説明

プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】表示画像の色ムラや輝度ムラの発生を低減したPDPの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基板上に形成された複数の隔壁22間に蛍光体インクを塗布することにより蛍光体層23を形成するPDPの製造方法において、蛍光体インクは、少なくともバインダーと蛍光体とからなり、かつバインダーは、少なくとも重量平均分子量が30000以上70000以下の第1のバインダーと、重量平均分子量が110000以上240000以下の第2のバインダーとを含むものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビなどの画像表示装置に用いられるプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)は、隔壁で仕切られた放電空間に複数の放電セルを備えている。隔壁間には赤色、緑色、青色に発光する蛍光体層が形成されている。この蛍光体層の形成方法として、特許文献1には、蛍光体ペーストをストライプ状の隔壁間に塗布した後に、隔壁間の中心部に空気を吹き付けて隔壁の側壁に蛍光体ペーストを盛り上げさせて充分な膜厚を形成する方法が開示されている。また、特許文献2には、蛍光体ペーストを塗布した後に、基板の上下面を反転させて蛍光体ペーストを乾燥し、隔壁の側壁に充分な膜厚を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−96911号公報
【特許文献2】特開2000−260330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年PDPは、より高精細な画質を求められている。PDPの画質が高精細になればなるほど、隔壁間の距離は画面サイズに比して小さくなる。すなわち、表示画像に色ムラや輝度ムラを発生させないように蛍光体ペーストを隔壁間に形成することが、困難になるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、表示画像の色ムラや輝度ムラの発生を低減したPDPの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のPDPの製造方法は、基板上に形成された複数の隔壁間に蛍光体インクを塗布することにより蛍光体層を形成するPDPの製造方法において、蛍光体インクは、少なくともバインダーと蛍光体とからなり、かつバインダーは、少なくとも重量平均分子量が30000以上70000以下の第1のバインダーと、重量平均分子量が110000以上240000以下の第2のバインダーとを含むものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表示画像に色ムラや輝度ムラの発生が低減されたPDPを実現できるPDPの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるPDPの製造方法において、PDPの構造を示す分解斜視図である。
【図2】同じく本実施の形態の製造方法において、蛍光体層の形成ステップを示すフローチャートである。
【図3】同じく本実施の形態の製造方法において、インクジェット装置の吐出状態を示す概略断面図である。
【図4】同じく本実施の形態の製造方法において、インクジェット装置の吐出状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施の形態にかかるPDPの製造方法において、PDP10の構造を示す分解斜視図である。本実施の形態にかかるPDP10は、前面パネルと背面パネルとから構成されており、以下詳細に説明する。
【0010】
まず、前面パネルについて説明する。前面パネルは、ガラス製の前面基板11上に、走査電極12と維持電極13とで対をなす複数の表示電極対14が互いに平行に形成されている。走査電極12および維持電極13は、走査電極12−維持電極13−維持電極13−走査電極12の配列で順に形成されている。走査電極12および維持電極13は、透明電極12a、13aと、バス電極12b、13bとから構成されている。透明電極12a、13aは、前面基板11上に所定のパターン形状で形成された酸化インジウムスズ(ITO)などの薄膜で形成されている。バス電極12b、13bは、透明電極12a、13a上に電気的に接続されるように形成したAgを主成分とする導電性の高い材料で形成されている。なお、透明電極12a、13aは、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性金属酸化物でもよい。バス電極12b、13bは、銅やクロムなどでもよい。
【0011】
そして、表示電極対14上には、表示電極対14を覆うように誘電体層15が形成されている。誘電体層15は、膜厚が約40μm程度である。誘電体層15は、酸化ビスマス(Bi)系低融点ガラス材料を含むペーストをダイコート法などを用いて塗布し、その後焼成することにより形成されている。なお、誘電体層15は、酸化亜鉛(ZnO)系低融点ガラスで構成してもよい。
【0012】
さらに、誘電体層15上には保護層16が形成されている。保護層16は、酸化マグネシウム(MgO)を主体とするアルカリ土類金属酸化物を真空蒸着法により形成された膜厚が約0.8μm程度の薄膜層である。保護層16は、誘電体層15をイオンスパッタから保護するとともに、放電開始電圧などの放電特性を安定させる役目を果たす。
【0013】
次に、背面パネルについて説明する。背面パネルは、ガラス製の背面基板17上に、互いに平行な複数のデータ電極18が形成されている。データ電極18は、Agを主成分とする導電性の高い材料で形成されている。
【0014】
データ電極18上には、データ電極18を覆うように下地誘電体層19が形成されている。下地誘電体層19は、Bi系低融点ガラスと可視光を反射する働きも持つTiO2粒子とを含むペーストを、スクリーン印刷法を用いてデータ電極18上に印刷し、その後焼成することにより形成されている。なお、下地誘電体層19は、ZnO系低融点ガラスであってもよい。
【0015】
また、下地誘電体層19上には、井桁状に構成された縦隔壁20と横隔壁21とからなる隔壁22が形成されている。隔壁22は、Bi系の低融点ガラス材料とフィラーと感光性樹脂とを含むペーストを用いて形成されている。ペーストは、スクリーン印刷法を用いて下地誘電体層19上に印刷された後、乾燥され、その後、露光・現像法により所定の形状にパターニングされた後、焼成されることにより形成されている。ここで、画面サイズが42インチクラスのフルハイビジョンテレビの場合、隔壁22の高さは約0.1mm〜0.15mm、隣接する隔壁22のピッチは約0.15mmの大きさで形成されている。
【0016】
そして、下地誘電体層19の表面と隔壁22の側面には、約15μm程度の膜厚で蛍光体層23が形成されている。蛍光体層23は、赤色に発光する蛍光体層、緑色に発光する蛍光体層、および青色に発光する蛍光体層で構成されている。赤色に発光する蛍光体層には、(Y、Gd)BO:Euが用いられ、緑色に発光する蛍光体層には、ZnSiO:Mnが用いられ、青色に発光する蛍光体層には、BaMgAl1017:Euが用いられる。なお、蛍光体粒子として、赤色の蛍光体粒子にYBO:Eu3+、Y(P、V)O:Eu3+、緑色の蛍光体粒子にBaAl1219:Mn、YBO3:Tb、青色の蛍光体粒子にYSiO:Ce、(Ca,Sr,Ba)19(PO12:Eu2+、(Zn、Cd)S:Agでもよい。もちろん、蛍光体粒子は、上記材料に限定されるものではない。
【0017】
本実施の形態においては、蛍光体層23を形成する方法として、各色の蛍光体粒子を含む蛍光体インクが用いられる。各色の蛍光体インクは、インクジェット装置を用いて吐出されることにより、隔壁22間に塗布され、その後焼成されることにより形成されている。
【0018】
以上のように構成した前面パネルと背面パネルとは、表示電極対14とデータ電極18とが交差するように対向して配置される。前面基板11と背面基板17との間に放電空間が形成されるように、前面基板11と背面基板17との外周部は、ガラスフリットなどの封着材(図示せず)で封着される。これにより、PDP10が構成されている。PDP10の放電空間には、キセノン(Xe)などを含む放電ガスが約6×10Paの圧力で封入されている。また、放電空間は隔壁22によって複数の区画に仕切られている。そして、表示電極対14とデータ電極18とが交差する部分に複数の放電セル24が形成されている。
【0019】
以上がPDP10の構造である。このようなPDP10では、放電セル24内で放電させることで紫外線が発生する。そして、紫外線が蛍光体層23を励起し、蛍光体層23が発光することでPDP10に画像が表示される。
【0020】
次に、本実施の形態のPDPの製造方法において、蛍光体層23の形成方法を説明する。
【0021】
図2は、本実施の形態のPDPの製造方法において、蛍光体層23の形成ステップを示すフローチャートである。本実施の形態にかかる蛍光体層23の形成ステップは、4つのステップを含んでいる。4つのステップは、蛍光体インクの調合ステップA、蛍光体インクの供給ステップB、蛍光体インクの吐出ステップC、蛍光体インクの焼成ステップDである。なお、本実施の形態では、蛍光体インクの吐出手段として、インクジェット装置30を用いている。
【0022】
まず、蛍光体インクは、各色の蛍光体粒子、バインダー、溶媒など、少なくとも蛍光体とバインダーとから構成されている。各色の蛍光体粒子、バインダー、溶媒などは、作製される蛍光体インクが25℃で5〜100mPa・sの粘度となるように混合される。赤色の蛍光体粒子には(Y、Gd)BO:Eu、緑色の蛍光体粒子にはZnSiO:Mn、青色の蛍光体粒子にはBaMgAl1017:Euがそれぞれ用いられる。各色の蛍光体粒子の含有量は、蛍光体インクに対して50wt%である。
【0023】
バインダーには、重量平均分子量の異なる少なくとも2種類のエチルセルロースが用いられる。一つは、重量平均分子量は30000以上70000以下であり、もう一つは、重量平均分子量は110000以上240000以下である。バインダーの混合量は、蛍光体インクに対して、0.1〜10wt%が望ましく、後述する実施例では2wt%となるように混合されている。
【0024】
一方、溶媒には、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオールなどの有機溶媒混合物が用いられる。なお、必要に応じて、可塑剤、分散剤(0.1〜5wt%)等が添加されてもよい。
【0025】
このような組成の蛍光体インクは、インクジェット装置30のインク供給タンクに充填され、このインク供給タンクからインクジェット装置30のインクジェットヘッド31に供給される。
【0026】
図3は、本実施の形態の製造方法において、インクジェット装置30の吐出状態を示す概略断面図である。図3に示すように、インクジェット装置30において、インクジェットヘッド31には、ノズル孔32が設けられている。蛍光体インクは、そのノズル孔32から制御機構により液滴33にされ、連続的に吐出される。また、インクジェットヘッド31は走査機構によって背面基板17上を走査し、背面基板17上の隔壁22間に蛍光体インクが均一に吐出される。このとき、使用される蛍光体インクの粘度は25℃で5〜100mPa・sの範囲に保たれている。ここで、ノズル孔32の口径は、目詰まり防止と、蛍光体インクが隔壁からはみ出して吐出されることを防止する理由から、直径が20μm以上で、隔壁22間の間隔(約65μm〜150μm)以下に設定されるのが望ましく、本実施の形態においては、25〜28μm程度となるように形成されている。なお、図3に示す例では、蛍光体インクを隔壁22間に塗布する際に、インクジェットヘッド31を移動させるように構成したが、インクジェットヘッド31は固定し、背面基板17側を移動させるようにしてもよく、さらには両方を移動させるように構成してもよい。
【0027】
図3に示すインクジェット装置30を用いて蛍光体インクを塗布した後は、塗布した蛍光体インクを乾燥させ、その後400℃〜590℃の温度で焼成することで、蛍光体インク中のバインダーが焼失して各色の蛍光体粒子が隔壁22間に結着し、蛍光体層23が形成される。
【0028】
なお、バインダーの種類としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、アクリル樹脂、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PVA(ポリビニルアルコール)等を用いることもできる。溶媒としては、α−ターピネオール、ブチルカービトール、ジエチレングリコール、メチルエーテル、多価アルコール誘導体等を用いることもできる。多価アルコール誘導体としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、3−メトキシ−3−メチルブタノール、アリルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、グリシドール、テトラヒドロフルフィリルアルコール、t−ブタノール、フリフリルアルコール、プロパルギルアルコール、1−プロパノール、メタノール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、15−クラウン−5、18−クラウン−6、酸化プロピレン、1,4−ジオキサン、ジプロピルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドラフラン、アセトアルデヒド、ジアセトンアルコール、乳酸メチル、γ−ブチロラクトン、グリセリン、グリセリン1,2−ジメチルエーテル、グリセリン1,3−ジメチルエーテル、グリセリン1−アセタート、2−クロロ−1,3−プロパンジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールクロロヒドリン、ジエチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール等を用いることができる。さらに、可塑剤としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、オレイン酸ブチル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチル、アビエチン酸メチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸−2−エチルヘキシン、2−ニトロビフェニル、ジノニルナフタリン、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルを用いることができる。
【0029】
次に、本実施の形態にかかるPDPの製造方法の効果を確認するために行った実施例について説明する。なお、以下で説明する実施例においては、蛍光体インクの吐出安定性を評価した。吐出安定性は、ノズル孔32から蛍光体インクが吐出される吐出状態を観察する方法と、作製したPDP10を点灯させ、表示画像の色ムラおよび輝度ムラの有無を確認する方法とで評価した。
【0030】
蛍光体インクに調合されるバインダーとして、表1に示すように、重量平均分子量の異なる8種類のエチルセルロース(樹脂A〜樹脂H)を準備した。表1は、樹脂A〜樹脂Hの各エチルセルロースの重量平均分子量を示すものである。なお、本実施例に用いたバインダーの重量平均分子量は、GPC(クロマトグラフィー法)で測定した。
【0031】
【表1】

【0032】
樹脂Aの重量平均分子量は20000、樹脂Bの重量平均分子量は35000、樹脂Cの重量平均分子量は45000、樹脂Dの重量平均分子量は55000、樹脂Eの重量平均分子量は95000、樹脂Fの重量平均分子量は135000、樹脂Gの重量平均分子量は195000、樹脂Hの重量平均分子量は290000である。
【0033】
次に、表2に示すように、本実施の形態の実施例1〜13として、バインダーとして、少なくとも重量平均分子量が30000以上70000以下の第1のバインダーと、重量平均分子量が110000以上240000以下の第2のバインダーとを含む蛍光体インクを作製した。つまり、第1のバインダーは、樹脂B〜Dの中から選択した少なくとも1種類のバインダーで、第2のバインダーは、重量平均分子量が110000以上240000以下である樹脂F〜Gの中から選択した少なくとも1種類のバインダーである。第2のバインダーに対する第1のバインダーの重量比は、1/2以上2以下の範囲とした。また、樹脂A〜Hの混合量は、蛍光体インクに対して2wt%とした。
【0034】
具体的には、実施例1では、第1のバインダーとして、樹脂Bと樹脂Dとを選択し、第2のバインダーとして樹脂Gを選択した。また、樹脂B:樹脂D:樹脂Gの重量比は1:1:1、つまり第2のバインダーに対する第1のバインダーの重量比((樹脂B+樹脂D)/樹脂G)は2として、バインダーを調合した。以下同様に、実施例2では、樹脂B/樹脂Fを重量比1/2で調合し、実施例3では、樹脂B/樹脂Fを重量比1で調合し、実施例4では、樹脂B/樹脂Fを重量比2で調合し、実施例5では、樹脂B/樹脂Gを重量比2で調合し、実施例6では、樹脂C/樹脂Fを重量比1/2で調合し、実施例7では、樹脂C/樹脂Fを重量比2で調合し、実施例8では、樹脂C/樹脂Gを重量比2で調合し、実施例9では、樹脂C/樹脂Gを重量比1で調合し、実施例10では、樹脂D/樹脂Fを重量比1/2で調合し、実施例11では、樹脂D/樹脂Fを重量比2で調合し、実施例12では、樹脂D/樹脂Gを重量比2で調合し、実施例13では、樹脂D/樹脂Gを重量比1/2で調合した。
【0035】
一方、比較例1〜14として、表2に示す種類の樹脂をバインダーとして用いた。
【0036】
このような実施例1〜13、比較例1〜14による蛍光体インクについて、吐出安定性を評価し、その結果を表2に示している。なお、表2において、吐出安定性は、吐出状態と、PDP10の表示画像とで評価した。吐出状態について、蛍光体インクの液滴33の飛び散りがなく隔壁22間に一滴ずつ吐出されている状態を「良好」とし、また、蛍光体インクの飛び散りがある状態や蛍光体インクが吐出されない状態を「不良」と示している。PDP10の表示画像については、色ムラおよび輝度ムラの有無を示している。
【0037】
【表2】

【0038】
表2の結果より、実施例1〜13の蛍光体インクでは、蛍光体インクの液滴33の飛び散りがなく、隔壁22からはみ出すこともなく、背面基板17の隔壁22間に蛍光体インクが均一に塗布され、蛍光体インクの吐出状態は良好であった。また、PDP10としての画像の視認による評価でも、色ムラや輝度ムラがなく、良好であった。
【0039】
一方、比較例1〜14の蛍光体インクでは、蛍光体インクの吐出状態は、不良であった。図4は、本実施の形態のPDPの製造方法において、インクジェット装置の吐出状態を示す概略断面図である。比較例1〜3および比較例7〜10では、蛍光体インクは小さなスプラッシュ34となってスプレー状に飛散するため、隔壁22をはみ出していた。例えば、青色蛍光体が吐出される隔壁22間に緑色蛍光体が混ざるなどの状態が発生していた。そのため、表示画像の視認による評価でも色ムラや輝度ムラが発生していた。また、比較例4〜6および比較例11〜14では、蛍光体インクを吐出できなかった。
【0040】
ところで、PDPの製造方法において、インクジェット装置30を用いて蛍光体インクを塗布し、良好な蛍光体層23を形成するためには、液滴33が一滴ずつ吐出されることが望ましい。蛍光体インクをノズル孔32から吐出させるためには粘度は低くなければならならない。また、吐出された液滴33がスプレー状に飛散しないためには、液滴33になる程度の弾性成分がなければならない。
【0041】
そこで、本発明者らが実験により確認した結果、重量平均分子量が30000以上70000以下の第1のバインダーと、重量平均分子量が110000以上240000以下の第2のバインダーとを含むバインダーを用いた蛍光体インクであれば、一つの液滴33にまとまる程度の弾性成分を保持しつつ、粘度を低く抑えることが可能となり、蛍光体インクの吐出状態は良好になることがわかった。また、その結果として、隔壁22からはみ出すことなく、背面基板17の隔壁22間に蛍光体インクを均一に塗布することができ、表示画像の良好なPDP10を得ることができる。さらに、本実施の形態において、第2のバインダーに対する第1のバインダーの重量比を1/2以上2以下で調合した蛍光体インクは、より一層の特性を示す効果が得られることがわかった。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態の製造方法によれば、蛍光体インクは、少なくともバインダーと蛍光体とからなり、かつバインダーは、少なくとも重量平均分子量が30000以上70000以下の第1のバインダーと、重量平均分子量が110000以上240000以下の第2のバインダーとを含むものであることにより、高精細なPDP10でも、隔壁22間からはみ出すことなく蛍光体インクを塗布できるため、表示画像に色ムラや輝度ムラの発生が少ないPDP10を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように本発明は、表示画像の良好なPDPを実現する上で有用な発明である。
【符号の説明】
【0044】
10 PDP
11 前面基板
12 走査電極
13 維持電極
12a,13a 透明電極
12b,13b バス電極
14 表示電極対
15 誘電体層
16 保護層
17 背面基板
18 データ電極
19 下地誘電体層
22 隔壁
23 蛍光体層
24 放電セル
30 インクジェット装置
31 インクジェットヘッド
32 ノズル孔
33 液滴
34 スプラッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された複数の隔壁間に蛍光体インクを塗布することにより蛍光体層を形成するプラズマディスプレイパネルの製造方法において、前記蛍光体インクは、少なくともバインダーと蛍光体とからなり、かつ前記バインダーは、少なくとも重量平均分子量が30000以上70000以下の第1のバインダーと、重量平均分子量が110000以上240000以下の第2のバインダーとを含むものであるプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】
前記蛍光体インクの第1のバインダーは、前記第2のバインダーに対する重量比が1/2以上2以下である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項3】
前記蛍光体インクのバインダーは、エチルセルロースを含むものである請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項4】
前記蛍光体インクをインクジェット装置により塗布することを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−94308(P2012−94308A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239242(P2010−239242)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】