説明

プラズマディスプレイパネルモジュール及びプラズマディスプレイパネルモジュールの駆動方法

【課題】PDPの表示による放熱とシャーシへの熱伝導を併せて考慮することで高温誤消灯問題を解決する手段を提供する。
【解決手段】両面テープ5によりシャーシに固定される領域と固定されない領域とを設ける。両面テープ5によりシャーシに固定されない領域に対応する走査を優先的に行い、それに続いてシャーシに固定される領域を行うことで、固定されない領域での高温になる前にスキャンを終了させる。これにより高温誤消灯問題の改善を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの表示、特に高温誤消灯問題に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネルモジュールは通常、接着手段でプラズマディスプレイパネル(PDP)を金属製の構造部材であるシャーシに添合して構成される。このシャーシにはPDPが添合される反対の面に駆動回路、電源回路等の回路基板が実装される。これら回路基板とPDPはシャーシ側面を経由してフラットケーブルなどで接続される。
【0003】
PDPの動作に際しては3つの電極種別が必要となる。すなわち共通電極(X電極)、サステイン電極(Y電極)及びアドレス電極である。この電極の動作を簡単に説明する。
【0004】
まず、PDPは、各放電空間の電位を揃えるために全ての放電空間のアドレス電極とサステイン電極の間でリセット放電を行う(リセット期間)。次に、共通電極を一定の電圧値に固定した状態で、サステイン電極1ラインを選択する。点灯すべきセルに対応したアドレス電極に対してアドレスパルスを印加すると共に、選択したサステイン電極に負極性のスキャンパルスを印加する。これによりスキャン電極とアドレス電極との間で対向放電が発生し、壁電荷が生じる。これを全てのサステイン電極に対して行う(アドレス期間)。
【0005】
その後に各サステイン電極、アドレス電極を基準電位に戻す。以降、各サステイン電極に正極性のスキャンパルスを印加し、サステイン電極が基準電位に戻った後に共通電極にも正極性のパルスを印加することを繰り返す(サステイン期間)。これにより、アドレス期間で生じた壁電位に応じて、各セルが面放電することとなる。
【0006】
これらの動作周期を1セットとして、PDPは動作する。この動作は表示を行い続ける限り行われるため、PDP全体では、極めて多くの電力が消費され、またパネルの発熱も続くこととなる。
【0007】
このPDPの放熱に際しては、PDPとシャーシとの間に熱伝導性の高い両面テープを張り、シャーシ経由で熱を逃がすことで解決している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、原価低減等の要請から、PDPとシャーシとの間全面に両面テープを張ることは好ましくない。一方で、単純に両面テープの添付領域を減少させると両面テープの張り合わせの無い箇所の温度が従来に比べて上昇する。これにより、従来のスキャン順のように上から下に走査していくやり方では高温特性が悪化し、誤消灯が発生する可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、PDPの表示による放熱とシャーシへの熱伝導を併せて考慮することで高温誤消灯問題を解決する手段を提供することにある。
【0010】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0012】
本発明の代表的な実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルモジュールはプラズマディスプレイパネルと、シャーシを含み、これらのプラズマディスプレイパネルとシャーシが熱伝導性を有する2以上の両面テープで固定され、この2以上の両面テープは、プラズマディスプレイパネルの長辺方向と略同一の長さを有し、前記プラズマディスプレイパネルの短辺方向に間隔をあけて略平行に並べられることを特徴とする。
【0013】
本発明の代表的な実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルモジュールは、プラズマディスプレイパネルと、シャーシと、を含み、前記プラズマディスプレイパネルと前記シャーシは熱伝導性を有する2以上の両面テープで固定され、前記2以上の両面テープは、前記プラズマディスプレイパネルの長辺方向に沿って配置され、前記プラズマディスプレイパネルの短辺方向に物理的距離を取って略平行に並べられ、Y電極駆動回路は両面テープの貼付されていない領域を走査する非貼付領域スキャンドライバと、両面テープの貼付されている領域を走査する貼付領域スキャンドライバと電気的に接続され、Y電極駆動回路は表示データを非貼付領域スキャンドライバと貼付領域スキャンドライバにセットし、非貼付領域スキャンドライバに対して表示の開始を指示し、非貼付領域スキャンドライバは貼付領域スキャンドライバに表示の開始を指示することを特徴とする。
【0014】
本発明の代表的な実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルモジュールのサブフィールド表示方法は、プラズマディスプレイパネルと、シャーシと、を含み、プラズマディスプレイパネルとシャーシは熱伝導性を有する2以上の両面テープで固定され、前記2以上の両面テープは、プラズマディスプレイパネルの長辺方向に沿って配置され、プラズマディスプレイパネルの短辺方向に物理的距離を取って略平行に並べられたプラズマディスプレイパネルモジュールを対象とするものであって、両面テープの貼付されていない領域のスキャンを行う非貼付領域スキャンステップと、非貼付領域スキャンステップの後に両面テープの貼付されている領域のスキャンを行う貼付領域スキャンステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0016】
本発明の代表的な実施の形態に関わるプラズマディスプレイパネルモジュールを用いることで、部材コストの低価格化が可能となる。これは、高圧系の制御により高温誤消灯問題の解決を可能にするためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【0018】
図1はプラズマディスプレイパネルの動作周期を説明する波形図である。
【0019】
PDPは、各放電空間の電位を揃えるために全ての放電空間のアドレス電極とサステイン電極の間でリセット放電を行う(リセット期間)。次に、共通電極を一定の電圧値に固定した状態で、サステイン電極1ライン選択する。点灯すべきセルに対応したアドレス電極に対してアドレスパルスを印加すると共に、選択したサステイン電極に負極性のスキャンパルスを印加する。これによりサステイン電極とアドレス電極との間で対向放電が発生し、壁電荷が生じる。これを全てのサステイン電極に対して行う(アドレス期間)。
【0020】
その後に各スキャン電極、アドレス電極を基準電位に戻す。以降、各サステイン電極に正極性のスキャンパルスを印加し、サステイン電極が基準電位に戻った後に共通電極にも正極性のパルスを印加することを繰り返す(サステイン期間)。
【0021】
以上の動作周期のうち、高温誤消灯問題はアドレス期間において発生する。
【0022】
高温誤消灯問題はスキャンを行うまでのサステイン電極とアドレス電極間の電荷リークにより発生する。スキャン順序が遅いほど電荷リークし易く、したがって、スキャン順序が遅いほど高温誤消灯問題が発生し易いと言える。
【0023】
本発明においては、両面テープによってPDPとシャーシ間が接合されていない箇所を優先的に走査することで高温誤消灯問題を解消する。
【0024】
図2は、本発明におけるプラズマディスプレイ装置の電気的構成を表す概念図である。また、図3は本発明に関わる両面テープ5のPDP4への添付の仕方を表す図である。また図4は本発明に関わるY電極駆動回路2とスキャンドライバ群の接続を説明する概念図である。
【0025】
本発明におけるプラズマディスプレイ装置はX電極駆動回路1、Y電極駆動回路2、アドレス電極駆動回路3、PDP4より構成される。
【0026】
X電極駆動回路1はPDP4内の共通電極Xの電位を変動するための高電圧系の駆動回路である。一方、Y電極駆動回路2はPDP4内のサステイン電極Y1、Y2…を駆動するための高電圧系の駆動回路である。
【0027】
共通電極は全てのY電極の駆動に際して動作する電極である。したがって、X電極駆動回路1はプラズマディスプレイ装置中に1つあればよい。一方、各サステイン電極は対応する走査線の表示時にしか動作しない。したがって、サステイン電極を駆動する回路(スキャンドライバ21a)は各サステイン電極に一つずつ存在するため、Y電極駆動回路2の回路の規模はX電極駆動回路1より大きくなることが一般的である。
【0028】
スキャンドライバ21は各走査線に対応するサステイン電極にセットするデータを保持するためのシフトレジスタ、及びそれを実際にサステイン電極に出力する回路を含む回路である。ここでスキャンドライバ21は全てのスキャンドライバ21aを包摂する広い概念であり、スキャンドライバ21とスキャンドライバ21aとは異なることに注意されたい。
【0029】
PDP4と図示しないシャーシ間の接合には両面テープ5が用いられる。本発明においては、両面テープを貼り付ける位置を走査線に対応した位置とする。すなわちPDP4の長辺方向とほぼ同じ長さの短冊状の両面テープを複数(本実施の形態では4枚)用意する。これをPDPの短辺方向に物理的距離を開けて、平行に並べる。これにより両面テープの貼付された領域と貼付されて無い領域が走査線に沿った形に構成される。これにより、放熱効率の良い箇所と放熱効率の悪い場所を意図的に設けることができる。結果、電気的に制御を行い、放熱対策を行うことで低価格化の基礎となることができる。
【0030】
より具体的には、図4に記載の通り走査線の1−240ライン、271−510ライン、541−810ライン、841−1080ラインに対応して両面テープ5を貼り付ける。
【0031】
これらの両面テープの有無に対応して、スキャンドライバをまとめたスキャンドライバ群を構成する。図4はこのスキャンドライバ群の構成を表すブロック図である。
【0032】
上記の両面テープのある走査線の領域及び両面テープの無い走査線の領域に分けて、スキャンドライバ群201ないし207を配置する。各スキャンドライバ群と走査線の領域の対応は以下の通りである。
【0033】
スキャンドライバ群201:走査線1−240
スキャンドライバ群202:走査線241―270
スキャンドライバ群203:走査線271−510
スキャンドライバ群204:走査線511−540
スキャンドライバ群205:走査線541−810
スキャンドライバ群206:走査線811−840
スキャンドライバ群207:走査線841−1080
これまでのPDPでは走査線の並び順に処理をおこなっていた。すなわちスキャンドライバ群201、スキャンドライバ群202、スキャンドライバ群203、スキャンドライバ群204、スキャンドライバ群205、スキャンドライバ群206、スキャンドライバ群207という順序である。
【0034】
これに対し本発明においては、スキャンドライバ群202、スキャンドライバ群204、スキャンドライバ群206、スキャンドライバ群201、スキャンドライバ群203、スキャンドライバ群205、スキャンドライバ群207の順番で走査を行う。すなわち、両面テープが添付されておらず放熱性(伝熱性)の低い箇所を先に走査し、その後放熱性の高い領域の走査を行う。
【0035】
具体的な動作について説明する。
【0036】
まずY電極駆動回路2から各スキャンドライバ群に対して、表示する際に用いるデータをセットする。
【0037】
スキャンドライバ群に対する表示データのセット後にY電極駆動回路2はスキャンドライバ群202に対して制御信号線(図4中ではCtrl)を通して出力開始信号を出力する。これを受けスキャンドライバ群202は図1で表す表示動作に移行する。
【0038】
スキャンドライバ群202に含まれるスキャンドライバがスキャン電極を駆動して、図1に示す駆動波形を出力する。
【0039】
スキャンドライバ群202に含まれる各スキャンドライバに対応した走査線241−270の出力が終了したら、スキャンドライバ群202はスキャンドライバ群204に対して出力開始信号を出力する。
【0040】
同様に走査線511−540の出力が完了すると、スキャンドライバ群204はスキャンドライバ群206に対して出力開始信号を出力する。
【0041】
以降、スキャンドライバ群201、スキャンドライバ群203、スキャンドライバ群205、スキャンドライバ群207の順番で走査を実行していき、最終的には1サブフィールドの出力が完了する。この後、図上ではスキャンドライバ群207からY電極駆動回路2に制御信号線が戻され、出力完了がY電極駆動回路に報告可能なようになっているが、これは設計によっては無くてもよい。
【0042】
このようにすることで、両面テープの添付されていない、走査線241−270、511−540、811−840を先にスキャンし、その後両面テープが貼られた、走査線1−240、271−510、541−810、841−1080を表示することが可能になる。これにより、高温誤消灯問題の発生を防ぎ、良好な表示特性を維持することができる。
【0043】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは言うまでもない。
【0044】
たとえば、上記では両面テープのある走査線の領域及び両面テープの無い走査線の領域に分け、それに対応して説明した。しかし両面テープの添付領域が広がるのであれば多少ずれても問題ではない。熱伝導性が向上するため、高温誤消灯問題の発生率の低下を目的とする本発明と相反しないためである。
【0045】
また、説明の上、スキャンドライバ群を領域に分けて7つ記載した。これを貼付領域及び非貼付領域の2つで処理しても問題は生じない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本明細書ではプラズマディスプレイパネルモジュールの表示について説明した。しかし、本発明は平面表示パネルを用いた表示モジュールであって、シャーシを利用して放熱するものに対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】プラズマディスプレイパネルの動作周期を説明する波形図である。
【図2】プラズマディスプレイ装置の電気的構成を表す概念図である。
【図3】本発明に関わる両面テープのPDPへの添付の仕方を表す図である。
【図4】本発明に関わるY電極駆動回路とスキャンドライバ群の接続を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0048】
1…X電極駆動回路、2…Y電極駆動回路、3…アドレス電極駆動回路、
4…PDP、5…両面テープ、21、21a…スキャンドライバ、
201、202、203、204、205、206、207…スキャンドライバ群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイパネルと、シャーシと、Y電極駆動回路と、を含み、前記プラズマディスプレイパネルと前記シャーシは熱伝導性を有する2以上の両面テープで固定されたプラズマディスプレイパネルモジュールであって、
前記2以上の両面テープは、前記プラズマディスプレイパネルの長辺方向に沿って配置され、かつ、前記プラズマディスプレイパネルの短辺方向に物理的距離を取って並べられ、
前記Y電極駆動回路は、前記両面テープの貼付されていない領域のY電極を走査する第1のスキャンドライバ群と、前記両面テープの貼付されている領域のY電極を走査する第2のスキャンドライバ群と、に電気的に接続され、
前記Y電極駆動回路は、前記第1のスキャンドライバ群と前記第2のスキャンドライバ群に表示データをセットし、前記第1のスキャンドライバ群に対してY電極の走査の開始を指示し、前記第1のスキャンドライバ群は前記第2のスキャンドライバ群にY電極の走査の開始を指示することを特徴とするプラズマディスプレイパネルモジュール。
【請求項2】
プラズマディスプレイパネルと、シャーシと、を含み、前記プラズマディスプレイパネルと前記シャーシは熱伝導性を有する2以上の両面テープで固定され、前記2以上の両面テープは、前記プラズマディスプレイパネルの長辺方向に沿って配置され、前記プラズマディスプレイパネルの短辺方向に物理的距離を取って略平行に並べられたプラズマディスプレイパネルモジュールの駆動方法であって、
前記両面テープの貼付されていない領域のスキャンを行う非貼付領域スキャンステップと、
前記非貼付領域スキャンステップの後に前記両面テープの貼付されている領域のスキャンを行う貼付領域スキャンステップと、を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネルモジュールの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−102161(P2010−102161A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274094(P2008−274094)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(599132708)日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】