説明

プラズマディスプレイパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置

【課題】高精細度のPDPにおいて、十分なサブフィールド数を確保するとともに、短縮化された電極端子ピッチを用いて長期間にわたって安定して駆動する。
【解決手段】プラズマディスプレイパネルの駆動方法は、第1ステップおよび第2ステップを有する。第1ステップは、プラズマディスプレイパネルを構成する複数の所定電極を、少なくとも第1グループおよび第2グループに分割し、第1グループに含まれる電極であって第2グループに隣接する第1所定電極に、維持パルス電圧と維持基準電圧とを繰り返すパルス波形を表す維持パルスを印加することが可能である。第2ステップは、第2グループに含まれる電極であって第1所定電極に隣接する第2所定電極に、走査パルス電圧をピークとするパルス波形を表す走査パルスを印加することが可能である。第1ステップは、第2ステップが走査パルス電圧を印加している間、維持基準電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置に関し、さらに詳しくはプラズマディスプレイパネルを駆動する駆動方法、およびこの駆動方法を用いた表示装置であるプラズマディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)を用いた表示装置においては、交流面放電型プラズマディスプレイ装置が代表的存在となっている。交流面放電型のPDPでは、前面基板と背面基板とを対向配置することにより、多数の放電セルが形成されている。以下、交流面放電型のPDPの構成について説明する。
【0003】
前面基板上には、走査電極と維持電極とからなる表示電極対が、互いに平行になるよう複数対形成されている。また、前面基板上には、表示電極対を覆うように、誘電体層および保護層が積層されて形成されている。背面基板上には、データ電極が互いに平行になるよう複数形成されている。また、背面基板上には、データ電極を覆うように、誘電体層が形成され、さらにその上には、井桁状の隔壁が形成されている。誘電体層の上面と隔壁の側面とからなる空間には、赤色、緑色、青色にそれぞれ発光する蛍光体層が設けられている。
【0004】
上述のように形成された前面基板と背面基板とは、表示電極対とデータ電極とが立体交差するように、微小な放電空間を挟んで対向配置され、その外周部は封着材により封着されている。内部の放電空間には、放電ガスが封入されている。このようにして、表示電極対とデータ電極とが交差する部分には、放電セルが形成される。各放電セル内においては、ガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線により各蛍光体を励起発光させて、カラー表示を行っている。
【0005】
PDPを駆動する構成としては、1フィールドを複数のサブフィールドに分割し、発光させるサブフィールドの組み合わせによって階調表示を行うサブフィールド法が用いられる。各サブフィールドは、初期化期間、書き込み期間、および維持期間を有する。
【0006】
初期化期間では、表示電極対である走査電極および維持電極に、所定の電圧を印加して初期化放電を発生させ、次の書き込み動作に必要な壁電荷を各電極上に形成する。書き込み期間では、走査電極に走査パルスを順次印加するとともに、表示する画像に応じて選択的に放電セルのデータ電極に書き込みパルスを印加して書き込み放電を発生させ、各電極上に壁電荷を形成する。維持期間では、走査電極と維持電極とからなる表示電極対に交互に維持パルスを印加して書き込み放電を起こした放電セルで維持放電を発生させ、放電ガスを励起する。励起された放電ガスが安定状態に遷移する時に発生する紫外線により、対応する放電セルの蛍光体層が励起されて可視光線が発生し、これにより画像表示を行う。
【0007】
また、サブフィールド法の中でも、書き込み期間と維持期間とを時間的に完全分離した、書き込み・維持分離(ADS:Address Display Separated)方式が一般的に用いられている。ADS方式の場合、書き込み放電を発生させる放電セルと維持放電を発生させる放電セルとが、互いに同一タイミングで放電を発生させることがない。したがって、書き込み期間には書き込み放電に最適な条件で、維持期間には維持放電に最適な条件で、PDPを駆動することができる。そのため、放電制御が比較的簡単であり、また、PDPの駆動マージンも大きく設定することができる。
【0008】
その反面、ADS方式では、書き込み期間を除く期間に維持期間を設定するため、PDPの高精細度化等により書き込み期間に要する時間が長くなると、高画質を確保するための十分なサブフィールド数が確保できなくなる。
【0009】
これに対して、例えば特許文献1では、表示電極対を複数のブロックに分割する構成が開示されている。この構成では、複数のブロックのうち、2つ以上のブロックの書き込み期間が時間的に重ならないように、各ブロックにおけるサブフィールドの開始時間をずらしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−157338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来例の構成によれば、隣り合う走査電極間の電圧差が過大となるタイミングが生じ、パネルの電極端子間やプリント基板の配線パターン間で、絶縁破壊によるスパークが発生することがあった。さらに、PDPの走査電極を引き出す電極端子でエレクトロマイグレーション(Electromigration)が発生し、ショートする可能性があった。このため、通常は電極端子のピッチを広げる必要があった。一方では、現在2160ラインあるいは4320ラインといったPDPの高精細度化が進められており、電極端子ピッチを短縮化する必要があった。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、高精細度のPDPにおいて高画質を達成することができ、かつ短縮化された電極端子ピッチを用いて長期間にわたって安定して駆動することができるプラズマディスプレイパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するために、本発明のプラズマディスプレイパネルの駆動方法は、プラズマディスプレイパネルを構成する複数の所定電極を、少なくとも第1グループおよび第2グループに分割し、前記第1グループに含まれる電極であって前記第2グループに隣接する第1所定電極に、維持パルス電圧と維持基準電圧とを繰り返すパルス波形を表す維持パルスを印加することが可能なステップと、前記第2グループに含まれる電極であって前記第1所定電極に隣接する第2所定電極に、走査パルス電圧をピークとするパルス波形を表す走査パルスを印加することが可能なステップと、を有し、前記第1所定電極に印加することが可能なステップは、前記第2所定電極に印加することが可能なステップが前記走査パルス電圧を印加している間、前記維持基準電圧を印加する。
【0014】
さらに、本発明のプラズマディスプレイ装置は、走査電極、維持電極、およびデータ電極を備え、前記走査電極と前記維持電極と前記データ電極との交差部分に放電セルが形成されたプラズマディスプレイパネルと、前記プラズマディスプレイパネルを駆動する、上記に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法に基づいて駆動する装置と、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプラズマディスプレイパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置によれば、少なくとも2つの表示電極対グループにそれぞれ含まれ、互いに隣接する2つの走査電極において、一方の走査電極に走査パルス電圧を印加している間、他方の走査電極に維持基準電圧を印加する。その結果、2つの走査電極間の電位差は、維持パルス電圧の大きさだけ低減することができる。したがって、間隔の狭い2つの走査電極用電極端子の間において、さらにはフレキシブル配線基板の配線間および回路基板の配線間において、絶縁破壊に起因するスパークの発生、およびエレクトロマイグレーションに起因するショートの発生を防止することができる。これにより、高精細度PDPにおける短縮化された電極端子ピッチを用いて、長期間にわたって安定して駆動することが可能となる。さらに、高精細度PDPにおいて、2つの表示電極対グループの一方が書き込み期間の間、他方が維持期間とすることができ、書き込み期間の増加による超高精細度化、維持パルス数の増加による高輝度化、およびサブフィールド数の増加による高コントラスト化などの、プラズマディスプレイパネルの高画質化を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係るPDPの構造を示す分解斜視図
【図2】本発明の実施の形態1に係るPDPの電極配列図
【図3】本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置のブロック図
【図4】本発明の実施の形態1における走査電極駆動回路の回路図
【図5】本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置のサブフィールド構成を示すタイミング図
【図6】本発明の実施の形態1におけるPDPの各電極に印加される駆動電圧波形を示す波形図
【図7】本発明の実施の形態1におけるPDPの前面基板の各電極および電極端子の配置を示す模式的な平面図
【図8】本発明の実施の形態1におけるPDPの電極端子の詳細を示す拡大図
【図9】本発明の実施の形態2におけるPDPの各電極に印加される駆動電圧波形を示す波形図
【図10】本発明の実施の形態3におけるPDPの各電極に印加される駆動電圧波形を示す波形図
【図11】本発明の実施の形態4におけるPDPの各電極に印加される駆動電圧波形を示す波形図
【図12A】本発明の実施の形態における表示電極対グループ数の分割構成を説明する説明図
【図12B】本発明の実施の形態における表示電極対グループ数の別の分割構成を説明する説明図
【図12C】本発明の実施の形態における表示電極対グループ数のさらに別の分割構成を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態に関するいくつかの例について、図面を参照しながら説明する。図面において、実質的に同一の構成、動作、および効果を表す要素については、同一の符号を付す。また、以下において記述される数字は、すべて本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。さらに、ハイ/ローにより表される論理レベルまたはオン/オフにより表されるスイッチング状態は、本発明を具体的に説明するために例示するものであり、例示された論理レベルまたはスイッチング状態の異なる組み合わせにより、同等な結果を得ることも可能である。また、構成要素間の接続関係は、本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。さらに、以下の実施形態は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアを用いて構成されるが、ハードウェアを用いる構成は、ソフトウェアを用いても構成可能であり、ソフトウェアを用いる構成は、ハードウェアを用いても構成可能である。
【0018】
(実施の形態1)
<PDP10の構造>
図1は、PDP(プラズマディスプレイパネル:Plasma Display Panel)10の構造を示す分解斜視図である。図1に示すように、ガラス製の前面基板21上には、走査電極22と維持電極23とで構成された表示電極対24が、複数形成されている。走査電極22および維持電極23は、走査電極22と維持電極23との間の放電ギャップで放電を発生させて光を取り出すために、幅の広い透明電極22aおよび透明電極23aをそれぞれ有する。透明電極22aおよび透明電極23aの上には、幅の狭いバス電極22bおよびバス電極23bが、上述した放電ギャップから遠い位置にそれぞれ積層されている。隣接する表示電極対24の間には、光を遮断するブラックストライプ29が設けられている。また、前面基板21上には、走査電極22、維持電極23、およびブラックストライプ29を覆うように、誘電体層25および保護層26が積層されて形成されている。
【0019】
背面基板31上には、データ電極32が互いに平行になるように、複数形成されている。また、背面基板31上には、データ電極32を覆うように、誘電体層33が形成され、さらにその上には、井桁状の隔壁34が形成されている。誘電体層33の上面と隔壁34の側面とからなる空間には、赤色、緑色、青色にそれぞれ発光する蛍光体層35が設けられている。
【0020】
上述のようにして形成された前面基板21と背面基板31とは、表示電極対24とデータ電極32とが立体的に交差するように、微小な放電空間を挟んで対向配置され、その外周部は、ガラスフリット等の封着材により封着されている。内部の放電空間には、例えば、ネオンとキセノンの混合ガスが、放電ガスとして封入され、隔壁34により複数の区画に仕切られている。このようにして、PDP10が構成され、表示電極対24とデータ電極32とが交差する部分に、放電セルが形成される。各放電セル内においては、ガス放電により発生した紫外線で各蛍光体を励起発光させて、カラー表示を行う。なお、PDP10の構造は上述したものに限られることはなく、例えば、ストライプ状の隔壁34を備えたものであってもよい。
【0021】
図2は、PDP10の電極配列図である。PDP10には、走査電極22(SC1〜SCn、n=2160)および維持電極23(SU1〜SUn、n=2160)が行方向に配列され、データ電極32(D1〜Dm)が列方向に配列されている。すなわちPDP10において、1ライン目は走査電極SC1および維持電極SU1で構成され、2ライン目は走査電極SC2および維持電極SU2で構成され、・・・、nライン目は走査電極SCnおよび維持電極SUnで構成される。ここで、例えばA1〜Anは、A1、A2、・・・、Anと同じ意味であり、Ai(i=1〜n)のようにも記載される。放電セルCij(i=2、j=2)は、例えば、一対の走査電極SC2および維持電極SU2と、1つのデータ電極D2とが交差した部分に形成されており、全体としては放電空間内にn×m個の放電セルCij(i=1〜n、j=1〜m)形成されている。なお、表示電極対24の数nを2160本としたが、これに限られることはなく、特に制限はない。
【0022】
走査電極SC1〜SC2160および維持電極SU1〜SU2160からなる表示電極対24(2160対)は、N個の表示電極対グループDG1、に分けられる。以下では、PDP10を上下方向に2分割して、上半分に位置する表示電極対24(走査電極SC1〜SC1080および維持電極SU1〜SU1080)を表示電極対グループDG1とし、下半分に位置する表示電極対24(走査電極SC1081〜SC2160および維持電極SU1081〜SU2160)を表示電極対グループDG2とする。また、1080本の走査電極SC1〜SC1080を走査電極グループSG1とし、1080本の維持電極SU1〜SU1080を維持電極グループUG1とする。さらに、1080本の走査電極SC1081〜SC2160を走査電極グループSG2とし、1080本の維持電極SU1081〜SU2160を維持電極グループUG2とする。すなわち、走査電極グループSG1および維持電極グループUG1は表示電極対グループDG1に属し、走査電極グループSG2および維持電極グループUG2は表示電極対グループDG2に属している。
【0023】
<プラズマディスプレイ装置100の構成>
図3は、プラズマディスプレイ装置100のブロック図である。プラズマディスプレイ装置100は、プラズマディスプレイパネルの駆動回路40およびPDP10を備えている。プラズマディスプレイパネルの駆動回路40は、画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、タイミング発生回路45、および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
【0024】
タイミング発生回路45は、画像信号SIGの水平同期信号および垂直同期信号に基づいて、各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号S45を生成し、各回路ブロックへ供給する。タイミング発生回路45のうち少なくとも一部は、ワイヤードロジックで構成されてもよいし、タイミング信号S45を生成するプログラムが組み込まれたマイクロコンピュータで構成されてもよい。画像信号処理回路41は、タイミング信号S45に基づいて、画像信号SIGを、各サブフィールドにおいて放電セルCij(i=1〜2160、j=1〜m)の発光・非発光を示す画像データに変換する。
【0025】
データ電極駆動回路42は、データ電極D1〜Dmにそれぞれ対応するm個のスイッチを備える。m個のスイッチのそれぞれは、画像データおよびタイミング信号S45に基づいて、所定の書き込みパルス電圧Vdまたは電圧0(V)を選択する。その結果、データ電極駆動回路42は、iライン目(i=1〜2160)において、j列(j=1〜m)ごとに書き込みパルス電圧Vdまたは電圧0(V)のうちいずれか一方の電圧を表すm系統の電圧信号を生成する。このm系統の電圧信号は、データ書き込みパルス列と呼ばれる。このようにデータ電極駆動回路42は、タイミング信号S45に基づいて、画像データをiライン目(i=1〜2160)ごとにデータ書き込みパルス列に変換し、データ電極D1〜Dmに印加する。
【0026】
走査電極駆動回路43は、タイミング信号S45に基づいて、走査電極SC1〜SC2160を駆動する。また、維持電極駆動回路44は、タイミング信号S45に基づいて、維持電極SU1〜SU2160を駆動する。
【0027】
図4は、走査電極駆動回路43の回路図である。走査電極駆動回路43は、維持パルス発生回路50、初期化波形発生回路60、走査パルス発生回路71、72、中間経路R60、ロー側経路RL1、ロー側経路RL2、および2160系統の電極経路RSCi(i=1〜2160)を備えている。走査電極駆動回路43は、初期化期間において初期化パルス、書き込み期間において走査パルス、および維持期間において維持パルスを生成し、電極経路RSCiを介して走査電極SCiに、それぞれ印加することが可能である(i=1〜2160)。1080系統の電極経路RSCi(i=1〜1080)は電極経路グループRSG1と呼ばれ、1080系統の電極経路RSCi(i=1081〜2160)は電極経路グループRSG2と呼ばれる。すなわち、走査電極駆動回路43は、初期化パルス、走査パルス、および維持パルスを、電極経路グループRSG1を介して走査電極グループSG1に、および電極経路グループRSG2を介して走査電極グループSG2に、印加することが可能である。
【0028】
維持パルス発生回路50は、維持ハイ側スイッチQsusH、維持ロー側スイッチQsusL、電力回収部50a、および電源経路Rsを備えている。電力回収部50aは、電力回収用のコンデンサ(図示無し)、スイッチング素子(図示無し)、およびダイオード(図示無し)を備えている。維持ハイ側スイッチQsusHの一端は、電源経路Rsを介して電源Esに接続可能である。維持ハイ側スイッチQsusHの他端は、電力回収部50aを介して、中間経路R60および維持ロー側スイッチQsusLの一端に接続され、維持ロー側スイッチQsusLの他端は接地される。
【0029】
電源Esは、所定の維持パルス電圧Vsを発生する。維持パルス電圧Vsは、例えば正電圧である。維持ハイ側スイッチQsusHは、電源経路Rsを介して維持パルス電圧Vsを受ける。維持パルス発生回路50は、維持ハイ側スイッチQsusHがオンされ電力回収部50aの両端が導通され維持ロー側スイッチQsusLがオフされることにより、中間経路R60を維持パルス電圧Vsに保持する。さらに維持パルス発生回路50は、維持ハイ側スイッチQsusHがオフされ電力回収部50aの両端が遮断され維持ロー側スイッチQsusLがオンされることにより、中間経路R60を接地電圧に保持する。なお、維持ロー側スイッチQsusLの他端は、維持基準電圧を生成する所定電源に接続されてもよい。この場合、維持パルス発生回路50は、維持ハイ側スイッチQsusHがオフされ維持ロー側スイッチQsusLがオンされることにより、中間経路R60を維持基準電圧に保持する。
【0030】
電力回収部50aは、走査電極22と維持電極23との間の電極間容量と、電力回収部50a内部のインダクタとをLC共振させる。さらに電力回収部50aは、このLC共振に基づいて、電力回収用のコンデンサから電極間容量へと電力を供給することにより、接地電圧から維持パルス電圧Vsへの維持パルスの立ち上がり動作を行う。同様に、電力回収部50aは、このLC共振に基づいて、電極間容量から電力回収用のコンデンサへと電力を回収することにより、維持パルス電圧Vsから接地電圧への維持パルスの立ち下がり動作を行う。このように、維持パルス発生回路50は、電力回収部50aによる維持パルスの立ち上がり/立ち下がり動作、ならびに維持ハイ側スイッチQsusHおよび維持ロー側スイッチQsusLによる維持パルス電圧Vs/接地電圧(または維持基準電圧)の保持動作によって維持パルスを生成し、中間経路R60へ出力する。維持パルスは、立ち上がりの状態、維持パルス電圧Vsの状態、立ち下がりの状態、および接地電圧(または維持基準電圧)の状態の4つの状態を繰り返すパルス波形を表す。維持パルスの立ち上がり/立ち下がりを無視すれば、維持パルスは、維持パルス電圧Vsおよび接地電圧(または維持基準電圧)の2つの電圧を繰り返すパルス波形を表すともいうことができる。電力回収部50aは、維持パルスの立ち上がりの状態から維持パルス電圧Vsの状態を経て立ち下がりの状態へと状態が経過する間、導通状態にあり、接地電圧の状態の間、遮断状態にある。
【0031】
このように、電力回収部50aは、電源から電力を供給されずに、LC共振に基づく電力の回収および供給動作により、走査電極22および維持電極23の駆動を行うことができるため、理想的には消費電力をゼロにすることができる。なお、上述した各スイッチは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)およびIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等のスイッチング素子を用いて構成することができる。
【0032】
初期化波形発生回路60は、初期化ハイ側スイッチQsetH、初期化ロー側スイッチQsetL、走査ハイ側スイッチQadH1、走査ロー側スイッチQadL1、走査ハイ側スイッチQadH2、走査ロー側スイッチQadL2、電源経路Rset、および電源経路Radを備えている。初期化ハイ側スイッチQsetHの一端は、電源経路Rsetを介して電源Esetに接続可能である。初期化ハイ側スイッチQsetHの他端は、中間経路R60を介して初期化ロー側スイッチQsetLの一端に接続され、初期化ロー側スイッチQsetLの他端は、維持ハイ側スイッチQsusHの他端に接続される。走査ハイ側スイッチQadH1の一端は中間経路R60に接続され、走査ハイ側スイッチQadH1の他端は、ロー側経路RL1および走査ロー側スイッチQadL1の一端に接続される。走査ロー側スイッチQadL1の他端は、電源経路Radを介して電源Eadに接続可能である。同様に、走査ハイ側スイッチQadH2の一端は中間経路R60に接続され、走査ハイ側スイッチQadH2の他端は、ロー側経路RL2および走査ロー側スイッチQadL2の一端に接続される。走査ロー側スイッチQadL2の他端は、電源経路Radを介して電源Eadに接続可能である。
【0033】
電源Esetは、所定の初期化パルス電圧Vsetを発生する。初期化パルス電圧Vsetは、例えば正電圧である。初期化ハイ側スイッチQsetHは、電源経路Rsetを介して初期化パルス電圧Vsetを受ける。さらに初期化ハイ側スイッチQsetHは、初期化期間においてオンされることにより、初期化パルス電圧Vsetまで緩やかに上昇する傾斜波形電圧Vup(図6において後述する)を生成し、中間経路R60へ出力する。傾斜波形電圧Vupが生成されている間、各走査ロー側スイッチQadL1、QadL2はオフされている。このため、走査ハイ側スイッチQadH1、QadH2は、初期化期間においてオンされることにより、傾斜波形電圧Vupをそれぞれロー側経路RL1、RL2へ出力する。電源Eadは、所定の走査パルス電圧Vadを発生する。走査パルス電圧Vadは、例えば負電圧である。各走査ロー側スイッチQadL1、QadL2は、電源経路Radを介して走査パルス電圧Vadを受ける。初期化波形発生回路60は、初期化期間において走査ハイ側スイッチQadH1、QadH2がオフされ走査ロー側スイッチQadL1、QadL2がオンされることにより、走査パルス電圧Vadまで緩やかに下降する傾斜波形電圧Vdw(図6において後述する)を生成し、それぞれロー側経路RL1、RL2へ出力する。このように、初期化波形発生回路60は、傾斜波形電圧Vupおよび傾斜波形電圧Vdwを含む初期化パルスを生成し、各ロー側経路RL1、RL2へ出力する。
【0034】
初期化ハイ側スイッチQsetHおよび各走査ロー側スイッチQadL1、QadL2は、緩やかに変化する傾斜波形電圧Vup、Vdwを生成するために、例えば初期化期間ではミラー積分機能を有している。初期化ロー側スイッチQsetLおよび各走査ハイ側スイッチQadH1、QadH2は、分離スイッチであり、維持パルス発生回路50および初期化波形発生回路60を構成するスイッチング素子の寄生ダイオードを介して電流が逆流するのを防止するために設けられている。
【0035】
さらに走査ロー側スイッチQadL1、QadL2は、書き込み期間ではミラー積分機能を有しない。各走査ロー側スイッチQadL1、QadL2は、例えば、ミラー積分機能を有するスイッチとミラー積分機能を有しないスイッチとの並列構成になっている(図示されていない)。傾斜波形電圧Vdwの生成時には、ミラー積分機能を有するスイッチがオンされ、書き込み期間ではミラー積分機能を有しないスイッチがオンされる。初期化波形発生回路60は、書き込み期間において走査ハイ側スイッチQadH1がオフされ走査ロー側スイッチQadL1がオンされることにより、走査パルス電圧Vadをロー側経路RL1へ出力する。同様に、初期化波形発生回路60は、書き込み期間において走査ハイ側スイッチQadH2がオフされ走査ロー側スイッチQadL2がオンされることにより、走査パルス電圧Vadをロー側経路RL2へ出力する。さらに、初期化波形発生回路60は、維持期間において走査ハイ側スイッチQadH1がオンされ走査ロー側スイッチQadL1がオフされることにより、中間経路R60へ出力された維持パルスをロー側経路RL1へ出力する。同様に、初期化波形発生回路60は、維持期間において走査ハイ側スイッチQadH2がオンされ走査ロー側スイッチQadL2がオフされることにより、中間経路R60へ出力された維持パルスをロー側経路RL2へ出力する。
【0036】
走査パルス発生回路71は、電源Ey1、スイッチグループ部YG1、およびハイ側経路RH1を備えている。スイッチグループ部YG1は、1080個のスイッチ部Yi(i=1〜1080)を備えている。スイッチ部Yiは、差電圧ハイ側スイッチQHiおよび差電圧ロー側スイッチQLiを備えている(i=1〜1080)。電源Ey1の負極はロー側経路RL1に接続され、電源Ey1の正極はハイ側経路RH1に接続される。差電圧ハイ側スイッチQHiの一端はハイ側経路RH1に接続され、差電圧ハイ側スイッチQHiの他端は電極経路RSCiおよび差電圧ロー側スイッチQLiの一端に接続される(i=1〜1080)。差電圧ロー側スイッチQLiの他端は、ロー側経路RL1に接続される(i=1〜1080)。
【0037】
電源Ey1は、所定の走査差電圧Vyを発生する。ロー側経路RL1における電圧はロー側電圧VL1と呼ばれ、ハイ側経路RH1における電圧はハイ側電圧VH1と呼ばれる。ハイ側電圧VH1は、ロー側電圧VL1よりも走査差電圧Vyだけ高い。スイッチ部Yiは、差電圧ハイ側スイッチQHiがオフされ差電圧ロー側スイッチQLiがオンされることによりロー側経路RL1を選択し、ロー側電圧VL1を電極経路RSCiへ出力する(i=1〜1080)。さらにスイッチ部Yiは、差電圧ハイ側スイッチQHiがオンされ差電圧ロー側スイッチQLiがオフされることによりハイ側経路RH1を選択し、ハイ側電圧VH1を電極経路RSCiへ出力する(i=1〜1080)。
【0038】
走査パルス発生回路72は、電源Ey2、スイッチグループ部YG2、およびハイ側経路RH2を備えている。スイッチグループ部YG2は、1080個のスイッチ部Yi(i=1081〜2160)を備えている。スイッチ部Yiは、差電圧ハイ側スイッチQHiおよび差電圧ロー側スイッチQLiを備えている(i=1081〜2160)。走査パルス発生回路72内のこれらの構成要素は、走査パルス発生回路71の場合と同様に接続される。
【0039】
電源Ey2は、走査差電圧Vyを発生する。ロー側経路RL2における電圧はロー側電圧VL2と呼ばれ、ハイ側経路RH2における電圧はハイ側電圧VH2と呼ばれる。ハイ側電圧VH2は、ロー側電圧VL2よりも走査差電圧Vyだけ高い。スイッチ部Yiは、差電圧ハイ側スイッチQHiがオフされ差電圧ロー側スイッチQLiがオンされることによりロー側経路RL2を選択し、ロー側電圧VL2を電極経路RSCiへ出力する(i=1081〜2160)。さらにスイッチ部Yiは、差電圧ハイ側スイッチQHiがオンされ差電圧ロー側スイッチQLiがオフされることによりハイ側経路RH2を選択し、ハイ側電圧VH2を電極経路RSCiへ出力する(i=1081〜2160)。
【0040】
走査パルス発生回路71は、ロー側電圧VL1またはハイ側電圧VH1のうちいずれか一方の電圧を選択し、選択された電圧を同時にすべての電極経路RSCi(i=1〜1080)へ出力してもよい。さらに走査パルス発生回路71は、ロー側電圧VL1またはハイ側電圧VH1のうちいずれか一方の電圧を、電極経路RSCi(i=1〜1080)のうち少なくとも1系統の電極経路へ出力している間、他方の電圧を残りの電極経路へ出力してもよい。走査パルス発生回路71は、初期化期間および電極経路グループRSG1の維持期間において、ロー側電圧VL1を、同時にすべての電極経路RSCi(i=1〜1080)へ出力する。
【0041】
電極経路グループRSG1の維持期間において、走査ハイ側スイッチQadH1はオンされ走査ロー側スイッチQadL1はオフされる。これにより、走査パルス発生回路71は、中間経路R60へ出力された維持パルスを、ロー側経路RL1を介して同時にすべての電極経路RSCi(i=1〜1080)へ出力する。さらに走査パルス発生回路71は、初期化期間において、ロー側経路RL1へ出力された初期化パルスを同時にすべての電極経路RSCi(i=1〜1080)へ出力する。
【0042】
走査パルス発生回路71は、書き込み期間においてロー側経路RL1へ出力された走査パルス電圧Vadよりも走査差電圧Vyだけ高い電圧を表す走査基準電圧Vc(図6において後述する)を生成し、ハイ側経路RH1を走査基準電圧Vcにする。各スイッチ部Yi(i=1〜1080)は、書き込み期間内の所定のタイミングにおいて、走査パルスの幅に対応する期間だけ走査パルス電圧Vadを選択し、書き込み期間における残りの期間では走査基準電圧Vcを選択することにより、走査パルスを生成する。さらにスイッチ部Yi(i=1〜1080)のうち1個のスイッチ部が走査パルス電圧Vadを選択している間、残りの1079個のスイッチ部は走査基準電圧Vcを選択する。これにより、1080個のスイッチ部Yiは、互いに異なるタイミングで走査パルスを生成し、それぞれ1080系統の電極経路RSCiへ出力する(i=1〜1080)。すなわち、スイッチグループ部YG1は、書き込み期間において、互いに異なる1080系統のタイミングで走査パルス電圧Vadおよび走査基準電圧Vcを順次選択することにより、1080系統の互いに異なるタイミングの走査パルスを生成し、電極経路グループRSG1へ出力する。走査パルスは、走査パルス電圧Vadをピークとするパルス波形を表す。
【0043】
走査パルス発生回路72は、走査パルス発生回路71の場合と同様に動作する。
【0044】
ここで、走査差電圧Vy以外の上述した電圧(例えば、維持パルス電圧Vs、初期化パルス電圧Vset、走査パルス電圧Vad、および接地電圧など)は、その電圧に対応する電位の、接地電位からの電位差を表している。接地電圧は実質的にゼロボルトであり、接地電圧に対応する電位は接地電位である。また、図4において上述した走査電極駆動回路43内の各スイッチ(電力回収部50a内のスイッチも含む)は、タイミング発生回路45からのタイミング信号S45をそのスイッチの制御端子(スイッチがMOSFETまたはIGBTの場合、ゲート端子)に受ける。さらにこの各スイッチは、タイミング信号S45により制御され、オン/オフされる。図示を簡単にするために、走査電極駆動回路43内におけるタイミング信号S45の配線の図示は、省略されている。
【0045】
<PDP10の駆動構成>
図5は、1フィールド期間Tf内におけるサブフィールド構成を示すタイミング図である。図5の(a)、(b)、(c)、および(d)において、縦軸は走査電極SC1〜SC2160を示し、横軸は時間tを示している。また、書き込み動作を行うタイミングを表す書き込みタイミングtWは太い実線で示し、各維持期間Ts1、Ts2、・・・はハッチングで示している。消去期間は、各維持期間Ts1、Ts2、・・・の直後に設けられる。なお以下の説明では、1フィールド期間Tfは16.7msとしている。
【0046】
まず、図5(a)に示すように、1フィールド期間Tfの最初に、すべての放電セルで一斉に初期化放電を発生させる初期化期間Tinを設ける。一例として、初期化期間Tinは500μsとする。
【0047】
次に、初期化期間Tinの後、1フィールド期間Tf内のサブフィールド数を最大にするために、走査パルス幅を可能な限り短くするとともに、書き込みタイミングtWに示すように連続して書き込み動作を行う。ここで、図5(b)に示す全書き込み期間Twを見積もる。全書き込み期間Twは、走査電極SC1〜SC2160のすべてに走査パルスを順次印加するために要する期間を表す。一例として、走査電極1本あたりの書き込み動作に要する期間は、0.7μsとする。走査電極の数が2160本であるため、全書き込み期間Twは、0.7×2160=1512μsとなる。
【0048】
次に、サブフィールド数を見積もる。当初は、消去期間を無視する。1フィールド期間Tfから初期化期間Tinを引いて、全書き込み期間Twで割ると、(16.7−0.5)/1.5=10.8となる。その結果、図5(c)に示すように、最大で10個のサブフィールドSF1〜SF10を確保できることがわかる。
【0049】
このように、1フィールド期間Tfにおけるサブフィールド数を10個とし、図2において上述したように、表示電極対グループを2個とした場合、例えば図5(d)に示すようなサブフィールド構成にすることができる。すなわち、維持期間Ts1〜Ts10は、それぞれサブフィールドSF1〜SF10において、書き込み期間Tw1の後に設けられる。走査電極グループSG1に対するサブフィールドSFq(q=1〜10)の維持期間Tsqは、走査電極グループSG2に対するサブフィールドSFqの書き込み期間Tw1と、時間的に並行して設定される。さらに、走査電極グループSG2に対するサブフィールドSFq(q=1〜9)の維持期間Tsqは、走査電極グループSG1に対するサブフィールドSF(q+1)の書き込み期間Tw1と、時間的に並行して設定される。
【0050】
<PDP10の駆動電圧波形の詳細とその動作>
図6は、PDP10の各電極に印加される駆動電圧波形を示す波形図である。各スイッチQadH1、QadH2、QsusL、QsusHの波形は、該当するスイッチの制御端子が受けるタイミング信号S45を表している。タイミング信号S45のハイレベルまたはローレベルに対応して、該当するスイッチがそれぞれオン状態またはオフ状態となる。電力回収部50aの波形は、ハイレベルとなるときに、図4において上述したような、LC共振に基づく電力の回収および供給動作を行っている状態を示している。走査電極グループSG1およびSG2、維持電極グループUG1およびUG2、およびデータ電極D1〜mの各波形は、図3および図4において上述したように、各電極へ印加される電圧波形を示している。すなわち、走査電極グループSG1、SG2の波形は、タイミング信号S45に基づいて、走査電極駆動回路43によって印加される電圧波形を示している。同様に、維持電極グループUG1、UG2の波形は、タイミング信号S45に基づいて、維持電極駆動回路44によって印加される電圧波形を示している。同様に、データ電極D1〜mの波形は、タイミング信号S45に基づいて、データ電極駆動回路42によって印加される電圧波形を示している。図6におけるこのような各波形は、表示電極対グループDG1、DG2のそれぞれで特定される各期間(図6の最上部に示す)に関連付けられて、生成される。
【0051】
初期化期間Tinでは、データ電極D1〜Dmおよび維持電極SU1〜SU2160に、それぞれ電圧0(V)を印加する。走査電極SC1〜SC2160には、正の放電開始電圧よりも低い正の所定電圧Vi1から、放電開始電圧を超える正の所定電圧Vi2に向かって、緩やかに上昇する傾斜波形電圧Vupを印加する。この傾斜波形電圧Vupが上昇する間に、走査電極SC1〜SC2160と維持電極SU1〜SU2160との間、および走査電極SC1〜SC2160とデータ電極D1〜Dmとの間で、微弱な初期化放電が発生する。これにより、走査電極SC1〜SC2160上には、負の壁電圧が蓄積されるとともに、データ電極D1〜Dm上および維持電極SU1〜SU2160上には、正の壁電圧が蓄積される。ここで、電極上の壁電圧とは、電極を覆う誘電体層上、保護層上、および蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
【0052】
次に、維持電極SU1〜SU2160には、正の所定電圧Ve2を印加する。走査電極SC1〜SC2160には、正の放電開始電圧よりも低い正の所定電圧Vi3から、負の放電開始電圧を負方向に超える負の所定電圧Vi4に向かって、緩やかに下降する傾斜波形電圧Vdwを印加する。この傾斜波形電圧Vdwが下降する間に、走査電極SC1〜SC2160と維持電極SU1〜SU2160との間、および走査電極SC1〜SC2160とデータ電極D1〜Dmとの間で、微弱な初期化放電が発生する。これにより、走査電極SC1〜SC2160上の負の壁電圧および維持電極SU1〜SU2160上の正の壁電圧が弱められるとともに、データ電極D1〜Dm上の正の壁電圧は書き込み動作に適した値に調整される。その後、走査電極SC1〜SC2160に走査基準電圧Vcを印加する。このとき、走査ハイ側スイッチQadH1、QadH2は、オフされることにより、それぞれロー側経路RL1、RL2を中間経路R60から遮断する。これで、すべての放電セルに対して初期化放電を行う初期化動作を終了し、初期化期間Tinを終える。
【0053】
初期化期間Tin終了後、表示電極対グループDG1では、サブフィールドSF1における書き込み期間Tw1を開始する。具体的には、維持電極グループUG1には、正の所定電圧Ve2よりも低い正の所定電圧Veを印加する。1ライン目の走査電極SC1には、負の走査パルス電圧Vadをピークとする走査パルスを印加するとともに、1ライン目において発光させるべき放電セルのデータ電極Dj(j=1〜m)には、正の書き込みパルス電圧Vdをピークとする書き込みパルスを印加する。このとき、データ電極Djと走査電極SC1との交差部における電圧差は、データ電極駆動回路42および走査電極駆動回路43による印加電圧の差(書き込みパルス電圧Vd−走査パルス電圧Vad)に、データ電極Dj上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差を加算したものとなり、放電開始電圧を超える。これにより、データ電極Djと走査電極SC1との間で放電が開始され、続いて維持電極SU1と走査電極SC1との間の放電へと進展し、書き込み放電が発生する。その結果、走査電極SC1上には、正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上およびデータ電極Dj上には、負の壁電圧が蓄積される。
【0054】
一方、書き込みパルス電圧Vdを印加しなかったデータ電極Djと走査電極SC1との交差部の電圧は、放電開始電圧を超えないので、書き込み放電は発生しない。
【0055】
次に、1ライン目の書き込み終了後に、2ライン目の走査電極SC2に走査パルス電圧Vadを印加するとともに、2ライン目において発光させるべき放電セル(1ライン目において発光させるべき放電セルとは変わってもよい)のデータ電極Djに書き込みパルス電圧Vdを印加する。このとき、走査パルス電圧Vadと書き込みパルス電圧Vdとが同時に印加された2ライン目の放電セルでは、書き込み放電が発生し、書き込み動作が行われる。走査電極SC2に走査パルスを印加するタイミングは、走査電極SC1の走査パルス印加終了後いつでもよいが、書き込み期間Tw1をできる限り短くするために、走査電極SC1の走査パルス印加終了直後に設定される。
【0056】
上述した書き込み動作を表示電極対グループDG1に属する1080ライン目の走査電極SC1080に至るまで繰り返し、発光させるべき放電セルに対して選択的に書き込み放電を発生させて、各電極上に壁電荷を形成する。走査電極グループSG1に走査パルスを印加している間、データ電極D1〜Dmにはiライン目(i=1〜1080)ごとに異なるデータ書き込みパルス列が印加される。
【0057】
表示電極対グループDG1がサブフィールドSF1における書き込み期間Tw1の間、表示電極対グループDG2に属する走査電極グループSG2には走査基準電圧Vcが、維持電極グループUG2には正の所定電圧Veが、印加されたままである。このように、表示電極対グループDG1におけるサブフィールドSF1の書き込み期間Tw1は、表示電極対グループDG2に対しては、放電の発生しない休止期間Tidとなる。
【0058】
表示電極対グループDG1では、サブフィールドSF1における書き込み期間Tw1の終了後、サブフィールドSF1における維持期間Ts1を開始する。走査ハイ側スイッチQadH1は、オンされることにより、ロー側経路RL1を中間経路R60に導通させる。具体的には、走査電極グループSG1に正の維持パルス電圧Vsを印加するとともに、維持電極グループUG1に電圧0(V)を印加する。このとき、書き込み放電を発生させた放電セルでは、走査電極SCiと維持電極SUiとの電圧差が、維持パルス電圧Vsに、走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差を加算したものとなり、放電開始電圧を超える(i=1〜1080)。これにより、走査電極SCiと維持電極SUiとの間で維持放電が発生し、放電ガスを励起する。励起された放電ガスが安定状態に遷移するときに発生した紫外線により、蛍光体層35が発光する。その結果、走査電極SCi上には、負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上およびデータ電極Dj上には、正の壁電圧が蓄積される。
【0059】
一方、書き込み期間Tw1において、書き込み放電を発生させなかった放電セルでは、維持放電は発生せず、初期化期間Tinの終了時における各電極上の壁電圧が保たれる。
【0060】
次に、走査電極グループSG1に電圧0(V)を印加し、維持電極グループUG1に正の維持パルス電圧Vsを印加する。このとき、維持放電を発生させた放電セルでは、維持電極SUiと走査電極SCiとの電圧差が放電開始電圧を超えるので、再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間で維持放電が発生する。その結果、維持電極SUi上には、負の壁電圧が蓄積され、走査電極SCi上およびデータ電極Dj上には、正の壁電圧が蓄積される。
【0061】
以降同様に、走査電極グループSG1と維持電極グループUG1とに交互に維持パルス電圧Vsを印加して、走査電極グループSG1と維持電極グループUG1との間に電位差を与えることにより、書き込み期間Tw1において書き込み放電を発生させた放電セルで、維持放電が継続して行われる。ここで、走査電極グループSG1は、維持ハイ側スイッチQsusHがオンされている間、維持パルス電圧Vsとなり、維持ロー側スイッチQsusLがオンされている間、すなわち電力回収回路50aが遮断状態の間、電圧0(V)となる。
【0062】
維持期間Ts1終了後には、消去期間Teが設けられている。消去期間Teでは、正の所定電圧Vrに向かって緩やかに上昇する傾斜波形電圧を走査電極グループSG1に印加することにより、走査電極グループSG1と維持電極グループUG1との間に電圧差を与えている。これにより、データ電極Dj上の正の壁電圧を残したまま、走査電極SCi上および維持電極SUi上の壁電圧を消去する。表示電極対グループDG1は、消去期間Teの終了により、サブフィールドSF1を終える。
【0063】
表示電極対グループDG1がサブフィールドSF1における維持期間Ts1の間、表示電極対グループDG2では書き込み動作が行われる。走査ハイ側スイッチQadH2はオフされており、ロー側経路RL2は中間経路R60から遮断された状態を維持している。具体的には、初期化期間Tin終了後、表示電極対グループDG2では、休止期間Tidを経て、サブフィールドSF1における書き込み期間Tw1を開始する。書き込み期間Tw1では、維持電極グループUG2には、正の所定電圧Veを印加する。
【0064】
次に、走査電極グループSG2の書き込み動作を説明する。上述したように、表示電極対グループDG1におけるサブフィールドSF1の書き込み期間Tw1では、PDP10における画面の1ライン目から1080ライン目へ、ラインの整列順に従って、それぞれ走査電極SC1〜SC1080に順次走査パルスを印加していた。表示電極対グループDG2の書き込み期間Tw1では、表示電極対グループDG1が維持期間Ts1中であるので、表示電極対グループDG2の2ライン目となる走査電極SC1082に、1ライン目よりも先に走査パルスを印加する。その後、維持期間Ts1中にある走査電極グループSG1の電圧が接地電圧となるタイミングで、表示電極対グループDG2の1ライン目となる走査電極SC1081に、負の走査パルス電圧Vadをピークとする走査パルスを印加する。このように走査パルスの順序を変更することで、複数グループ間の境界ラインにおいて互いに隣接する走査電極SC1081と走査電極SC1080との電位差は走査パルス電圧Vadの大きさに等しくなる。その結果、走査電極SC1081、SC1080間の電位差は、変更前の電位差(Vs+Vad)から維持パルス電圧Vsの大きさだけ低減される。
【0065】
具体的には、最初に、1082ライン目の走査電極SC1082に、負の走査パルス電圧Vadをピークとする走査パルスを印加するとともに、1082ライン目において発光させるべき放電セルのデータ電極Dj(j=1〜m)には、正の書き込みパルス電圧Vdをピークとする、1082ライン目に対応する書き込みパルスを印加する。このとき、データ電極Djと走査電極SC1082との交差部における電圧差は、データ電極駆動回路42および走査電極駆動回路43による印加電圧の差(書き込みパルス電圧Vd−走査パルス電圧Vad)に、データ電極Dj上の壁電圧と走査電極SC1082上の壁電圧との差を加算したものとなり、放電開始電圧を超える。これにより、データ電極Djと走査電極SC1082との間で放電が開始され、続いて維持電極SU1082と走査電極SC1082との間の放電へと進展し、書き込み放電が発生する。その結果、走査電極SC1082上には、正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1082上およびデータ電極Dj上には、負の壁電圧が蓄積される。
【0066】
次に、表示電極対グループDG2の2ライン目の書き込み終了後に、3ライン目となる走査電極SC1083に走査パルス電圧Vadを印加するとともに、3ライン目において発光させるべき放電セルのデータ電極Djに書き込みパルス電圧Vdを印加する。このとき、走査パルス電圧Vadと書き込みパルス電圧Vdとが同時に印加された3ライン目の放電セルでは、書き込み放電が発生し、書き込み動作が行われる。
【0067】
上述した書き込み動作を表示電極対グループDG2に属する2160ライン目の放電セルに至るまで繰り返し、発光させるべき放電セルに対して選択的に書き込み放電を発生させて、各電極上に壁電荷を形成する。走査電極グループSG2に走査パルスを印加している間、データ電極D1〜Dmにはiライン目(i=1081〜2160)ごとに異なるデータ書き込みパルス列が印加される。
【0068】
書き込み動作を繰り返す際に、表示電極対グループDG2の1ライン目における表示電極SC1081の走査パルスのタイミングを決定するために、走査電極グループSG1の電圧が接地電圧となる状態を検出する。走査電極グループSG1の電圧が接地電圧となるのは、維持ロー側スイッチQsusLが受けるタイミング信号S45がハイレベル、かつ走査ハイ側スイッチQadH1が受けるタイミング信号S45がハイレベルの状態である。このため、その2系統のタイミング信号S45を検出し、表示電極対グループDG2の1ライン目の走査パルスを印加する。
【0069】
図6において、表示電極SC1081は、表示電極SC1082の書き込み時点よりも期間Ta1だけ遅れた時点ta1において、走査パルスを印加される。このとき、維持ロー側スイッチQsusLおよび走査ハイ側スイッチQadH1のタイミング信号S45は、ともにハイレベルになっている。また時点ta1は、走査電極グループSG1の維持期間Ts1において、最初の維持パルス電圧Vsが印加され、続いて接地電圧が印加された(すなわち、維持ロー側スイッチQsusLがオン状態になった)時点以降、走査パルスを印加するタイミングが来た時点となっている。したがって、走査パルスは、走査電極グループSG2に対して、例えば走査電極SC1082、SC1083、・・・、SC(1081+k)、SC1081、SC(1082+k)、・・・、SC2160の順番で印加される。走査電極SC1081に印加されるまでに、k本の走査電極SC1082〜SC(1081+k)に印加される。kは、電力回収部50aが導通状態となる期間を走査パルスの幅で割り算し、商の小数点以下を切り上げることで求められる。
【0070】
タイミング発生回路45は、画像信号SIGに基づいて、上述した走査パルスの走査電極グループSG2への印加タイミングを含むタイミング信号S45を生成する。走査電極駆動回路43において、走査パルス発生回路72は、タイミング信号S45に基づいて、上述した順番の走査パルスを生成し、走査電極グループSG2に順次印加する。さらに、データ電極駆動回路42は、タイミング信号S45に基づいて、上述した順番の走査パルスに対応するデータ書き込みパルス列を生成し、データ電極D1〜Dmに印加する。すなわち、データ書き込みパルス列は、1082ライン目、1083ライン目、・・・、(1081+k)ライン目、1081ライン目、(1082+k)ライン目、・・・、2160ライン目の順番で生成される。
【0071】
表示電極対グループDG2では、表示電極対グループDG1と同様、サブフィールドSF1での書き込み期間Tw1が終了すると、維持期間Ts1、消去期間Te、そしてサブフィールドSF2における書き込み期間Tw1へと移る。表示電極対グループDG2における維持期間Ts1および消去期間Teの動作は、上述した表示電極対グループDG1における維持期間Ts1および消去期間Teの動作と同様である。
【0072】
表示電極対グループDG2がサブフィールドSF1の維持期間Ts1の間、表示電極対グループDG1はサブフィールドSF2の書き込み期間Tw1となる。この場合、表示電極対グループDG1の1080ライン目の走査パルスを、1079ライン目よりも期間Ta2だけ先行する時点ta2において印加する。その結果、1080ライン目の走査パルスが印加されている期間では、表示電極対グループDG1の電圧は、接地電圧となる。このようなタイミングで表示電極対グループDG1の1080ライン目となる走査電極SC1080に、負の走査パルス電圧Vadをピークとする走査パルスを印加する。このように走査パルスの順序を変更することで、複数グループ間の境界ラインにおいて互いに隣接する走査電極SC1081と走査電極SC1080との電位差は走査パルス電圧Vadの大きさに等しくなる。その結果、走査電極SC1081、SC1080間の電位差は、変更前の電位差(Vs+Vad)から維持パルス電圧Vsの大きさだけ低減される。
【0073】
表示電極対グループDG2におけるサブフィールドSF2の書き込み期間Tw1においても、表示電極対グループDG2におけるサブフィールドSF1の書き込み期間Tw1と同様に、表示電極SC1082の書き込み時点よりも期間Ta3だけ遅れた時点ta3において、走査パルスを印加する。
【0074】
以降同様に、表示電極対グループDG1および表示電極対グループDG2では、表示電極対グループDG2におけるサブフィールドSF10での消去期間Te終了まで、図6において上述した駆動構成における動作を繰り返すことで、1フィールドを終了する。
【0075】
なお、表示電極対グループDG1と表示電極対グループDG2のいずれかが、消去期間Teに該当するときは、書き込み動作を行わないことが望ましい。これは、消去期間Teでは壁電圧が消去されるだけでなく、次の書き込み期間Tw1の書き込み動作に備えて、データ電極上の壁電圧を調整する期間でもあるため、データ電極の電圧を固定しておくことが望ましいからである。
【0076】
図7は、前面基板21における走査電極22および維持電極23、ならびにそれらの電極端子の配置を示す模式的な平面図である。走査電極22のそれぞれは、引き出し線92によって、画像表示領域外の右側の周辺部に設けられた走査電極用電極端子97のそれぞれに接続されている。同様に、維持電極23のそれぞれは、引き出し線93によって、画像表示領域外の左側の周辺部に設けられた維持電極用電極端子98のそれぞれに接続されている。この各電極端子97、98は、フレキシブル配線基板(図示されていない)を介して、プラズマディスプレイパネルの駆動回路40に接続される(図3を参照)。例えば、走査電極用電極端子97は、フレキシブル配線基板を介して、電極経路RSC1〜RSC2160に接続される。各電極端子97、98は、フレキシブル配線基板を接続するために、複数本ずつグルーピングされて配置されている。
【0077】
なお、図7には24本の走査電極22および24本の維持電極23、ならびに8本ずつグルーピングされた24本の走査電極用電極端子97および24本の維持電極用電極端子98を示しているが、これらの数値は図を見やすくするために設定されている。図2に示す例に従えば、走査電極22および維持電極23はそれぞれ2160本であり、例えば走査電極用電極端子97および維持電極用電極端子98は、ともに270本ずつグルーピングされている。
【0078】
図8は、走査電極用電極端子97の詳細を示す拡大図である。走査電極用電極端子97は、例えばその幅が150μm、長さが4mmの細長い帯状の形状を成しており、それらが390μmのピッチで配列されている。このように、走査電極用電極端子97は、その間隔を十分広く設計する余裕がないため、走査電極用電極端子97間に過大な電圧を印加すると絶縁破壊が発生し、スパークする恐れがある。あるいは長時間にわたり走査電極用電極端子97間に過大な電圧を印加すると、走査電極用電極端子97を形成している金属粒子が移動する、いわゆるエレクトロマイグレーション(Electromigration)を発生し、走査電極用電極端子97間を短絡する恐れがある。
【0079】
しかしながら、実施の形態1におけるプラズマディスプレイパネルの駆動方法によれば、少なくとも2つの表示電極対グループDG1、DG2にそれぞれ含まれ、互いに隣接する2つの走査電極SC1080、1081において、一方の走査電極に走査パルス電圧Vadを印加している間、他方の走査電極に接地電圧を印加する。その結果、2つの走査電極SC1080、SC1081間の電位差は、維持パルス電圧Vsの大きさだけ低減することができる。したがって、間隔の狭い2つの走査電極用電極端子97の間において、さらにはフレキシブル配線基板の配線間および回路基板の配線間において、絶縁破壊に起因するスパークの発生、およびエレクトロマイグレーションに起因するショートの発生を防止することができる。これにより、高精細度PDPにおける短縮化された電極端子ピッチを用いて、長期間にわたって安定して駆動することが可能となる。さらに、高精細度PDPにおいて、2つの表示電極対グループDG1、DG2の一方が書き込み期間の間、他方が維持期間とすることができ、書き込み期間の増加による超高精細度化、維持パルス数の増加による高輝度化、およびサブフィールド数の増加による高コントラスト化などの、プラズマディスプレイパネルの高画質化を達成することが可能となる。
【0080】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。実施の形態2におけるその他の構成、動作、および効果は実施の形態1と同等であるので、説明を省略する。
【0081】
図9は、PDP10の各電極に印加される駆動電圧波形を示す波形図である。実施の形態2の駆動構成では、表示電極対グループDG1の1080ライン目の走査パルスおよび表示電極対グループDG2の1081ライン目の走査パルスのタイミングを、書き込み期間Tw1になってから最初にスイッチQsusLのタイミング信号S45がハイレベルになるタイミングに変更している。
【0082】
具体的には、図9において、表示電極対グループDG1がサブフィールドSF1の維持期間Ts1の間、表示電極対グループDG2はサブフィールドSF1の書き込み期間Tw1となる。この場合、本来ならば、走査電極SC1081に最初に走査パルスを印加するべきところを、走査電極SC1082に走査パルスを印加する。その後、スイッチQsusLのタイミング信号S45がローレベルの期間では走査電極SC1083から順次走査パルスを印加し、スイッチQsusLのタイミング信号S45がハイレベルとなった後に、図9のように走査電極SC1081に走査パルスを印加する。その後、再び走査電極SC1082以降のラインに走査パルスを印加し、表示電極対グループDG2の最終ラインの走査電極SC2160まで繰り返し走査パルスを印加する。
【0083】
同様に、図9において、表示電極対グループDG2がサブフィールドSF1の維持期間Ts1の間、表示電極対グループDG1はサブフィールドSF2の書き込み期間Tw1となる。この場合、本来ならば、時点tb1で走査電極SC4に走査パルスを印加するべきところを、走査電極SC1080に走査パルスを印加する。走査電極SC1080に対応する1080ライン目には、表示電極対グループDG2の電圧が最初に接地電圧になる時点tb1、つまりスイッチQsusLのタイミング信号S45がハイレベルとなる時点tb1で走査パルスを印加する。その後、図9のように走査電極SC4に対応する4ライン目へ戻り、走査パルスを順次表示電極対グループDG1の最終ラインである走査電極SC1080まで印加する。
【0084】
走査パルスの順序を変更し、走査電極SC1080への走査パルスを期間Tb1だけ進めることで、表示電極対グループDG1、DG2間の境界ラインにおいて互いに隣接する走査電極SC1081と走査電極SC1080との電位差は走査パルス電圧Vadの大きさに等しくなる。その結果、走査電極SC1081、SC1080間の電位差は、変更前の電位差(Vs+Vad)から維持パルス電圧Vsの大きさだけ低減される。
【0085】
実施の形態2の駆動構成により、維持期間Ts1における電圧状態を検出せずに、走査パルスの順序を決定することが可能であるため、アドレスおよびデータ信号駆動部の信号処理を簡単化することが可能となる。
【0086】
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。実施の形態3におけるその他の構成、動作、および効果は実施の形態1と同等であるので、説明を省略する。
【0087】
図10は、PDP10の各電極に印加される駆動電圧波形を示す波形図である。実施の形態3の駆動構成では、表示電極対グループDG1の1080ライン目の走査パルスおよび表示電極対グループDG2の1081ライン目の走査パルスを印加するタイミングで、他方の表示電極対グループが維持パルス電圧Vsの場合に、走査パルスを停止させる。その後、スイッチQsusLのタイミング信号S45がハイレベルになるタイミングで、走査パルスを再開させる駆動制御を行う。
【0088】
具体的には、図10において、表示電極対グループDG1がサブフィールドSF1の維持期間Ts1の間、表示電極対グループDG2はサブフィールドSF1の書き込み期間Tw1となる。この場合、本来ならば、走査電極SC1081に最初に走査パルスを印加するべきところを、期間Tc1の間、書き込み動作休止制御を行う。その後、スイッチQsusLのタイミング信号S45がハイレベルになった時点tc1で、書き込み動作休止制御を解除し、図10のように走査パルスを順次印加し、表示電極対グループDG2の最終ラインの走査電極SC2160まで繰り返し走査パルスを印加する。
【0089】
同様に、図10において、表示電極対グループDG2がサブフィールドSF1の維持期間Ts1の間、表示電極対グループDG1はサブフィールドSF2の書き込み期間Tw1となる。この場合、本来ならば、走査電極SC1080に最初に走査パルスを印加するべきところを、期間Tc2の間、書き込み動作休止制御を行う。その後、スイッチQsusLのタイミング信号S45がハイレベルになった時点tc2で、書き込み動作休止制御を解除し、図10のように表示電極対グループDG1の最終ラインである走査電極SC1080まで走査パルスを印加する。同様に、表示電極対グループDG2におけるサブフィールドSF2の書き込み期間Tw1において、期間Tc3の間、書き込み動作休止制御を行い、スイッチQsusLのタイミング信号S45がハイレベルになった時点tc3で書き込み動作休止制御を解除する。
【0090】
書き込み動作休止制御を行うことで、表示電極対グループDG1、DG2間の境界ラインにおいて互いに隣接する走査電極SC1081と走査電極SC1080との電位差は走査パルス電圧Vadの大きさに等しくなる。その結果、走査電極SC1081、SC1080間の電位差は、書き込み動作休止制御を行う前の電位差(Vs+Vad)から維持パルス電圧Vsの大きさだけ低減される。
【0091】
実施の形態3の駆動構成により、維持期間Ts1における電圧状態を検出せずに、走査パルスの順序を決定することが可能である。それに加え、走査パルスの走査順序に変更が無いため、タイミング発生回路45およびデータ電極駆動回路42の信号処理を複雑にせずに実現できる。
【0092】
(実施の形態4)
実施の形態4では、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。実施の形態4におけるその他の構成、動作、および効果は実施の形態1と同等であるので、説明を省略する。
【0093】
図11は、PDP10の各電極に印加される駆動電圧波形を示す波形図である。実施の形態4の駆動構成では、表示電極対グループDG1の1080ライン目の走査パルスおよび表示電極対グループDG2の1081ライン目の走査パルスを印加するタイミングで、維持パルスを停止させる。その後、各電極グループの1080ラインもしくは1081ラインの走査パルスが終了した後に、維持パルスを再開させる駆動制御を行う。
【0094】
具体的には、図11において、表示電極対グループDG1がサブフィールドSF1の維持期間Ts1の間、表示電極対グループDG2はサブフィールドSF1の書き込み期間Tw1となる。この場合、本来ならば、表示電極対グループDG1の維持動作の開始、つまり接地電圧から電力回収部50aの動作を経て維持パルス電圧Vsまで電圧を印加すべきところを、少なくとも期間Td1の間、維持休止制御を行う。その間、スイッチQsusLのタイミング信号S45は常にハイレベルであり、1081ラインの走査パルスの印加が終了した時点td1で、維持休止制御を解除する。
【0095】
同様に、図11において、表示電極対グループDG2がサブフィールドSF1の維持期間Ts1の間、表示電極対グループDG1はサブフィールドSF2の書き込み期間Tw1となる。この場合、本来ならば、表示電極対グループDG2の維持動作を行うべきところを、少なくとも期間Td2の間、維持休止制御を行う。その間、スイッチQsusLのタイミング信号S45は常にハイレベルであり、1080ラインの走査パルスの印加が終了した時点td2で、維持休止制御を解除する。同様に、表示電極対グループDG2におけるサブフィールドSF2の書き込み期間Tw1において、少なくとも期間Td3の間、維持休止制御を行い、1081ラインの走査パルスの印加が終了した時点td3で維持休止制御を解除する。
【0096】
上述したように、この駆動構成によって、境界ラインに走査パルスを印加するタイミングでは、必ずスイッチQsusLのタイミング信号S45がハイレベルになっている。このため、表示電極対グループDG1、DG2間の境界ラインにおいて互いに隣接する走査電極SC1081と走査電極SC1080との電位差は走査パルス電圧Vadの大きさに等しくなる。その結果、走査電極SC1081、SC1080間の電位差は、維持休止制御を行う前の電位差(Vs+Vad)から維持パルス電圧Vsの大きさだけ低減される。
【0097】
実施の形態4の駆動構成により、維持期間Ts1における電圧状態を検出せずに、走査パルスの順序を決定することが可能である。それに加え、走査パルスの走査順序に変更が無いため、タイミング発生回路45およびデータ電極駆動回路42の信号処理を複雑にせずに実現できる。
【0098】
<実施の形態の結び>
なお、上述した実施の形態1〜4では、表示電極対グループDG1を走査電極SC1〜SC1080、表示電極対グループDG2を走査電極SC1080〜SC2160のように、2分割として説明した(図2および図12Aに示す)。しかしながら、例えば、表示電極対グループDG1を走査電極SC1〜SC540および走査電極SC1081〜SC1620、表示電極対グループDG2を走査電極SC541〜SC1080および走査電極SC1621〜SC2160のように、4分割としてもよい(図12Bに示す)。さらに、8分割にするならば、表示電極対グループDG1を、走査電極SC1〜SC270、走査電極SC541〜SC810、走査電極SC1801〜SC1350、および走査電極SC1621〜SC1890とし、表示電極対グループDG2を、走査電極SC271〜SC540、走査電極SC811〜SC1080、走査電極SC1351〜SC1620、および走査電極SC1891〜SC2160としてもよい(図12Cに示す)。ただし、分割数が増えるに伴って、隣接する表示電極対グループの境界となるライン数が、図12Aの1ラインから、図12Bの3ライン、図12Cの7ラインのように増加する。このため、上述した実施の形態1〜4の駆動構成を、すべての境界ラインについて適応すればよい。
【0099】
本発明は、2160ライン以上の超高精細度のPDPであっても、スパークやショートを生じる恐れがなく、高画質を維持するための十分なサブフィールド数を確保することができ、高輝度で駆動することができるプラズマディスプレイ装置として有用である。
【0100】
以上のように、本発明のプラズマディスプレイパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置によれば、少なくとも2つの表示電極対グループにそれぞれ含まれ、互いに隣接する2つの走査電極において、一方の走査電極に走査パルス電圧を印加している間、他方の走査電極に維持基準電圧を印加する。その結果、2つの走査電極間の電位差は、維持パルス電圧の大きさだけ低減することができる。したがって、間隔の狭い2つの走査電極用電極端子の間において、さらにはフレキシブル配線基板の配線間および回路基板の配線間において、絶縁破壊に起因するスパークの発生、およびエレクトロマイグレーションに起因するショートの発生を防止することができる。これにより、高精細度PDPにおける短縮化された電極端子ピッチを用いて、長期間にわたって安定して駆動することが可能となる。さらに、高精細度PDPにおいて、2つの表示電極対グループの一方が書き込み期間の間、他方が維持期間とすることができ、書き込み期間の増加による超高精細度化、維持パルス数の増加による高輝度化、およびサブフィールド数の増加による高コントラスト化などの、プラズマディスプレイパネルの高画質化を達成することが可能となる。
【0101】
以上、実施の形態におけるこれまでの説明は、すべて本発明を具体化した一例であって、本発明はこれらの例に限定されず、本発明の技術を用いて当業者が容易に構成可能な種々の例に展開可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置に利用できる。
【符号の説明】
【0103】
10 PDP
21 前面基板
22 走査電極
22a、23a 透明電極
22b、23b バス電極
23 維持電極
24 表示電極対
25、33 誘電体層
26 保護層
29 ブラックストライプ
31 背面基板
32 データ電極
34 隔壁
35 蛍光体層
40 プラズマディスプレイパネルの駆動回路
41 画像信号処理回路
42 データ電極駆動回路
43 走査電極駆動回路
44 維持電極駆動回路
45 タイミング発生回路
50 維持パルス発生回路
50a 電力回収部
60 初期化波形発生回路
71、72 走査パルス発生回路
92、93 引き出し線
97 走査電極用電極端子
98 維持電極用電極端子
100 プラズマディスプレイ装置
Cij 放電セル
D1〜Dm データ電極
DG1、DG2 表示電極対グループ
Es、Eset、Ead、Ey1、Ey2 電源
QadH1、QadH2 走査ハイ側スイッチ
QadL1、QadL2 走査ロー側スイッチ
QH1〜QH2160 差電圧ハイ側スイッチ
QL1〜QL2160 差電圧ロー側スイッチ
QsetH 初期化ハイ側スイッチ
QsetL 初期化ロー側スイッチ
QsusH 維持ハイ側スイッチ
QsusL 維持ロー側スイッチ
R60 中間経路
RH1、RH2 ハイ側経路
RL1、 RL2 ロー側経路
Rs、Rset、Rad 電源経路
RSC1〜RSC2160 電極経路
RSG1、RSG2 電極経路グループ
S45 タイミング信号
SC1〜SC2160 走査電極
SF1〜SF10 サブフィールド
SG1、SG2 走査電極グループ
SIG 画像信号
SU1〜SU2160 維持電極
Tf フィールド
Tin 初期化期間
tW 書き込みタイミング
Tw 全書き込み期間
Tw1 書き込み期間
Ts1〜Ts10 維持期間
UG1、UG2 維持電極グループ
Vad 走査パルス電圧
VH1、VH2 ハイ側電圧
VL1、VL2 ロー側電圧
Vc 走査基準電圧
Vd、Ve、Ve2、Vi1、Vi2、Vi3、Vi4、Vr 電圧
Vs 維持パルス電圧
Vset 初期化パルス電圧
Vup、Vdw 傾斜波形電圧
Vy 走査差電圧
Y1〜Y2160 スイッチ部
YG1、YG2 スイッチグループ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイパネルを構成する複数の所定電極を、少なくとも第1グループおよび第2グループに分割し、前記第1グループに含まれる電極であって前記第2グループに隣接する第1所定電極に、維持パルス電圧と維持基準電圧とを繰り返すパルス波形を表す維持パルスを印加することが可能なステップと、
前記第2グループに含まれる電極であって前記第1所定電極に隣接する第2所定電極に、走査パルス電圧をピークとするパルス波形を表す走査パルスを印加することが可能なステップと、を有し、
前記第1所定電極に印加することが可能なステップは、前記第2所定電極に印加することが可能なステップが前記走査パルス電圧を印加している間、前記維持基準電圧を印加する、プラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項2】
前記維持基準電圧は、接地電圧である、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項3】
前記第2所定電極に印加することが可能なステップは、前記走査パルス電圧を印加する時点で前記第1所定電極の電圧が前記維持パルス電圧の場合、前記走査パルス電圧を印加せず、前記第1所定電極の電圧が前記維持基準電圧になる時点で、前記走査パルス電圧を印加する、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項4】
前記第1所定電極に印加することが可能なステップは、所望の維持期間において前記維持パルスを印加し、
前記第2所定電極に印加することが可能なステップは、前記第1所定電極に印加することが可能なステップが前記維持期間において最初に前記維持基準電圧を印加している間に、前記走査パルス電圧を印加する、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項5】
前記第2所定電極に印加することが可能なステップは、前記走査パルス電圧を印加する時点で前記第1所定電極の電圧が前記維持パルス電圧の場合、前記走査パルス電圧の印加を停止し、前記第1所定電極の電圧が前記維持基準電圧になった後に、前記走査パルス電圧を印加する、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項6】
前記第1所定電極に印加することが可能なステップは、前記第2所定電極に印加することが可能なステップが前記走査パルス電圧を印加する時点で、前記維持パルス電圧の印加を停止し、前記第2所定電極に印加することが可能なステップが前記走査パルス電圧を印加した後、前記維持パルス電圧の印加を開始する、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項7】
走査電極、維持電極、およびデータ電極を備え、前記走査電極と前記維持電極と前記データ電極との交差部分に放電セルが形成されたプラズマディスプレイパネルと、
前記プラズマディスプレイパネルを駆動する、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法に基づいて駆動する装置と、を含む、プラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【公開番号】特開2012−181219(P2012−181219A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141222(P2009−141222)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】