更に好ましくは約15nm〜50nm程度である。そして、第1保護層原料の第1MgO粒子の含有量は、第2保護層原料の第2MgO粒子の含有量よりも多いことが好ましく、例えば好ましくは6〜20重量%程度(第1保護層原料の全重量基準)であり、より好ましくは8〜15重量%程度(第1保護層原料の全重量基準)である。第1溶剤として用いる有機溶剤としては、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、n−ヘプチルアルコール、2−エトキシエタノール、2−メトキシエタノール、n−ヘキシルアルコールまたは2−メチル−1−プロパノール等の有機溶剤を挙げることができる他、α−テルピネオール、プロピレングリコール、2−オクタノール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルまたはグリセリン等の有機溶剤も挙げることができる。ここで、第1溶剤として用いる有機溶剤は、その蒸気圧が第2保護層原料の第2溶剤の蒸気圧よりも高いことが好ましい(一例として、例えば3−メトキシ−3−メチル−1ブタノールを第1溶剤として用いることができる)。第1保護層原料中の第1溶剤の含有量は、好ましくは80〜95重量%程度(第1保護層原料の全重量基準)、より好ましくは85〜95重量%程度(第1保護層原料の全重量基準)である。尚、第1溶剤の有機溶剤としては、上述で例示したような有機溶剤から選ばれる少なくとも2種類以上の溶剤を組み合わせた混合物を用いてもよい。
【0044】
第2保護層原料は、“第2MgO粒子としてのMgO粒子粉体”と“第2溶剤としての有機溶剤”とを相互に混合することによって調製することができる。第2MgO粒子は、好ましくはMgO結晶粉体(MgO微結晶粉体)であり、より好ましくはMgO単結晶粉体である。かかる第2MgO粒子の粒径は、第1保護層原料の第1MgO粒子よりも大きくなっており、好ましくは1μm以上、より好ましくは約1μm〜20μm程度、更に好ましくは約1μm〜5μm程度である。そして、第2保護層原料の第2MgO粒子の含有量は、第1保護層原料の第1MgO粒子の含有量よりも小さいことが好ましく、例えば好ましくは0.3〜8重量%程度(第2保護層原料の全重量基準)であり、より好ましくは0.3〜2重量%程度(第2保護層原料の全重量基準)である。第2溶剤として用いる有機溶剤としては、P−メンタ−1−エン−8−オール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、n−ヘプチルアルコール、2−エトキシエタノール、2−メトキシエタノール、n−ヘキシルアルコールまたは2−メチル−1−プロパノール等の有機溶剤を挙げることができる他、α−テルピネオール、プロピレングリコール、2−オクタノール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルまたはグリセリン等の有機溶剤も挙げることができる。ここで、第2溶剤として用いる有機溶剤は、その蒸気圧が第1保護層原料の第1溶剤の蒸気圧よりも低いことが好ましい(一例としては、例えばP−メンタ−1−エン−8−オールを第2溶剤として用いることができる)。第2保護層原料中の第2溶剤の含有量は、好ましくは92〜99.7重量%(第2保護層原料の全重量基準)、より好ましくは98〜99.7重量%(第2保護層原料の全重量基準)である。尚、第2溶剤の有機溶剤としては、上述で例示したような有機溶剤から選ばれる少なくとも2種類以上の溶剤を組み合わせた混合物を用いてもよい。
【0045】
特に本発明においては、第1保護層原料および第2保護層原料の溶剤として、成分が異なるものを選択してよく、蒸気圧や粘度が相互に異なるものを選択してよい。つまり、第1保護層原料および第2保護層原料の有機溶剤として、相互に可溶性を呈するものの、粘度、飽和蒸気圧(沸点)が異なるものを用いてよい。
【0046】
例えば、保護層原料の蒸気圧についていえば、上述したように、第2保護層原料の第2溶剤の蒸気圧が第1保護層原料の第1溶剤の蒸気圧よりも低くなっていることが好ましい。換言すれば、第1保護層原料の第1溶剤の蒸気圧が第2保護層原料の第2溶剤の蒸気圧よりも高くなっていることが好ましい。これによって、後述する“2段階の真空乾燥”を好適に実施することができる。例えば、第1保護層原料と第2保護層原料との間では2桁程度の差で蒸気圧値が異なることが好ましく、より具体的には第1保護層原料の第1溶剤の蒸気圧が第2保護層原料の第2溶剤の蒸気圧よりも10倍〜100倍程度高くなっていることが好ましい。
【0047】
ここで、本発明においては、“第1保護層原料に含まれる第1MgO粒子のサイズ”が“第2保護層原料に含まれる第2MgO粒子のサイズ”よりも小さくなっている。一般に粒子は液体内で重力の影響を受け、浮力よりも重力が勝る場合では、液体内でも沈降現象が生じる。沈降速度に関し、一般的に知られているストークスの式は以下の通りである。
(式1)

上記式1から分かるように、液体内の粒子の沈降速度は一般に粒子半径の二乗に比例することになる。つまり、粒径が大きいほど液体中で沈降速度が大きくなる。この点、本発明においては第2MgO粒子の方が第1MgO粒子よりもサイズ(粒径)が大きくなっているので、第2保護層原料中の第2MgO粒子の沈降速度は、第1保護層原料中の第1MgO粒子の沈降速度よりも速くなる。実際、本発明で用いる保護層原料についての実験結果をプロットすると2次曲線上にあり、式1で示された一般的な沈降速度と粒子径との関係が成り立つことを把握している(図5参照)。具体的には、第1MgO粒子(小粒子)の直径を50nm以下、第2MgO粒子(大粒子)の直径を約1μm以上とした場合では、溶媒が同じであると式1から沈降速度が400倍も異なる結果が予想される。特に小粒子レベルの場合では、粒子間のファンデルワールス力などの影響でほとんどが沈むことがないので、沈降速度の差がさらに広がることが予想される。実際に低粘度原料において沈降速度を測定した結果においては、1μm以上のMgO大粒子の場合は約1μ/s、50nm以下のMgO小粒子の場合は測定不能であった。それゆえ、従来技術において保護層原料層の各厚みを10μmとした場合を想定すると、かかる塗布薄膜内では、上層に存在する大粒子のMgO粒子は、上層と下層の境界部まで10秒程度で沈降し、その後、下層内へそのまま溶け込むか、あるいは、乾燥時にて下層に入り込むなどの現象を起こす可能性があるものと考えられる。
【0048】
この点、本発明では、最終的には上層を成す層(=第2保護層)に大粒子の第2MgO粒子が含まれているといえども、後述するように第1保護層原料層と第2保護層原料層とを背面積層状態にしているので(図1参照)、第2保護層原料層の第2MgO粒子(大粒子)が第1保護層原料層内に入り込むことが防止されている。むしろ背面積層状態では第2保護層原料層の第2MgO粒子が鉛直方向下向きに沈降しようとする力が働き、第1保護層原料層から離れる方向に移動し得るので、大粒子の第2MgO粒子と小粒子の第1MgO粒子とが好適に棲み分けされることになる。
【0049】
ちなみに、本発明でいう『第2保護層原料中の第2MgO粒子の沈降速度V2は、第1保護層原料中の第1MgO粒子の沈降速度V1よりも速くなっている』につき具体例を挙げれば、例えばV2がV1よりも2〜450倍程度(例えば400倍程度)大きくなっている。
【0050】
本発明の製造方法の工程(i)に引き続いて工程(ii)を実施する。即ち、基板A上に形成された誘電体層A上に対して第1保護層原料と第2保護層原料とを同時に塗布する。本発明では、かかる同時塗布によって「第1保護層原料から成る第1保護層原料層」と「第2保護層原料から成る第2保護層原料層」との2層構造の保護層原料層を形成する。
【0051】
特に本発明においては、第1保護層原料と第2保護層原料とを背面積層状態で同時に塗布する。より具体的には、図4(c)および図6に示すように、塗布されることになる誘電体層A(15)の面を鉛直方向下向きにした状態で、第1保護層原料(40)および第2保護層原料(50)を同時に塗布する。これによって、誘電体層A(15)と接するように第1保護層原料層(40A)を形成すると共に、その第1保護層原料層(40A)の上に第2保護層原料層(50A)を形成する(図4(d)参照)。
【0052】
保護層原料の塗布にはスリットダイを用いることが好ましい。特に本発明では“積層塗布”が行えるように2つのスリット部を備えたスリットダイ(70)を用いることが好ましい(図1および図6参照)。特に図1に示すように、用いるスリットダイ(70)は、3分割されており、原料吐出部となる2つのスリット部(71および72)を備えている。これにより、第1保護層原料および第2保護層原料の同時塗布が可能となる。好ましくはスリット厚み(t1,t2)は数10〜数100μm程度である。スリットダイ(70)の形状及び分割部の形や数などは、記載されたものに限定されるものでなく、3分割のうち中央部の部分の先端を鋭角にしたタイプなど、様々な形状や数が考えられる。また、これらの分割部の取り付け高さを変えるなどして、リップ間の位置を適宜変更してもよい。いずれのタイプのスリットダイであっても、本発明においては、塗布面を下向き(即ち“鉛直方向下側”)にするので、図6に示すようにスリット部(71,72)が上側(即ち“鉛直方向上側”)に向くようにスリットダイを設置することになる。
【0053】
スリットダイ(70)への原料供給は、チューブポンプやシリンジポンプなどのポンプを用いて行ってよい。また、第1保護層原料および第2保護層原料は粒子を含んでいるので、粒子沈降を抑えるべく、スリットダイ(70)の周辺回路としてポンプなどを備えた循環機構を設けてもよい。
【0054】
上述のようなスリットダイを用いて積層塗布を好適に実施するには、第1保護層原料および第2保護層原料が15mPa・s以下程度の粘度を有していることが好ましい。より具体的にいえば、スリットダイを用いた背面積層塗布が好適に行われるように、第1保護層原料および第2保護層原料の粘度は、好ましくは3mPa・s以上かつ15mPa・s以下であり、より好ましくは4mPa・s以上かつ10mPa・s以下となっている。尚、第1保護層原料および第2保護層原料は一般に非ニュートン性流体となり得るので、本明細書で用いる粘度は「ずり速度100s−1および温度25℃における粘度」を実質的に意味している。
【0055】
第1保護層原料および第2保護層原料の同時塗布に際しては、図6に示すように、「電極(11)および誘電体層(15)が形成された基板(10)」が塗布面を下側(地面側)に向けて設置されることになる。図示する態様では、塗布される基板(10)がガラスパネルのような枚葉仕様で表されているものの、塗布面が常に地面側を向くことが可能であれば、ロール・ツー・ロール方式などを採用してもよい。ロール・ツー・ロール方式を採用する場合であっても、本発明では塗布面を下向き(即ち“鉛直方向下側”)にするので、スリットダイはそのスリット部が上側(即ち“鉛直方向上側”)に向くように設置される。
【0056】
背面積層塗布により形成される第1保護層原料層(40A)の厚さ(Wet膜厚)は、好ましくは3μm〜15μm程度である。一方、背面積層塗布により形成される第2保護層原料層(50A)の厚さ(Wet膜厚)は、好ましくは3μm〜20μm程度である(図4(d)参照)。
【0057】
第1および第2の保護層原料層が形成されると、次に、本発明の製造方法の工程(iii)を実施する。具体的には、図4(d)に示される2層構造の保護層原料層(60)を乾燥に付す。即ち、第1保護層原料層を乾燥に付すことにより第1保護層(即ち、第1MgO粒子層)を得ると共に、第2保護層原料層を乾燥に付することにより第2保護層(即ち、第2MgO粒子層)を得る。ここでいう「乾燥」とは、原料層に含まれている溶剤(より具体的にいえば第1溶剤および第2溶剤)を気化させて原料層から除去することを実質的に意味している。例えば、保護層原料層を7〜1Pa、好ましくは7〜0.1Paの減圧下または真空下に置いてもよく、あるいは、大気圧下で100〜400℃程度の熱処理に付してもよい。必要に応じて「減圧下または真空下」と「熱処理」とを組み合わせてもよい。乾燥後に得られる保護層全体の厚さは、溶剤が抜けることに起因して、原料層の厚さよりも減じられ、全体で0.2〜5μm程度となり得る。
【0058】
特に本発明においては、工程(ii)で形成された2層構造の保護層原料層の向きをそのまま維持して真空乾燥を行うことが好ましい。つまり、工程(iii)においては、誘電体層Aに対して保護層原料層の方が鉛直方向に下側に位置する状態で2層構造の保護層原料層を真空乾燥に付すことが好ましい。これにより、乾燥処理に際して「第2保護層原料層(50A)に含まれる大粒子の第2MgO粒子」と「第1保護層原料層(40A)に含まれる小粒子の第1MgO粒子」とが好適に棲み分けされた状態が維持される。
【0059】
真空乾燥を行う場合、図7に示すような装置(80)を用いることができる。かかる真空乾燥装置(80)は、真空チャンバー(81)、圧力調整機能を備えたコンダクタンスバルブ(82)、ポンプ(83)および真空計(84)を有して成る。塗布される基板は、吊り下げ機構(図示せず)によって塗布面を地面側へ向けた状態で設置することができる。図7には示してしないものの、基板交換用に搬送用ロボット(図示せず)が設置されていてもよい。
【0060】
真空乾燥装置(80)では、真空チャンバー(81)内に「電極、誘電体層および保護層原料層(60)を備えた基板(10)」が設置される。例えばロボットなどを用いてかかる基板(10)を塗布面が地面側にした状態のままで真空チャンバー(80)へと搬送する。塗布されることになる基板(10)が真空チャンバー(80)内に設置されると、ポンプ(83)を用いて真空排気を開始する。真空排気では、急激な減圧により保護層原料層(60)内から突沸が起こらないように排気初期時の排気速度変化を真空計(84)の値を見ながらコンダクタンスバルブ(82)を用いて制御することが好ましい。例えば、チャンバー・サイズ及び排気能力に依存し得るが、1000Pa以下の真空度に至るまでに30秒程度の時間を要するように制御すると、突沸をより好適に抑制することができる。ちなみに、保護層原料層の完全乾燥として必要な1Pa以下の到達圧力や排気能力が不足する場合では、ターボポンプなどの超高真空対応ポンプをポンプ(83)の前段に追加してもよい。その場合、同様に、一度に高真空まで到達しないようにコンダクタンスバルブ(82)の制御やターボポンプの排気スタートのタイミングを調整することが好ましい。
【0061】
本発明においては、突沸をより好適に防止すべく保護層原料層を2段階で真空乾燥に付すことが好ましい。具体的には、第1真空乾燥と第2真空乾燥との2段階の真空乾燥を実施することが好ましい。例えば、第1真空乾燥では、第1減圧下において第1保護層原料層を乾燥させ、第2真空乾燥では、その第1減圧から更に減圧した第2減圧下において第2保護層原料層を乾燥させる。これにより、第1保護層原料層(40A)と第2保護層原料層(50A)とが時間をずらして個々に乾燥されることになり、「第2保護層原料層(50A)に含まれる第2MgO大粒子」と「第1保護層原料層(40A)に含まれる第1MgO小粒子」とがより好適に棲み分けされることになる。
【0062】
図8は、真空排気を実施した際の乾燥曲線であって、真空チャンバー(81)内の真空度を排気開始からの時間軸でグラフ化した乾燥曲線である。保護層原料層は、真空チャンバー中が真空排気されることにより、液体状態から気化し、蒸発、つまり乾燥を始める。一般的に低粘度原料層(低粘度原料)と高粘度原料層(高粘度原料)との蒸気圧を比べた場合、低粘度原料層の蒸気圧>高粘度原料層の蒸気圧となり、高粘度原料層ほど乾燥しにくい。低粘度原料層と高粘度原料層との積層物が設けられた閉空間に対して真空引きを行う場合では、図8に示すような2つこぶの真空度曲線が得られるように実施することが好ましい。つまり、真空引きを開始すると、まず低粘度原料の蒸気圧あたりで圧力が一旦上昇するので、そのあたりで真空引きの程度を減じて低粘度原料層の乾燥を促進させる。低粘度原料層の乾燥が終了すると、高粘度原料層の気化する真空度にまで真空引きを更に進めて高粘度原料層の乾燥を開始させる。高粘度原料層の乾燥が開始すると(高粘度原料の蒸気圧付近で真空度の上昇が見られる)、同様に真空引きの程度を減じて高粘度原料層の乾燥を促進させる。このようにすると、低粘度原料と高粘度原料層との積層物を2段階で真空乾燥することができる。
【0063】
本発明では、第1保護層原料層を低粘度層として形成し、第2保護層原料層を高粘度層として形成することが好ましい。そのためには、第1保護層原料の粘度が例えば30mPa・s〜100mPa・s程度であって、一方、第2保護層原料の粘度が例えば3mPa・s〜10mPa・s程度であることが好ましい。このような第1保護層原料層および第2保護層原料層を図7に示される真空乾燥装置(80)を用いて2段階で真空乾燥する態様を説明する。まず、コンダクタンスバルブ(82)の開度が小さい状態で真空チャンバー(81)をポンプ(83)にて真空排気を開始し、数100Pa程度の真空領域において蒸気圧の高い第1保護層原料層の乾燥を開始させる。その後、コンダクタンスバルブ(82)の開度を大きくし、数Pa程度の高真空領域まで真空排気し、蒸気圧の低い第2保護層原料層を乾燥させる。コンダクタンスバルブ(82)を調整せず、一度に高真空領域まで真空排気してしまうと、2種類の保護層原料層の乾燥が同時に起こる可能性があり、第1と第2との積層膜内で混ざり合いなどの不具合が発生してしまうので、排気速度の調整は慎重に実施することが好ましい。この圧力制御を効果ある範囲で適切に実施するには、上述したように、第1保護層原料と第2保護層原料との間で2桁程度の蒸気圧差があることが望ましい。このようにして、2段階で真空乾燥すると、基板に近い側の第1保護層としてMgO小粒子層、遠い側の第2保護層としてMgO大粒子層が好適に形成される。
【0064】
以上の工程(i)〜(iii)を経ることによって、「第1保護層原料層から形成された第1MgO粒子層」と「第2保護層原料層から形成された第2MgO粒子層」とから成る2層構造の保護層が得られることになり、最終的に前面板が完成する。特に本発明では、基板に近い側の1層目には小粒子の第1MgO粒子の膜が形成され、その表面に2層目として大粒子の第2MgO粒子がちりばめられた状態となった保護層が得られる。
【実施例】
【0065】
以下では、本発明に関連して行った実験内容と実施操作について説明する。尚、以下の説明では、保護層原料のことを便宜上「インク」と称している。
(表1)

【0066】
表1の上段に記載している4つの実験(実験1−1、2−1、3−1および4−1)は、図11に示す従来技術の方法を用いたものであり、インク40’、インク50’の成分を変えて行ったものである。一方、下段に記載している4つの実験(実験1−2、2−2、3−2および4−2)は、図1に示す本発明の塗布乾燥方法を用いて実験した結果であり、同様にインク40、インク50の成分を変えて行ったものである。
【0067】
インクの溶媒としては、以下の溶媒を用いた。
高粘度インク溶媒:P−メンタ−1−エン−8−オール 蒸気圧5Pa(常温時)
低粘度インク溶媒:3−メトキシ−3−メチル−1ブタノール 蒸気圧200Pa(常温時)
【0068】
インクに含まれる粒子としては、小粒子、大粒子共にMgO粒子を用い、各インク間で粒子径が異なるようにした。
【0069】
上記表1では、実験1−2の条件が一番良い出来栄えと判断された。このような出来栄え評価は、乾燥後に大粒子が小粒子層からどれだけ頭を出しているかをSEMにより観察することで行った(図9参照)。評価の判断基準にあたっては、『○』は大粒子の8割以上が小粒子層から飛び出ている場合であり(図9で示されている“飛び出し程度”である)、『◎』は大粒子の9割以上が小粒子層から飛び出ている場合である。逆に、『△』は、大粒子の半分未満しか小粒子層から飛び出していない場合、『×』は、大粒子が小粒子層から全く飛び出していない場合である。
【0070】
本実施例に際して行った実験内容を経時的に説明する。まず、2種類のインクを、それぞれの押出しポンプによりスリットダイの内部へ押し込んだ。これにより、2つのスリットからスリットダイ内部へ押し込まれたインクが吐出されるのに合わせて、スリットダイ(又はパネル10)を移動させて2層のインク層を形成した。本発明の実験では、各層の塗布膜厚を数10〜数100μmとした為、塗布時に各層に供給されるインク量は42インチパネルサイズを前記の厚みで塗布した場合、数mL〜数10mLとなる。塗布されたパネルでは2種類のインクが積層され、基板に近い側のインク層には小粒子が、遠い側のインク層には大粒子が含まれているものである。積層塗布されたパネル基板は、真空チャンバーへと塗布面を地面側にしたままで搬送した。そして、真空チャンバーへと移動させた後、ポンプを駆動させて真空排気を実施した。この時、急激な減圧により塗布膜内から突沸が起こらないように排気初期時の排気速度変化を真空計の値を見ながらコンダクタンスバルブを用いて制御した。チャンバー・サイズ及び排気能力にもよるが、1000Pa以下の真空度に至るまでに30秒程度の時間をとる方が突沸抑制に効果的であることが今回の実験より分かった。
【0071】
(結果の考察)
実験条件と出来栄え評価の結果とを鑑みると、各Runで起こっている現象としては以下のことが考えられる。
● まず従来例であるインク40’およびインク50’に同じ溶媒を用いた実験2−1や4−1の場合、下層のインク内の小粒子は粒子径が小さい為、インク内でほとんど沈降しない状況であるのに対し、上層のインク内の大粒子はその粒子径が大きい為に高速で沈降してしまい、塗布後、乾燥までの間に大粒子が、小粒子の存在する下層インクの中へ混ざり込んだものと考えられる。その結果、大粒子と小粒子との上下関係が逆転している部分が発生し、所望の特性が得られないという現象が起こったものと考えられる。
● また、従来例でインク40’と50’とでインクが異なる場合、塗布後、大粒子はインク内で沈降を始めてインク40’とインク50’との境界面まで移動する。この状態で真空乾燥を実施した場合、観察結果を見ると大粒子は、小粒子層の中に潜り込んでおり、これも問題である。
● 実験2−2や4−2の場合は、上記の実験2−1や4−1と同様に塗布後の乾燥時にインク50の層より乾燥を開始するが、インクの乾燥時には、小粒子と大粒子とが同じ溶媒内に混合した形になってしまう為、最終の乾燥時には、大粒子層の表面に小粒子が存在する部分などが存在し、目的に積層構造になっていなかったと考えられる。低粘度インクを用いた2−2の方が4−2よりも結果が良いのは、乾燥時間が長く混合現象がより発生していたからであると考えられる。
● 実験1−2が一番良い出来栄えとなったが、これは、乾燥時にまず低粘度インク40の乾燥を開始し、小粒子層をパネル表面に形成後、大粒子を含んだ高粘度インク50の乾燥を行ったので、小粒子層の表面に大粒子の分散状態が好適に出来たからであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の製造方法によって得られるPDPは、改質された保護層によって前面板誘電体層が好適に覆われたものであるので、一般家庭向けテレビジョンおよび商業用のディスプレイとして用いることができる他、その他の表示デバイスにも好適に用いることができる。
【0073】
また、本発明の製造方法は、異なるサイズの粒子積層体を“同時塗布乾燥”により形成することができるので、PDP製造のみならず、粒子層形成の制御が必要とされるLCD、有機ELなどのディスプレイパネル及び、光学フルム、そして鋼板や布などの塗装工程などの用途にも適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
(本発明に関連した符号)
1 前面板
2 背面板
10 前面板側の基板
11 前面板側の電極(表示電極)
12 走査電極
12a 透明電極
12b バス電極
13 維持電極
13a 透明電極
13b バス電極
14 ブラックストライプ(遮光層)
15 前面板側の誘電体層
16 保護層
20 背面板側の基板
21 背面板側の電極(アドレス電極)
22 背面板側の誘電体層
23 隔壁
24 溝部
25 蛍光体層
26 隔壁上層
30 放電空間
32 放電セル
40 第1保護層原料
40A 第1保護層原料層
46 第1MgO粒子(小粒子)
48 第1溶剤
50 第2保護層原料
50A 第2保護層原料層
56 第2MgO粒子(大粒子)
58 第2溶剤
60 2層構造の保護層原料層
70 スリットダイ
71 第1スリット部
72 第2スリット部
80 真空乾燥装置
81 真空チャンバー
82 コンダクタンスバルブ
83 ポンプ
84 真空計
100 PDP
(従来技術・背景技術に関連した符号)
10’ パネル
16’ 保護層
40’ インク
46’ MgO小粒子
48’ インク溶剤
50’ インク
56’ MgO大粒子
58’ インク溶剤
70’ スリットダイ
71’ 第1スリット部
72’ 第2スリット部
101’ PDP
102’ フロントパネル
103’ フロントパネルガラス
104’ 維持電極
106’ 表示電極対
107’ 誘電体層
108’ 保護層
109’ バックパネル
110’ バックパネルガラス
111’ データ電極
112’ 誘電体層
113’ 隔壁(リブ)
114’ 蛍光体層
115’ 放電空間
120’ 透明電極
121’ バスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板A上に電極Aと誘電体層Aと保護層とが形成された前面板と、基板B上に電極Bと誘電体層Bと隔壁と蛍光体層とが形成された背面板とが対向配置されて成るプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前面板における保護層の形成が、
(i)第1MgO粒子および第1溶剤を含んで成る第1保護層原料ならびに第2MgO粒子および第2溶剤を含んで成る第2保護層原料を用意する工程、
(ii)基板A上に形成された誘電体層Aに対して第1保護層原料と第2保護層原料とを同時に塗布することによって、第1保護層原料層および第2保護層原料層との2層構造の保護層原料層を形成する工程、ならびに
(iii)保護層原料層を乾燥に付す工程
を含んで成り、
前記工程(i)で用意する第1保護層原料および第2保護層原料では、第1保護層原料の第1MgO粒子の粒子サイズが第2保護層原料の第2MgO粒子の粒子サイズよりも小さくなっており、
前記工程(ii)において、塗布されることになる誘電体層Aの面を鉛直方向下向きにした状態で、第1保護層原料および第2保護層原料を同時に塗布しており、それによって、誘電体層Aと接するように第1保護層原料層を形成すると共に、該第1保護層原料層と接するように第2保護層原料層を形成することを特徴とする、プラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】
前記工程(i)で用意する第1保護層原料および第2保護層原料では、第2保護層原料における第2MgO粒子の沈降速度が第1保護層原料における第1MgO粒子の沈降速度よりも速くなっており、また、第2溶剤の蒸気圧が第1溶剤の蒸気圧よりも低いことを特徴とする、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項3】
前記工程(ii)では、第1保護層原料および第2保護層原料を鉛直方向上向きに供給することによって、第1保護層原料および第2保護層原料の同時塗布を実施することを特徴とする、請求項1または2に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項4】
前記工程(iii)では、2層構造の保護層原料層を真空乾燥に付しており、
保護層原料層が誘電体層Aに対して鉛直方向の下側に位置する向きのまま真空乾燥を実施することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項5】
前記工程(iii)では、2層構造の保護層原料層を2段階で真空乾燥に付しており、
第1真空乾燥では、第1減圧下において第1保護層原料層を乾燥させ、第2真空乾燥では、該第1減圧から更に減圧した第2減圧下において第2保護層原料層を乾燥させることを特徴とする、請求項2に従属する請求項3または4に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−258441(P2011−258441A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132844(P2010−132844)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】