説明

プラズマディスプレイパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置

【課題】プラズマディスプレイパネルで安定した維持放電を発生させるとともに、不要輻射を抑制する。
【解決手段】電極間容量とインダクタとを共振させて維持側維持パルスの立ち上がりまたは立ち下がりを行う電力回収部と維持側維持パルスの電圧を第3電圧V63または第4電圧(−V63)にクランプする維持側クランプ部とを有する維持電極駆動回路と、走査側維持パルスの電圧を第1電圧V53または第2電圧(−V53)にクランプする走査側クランプ部とを有する走査電極駆動回路とを備え、電力回収部を用いて維持側維持パルスの立ち上がりまたは立ち下がりを行い、共振周期の1/2の時間が経過した以後に維持側クランプ部を用いて維持電極の電圧を第3電圧または第4電圧にクランプし、維持電極の電圧のクランプと同時またはそれ以後に走査側クランプ部を用いて走査電極の電圧を第2電圧または第1電圧にクランプして、維持放電を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの駆動方法、およびそれを用いたプラズマディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示デバイスとして代表的なプラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)は、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対が複数形成された前面基板と、複数のデータ電極が形成された背面基板とを対向配置し、その間に多数の放電セルが形成されている。そして放電セル内のガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線で赤色、緑色および青色の各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行う。
【0003】
パネルを駆動する方法としては、1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割し、発光させるサブフィールドの組み合わせによって階調を表示するサブフィールド法が一般的である。各サブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み動作に必要な壁電荷を各電極上に形成する。書込み期間では、放電セルで選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する。そして維持期間では、走査電極と維持電極とからなる表示電極対に交互に維持パルスを印加し、書込み放電を起こした放電セルで維持放電を発生させ、対応する放電セルの蛍光体層を発光させることにより画像を表示する。
【0004】
このようなパネルを用いたプラズマディスプレイ装置では、様々な消費電力削減技術が提案されている。特に維持期間における消費電力を削減する技術の1つとして、表示電極対が容量性の負荷であることに着目し、表示電極対の電極間容量とインダクタとを共振させて表示電極対を駆動する、いわゆる電力回収回路が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−242458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した電力回収回路は共振によって動作するので、駆動インピーダンスは比較的高い。そのため電力回収回路の動作中に放電が発生すると大きな電圧降下が生じて維持放電が不安定になるおそれがあった。従来は維持放電を安定して発生させるために、電力回収回路の共振を途中で中断して、駆動インピーダンスの低いクランプ回路に切り換えて表示電極対に維持パルスの電圧を供給していた。
【0007】
しかしながら、電力回収回路の共振を途中で中断すると不要輻射が増加する。そのため新たな部品を追加して不要輻射を抑制しなければならないという課題があった。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、安定した維持放電を発生させるとともに、不要輻射を抑制したパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、走査電極と維持電極とを有する放電セルを複数備えたパネルの、走査電極に第1電圧と第2電圧とを有する走査側維持パルスを印加し、維持電極に第3電圧と第4電圧とを有する維持側維持パルスを印加して、放電セルで維持放電を発生させるパネルの駆動方法であって、走査側維持パルスの電圧を第1電圧または第2電圧にクランプする走査側クランプ部を有する走査電極駆動回路と、走査電極と維持電極との間の電極間容量とインダクタとを共振させて維持側維持パルスの立ち上がりまたは立ち下がりを行う電力回収部と維持側維持パルスの電圧を第3電圧または第4電圧にクランプする維持側クランプ部とを有する維持電極駆動回路とを備え、電力回収部を用いて維持側維持パルスの立ち上がりまたは立ち下がりを行い、電極間容量とインダクタとの共振周期の1/2の時間が経過した以後に維持側クランプ部を用いて維持電極の電圧を第3電圧または第4電圧にクランプし、維持電極の電圧のクランプと同時またはそれ以後に走査側クランプ部を用いて走査電極の電圧を第2電圧または第1電圧にクランプして、維持放電を発生させることを特徴とする。この方法により、安定した維持放電を発生させるとともに、不要輻射を抑制したパネルの駆動方法を提供することができる。
【0010】
また本発明のパネルの駆動方法は、電極間容量とインダクタとの共振周期が維持放電の放電遅れ時間の2倍よりも短くなるように、インダクタのインダクタンスを設定してもよい。
【0011】
また本発明は、走査電極と維持電極とを有する放電セルを複数備えたパネルと、走査電極に第1電圧と第2電圧とを有する走査側維持パルスを印加する走査電極駆動回路と、維持電極に第3電圧と第4電圧とを有する維持側維持パルスを印加する維持電極駆動回路とを有するプラズマディスプレイ装置であって、走査電極駆動回路は、走査側維持パルスの電圧を第1電圧または第2電圧にクランプする走査側クランプ部を有し、維持電極駆動回路は、走査電極と維持電極との間の電極間容量とインダクタとを共振させて維持側維持パルスの立ち上がりまたは立ち下がりを行う電力回収部と、維持側維持パルスの電圧を第3電圧または第4電圧にクランプする維持側クランプ部を有し、電力回収部を用いて維持側維持パルスの立ち上がりまたは立ち下がりを行い、電極間容量とインダクタとの共振周期の1/2の時間が経過した以後に維持側クランプ部を用いて維持電極の電圧を第3電圧または第4電圧にクランプし、維持電極のクランプと同時またはそれ以後に走査側クランプ部を用いて走査電極の電圧を第2電圧または第1電圧にクランプして、維持放電を発生させることを特徴とする。この構成により、安定した維持放電を発生させるとともに、不要輻射を抑制したプラズマディスプレイ装置を提供することができる。
【0012】
また本発明のプラズマディスプレイ装置は、電極間容量とインダクタとの共振周期が維持放電の放電遅れ時間の2倍よりも短くなるように、インダクタのインダクタンスを設定してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安定した維持放電を発生させるとともに、不要輻射を抑制したパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置のパネルの分解斜視図である。
【図2】同プラズマディスプレイ装置のパネルの電極配列図である。
【図3】同プラズマディスプレイ装置の回路ブロック図である。
【図4】同プラズマディスプレイ装置のデータ電極駆動回路の回路図である。
【図5】同プラズマディスプレイ装置の走査電極駆動回路の回路図である。
【図6】同プラズマディスプレイ装置の維持電極駆動回路の回路図である。
【図7】同プラズマディスプレイ装置の駆動電圧波形図である。
【図8】同プラズマディスプレイ装置の維持期間における動作を説明するための回路ブロック図である。
【図9】同プラズマディスプレイ装置の維持パルスの詳細を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2におけるプラズマディスプレイ装置の維持パルスの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置のパネル10の分解斜視図である。ガラス製の前面基板11上には、走査電極12と維持電極13とからなる表示電極対14が複数形成されている。そして走査電極12と維持電極13とを覆うように誘電体層15が形成され、その誘電体層15上に保護層16が形成されている。背面基板21上にはデータ電極22が複数形成され、データ電極22を覆うように誘電体層23が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁24が形成されている。そして、隔壁24の側面および誘電体層23上には赤色、緑色および青色の各色に発光する蛍光体層25が設けられている。
【0017】
これら前面基板11と背面基板21とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対14とデータ電極22とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして放電空間には、例えばネオンとキセノンの混合ガスが放電ガスとして封入されている。本実施の形態においては、輝度向上のためにキセノン分圧を10%とした放電ガスが用いられている。放電空間は隔壁24によって複数の区画に仕切られており、表示電極対14とデータ電極22とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
【0018】
なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置のパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極12)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極13)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極22)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUi(i=1〜n)と1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。なお、図1、図2に示したように、走査電極SCiと維持電極SUiとは互いに平行に対をなして形成されているために、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間に大きな電極間容量Cpが存在する。
【0020】
図3は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置30の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置30は、パネル10、画像信号処理回路31、データ電極駆動回路32、走査電極駆動回路33、維持電極駆動回路34、タイミング発生回路35および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
【0021】
画像信号処理回路31は、入力された画像信号をサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する。タイミング発生回路35は、水平同期信号、垂直同期信号をもとにして各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。
【0022】
図4は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置30のデータ電極駆動回路32の回路ブロック図である。データ電極駆動回路32は、基準電位設定部41と書込みパルス発生部44とを有する。基準電位設定部41はスイッチング素子Q41とスイッチング素子Q42とを有し、書込みパルス発生部44の基準電位となる節点P44の電位を負の電圧V41または接地電位に設定する。書込みパルス発生部44は、節点P44の電位に重畳された正の電圧V44の電源E44と、電源E44の高電圧側の電圧をデータ電極D1〜Dmに印加するスイッチング素子Q4H1〜Q4Hmと、電源E44の低電圧側の電圧をデータ電極D1〜Dmに印加するスイッチング素子Q4L1〜Q4Lmとを有する。そして、サブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する書込みパルスに変換し各データ電極D1〜Dmに印加する。
【0023】
図5は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置30の走査電極駆動回路33の回路ブロック図である。走査電極駆動回路33は、維持パルス発生部50と、ランプ電圧発生部55と、ランプ電圧発生部56と、基準電位設定部57と、走査パルス発生部59とを有する。
【0024】
維持パルス発生部50は、スイッチング素子Q53とスイッチング素子Q54とを有する走査側クランプ部53を備える。そして走査パルス発生部59の基準電位となる節点P59に正の電圧V53と負の電圧V54とを有する走査側維持パルスを出力する。
【0025】
ランプ電圧発生部55は正の電圧V55まで上昇する上りランプ電圧を発生し節点P59に出力する。ランプ電圧発生部56は負の電圧V56まで低下する下りランプ電圧を発生し節点P59に出力する。基準電位設定部57は、節点P59の電圧を負の電圧V57に設定するスイッチング素子Q57と、接地電位すなわち0(V)に設定するスイッチング素子Q58とを有する。
【0026】
走査パルス発生部59は、走査パルス発生部59の基準電位に重畳された正の電圧V59の電源E59と、電源E59の高電圧側の電圧を走査電極SC1〜SCnに印加するスイッチング素子Q5H1〜Q5Hnと、電源E59の低電圧側の電圧を走査電極SC1〜SCnに印加するスイッチング素子Q5L1〜Q5Lnとを有する。そして、走査パルスを各走査電極SC1〜SCnに印加する。
【0027】
図6は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置30の維持電極駆動回路34の回路ブロック図である。維持電極駆動回路34は、維持パルス発生部60と電圧印加部65とを有する。
【0028】
維持パルス発生部60は、コンデンサC61とスイッチング素子Q61とスイッチング素子Q62とダイオードD61とダイオードD62とインダクタL61とを有する電力回収部61と、スイッチング素子Q63とスイッチング素子Q64とを有する維持側クランプ部63を備え、正の電圧V63と負の電圧V64とを有する維持側維持パルスを維持電極SU1〜SUnに出力する。なお、コンデンサC61は電極間容量Cpに比べて十分に大きい容量を持ち、電圧V63と電圧V64の中間の電位、すなわち電圧((V63+V64)/2)に充電されており、電力回収部61の電源として働く。
【0029】
電圧印加部65は、維持電極SU1〜SUnに正の電圧V65を出力するスイッチング素子Q65と、接地電位を出力するスイッチング素子Q66とを有する。
【0030】
次に、パネル10を駆動するための駆動方法について説明する。パネル10はサブフィールド法、すなわち1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって階調表示を行う。それぞれのサブフィールドは初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。
【0031】
初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み放電に必要な壁電荷を各電極上に形成する。このときの初期化動作には、全ての放電セルで強制的に初期化放電を発生させる強制初期化動作と、維持放電を発生した放電セルで初期化放電を発生させる選択初期化動作とがある。書込み期間では、走査電極SC1〜SCnに走査パルスを印加するとともにデータ電極D1〜Dmに選択的に書込みパルスを印加して、発光させるべき放電セルで選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する。維持期間では、輝度重みに応じた数の走査側維持パルスおよび維持側維持パルスを走査電極SC1〜SCnおよび維持電極SU1〜SUnに印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる。このときデータ電極D1〜Dmにも維持側維持パルスと同相のパルス電圧を印加する。なお以下では、走査側維持パルスおよび維持側維持パルスを単に「維持パルス」とも略称する。
【0032】
本実施の形態においては、1フィールドを10のサブフィールド(SF1、SF2、・・・、SF10)に分割し、各サブフィールドはそれぞれ、例えば(1、2、3、6、11、18、30、44、60、80)の輝度重みを持つものとする。またサブフィールドSF1を強制初期化動作を行うサブフィールド、それ以降のサブフィールドSF2〜SF10を選択初期化動作を行うサブフィールドとする。しかし、本発明は、サブフィールド数や各サブフィールドの輝度重みが上記の値に限定されるものではなく、また、画像信号等にもとづいてサブフィールド構成を切換えてもよい。
【0033】
図7は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置30の駆動電圧波形図であり、各サブフィールドにおいてパネルの各電極に印加する駆動電圧波形を示している。
【0034】
サブフィールドSF1の初期化期間の前半では、スイッチング素子Q42およびスイッチング素子Q4L1〜Q4Lmをオンにしてデータ電極D1〜Dmに0(V)を印加し、スイッチング素子Q66をオンにして維持電極SU1〜SUnに0(V)を印加する。そしてスイッチング素子Q58をオンにして節点P59の電位を0(V)とし、スイッチング素子Q5H1〜Q5Hnをオンにして走査電極SC1〜SCnに電圧V59を印加する。次にスイッチング素子Q58をオフにするとともにランプ電圧発生部55を動作させる。すると節点P59の電位は電圧V55に向かって緩やかに上昇する。こうして電圧(V59+V55)に向かって緩やかに上昇するランプ電圧を走査電極SC1〜SCnに印加する。このランプ電圧が上昇する間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnおよびデータ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こり、それぞれの電極上に壁電圧が蓄積される。ここで、電極上の壁電圧とは電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
【0035】
初期化期間の後半では、スイッチング素子Q66をオフ、スイッチング素子Q65をオンにしてオンにして維持電極SU1〜SUnに電圧V65を印加する。そして、ランプ電圧発生部55をオフに、スイッチング素子Q53をオンにし、さらにスイッチング素子Q5H1〜Q5Hnをオフ、Q5L1〜Q5Lnをオンにして走査電極SC1〜SCnに電圧V53を印加する。
【0036】
その後、スイッチング素子Q53をオフにするとともにランプ電圧発生部56を動作させる。すると節点P59の電位は電圧V56に向かって緩やかに下降する。こうして電圧V56に向かって緩やかに下降するランプ電圧を走査電極SC1〜SCnに印加する。するとこの間に再び微弱な初期化放電が起こり、各電極上の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。
【0037】
このように、サブフィールドSF1の初期化期間では、全ての放電セルで強制的に初期化放電を発生させる強制初期化動作を行う。
【0038】
サブフィールドSF1の書込み期間では、維持電極SU1〜SUnに引き続き電圧V65を印加する。そしてスイッチング素子Q57をオンにして節点P59の電位を負の電圧V57とするとともにスイッチング素子Q5L1〜Q5Lnをオフ、スイッチング素子Q5H1〜Q5Hnをオンにすることにより、走査電極SC1〜SCnに電圧(V57+V59)を印加する。
【0039】
次に、スイッチング素子Q5H1をオフにしスイッチング素子Q5L1をオンにすることにより、1行目の走査電極SC1に負の電圧V57の走査パルスを印加する。そして、データ電極D1〜Dmのうち1行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に対応する書込みパルス発生部44のスイッチング素子Q4Lkをオフにしスイッチング素子Q4Hkをオンにして、データ電極Dkに電圧V44の書込みパルスを印加する。すると1行目の放電セルのうち書込みパルスを印加した放電セルでは書込み放電が起こり、各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルスを印加しなかった放電セルでは書込み放電は発生しない。このようにして選択的に書込み動作を行う。その後、スイッチング素子Q5L1をオフ、スイッチング素子Q5H1をオンに戻す。
【0040】
次に、スイッチング素子Q5H2をオフにしスイッチング素子Q5L2をオンにして2行目の走査電極SC2に走査パルスを印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうち2行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dkに書込みパルスを印加する。すると2行目の放電セルで選択的に書込み放電が起こる。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで行う。
【0041】
その後、走査パルス発生部59のスイッチング素子Q5H1〜Q5Hnをオフ、スイッチング素子Q57をオフ、スイッチング素子Q58をオン、スイッチング素子Q5L1〜Q5Lnをオンにして、走査電極SC1〜SCnに0(V)を印加する。
【0042】
サブフィールドSF1の維持期間では、詳細については後述するが、走査電極SC1〜SCnに第1電圧である正の電圧V53の走査側維持パルスを印加し、維持電極SU1〜SUnに第4電圧である負の電圧V64の維持側維持パルスを印加する。さらにデータ電極D1〜Dmにも電圧V41を印加する。すると書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が発生する。
【0043】
次に、走査電極SC1〜SCnに第2電圧である負の電圧V54の走査側維持パルスを印加し、維持電極SU1〜SUnに第3電圧である正の電圧V63の維持側維持パルスを印加する。さらにデータ電極D1〜Dmにも電圧(V41+V44)を印加する。すると書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が発生する。
【0044】
ここで、維持側維持パルスの振幅(V63−V64)は走査側維持パルスの振幅(V63−V64)よりも大きく設定されている。
【0045】
以下同様に、走査電極SC1〜SCnに第1電圧V53と第2電圧V54とを有する走査側維持パルスを印加し、維持電極SU1〜SUnに第3電圧V63と第4電圧V64とを有する維持側維持パルスを印加し、データ電極D1〜Dmにもパルス状の電圧を印加する。これにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで継続して維持放電を発生させる。ここでそれぞれの電極に印加される維持パルスの数は輝度重みに応じて設定される。
【0046】
なお、データ電極D1〜Dmにもパルス電圧を印加する理由は以下のとおりである。維持期間においてデータ電極D1〜Dmに一定の電圧を印加したと仮定すると、維持側維持パルスの振幅(V63−V64)が大きいため、書込み放電の有無にかかわらず、データ電極D1〜Dmと維持電極SU1〜SUnとの間でも放電が発生するおそれがある。そして書込み放電の有無にかかわらず放電が発生すると正常に画像を表示することができなくなる。そこで本実施の形態においては、維持側維持パルスと同相のパルス電圧をデータ電極D1〜Dmにも印加して、データ電極D1〜Dmと維持電極SU1〜SUnとの間の放電を抑えている。
【0047】
データ電極D1〜Dmに電圧V41を印加するには、スイッチング素子Q42をオフ、スイッチング素子Q4H1〜Q4Hmをオフ、スイッチング素子Q41をオン、スイッチング素子Q4L1〜Q4Lmをオンにすればよい。またデータ電極D1〜Dmに電圧(V41+V44)を印加するには、スイッチング素子Q42をオフ、スイッチング素子Q4L1〜Q4Lmをオフ、スイッチング素子Q41をオン、スイッチング素子Q4H1〜Q4Hmをオンにすればよい。
【0048】
そして維持期間の最後には、データ電極駆動回路32のスイッチング素子Q41をオフ、スイッチング素子Q4H1〜Q4Hmをオフ、スイッチング素子Q42をオン、スイッチング素子Q4L1〜Q4Lmをオンにしてデータ電極D1〜Dmに0(V)を印加する。また維持電極駆動回路34の維持パルス発生部60のすべてのスイッチング素子をオフ、スイッチング素子Q66をオンにして維持電極SU1〜SUnに0(V)を印加する。そして、走査電極駆動回路33のスイッチング素子Q53をオフ、スイッチング素子Q54をオフ、スイッチング素子Q58をオンにし、ランプ電圧発生部55を動作させて、電圧V55に向かって緩やかに上昇するランプ電圧を走査電極SC1〜SCnに印加する。するとこの間に、維持放電を発生した走査電極SCiと維持電極SUiとの間で微弱な消去放電が起こり、データ電極Dk上の正の壁電圧を残したまま、走査電極SCi上および維持電極SUi上の壁電圧を弱める。こうして、維持放電を継続して発生させるための壁電荷を消去する消去動作を行う。以上により、維持期間における維持動作が終了する。
【0049】
続くサブフィールドSF2の初期化期間では、維持電極駆動回路34のスイッチング素子Q66をオフ、スイッチング素子Q65をオンにして維持電極SU1〜SUnに電圧V65を印加する。そして、走査電極駆動回路33のスイッチング素子Q58をオン、Q5L1〜Q5Lnをオンにして走査電極SC1〜SCnに0(V)を印加する。その後、スイッチング素子Q58をオフにするとともにランプ電圧発生部56を動作させる。すると節点P59の電位は電圧V56に向かって緩やかに下降する。こうして電圧V56に向かって緩やかに下降するランプ電圧を走査電極SC1〜SCnに印加する。すると、サブフィールドSF1の維持期間において維持放電を行った放電セルで初期化放電が発生する。このように、サブフィールドSF2の初期化期間は、維持放電を行った放電セルで初期化放電を発生させる選択初期化動作を行う。
【0050】
続く書込み期間、維持期間はサブフィールドSF1の書込み期間、維持期間とほぼ同様であるため説明を省略する。またそれ以降のサブフィールドSF3〜SF10についても維持パルス数を除いてサブフィールドSF2の動作と同様である。
【0051】
なお、本実施の形態において各電極に印加する電圧値は、例えば、電圧V59=100(V)、電圧V55=180(V)、電圧V53=20(V)、電圧V54=−20(V)、電圧V56=−130(V)、電圧V57=−140(V)、電圧V65=100(V)、電圧V63=160(V)、電圧V64=−160(V)、電圧V41=−120(V)、電圧V44=60(V)である。ただしこれらの電圧値は、単に一例を挙げたに過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置30の仕様等に合わせて、適宜最適な値に設定することが望ましい。
【0052】
次に、本発明の主題である維持期間におけるパネル10の駆動方法の詳細について説明する。
【0053】
図8は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置30の維持期間における動作を説明するための回路ブロック図である。図8には、パネル10の電極間容量Cpと、走査電極側の維持パルス発生部50と、維持電極側の維持パルス発生部60とを示し、他の回路ブロックは省略している。また電圧V54および電圧V64は、V54=−(V53)、V64=−(V63)と設定した。
【0054】
走査電極側の維持パルス発生部50は、走査側クランプ部53を備えている。しかし電力回収部は有しない。走査側クランプ部53は、走査電極SC1〜SCnを電圧V53にクランプするためのスイッチング素子Q53、および電圧(−V53)にクランプするためのスイッチング素子Q54を有している。そして走査側クランプ部53は走査パルス発生部59(維持期間中は短絡状態となるため図示せず)を介して電極間容量Cpの一端である走査電極SC1〜SCnに接続されている。
【0055】
走査側クランプ部53は、スイッチング素子Q53を介して走査電極SC1〜SCnを正の電圧V53にクランプし、スイッチング素子Q54を介して走査電極SC1〜SCnを負の電圧(−V53)にクランプする。このようにして走査側クランプ部53は走査側維持パルスの電圧を第1電圧V53または第2電圧(−V53)にクランプする。したがって、走査側クランプ部53による電圧印加時のインピーダンスは小さく、強い維持放電による大きな放電電流を安定して流すことができる。
【0056】
なお本実施の形態においては、IGBTを用いてスイッチング素子Q53、Q54を構成した例を示した。しかし他のスイッチング素子、例えばMOSFET等のスイッチング素子を用いて構成してもよい。
【0057】
維持電極側の維持パルス発生部60は、電力回収部61と維持側クランプ部63とを備えている。電力回収部61は、スイッチング素子Q61、Q62、逆流防止用のダイオードD61、D62、共振用のインダクタL61を有している。ここで、((V63+V64)/2)=0となるため、コンデンサC61は省略した。また、維持側クランプ部63は、維持電極SU1〜SUnを正の電圧V63にクランプするためのスイッチング素子Q63および負の電圧(−V63)にクランプするためのスイッチング素子Q64を有している。そして電力回収部61および維持側クランプ部63はパネル10の電極間容量Cpの一端である維持電極SU1〜SUnに接続されている。
【0058】
電力回収部61は、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間の電極間容量CpとインダクタL61とを共振させて維持側維持パルスの立ち上がりまたは立ち下がりを行う。維持パルスの立ち上がり時には、接地電位からスイッチング素子Q61、ダイオードD61およびインダクタL61を介して電流を流し電極間容量Cpに電荷を移動する。維持パルスの立ち下がり時には、電極間容量Cpに蓄えられた電荷を、インダクタL61、ダイオードD62およびスイッチング素子Q62を介して接地電位に戻す。こうして正の電圧V63から負の電圧(−V63)まで変化する維持側維持パルスの立ち上がりおよび立ち下がりを行う。このように、電力回収部61は電源から電力を供給されることなく共振によって維持電極SU1〜SUnの駆動を行うため、理想的には消費電力が「0」となる。
【0059】
維持側クランプ部63の動作は走査側クランプ部53の動作と同様であるので説明を省略する。
【0060】
なお、本実施の形態においては、IGBTを用いてスイッチング素子Q61〜Q54を構成した例を示した。しかし他のスイッチング素子、例えばMOSFET等のスイッチング素子を用いて構成してもよい。
【0061】
図9は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置30の維持パルスの詳細を示す図であり、そのときのインダクタL61に流れる電流、放電電流、節点P61の電圧も示している。
【0062】
ここでは、維持パルスの繰り返し周期(以下、「維持周期」と略記する)の1周期分をT11〜T14で示した4つの期間に分割し、それぞれの期間について説明する。
【0063】
(期間T11)
時刻t11で電力回収部61のスイッチング素子Q61をオンにする。すると、接地電位からスイッチング素子Q61、ダイオードD61、インダクタL61を通して維持電極SU1〜SUnへ電流が流れ始め、維持電極SU1〜SUnの電圧が上がり始める。そしてインダクタL61と電極間容量Cpとの共振周期の1/2の後には維持電極SU1〜SUnの電圧はほぼ電圧V63まで上昇し、インダクタL61を流れる電流が「0」になる。
【0064】
本実施の形態においては、インダクタL61と電極間容量Cpとの共振周期を放電遅れ時間の2倍よりも短い時間に設定されている。そのため、書込み放電を起こした放電セルでは走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間の電圧差がこの期間に放電開始電圧を超えるが、維持放電が発生することはない。
【0065】
(期間T12)
インダクタL61を流れる電流が「0」になった後の時刻t12で維持側クランプ部63のスイッチング素子Q63をオンにする。すると、維持電極SU1〜SUnの電圧は電圧V63にクランプされる。さらにわずかな時間δt遅れて走査側クランプ部53のスイッチング素子Q53をオフ、スイッチング素子Q54をオンにする。すると、走査電極SC1〜SCnの電圧は電圧(−V53)にクランプされる。
【0066】
維持電極SU1〜SUnが電圧V63にクランプされ、走査電極SC1〜SCnが電圧(−V53)にクランプされると、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間に印加される電圧差は電圧(V53+V63)となる。そして書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間の電圧差が放電開始電圧を超え、さらに放電遅れ時間以上の時間が経過して維持放電が発生する。
【0067】
維持放電が収束した後、維持側の維持パルス発生部60のスイッチング素子Q61、Q63をオフにする。
【0068】
(期間T13)
時刻t13で電力回収部61のスイッチング素子Q62をオンにする。すると、維持電極SU1〜SUnからインダクタL61、ダイオードD62、スイッチング素子Q62を通して接地電位へ電流が流れ始め、維持電極SU1〜SUnの電圧が下がり始める。そしてインダクタL61と電極間容量Cpとの共振周期の1/2の後には、維持電極SU1〜SUnの電圧はほぼ電圧(−V63)まで下降してインダクタL61に流れる電流が「0」になる。
【0069】
上述したように、インダクタL61と電極間容量Cpとの共振周期を放電遅れ時間の2倍よりも短い時間に設定しているため、書込み放電を起こした放電セルでは走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間の電圧差がこの期間に放電開始電圧を超えるが、維持放電が発生することはない。
【0070】
(期間T14)
インダクタL61に流れる電流が「0」になった後の時刻t14で維持側クランプ部63のスイッチング素子Q64をオンにする。すると、維持電極SU1〜SUnの電圧は電圧(−V63)にクランプされる。さらにわずかな時間δt遅れて走査側クランプ部53のスイッチング素子Q54をオフ、スイッチング素子Q53をオンにする。すると、走査電極SC1〜SCnの電圧は電圧V53にクランプされる。
【0071】
維持電極SU1〜SUnが電圧(−V63)にクランプされ、走査電極SC1〜SCnが電圧V53にクランプされると、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間に印加される電圧差は電圧(−V53−V63)となる。そして書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間の電圧差が放電開始電圧を超え、さらに放電遅れ時間以上の時間が経過して維持放電が発生する。
【0072】
維持放電が収束した後、維持側の維持パルス発生部60のスイッチング素子Q62、Q64をオフにする。
【0073】
以上の期間T11〜T14の動作を繰り返すことにより、本実施の形態における維持パルス発生部50、60は走査電極SC1〜SCn、維持電極SU1〜SUnに必要な数の維持パルスを印加する。
【0074】
このように本実施の形態においては、電力回収部61を用いて維持側維持パルスの立ち上がりまたは立ち下がりを行い、電極間容量CpとインダクタL61との共振周期の1/2の時間が経過した以後に維持側クランプ部63を用いて維持電極SU1〜SUnの電圧を第3電圧V63または第4電圧V64にクランプし、維持電極SU1〜SUnの電圧のクランプの以後に走査側クランプ部53を用いて走査電極SC1〜SCnの電圧を第2電圧V54または第1電圧V53にクランプして、維持放電を発生させている。
【0075】
なお本実施の形態においては、インダクタL61と電極間容量Cpとの共振周期は600nsecに設定されており、期間T11および期間T13の長さは300nsecに設定されている。また期間T12および期間T14の長さは2200nsecに設定されている。またわずかな時間δtは50nsecである。
【0076】
また本実施の形態においては、期間T12および期間T14において、維持電極SU1〜SUnの電圧をクランプした後、わずかな時間δt遅れて走査電極SC1〜SCnの電圧をクランプした。しかし期間T12および期間T14において維持パルスが発生する前に走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとをクランプすればよく、走査電極SC1〜SCnの電圧と維持電極SU1〜SUnの電圧とをほぼ同時にクランプしてもよい。
【0077】
期間T11から期間T14で説明したように本実施の形態においては、電極間容量CpとインダクタとL61の共振周期が維持放電の放電遅れ時間の2倍よりも短くなるようにインダクタL61のインダクタンスを設定している。また電力回収部61を用いて走査側維持パルスの立ち上がりまたは立ち下がりを行い、電極間容量CpとインダクタL61との共振周期の1/2の時間が経過してインダクタL61に流れる電流が「0」になった以後に維持側クランプ部63を用いて維持電極SU1〜SUnの電圧を第3電圧V63または第4電圧V64にクランプし、維持電極SU1〜SUnの電圧のクランプと同時またはそれ以後に走査側クランプ部53を用いて走査電極SC1〜SCnの電圧を第2電圧V54または第1電圧V53にクランプして、維持放電を発生させている。これにより、不要輻射を抑制し、安定した維持放電を発生させることができる。
【0078】
このようにしてパネルを駆動することによって不要輻射が抑制される理由について説明する。
【0079】
図8に示した電力回収部61の節点P61(インダクタL61のダイオードD61、D62側の節点)の電圧について注目すると、本実施の形態においては図9に示したように、インダクタL61の電流が「0」になった時点でインダクタL61の両端の電圧が等しくなる。そして節点P61の電圧が電圧V63に上昇するとき、および節点P61の電圧が電圧(−V63)に下降するとき、節点P61に付随するわずかな浮遊容量とインダクタL61とが共振して30MHz以上の高周波成分を持つリンギングが発生する。そしてこのリンギングが減衰しはじめた後に維持放電が発生している。
【0080】
一方、従来の駆動方法によれば、維持放電の発生と同時または維持放電の開始後に、電力回収部のインダクタの一端で高周波成分を持つリンギングが観測されている。
【0081】
このことから、高周波成分を持つリンギングが発生するタイミングと維持放電が発生するタイミングとが重なることにより不要輻射が強くなり、高周波成分を持つリンギングが発生するタイミングと維持放電が発生するタイミングとをずらせることにより不要輻射を抑制することができるのではないかと推察される。そして本実施の形態においては、高周波成分を持つリンギングが減衰しはじめた後に維持放電を発生させるため、リンギングが発生するタイミングと維持放電が発生するタイミングとがずれて不要輻射が抑制されると考えられる。
【0082】
さらに本実施の形態においては、維持側クランプ部63を用いて維持電極SU1〜SUnに電圧V63または電圧(−V63)を印加した後、わずかな時間δt遅れて走査側クランプ部53を用いて走査電極SC1〜SCnに電圧(−V53)または電圧V53を印加している。そのため電力回収部61を用いて印加する電圧よりも大きな電圧が走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間に印加されたタイミングで維持放電が発生する。言い換えると、走査側クランプ部53を用いて走査電極SC1〜SCnに電圧(−V53)または電圧V53を印加する前は、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間には低い電圧しか印加されないので実質的に放電遅れ時間が大きくなる。そのためリンギングが発生するタイミングと維持放電が発生するタイミングとが時間的に離れる。したがって走査電極SC1〜SCnに印加する電圧V53および電圧(−V53)の絶対値を高くすると不要輻射を抑制する上では有利である。しかしながら走査電極側の維持パルス発生部50は電力回収部を有しないので、電圧V53および電圧(−V53)の絶対値を高くすると維持パルス発生部50の消費電力が大きくなる。そこで本実施の形態においては、(電圧V53)≒0.2×(電圧V63)とすることにより、走査電極側の維持パルスの振幅を維持電極側の維持パルスの20%程度に設定している。
【0083】
(実施形態2)
図10は、本発明の実施の形態2におけるプラズマディスプレイ装置の維持パルスの詳細を示す図であり、そのときのインダクタL61に流れる電流、放電電流、節点P61の電圧も示している。
【0084】
実施の形態2が実施の形態1と異なる第1の点は、インダクタL61と電極間容量Cpとの共振周期が必ずしも放電遅れ時間の2倍よりも短い時間に設定されていないことである。そして実施の形態2が実施の形態1と異なる第2の点は、維持側維持パルスの電圧V63および電圧(−V63)の絶対値が、実施の形態1における電圧V63および電圧(−V63)の絶対値よりも小さく設定されており、かつ、走査側維持パルスの電圧V53および電圧(−V53)の絶対値が、実施の形態1における電圧V53および電圧(−V53)の絶対値よりも大きく設定されている点である。
【0085】
ここでも、維持周期の1周期分をT21〜T24で示した4つの期間に分割し、それぞれの期間について詳細に説明する。
【0086】
(期間T21)
時刻t21で電力回収部61のスイッチング素子Q61をオンにする。すると、接地電位からスイッチング素子Q61、ダイオードD61、インダクタL61を通して維持電極SU1〜SUnへ電流が流れ始め、維持電極SU1〜SUnの電圧が上がり始める。そしてインダクタL61と電極間容量Cpとの共振周期の1/2の後には、維持電極SU1〜SUnの電圧はほぼ電圧V63まで上昇し、インダクタL61を流れる電流が「0」になる。
【0087】
本実施の形態においては、インダクタL61と電極間容量Cpとの共振周期を放電遅れ時間の2倍よりも長い時間に設定されている。しかし実施の形態1とは異なり電圧V63を放電開始電圧よりも低く設定している。そのため、書込み放電を起こした放電セルであっても放電開始電圧にいたらず維持放電が発生することはない。
【0088】
(期間T22)
インダクタL61を流れる電流が「0」になった後の時刻t22で維持側クランプ部63のスイッチング素子Q63をオンにする。すると、維持電極SU1〜SUnの電圧は電圧V63にクランプされる。さらに走査側クランプ部53のスイッチング素子Q53をオフ、スイッチング素子Q54をオンにする。すると、走査電極SC1〜SCnの電圧は電圧(−V53)にクランプされる。
【0089】
維持電極SU1〜SUnが電圧V63にクランプされ、走査電極SC1〜SCnが電圧(−V53)にクランプされると、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間に印加される電圧差は電圧(V53+V63)となる。そして書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間の電圧差が放電開始電圧を超えた後放電遅れ時間以上の時間が経過して維持放電が発生する。
【0090】
維持放電が収束した後、維持側の維持パルス発生部60のスイッチング素子Q61、Q63をオフにする。
【0091】
(期間T23)
時刻t23で電力回収部61のスイッチング素子Q62をオンにする。すると、維持電極SU1〜SUnからインダクタL61、ダイオードD62、スイッチング素子Q62を通して接地電位へ電流が流れ始め、維持電極SU1〜SUnの電圧が下がり始める。そしてインダクタL61と電極間容量Cpとの共振周期の1/2の後には、維持電極SU1〜SUnの電圧はほぼ電圧(−V63)まで下降してインダクタL61に流れる電流が「0」になる。
【0092】
上述したように、インダクタL61と電極間容量Cpとの共振周期は放電遅れ時間の2倍よりも長い時間に設定されているが、電圧V63を放電開始電圧よりも低く設定している。そのため、書込み放電を起こした放電セルであっても放電開始電圧にいたらず維持放電が発生することはない。
【0093】
(期間T24)
インダクタL61に流れる電流が「0」になった後の時刻t24で維持側クランプ部63のスイッチング素子Q64をオンにする。すると、維持電極SU1〜SUnは電圧(−V63)にクランプされる。さらに走査側クランプ部53のスイッチング素子Q54をオフ、スイッチング素子Q53をオンにする。すると、走査電極SC1〜SCnの電圧は電圧V53にクランプされる。
【0094】
維持電極SU1〜SUnが電圧(−V63)にクランプされ、走査電極SC1〜SCnが電圧V53にクランプされると、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間に印加される電圧差は電圧(−V53−V63)となる。そして書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間の電圧差が放電開始電圧を超えた後放電遅れ時間以上の時間が経過して維持放電が発生する。
【0095】
維持放電が収束した後、維持側の維持パルス発生部60のスイッチング素子Q62、Q64をオフにする。
【0096】
以上の期間T21〜T24の動作を繰り返すことにより、本実施の形態における維持パルス発生部50、60は走査電極SC1〜SCn、維持電極SU1〜SUnに必要な数の維持パルスを印加する。
【0097】
なお、実施の形態2における電圧値は、例えば、電圧V63=120(V)、電圧V64=−120(V)、電圧V53=60(V)、電圧V54=−60(V)、である。また、インダクタL61と電極間容量Cpとの共振周期は1600nsec、期間T21および期間T23の長さは800nsec、期間T21および期間T23の長さは1700nsecである。
【0098】
なお、本実施の形態においては、期間T22および期間T24において走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとを同時にクランプするとして説明した。しかし必ずしも同時である必要はなく、期間T22および期間T24において維持パルスが発生する前に走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとをクランプすればよい。
【0099】
実施の形態2においては期間T21から期間T24で説明したように、インダクタL61と電極間容量Cpとの共振周期を放電遅れ時間の2倍よりも長い時間に設定している。しかし維持側維持パルスの振幅が低く設定されているため、電力回収用のインダクタL61に流れる電流が「0」になった後に維持放電が発生する。そのため実施の形態2においても、高周波成分を持つリンギングが減衰しはじめた後に維持放電が発生する。したがってリンギングが発生するタイミングと維持放電が発生するタイミングとがずれて不要輻射が抑制される。
【0100】
なお、本実施の形態において用いた具体的な各数値は、単に一例を挙げたに過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて、適宜最適な値に設定することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、パネルで安定した維持放電を発生させるとともに、不要輻射を抑制することができ、パネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置として有用である。
【符号の説明】
【0102】
10 パネル
12 走査電極
13 維持電極
14 表示電極対
22 データ電極
30 プラズマディスプレイ装置
31 画像信号処理回路
32 データ電極駆動回路
33 走査電極駆動回路
34 維持電極駆動回路
35 タイミング発生回路
41,57 基準電位設定部
44 書込みパルス発生部
50,60 維持パルス発生部
53 走査側クランプ部
55,56 ランプ電圧発生部
59 走査パルス発生部
61 電力回収部
63 維持側クランプ部
65 電圧印加部
Cp 電極間容量
L61 インダクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査電極と維持電極とを有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルの、前記走査電極に第1電圧と第2電圧とを有する走査側維持パルスを印加し、前記維持電極に第3電圧と第4電圧とを有する維持側維持パルスを印加して、前記放電セルで維持放電を発生させるプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
前記走査電極と前記維持電極との間の電極間容量とインダクタとを共振させて前記維持側維持パルスの立ち上がりまたは立ち下がりを行う電力回収部と、前記維持側維持パルスの電圧を前記第3電圧または前記第4電圧にクランプする維持側クランプ部とを有する維持電極駆動回路と、前記走査側維持パルスの電圧を前記第1電圧または前記第2電圧にクランプする走査側クランプ部とを有する走査電極駆動回路とを備え、
前記電力回収部を用いて前記維持側維持パルスの立ち上がりまたは立ち下がりを行い、
前記電極間容量と前記インダクタとの共振周期の1/2の時間が経過した以後に前記維持側クランプ部を用いて前記維持電極の電圧を前記第3電圧または前記第4電圧にクランプし、
前記維持電極の電圧のクランプと同時またはそれ以後に前記走査側クランプ部を用いて前記走査電極の電圧を前記第2電圧または前記第1電圧にクランプして、前記維持放電を発生させるプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項2】
前記電極間容量と前記インダクタとの共振周期が前記維持放電の放電遅れ時間の2倍よりも短くなるように、前記インダクタのインダクタンスを設定した請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項3】
走査電極と維持電極とを有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルと、前記走査電極に第1電圧と第2電圧とを有する走査側維持パルスを印加する走査電極駆動回路と、前記維持電極に第3電圧と第4電圧とを有する維持側維持パルスを印加する維持電極駆動回路とを有するプラズマディスプレイ装置であって、
前記維持電極駆動回路は、前記走査電極と前記維持電極との間の電極間容量とインダクタとを共振させて前記維持側維持パルスの立ち上がりまたは立ち下がりを行う電力回収部と、前記維持側維持パルスの電圧を前記第3電圧または前記第4電圧にクランプする維持側クランプ部とを有し、
前記走査電極駆動回路は、前記走査側維持パルスの電圧を前記第1電圧または前記第2電圧にクランプする走査側クランプ部を有し、
前記電力回収部を用いて前記維持側維持パルスの立ち上がりまたは立ち下がりを行い、前記電極間容量と前記インダクタとの共振周期の1/2の時間が経過した以後に前記維持側クランプ部を用いて前記維持電極の電圧を前記第3電圧または前記第2電圧にクランプし、前記維持電極のクランプと同時またはそれ以後に前記走査側クランプ部を用いて前記走査電極の電圧を前記第2電圧または前記第1電圧にクランプして、前記維持放電を発生させるプラズマディスプレイ装置。
【請求項4】
前記電極間容量と前記インダクタとの共振周期が前記維持放電の放電遅れ時間の2倍よりも短くなるように、前記インダクタのインダクタンスを設定した請求項3に記載のプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−257667(P2011−257667A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133621(P2010−133621)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】