説明

プラズマディスプレイパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置

【課題】大画面化、高輝度化、高精細化されたパネルにおいても、書込み期間における異常放電の発生を抑え、画像表示品質を向上させる。
【解決手段】走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルを駆動するときに、表示電極対が延伸する方向に配列された連続する3つの放電セルにおいて、現サブフィールドでは、中央の放電セルは非点灯となり、中央の放電セルの両側の2つの放電セルはともに点灯となり、現サブフィールドの1つ前のサブフィールドでは、中央の放電セルが非点灯となり、現サブフィールドの2つ前のサブフィールドでは、中央の放電セルが点灯となるときに、現サブフィールドにおいて、上述の2つの放電セルのいずれか一方の放電セルを点灯から非点灯に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁掛けテレビや大型モニターに用いられるプラズマディスプレイパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)として代表的な交流面放電型パネルは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。前面板は、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対が前面ガラス基板上に互いに平行に複数対形成されている。そして、それら表示電極対を覆うように誘電体層および保護層が形成されている。背面板は、背面ガラス基板上に複数の平行なデータ電極が形成され、それらデータ電極を覆うように誘電体層が形成され、さらにその上にデータ電極と平行に複数の隔壁が形成されている。そして、誘電体層の表面と隔壁の側面とに蛍光体層が形成されている。そして、表示電極対とデータ電極とが立体交差するように前面板と背面板とが対向配置されて密封されている。密封された内部の放電空間には、例えば分圧比で5%のキセノンを含む放電ガスが封入され、表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成される。このような構成のパネルにおいて、各放電セル内でガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線で赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0003】
パネルを駆動する方法としては一般にサブフィールド法が用いられている。サブフィールド法では、1フィールドを複数のサブフィールドに分割し、それぞれのサブフィールドで各放電セルを発光または非発光させることにより階調表示を行う。各サブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。
【0004】
初期化期間では、各走査電極に初期化波形を印加し、各放電セルで初期化放電を発生させる。それにより、各放電セルにおいて、続く書込み動作のために必要な壁電荷を形成するとともに、書込み放電を安定して発生させるためのプライミング粒子(書込み放電を発生させるための励起粒子)を発生させる。
【0005】
書込み期間では、走査電極に走査パルスを印加するとともに、データ電極には表示すべき画像信号にもとづき書込みパルスを印加して表示を行うべき放電セルに書込み放電を発生させ壁電荷を形成する(以下、この動作を「書込み」とも記す)。
【0006】
維持期間では、サブフィールド毎に定められた数の維持パルスを走査電極と維持電極とからなる表示電極対に交互に印加する。それにより、書込み放電を起こした放電セルで維持放電を発生させ、その放電セルの蛍光体層を発光させる。これにより、各放電セルを、サブフィールド毎に定められた輝度重みに応じた輝度で発光させる。このようにしてパネルの各放電セルを画像信号の階調値に応じた輝度で発光させて画像表示を行う。
【0007】
また、サブフィールド法の1つとして、緩やかに変化する電圧波形を用いて初期化放電を行い、さらに維持放電を行った放電セルに対して選択的に初期化放電を行うことで、階調表示に関係しない発光を極力減らしコントラスト比を向上させた駆動方法が開示されている。
【0008】
具体的には、複数のサブフィールドのうち、1つのサブフィールドの初期化期間においては全ての放電セルに初期化放電を発生させる全セル初期化動作を行い、他のサブフィールドの初期化期間においては直前の維持期間で維持放電を行った放電セルにのみ初期化放電を発生させる選択初期化動作を行う。このように駆動することにより、画像の表示に関係のない発光によって変化する黒表示領域の輝度(以下、「黒輝度」と略記する)は全セル初期化動作における微弱発光だけとなり、コントラストの高い画像表示が可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、初期化期間に、緩やかな傾斜で電圧が上昇する部分と緩やかな傾斜で電圧が下降する部分とを有する初期化波形を放電セルに印加する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−242224号公報
【特許文献2】特開2004−37883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、パネルの高精細化にともない放電セルのさらなる微細化が進んでいる。この微細化された放電セルでは、初期化放電によって放電セル内に形成された壁電荷が、隣接する放電セルに発生する書込み放電や維持放電の影響を受けて変化しやすいことが確認されている。
【0012】
また、高輝度化するためにキセノン分圧を大きくしたパネルでは、放電開始電圧のばらつきが大きくなりやすいことが確認されている。
【0013】
また、パネルの大画面化、高精細化にともない、パネルの駆動インピーダンスは増大する傾向にある。そのため、同一表示電極対上に形成される放電セルであっても、駆動回路に近い位置に形成される放電セルと、駆動回路から遠い位置に形成される放電セルとでは、駆動電圧の電圧降下の差は拡大する傾向にある。
【0014】
これらのことから、大画面化、高輝度化、高精細化されたパネルでは、放電の発生にばらつきが生じやすく、比較的放電が発生しやすい放電セルと、比較的放電が発生しにくい放電セルとが混在することがある。
【0015】
このようなパネルにおいて、安定に放電を発生させるためには、比較的放電が発生しにくい放電セルにおいても確実に放電が発生するように、放電セルに印加する電圧を高めればよい。
【0016】
しかしながら、放電セルに印加する電圧が高くなると、比較的放電が発生しやすい放電セルで、例えば、書込み放電を発生させるべきでないサブフィールドで誤った書込み放電(以下、「誤書込み」とも記す)が発生する等の誤放電が発生しやすくなり、画像表示品質を劣化させてしまうおそれがある。
【0017】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、大画面化、高輝度化、高精細化されたパネルにおいても、書込み期間における異常放電の発生を抑えて書込み動作を安定にし、画像表示品質を向上させることができるパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のパネルの駆動方法は、走査電極と維持電極とからなる表示電極対およびデータ電極を有する放電セルを複数備えたパネルを、放電セルに選択的に書込み放電を発生する書込み期間と、サブフィールド毎に設定された輝度重みに応じた回数の維持パルスを表示電極対に交互に印加する維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド内に複数設けて駆動し、書込み期間に書込み放電を発生したサブフィールドで維持期間に維持放電を発生しサブフィールドを点灯させて階調表示するパネルの駆動方法であって、表示電極対が延伸する方向に配列された連続する3つの放電セルにおいて、現サブフィールドでは、中央の放電セルは非点灯となり、中央の放電セルの両側の2つの放電セルはともに点灯となり、現サブフィールドの1つ前のサブフィールドでは、中央の放電セルが非点灯となり、現サブフィールドの2つ前のサブフィールドでは、中央の放電セルが点灯となるときに、現サブフィールドにおいて、上述した2つの放電セルのいずれか一方の放電セルを点灯から非点灯に変更することを特徴とする。
【0019】
これにより、大画面化、高輝度化、高精細化されたパネルを用いたプラズマディスプレイ装置においても、書込み期間における異常放電の発生を抑えて書込み動作を安定にし、画像表示品質を向上させることが可能となる。
【0020】
また、このパネルの駆動方法においては、現サブフィールドにおいて上述した2つの放電セルのいずれか一方の放電セルを点灯から非点灯に変更するときに、その放電セルを、現サブフィールドの次に輝度重みの大きいサブフィールドにおいて点灯にする構成であってもよい。これにより、点灯パターンを変更する放電セルにおける輝度変化を低減し、画像表示品質をさらに向上させることが可能となる。
【0021】
また、本発明のプラズマディスプレイ装置は、走査電極と維持電極とからなる表示電極対およびデータ電極を有する放電セルを複数備え、書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド内に複数設け、書込み期間に書込み放電を発生したサブフィールドでは、維持期間にサブフィールド毎に設定された輝度重みに応じた回数の維持放電を発生して階調表示するパネルと、入力画像信号を、1フィールドで表現される階調値の大きさに応じて、放電セルにおけるサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する画像信号処理回路とを備え、画像信号処理回路は、表示電極対が延伸する方向に配列された連続する3つの放電セルにおいて、現サブフィールドでは、中央の放電セルは非点灯となり、中央の放電セルの両側の2つの放電セルはともに点灯となり、現サブフィールドの1つ前のサブフィールドでは、中央の放電セルが非点灯となり、現サブフィールドの2つ前のサブフィールドでは、中央の放電セルが点灯となるときに、現サブフィールドにおいて、上述した2つの放電セルのいずれか一方の放電セルを点灯から非点灯に変更することを特徴とする。
【0022】
これにより、大画面化、高輝度化、高精細化されたパネルを用いたプラズマディスプレイ装置においても、書込み期間における異常放電の発生を抑えて書込み動作を安定にし、画像表示品質を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、大画面化、高輝度化、高精細化されたパネルにおいても、書込み期間における異常放電の発生を抑えて書込み動作を安定にし、画像表示品質を向上させることができるパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態におけるパネルの構造を示す分解斜視図である。
【図2】同パネルの電極配列図である。
【図3】同パネルの各電極に印加する駆動電圧波形図である。
【図4】本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図である。
【図5】本発明の一実施の形態におけるパネルに形成された放電セルを概略的に示す図である。
【図6A】本発明の一実施の形態における図5に示した放電セル(i,j−1)、放電セル(i,j)、放電セル(i,j+1)に生じた「誤書込み発生パターン」の一例を模式的に示した図である。
【図6B】同図5に示した放電セル(i,j−1)、放電セル(i,j)、放電セル(i,j+1)に生じた「誤書込み発生パターン」の一例を模式的に示した図である。
【図7A】本発明の一実施の形態における連続する3つの放電セルに「誤書込み発生パターン」が生じたときの点灯パターンの変更例を模式的に示す図である。
【図7B】同連続する3つの放電セルに「誤書込み発生パターン」が生じたときの点灯パターンの変更例を模式的に示す図である。
【図8A】同連続する3つの放電セルに「誤書込み発生パターン」が生じたときの点灯パターンの他の変更例を模式的に示す図である。
【図8B】同連続する3つの放電セルに「誤書込み発生パターン」が生じたときの点灯パターンの他の変更例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
【0026】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の構造を示す分解斜視図である。ガラス製の前面板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。また、保護層26は、酸化マグネシウム(MgO)を主成分とする材料から形成されている。
【0027】
背面板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
【0028】
これら前面板21と背面板31とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対24とデータ電極32とが交差するように対向配置されている。そして、その外周部はガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして、内部の放電空間には、ネオンとキセノンの混合ガスが放電ガスとして封入されている。なお、本実施の形態では、発光効率を向上させるためにキセノン分圧を約10%とした放電ガスを用いている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対24とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
【0029】
なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。また、放電ガスの混合比率も上述した数値に限られるわけではなく、その他の混合比率であってもよい。
【0030】
図2は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜走査電極SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜維持電極SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜データ電極Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dk(k=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。そして、m×n個の放電セルが形成された領域がパネル10の表示領域となる。
【0031】
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作の概要について説明する。なお、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置は、1フィールドを時間軸上で複数のサブフィールドに分割し、各サブフィールドに輝度重みをそれぞれ設定し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御するサブフィールド法によって階調表示を行うものとする。
【0032】
このサブフィールド法では、例えば、1フィールドを8つのサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第8SF)で構成し、時間的に後のサブフィールドほど輝度重みが大きくなるように、各サブフィールドはそれぞれ(1、2、4、8、16、32、64、128)の輝度重みを有する構成とすることができる。また、複数のサブフィールドのうち、1つのサブフィールドの初期化期間においては全ての放電セルに初期化放電を発生させる全セル初期化動作を行い(以下、全セル初期化動作を行うサブフィールドを「全セル初期化サブフィールド」と呼称する)、他のサブフィールドの初期化期間においては維持放電を行った放電セルに対して選択的に初期化放電を発生させる選択初期化動作を行う(以下、選択初期化動作を行うサブフィールドを「選択初期化サブフィールド」と呼称する)ことで、階調表示に関係しない発光を極力減らしコントラスト比を向上させることが可能である。
【0033】
そして、本実施の形態では、第1SFの初期化期間では全セル初期化動作を行い、第2SF〜第8SFの初期化期間では選択初期化動作を行うものとする。これにより、画像の表示に関係のない発光は第1SFにおける全セル初期化動作の放電にともなう発光のみとなる。したがって、維持放電を発生させない黒表示領域の輝度である黒輝度は全セル初期化動作における微弱発光だけとなって、コントラストの高い画像表示が可能となる。また、各サブフィールドの維持期間においては、それぞれのサブフィールドの輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスを表示電極対24のそれぞれに印加する。
【0034】
しかし、本実施の形態は、サブフィールド数や各サブフィールドの輝度重みが上記の値に限定されるものではなく、また、画像信号等にもとづいてサブフィールド構成を切換える構成であってもよい。
【0035】
図3は、本発明の一実施の形態におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形図である。図3には、書込み期間において最初に走査を行う走査電極SC1、書込み期間において最後に走査を行う走査電極SCn(例えば、走査電極SC1080)、維持電極SU1〜維持電極SUn、およびデータ電極D1〜データ電極Dmの駆動波形を示す。
【0036】
また、図3には、2つのサブフィールドの駆動電圧波形、すなわち全セル初期化サブフィールドである第1サブフィールド(第1SF)と、選択初期化サブフィールドである第2サブフィールド(第2SF)とを示す。なお、他のサブフィールドにおける駆動電圧波形は、維持期間における維持パルスの発生数が異なる以外は第2SFの駆動電圧波形とほぼ同様である。また、以下における走査電極SCi、維持電極SUi、データ電極Dkは、各電極の中から画像データ(サブフィールド毎の発光・非発光を示すデータ)にもとづき選択された電極を表す。
【0037】
まず、全セル初期化サブフィールドである第1SFについて説明する。
【0038】
第1SFの初期化期間前半部では、データ電極D1〜データ電極Dm、維持電極SU1〜維持電極SUnにはそれぞれ0(V)を印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnには、電圧Vi1を印加する。このとき、電圧Vi1は、維持電極SU1〜維持電極SUnに対して放電開始電圧未満の電圧にする。さらに電圧Vi1から、電圧Vi2に向かって緩やかに(例えば、約1.3V/μsecの勾配で)上昇する傾斜電圧(以下、「上りランプ電圧」と呼称する)L1を印加する。このとき、電圧Vi2は維持電極SU1〜維持電極SUnに対して放電開始電圧を超える電圧にする。
【0039】
この上りランプ電圧L1が上昇する間に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとの間、および走査電極SC1〜走査電極SCnとデータ電極D1〜データ電極Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が持続して起こる。そして、走査電極SC1〜走査電極SCn上部に負の壁電圧が蓄積されるとともに、データ電極D1〜データ電極Dm上部および維持電極SU1〜維持電極SUn上部には正の壁電圧が蓄積される。この電極上部の壁電圧とは、電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
【0040】
初期化期間後半部では、維持電極SU1〜維持電極SUnには正の電圧Ve1を印加し、データ電極D1〜データ電極Dmには0(V)を印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnには、維持電極SU1〜維持電極SUnに対して放電開始電圧未満となる電圧Vi3から放電開始電圧を超える負の電圧Vi4に向かって緩やかに(例えば、約−2.5V/μsecの勾配で)下降する傾斜電圧(以下、「下りランプ電圧」と呼称する)L2を印加する。
【0041】
この間に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとの間、および走査電極SC1〜走査電極SCnとデータ電極D1〜データ電極Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こる。そして、走査電極SC1〜走査電極SCn上部の負の壁電圧および維持電極SU1〜維持電極SUn上部の正の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜データ電極Dm上部の正の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。以上により、全ての放電セルに対して初期化放電を行う全セル初期化動作が終了する。
【0042】
続く書込み期間では、走査電極SC1〜走査電極SCnに対しては順次走査パルス電圧Vaを印加し、データ電極D1〜データ電極Dmに対しては発光させるべき放電セルに対応するデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加して、各放電セルに選択的に書込み放電を発生させる。
【0043】
具体的には、まず維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve2を印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnに電圧Vc(電圧Vc=電圧Va+電圧Vsc)を印加する。
【0044】
そして、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Vaを印加するとともに、データ電極D1〜データ電極Dmのうち1行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。このときデータ電極Dk上と走査電極SC1上との交差部の電圧差は、外部印加電圧の差(電圧Vd−電圧Va)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に放電が発生する。また、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve2を印加しているため、維持電極SU1上と走査電極SC1上との電圧差は、外部印加電圧の差である(電圧Ve2−電圧Va)に維持電極SU1上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなる。このとき、電圧Ve2を、放電開始電圧をやや下回る程度の電圧値に設定することで、維持電極SU1と走査電極SC1との間を、放電には至らないが放電が発生しやすい状態にすることができる。これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に発生する放電を引き金にして、データ電極Dkと交差する領域にある維持電極SU1と走査電極SC1との間に放電を発生させることができる。こうして、発光させるべき放電セルに書込み放電が起こり、走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
【0045】
このようにして、1行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vdを印加しなかったデータ電極D1〜データ電極Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで順次行い、書込み期間が終了する。
【0046】
続く維持期間では、輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスを表示電極対24に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる。
【0047】
この維持期間では、まず走査電極SC1〜走査電極SCnに正の維持パルス電圧Vsを印加するとともに維持電極SU1〜維持電極SUnにベース電位となる接地電位、すなわち0(V)を印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差が維持パルス電圧Vsに走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。
【0048】
そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保たれる。
【0049】
続いて、走査電極SC1〜走査電極SCnにはベース電位となる0(V)を、維持電極SU1〜維持電極SUnには維持パルス電圧Vsをそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との電圧差が放電開始電圧を超えるので、再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され、走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降同様に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとに、輝度重みに輝度倍率を乗じた数の維持パルスを交互に印加することで、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して発生する。
【0050】
そして、維持期間における維持パルスの発生後に、維持電極SU1〜維持電極SUnおよびデータ電極D1〜データ電極Dmには0(V)を印加したまま、走査電極SC1〜走査電極SCnに、0(V)から放電開始電圧を超える電圧Versに向かって緩やかに(例えば、約10V/μsec)上昇する傾斜電圧(以下、「消去ランプ電圧」と呼称する)L3を印加する。これにより、維持放電を起こした放電セルの維持電極SUiと走査電極SCiとの間で、微弱な放電が発生する。この微弱な放電は、走査電極SC1〜走査電極SCnへの印加電圧が上昇する期間、持続して発生する。そして、上昇する電圧があらかじめ定めた電圧Versに到達したら、走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する電圧をベース電位となる0(V)まで下降させる。
【0051】
このとき、この微弱な放電で発生した荷電粒子は、維持電極SUiと走査電極SCiとの間の電圧差を緩和するように、維持電極SUi上および走査電極SCi上に蓄積されていく。したがって、維持放電が発生した放電セルにおいて、走査電極SC1〜走査電極SCn上と維持電極SU1〜維持電極SUn上との間の壁電圧は、走査電極SCiに印加した電圧と放電開始電圧の差、すなわち(電圧Vers−放電開始電圧)の程度まで弱められる。これにより、維持放電が発生した放電セルにおいて、データ電極Dk上の正の壁電荷を残したまま、走査電極SCiおよび維持電極SUi上の、壁電圧の一部または全部が消去される。すなわち、消去ランプ電圧L3によって発生する放電は、維持放電が発生した放電セル内に蓄積された不要な壁電荷を消去する「消去放電」として働く(以下、消去ランプ電圧L3によって発生させる放電を「消去放電」と呼称する)。
【0052】
その後、走査電極SC1〜走査電極SCnを0(V)に戻し、維持期間における維持動作が終了する。
【0053】
第2SFの初期化期間では、第1SFにおける初期化期間の前半部を省略した駆動電圧波形を各電極に印加する。すなわち、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Ve1を、データ電極D1〜データ電極Dmに0(V)をそれぞれ印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnには放電開始電圧未満となる電圧(例えば、0(V))から放電開始電圧を超える負の電圧Vi4に向かって緩やかに(例えば、約−2.5V/μsecの勾配で)下降する下りランプ電圧L4を印加する。
【0054】
これにより直前のサブフィールド(図3では、第1SF)の維持期間で維持放電を起こした放電セルでは微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCi上部および維持電極SUi上部の壁電圧が弱められ、データ電極Dk(k=1〜m)上部の壁電圧も書込み動作に適した値に調整される。一方、直前のサブフィールドの維持期間で維持放電を起こさなかった放電セルでは初期化放電は発生しない。このように第2SFにおける初期化動作は、直前のサブフィールドの維持期間で維持動作を行った放電セルに対して初期化放電を行う選択初期化動作となる。
【0055】
第2SFの書込み期間では、走査電極SC1〜走査電極SCn、維持電極SU1〜維持電極SUnおよびデータ電極D1〜データ電極Dmに対して第1SFの書込み期間と同様の駆動波形を印加する。第2SFの維持期間では、第1SFの維持期間と同様に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとにあらかじめ定められた数の維持パルスを交互に印加する。
【0056】
また、第3SF以降のサブフィールドでは、走査電極SC1〜走査電極SCn、維持電極SU1〜維持電極SUnおよびデータ電極D1〜データ電極Dmに対して、維持期間における維持パルスの発生数が異なる以外は第2SFと同様の駆動波形を印加する。
【0057】
以上が、パネル10の各電極に印加する駆動電圧波形の概要である。
【0058】
次に、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の構成について説明する。図4は、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置1の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置1は、パネル10、画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、タイミング発生回路45および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
【0059】
画像信号処理回路41は、入力された画像信号sigにもとづき各放電セルに1フィールドで表現される階調値を割り当て、各放電セルに割り当てられた階調値をサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する。また、表示電極対24が延伸する方向に配列された連続する3つの放電セルにおいて、各サブフィールドの点灯パターンが、後述する「誤書込み発生パターン」にあてはまるかどうかを判定し、その判定結果にもとづき点灯パターンの一部を変更する。この詳細については後述する。
【0060】
タイミング発生回路45は、水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vにもとづき各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロック(画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43および維持電極駆動回路44)へ供給する。
【0061】
データ電極駆動回路42は、画像データを構成するサブフィールド毎のデータを各データ電極D1〜データ電極Dmに対応する信号に変換し、タイミング発生回路45から供給されるタイミング信号にもとづいて各データ電極D1〜データ電極Dmを駆動する。
【0062】
走査電極駆動回路43は、初期化期間に走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する初期化波形を発生する初期化波形発生回路、維持期間に走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する維持パルスを発生する維持パルス発生回路、複数の走査電極駆動IC(以下、「走査IC」と略記する)を備え書込み期間に走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する走査パルスを発生する走査パルス発生回路を有する。そして、タイミング発生回路45から供給されるタイミング信号にもとづいて各走査電極SC1〜走査電極SCnをそれぞれ駆動する。
【0063】
維持電極駆動回路44は、維持パルス発生回路および電圧Ve1、電圧Ve2を発生する回路(図示せず)を備え、タイミング発生回路45から供給されるタイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜維持電極SUnを駆動する。
【0064】
なお、本実施の形態では、上述したように、表示電極対24が延伸する方向に配列された連続する3つの放電セル(以下、単に「連続する3つの放電セル」と記す)において、各サブフィールドの点灯パターンが、「誤書込み発生パターン」にあてはまるかどうかを判定し、その判定結果にもとづき点灯パターンの一部を変更する構成としている。
【0065】
具体的には、連続する3つの放電セルにおいて、現サブフィールドでは、中央の放電セルは非点灯となり、中央の放電セルの両側の2つの放電セル(以下、単に「両側の2つの放電セル」と記す)はともに点灯となり、現サブフィールドの1つ前のサブフィールドでは、中央の放電セルが非点灯となり、現サブフィールドの2つ前のサブフィールドでは、中央の放電セルが点灯となるかどうかを判定する。本実施の形態では、この点灯パターンを「誤書込み発生パターン」と呼称する。なお、本実施の形態における現サブフィールドとは、1フィールドを構成する複数のサブフィールドのうちの、第1SF、第2SFを除くいずれかのサブフィールドのことである。
【0066】
そして、連続する3つの放電セルにおける各サブフィールドの点灯パターンが「誤書込み発生パターン」にあてはまるときには、現サブフィールドにおいて両側の2つの放電セルのいずれか一方の放電セルを点灯から非点灯に変更する。
【0067】
これは、本発明者が、上述の「誤書込み発生パターン」が生じたときに、現サブフィールドにおいて中央の放電セルに誤書込みが発生しやすく、そのときに上述の対策を施すことでその誤書込みの発生が低減されることを実験的に確認したためである。
【0068】
この「誤書込み発生パターン」について図面を用いて説明する。図5は、本発明の一実施の形態におけるパネル10に形成された放電セルを概略的に示す図である。また、図6A、図6Bは、図5に示した放電セル(i,j−1)、放電セル(i,j)、放電セル(i,j+1)に生じた「誤書込み発生パターン」の一例を模式的に示した図である。
【0069】
なお、図5には、i−1行目からi+1行目までの3行、およびj−2列からj+2列までの5列の計15個の放電セルを示す。また、以下の説明では、例えばi行j列にある放電セルは、放電セル(i,j)と記す。また、図6A、図6Bにおいて、「○」はそのサブフィールドが点灯することを表し、「×」はそのサブフィールドが非点灯であることを表し、「−」はそのサブフィールドが点灯または非点灯のいずれかであることを表す。
【0070】
また、以下、連続する3つの放電セルとして、図5に示す放電セル(i,j−1)、放電セル(i,j)、放電セル(i,j+1)を例に挙げて説明を行う。この例では、中央の放電セルは放電セル(i,j)であり、両側の2つの放電セルは放電セル(i,j−1)、放電セル(i,j+1)である。また、図6Aには、現サブフィールドが第4SFとなるときの例を示し、図6Bには、現サブフィールドが第3SFとなるときの例を示す。
【0071】
図6Aに示した例では、現サブフィールドである第4SFでは、放電セル(i,j)は非点灯となり、放電セル(i,j−1)、放電セル(i,j+1)はともに点灯となる。また、現サブフィールドの1つ前のサブフィールドである第3SFでは放電セル(i,j)は非点灯となり、現サブフィールドの2つ前のサブフィールドである第2SFでは放電セル(i,j)は点灯となる。例えば、このような点灯パターンでは、現サブフィールドである第4SFで放電セル(i,j)に誤書込みが発生しやすい。
【0072】
図6Bに示した例では、現サブフィールドである第3SFでは、放電セル(i,j)は非点灯となり、放電セル(i,j−1)、放電セル(i,j+1)はともに点灯となる。また、現サブフィールドの1つ前のサブフィールドである第2SFでは放電セル(i,j)は非点灯となり、現サブフィールドの2つ前のサブフィールドである第1SFでは放電セル(i,j)は点灯となる。例えば、このような点灯パターンでは、現サブフィールドである第3SFで放電セル(i,j)に誤書込みが発生しやすい。
【0073】
これは、次のような理由によるものと思われる。
【0074】
パネルの高精細化にともない微細化された放電セルでは、初期化放電によって放電セル内に形成された壁電荷が、隣接する放電セルに発生する書込み放電や維持放電の影響を受けて変化しやすい。
【0075】
また、高輝度化するためにキセノン分圧を大きくしたパネルでは、放電開始電圧のばらつきが大きくなりやすい。
【0076】
また、パネルの大画面化、高精細化にともない、パネルの駆動インピーダンスは増大する傾向にある。そのため、同一表示電極対上に形成される放電セルであっても、駆動回路に近い位置に形成される放電セルと、駆動回路から遠い位置に形成される放電セルとでは、駆動電圧の電圧降下の差は拡大する。
【0077】
これらのことから、大画面化、高輝度化、高精細化されたパネルでは、放電の発生にばらつきが生じやすく、比較的放電が発生しやすい放電セルと比較的放電が発生しにくい放電セル、すなわち、同じ駆動電圧を印加したときに、時間的に早く放電が発生する放電セルと遅く放電が発生する放電セルとが生じる可能性がある。
【0078】
このようなパネルにおいて、全ての放電セルで安定に放電を発生させるためには、放電セルに印加する電圧を高めればよい。例えば、比較的放電が発生しにくい放電セルで安定した書込み放電を発生させるためには、書込み期間に走査電極22に印加する負の走査パルス電圧Vaを下げて、走査パルスの振幅をより大きくすればよい。あるいは、比較的放電が発生しにくい放電セルで十分な初期化動作を行うためには、例えば下りランプ電圧L4の最低電圧Vi4を下げて、初期化放電の持続時間が十分になるようにすればよい。
【0079】
しかし、比較的放電が発生しやすい放電セルでは、比較的放電が発生しにくい放電セルと比較して、初期化放電が時間的に早く発生する。そのため、比較的放電が発生しやすい放電セルでは、例えば、下りランプ電圧L4の最低電圧Vi4を下げると、初期化放電が時間的に早く発生する分、初期化放電の持続時間が長くなり、過剰に初期化されることとなる。
【0080】
過剰に初期化された放電セルでは、走査電極22上の正の壁電圧が不要に増加することがある。そして、走査電極22上の正の壁電圧が不要に増加した放電セルでは、書込み動作なしに、維持期間に微弱な誤放電が発生することがある。
【0081】
この誤放電は、データ電極32上に正の壁電圧を蓄積させ、また、続くサブフィールドの選択初期化期間に、微弱な初期化誤放電を発生させると考えられる。この微弱な初期化誤放電は、通常の初期化放電と比較して、壁電圧を調整する働きが非常に弱く、データ電極32上に蓄積された正の壁電圧は実質的に調整されないままとなる。一方、この初期化誤放電により、少量の荷電粒子(プライミング粒子)が放電セル内に発生する。
【0082】
そして、初期化誤放電が発生した放電セル(中央の放電セル)では書込み動作が行われず、その放電セルに隣接する2つの放電セル(両側の2つの放電セル)ではともに書込み動作が行われると、その書込み動作で生じたプライミング粒子の一部が、両側の2つの放電セルから中央の放電セルに漏れ込んでくることとなる。このプライミング粒子の移動は、パネルの高精細化にともない微細化が進んだ放電セルで発生しやすい。
【0083】
そして、データ電極32上に正の壁電圧が調整されないまま蓄積した中央の放電セルでは、走査パルスを印加するだけで放電開始電圧を超えることがあり、そのような場合、両側の2つの放電セルから中央の放電セルに漏れ込んでくるプライミング粒子が、初期化誤放電で発生したプライミング粒子と反応し、中央の放電セルで誤書込みが発生する。
【0084】
以上が、「誤書込み発生パターン」が生じたときに、現サブフィールド(図6Aに示した例では第4SF、図6Bに示した例では第3SF)において、中央の放電セル(図6A、図6Bに示した例では、放電セル(i,j))に誤書込みが発生しやすい理由と考えられる。
【0085】
例えば、図6Aに示した例では、放電セル(i,j)において、第2SFが点灯するため、続く第3SFの初期化期間で初期化放電が発生する。このとき、初期化放電が過剰になり、放電セル(i,j)が過剰に初期化されると、放電セル(i,j)では走査電極22上に正の壁電圧が不要に増加する。その結果、放電セル(i,j)では、第3SFにおいて、書込み動作が行われないにもかかわらず、維持期間に微弱な誤放電が発生する。
【0086】
これにより、放電セル(i,j)ではデータ電極32上に正の壁電圧が蓄積され、第4SFの選択初期化期間に、微弱な初期化誤放電が発生する。第4SFでは、放電セル(i,j)では書込み動作が行われないが、放電セル(i,j)に隣接する放電セル(i,j−1)、放電セル(i,j+1)ではともに書込み動作が行われる。これにより、放電セル(i,j−1)、放電セル(i,j+1)から放電セル(i,j)にプライミング粒子が漏れ込んでくる。
【0087】
放電セル(i,j)ではデータ電極32上に蓄積された正の壁電圧が調整されないまま残存している。そのため、放電セル(i,j−1)、放電セル(i,j+1)から放電セル(i,j)に漏れ込んでくるプライミング粒子と、第4SFの選択初期化期間に発生した初期化誤放電によるプライミング粒子とが反応して第4SFの書込み期間で誤書込みが発生する。
【0088】
しかしながら、本発明者は、連続する3つの放電セルの点灯パターンが「誤書込み発生パターン」となるとき、現サブフィールドにおいて、両側の2つの放電セルのいずれか一方の放電セルを点灯から非点灯に変更することで、誤書込みの発生が低減されることを実験的に確認した。
【0089】
図7A、図7Bは、本発明の一実施の形態における連続する3つの放電セルに「誤書込み発生パターン」が生じたときの点灯パターンの変更例を模式的に示す図である。図7Aは、図6Aに示した「誤書込み発生パターン」が生じたときに放電セル(i,j−1)の点灯パターンを変更するときの例を示した図であり、図7Bは、図6Aに示した「誤書込み発生パターン」が生じたときに放電セル(i,j+1)の点灯パターンを変更するときの例を示した図である。
【0090】
例えば、図6Aに示した「誤書込み発生パターン」が生じたときには、図7Aに示すように、現サブフィールドである第4SFにおいて、放電セル(i,j−1)を点灯から非点灯に変更する。あるいは、図7Bに示すように、現サブフィールドである第4SFにおいて、放電セル(i,j+1)を点灯から非点灯に変更してもよい。
【0091】
このように、連続する3つの放電セルに「誤書込み発生パターン」が生じたときには、現サブフィールド(図6Aに示した例では第4SF、図6Bに示した例では第3SF)において、両側の2つの放電セル(図6A、図6Bに示した例では、放電セル(i,j−1)、放電セル(i,j+1))のいずれか一方の放電セルを点灯から非点灯に変更する。こうすることで、現サブフィールド(図6Aに示した例では第4SF、図6Bに示した例では第3SF)において、中央の放電セル(図6A、図6Bに示した例では、放電セル(i,j))に発生しやすい誤書込みを低減することができる。
【0092】
これは、現サブフィールドにおいて、両側の2つの放電セルのいずれか一方の放電セルを点灯から非点灯に変更することで、中央の放電セルに漏れ込んでくるプライミング粒子を半減できるためと考えられる。
【0093】
これらのことから、本実施の形態では、画像信号処理回路41において、画像信号にもとづいて各放電セルの各サブフィールドに点灯・非点灯を割り当てたときに、表示電極対24が延伸する方向に配列された連続する3つの放電セルの各サブフィールドの点灯パターンに、「誤書込み発生パターン」にあてはまるパターンが生じているかどうかを判定するものとする。すなわち、現サブフィールドでは、中央の放電セルは非点灯となり、両側の2つの放電セルはともに点灯となり、現サブフィールドの1つ前のサブフィールドでは、中央の放電セルが非点灯となり、現サブフィールドの2つ前のサブフィールドでは、中央の放電セルが点灯となるかどうかを判定する。
【0094】
そして、「誤書込み発生パターン」が生じたときには、現サブフィールドにおいて、両側の2つの放電セルのいずれか一方の放電セルを点灯から非点灯に変更するものとする。このようにして、連続する3つの放電セルに「誤書込み発生パターン」が生じたときに、現サブフィールドにおいて中央の放電セルに発生しやすい誤書込みを低減することができる。
【0095】
以上説明したように、本実施の形態では、連続する3つの放電セルに「誤書込み発生パターン」が生じたとき、現サブフィールドにおいて両側の2つの放電セルのいずれか一方の放電セルを点灯から非点灯に変更するものとする。これにより、現サブフィールドにおいて中央の放電セルに発生しやすい誤書込みを低減し、画像表示品質を向上することが可能となる。
【0096】
なお、本実施の形態においては、連続する3つの放電セルに「誤書込み発生パターン」が生じたとき、現サブフィールドにおいて両側の2つの放電セルのいずれか一方の放電セルを点灯から非点灯に変更するとともに、同放電セルを、現サブフィールドの次に輝度重みの大きいサブフィールドで点灯にする構成としてもよい。
【0097】
図8A、図8Bは、本発明の一実施の形態における連続する3つの放電セルに「誤書込み発生パターン」が生じたときの点灯パターンの他の変更例を模式的に示す図である。図8Aは、図6Aに示した「誤書込み発生パターン」が生じたときに、放電セル(i,j−1)の点灯パターンを変更するときの他の例を示した図であり、図8Bは、図6Aに示した「誤書込み発生パターン」が生じたときに、放電セル(i,j+1)の点灯パターンを変更するときの他の例を示した図である。
【0098】
例えば、本実施の形態に示したように、時間的に後のサブフィールドほど輝度重みが大きくなるように各サブフィールドの輝度重みを設定した構成において、図6Aに示した「誤書込み発生パターン」が生じたときには、図8Aに示すように、現サブフィールド(図6A、図8Aに示した例では、第4SF)において放電セル(i,j−1)を点灯から非点灯に変更するとともに、同放電セルを、現サブフィールドの次に輝度重みの大きいサブフィールド(図6A、図8Aに示した例では、第5SF)で点灯にする。あるいは、図8Bに示すように、現サブフィールド(第4SF)において、放電セル(i,j+1)を点灯から非点灯に変更するとともに、同放電セルを、現サブフィールドの次に輝度重みの大きいサブフィールド(第5SF)で点灯にしてもよい。
【0099】
このような構成では、両側の2つの放電セルのいずれか一方の放電セルを、現サブフィールドで非点灯に変更するとともに、現サブフィールドの次に輝度重みの大きいサブフィールドで点灯にするので、同放電セルにおける輝度変化を低減し、画像表示品質をさらに向上することが可能となる。
【0100】
なお、時間的に後のサブフィールドほど輝度重みが大きくなるように輝度重みが設定されていない場合、例えば、1フィールドを8つのサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第8SF)で構成し、各サブフィールドにそれぞれ(1、4、16、64、2、8、32、128)の輝度重みを設定する構成では、例えば現サブフィールドが第3SFであれば、第3SFの次に輝度重みの大きいサブフィールドは第7SFとなる。この場合には、両側の2つの放電セルのいずれか一方の放電セルを、第3SFで非点灯にするとともに第7SFで点灯にすればよい。
【0101】
なお、図3に示した駆動電圧波形は実施の形態における一例を示したものに過ぎず、本発明は、何らこれらの駆動電圧波形に限定されるものではない。
【0102】
また、本発明における実施の形態は、走査電極SC1〜走査電極SCnを第1の走査電極群と第2の走査電極群とに分割し、書込み期間を、第1の走査電極群に属する走査電極のそれぞれに走査パルスを印加する第1の書込み期間と、第2の走査電極群に属する走査電極のそれぞれに走査パルスを印加する第2の書込み期間とで構成する、いわゆる2相駆動によるパネルの駆動方法にも適用させることができ、上述と同様の効果を得ることができる。
【0103】
なお、本発明における実施の形態は、走査電極と走査電極とが隣り合い、維持電極と維持電極とが隣り合う電極構造、すなわち前面板21に設けられる電極の配列が、「・・・、走査電極、走査電極、維持電極、維持電極、走査電極、走査電極、・・・」となる電極構造のパネルにおいても有効である。
【0104】
なお、本発明は、サブフィールド構成(サブフィールド数や各サブフィールドの輝度重み等)が実施の形態で示した構成に何ら限定されるものではない。また、サブフィールド構成を画像信号等にもとづいて変更する構成であってもよい。また、本発明における実施の形態において示した具体的な各数値、例えば、上りランプ電圧L1、下りランプ電圧L2、消去ランプ電圧L3の各傾斜電圧の勾配等は、表示電極対数1080の50インチのパネルの特性にもとづき設定したものであって、単に実施の形態の一例を示したものに過ぎない。本発明はこれらの数値に何ら限定されるものではなく、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて最適に設定することが望ましい。また、これらの各数値は、上述した効果を得られる範囲でのばらつきを許容するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、大画面化、高輝度化、高精細化されたパネルにおいても、書込み期間における異常放電の発生を抑えて書込み動作を安定にし、画像表示品質を向上させることができるので、パネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置として有用である。
【符号の説明】
【0106】
1 プラズマディスプレイ装置
10 パネル
21 (ガラス製の)前面板
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
25,33 誘電体層
26 保護層
31 背面板
32 データ電極
34 隔壁
35 蛍光体層
41 画像信号処理回路
42 データ電極駆動回路
43 走査電極駆動回路
44 維持電極駆動回路
45 タイミング発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルを、前記放電セルに書込み放電を発生する書込み期間と、サブフィールド毎に設定された輝度重みに応じた回数の維持パルスを前記表示電極対に交互に印加する維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド内に複数設けて駆動し、
前記書込み期間に書込み放電を発生したサブフィールドで前記維持期間に維持放電を発生し前記サブフィールドを点灯させて階調表示するプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
前記表示電極対が延伸する方向に配列された連続する3つの放電セルにおいて、
現サブフィールドでは、中央の放電セルは非点灯となり、前記中央の放電セルの両側の2つの放電セルはともに点灯となり、
前記現サブフィールドの1つ前のサブフィールドでは、前記中央の放電セルが非点灯となり、
前記現サブフィールドの2つ前のサブフィールドでは、前記中央の放電セルが点灯となるときに、
前記現サブフィールドにおいて、前記2つの放電セルのいずれか一方の放電セルを点灯から非点灯に変更することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項2】
前記現サブフィールドにおいて前記2つの放電セルのいずれか一方の放電セルを点灯から非点灯に変更するときに、前記いずれか一方の放電セルを、前記現サブフィールドの次に輝度重みの大きいサブフィールドにおいて点灯にすることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項3】
走査電極と維持電極とからなる表示電極対およびデータ電極を有する放電セルを複数備え、書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド内に複数設け、前記書込み期間に書込み放電を発生したサブフィールドでは、前記維持期間にサブフィールド毎に設定された輝度重みに応じた回数の維持放電を発生して階調表示するプラズマディスプレイパネルと、
入力画像信号を、1フィールドで表現される階調値の大きさに応じて、前記放電セルにおける前記サブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する画像信号処理回路とを備え、
前記画像信号処理回路は、
前記表示電極対が延伸する方向に配列された連続する3つの放電セルにおいて、
現サブフィールドでは、中央の放電セルは非点灯となり、前記中央の放電セルの両側の2つの放電セルはともに点灯となり、
前記現サブフィールドの1つ前のサブフィールドでは、前記中央の放電セルが非点灯となり、
前記現サブフィールドの2つ前のサブフィールドでは、前記中央の放電セルが点灯となるときに、
前記現サブフィールドにおいて、前記2つの放電セルのいずれか一方の放電セルを点灯から非点灯に変更することを特徴とするプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2011−22257(P2011−22257A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165630(P2009−165630)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】